1.1 雇用労働関係法令一覧

国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
1.1
雇用労働関係法令一覧
憲法には、権限の分散に関して「中央政府及び州政府の両方にまたがる事項のリス
ト」が定められており、そのリストに労働に関する事項が掲載されている。つまり、
労働の分野に関しては、中央政府及び州政府の双方が法を制定することができる。
中央政府が制定した労働関係法は 47 ある。現下の状況及び関係各方面から出てく
る新たな要望に応えるために、労働関係法は不断の見直し及び改定がなされている。
*出典:Government of India, Ministry of Labour & Employment (労働雇用省), “Annual
Report (年次報告書) 2005 - 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>, accessed
on 15 February 2007.
表 1‑1
項
目
労働基準関係法令
現行の労働関連法の大要
小項目
法律名
労働契約(雇用契約)
なし
解雇規則
産業雇用(基本)法、1946 年
賃金、労働時間、休憩、休日、 ・ 産業雇用(基本)法、1946 年
年次有給休暇、時間外及び休 ・ 工場法、1948 年
日労働、時間外等の割増賃金 ・ 賃金支払法、1936 年
・ 最低賃金法、1948 年
・ 賞与支払法、1965 年
・ 小規模店舗法
・ 週ごと休日に関する法律、
1972 年
年少者、女性、労働安全衛生、 ・ 年少者労働(禁止及び規制)法、
アウトソーシング(委託業務
や派遣労働)
1986 年
・ 妊産婦給付法、1961 年
・ 報酬平等法、1976 年
・ 女性労働者に対する性的いや
がらせ防止に関する指針
・ 契約労働(規制及び廃止)法、
1970 年
就業規則、労働協約
産業雇用(基本)法、1946 年
その他重要な法令
・ 州間出稼ぎ労働者(雇用規制及
び役務条件)法、1979 年
・ 販売促進従事者(役務条件)
法、1976 年
労使関係法令
労働組合(設立に関する規定 労働組合法、1926 年
等)
労働争議解決システムに関す 労働争議法、1947 年
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項
目
小項目
法律名
る法令
労働保険関係法令
労働者災害補償保険
・ 労働者補償法、1923 年
・ 社会責任保険法、1991 年
・ 私傷(補償保険)法、1963 年
雇用保険
・ 労働争議法、1947 年
・ 農村部における国家雇用保証
法、2005 年
健康保険
労働者保険法、1948 年
年金
・ 労働者積立基金及び諸給付法、
1952 年
・ 退職給付金法、1972 年
その他、独自の保険や基金に なし
関する法令
職業能力開発法令
職業能力開発制度(教育訓練 徒弟制度法、1961 年
等)
職業能力評価制度
徒弟制度法、1961 年
その他の雇用労働 職業紹介制度
労働市場(求人情報公開の義務化)
関係法令
法、1959 年
外国投資法により進出した企
業で、海外から招聘され就労
する者の労働許可条件
海外から招聘され就労する者
の加入義務のある制度
その他雇用労働に関する法令 ・ 拘束労働制度(廃止)法、1976
年
・ 労働(特定企業に対する申告書
免除及び登記の保護)法、1988
年
・ 未登録企業の社会保障に関す
る法案
・ 労働者福祉に関する諸基金の
根拠法令
上表には個別の産業に固有の法令は記載していない。なお、固有の法令が定められ
ている産業及び労働者には次の種類がある。
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・
炭鉱
・
造船・船舶修理労働者
・
マイカ(雲母)採掘鉱
・
石灰石及び白雲石採掘鉱
・
鉄鉱石、マンガン鉱石及びクロム鉱石採掘鉱
・
ビーディ(インド特有のタバコ)及び葉巻製造
・
大規模農園労働者
・
自動車輸送労働者
・
建築及びその他の建設労働者
・
映画制作及び映画館労働者
・
報道従事者及びその他の新聞労働者
・
商船
・
掃除夫
*出典:Government of India, Ministry of Labour & Employment, “List of Various
Central Labour Acts (労働関係法).” <http://labour.nic.in/act/welcome.html>,
accessed on 15 February 2007.
1.2
労働基準関係法令
1.2.1
労働契約
インドには雇用者と被雇用者との間で直接結ばれる雇用契約に関する法令はな
い。
1.2.2
解雇規則
・
産業雇用(基本)法、1946 年
労働者の解雇に関する具体的な条項を有する法令としては、本法以外には
ない。この法律は、企業が従業員に明示する就業規則の中で、解雇の手続
きも定めることを認めている。労働者の解雇が正当とみなされるには、雇
用者には当該労働者の不行跡を証明することが求められる。不行跡とは、
単なる失敗、手抜き及び不効率ではなく、悪意ある怠慢、職務命令への不
服従及び反抗を指す。労働者が示唆されたり、明確に指示された職務を履
行しなかったりした場合には、当該労働者が解雇されても正当とされる。
会社に関するこの基本法は、個別企業ごとに仕事の重要度に応じて不行跡
の定義ができる、としている。しかしながら、これは絶対的なものではな
く、雇用者は、これらが例示に過ぎないことを明確にすることが求められ
る。解雇の手続きに踏み切る前に、雇用者は通念としての正義や判例から
導き出されたガイドラインに沿うことが求められる。雇用者はその不行跡
をまず記録に留め、内々に本人へ事情聴取しなければならない。雇用者は
取調官の報告書の内容によっては、当該従業員に警告書を発行し、その後
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最終的に解雇通知(またはそれより軽い懲罰)を与えることができる。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006 (ナブヒ版労働法 2006 年版),”
Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “Industrial Employment (Standing
Order) Act (産業雇用(基本)法), 1946.” <http://labour.nic.in/act/acts/Industrial
EmploymentAct.doc>, accessed on 15 February 2007.
1.2.3
賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外等
の割増賃金
(1) 産業雇用(基本)法、1946 年
(a) この法律は、特定の産業における企業に対して、雇用条件を明確に規
定するよう求めている。つまり、上記企業は、雇用される労働者に対
して基本規則及び服務規程を周知させなければならない。この基本規
則により、労働条件を無秩序で随意の不安定なものではなく、安定的
でありかつ一律のものにすることを目指している。
(b) この法律は、雇用労働者数が 100 名以上のすべての企業に適用される。
また、管理職以外のあらゆる職種に従事する労働者すべてに適用され
る。
(c) この基本規則は、労働者の分類、労働時間、勤怠、休暇、雇用契約期
間の終結、停職、解雇、不行跡及びその他について扱う。
(d) すべての企業は、雇用者及び被雇用者双方を拘束する基本規則を策定
し認定を得なければならない。中央政府及び州政府は、基本規則の雛
形を準備しており、企業はこの雛形をもとに独自の基本規則を策定し、
認定局から認定を得ることができる。
(d) 本法は 2001 年に改訂され、職場における女性に対する性的いやがら
せに関するガイドラインが盛り込まれた。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “Industrial Employment (Standing
Order) Act, 1946.” <http://labour.nic.in/act/acts/IndustrialEmploymentAct.doc>,
accessed on 15 February 2007.
(2) 工場法、1948 年
(a) 工場法制定の主要目的は、工場における労働条件を規定することにあ
る。また、工場労働者に安全・衛生・厚生の基本の最低条件を与える
ことも狙いとしている。更に、労働時間、休暇、祝祭日、時間外労働
並びに子供・女性・若年者の雇用に関しても規定している。
(b) 本法はすべての工場に適用される。「工場」とは、「最近 12 カ月の
すべての日において 10 名以上の労働者が雇用され、動力を使用して
製造工程が実施されている場所」、または「20 名以上の労働者が雇用
され、動力を使用せずに製造工程が実施されている場所」と定義され
ている。
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(c) 工場におけるあらゆる事項に関して最高の権限を有する者を「工場長」
とよぶ。工場長は、工場を建設する場所に関して州政府から事前に許
可を取らなければならない。また、工場長は、その工場を登記し、操
業の許可を得なければならない。
(d) 工場長は、工場内で就業中のすべての労働者に対し、安全・衛生・厚
生を確保しなければならない。そのために採るべき方策が明確に定義
されている。おもなものは次の通りである。
(i)
材料の安全な取扱い、保管、輸送及び安全訓練
(ii)
清潔及び産業廃棄物の適切な処理
(iii)
換気及び温度・湿度のコントロール
(iv)
塵埃及び排気の防止
(v)
作業者の過密防止
(vi)
適切な照明及び飲料水
(vii)
適切な便所及び痰壷
(viii) 危険な機械及び機械の可動部分の囲い込み
(ix)
床、階段等から障害物を除去
(x)
危険な工程や健康に悪影響を及ぼす原材料に対する特別な注意
(e) 作業者に次の厚生アメニティが常に与えられていること
(i)
衣類の洗濯及び乾燥
(ii)
作業者(通常立って作業を行っている者)が休憩時に座れる場
所
(f)
(iii)
救急箱
(iv)
救急室
(v)
食堂
(vi)
休憩室及び昼食室
(vii)
託児室(女性労働者が 30 名以上いる場合)
労働時間につき、次のことが基準となる。
(i)
女性労働者は 19〜7 時の間は労働させてはならない。
(ii)
14 歳未満の子供を雇用してはならない。
(iii)
複数の会社に雇用されてはならない。
(iv)
労働時間は 1 週間あたり 48 時間、または 1 日あたり 9 時間を
超えてはならない。
(v)
連続して労働できるのは最長 5 時間とし、各労働時間帯の間に
少なくとも 30 分間の休憩時間を与えなければならない。
(vi)
1 週間に 1 日の休暇を与えなければならない。
(vii)
所定の労働時間を超えて勤務させる場合には限度時間数が決め
られており、通常の賃金の 2 倍の割増金を支払わなければなら
ない。
(viii) 勤続日数 20 日ごとに 1 日の割合で有給休暇を与えなければな
らない。
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全日雇用されている者は、2 つ以上の職に就くことは基本的に禁止さ
れている。パートタイム労働者は、雇用契約で禁止されていない限
り、2 つ以上の職に就くことができる。
安全、尊厳、名誉並びに工場から自宅に近い所までの送迎に適切な
配慮をするための、交代勤務制の夜間シフトにおける女性の勤務を
柔軟に認める内容の改定が 2005 年 8 月に国会を通過し、施行待ちと
なっている。
*出典:Government of India, Ministry of Labour & Employment, “Annual
Report 2005 - 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>,
accessed on 15 February 2007.
Government of India, Ministry of Labour, “The Factories Act (工場法), 1948.”
<http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=194863>, accessed on 15 February 2007.
(3) 賃金支払法、1936 年
本法は、賃金支払周期及び支払い方法等を規定することにより、賃金の支
払い、罰金の賦課及び賃金からの天引きを統制し、その他の陋習を排除す
ることを目的としている。したがって、賃金を一定周期で支払い、不当な
天引きがなされないように規定している。2005 年の改定において、1 カ月
あたり 6,500 ルピーまでの賃金を得ている労働者に本法が適用されること
となった。雇用者は、本法で規定している特定の源泉徴収項目以外には、
賃金から天引きすることは認められない。いかなる賃金支払い対象期間に
おいても、総源泉徴収額は賃金の 50%を超えてはならない。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “The Payment of Wages Act (賃金支払
法), 1936.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=193604>,
accessed on 15 February 2007.
(4) 最低賃金法、1948 年
本法は、一定の最低賃金を定めることにより、労働者、とくに登記されて
いない企業に雇用されている者の利益を守ることを目的としている。中央
政府及び州政府の双方とも、それぞれの管轄権限の範囲において、最低賃
金を決定・改定・見直しをし、本法添付の指定職種の労働者に対して支払
わしめなければならない。中央政府の管轄下には 45 職種が指定されてお
り、州政府には 1,530 職種がある。中央及び州政府は、これらの指定職種
の最低賃金を随時改定している。中央政府管轄の職種については、最新の
改定・施行は 2005 年 10 月に行われている。最低賃金は、所得、基礎物資
の価格、生産性、支払能力並びに地域ごとの事情等の多様な要素により決
められる。これらの要素は、町ごとや産業ごとに異なるため、全国規模で
みると賃金は一律ではない。したがって、まだ全国一律の最低賃金を設定
するにはいたっていない。この事情を考慮して、中央政府は全国底辺賃金
を導入した。全国底辺賃金は定期的に改定され、最新の改定では 1 日あた
り 66 ルピーとされ、2004 年 2 月に施行された。州政府は、指定された職
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種の労働者の最低賃金が全国底辺賃金を下回らないことを求めている。大
半の州において、全国底辺賃金にあわせて、それぞれの州における最低賃
金を改定している。
*出典:Government of India, Ministry of Labour & Employment, “Annual
Report 2005 - 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>,
accessed on 15 February 2007.
最低賃金法の前文において、ある特定の職種における最低賃金を定める、
としている。対象となる職種は「指定職種」とされており、本法の末尾に
列記されている。したがって、本法が適用される範囲は、指定職種に限定
され、これらは組織された及び組織されていない職種の両方にまたがる。
しかしながら、それら指定職種は、概して未登記の企業が多い。本法では、
「組織されていない職種」という用語は使用していない。インド政府労働
雇用省は、組織されていない職種を「臨時的な雇用、無関心及び無学から
きたす限界、企業規模の小ささ、地理的なまとまりのなさ及びその他の要
因により、労働者に共通の利害を守るために組織化できていない労働者」
と定義している。
「組織されていない職種」は、概して「工場法、1948 年」
により登記していない製造業に多い。しかし、これは決定的な定義とはい
えない。なぜならば、指定職種で働いている人がいるのであれば、最低賃
金法は工場にも適用されるのである。また、指定職種には 2 種類がある。
第 1 の種類として列記されている職種については、当該州全体に共通の最
低賃金が定められる。第 2 の種類については、当該州の一部地域にのみと
適用される。
*出典:Helplinelaw, Bare Acts (法律全文), Labour Law (労働法), “The Minimum
Wages Act (最低賃金法),” 1948. <http://helplinelaw.com/bareact/index.php?dsp=minwages>, accessed on 15 February 2007.
Government of India, Ministry of Labour, “The Minimum Wages Act (最低賃金法),
1948.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=194811>,
accessed on 15 February 2007.
(5) 賞与支払法、1965 年
本法は、特定の企業の、特定の職種の従業員に、利益や生産性にリンクし
た賞与が支払われることに関する規定を定めている。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “The Payment of Bonus Act (賞与支払
法), 1965.” <http://labour.nic.in/act/acts/pba.doc>, accessed on 15 February 2007.
(6) 小規模店舗法
本法では、工場法または労働条件を規定するその他の法令の適用対象にな
っていない営利企業を含む小規模店舗、いわゆる未登記の小規模店舗の従
業員の労働条件を規定することを目的としている。労働時間、休憩時間の
間隔、残業、休日、休暇、雇用の終結、店舗の保守、その他雇用者と従業
員の権利及び義務を規定している。
7
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
(7) 週ごと休日に関する法律、1942 年
本法は、商店、レストラン及び映画館に雇用される従業員に週ごとに休日
を与えることを目的としている。
*出典:Government of India, Ministry of Communications and Information Tech
nology, Legal Informatics Division, National Informatics Centre, India Code Info
rmation System (INCODIS) (Lagistive Department), “The Weekly Holidays Act
(週ごと休日に関する法律), 1942.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=194218>,
accessed on 15 February 2007.
1.2.4
年少者、女性、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)
若年者に関する特定の法令は現在のところないが、子供の労働に関する法律が
ある。女性に関しては、妊産婦給付法、報酬平等法及び女性労働者に対する性
的いやがらせ防止に関する指針がある。職場における安全衛生に関しては、工
場法に規定があり、調査小項目 1.2.3 (2)の通りである。
また、アウトソーシングの一種として契約労働がある。
(1) 年少者労働(禁止及び規制)法、1986 年
(a) 本法では、年少者が働くには危険で有害と思われる特定の職業や工程
に年少者を従事させることを禁止している。また、その他の特定の仕
事において年少者の労働条件を規定している。本法において、「年少
者」とは満 14 歳未満の者を指し、そのような人が賃金またはその他
を得ている時、年少労働者とよばれる。年少者労働が認められる職業
や工程については公式にない。
(b) 年少者労働が禁止されている職業には次のようなものがある。
(i)
商店での爆竹及び花火の販売
(ii)
手動織機及び自動織機を操作する仕事、鉱山及び炭鉱、屠殺場、
自動車組立工場、鋳造所、樹脂及びガラス繊維工場
(iii)
有毒または引火性の物質または爆発物の取扱い
(c) 2006 年に次の職業が年少者労働禁止職業一覧表に追加された。
(i)
家事労働や召使として年少者を従事させること
(ii)
路上の飲食物屋台、レストラン、ホテル、モーテル、喫茶店、
保養地、温泉及びその他レクリエーション地区において年少者
に労働させること
(d) 年少者労働が禁止されている工程には次のようなものがある。
(i)
絨毯織り
(ii)
セメント製造
(iii)
布地の捺染、浸染及び機織り
(iv)
マッチ、爆発物及び花火の製造
(v)
石鹸製造
(vi)
建築業
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国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
(vii)
有害な金属及び物質の製造
(viii) カシューナッツの皮剥き及び加工
(ix)
電子産業における半田付け作業
(e) 年少者労働が禁止されていない場合でも、本法は厳格な規制を設けて
いる。次のような規制事項がある。
(i)
年少者は 19〜7 時の間は労働させてはならず、また時間外労働
もさせてはならない。
(ii)
継続労働時間は 3 時間を超えてはならない。また、継続労働 3
時間以内に少なくとも 1 時間の休憩時間を与えなければならな
い。
(iii)
毎週 1 日の休日を与えなければならない。
(vi)
雇用者は、年少労働者の健康及び安全に対する適切な配慮をす
ることが求められる。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “Child Labour (Prohibition & Regulation)
Act (年少者労働(禁止及び規制)法), 1986.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=
198661>, accessed on 15 February 2007.
(2) 妊産婦給付法、1961 年
本法は、特定の種類の企業において、女性の産前・産後及び妊娠期間の一
定期間における雇用及び給付に関する規定がなされている。10 名以上を雇
用する鉱山、工場、サーカス、製造業、大規模農場及び小規模店舗で、
「労
働者保険法、1948 年」(調査小項目 1.4.3 を参照)の対象にならない労働
者に適用される。州政府の裁量で、その他の企業にも適用範囲を広げるこ
とが認められている。本法は、賃金額の高低のいかんにかかわらず適用さ
れる。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “The Matternity Bebefit Act (妊産婦給
付法), 1961.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=196153>,
accessed on 15 February 2007.
(3) 報酬平等法、1976 年
(a) 本法は、同一労働または類似労働に対し、男女労働者に同等の報酬を
支払うこと及び性差を理由として女性に雇用上の差別することを禁止
している。
(b) 雇用者は、同一労働または類似労働に対する労働者雇用に際して、ま
た、昇進、訓練、転勤及びその他において、女性を差別してはならな
いことを明示している。
(c) 雇用者が本法の規定に違反した場合、労働者は苦情を申し立てる権利
を有する。また、同一労働に対して、男女同等の賃金が支払われなか
った場合に提訴する権利を有する。
(d) 政府は助言委員会を組織し、女性により多くの雇用機会を与える見地
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国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
より、特定の業種にどの程度の女性労働者を雇用させるかについて助
言を求めることとした。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006 (ナブヒ版労働法 2006 年版),”
Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “The Equal Remuneration Act (報酬平
等法), 1976.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=197625>,
accessed on 15 February 2007.
(4) 女性労働者に対する性的いやがらせ防止に関する指針
中央政府は、職場における女性労働者への性的いやがらせを防止するため
の指針をまとめた。中央政府及び All India Services(全インド公共サービ
ス機構)に適用されている行動規範が改定され、これらの指針が機能する
ことになった。産業雇用(基本)法の施行令も改定され、これらの指針が
民間の労働者にも適用されるようになった。
*出典:Government of India, Ministry of Labour & Employment, “Annual
Report 2005 - 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>,
accessed on 15 February 2007.
(5) 契約労働(規制及び廃止)法、1970 年
(a) この法律は、契約労働者の雇用を規制することを目的として制定され
た。労働力供給請負業者に雇用され、またはそのような業者を通じて
ある企業の仕事に従事することを契約労働と称する。契約労働者は真
の雇用者が誰であるか知らされていない場合もある。
(b) この法により、政府はいかなる企業のいかなる仕事に契約労働者を雇
用することを禁じることができる。政府は、労働条件や、企業が契約
労働者に与える特典の内容を吟味して判断することになる。政府はま
た、そのような仕事が一時的に発生するものか、真に必要な仕事なの
かについても吟味する。
(c) 契約労働者を 20 名以上雇用する企業及び 20 名以上の労働者を雇用す
る請負業者に本法が適用される。
(d) 登記証明書を有しない企業は契約労働者を雇用することはできない。
企業は証明書を入手するために、所管の登記所に申請する。
(e) 同様に、請負業者は契約労働者の雇用免許を免許局に申請しなければ
ならない。有効な免許を有しない業者は、契約労働者を介在させて仕
事を請け負ったり仕事を遂行したりすることはできない。
(f)
業者は契約労働者に次のようなアメニティを与え、彼等の健康と福祉
に資することを求められる。
(i)
契約労働者のために食堂を 1 カ所以上設ける(契約労働者数が
100 名以上の場合)。
(ii)
契約労働者が夜間に休息するための休息室を設け、十分な照明
及び空調設備を設置し、清潔で快適にしておかなければならな
い。
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国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
(iii)
利便性のある場所に衛生的な飲料水、便所及び水浴施設を整え
なければならない。
(vi)
救急箱を常備し、就業時間内にいつでも利用できるようにし、
必要なものがすべて揃っていなければならない。
(g) 業者がこれらのアメニティの準備を怠った場合には、契約労働者を雇
用する企業がこれらを整える義務があり、発生した費用を業者から取
り立てるものとする。
(h) 業者は、契約労働者に定期的に賃金を支払わなければならない。支払
いは、雇用企業の正式な代理人の立会いのもとに行われなければなら
ない。業者が賃金を期日に支払わなかったり、支払い金額が全額に満
たなかったりした場合には、雇用企業が賃金の全額を支払い、もしく
は未払いの差額を支払い、業者からその額を取り立てるものとする。
(i)
業者に雇用される者は、積立基金及び労働者保険の給付を受ける権利
を有するものとする(詳細は調査小項目 1.4.4 を参照)。同様に、工
場法、最低賃金法、賃金支払法、労働争議法及び労働者補償法の条項
が契約労働者にも適用される。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “Contract Labour (Regulation &
Abolishment) (契約労働(規制及び廃止)) Act, 1970.” <http://labour.nic.in/act/acts/c
ontractlabour.doc>, accessed on 15 February 2007.
1.2.5
就業規則、労働協約
調査小項目 1.2.3 (1)を参照
1.2.6
その他
(1) 州間出稼ぎ労働者(雇用規制及び役務条件)法、1979 年
本法は、州境を越えて職を求める労働者を雇用することを規制し、これら
労働者を保護し、役務の条件を規定している。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
(2) 販売促進従事者(役務条件)法、1976 年
本法は、医薬品製造業の販売促進員の労働条件を規定している。多くの労
働関係法、すなわち、労働者補償法、労働争議法、最低賃金法、妊産婦給
付法、賞与支払法及び退職給付金法が販売促進員にも適用されることが明
記されている。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “Sales Promotion Employees
(Conditions of Service) Act (販売促進従事者 (役務条件) 法), 1976.” <http://labour.ni
c.in/act/acts/SalesPromotionAct.doc>, accessed on 15 February 2007.
11
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
1.3
労使関係法令
1.3.1
労働組合
・
労働組合法、1926 年
(1) 本法は、労働組合とは、労働者・雇用者間、労働者同士及び雇用者同
士の関係を規定する目的で、一時的または恒久的に形成された団体で
あると定義している。また、2 つ以上の組合の連合組織も含まれる。
(2) 労働組合(労働者の協会も含む)に、集団交渉権を行う法的な力を与
える目的で登記することを規定している。10%または 100 名、どちら
か少ない方、それ以上を構成員としている組合が登記を許される。7
名以下の構成員しかいない組合は登記を認められない。基盤となる企
業の従業員のうち、10%または 100 名のどちらか少ない方、それ以上
を常時構成員とし、最低でも 7 名の構成員がいることが求められる。
登記された労働組合は一定の保護及び特権を付与される。
(3) 登記された組合の専従組合員の 3 分の 1 または 5 名、いずれか少ない
方を除いた他の者は基盤となる企業に実際に雇用されている者でなけ
ればならない。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “Trade Unions Act (労働組合法), 1926.”
<http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=192616>, accessed on 15 February 2007.
1.3.2
労働争議解決システムに関する法令
・
労働争議法、1947 年
(1) 本法は、労働紛争を、ストライキやロックアウトによる実力行使では
なく、話し合いによる調停及び解決を可能にするための道具及び手続
きを準備し、労使間の平和及び調和を確保することを目的としている。
この調停及び解決は、登記済の労働組合または労働者の協会の代表者
の法的権限を基にして行われる。
(2) 違法なストライキやロックアウトを食い止め、労働者をレイオフや解
雇から守ろうとしている。
(3) また集団交渉を重要視している。
(4) 労働紛争とは、雇用に関する、雇用以外の事項に関する、または雇用
条件に関する、雇用主同士、雇用主と被雇用者及び被雇用者同士の間
の紛争または意見の相異を指す。被雇用者が経営者に対し何らかの要
求をし、それが拒否された場合、またはその逆の場合に紛争が生じる。
雇用主とある特定の従業員との間の論争は一般的には労働紛争とはい
わない。しかしながら、多くの労働者が、ある特定の従業員と同じ問
題意識を持った場合には、それは労働紛争と称されることになる。
(5) 労働紛争は、調停、仲裁及び裁判により解決される。また、ストライ
キ及びロックアウトが合法とされるための前提条件が定められてい
12
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
る。
(6) 紛争を調停により解決するために、中央政府は調停員を任命する。調
停の努力が効を奏しなかった場合、政府はそれを裁判に委ねる。
(7) 裁判による裁定のために、労働裁判所、産業裁判所及び国家裁判所の
3 段システムがある。
(i)
労働裁判所は、雇用主による従業員の排除ないし解雇等の正当
性または合法性のような小さな紛争を取り扱う。
(ii)
産業裁判所は、賃金、手当、労働時間、有給休暇及び休日等の
より重要な事項を扱う。
(iii)
国家裁判所は、国家にとっての重要な問題及び複数の州の企業
に影響を及ぼす問題に取り組む。
(8) 従業員数 100 名以上の各企業の経営側及び労働側それぞれの代表者か
らなる作業委員会を設置することも規定している。作業委員会は、労
使間が協調し、良好な関係を維持するための方策を推進する。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “The Industrial Disputes Act (労働争議
法), 1947.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=194714>,
accessed on 15 February 2007.
1.4
労働保険関係法令
1.4.1
労働者災害補償保険
(1) 労働者補償法、1923 年
(a) 本法は、労働者が、雇用期間内に、死亡したり障害を負ったりした際
に、当該労働者及び/またはその扶養家族に対して救援措置を講じる
ものである。ただし、「労働者保険法、1948 年」(調査小項目 1.4.3
を参照)が適用される産業や工場は、その適用から除外される。
(b) 本法が適用される企業は、雇用期間内に労働者が事故にあい、死亡、
恒久全障害、一時的な全障害または部分障害を負った場合、補償を行
わなければならない。また、労働者が雇用期間内に職業病を罹患した
場合にも補償がなされなければならない。
(c) 怪我による後遺障害が 3 日以内の場合、怪我が当該労働者による故意
の安全規則無視に直接起因する場合、または疾病が労働災害や職業病
に直接起因していない場合には、雇用者はその補償を行う義務はない。
(d) 労働者が労働災害から被った損害を民事裁判所に提訴した場合には、
本法による補償金は支払われない。
(e) 障害の程度により補償額が定められている。生涯にわたる全障害並び
に死亡に対する最低補償額はそれぞれ 90,000 ルピー並びに 80,000 ル
ピーと定められている。
13
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
(e) 補償金は、当該労働者のいかなる債務との関連で差し押さえたり、充
当したり、相殺したりすることは認められない。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “The Workmen’s Compensation Act (労
働者補償法), 1923.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=192308>, accessed on
15 February 2007.
(2) 社会責任保険法、1991 年
本法は、有毒物質を取り扱うことにより被災した人に、応急の救済を与え
ることを目的とする社会補償保険である。人が(労働者は除く)事故によ
り死亡したり怪我を負ったりした場合、または物的損害を与えた場合、所
有者は規定に沿って救済措置を講じなければならない。
*出典:Government of India, Ministry of Labour, “The Public Liability
Insurance Act (社会責任保険法), 1991.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=1
99106>, accessed on 15 February 2007.
(3) 私傷(補償保険)法、1963 年
本法は、従業員が私傷を負った場合に、雇用者に補償させること並びに雇
用者がそのような責任に備えるための保険を創設するものである。
*出典:Government of India, Ministry of Labour, “The Personal Injuries
(Compensation Insurance Act (私傷 (補償保険) 法), 1963.” <http://indiacode.nic.in/
fullact1.asp?tfnm=196337>, accessed on 15 February 2007.
1.4.2
雇用保険
(1) 労働争議法、1947 年
本法に関しては、上掲の調査小項目 1.3.2 において取りあげたように、従
業員のレイオフや解雇並びに廃業に関しても規定がなされている。雇用保
険についても次のような規定がある。
(a) 本法で規定された事由のいずれかにより、労働者が雇用されなくなっ
た場合、その状態をレイオフと称する。レイオフを実施する場合、雇
用者は 7 日前までに事前通告をしなければならない。1 年以上勤続し
ている従業員をレイオフする場合には、雇用者はその従業員に補償を
行わなければならない。
(b) 従業員が、不行跡による免職、定年退職、雇用契約の不更新、長期間
にわたる健康不良及びそれ以外の理由により雇用契約を打ち切ること
を解雇と称する。解雇を実施に移す前に雇用者は管轄政府に規定の日
数以前に予告をし、事前に許可を得なければならない。解雇される従
業員は、勤続期間 1 年につき平均所得の 15 日分を補償金として受け
取る権利を有する。
(c) 本法はまた、企業の閉鎖に関する規定もしている。廃業しようとする
雇用者は、事前に政府の承認を取得し、従業員に対して一定の予告期
間を設け、上述の率による補償を行わなければならない。
14
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
*出典:Government of India, Ministry of Labour, “The Industrial Disputes Act
(Compensation Insurance Act (労働争議法), 1947.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.
asp?tfnm=194714>, accessed on 15 February 2007.
(2) 農村部における国家雇用保証法、2005 年
本法は、世帯の成人が、1 年を通して未熟練労働に自発的に従事する意思
がある場合、会計年度ごとに 100 日以上の賃金が保障された雇用を与え、
全国の農村部における家計の安全を図ろうとするものである。中央政府の
指示により、おのおのの州政府はそれぞれの州の農村部において、そのよ
うな雇用を与える責任がある。この制度に基づいて就業した者は、一般的
に支払われている日当額に相当する賃金を受け取る権利を有する。
*出典:Government of India, Ministry of Rural Department,
National Rural
Employment Guarantee Act (農村部における国家雇用保証法), 2005.
<http://nrega.
nic.in/rajaswa.pdf>, accessed on 15 February 2007.
1.4.3
健康保険
自営業者及び独立した専門職業をカバーする健康保険はない。以下に取りあげ
る労働者保険法は雇用労働者に適用される。
・
労働者保険法、1948 年
(a) 本法の主目的は、労働者に対して、医療上の救済及び疾病に対する現
金給付、雇用上の死亡事故や怪我(職業病を含む)に対する補償を包
括的に行うことにある。また、女性労働者に対する妊娠給付及び死亡
した労働者の遺族に対する年金給付も行う。
(b) 本法は、積立金による制度運営になっている。雇用者は、各賃金算定
期間における総賃金額の 4.75%を積み立てる。労働者は、賃金の
1.75%を積み立てる。ただし、ある賃金算定期間における賃金の 1 日
あたりの平均金額が 25 ルピーに満たない場合には、労働者の積み立
ては免除される。労働者の積み立ては、雇用者により賃金から源泉徴
収されることでなされる。
(c) 雇用者が積み立てを怠った場合、その不払い期間の長短により、年 5
〜25%の率で損害賠償をしなければならない。雇用者が労働者の積立
金を払い込まず、その結果、労働者が受給の権利を喪失したり、本来
より低い給付率になったりした場合には、労働者保険基金は労働者に
本来の率の給付を行い、雇用者からその差額または雇用者が払い込み
済の金額の 2 倍のいずれか大きい方の額を取り立てる。
(d) 本法は、10 名以上を雇用し、動力を使用して製造工程を営む、または
20 名以上を雇用して動力を使用せずに製造工程を営む工場すべてに
適用される。この条件を満たす工場は例外なく本法の適用を受け自由
意志による適用・不適用の選択はできない。
(e) 本法が適用される労働者は、妊産婦給付法及び労働者補償法は適用さ
れない。
15
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
(f)
対象となる企業に直接または労働者供給請負業者を介して雇用され、
賃金月額が 7,500 ルピーを超えない労働者は、本法が適用される。
(g) こ の 労 働 者 保 険 制 度 は Employee State Insurance Corporation
(ESIC:労働者保険機構)とよばれる独立組織により運営される。本
法の適用を受ける雇用者は ESIC に企業登録を行わなければならな
い。
(h) 本法による給付を受ける権利を有する労働者は、この制度による給付
を受けるために、所定の手続きにより保険制度に加入しなければなら
ない。すべての加入者及びその家族は、ESI 指定の病院、施療所及び
診療所で所定の医療を受けることができる。
(i)
ESIC は、加入労働者の健康及び福祉の改善、後遺障害を負ったり怪
我をしたりした人の障害回復訓練及び再雇用の諸施策を講じる権限を
有する。
(j)
企業の衛生状態の悪さが原因で労働者間に通常起こりえない程度の疾
病が発生していると ESIC が認定した場合、医療給付としての枠を超
えて支出した額を雇用者に請求することがある。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour,
Act (労働者保険法), 1948.
The Employees’ State Insurance
<http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=194834>,
accessed on 15 February 2007.
1.4.4
年金(pension)
(1) 労働者積立基金及び諸給付法、1952 年
(a) 本法は、労働者に対し、積立基金、家族年金及び積立方式の保険を準
備するものである。本法の適用は、現在のところ、従業員数 20 名以
上の企業に限定されている。また、次の事業体も除外されている。
(i)
従業員数 50 名以下の共同組合及び動力を使用しない業種
(ii)
設立後 3 年に満たない企業
(iii)
中央または州の政府が設立する事業体で、自身の積立基金や年
金の制度を別途に有するもの
(b) 政府は、規定が本法によるものより劣らない条件の独自の積立基金を
有する企業を、本法による制度のすべてまたは一部を不適用にするこ
とがある。
(c) 賃金月額が 5,000 ルピー以下の労働者は、この積立基金に加入するこ
とができる。しかしながら、満 60 歳に到達した時点で退会すること
になる。
(d) 本法には、次の 3 種類の制度がある。
(i)
労働者積立基金
(ii)
家族年金制度/労働者年金制度
(iii)
積立方式の保険
16
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
(e) 中央政府は、それぞれ別個の基金を設立し、雇用者及び従業員の双方
が積立金を払い込み、その資金により各制度を運営する。各制度の概
要は次の通りである。
(i)
労働者積立基金
1)
この制度は、労働者に積立基金制度を準備するものである。
この積立基金に払い込まれた資金は、特別積立制度に基づ
き、特定の証券に投資される。
2)
基金の長官は、中央政府が毎年あらかじめ発表する利率に
基づき、基金の加入者の口座に利息を払い込む。
3)
加入者は、次のような特定の理由があれば、自己の口座か
ら一定の限度内で引き出すことができる。
a)
生命保険の掛け金支払い
b)
住居の購入または建設
c)
住居の増築、改築、改造及び修理
d)
借入金の返済
e)
子女の結婚
f)
子女の高等教育
g)
自然災害による財産の被災
h)
勤務先の閉鎖、ロックアウトまたは疾病による緊急の
資金需要
4)
加入者が退職、定年退職または解雇された場合には、その
加入者は積立基金から全額を引き出すことが認められる。
雇用契約の期間満了以前の退職であっても、自己の積立に
雇用者の積立分及び利息を加えた全額の支払いを受ける権
利を有する。
5)
加入者が死亡した場合、その加入者が指定した受取人及び
/または法定相続人に支払われる。
6)
加入者の保有する残高は、債務の返済に充当されたり、裁
判所の判決により差し押さえられたりすることはない。
(ii)
「家族年金制度、1971 年」及び「労働者年金制度、1995 年」
1)
以前は、「家族年金制度、1971 年」が、労働者に家族年金
及び生命保険の給付を行っていた。現在では、この制度は
「労働者年金制度、1995 年」に包含されている。
2)
この新制度においては、労働者が 20 年以上勤続し、58 歳
で定年退職した場合、毎月年金を給付される。58 歳以前に
退職した場合には、退職年金が給付される。
3)
労働者が 10 年以上 20 年未満の勤続であった場合には、短
期労働年金が給付される。当該労働者が満 58 歳に達した
時点で給付が開始される。
4)
加入者が最短の 10 年勤続に満たずに退職あるいは定年退
17
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
職した場合、積立金を一定の率で払い戻してもらうことが
できる。
5)
加入者が雇用期間内に全障害を負った場合には、勤続年数
の長短にかかわらず、毎月の年金を受け取ることができる。
これに加え、毎月の寡婦年金、毎月の子女年金及び毎月の
遺児年金がある。
6)
労働者が、転職する場合、その理由のいかんにかかわらず、
加入期間、年金額算定基準所得及び年金額を記した証明書
を発行してもらい、新しい就職先で継続することができる。
(iii)
積立方式労働者保険、1976 年
この制度は、労働者に生命保険を給付するものである。加入者
が雇用期間内に死亡した場合、直近の 12 カ月または加入期間
の積立基金の平均残高のいずれか低い金額が有資格遺族に支払
われる。
(iv)
基金への積立(上記 3 種類の制度に共通)
1)
雇用者は、各従業員に関し、積立基金及び年金基金への次
の金額の積立を行わなければならない。
a)
従業員数 20 名未満の企業においては、基本給及び一
部手当の 10%
b)
従業員数 20 名以上の企業においては、基本給及び一
部手当の 12%
2)
積立金の一部は、年金基金に振り込まれ、差額は積立基金
に残る。
3)
雇用者も、自身の給与の 0.5%を積立方式保険基金に積み立
てなければならない。雇用者は、これに加えて、積立基金
の管理費用として、従業員賃金の 1.1%に相当する金額及び
積立方式保険基金の管理費用として、従業員賃金の 0.01%
に相当する金額を支払わなければならない。
4)
労働者は、雇用者の積立額と同一の金額を積み立てなけれ
ばならない。しかしながら、労働者は積立方式保険基金へ
の積立を行う必要はない。また、労働者が希望する場合は、
規定よりも高い率での積立をすることも認められる。しか
し、雇用者は、そのような高い率での積立を行う義務はな
い。
5)
中央政府もまた、加入者の所得の 1.6%に相当する金額を年
金基金に積み立てる。
6)
雇用者が積立金の支払いを怠った場合、規定の罰金が課さ
れる(1 年あたり 17〜37%)。また、支払いを要する期日
から実際に支払った日までの期間に対し、延滞金額に対し
1 年あたり 12%の利息を支払わなければならない。雇用者
18
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
が支払うべき積立金、損害賠償金及びその他は、当該雇用
者の財産の差し押さえ及び売却により回収することができ、
また逮捕もあり得る。
(v)
免除規定(上記 3 種類の制度に共通)
1)
従業員数 100 名以上の企業は、積立基金長官の承認を得た
後、民間の積立基金に加入することも許される。しかしな
がら、その民間の積立基金は、労働者にとって政府による
基金より不利なものであってはならず、従業員の過半数の
同意を得なければならない。基金に集められた資金は、所
定の証券、積立て及び民間金融機関/銀行の債権及び証券
に対し、所定の方法により投資される。
2)
従業員が、本法が適用されない企業に転職した場合、当該
労働者の希望があれば、積立基金の残高を転職先の口座に
移転しなければならない。本法が適用される企業に転職し
た場合には、当該労働者の希望により、積立基金の残高を
転職先の基金の口座に移転することができる。
(vi)
積立基金長官の責任
雇用者は、所定の積立金を、所定の期限内に、所定の方法によ
り払い込むことで義務を果たすことになる。労働者は、積立基
金長官から積立基金及び年金給付を受ける。給付の請求書に何
の瑕疵がないにもかかわらず、30 日以内に給付しない場合、長
官はその遅延に対し、個人的に責任を問われる。給付額に対し、
1 年あたり 12%の率の罰則的利息が課され、長官の給与から差
し引かれる。
*出典:Government of India, Ministry of Labour, “The Employees’ Provident
Fund & Miscellaneous Provisions Act (労働者積立基金及び諸給付法), 1952.”
<http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=195219>, accessed on 15 February 2007.
(2) 退職給付金法、1972 年
(a) 本法は、労働者が長期にわたりまじめに勤務を終えて退職する際に、
退職慰労金を給付することを目的としている。この制度は、工場、鉱
山、油田、大規模農場、港湾、鉄道及び自動車による運送業、会社及
び小規模商店に適用される。
(b) 勤続年数 1 年につき 15 日分の賃金相当額、6 カ月以上 1 年未満につ
いては同じ率で、350,000 ルピーを上限として慰労金が給付される。
季節営業の企業の場合、各季節につき 7 日分の賃金相当額が給付され
る。
(c) この制度より有利な、褒章に関する規定や契約がある場合でも、それ
を受給することを妨げられることはない。
*出典:Chopra, J. K., “Indian Economy,” 2007.
Government of India, Ministry of Labour, “Payment of Gratuity Act (退職給付金
19
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
法), 1972.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=197239>,
accessed on 15 February 2007.
1.4.5
その他、独自の保険や基金に関する法令
特筆すべきものはない。
1.5
職業能力開発法令
1.5.1
職業能力開発制度
・
徒弟制度法、1961 年
(1) 本法は、雇用者に、労働者に対する企業内徒弟訓練を施すことを義務
付けている。また、徒弟制度の条件を規定するガイドラインにおいて
も示している。
(2) 本法は、公的部門及び民間企業双方の雇用者に対し、指定された職種
においては、従業員数(未熟練労働者を除く)に対して一定の割合の
徒弟がいなければならないことを規定している。その割合は、稼動設
備、技術者数、徒弟訓練修了者数及びその他関連事項をもとに決めら
れる。また、この割合より多くの徒弟を受け入れることもできる。複
数の雇用者が共同でこれらの義務を果たすことも許されている。企業
を取り巻く環境の要請がある場合には、本法で規定する以上の割合の
徒弟に訓練を施すことを要求されることもある。
(3) 雇用者と徒弟との間で書面による徒弟契約を結び、その契約書は登録
されなければならない。徒弟が年少者の場合、保護者が代理で契約を
結ぶことができる。企業の性格により、中央政府の徒弟相談所または
地方政府の徒弟相談所のいずれかが徒弟契約の登録を受け付ける。
(4) 本法は、当初職人になるための訓練のみを想定していた。1973 年の改
定により、大学卒業者及び技術者(専門学校卒業者)も対象者に加え
た。本法は 1987 年に再度改定され、職業高校卒業者を技術(職業)
徒弟として加えた。
(5) 徒弟契約に基づいて徒弟訓練を受ける者を徒弟と称している。徒弟契
約及び所定の条件に基づき、産業あるいは企業において実施される一
連の訓練を徒弟訓練と称している。
(6) 本法の施行は、労働雇用省の雇用訓練局(Diretorate General of
Employment & Training:DGET)長の下にある徒弟訓練部の中央徒
弟相談所が全責任を有する。
(7) 本法により、Central Apprenticeship Council(CAC:中央徒弟委員
会)と称する、頂点に立つ法定の組織が創出され、政府に対して徒弟
訓練に関する政策事項、基準及び標準について助言する。CAC は、労
働組合省大臣を議長とし、人的資源省の州教育大臣とともに運営する
20
国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
三者組織である。雇用者、職業別労働組合及び産業・労働・技術教育
に関する豊富な知識・経験を有する人たちを代表する人々が委員にな
っている。
(8) 多くの州政府が、それぞれの州の徒弟委員会を設立し、それらの委員
会の構成は中央の組織に近似している。州徒弟相談所は、本法を実施
において、法の裏づけを得て設立された重要な組織である。
(9) 雇用訓練局は、中央政府の部局における徒弟制度の実施についても責
任を負っている。州政府の部局及び民間企業における徒弟制度につい
ては州徒弟相談所が責任を負っている。人的資源省は、大学卒業者、
技術者及び職業技術者徒弟に対する実施の責任を負っている。
(10) 本法では、職業技術者徒弟の訓練として次の 3 種類を想定している。
つまり、基礎訓練、実地訓練及び関連知識である。これらの詳細は次
の通りである。
(a)
基礎訓練
過去に組織的な訓練を受けたことのない徒弟は、基礎訓練コー
スを受講しなければならない。500 名以上の労働者を雇用する
企業は、基礎訓練のための施設を整えることが求められる。し
かしながら、従業員数がこれに満たない企業、または徒弟の数
が 12 名未満の場合は、基礎訓練センターまたは政府が運営す
る産業訓練研修所(Industrial Training Institute:ITI)に徒
弟を委託することも可能である。
(b)
実地訓練
雇用者は、その企業内に実地訓練コースを設けなければならな
い。実地訓練は、徒弟相談所に承認を受けたプログラムに沿っ
ていなければならない。
(c)
関連知識
企業内で実地訓練を受けている徒弟には、関連知識のコースを
与えなければならない。これは、徒弟が有資格熟練工になるた
めに不可欠な理論的裏づけとなる知識を与えることを目的とし
ている。
(11) さまざまな職業における資格の認定並びに徒弟訓練期間が本法におい
て規定されている。31 種の職群の下に、137 の職業が分類されている。
訓練期間は、職種により 6 カ月から 4 年間に及ぶ。
(12) 雇用者は、所定の手当を徒弟に支給しなければならない。これはやり
遂げた仕事に対しての手当ではない。徒弟はまた、成果に対する賞与
やその他の奨励制度に与えることはできない。
(13) 大学卒業者、技術者及び職業技術者徒弟に対しては、徒弟法はおもに
次のような内容になっている。
(a)
すべての科目について訓練期間は 1 年間
(b)
管理・監督者数及び訓練施設の実情に基づいて定員が決められ
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国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
る。
(c)
徒弟相談所及び当該企業の共同作業により訓練プログラムが準
備される。
(d)
手当額は、本法において定められている。
(14) 雇用者には、徒弟が徒弟訓練を終了した後、当該徒弟を雇用する義務
はない。同様に、徒弟には当該雇用者に雇用される義務はない。しか
しながら、徒弟契約の中に、徒弟訓練終了後に雇用する/されるとい
う条文がある場合には、その条文が効力を持つ。また、その雇用の期
間及び給与に関しては、徒弟相談所の介入により妥当なものに修正さ
れることもある。
(15) 徒弟は、労働者ではなく、訓練生とみなされる。したがって、労働関
連法令は徒弟には基本的には適用されない。しかしながら、工場法の
健康・安全・福祉に関する条文は適用される。同様に、労働者補償法
の徒弟に関する規定により、徒弟が徒弟期間内に怪我を負った場合に
は補償を受けることができる。行跡や規律に関しては、徒弟訓練を受
ける企業の規則類に従うものとする。
(16) 従業員数 250 名以上の企業においては、徒弟の基礎訓練に関して継続
的に発生する経費(手当の支払いも含む)は雇用者が負担する。従業
員数が手当ではない 250 名未満の場合、継続的に発生する経費は、一
定の限度額まで政府と雇用者で協同負担する。大学卒業者、技術者及
び職業技術者徒弟に対しては、継続的に発生する経費は雇用者の負担
となるが、手当については中央政府と雇用者とが折半して負担する。
(17) 雇用者は、各徒弟に訓練の進捗状況を記録しなければならない。徒弟
相談所は、徒弟訓練が行われている事業者に立ち入り、検査し、本法
の規定によりなされている記録を提出させる権限を有する。
(18) 特定の職種においては、指定カースト及び指定部族に対し、訓練の場
が確保されなければならない。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “The Apprenticeship Act (徒弟制度法),
1961.” <http://dget.nic.in/acts/welcome.html>, accessed on 15 February 2007.
1.5.2
職業能力評価制度
・
徒弟制度法、1961 年
調査小項目 1.5.1 の「徒弟制度法、1961 年」は、職業能力の評価につき、
次のような規定をしている。
(1) 雇用者、労働者、中央・州政府の 3 者で構成する National Council for
Vocational Training(NCVT:国立職業訓練審議会)が全インド職業
試験を実施する。訓練を終了した徒弟は、この試験を受けなければな
らない。この試験の合格者には国家徒弟認定書が授与され、政府及び
半官半民の部局及び組織に雇用されるための資格とみなされる。
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作成年月日:2007 年 2 月 15 日
(2) 大学卒業者、技術者及び職業技術者徒弟に対しては、徒弟訓練の終了
時に、人的資源省から証明書が授与される。
(3) 「徒弟制度法、1961 年」による、上記規定の他には、職業能力の評価
制度に関する法令はない。
*出典:Government of India, Ministry of Labour, Directorate General of Employment
& Training, “The Apprenticeship Act (徒弟制度法), 1961.” <http://dget.nic.in/acts/welco
me.html>, accessed on 15 February 2007.
1.6
その他の雇用労働関係法令
1.6.1
職業紹介制度
・
労働市場(求人情報公開の義務化)法、1959 年
本法は、求人情報を労働市場に公開することを義務付けている。すべての
公機関及び指定された民間企業は、空席を埋めるための採用を行う前に、
労働市場にその空席情報を開示しなければならない。これは、以下を除く
すべての企業に適用される。
(1) 農業及び園芸
(2) 家内労働
(3) 3 カ月未満の短期雇用
(4) 未熟練事務作業
(5) 国会の事務員
(6) 既存従業員の昇進または過剰従業員の吸収により空席を埋める場合
(7) 月額報酬 60 ルピー未満での雇用
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, Directorate General of Employment &
Training, “Employment Exchanges (Compulsory Notification of Vacancies) Act
(労働市場 (求人情報公開の義務化) 法), 1959. <http://dget.nic.in/acts/welcome.html>,
accessed on 15 February 2007.
1.6.2
外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労する者の労働許可条
件
外国の投資による企業に、海外から招聘される者は、商用ビザまたは雇用ビザ
が与えられる。商用ビザを申請するためには、インドに渡航する理由となる業
務及びプロジェクトの概要の説明が求められる。雇用ビザを申請するためには、
雇用条件の詳細及び給与などを含む雇用契約を提出しなければならない。180
日を超える有効期間のビザによりインドに入国する者は、インド入国後 14 日以
内に外国人登録局に登録することが求められる。180 日を超える有効期間の、商
用ビザ及び雇用ビザ以外の種類のビザで、インドに入国する者は、1 回の渡航の
インド滞在日数が 180 日を超えない場合には、登録を免除される。商用ビザを
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国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
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有する者は、その商用の正当性を示す資料を、合弁企業または提携企業の場合
にはインド政府の許可証のコピーを、商用・合弁企業・他の場合にはインド中
央銀行の許可証のコピーを提出しなければならない。雇用ビザを有する者は、
雇用者から送付された雇用条件書、当該インド企業との契約書のコピー、同社
からの要請書並びに同社の身元保証書を提出しなければならない。この身元保
証書は、同人のインド滞在期間中の活動及び行動に全責任を負い、この期間中
に好ましからざる言動が認められた場合には、同人を国外退去させることを保
障するものである。
*出典:Embassy of India, “外国籍の人の登録に関する要件.” <http://www.embassy-a
venue.jp/india/Forms?Service.xls>, accessed on 15 February 2007.
*出典:Government of India, Ministry of Home Affair, Bureau of Immigration,
India, “Registration Requirements for Foreign Nationals (外国籍の人の登録に関す
る要件).” <http://immigrationindia.nic.in/registration_requirements.htm>, accessed
on 15 February 2007.
1.6.3
海外から招聘され就労する者の加入義務のある制度
調査小項目 1.6.2 で述べた外国人登録局への登録が義務付けられている。
*出典:Government of India, Ministry of Home Affair, Bureau of Immigration,
India, “Registration Requirements for Foreign Nationals (外国籍の人の登録に関す
る要件).” <http://immigrationindia.nic.in/registration_requirements.htm>, accessed
on 15 February 2007.
1.6.4
その他雇用労働に関する法令
(1) 拘束労働制度(廃止)法、1976 年
(a) 本法により、社会的弱者を経済的・肉体的に搾取する結果になってい
た拘束労働を廃止した。飢えや極貧から逃れるために、いかなる労働
条件も受け入れざるを得なかった貧しく困窮した人たちに州が保護の
傘を広げることになった。
(b) 拘束的な労働の仕組みの基で労働及び服務が供されることを拘束労働
と称する。これは、債務者が債権者のために、一定の期間または無期
限に、賃金なしでまたは名目的に低い賃金で、強制的または半強制的
に労働または服務を提供する仕組みである。この仕組みにおける債権
者は、債務者またはその直系尊属・卑属に前もって金銭を与える。債
務者は、その前払金及び利息への代償として労働を提供する。その労
働ないし服務は、債務者本人が提供する他、家族の中の他のもの、ま
たは養われている人が提供する場合もある。
(c) 拘束労働システムの下では、拘束労働者はそのような雇用形態から逃
れる自由を奪われる他、生計の立て方や移動の自由も奪われるのが通
常である。また、自分の財産や労働の産物を、市場価格で提供したり
売却したりする権利も奪われる。このような状況は、陋習や社会的な
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国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
責務、または特定のカーストや部落に生まれたことより生み出され
る。
(d) 本法によって拘束労働が廃止されたことにより、すべての拘束労働者
は自由の身になり、拘束労働を提供する原因となったすべての負債か
ら開放された。
(e) 本法は、拘束労働を想定しての合意を結んだり前払い金を払ったりす
ることを禁止している。人が拘束労働者になるいかなる陋習や伝統も、
その正当性を失った。
(f)
拘束労働者の債務返済義務は消滅したものとされる。そのような債権
の回収を目指した訴訟やいかなる法的措置も講じることができなくな
った。拘束労働者の財産はすべてその抵当権を解除され、労働者の手
に戻されることになった。本法により開放された人は、その居住場所
から立ち退きを要求されることもない。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour, “Bonded Labour System (Abolition)
Act (拘束労働制度(廃止)法), 1976.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=1976
19>, accessed on 15 February 2007.
(2) 労働(特定企業に対する申告書免除及び登記の保護)法、1988 年
本法は、小規模及び零細企業に、労働関連諸法令で定められた多様な申告
書の代わりに、簡単な申告と登録申請を一緒にした書類で済ませることを
認めている。小規模企業とは、従業員数が 10 名以上 19 名以下を指す。零
細企業とは、従業員数が 9 名以下のものを指す。
2005 年 8 月に本法の改定案が国会に上程された。この改定法案は、労働
関連諸法令で定められた申告書や登録申請書の書式の簡素化を目指してい
る。また、記録の維持に対する妨害や記録維持の不履行に対し、一律の罰
則を課す改定も提案している。現行法では従業員数 19 名以下の企業が対
象になっているが、これを 500 名以下の企業に適用することを提案してい
る。この改定法案で提案されている簡素化された書式により、数多くの労
働法で要求されている登録手続きや申告書作成を雇用者が待ち望んでいた
とおり軽減することになる。登記内容はコンピュータで管理され、年次報
告書は電子メールでの提出が許されることになる。
*出典:Garg, Ajay, “Nabhi’s Labour Laws: 2006,” Nabhi Publications, New Delhi.
Government of India, Ministry of Labour & Employment, “Annual Report 2005 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>,
accessed on 15 February 2007.
Government of India, Ministry of Labour & Employment, “The Labour Laws
(Exemption from Furnishing Returns and Maintaining Registers by Certain
Establishments) Act (労働 (特定企業に対する申告書免除及び登記の保護)法), 1988.”
<http://labour.nic.in/act/acts/TheLabourLaws(ExemptionfromFurnishingandMaintain
ingRegistersbyCertainEstablishiments)Act.1988.doc>,
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国名:インド(調査大項目 1:雇用労働関係法令)
作成年月日:2007 年 2 月 15 日
accessed on 15 February 2007.
(3) 未登録企業の社会保障に関する法案
未登録企業労働者の福祉を確保するため、政府は法令の制定を提案してい
る。労働雇用省は、「未登録企業労働者法、2004 年」を起草し、その中で
安全、社会保障、健康及び福祉を目指している。国家諮問委員会は、
「未登
録企業労働者社会保障法、2005 年」と称する法案を提案している。未登録
企業における国家委員会がやはり 2 法案を提出した。つまり、1) 「未登録
企業労働者(労働条件及び生活向上)法、2004 年」及び 2) 「未登録企業
労働者社会保障法、2005 年」である。これらの法案すべてを、州政府、中
央労働組合、経営者団体及び NGO 等の助言を受けながら、労働雇用省が
検討している。2005 年 12 月 9〜10 日に開催された、第 40 回インド労働
委員会で採決された通り、1 本の統合された法案にまとめられることにな
っている。この目的のために、三者作業委員会が設立された。国会でこの
法律が成立すれば、未登録企業労働者に社会保障及び福祉を与えることに
なる。
*出典:Government of India, Ministry of Labour & Employment, “Annual
Report 2005 - 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>,
accessed on 15 February 2007.
(4) 労働者福祉基金
労働雇用省は、ビーディ(インド特有のタバコ)、映画及びその他炭鉱以外
の鉱山労働者のために、5 種類の福祉基金を運営している。これらの労働
者の福祉のために、次の 5 本の法律に基づいてこれらの基金が設立されて
いる。
(a) マイカ(雲母)鉱山労働者福祉基金法、1946 年
(b) 石灰石及び白雲石鉱山労働者福祉基金法、1972 年
(c) 鉄鉱石、マンガン鉱石及びクロム鉱石鉱山労働者福祉基金法、1976
年
(d) ビーディ(インド特有のタバコ)労働者福祉基金法、1976 年
(e) 映画産業労働者福祉基金法、1981 年
これらの法令により、当該労働者の福祉のための施策や施設にかかる費用
を中央政府が基金から支出することを規定している。健康、社会保障、教
育、住居、余暇及び飲料水供給に関する多様な福祉制度がこれらの法律に
より整えられている。
*出典:Government of India, Ministry of Labour & Employment, “Annual
Report 2005 - 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>,
accessed on 15 February 2007.
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2. Embassy of India, “外国籍の人の登録に関する要件.” <http://www.embassy-avenu
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3. Garg, Ajay, “Nabhi
s Labour Laws: 2006 (ナブヒ版労働法 2006 年版),” Nabhi
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に関する法律), 1942.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=194218>, accessed
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5. Government of India, Ministry of Home Affair, Bureau of Immigration, India,
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件).” <http://immigrationindia.nic.in/registration_requirements.htm>, accessed on
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(拘束労働制度(廃止)法), 1976.
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Abolishment) (契約労働(規制及び廃止)) Act, 1970.” <http://labour.nic.in/act/act
s/contractlabour.doc>, accessed on 15 February 2007.
9. Government of India, Ministry of Labour, “Industrial Employment (Standing
Order) Act (産業雇用(基本)法), 1946.” <http://labour.nic.in/act/acts/IndustrialE
mploymentAct.doc>, accessed on 15 February 2007.
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働者保険法), 1948.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=194834>, accessed
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on Insurance Act (私傷 (補償保険) 法), 1963.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.as
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者補償法), 1923.” <http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=192308>, accessed on
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& Training, “The Apprenticeship Act (徒弟制度法), 1961.” <http://dget.nic.in/ac
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Training, “Employment Exchanges (Compulsory Notification of Vacancies) Act (労
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Report (年次報告書) 2005 - 2006.” <http://labour.nic.in/annrep/annrep2005.htm>,
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(Exemption from Furnishing Returns and Maintaining Registers by Certain
Establishments) Act (労働 (特定企業に対する申告書免除及び登記の保護)法), 1988.”
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