2013 年 2 月 8 日 近 畿 大 学 「大学生の情報機器利用に関する調査」(2012 年度) 調査テーマ:「大学生の情報機器利用に関する調査」(2012 年度) アンケート回答期間: z 2012 年度前期 2012/05/02~05/21 z 2012 年度後期 2012/12/11~12/20 概要 アンケート回収件数: z 前期 486 件 z 後期 172 件 z ※状況変化を正確に把握するため、上記のうち 2012 年度前期および後期の双方に回答した学生 のデータ(113 件)を抽出して分析 調査実施方式:Web アンケート(記名式) 調査実施対象: z 近畿大学経営学部 コンピュータ概論および情報倫理を受講する1年生 調査実施者:近畿大学経営学部 補足 z 准教授 鞆 大輔(経営情報・情報倫理) 学生へのアンケート項目では 「物理キーボードを持つモバイル機器」をノートPC、 「通話機能を持たないタブレット状機器」をタブレットPC、 「通話機能を持つタブレット状機器」をスマートフォン、 ――とそれぞれ定義したうえで回答させています 各機器の所有状況については学生自身が専有している機器を対象としています 関連資料: z 「大学生の携帯情報端末の利用に関する調査」 (2011 年度) http://www.kindai.ac.jp/news_event/pdf/120118mobile.pdf 1 「大学生の情報機器利用に関する調査」(2012 年度) 1. 総括 (1). 全体的な特徴 2012 年度の調査結果ではスマートフォンと携帯電話の使用状況、タブレット PC に関する意識 に大きな変化が見られました。特にスマートフォンは学生生活にとって必要不可欠な機器とし ての地位を固めつつあることから今後、大学生を対象とする ICT 化は携帯電話やパソコンでは なくスマートフォンを中心に検討する必要があると考えられます。 (2). 所有および使用状況 ① 大学生の携帯電話利用率は 21%、スマートフォンの利用率は 94%と大差が付く結果に。 z 携帯電話については所有率も半数を割り込み、完全に退潮傾向。 z スマートフォンは使用者、購入予定者を併せると 98%の学生に支持されており、大学 生の持つ「携帯情報端末」はほぼスマートフォン一色に。 z パソコンの使用率ではノート PC(69%)がデスクトップ PC(30%)を圧倒。 z タブレットPCの使用率は 7%と少数派であるが、2012 年後期の新機種発売ラッシュ に心引かれたと思われる学生も。 ② 機能およびサービスの利用 z メール、Web 閲覧の利用率は 100%に。 z 後期にほとんどの機能で利用率が増加しており、大学生活を通じて新しいことに取り 組むようになった学生の姿が伺える。ただしラジオ・テレビの視聴については例外的 に減少。 z スマートフォンは全ての機能・サービスの利用率が高く、学生がスマートフォンを駆 使していることが伺える。 z デスクトップ PC は所有者こそ少ないが利用実態は多岐にわたり、所有者がデスクトッ プ PC を活用していると考えられる。 z ③ 携帯電話でのサービス利用は激減、利用面でのスマートフォンへの移行はほぼ完了か。 類似する端末への意識 z 所有状況と同じく、ノート PC とスマートフォンへの意識が高い結果に。 z デスクトップ PC は所有率の低さに反して存在意義を感じている学生が多い。 z 「タブレット PC とスマートフォン」、 「スマートフォンと携帯電話」の組み合わせにお いて大きな意識変化があった。前者は「両方必要」と感じる学生が減少、後者は携帯 電話に必要性を感じない学生が大幅に増加。 ④ OSのシェアについて z iOS が 57%、Android が 41%と iOS 優勢。ただし市場シェアと比較すると大学生の間 では iOS の支持は若干低め。 2 テーマごとの分析 (1). 所有および使用状況について 情報機器の所有および使用状況 (n=113) デスクトップ PC 前期 ノートPC 0% 前期 携帯電話 スマートフォン タブレットPC 2. 10% 20% 35 34 後期 後期 60% 70% 31 8 0 80% 20 20 14 21 12 31 90% 12 17 6 23 3 14 2 78 40 65 85 後期 2 106 前期 40 24 100% 42 44 78 前期 後期 50% 16 15 後期 前期 40% 66 所有&使用 z 30% 20 5 4 2 所有&非使用 64 67 非所有&欲しい 非所有&欲しくない 学生の使用率が高い機器はスマートフォン(94%)、ノートPC(69%)、使用率が低い 機器はタブレットPC(7%)、携帯電話(21%)となりました。 z 前期から後期への変化としてはスマートフォン(+19 ポイント)、ノートPC(+11 ポ イント)の利用増、および携帯電話(-14 ポイント)の利用減において顕著な変化が見 られます。特にスマートフォンに対する志向は「非所有であるが欲しい」と回答した 学生を含めると 98%と極めて高い状況です。 z 2011 年度に実施した調査(http://www.kindai.ac.jp/news_event/pdf/120118mobile.pdf) では1年生のスマートフォン所有率が 57%であったことから考えると、この1年間で 大学生の間にスマートフォンが急激に普及したことがわかります。 z なおスマートフォンが不要だと考えている学生の意見としては「携帯電話で十分であ る」 「多機能さに魅力を感じない」等の回答がありました。ただしこれらの学生も学生 間のコミュニケーションが LINE 等のスマートフォンアプリに移行しつつあることか ら、携帯電話にある程度の不便さを感じている様子が伺えます。 z 携帯電話の所有率には大きな変化はありませんでしたが、利用率は 2011 年度調査の 61%から 24%まで急落しており、学生の携帯電話離れが加速していることが伺えます。 z また携帯電話を所有している学生のほとんどはスマートフォンとの2台持ちであるこ とから、今後使用していない携帯電話端末の解約が行われ、所有率がさらに低下する 3 ことが予測されます。 z デスクトップPCについてはノートPCと比較すると所有率が低く、多くの学生にと っては「自分専用のパソコン」がノートPCであることが推測されます。 z タブレットPCについては所有率が低く、欲しくないと回答している学生が大多数で すが、前期から後期への間に所有・使用し始めた学生(+4 ポイント)や非所有で購入 意志を持つ学生(+8 ポイント)が増加するなど、タブレットPCに対する興味が増し ている様子がうかがえます。この変化について期間中に iPad mini や Nexus7、 Windows8 搭載機種等の新機種が相次いで発表され、タブレット PC がメディアに大き く取り上げられたことも影響しているのではないかと考えられます。 (2). 情報機器で利用する機能およびサービスについて 情報機器で利用する機能・サービス (利用率 n=113) 0% 10% 20% 30% Web閲覧 検索 掲示板 音声通話 SNS ゲーム メディア視聴 ショッピング 60% 70% 80% 90% 100% 63% 54% 70% 71% 前期 z 50% 100% 100% 100% 100% 99% 99% 88% 96% 85% 91% 92% 94% 77% 88% 97% 99% 電子メール ラジオテレビ 40% 後期 各種情報機器で利用している機能やサービスについての調査結果では電子メールと Web 閲覧の利用率が 100%となり、全ての学生が何らかの形で ICT を日常的に利用し ていることがわかりました。 z 他の機能やサービスについても軒並み高い利用率であり、また前期よりも後期におい て多くの機能の利用率が向上していました。これは大学生になったことで高校生時代 よりも多くのことに取り組む機会を得た学生の姿を反映したデータではないかと考え られます。 z 一方でラジオやテレビの視聴については調査項目中唯一後期に利用率が低下しており、 ワンセグや地デジ対応 PC、radiko のようなサイマル放送等、情報機器を利用した視聴 を可能とする環境整備が進んでいる状況とは逆行した結果となっています。 4 情報機器で利用する機能・サービス (機器別・複数回答) 前期 後期 20 26 27 前期 後期 23 31 音声 通話 前期 後期 8 9 16 0 19 1 前期 後期 9 8 ラジオ テレビ ショッ ピング メディア 視聴 ゲーム 13 1 14 0 前期 後期 3 11 9 18 78 12 64 13 3 35 36 41 3 91 2 36 0 17 67 2 59 0 3 88 3 19 18 3 98 デスクトップPC z 14 93 87 22 4 82 69 48 20 15 73 2 2 20 23 200 3 94 2 1 180 21 72 1 1 160 9 3 70 20 25 140 28 64 26 32 120 101 1 53 9 9 6 10 100 70 前期 後期 前期 後期 80 56 15 15 前期 後期 60 79 4 34 22 11 15 前期 後期 前期 後期 40 SNS 掲示板 調査検索 Web 閲覧 メール 0 7 23 3 1 ノートPC 39 3 タブレットPC スマートフォン 携帯電話 機器別の利用状況では各機能共にスマートフォンでの利用が多いことが判りました。 特にメールについては PC を用いた利用よりもスマートフォンでの利用が主となって おり、大学生にとって電子メールは自宅で腰を据えて利用するものではなく、モバイ ルでの利用が前提となるリアルタイムコミュニケーションツールとなっていることが 伺えます。 z PC の利用では後期に使用率が増加したノート PC は使用者増に比例する形でサービス の利用率も増加しています。一方で所有率・使用率が微減となったデスクトップ PC で は使用率の減少とは逆にサービス利用率向上が見られます。このことから、デスクト ップ PC の使用者は少数派であるものの、より多方面で PC を駆使する学生ではないか と推測されます。 z タブレット PC については機能やサービスの利用率が極めて低い結果となりました。こ れはタブレット PC がスマートフォンとの類似性が高い機器であり、スマートフォンを 日常的に活用している学生にとってはタブレット PC に独自の利用方法を見いだせて いないことを示すデータであると思われます。 z 携帯電話については全体的な使用率の低下傾向よりもさらに各機能の利用状況が低下 していることが伺えます。2011 年度の調査では多くの学生が各種機能やサービスを携 帯電話で利用していました(メール 89%、ブラウジング 57%、メディア視聴 55%等) 5 が、今回の調査ではこれらの機能の利用についてもほぼスマートフォンに移行してい る様子が伺えます。 (3). 類似した機器に対する意識 z 類似した機器に対する意識調査は「デスクトップ PC とノート PC」「ノート PC とタ ブレット PC」 「タブレット PC とスマートフォン」 「スマートフォンと携帯電話」の4 組についての調査を実施しています。 デスクトップPC(A) と ノートPC(B) (n=113) 0% 前期 20% 24 後期 60% 80% 50 20 BがあればA不要 100% 36 49 AがあればB不要 z 40% 3 40 どちらも必要 4 どちらも不要 デスクトップ PC とノート PC との比較では使用率調査と同じく前後期共にデスクトッ プ PC よりもノート PC を重視する学生が多い結果となりました。一方で後期には 35% の学生が両方共に必要であると回答しており、学生自身の PC 所有率と比較するとデス クトップ PC に対する意識が高いことが判ります。これは自分で所有していないものの、 大学内のコンピュータ教室に設置されたデスクトップ PC 等を利用する機会があるこ とから、デスクトップ PC の利用について肯定的に捉えている学生が多いのではないか と思われます。 z またどちらも不要であると回答している学生はいずれも携帯電話・スマートフォン以 外の機器は不要と回答しており、コンピュータの利用に消極的な学生の存在が伺えま す。 ノートPC(A) と タブレットPC(B) (n=113) 0% 20% 40% 前期 80% 82 後期 67 AがあればB不要 z 60% BがあればA不要 100% 12 18 どちらも必要 17 24 2 4 どちらも不要 ノート PC とタブレット PC の比較については、前期には 72%であった「ノート PC の みがあれば良い」という意識が後期には 59%まで減少している点に注目しました。 z 機器の使用率調査からは多く学生にとってノート PC はセカンド PC ではなくメイン 6 PC であることが伺えますが、メイン PC として持ち歩きを前提としない大型ノート PC を利用している学生にとっては、持ち運びが容易なタブレット PC への興味が高ま りつつあるのではないかと推測されます。 タブレットPC(A) と スマートフォン(B) (n=113) 0% 前期 20% 3 後期 60% 78 7 80% 100% 29 71 AがあればB不要 z 40% 32 BがあればA不要 どちらも必要 3 3 どちらも不要 タブレット PC とスマートフォンとの比較ではスマートフォンを支持する学生が圧倒 的に多い(62%)結果となりました。しかし前項のノート PC との比較と同様、この項 目でもタブレット PC に対する意識の高まりが感じられるような変化が見受けられま す。 z また 2011 年度の調査ではタブレット PC とスマートフォンを共に必要であると回答し た学生が大多数(87%)でしたが、今回の調査では両方を必要と考えている学生が激 減(28%)しています。これについてはタブレット PC に関する情報が周知されたこと によって、多くの学生がタブレット PC とスマートフォンが同じ機能を持つ機器である と気付いたとことを意味していると思われます。 スマートフォン(A) と 携帯電話(B) (n=113) 0% 20% 前期 60% 91 後期 BがあればA不要 80% 100% 8 97 AがあればB不要 z 40% 14 0 2 11 3 どちらも必要 どちらも不要 スマートフォンと携帯電話の比較については使用率同様、圧倒的にスマートフォンが 支持される結果(85%)となりました。しかし一部(9%)には携帯電話とスマートフ ォンの両方が必要であると考えている学生や、携帯電話を主体と考えている学生(1%) もおり、学生が携帯電話を完全に手放すまでにはまだ時間が掛かるのではないかと思 われます。 z また一部の学生が学生間の主たるコミュニケーションツールであるスマートフォンと 携帯電話の両方を必要無いと感じるようになった点については、何らかの追跡調査を 行う必要があるのではないかと思われます。 7 (4). 利用しているスマートフォン・タブレットPCのOSについて(後期のみ) スマートフォン・タブレットPCのOS (n=109) 1% 1% iOS 41% Android Windows系 57% z その他 学生が利用しているスマートフォンおよびタブレット PC の OS シェアについては iOS が 57%、Android が 41%となりました。傾向としては iOS がやや優勢ですが、日本国 内のスマートフォンシェアと比較すると OS 間のシェアの差は低いと言えます。 z また、この結果から学生が個人所有している携帯情報端末を大学教育に活用する場合 には iOS と Android の双方に対応したアプリケーションの開発が必要となることがわ かります。 z なお参考までに、IDC の調査による OS の全世界シェアでは Android が 75%、iOS が 15%(2012/3Q)、カンター・ジャパンの調査による日本国内のシェアは Android が 32%、 iOS が 66%(2012/4Q)となっています。 8
© Copyright 2024 Paperzz