シンポジウム 2 : 胎児治療の臨床試験をめざして 胎児頻脈性不整脈の治療 桂木 真司 第10回 日本胎児治療学会 国立循環器病研究センター 周産期・婦人科 「日本の胎児治療の現状とこれから」ワークショップ講演 『胎児頻脈性不整脈の治療』 国立循環器病研究センター 1. 頻脈のスクリーニング法について 周産期・婦人科 桂木真司 1. 頻脈のスクリーニング法について 胎児頻脈(180 bpm 以上)を認めた場合 ① 頻脈性不整脈 ② 母体発熱、子宮内感染 ③ 胎児 胎児頻脈(180bpm 以上)を認めた場合①頻脈性不整脈 ②母体発熱,子宮内感染 ③胎児 低酸素血症の 3 つの背景が考えられます。頻度からすると ②(全妊娠の 5%)>③(全妊娠の 0.5%)≫ 低酸素血症の 3 つの背景が考えられます.頻度からすると②(全妊娠の 5%)>③(全妊娠 ①(全妊娠の 0.05%)である事を念頭に置いてください。① では胎児心臓の 4CV における M モード法 の 0.5%)≫①(全妊娠の 0.05%)である事を念頭に置いてください.①では胎児心臓の4 で胎児心房と心室の頻度を計測します。 CV における M モード法で胎児心房と心室の頻度を計測します. 2. 頻脈性不整脈の診断 2. 頻脈性不整脈の診断 胎児診断は現時点では胎児超音波法検査 胎児診断は現時点では胎児超音波法検査による診 による診断のみです(一部の施設では心 断のみです(一部の施設では心磁図による検討も可 磁図による検討も可能) .主役は M モー 能) 。主役は M モード法とドプラ法です。 ド法とドプラ法です. ■ M モード法 ■M モード法 M モード法では、四腔断面において、心房と心 M モード法では,四腔断面において, 室の両方を通る位置にカーソルを設定し、両方の収 心房と心室の両方を通る位置にカーソル 縮を同時記録します。 を設定し,両方の収縮を同時記録します. ■ドプラ法 ■ドプラ法 上大静脈(SVC)と上行大動脈(AA)の同時記 上大静脈(SVC)と上行大動脈(AA) 録により、心電図における P 波と QRS 波に相当さ の同時記録により,心電図における P せ診断します。上室性頻拍では、心室収縮(V 波) 波と QRS 波に相当させ診断します.上 から次の心房収縮(A 波)までの間隔が短い short 室性頻拍では,心室収縮(V 波)から次 の心房収縮(A 波)までの間隔が短い VA と、間隔が長い long VA に分類されます。Short shortWPW VA と,間隔が長い long VA に分 VA の多くは 症候群に代表される側副伝導路 類されます.Short VA の多くは WPW によるリエントリーによるものと考えられます。 症候群に代表される側副伝導路によるリエントリーによるものと考えられます.Long VA の場合,心拍数が徐々に増加する warm up 現象,徐々に減少する cool down 現象も含めて 異所性心房頻拍(AT)に相当すると評価します. 27 ─ ─ Long VA の場合、心拍数が徐々に増加する warm up 現象、徐々に減少する cool down 現象も含めて異所 第10回 日本胎児治療学会 性心房頻拍(AT)に相当すると評価します。 「日本の胎児治療の現状とこれから」ワークショップ講演 3. 頻脈性不整脈の胎児治療 3. 頻脈性不整脈の胎児治療 厚生労働省科学研究『胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈投与に関する臨床試験』の治療法 厚生労働省科学研究『胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈投与に関する臨床試 (※)を紹介します。対象疾患は(1)上室性頻脈(SVT) 、(2)心房粗動(AFL)です。 験22 』の治療法 (※) を紹介します. 対象疾患は(1)上室性頻脈(SVT),(2)心房粗動(AFL)です. ※平成 年より開始 : 全国 12 施設で高度医療を用いた有効性と安全性を検証する研究です。対象 ※平成 22 年より開始:全国 12 施設で高度医療を用いた有効性と安全性を検証する研究で 症例がある場合は[事務局]国立循環器病研究センター 桂木真司までご連絡下さい。 第10回 日本胎児治療学会 す.対象症例がある場合は[事務局]国立循環器病研究センター 「日本の胎児治療の現状とこれから」ワークショップ講演 桂木真司までご連絡下さい. 3. 頻脈性不整脈の胎児治療 厚生労働省科学研究『胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈投与に関する臨床試 験』の治療法(※)を紹介します.対象疾患は(1)上室性頻脈(SVT),(2)心房粗動(AFL)です. ※平成 22 年より開始:全国 12 施設で高度医療を用いた有効性と安全性を検証する研究で す.対象症例がある場合は[事務局]国立循環器病研究センター 桂木真司までご連絡下さい. 4. 症例 4. 症例 妊娠 31 週で胎児頻脈にて紹介。胎児心房 : 心室 =480 : 240 bpm で心房粗動と診断。[患者説明]心室 レートが早く胎児水腫が発症する恐れがあり。経母体的に抗不整脈薬を投与し胎児の不整脈治療を行う ことができる事を説明。不整脈が治療されず、胎児水腫が進行したり、母体の薬剤副作用が出現する場 合は帝王切開となる可能性を説明。妊娠 39 週で経膣分娩 2,978 g 男児を出生した。新生児には一度も不 整脈が出現しなかった。発育発達良好である。 4. 症例 妊娠 31 週で胎児頻脈にて紹介.胎児心房:心室=480:240bpm で心房粗動と診断.[患者説明] 心室レートが早く胎児水腫が発症する恐れがあり.経母体的に抗不整脈薬を投与し胎児の 不整脈治療を行うことができる事を説明.不整脈が治療されず,胎児水腫が進行したり, 母体の薬剤副作用が出現する場合は帝王切開となる可能性を説明.妊娠 39 週で経膣分娩 2978g 男児を出生した.新生児には一度も不整脈が出現しなかった.発育発達良好である. 2 妊娠 31 週で胎児頻脈にて紹介.胎児心房:心室=480:240bpm で心房粗動と診断.[患者説明] 心室レートが早く胎児水腫が発症する恐れがあり.経母体的に抗不整脈薬を投与し胎児の 28 ─ ─ 不整脈治療を行うことができる事を説明.不整脈が治療されず,胎児水腫が進行したり, 母体の薬剤副作用が出現する場合は帝王切開となる可能性を説明.妊娠 39 週で経膣分娩
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