な役割を果たしています。 人はなぜ伝統歌謡をうたい続けるのか? このシンポジウムでは、この根本的な問題に 〈地域の創造〉という視点からアプローチしてみたいと思います。 そのために私たちは、世界中から 4 つの地域に協力をお願いしました。まずは地元鹿児島 県から奄美大島、北米大陸からカナダのニューファンドランド、アジアから隣国の韓国の全 羅南道、そしてヨーロッパからはフランスのブルターニュです。 いずれも一時は衰退の危機にあった地域の伝統歌謡を復興させ、各々のアイデンティティ の支えにまで高めることに成功した地域です。 さらに、歌ではありませんが、「新しい伝統の創造」の一例として、アフリカのギニアか ら鹿児島県三島村に伝えられたジャンベにも登場していただきます。 各地域から招待された代表的な歌手やミュージシャンの演奏と、専門の研究者たちによる 日時 2011 年 [ 11 : 30 開場] 月 12 日(月) 12 : : 12 00 ~ 18 00 会場 鹿児島大学 稲盛会館(郡元キャンパス内) [プログラム] 坪山豊 + 皆吉佐代子、桑原季雄 講演 2・カナダ・ニューファンドランド ジム・ペイン、フィリップ・ヘイワード、森野聡子 講演 3・ギニア+三島村 講演 4・韓国・全羅南道 李允先、金惠貞、崔鈆植 講演 5・フランス・ブルターニュ ヤン=ファンシュ・ケメネール、梁川英俊 日時 2011 年 最後にひとつお知らせです。12 月 13 日夕に同じ出演者によるコンサートを開催します。 カナダ ニューファンドランド ギニア + 三島村 韓国 全羅南道 フランス ブルターニュ ─ パネル・ディスカッション てくれるのみならず、現代にあって伝統音楽を継承する意義とその地域への影響を考えるた 緒に考えてみたいと思います。 奄美大島 徳田健一郎 + みしまジャンベスクール OB、西村知 2 日目│〈コンサート〉 たかが歌、されど歌。歌は地域を救えるか?─このシンポジウムを通して、皆さんと一 文化庁文化力プロジェクト 参加事業 講演 1・奄美大島 解説やパネルディスカッションは、それぞれの地域の歴史や文化について多くのことを教え めの貴重な機会になることでしょう。 平成 年度鹿児島大学特別経費プロジェクト います。また奄美諸島では、島唄や八月踊りなどの伝統歌謡が継承され、地域のなかで重要 1 日目│〈シンポジウム〉「伝統歌謡の継承と地域の創造」 ﹁学生一人一人の 『人文系共通技能』を伸ばす学士課程の構築」関連事業 私たちの鹿児島県には「おはら節」や「はんや節」をはじめとしていろいろな歌が残って 伝統歌謡 の継承 と 地域 の創造 古い歌が忘れられずにうたい継がれているということは、実は大変なことなのです。 人がうたうのをやめれば消えてしまう、歌。 伝統歌謡の継承には、このように歌の力のみならず、他のさまざまな力が働いています。 一時は衰退の危機にあった地域の伝統歌謡を復興させ、 は、それを残したいと望む人たちがいるからにほかなりません。 各々のアイデンティティの支えにまで高めることに成功した 妨げる要因にはこと欠きません。歌は放っておいても残るものではないのです。歌が残るの 奄美大島、ニューファンドランド、ギニア +三島村、 やめれば消えてしまいます。とくに地方の場合、住民の高齢化や人口の減少など歌の継承を ─ もちろん、伝統歌謡はどの地域にも残っているわけではありません。歌は人がうたうのを 五つの地域 おいて、そうした古い歌をうたい続けることにはどのような意味があるのでしょうか? を事例に、現代にあって伝統音 楽 を 継 承 す る 変化します。そのなかで、長いあいだ人々にうたい継がれているのが伝統歌謡です。現代に ─ 俗に「歌は世につれ世は歌につれ」と言います。たしかに歌の流行は世の移ろいとともに 全羅南道、ブルターニュ ─ 歌は地域を救えるか? 意義と、その地域への影響を考える。 歌は地域を 救 えるか? 伝統歌謡の継承と地域の創造 23 12: 月 13: 日(火) [ 18 : 00 開場] 18 30 ~ 21 00 会場 鹿児島大学 生協教育食堂「エデュカ」 (郡元キャンパス内) 鹿児島大学郡元キャンパスへのアクセス JR 鹿児島中央駅から市電「工学部前」下車(徒歩 3 分)/ シンポジウムでは時間の都合で演奏できなかった多くの歌や音楽が聴けるチャンスです。入 市内路線バス 11・20 番系統ほか「法文学部前」下車(徒歩 5 分) 場無料で予約の必要もありませんので、こちらも振るってご参加ください。 (文責 梁川英俊) *駐車場は有りますが、できるだけ公共の交通機関をお使いください。 参加費無料(事前予約不要) The Handing-Down of Traditional Folk Songs and the Creation of Local Culture 主催 鹿児島大学法文学部人文学科 [連絡先]鹿児島大学法文学部人文学科 (総務係) 〒 890-0065 鹿児島市郡元 1-21-30 tel: 099-285-7517 e-mail: [email protected](梁川) The Handing-Down of Traditional Folk Songs and the Creation of Local Culture 奄美大島宇検村出身。昭和 55 年、第 1 回奄美民謡大賞で優勝して以来、奄美島唄の第一人者として広く 活躍。伝統的な島唄を守る一方で、「ワイド節」や「綾蝶」などの新作島唄を作曲して人気を博す。海外 の民謡歌手との共演も多く、奄美島唄を国内外に紹介した功績は大きい。島唄の指導者として唄者の育成 にも尽力している。元ちとせ、中孝介からも敬愛され、2011 年 6 月には渋谷 C. C. Lemon ホールでジョ イントコンサートを行った。本業の船大工としても有名。鹿児島県芸術文化奨励賞、第 20 回伝統文化ポー ラ賞、南日本文化賞、南海文化賞、鹿児島県民表彰を受賞。CD に「坪山豊傑作集」(セントラル楽器) などがある。 皆吉佐代子[Minayoshi Sayoko] 奄美大島宇検村出身。坪山豊氏に師事して島唄を学ぶ。平成 16 年、「嘉徳なべかな節」で奄美民謡大賞 を受賞。郷里を同じくする坪山豊氏の息の合った囃子としてもよく知られている。 桑原季雄[Kuwahara Sueo] 奄美大島宇検村出身。筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士後期課程退学。1990 年 5 月に鹿児島大学 教養部講師に着任。2001 年より鹿児島大学法文学部教授。東南アジアの農村社会の社会変化やミクロネ シアや南西諸島など島嶼社会のグローバル化に関する研究、特に近年はトカラ列島や奄美群島で民謡、闘 牛、開発、地域振興等のテーマで、単独および共同研究を多く手掛け、島嶼学の構築を目指す。主要論文 には「奄美開発再考」(『奄美戦後史』南方新社、2005)、Hayward 氏との共著で Transcience and Durability: Music Industry Initiatives, Shima Uta and the Maintenance of Amami Culture (Perfect Beat, 2008) がある。 カナダ ニューファンドランド ジム・ペイン[Jim Payne] カナダ東部ニューファンドランド出身。ニューファンドランドの伝統音楽の演奏者・収集家。とくに伝統 的な船上作業歌(sea shanties)の採集および演奏で知られる。歌手としての活動のほか、ギター、アコーディ オン、マンドリン、ティン・ホイッスル、ヴァイオリンを演奏。俳優、作家、ステップダンサーとしても活動。 作曲、音楽監督、演劇・ドキュメンタリー制作も手がける。カナダ、アメリカ、ヨーロッパ、日本、オー ストラリアでコンサートツアー。ラジオ、テレビへの出演も多い。1989 年に自主レーベル SingSong を設立。 CD に “A Crowd of Bold Sharemen” “Wave Over Wave” “State of the Nation” “Southern Cross” など。 フィリップ・ヘイワード[Philip Hayward] イングランド出身。オーストラリア・サザンクロス大学教授。前任校のマコーリー大学では現代音楽の教 授として音楽研究雑誌 Perfect Beat を編集。国際小島嶼文化会議(SICRI)を組織し、2004 年に鹿児島大 学で最初の国際会議を開催。2006 年に国際島嶼文化研究ジャーナル Shima を創刊。オーストラリアの島 嶼地域、パプアニューギニア、ヴァヌアツ、小笠原、沖縄、奄美、海南島などで調査研究を行う。著書に 伝統歌謡 の継承 と地域 の創造 坪山豊[Tsuboyama Yutaka] 歌は地域を 救えるか? 奄美大島 Tide lines: Music, Tourism and Cultural Transition in the Whitsunday Islands(2001)、Bounty Chords: Music, Culture and Cultural Heritage on Norfolk and Pitcairn Islands(2006)など。 全羅南道 李允先[Lee Yunseon] 国立木浦大学島嶼文化研究院 HK 研究教授。全南大学国楽科卒業。木浦大学大学院修了。文学博士 ( 民俗学専攻 )。鼓舞を故朴秉千氏 ( 珍島シッキムグット〈鎮魂祓い〉人間文化財 ) に、民謠を故曺 功禮氏 ( 南道ドゥルノレ〈野歌〉人間文化財 ) に、パンソリを李任禮 ( 光州市パンソリ人間文化財 ) に師事する。光州市立国劇団団員としてパンソリを担当。全州パンソリ鼓法大会において名鼓部の 大賞を受賞。初代および第二代の珍島郡立民俗芸術団団長を務める。現在は、民俗音学の適応と応 用に関する研究を行うとともに、民俗音楽の企画・演出・按舞・公演者としても活動している。 金惠貞[Kim Hyejung] 国立京仁教育大学音楽教育科教授。全南大学国楽科卒業。ソウル大学大学院国楽科修了(碩士) 。 韓国精神文化研究院韓国学大学院修了(博士)。国立民俗国楽院において学藝研究士。現在は、仁 川広域市文化財委員、京畿道文化財委員も務める。民謠、パンソリ、風物グット、雑歌、巫俗音楽 等の民俗音楽全般を広く研究対象としている。主な論著に『パンソリ音楽論』 『伽倻琴竝唱』『女性 民謠の存在様相と伝承原理』 『カンガンスレ』などがある。 崔鈆植[Choe Yeonshik] 国立木浦大学史学科副教授。ソウル大学国史学科卒業。ソウル大学大学院修了。文学博士 ( 韓国仏 教史専攻 )。駒澤大学研究員 (post-doc.)、韓国金剛大学仏教文化研究所研究員などを歴任。韓国を はじめ東アジア古代中世の仏教思想・文化の交流を中心に研究している。主な論著に『校勘 大乗 四論玄義記』 『訳注 韓国古代中世古文書研究』 「日本古代華厳と新羅仏教」「8 世紀新羅仏教の動 向と東アジア仏教界」などがある。 *パンソリは民謠と雑歌、巫歌など多様なジャンルの民俗音楽が融合されている綜合的文化であり、全羅道だ けでなく京畿道・慶尚道・忠清道など諸地域の音楽文化の特徴を受容している積層的ジャンルであるため、民 俗音楽全般を扱ってからこそパンソリの存在様相を説明できる。 フランス ブルターニュ ヤン=ファンシュ・ケメネール[Yann-Fañch Kemener] ブルターニュ中部サント・トレフィーヌの生まれ。ブレイス語を母語として育つ。20 歳でブルター ニュの民謡歌手の登竜門「カン・アル・ボブル」コンクールで優勝して以来、ブルターニュの代表 的な民謡歌手として国内外で活躍。 「ブルターニュの黄金の声」と賞賛される。これまでに 20 枚を 越えるCDをリリースし、 毎年 100 回以上のコンサートを行う。民謡研究家・収集家としても有名で、 レンヌ大学などの教壇にも立つ。2002 年に来日してコンサートや講演を行ったほか、2011 年 5 月 には NHK・BS プレミアムの “Amazing voice” のブルターニュ特集に出演。著書に Carnet de route de Yann-Fañch Kemener (Skol Vreizh)、最新 CD に “Si je savais voler” がある。 梁川英俊[Yanagawa Hidetoshi] 東京都出身。東京都立大学大学院修了。パリ第 12 大学、社会科学高等研究所(EHESS)で学ぶ。 鹿児島大学法文学部教授。 「国民国家における地方」という視点から、ブルターニュをはじめとす るケルト諸地域を研究対象とする一方、 東西の音楽文化にも関心を寄せ、 最近は奄美民謡のヨーロッ 森野聡子[Ito-Morino Satoko] 連合王国ウェールズ大学でウェールズ語・ケルト学で日本人初の Ph.D. を取得。静岡大学情報学部教授。 ケルト諸語地域のアイデンティ形成に関する言説を主な研究対象とする一方、ウェールズの民族衣裳や男 声合唱の伝統等にも広く関心を寄せる。若い頃は名取を目指して長唄の練習に励み、現在もロックからイ タリア・オペラまでジャンルを問わず音楽を愛好。主な著作・翻訳に『ピクチャレスク・ウェールズの創 造と変容』(青山社 2007)、『ケルト ─ 生きている神話』(翻訳・創元社)などがある。 韓国 パへの紹介にも力を入れている。主要論文に「ブルターニュ民謡から見た奄美民謡」(2006)、“La The Handing-Down of Traditional Folk Songs and the Creation of Local Culture Bretagne et les minorités japonaises sont-elles comparables? ”(2007)、“Des chants d’un village aux chants de toutes les îles‐le changement de statut des Shima-uta, chants populaires traditionnels des îles Amami” (2010) などがある。 ギニア + 三島村 徳田健一郎[Tokuda Kenichiro]+ みしまジャンベスクール OB 西村知[Nishimura Satoru] 鹿児島県三島村在住の日本屈指のジャンベ奏者、指導者。1994 年にママディ・ケイタ氏に出会い、 その後ケイタ氏、ファムドゥ・コナテ氏などの世界的ジャンベ奏者の指導を受ける。1999 年には、 三島村の子供たちを連れてギニア共和国バランドゥグ村を訪問。以来たびたび修行のためギニア共 和国を訪れる。2004 年、アジアで唯一のジャンベを中心とする音楽学校「みしまジャンベスクール」 京都府出身。九州大学大学院修了(博士(経済学)) 。フィリピン大学経済学部で国費留学生として学び、アメ リカ人の開発経済学者ハリー・オオシマらの指導を受ける。鹿児島大学法文学部教授。アジア太平洋地域にお ける地方住民の経済生活を土地所有制度や資源利用の観点からフィールドリサーチを手法として研究している。 研究以外では、レゲーや西アフリカの伝統的音楽に関心を寄せている。2001 年には、ギニア人の伝説的ジンベ の初代校長となる。同校はケイタ氏のプロデュースで世界的に展開するタムタムマンディング (Tama Tam Mandingue) の日本支部で、徳田氏はディレクターを務める。2005 年からスタートした三島村ジャ ンベ留学生制度では、留学生にジャンベの指導を行っている。 奏者のラジ・カマラ師に同行し、ギニア、マリ、セネガルとジンベの源流を探る旅を経験した。主要論文に、 Agrarian Law and Life of the People: A Comparative Study of Fiji and the Philippines (2010), Fijian State and Traditional Society (2006) などがある。
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