日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2011 年 8 月 41286 個別送風ファンを用いた全館空調システムの次世代型省エネルギー住宅に関する研究 その 2 実測結果 正会員 尾崎明仁*2 準会員 ○前田実可子*1 正会員 ○落合総一郎*3 同 坪川剛*3 断熱気密住宅 ダクト式全館空調 空気循環システム 個別送風ファン 室内温湿度 省エネルギー 1. はじめに 月~11 月)における LDK(1 階)の空気温度と相対湿度 前報 1) に引き続き,個別送風ファンによる全館空調シ の頻度分布および累積率を示す。中間季は,ほとんど空 ステムを採用した次世代型省エネルギー住宅の熱環境性 調機器を使用していないにも拘らず,室内空気温湿度は, 能について検討する。本報では,前報で示した住宅の通 ほぼ 21℃~27℃,40%~65%の範囲に分布している。対 年に亘る温湿度測定結果について報告する。 象住宅は,優れた断熱気密性能により,外気の影響を受 2. 実測結果および考察 け難いことが分かる。 2.1 中間季の結果 2.2. 夏季の結果 図 1 と図 2 に,2010 年 3 月から 2011 年 1 月までの外界 図 3(2)と図 4(2)に,夏季(6 月~9 月)における 気象条件,および LDK(1 階),洋室(2 階),空調室(小 LDK(1 階)の空気温度と相対湿度の頻度分布および累積 屋裏)の温湿度の経時変化を示す。 率を示す。夏季は,終日全館空調している。空調室の冷 図 3(1)と図 4(1)に,中間季(3 月~5 月および 10 水平面日射量 外気温度 20 30 15 温度[℃] 25 20 10 15 10 5 5 日射量[kWh/(㎡・日)] 35 房の強弱は,外気と還気の混合空気の温度から空調機本 0 0 -5 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 図 1 外界気象条件(2010 年 3 月~2011 年 1 月) 温度 [ ℃ ] 外気 LDK 洋室2 空調室 40 35 30 25 20 15 相対湿度 [% ] 10 5 0 10-5 0 80 60 40 20 0 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11月 12 月 1月 図 2 室内温湿度の経時変化(2010 年 3 月~2011 年 1 月) Development of the Energy Conservation Houses Vitalizing Central Air-Conditioning System with Application of Personal Circulation Fan Part 2 Monitoring results through a year ― 579 ― MAETA Mikako, OZAKI Akihito, OCHIAI Soichiro, TSUBOKAWA Takeshi 体のボディサーモが決定する。また,個別送風ファンに 3. むすび よる各室への送風量は,居住者の判断による。LDK 空気 本報では,個別送風ファンによる全館空調システムを 温度は 25℃~28℃に分布している。洋室(2 階)は,昼 採用した断熱気密住宅の熱環境性能を,通年に亘る実測 間にほとんど使用しないため送風量を抑えたことから, により明らかにした。以下に,得られた主な結果を記す。 洋室の室内空気温度は 29℃程度になることもあるが(図 1) 室内温湿度は,中間季 21℃~27℃,40%~65%, 2 参照),昼間の使用しない時間帯を除けば,快適な範囲 夏季 25℃~28℃,50%~70%,冬季 19℃~23℃, に制御されている。一方,室内相対湿度は 50%~70%に 40%~60%を推移し,通年に亘り快適な温湿度範囲 に維持された。 分布し,常時,中湿域の範囲に除湿されている。 なお,全館空調しているにも拘らず,電力消費量は最 冷暖房時の個別送風ファンから各室への給気温度は 2) 大でも 1.2kW 程度であった。対象住宅に設置したエアコ 23℃~27℃であり,居室空気温度との差は 2℃~5℃ 程度であった。 ンの定格消費電力は 1.9kW であるため,65%以下の部分 負荷運転であった。 全館空調しているにも拘らず,エアコンの電力消費量 3) は夏季に最大でも 1.2kW 程度(65%以下の部分負荷 冬季の結果 運転)であった。 図 3(3)と図 4(3)に,冬季(12 月~3 月)における 謝辞 本研究の一部は,平成 22 年度住宅・建築関連先導技術開 発助成事業費補助金「個別送風ファンを用いた次世代省エネ 型建築・全館空調システムに関する技術開発」によるもので ある。丸七ホーム株式会社,FH-アライアンスの皆様には多 大な協力を頂きました。深く感謝致します。 参考文献 1)坪川剛,尾崎明仁,落合総一郎,前田実可子:個別送風フ ァンを用いた全館空調システムの次世代型省エネルギー 住宅に関する研究-その 1 システム概要,建築学会大会 学術講演梗概集,D-2,環境工学Ⅱ,2011 率を示す。LDK 空気温湿度は 19℃~23℃,40%~60%の 範囲に分布している。全館終日暖房しても,過乾燥するこ となく,中湿域の環境が維持されている。 対象住宅は一年を通して,安定した室内熱環境である。 また,空調室温度(給気温度)は,概ね 23℃~27℃であ り,居室空気温度との差は 2℃~5℃程度であった。給気 温度は室内設定温度に近いが,大風量の送風により全館が ほぼ設定温度に制御されている。 累積率 50 40 80 30 60 20 40 10 20 0 0 16 18 20 22 24 26 LDK空気温度 [℃] 28 頻度分布 累積率 頻度分布 累積率 100 50 100 40 80 40 80 30 60 30 60 20 40 20 40 10 20 10 20 0 0 30 21 23 25 27 29 31 33 累積率 [%] 累積率 [%] 100 頻度分布 [%] 頻度分布 [%] 頻度分布 50 0 35 0 16 18 LDK空気温度 [℃] (1)中間季 累積率 [%] LDK(1 階)の空気温度と相対湿度の頻度分布および累積 頻度分布 [%] 2.2 (2)夏季 20 22 24 26 LDK空気温度 [℃] 28 30 (3)冬季 図 3 LDK 空気温度の頻度分布および累積率 60 4 40 2 20 0 0 30 35 40 45 50 55 60 65 累積率 10 8 80 8 80 6 60 6 60 4 40 4 40 2 20 2 20 0 70 頻度分布 100 累積率 [%] 80 6 累積率 10 0 40 45 50 55 60 65 70 75 80 頻度分布 [%] 8 頻度分布 [%] 頻度分布 100 100 0 0 30 35 LDK相対湿度 [%] LDK相対湿度 [%] 40 45 50 55 60 LDK相対湿度 [%] LDK湿度 [%] (1)中間季 (2)夏季 (3)冬季 65 70 図 4 LDK 相対湿度の頻度分布および累積率 *1 京都府立大学生命環境学部 学部生 Under Graduate Student, Faculty of Life and Environment, Kyoto Prefectural University *2 京都府立大学大学院生命環境科学研究科 教授・工博 Prof., Graduate School of Life and environmental Sciences, Kyoto Prefectural University, Dr. Eng. *3 (株)システック環境研究所 Systech Environmental Research Laboratory ― 580 ― 累積率 [%] 累積率 累積率 [%] 頻度分布 [%] 頻度分布 10
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