医科と歯科の 電子カルテをつなぐデータ連携は、 高速

Inter view
氏
に聞く
大阪赤十字病院 歯科口腔外科部長
杉 立 光史
業務部 医療情報課
1958 年京都府生まれ。1983 年大阪歯科大
学卒。1991 年より大阪赤十字病院歯科口
腔外科、2008 年より同科部長
専門性の高い歯科用電子カルテ
﹂導入を決断
﹁ HAPPY ACTIS-ERD
大阪赤十字病院の歯科口腔外科は、常
勤 歯 科 医 師3 名、 非 常 勤 歯 科 医 師1 名、
歯科衛生士6名の体制で診療を実施して
いる。一般歯科治療は実施せず、病院歯
科口腔外科としての役割を明確にするた
めに病診連携を密にし、口腔外科的疾患
の紹介患者や同院に入院している患者の
、逆紹介率
治療に重点を置いている。1日平均患者
人、紹介率 ・8
保﹄﹃データの蓄積と有効活用﹄
﹃情報セ
手術︵智歯抜歯を含む︶は1200例を
数は約100例、外来における観血的小
で、中央手術室における手術件
キュリティの確保﹄
﹃適正な費用による
超えるという。
年3月、こうしてHISの基幹とな
る電子カルテとシステムベンダを選定し
ぜひ別システムを導入してほしい旨、強
データ連携・移行が医科システムと正し
ケージソフトでは、例えば歯式に関する
療機関からも芳しい評価は得られておら
た。同じソフトを使用している周辺の医
く連動できず、また病棟における入院患
親和性には優れるものの、当院の歯科口
ず、このままこのソフトを導入した場合、
いて満島氏はつぎのように話す。
腔外科を満足させるだけの機能は有して
当科の診療業務が混乱する可能性が高い
者の診療項目がレセプト上に反映されな
いませんでした。そこで、歯科口腔外科
いなど、システム上の不備が目立ちまし
では、同科での診療の効率化をより実現
と考えました。そこで、病院向けの歯科
ケージソフトは、医科用電子カルテとの
できるソフトウェアとして、歯科用電子
﹄の導入を強く要望したの
ACTIS-ERD
です﹂
HAPPY
専用電子カルテシステムである﹃
してきたのです﹂
カルテソフト﹃
︵東
HAPPY
ACTIS-ERD
芝医療情報システムズ︶
﹄の導入を要望
﹁H I S ベ ン ダ が 提 案 し た 歯 科 用 の パ ッ
い要望があったという。当時の状況につ
歯 科 に 関 す る 電 子 カ ル テ 機 能 に つ い て、 ﹁ H I S ベ ン ダ が 提 供 す る 歯 科 用 パ ッ
たが、これとは別に、歯科口腔外科から、 うに話す。
科用ソフトの問題点について、つぎのよ
同院歯科口腔外科部長の杉立光史氏
価し、ベンダとシステムを決定しました﹂
は、当初決まっていたHISベンダの歯
システム導入﹄
﹃運用の改善﹄を元に評
・9
質と安全性の向上﹄﹃病院経営サポート﹄ 数は約
はなく、8つの指針、すなわち﹃医療の
杉立光史(すぎたつ・みつちか)氏
﹃地域連携のさらなる充実﹄﹃操作性の確
%
満 島 順啓 氏
能津 桂 氏
年1月から電子カルテ
57
大阪赤十字病院は100年以上の長い
歴史と伝統を持ち、全国に ある赤十字
年2月に地下1階、地上 階の新
年度の統計では、1日の平均
・2日となっている。
数は730人以上を数え、平均在院日数
は
同病院では、 年の新本館オープンと
同時にオーダリングシステムを稼働。以
進めてきたが、
の稼働を開始した。電子カルテ導入の経
緯について、同院業務部医療情報課課長
の満島順啓氏はつぎのように話す。
ングのシステムおよびサーバの保守期限
﹁ シ ス テ ム 更 新 の き っ か け は、 オ ー ダ リ
の終了でした。その際に新しいシステム
構築と同時に電子カルテを導入すること
を決定したのです。電子カルテ導入に当
% 64
病院中、最大規模の病院である。同病院
では
る。平成
療の一大拠点としての役割を担ってい
療拠点病院の指定を受けるなど、地域医
府の災害医療拠点病院および地域がん診
器を備えた急性期病院として、また大阪
本館が完成。最新の設備と高度な医療機
14
たっては、単にシステムを更新するので
73
92
外来患者数は2200人以上、入院患者
23
降PACSによるフィルムレス化などを
04
13
12
04
12
IT System Innovation Review
「
歯科用電子カルテシステム
―
―大阪赤十字病院
HAPPY ACTIS-ERD」が、医科と歯科のシームレスな連携を実現
医科と歯科の
電子カルテをつなぐデータ連携は、
高速データベース基盤が成功の鍵となった
大阪赤十字病院は、1909 年に創立された長い歴史と伝統を持つ病院である。
同院では、2013 年 1 月に電子カルテを中心とした病院情報システムが稼働を開始。
同時に歯科用電子カルテを導入し、医科と歯科のシームレスな情報連携を実現している。
新システム構築の経緯とポイントについて、同院業務部医療情報課の
満島順啓氏と能津 桂氏、同院歯科口腔外科部長の杉立光史氏に聞いた。
新 医 療 2013年7月号 ( 68 )
歯科用電子カルテ
﹂
﹁ HAPPY ACTIS-ERD
多彩かつ豊富な機能で歯科医・
歯科衛生士の業務をサポート
﹂は、病院歯科
﹁ HAPPY ACTIS-ERD
診療に必要なオーダリングシステムを完
備した電子カルテシステムである。
入院・
外来も含めた病院内全体での情報の共有
ができ、医科用の電子カルテとデータ連
携することが可能である。
算定チェック・
会計情報フィードバック・診療ナビゲー
ション機能等、特長的な機能を持ち、歯
科医師・歯科衛生士を強力にサポートす
る病院歯科向けの本格的な電子カルテシ
ス テ ム で あ る。 杉 立 氏 は、
﹁ HAPPY
﹂の有用性について、つぎ
ACTIS-ERD
のように話す。
﹁歯科専用の電子カルテとして機能が充
実しており、その機能には十分満足して
図1/大阪赤十字病院システム全体図
施できるようになったので、便利になり
しては、その抽出作業が非常に簡単に実
れや医事スタッフの業務改善が見込める
セプト算定機能の充実等により、請求漏
コストの問題です。これについては、レ
スが得られるだろうと判断しました。2
ことから、コストに見合うパフォーマン
ましたね﹂
歯科衛生士で歯科口腔外科係長の藤岡
香 代 子 氏 は、 歯 科 衛 生 士 の 立 場 か ら
﹁
﹂の有用性につい つめは、導入当時、医科用電子カルテと
HAPPY
ACTIS-ERD
﹃ HAPPY ACTIS-ERD
てつぎのように話す。
﹄との接続実績が
なかったことです。基幹システムである
﹁歯科衛生士にとって必要な診療録や業
の臨床にも大いに役立てられるシステム
スメントできるようになったので、今後
業務統計や、スタッフ自身の業績をアセ
のシステム連携がどの程度実現できるか
性を生かし切ることはできません。2つ
ば、せっかくの専用システムもその有用
務 管 理 記 録 が 上 手 に ま と め ら れ て お り、 医 科 電 子 カ ル テ と の 接 続 が で き な け れ
であると感じています﹂
が、
﹃ HAPPY ACTIS-ERD
﹄導入のポイ
ントでした﹂
およびデータ連携を実現している。シス
医科の電子カルテと歯科の電子カルテ
医科と歯科の複雑なデータ連携を
を連携させるために、それぞれのベンダ
高性能オブジェクトDB
同士と病院担当者が入り、データ連携の
﹂がサポートし、
﹁
Caché
仕組みを新たに構築して、システム連携
高速レスポンス維持に貢献
満島氏は、歯科用電子カルテシステム テム連携の実現に向けた取り組みについ
の導入を振り返って、つぎのように話す。 て、 同 院 業 務 部 医 療 情 報 課 係 長 の 能 津
﹁歯科専用のシステム導入に当たっては、 桂氏はつぎのように話す。
システムは、原則データベー
ス︵DB︶を外部に公開して
いません。そのため、歯科電
子カルテとのシステム連携を
実現するためには工夫が必要
でした。
そこで、今回のHIS構築
に際して、医科電子カルテの
本系データベース︵DB︶と
﹄と
HAPPY ACTIS-ERD
同 期 を と る D B を 介 し て、
﹃
( 69 ) 新 医 療 2013年7月号
います。例えば、レセプト請求に関する
能津 桂(のづ・かつら)氏
算定については、従来歯科医が医事デー
大阪赤十字病院 業務部 医療情報課 医療情報係長
2つの心配な点がありました。
1つめは、 ﹁当院で稼働している医科の電子カルテ
満島順啓(みつしま・のぶひろ)氏
タのチェックを行っており、その業務的
負 担 が 大 き か っ た の で す が、﹃ HAPPY
﹄は算定チェック機能を有
ACTIS-ERD
し て い る の で、 電 子 カ ル テ 上 で 容 易 に
チェックでき、これまでの作業負担が劇
的に減りました。
また、当院は地域がん診療連携拠点病
院や日本口腔外科学会専門医制度関連研
修施設に指定を受けたり、様々な施設基
準の届け出のために診療データを整理し
て提出する必要があるのですが、歯科用
電子カルテを導入して以後のデータに関
2013 年 1 月から、医科と歯科それぞれの電子カルテを連携させた病院情報システムが稼働。医科お
よび歯科で入力した各種情報が互いの電子カルテに反映され、データの一元化を実現している
大阪赤十字病院 業務部 医療情報課 課長
のような点については、今後も更なるシ
全にできていない点もありますので、そ
動していないなど、まだデータ連携が完
います。ただ、入院患者の処置情報が連
対応してくれたので、たいへん助かって
処理やシステムへの要望について真摯に
が、東芝医療情報システムズはトラブル
移行作業などで苦労した点もありました
げていきたいですね﹂
うな歯科用電子カルテシステムを作り上
他の病院にも自信をもって推奨できるよ
ています。ベンダと協力しながら、ぜひ、
システム運用によって評価したいと考え
落ちないなどの機能は、今後の継続した
や、データが膨大化してもレスポンスが
いでしょうか。レセプト算定機能の結果
電子カルテが稼働して、まだ数ヵ月で
すが、滑り出しは順調と言えるのではな
とのデータ連携や、過去の診療データの
ステムの改良に期待しています。
新 医 療 2013年7月号 ( 70 )
データ連携を図ることでシステム間連携
を実現したのです﹂
医科電子カルテのDBがXML形式であ
り、連携する歯科電子カルテの﹁ HAPPY
﹂のDBを担うオブジェクト
ACTIS-ERD
るため、短期間でのシステム構築が可能で、
データベース﹁ Caché
︵キャシエ インターシ
ステムズ︶
﹂は、XMLをそのまま取り込め
また、膨大なデータをコンパクトに蓄積、
高速レスポンスを実現することで、タイム
大阪赤十字病院
ラグをリカバリーし、ユーザーが満足でき
3
るレスポンス性能を維持している。
今回のデータ連携について、満島氏は
つぎのように話す。
﹁当院および東芝医療情報システムズの
システム担当者、電子
カルテ・医事システム
ベンダ担当者の努力の
甲斐あって、なんとか
100 年以上の歴史を持つ大阪赤
十字病院は、標榜診療科 26 科、
病 床 数 は 1,005 床 を 数 え、 各 診
療部に第一線の専門家を有し、多
種、多様な疾患に対応する診療体
制を築いている。救命救急セン
ター、地域がん診療連携拠点病院、
大阪府指定災害拠点医療セン
ター、大阪府地域周産期母子医療
センター、基幹型臨床研修病院、
地域医療支援病院などに指定され
ており、入院患者数、救急車搬送
数、手術件数、化学療法数などは、
大阪市内で最大規模を有する一大
拠点病院である。
病院長:隠岐 尚吾
所在地:大阪市天王寺区筆ヶ崎町 5 番 30 号
敷地面積:35,274 ㎡
建物延面積:86,493 ㎡
病床数:1,005 床(一般病床 963 床、精神病床 42 床)
データ連携を実現でき
たことはたいへん良
かったと安堵しまし
た。まだ、課題も残っ
ていますが、今後シス
テムをブラッシュアッ
プして、より良い病院
情報システムを構築し
ていきたいですね﹂
杉立氏は、今回の歯
科用電子カルテ導入を
振り返りながらつぎの
ように話す。
﹁システム導入に際し
ては、医科電子カルテ
1
2
図2/病院向け歯科電子カルテシステム
「HAPPY ACTIS-ERD」
必要な情報は一画面内に配置し、患者の情報を確認しながらカル
テ入力が可能である。歯科医師の診療方針を尊重しつつ、保険医
療に則った処置項目が容易に選択できるほか、歯科衛生士の診療
録・業務管理から、患者とのコミュニケーション、指導、情報の
提供まで、現場の声を取り入れた機能を提供する【①診療プラッ
トフォーム画面/②衛生指導管理画面/③患者指導画面】