ニュースレターvol.02屋根編

タイベック® ユーザー サポートクラブ
|長|期|優|良|雨|仕|舞|い
プ ロ ジェクト
|Vol.02 |屋 根 編|
雨漏りが目立つ箇所は「取り合い」
今後は「屋根通気層」
の普及も
雨仕舞いという視点で見ていると、街中には雨漏りが心配な屋根を載せた住
宅が少なくありません。 今回は、屋根の雨仕舞いの基本をおさらいしつつ、
特に注意すべき点をまとめました。後半では、ストック時代にふさわしい「屋
根通気層」にも触れてみます。
屋根からの雨漏りを防ぐための基
たものです。しかし、現代住宅では、
本は、 大きく2つあります。 一つは、
敷地の制約やデザインの好みなどか
屋 根の勾 配や形 状など、 設 計 上、
ら、 本来あるべき軒が
“退化”
してい
雨漏りのリスクを小さくすること。も
ます。 結果として、 軒天と外壁との
う一つは、 雨を建物内に浸入させな
取り合いなどから雨水が浸入するリス
い「雨仕舞い」をしっかりと確保する
クを高めています。
ことです。
そのほかにも、 片流れの屋根、 棟
まず、 一つ目の基本である設計に
違い屋根など、 雨漏りを注意すべき
ついて見てみましょう。 最近、 街中
設計はいろいろとあります。設計上、
を歩いていると、「雨漏りはしないだ
できるだけ回避したい屋根のパター
ろうか」と心配になる屋根をよく見か
ンを、 別項(次ページ上)にまとめて
屋根に降った雨は、 一次・二次の
けます。
いるので、 参考にしてください。
二重の防水で防ぎます。 仕上げの
最も気がかりなものの代表例は、
★
玉水 新吾 [たまみず しんご]
「ドクター住まい」主宰。 ハウスメーカーで施工
管理や技術研修などを担当して独立。NPO 法人
「雨漏り診断士協会」技術研究所長として、 雨仕
舞いの技術的指導に当たっている。 著書に「住
まいの雨仕舞い」
(学芸出版社)など。
「 屋 根 材 」が 一 次 防 水、 下 葺きの
「ルーフィング材」が二次防水の役目
住宅です。RC 造に似たデザインが
雨の浸入防止には
確実な二次防水が必要
好まれるようですが、 屋根に雨が滞
次に、 二つ目の基本である「雨仕
雨の大半は、 一次防水である屋根
留する時間が長くなります。 雨漏り
舞い」についてです。
材の表面を流下しますが、 完璧に雨
最近増えているフラットルーフの木造
を担います。
回避という点で言えば、 木造住宅の
屋根は、 速やかに雨を流下させるよ
うな勾配を取るのが原則です。
また、 軒の出が小さい、あるいは
ほとんど軒がない住宅も、 非常に目
立ちます。かつての日本の住宅では、
必ず深い軒を出していました。 夏冬
の日差しを調整し、 雨をしのぐ軒は、
日本の気候風土から必然的に生まれ
雨漏りが原因で、野地板などの下地が劣化した事例。棟や隅棟は、雨仕舞いに注意すべき部位の一つだ
長|期|優|良|雨|仕|舞|い|プ ロ ジェクト Vol.02
|雨漏りに注意したい屋根の典型例|
★ 緩勾配の屋根、フラットルーフ、パラペット ★
★ 片棟・片流れの屋根 ★
勾配が三寸未満の屋根は、 雨水が滞留しやすい。木造住宅のフラットルー
フや、 パラペットの立ち上げは、 特に漏水のリスクが高い[写真1]
小屋裏換気口からの雨漏りリスクが高い。 雨が通気層内に浸入することを
前提とした対策を講じる必要がある
★ 軒の出のないケラバ ★
★ 棟違い屋根 ★
外壁との取り合いから雨が浸入しやすい。外壁と軒天との取り合いに、 捨
て張りを用いた雨仕舞いと、浸入した雨水を排出する対策が必要[写真2]
棟の位置がずれて取り合う箇所は、 納まりが複雑になり、 雨漏りのリスクと
なる[写真3]
★ 屋根に穴を開ける箇所(トップライト、ドーマー、煙突など)★
★ 隠し樋 ★
屋根に穴を開ける場合は入念な雨仕舞いが不可欠。トップライトでは、 部
材の立ち上がり部とコーナー部を、 伸縮性のある防水テープなどで「ピン
ホール」が発生しないように施工する。ドーマー窓や煙突なども、 屋根との
取り合い部分の雨仕舞いが重要[写真4]
屋根の一部に設ける「隠し樋」は、 軒先がすっきりしたデザインになるが、
雨漏りのリスクは高まる。板金やFRP防水で施工するが、恒久的な耐久性
はないので、 定期的な維持管理が不可欠
1
2
3
4
水の浸入を防ぐことはできません。ど
れるように施工することです。さらに
うしても少量の雨水は、 屋根材の下
言えば、
「自分の現場では、絶対に雨
に浸入します。
漏りを発生させない」という強い誇り
各部位の取り合いは
「捨て張り」や「増し張り」を
その雨水を食い止めるのが、 二次
と意志も、ぜひ持っていただきたいと
住宅の現場では、 ルーフィング材
防水のルーフィング材です。 わずか
ころです。
の選定が疎かになりがちです。 ルー
な雨水でさえ、 これより
|片流れ屋根の納まり例|
内側には絶対に浸入させ
てはいけません。 もしも
笠木
物内の雨漏りにつながり
89 ほど重要な役目を担って
破風板
化粧スレート
下葺き材
野地板
垂木
いるのです。
二次防水の要点は2点
です。 適切なルーフィン
換気部材
ング材が目に見えるのは、
施 工 中 の 短 時 間 に 限ら
隠れてしまいます。それだ
38
けに、一般に材料への意
グ材を選ぶこと。そして、
としても、 確実に排出さ
ません。しかも、ルーフィ
れ、 すぐに屋根材の下に
外壁材と
同等の受け材
万が一、 雨水が浸入した
受注を左右することもな
気にすることも、まずあり
10
5
2×4材
フィング材の良し悪しは、
ければ、 建て主が品質を
棟包
浸入を許せば、 壁内や建
ます。 二次防水は、 それ
★
識が低いのが現実です。
しかし、 ルーフィング
シーリング
外壁材
胴縁
材は簡単に更新できるも
透湿防水シート
ガラリ状の換気部材を設けることで、軒の出がなくても小屋裏換気が可能になる
(出典:日本住環境)
|ルーフィング施工の基本|
のではありません。 少なくとも30年
間は性能が維持されるような耐久性
を備えたものを選びたいところです。
ルーフィング材は、1㎡当たり940
gの「アスファルトルーフィング940」、
もしくはそれと同等以上の厚さがある
★ ルーフィング材の継ぎ手 ★
ルーフィング材同士を張り継ぐ箇所では、 流れ方向で100㎜、 流れと直角方向で200㎜の重ね
代を取る。上下方向では、 下方のルーフィング材を、 上方の材の下にもぐらせるようにして重ね
る[図1]
★ タッカー釘による固定 ★
しわや浮きがないよう丁寧にルーフィングを施工した後、タッカー釘を打つ。その際、タッカー
釘を垂直に打たなかったり、 打ち込みが弱かったりすると、 雨水が浸入する恐れがある
ものを標準とします。より耐久性が高
|ルーフィング施工で注意すべき部位|
い材料として、
「改質アスファルトルー
フィング」や「透湿ルーフィング」など
も検討するといいでしょう。
★ 谷の
「捨て張り」★
本来のルーフィング施工の前に「捨て張り」をする。幅1000㎜のルーフィング材を用意し、谷の
ラインを中心に、 両側に500㎜ずつ張る
ちなみに、 透湿防水シートは、 外
壁の下 地 材としては優れています
が、 屋根の下葺きには使えません。
★ 棟・隅棟の
「増し張り」★
本来のルーフィング施工の後で「増し張り」をする。 幅500㎜のルーフィング材を用意し、 棟の
ラインを中心に、 両側に250㎜ずつ流すように張る[図2]
逆に、 アスファルトルーフィングを、
★ 下屋軒先と建物本体との取り合い ★
通気層工法の外壁下地に使うのもご
垂木を施工する前に、外壁側に「捨て張り」を施工。外壁の透湿防水シートを張る際は、予め施
工してあった捨て張りをめくって、 その下に差し込む[図3]
法度です。
建材は適材適所で使うのが原則で
す。 選定を誤ると、 取り返しのつか
★ 下屋と
★ 谷の
★
2階外壁との取り合い
「捨て張り」★
下屋に張るルーフィング材を、 そのまま連続して、 本体壁まで高さ250㎜以上、かつ雨押さえ
上端より50㎜以上立ち上げる。さらに幅500㎜の増し張りを施工後、 透湿防水シートを張る
ない事故を招く恐れがあります。 現
場の監督や職人も、 そうした知識が
あいまいなことがあるので、 注意が
★ 出隅・入隅 ★
各部位との取り合いの出隅・入隅は、「捨てシーリング」を打つか、 伸縮性のある防水テープを施
工して、 3面の交点に生じるピンホールをふさぐ[図4]
図1★ 平場のルーフィング
必要です。
図2★ 平棟部の増し張り
250㎜
★
ソーラー設置は要注意
「通気層」で耐久性向上も
最終的に雨仕舞いの品質を決定付
けるのは、 ルーフィング材の施工で
250㎜
100㎜
100㎜
100㎜
以上
す。まず、 その基本をおさらいして
増し張り
(幅500㎜)
200㎜
みましょう。
ルーフィング材を継ぎ足す箇所で
は、 水は低いほうに流れるという大
図3★下屋軒先と
図4★ 出隅の捨てシーリング
建物本体との取り合い
原則を、 常に意識すべきです。 つま
捨て張り防水シート
受け桟
り、 上方のルーフィング材は、 常に、
下方のルーフィング材の上にかぶせ
るようにして重ねます。
ところが、 実際には、 部分的に逆
に重ねてしまっている現場を見かける
外壁
増し張り
250㎜
下屋
吊り子止め
壁止まり役物
捨てシーリング
長|期|優|良|雨|仕|舞|い|プ ロ ジェクト Vol.02
ことがあります。 作業の工程が入れ
て張りは、うっかり張り忘れることも
ます。
替わったり、 途中で職人が代わった
あるので、きめ細かな現場の管理が
それは「屋根通気層」の確保です。
りすると、こうしたミスが発生しやす
不可欠です。
サイディング仕上げの外壁では、 通
くなります。
さて、 屋根の雨仕舞いと関連する
気層工法が定着しつつあり、 建物の
ルーフィング材はタッカー釘で固定
最近のトピックとして、 太陽光発電な
耐久性の向上に貢献しています。 同
しますが、きちんと打ち込まないと、
どソーラーシステムの設置が挙げら
様に、 屋根にも通気層をとれば、 建
雨水が浸入するピンホールになる恐
れます。
物の耐久性は向上するはずです。小
れがあります。タッカー釘の施工は、
一般的な工法では、 架台を固定す
屋裏空間の熱気低減のために「遮熱
とかく手荒になりがちなので、丁寧な
るビスを屋根に打ち込み、 垂木に支
シート」を使えば、 その効果はさらに
作業を徹底すべきです。
持しますが、 その際、 屋根材とルー
高まるでしょう。
次に、 屋根のどこかに必ず発生す
フィング材、 野地板を貫通します。
通気層をもつ屋根の構成は、「屋
る「取り合い」のルーフィングについ
垂木の位置は、目で見て確認できな
根材+ルーフィング材+野地板(12
てです。谷や棟、隅棟、下屋との取
いうえ、 幅が40㎜前後しかないの
㎜)+通気胴縁(15㎜以上)+遮熱
り合いなどは、雨水が溜まりやすかっ
で、 確実にビスが固定されるとは限
シート+合板(7.5㎜以上)
+垂木」と
たり、 流れが複 雑だったりします。
りません。万が一、垂木をはずすと、
なります。 当然、 通気層の上下端は
事実、 雨漏り事故が多く発生してい
ビスが野地板に固定されることにな
開放されていなければなりません。
る箇所です。そうした箇所では、
「捨
り、 雨漏りのリスクが高くなります。
通気層を確保して、 空気を動かす
て張り」や「増し張り」をして、 二次
最近では、 屋根に穴を開けない工法
ことにより、 若干の雨漏りや結露を
防水を補強します。
も普及してきたので、 そうした工法
排出できるようになります。 屋根通
このうち「捨て張り」は、 その後、
を検討する必要があります。
気層は、 長期にわたり雨仕舞いの品
本来のルーフィング施工をすると隠
今回は屋根の雨仕舞いを見てきま
質を確保し、 建物の耐久性を高める
れてしまい、 二度と確認できなくなり
したが、 最 後に「 長 期 優 良雨 仕 舞
ので、ストック時代の充実に向けて、
ます。 図面に描かれることのない捨
い」にふさわしい提案をしたいと思い
標準化されてしかるべきです。
この記事は、タイベック® ユーザー サポートクラブのウエブサイトでもご覧いただけます。
https://www.tyvek.co.jp/construction/user/
透湿・防湿シートの正しい施工方法を紹介する
「通気層構法 施工上の重要ポイント」
をインターネットからダウンロードできます。
透湿・防水シートを用いた通気層構法において間違えやすい部分
や、 漏水リスクが高く、より注意が必要な箇所と、 正しい施工例を
紹介した資料です(A4版16ページ)。
ダウンロードはこちらから
[発 行]
http://www.tyvek.co.jp/construction/reference/ 旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社
〒 100-6111 東京都千代田区永田町 2-11-1 山王パークタワー TEL. 03-5521-2600 / FAX. 03-5521-2601
E-mail: [email protected] URL: http://www.tyvek.co.jp/construction/
デュポン タイベック
検索