オホーツク『食』の地域ブランド戦略マーケティング調査報告書

オホーツク「食」の地域ブランド
戦略マーケティング調査
報
告
書
平成22年12月
北海道オホーツク総合振興局
地域政策部
地域政策課
目
次
はじめに…………………………………………………………………………
1
Ⅰ章
流通実態調査……………………………………………………………
2
1.調査概要…………………………………………………………………
2
(1)調査目的………………………………………………………………
2
(2)調査方法………………………………………………………………
2
(3)調査実施期間…………………………………………………………
2
2.オホーツクの一次産品…………………………………………………
3
(1)農業……………………………………………………………………
3
(2)水産業…………………………………………………………………
4
3.調査品目の選定及び調査項目…………………………………………
5
(1)農畜産品………………………………………………………………
5
(2)水産品…………………………………………………………………
7
(3)調査項目………………………………………………………………
9
4.調査結果………………………………………………………………… 11
(1)農産品の流通実態…………………………………………………… 11
(2)水産品の流通実態…………………………………………………… 21
Ⅱ章
ブランド調査…………………………………………………………… 29
1.調査の概要……………………………………………………………… 29
(1)調査目的……………………………………………………………… 29
(2)調査方法……………………………………………………………… 29
(3)調査項目……………………………………………………………… 29
2.調査結果………………………………………………………………… 31
(1)流通卸売事業者……………………………………………………… 31
(2)流通小売事業者……………………………………………………… 37
(3)飲食事業者…………………………………………………………… 41
(4)ホテル………………………………………………………………… 44
(5)消費者………………………………………………………………… 46
Ⅲ章
食品関連産業構造分析………………………………………………… 55
1.オホーツクにおける食品加工業の現状……………………………… 55
(1)全道における食品加工業の位置…………………………………… 55
(2)本調査にみるオホーツク地域の食品関連産業の特徴…………… 56
2.オホーツク地域の食品関連産業の特性……………………………… 59
(1)内部環境……………………………………………………………… 59
(2)外部環境……………………………………………………………… 60
3.「食」の地域ブランド力を高めるために期待される取組や方向性 61
(1)地域ブランド力を高めるために期待される取組や方向性……… 61
(2)参考事例の提示……………………………………………………… 64
はじめに
北海道は、食産業及びその関連産業を始め様々な関係機関との連携・協働の下、本
道の豊富な農水産資源を活用した食クラスター活動を盛んにすることにより、付加価
値の高い商品の生産と内外に向けた流通・販売、また、観光産業などとの融合化を図
るなど、北海道ならではの食の総合産業の確立に取り組んでいる。
オホーツク地域は、世界自然遺産の知床や流氷に代表される世界に誇る自然環境、
全国有数の豊かな農林水産資源、これら自然や資源を活かした多様な産業や観光など、
全国でもトップクラスの地域資源を有しているが、製造品出荷額の約6割を占める食
品工業の付加価値率は相対的に低いなど、原料供給型の産業構造にある。
この調査では、オホーツク地域における「食」に関する地域ブランドの形成・確立
の方向性検討に資するため、オホーツク地域の農・水産品の流通実例や他地域におけ
る参考事例等についてヒアリング等を行うとともに、流通卸売事業者等を対象とした
インタビュー等を行うことにより、オホーツク産品の市場における流通状況や課題、
オホーツク地域の食品関連産業の特徴等について把握しようとするものである。
なお、調査に当たっては、限られた期間ではあったが、様々なレベルに対するヒア
リング等を行うこととし、オホーツク地域内外の生産者団体、流通卸売事業者、流通
小売事業者や消費者などに幅広く御協力をいただき、可能な限り現状の把握に努めた。
この場をお借りして、調査に御協力いただいた各位に対し、感謝の意を申し上げる。
1
Ⅰ章
流通実態調査
1. 調査概要
(1)調査目的
オホーツク地域で産出される一次産品が、消費者に到達するまでの流通・製造・加工過
程を調査することにより、域内及び域外(オホーツク地域外)における価値の付加状況及
び消費割合の実例を把握する。
(2)調査方法
・ 各種統計データの比較分析等による調査品目の選定と当初出荷額の把握
・ 調査品目の流通状況等について生産者団体、加工事業者、市場関係者などへヒアリング
・ 調査品目の競合地域における流通状況等について、生産者団体等へヒアリング
・ 調査品目の末端小売価格について価格調査
(3) 調査実施期間
平成 22 年9∼11 月
2
2.オホーツク地域の一次産品
オホーツク地域では、全道の 12.8%を占める広大な面積と寒冷地にも関わらず比較的恵
まれた気候、そして豊かなオホーツク海という自然環境を活かして、農業、水産業、林業
などが展開され、豊富な一次産品が生産されている。
農業は、全道一の大規模な玉ねぎ生産を始め、麦、てん菜、馬鈴しょなどの畑作物と酪
農を主体に展開されている。水産業は、オホーツク海沿岸を漁場とするほたて貝や鮭のほ
か、ほっけ、ます、毛がになどの漁獲がある。林業は、森林面積が全道の 14%を占め、道
内の主要な木材生産地となっている。
(1)農業
てん菜、馬鈴しょ、玉ねぎ、小麦が道内全体の収穫量で大きな割合を占め、中でも玉ね
ぎは日本一の収穫量を誇る。また、小麦は全耕地面積のうち約 16%を占め、恵まれた土地
条件と冷涼な気候、降水量が少ないことから、品質の良い小麦が生産されている。
馬鈴しょは、でんぷん原料用が約 60%を占め、生食用と加工食品用は約 40%となってい
るが、近年、加工食品用へのシフトが見られる。
酪農業では、生乳生産量が全道の約 14%を占め、その大部分は域内にある大手乳業工場
で加工処理されているものの、近年、中小規模の事業施設で製造されるチーズやアイスク
リームなどが特産品として出荷されている。
オホーツク農業の概要
区
収
分単
穫
量
位 オホーツク地域 北
(H20)
海
道 対全道比率(%)
(H20)
水 稲
t
4,160
647,500
小 麦
t
126,100
541,500
大 麦(H19)
t
6,100
8,060
て
ん 菜
t
1,694,000
4,248,000
大 豆
t
2,010
56,800
馬鈴薯(H19)
t
809,600
2,242,000
玉ねぎ(H19)
t
427,976
712,200
飼 養 頭 羽 数
(H19)
(H19)
乳
用
牛
頭
113,700
836,000
肉
用
牛
頭
72,100
474,200
生 乳 生 産 量
t
(H18) 553,229 (H18) 3,799,121
農 業 産 出 額 千万円 (H18) 17,113 (H18) 105,270
耕 種 千万円
10,171
56,070
畜 産 千万円
6,924
49,180
※「オホーツクの農業2009」より作成
3
0.6
23.3
75.7
39.9
3.5
36.1
60.1
13.6
15.2
14.6
16.3
18.1
14.1
(2)水産業
オホーツク管内における主要魚種別生産量を見ると、「ほたて」、「さけ」、「ほっけ」
の3種で全体の約8割を占めている。特に、「ほたて」と「さけ」は生産金額でも大きく、
この2種で全体のほぼ 7 割を占めている。「毛がに」や「きちじ」、「なまこ」について
は、生産量の占める割合は小さいものの市場価格が高いために生産金額では上位に入って
いる。
魚種別生産量
0.5%
1.0%
1.0%
2.9%
0.4%
0.4%
2.6%
ほたて
さけ
ほっけ
すけとうだら
ます
いか
かれい
たこ
たら
にしん
その他
8.7%
12.6%
55.4%
14.5%
「平成20年版オホーツクの水産」より作成
魚種別生産金額
1.5%
2.0%
1.3%
1.6%
ほたて
さけ
すけとうだら
ます
ほっけ
毛がに
きちじ
かれい
たこ
なまこ
その他
6.4%
2.2%
3.3%
4.6%
37.5%
5.4%
34.3%
「平成20年版オホーツクの水産」より作成
4
3.調査品目の選定及び調査項目
上記を踏まえて、調査対象品目には、域内における収穫量や生産金額での位置、道内シ
ェアや地域特性、また、新しい動きなどを考慮し、以下の産品を選定した。
なお、水産品については、魚種(魚類、貝類)も考慮して選定した。
(1) 農産品
対象品目
小麦・玉ねぎ・馬鈴しょ・生乳
① 小麦
収穫量は 126,100 トン、道内比が 23.3%と、十勝地域(43.0%)に次いで2番目の大
きさがあり、また地元産小麦を使った商品開発の動きなどがある。(平成 20 年)
小麦
オホーツク
23.3%
他地域計
76.7%
全道収穫量541,500t
「オホーツクの農業2009」より作成
② 玉ねぎ
収穫量は 391,027 トン、道内比では 55.2%と全道一、また全国比でも 31.1%と一大生
産地であり、全国的なブランド力がある。(平成 20 年)
玉ねぎ
オホーツク
55.2%
他地域計
44.8%
全道収穫量708,000t
「オホーツクの農業2009」より作成
5
③ 馬鈴しょ
収穫量は 783,900 トン、道内比が 36.8%と、十勝地域(41.0%)に次いで2番目の大
きさとなっている。近年、馬鈴しょは、新しい品種が次々と開発されている。
(平成 20 年)
馬鈴しょ
オホーツク
36.8%
他地域計
63.2%
全道収穫量2,131,000t
「オホーツクの農業2009」より作成
④ 生乳
生産量は 552,267 トン、道内比が 14.5%と、十勝地域(26.3%)、根室地域(20.4%)
に次いで3番目の大きさとなっている。近年、道内各地でチーズづくりが盛んになって
おり、当地でも評価の高いチーズが生産されている。(平成 20 年)
生乳
オホーツク
14.5%
他地域計
85.5%
全道生産量3,798,123千t
「オホーツクの農業2009」より作成
6
(2)水産品
対象品目
ほたて・かき・きちじ・ばかがい
① ほたて
生産量、生産金額ともに、オホーツク管内でトップを占め、全道的に見ても生産量で
は道内比 35.0%とトップとなっている。ほたては道内では、オホーツク沿岸の猿払、野
付、そして噴火湾など知名度のある産地も多く、産地間競争が厳しくなっている。
(平成 20 年)
ほたて貝
オホーツク
35.0%
他地域計
65.0%
全道生産量429,188t
「平成20年北海道水産現勢」より作成
② かき
生産量は、道内比 45.8%(かき類として)と最大となっているが、道内では着々とブ
ランド力を高めている厚岸、道外では宮城や広島などの競合する地域も多い。
(平成 20 年)
かき類
オホーツク
45.8%
他地域計
54.2%
全道生産量731t
「平成20年北海道水産現勢」より作成
7
③ きちじ(きんき)
生産量は、道内比 50.8%と半数を占め、オホーツクの特産品であると同時に、漁獲量
の減少もあり市場では高級魚として扱われ、ブランド力をもっている。(平成 20 年)
きちじ
オホーツク
50.8%
他地域計
49.2%
全道生産量465t
「平成20年北海道水産現勢」より作成
④ ばかがい
生産量は、道内比 37.7%と最大となっているものの、1㎏当たり単価は他地域に比べ
かなり低いことから、その要因を把握する。(平成 20 年)
ばかがい
オホーツク
37.7%
他地域計
62.3%
全道生産量762t
「平成20年北海道水産現勢」より作成
8
(3)調査項目
各調査品目の生産・出荷、加工、販売など流通実例を把握するために、域内の生産者団
体と域内外の加工関連事業者等へのヒアリング調査、及び最終小売価格調査を実施した。
あわせて、品目が競合している地域の生産者団体等に対しても、高付加価値化の取組等
を調査した。
調査項目、調査方法は以下のとおりとした。
調査項目
調査方法
①生鮮食材と加工用食材の出荷割合、流通体系
統計データ、
(域内消費・域外移出等)
生産者団体(農協、漁協等)ヒアリング
②生鮮食材の流通体系ごとの当初出荷額と末端小売
価格、競合産品との価格差
統計データ、生産者団体(農協、漁協等)ヒアリ
ング、店頭調査(札幌圏など)
③加工用食材の域内外における流通状況
生産者団体(農協、漁協等)、加工関連事業者
等ヒアリング
④末端小売業者におけるオホーツク産品の認知度及
び競合産品との選択度合と価格差
売場調査、
流通事業者等ヒアリング(ブランド調査で実施)
① 生鮮食材と加工用食材の出荷割合、流通体系
統計資料により、各調査品目の域内における生産量シェアの大きな生産者団体、調査
対象品目の団体内生産量シェアが大きな生産者団体、ブランド化の取組がある生産者団
体などを基準に、調査対象団体(農協、漁協等)を選定し、下記についてヒアリング調
査を行った。
調査項目の詳細
・ 生産量及び生産金額
・ 産地出荷価格(割合)
・ 用途別出荷量(割合)
・ 仕向先別出荷量(割合)
・ 市場ニーズへの対応
・ ブランド化に向けた取組や課題
等
② 生鮮食材の流通体系ごとの当初出荷額と末端小売価格
調査品目の生鮮食材について、流通体系を踏まえて当初出荷価格及び末端小売価格を
把握した。
なお、出荷価格については、①に含めて把握し、小売価格については、競合品の価格
とともに、札幌圏を中心とする店頭調査等を実施した。
店頭調査内容
・ 対象箇所;札幌圏(全国系スーパー、道内スーパー、生協、農協系ス
ーパー、ディスカウントスーパー、デパート等)
域内(道の駅、域内スーパー等)
・ 調査項目;商品形態、産地表示、価格、重量等
9
③ 加工用食材の域内外における流通状況
加工用食材の流通を把握するために、①の結果を元に、域内での主要な流通経路を踏
まえて、域内外の加工関連事業者等に対してヒアリング調査を行った。
調査項目の詳細
・ 地域産品の取扱及び販売商品名
・ 市場ニーズへの対応
・ 地域産品のブランド化に対する取組状況
④ 他地域における事例の把握
①の調査品目毎に、市場において競合している他地域における高付加価値化(加工及
びブランド化など)等の事例を調査した。
調査品目の道内生産量比が匹敵する地域、生産条件が共通する地域、また先進的な取
組を行っている地域等を基準に調査対象地域を選定し、域内調査と比較可能な生産者団
体にヒアリング調査を行った。
なお、末端流通段階でのオホーツク産品の認知度及び競合産品との選択度合について
は、後述するブランド調査に含めて実施した。
調査項目の詳細
・ 生産量及び生産金額
・ 用途別出荷量(割合)
・ 仕向先別出荷量(割合)
・ 市場ニーズへの対応
・ ブランド化に向けた取組や課題
等
10
4.調査結果
以下に整理した調査品目の流通経路等は、本調査の趣旨を御了解いただき、調査に御協
力いただいた生産者団体や流通事業者等からのヒアリングに基づくものであるため、一部
の独自的な部分が強調されている恐れがある他、調査品目に関するすべての取引実態を必
ずしも網羅的に整理したものとはなっていない。
このため、とりまとめた調査結果は、この前提に留意しながら、オホーツク地域の豊か
な地域資源を活かした商品開発やブランド化等に向けた様々な取組の参考とすることを目
的に整理したものであること、各調査品目の流通体系の図示等は、あくまでも流通実態の
一面を表したものとして記載していることを、あらかじめお断りする。
(1)農産品の流通実態
① 小麦
調査に御協力いただいた生産者団体によると、小麦は主に春まき小麦の「春よ恋」、
秋まき小麦では、
「ホクシン」、
「きたほなみ」の計3種が生産されている。秋まき小麦
は、現在、
「ホクシン」が約 60%を占めているが、平成 23 年より、収穫量の安定して
いる「きたほなみ」に全面転換する予定とのことであった。
小麦は、農業者等が生産・収穫後、地域内の施設で乾燥処理・選別された後、全量
がホクレンへ出荷、その後、道内外の製粉会社へ流通する体系となっている。
小 麦
(域外流通・全て加工用)
大手
製粉会社
(産地・域内流通)
(生産者)
農協
ホクレン
集荷・乾燥
・選別
入札
農業者等
食品加工会社
うどん・ラーメン等
飲食店
道の駅
仲卸
道外
食品加工会社
仲卸
飲食店
小麦粉
道内
製粉会社
小麦粉
消費者
仲卸
道内
食品加工会社
スーパー
小売
うどん・
ラーメン・
パン等
パン工房
パン
消費者
(含む観光客)
※→は出荷先、線の幅は出荷量の大きさを示す
域内で地元産小麦を加工する場合は、通常、域外で産地別に製粉された小麦を原材
料としている。近年は、加工事業者の間で地元産小麦使用への関心が徐々に広がり、
うどん以外にも、パンや菓子などを製造する事業者も出てきており、スーパーや道の
駅などで流通し始めている。
「春よ恋」を使ったパンやかりんとうを自社店舗やレスト
ランで販売するなど、小規模ながらも意欲的な取組が広がりつつある。
麺類では、国内最上級の強力粉との評判がある斜里産小麦 100%を使用したラーメ
ン麺が製造されている他、焼きそばやつけ麺も商品化されている。乾燥麺「こはるラ
ーメン」は道の駅などで販売されている。
11
産地出荷価格は、通常、品種や品質(1等、2等)を基準に決定されている。ホク
レンからの出荷割合は、大手製粉会社1社が全体の 60%、中規模製粉会社2社が約
10%、残りの約 30%が約 100 の中小製粉会社となっており、その中には、道産小麦の
活用に協力的な道内製粉会社(札幌圏)2社が含まれている。
域内の生産者団体によると、少量(1tから)製粉できる機械を開発し、産地別道
産小麦の製粉に積極的な札幌圏の道内製粉会社は、産地にこだわった小麦を活用した
商品開発にも協力的とのことであった。ただし、製粉加工は域外であることから、商
品の小売価格が割高となる状況にある。
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(A農協:平成 22 年度ホクレン向け概算価格)
ホクシン1等
40.8 円/kg
きたほなみ 1 等 40.7 円/kg
・最終小売商品価格(地域内スーパー:平成 22 年9月調べ)
ホクシン小麦粉(小清水産 100%) 1,640 円/kg
「こはるラーメン」(斜里産「春よ恋」100%使用) 170 円/個
「斜里工房しれとこ屋小麦粉」(斜里産「春よ恋」100%使用) 358 円/㎏
12
競合産品の事例:十勝地域
パン用小麦品種「はるきらり」開発プロジェクト
十勝地域は、小麦生産量が全道一であるものの、その 99%がうどん向けの「ホクシ
ン」など秋まき小麦で、パン向けの品種はほとんどなかった。そこで、平成 20 年度
から、地元加工関連事業者等から、パンや中華麺用の強力系小麦の生産拡大の要望を
受けて、新品種「はるきらり」を選び「とかち春まき小麦導入プロジェクト(ハルコ
プロ)」を立ち上げ、生産から加工・流通、消費への普及を図る取組を行っている。
パンの製造販売では、十勝産「はるきらり」を地域外の製粉工場で製粉して、地元
の中卸を経て、パン製造会社で製造し販売されている。「はるきらり」は、プロジェ
クトとして生産された品種のため、生産量は非常に少なく、まだ一般の流通には乗っ
ていない。
十勝ラーメン(カップラーメンタイプ)
カップラーメンが数種類シリーズで商品化され、地域内の観光施設などで販売され
ている。平成 22 年8月に発売された商品は、温泉旅館や十勝エコロジーパークなど
で販売されている。
十勝産強力小麦粉「春の香りの青い空」
地域内の小麦取扱卸売事業者が、十勝産小麦の「キタノカオリ」、
「春よ恋」、
「ホク
シン」をブレンドしたパン用小麦粉として平成 21 年より販売し、注目されている。
開発にあたっては、モニタリングで食味、食感、風味などを綿密に調査した結果、固
有の用途であればニーズがあるとして、開発に踏み切ったとのこと。
【競合産品の価格】
・ 最終小売価格(平成 22 年 11 月調べ)
(帯広市内スーパー)
十勝ラーメン(カップラーメンタイプ)350 円/個
十勝麦王国地粉(十勝産 100%)
456 円/㎏
(ネット販売)
春の香りの青い空(十勝産 100%)
609 円/kg
【競合地域 その他団体ヒアリング(資料編p7)】
13
②
玉ねぎ
玉ねぎは、大別して、「黄玉ねぎ」、「赤玉ねぎ」、「ペコロス(小玉ねぎ)」の3つの
品種がある。調査に御協力いただいた域内大手生産者団体によると、見慣れた玉ねぎ
(黄玉ねぎ)は、全生産量(農協搬入量)21 万トンの約 99%を占め、そのうち約 74%
を生食用として地域内及び道内外の卸売市場に出荷している。
残り約 26%の生食に適さない長玉や変形した規格外品の「黄玉ねぎ」は、加工用と
して、域内のみならず関東(40.0%)、京阪神・四国(21.6%)、中京(18.5%)など
全国の食品加工会社各工場に出荷される。また、域内食品加工会社(3.7%)では、ス
ープやレトルトカレーなどの製品として、また、一部は食品加工会社の中間加工材料
(カットやペーストなど)として道内外に流通している。
(域外流通 )
玉ねぎ
生食用
道外卸売市場
(産地・域内流通 )
(生産者 )
農協
農業者等
集荷・ 選別
卸売市場
競り・ 入札
仲買
買受人
食
品
加
工
会
社
競り・ 入札
道内卸売市場
競り・ 入札
仲買
買受人
飲食店
スーパー
小売
加工用
(規格外品 )
消費者
道外食品加工会社
関東40 .0%
京阪神・四国21.6% 等
道内食品加工会社
スーパー ・小売
消費者
(含む観光客 )
ホ
ク
レ
c ン
仲買
買受人
仲卸
仲卸
飲食店
道の 駅
※→は出荷先、線の幅は 出荷量の大きさを示す
生食用の流通では、量販店販売は産地名表示が少なく「北海道産」と表示される場
合が多い。これに対抗して産地名でブランド力を高めるために、それぞれの地域名で
の出荷から、農協合併を機に統一したブランド名での大量出荷が可能になり、市場で
の存在感を強化させている生産者団体もある。
減農薬・減化学肥料の取組では、有機栽培、特別栽培、そして YES!clean などの栽
培がある。調査先の大手生産者団体では、これらの栽培により全生産量の約5%に当
たる約1万トンの玉ねぎが生産されている。また、最近では、辛さを押さえた玉ねぎ
のニーズに対応するため、「白い玉ねぎ」や「サラダ玉ねぎ」なども生産されている。
14
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(C農協:平成 22 年度概算)
黄玉ねぎ 生食用 111 円/kg
黄玉ねぎ 加工用
55 円/kg
・最終小売価格
黄玉ねぎ 生食用M玉(有機 北見産) 396∼495 円/kg
(札幌市内スーパー:平成 22 年 11 月調べ)
サラダ玉ねぎ 生食用(小5個端野産)
198 円(990 円/kg)
(札幌市内スーパー:平成 22 年9月調べ)
真白(白い玉ねぎ)生食用(中2個北見産) 178 円(890 円/kg)
(札幌市内スーパー:平成 22 年9月調べ)
(加工食品)
オニオンスープ(5g×15 本入 400 円/箱)
たまねぎドレッシング(235ml 570 円/本)
たまねぎペースト(100g 200 円/袋)
競合産品の事例:空知地域
安全安心の取組
YES!clean に取り組み、小麦との輪作体系を確立して緑肥による土づくりを行うな
ど、安全安心の玉ねぎづくりを重視している。こうした積み重ねが道外消費者から評
価され、福岡の生協(FCOOP)との毎年9月∼12 月の安定的取引につながっている。
健康志向への取組
規模は小さいが、「白い玉ねぎ」の生産や、地元で栽培する特定の「赤玉ねぎ」を
「健康たまねぎ
さらさらレッド」とブランド化して、それを原料にした飲料
「Dr.Onion」を開発し販売している。
地元町が生産者団体や道内民間研究機関、道外大手食品メーカーと共同で、玉ねぎ
の機能性成分「ケルセチン」と「含硫化合物」を遺伝的に多く含む「赤玉ねぎ」の品
種を交配によって開発し、「さらさらレッド」として町内の特定の産地において栽培
している。玉ねぎ飲料は、この玉ねぎを原料として開発された。
【競合産品の価格】
・最終小売価格(札幌市内スーパー:平成 22 年 11 月調べ)
生食用(栗山産S玉4個)
120 円(396 円/㎏)
サラダ玉ねぎ(栗山産中3個)
150 円(525 円/㎏)
(加工食品)
商品名;Dr.Onion
1缶
160g
200 円
【競合地域 生産者団体ヒアリング(資料編p10)】
15
③
馬鈴しょ
域内大手生産者団体によると、品種別に見ると、でんぷん原料用が主に「コナフブ
キ」、生食用では「男爵いも」、
「メークイン」、
「キタアカリ」が生産され、でんぷん以
外の加工用品種として「トヨシロ」
(サラダやチップス用)、
「きたひめ」や「スノーデ
ン」(チップス用)、「さやか」(サラダ用)などが契約栽培されているとのこと。全生
産量の約 98%がでんぷん用でホクレンを通じて出荷され、生食用となるのは約2%と
少ない。生食用は品種によりサイズ分けされ、道外や域内外の卸売市場を通じてスー
パーや飲食店に流通している。
また、一部の農協では、直売所やゆうパック、インターネットを通じた流通もあり、
量は少ないものの価格は域外スーパーより高くなっている。
生食用の規格外品及び契約栽培品種の馬鈴しょは、加工用として域内外の食品加工
会社に出荷され、ポテトチップス、コロッケやサラダなどの製品、あるいはその加工
原料として流通している。大手生産者団体の出荷先をみると、道外が約 64%、道内が
約 35%と域外が多い。域内は約1%と少ないものの、コロッケやレトルトカレーなど
に加工され、製品は域内外に広く流通している。
(道内企業の域内食品加工会社への出
荷は道内に含む)
(域外流通 )
馬鈴しょ
生食用
道外卸売市場
(産地・域内流通 )
競り・ 入札
(生産者 )
農協
農業者等
集荷・ 選別
ホ
ク
レ
ン
道内卸売市場
競り・ 入札
仲買
買受人
仲買
買受人
飲食店
直売所
加工用
卸売市場
競り・ 入札
仲買
買受人
食
品
加
工
会
社
スーパー ・小売
消費者
(含む観光客 )
でんぷん
加工会社
消費者
食品
加工会社
仲卸
スーパー
小売
道外食品加工会社
菓子・コロッケ ・サラダ 等
道内食品加工会社
菓子・コロッケ ・サラダ等
仲卸
飲食店
道の 駅
ネット販売・ ふるさ と小包
※→は出荷先、線の幅は 出荷量の大きさを示す
他方、契約栽培による加工用馬鈴しょは、ポテトチップスやサラダの原料となるた
め、品質を保ちながら長期間の貯蔵が求められる。「トヨシロ」は芽が出やすく、「ス
ノーデン」は貯蔵性があると言われているなど、貯蔵性は品種により違うことから、
16
品種特性を考慮しながら貯蔵技術を用いて付加価値を高め、加工会社のニーズに対応
していこうと意欲的に取り組んでいる生産者団体もある。
なお、産地出荷価格は、生食用と加工用、さらに加工用はでんぷん用と菓子などの
加工原料など用途による違いの他、産地や品種・等級によって決められる。
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(D農協、N農協:平成 21 年度実績、C農協:平成 22 年度概算)
生食用(男爵いも、メークイン、キタアカリ)
80∼130 円/㎏
でんぷん原料用(コナフブキ)
73.6∼120 円/kg
加工用(生食用規格外品、加工用品種契約栽培)
30 円/㎏
・最終小売価格(平成 22 年 11 月調べ)
(札幌市内スーパー:生食用)
男爵いも
198 円/kg
メークイン 198 円/kg
キタアカリ 198 円/kg
(D農協:ふるさと小包扱産地価格)
男爵いも
250 円/kg
メークイン 280 円/kg
キタアカリ 250 円/kg
(D農協:直売所)
でん粉 500g 120 円/袋
(ネット販売:加工食品)
オホーツク熟成コロッケ(オニオン)5 個入袋×5 個(冷凍)2,980 円
17
競合産品の事例:十勝地域
生食用より多い加工食品用生産
生産量の大部分はでんぷん用で、生食・食品加工用は約 15 万tとなっている。そ
のうち、生食用は約 25%で帯広や旭川の卸売市場や道外の卸売市場に流通し、大部
分の約 75%は、菓子などの加工食品用に出荷され、うち約 40%はポテトチップス用
で、残りはコロッケやサラダ用となっている。
ブランド化や高付加価値化のための工夫
生産地名ではなく「十勝産」で統一して出荷している。加工用途における様々なニ
ーズに対応するため、17 品種を作付けしている。また、新品種への取り組みも盛ん
で、最近では、新品種の「マチルダ」を商品化し、JR 札幌駅内の映画館売店でフラ
イドポテトとして販売されている。ブランド化は特別な栽培や特別な味を作り出さな
いと難しいと考えている。
【競合産品の価格】
内部情報のため把握不可。
【競合地域 生産者団体ヒアリング(資料編p14)】
18
④
生乳
域内生産者団体の話によると、生乳は、全量がホクレンを通じた取引となっている。
加工乳は大手乳製品会社の域内工場2箇所に出荷され、チーズや練乳などの製品とな
り域内外のスーパーに流通している。
域内企業のチーズ加工場等は、ホクレンから原料として買い戻す形で、チーズ・バ
ター、生キャラメルなどを製造し、製品は道の駅や自営レストランだけではなく、札
幌市内デパートや、ネット販売などを通じて全国に流通している。域内の加工会社に
よると、チーズの出荷先は道内が約 30%、道外は約 70%と道外の方が多くなっている。
生 乳
(域外流通)
(産地・域内流通)
(生産者)
農協
農業者等
集乳
ホ
ク
レ
ン
加工用
仲卸
バター・練乳等
消費者
(含む観光客)
飲食店
食品加工会社・地場工場
スーパー
小売
飲
食
店
道
の
駅
地場企業加工場
デパート
スーパー
小売
消費者
チーズ・バター・菓子等
直売所・飲食店
ネット販売・通信販売
※→は出荷先、線の幅は出荷量の大きさを示す
例えば、チーズは、嗜好性の高い商品のため購買層が限られる。このため、品質と
こだわりを重視し、手づくりによる少量生産をとることが多い。域内企業によると、
購買層は商品知識が豊富でこだわりをもっているため、ネットや通販を通じたダイレ
クトな販売の方が、顧客開拓やリピーター確保、ニーズ把握が可能とのことであった。
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(Q農協、R農協:平成 21 年度ホクレン出荷実績)
85.93 円/kg(全道一律)
・最終小売価格 (札幌市内デパート:平成 22 年 11 月調べ)
おこっぺ大地(ウォッシュタイプチーズ)
6,300 円/kg
大手乳製品工場A 発酵バター(カップ入) 3,413 円/kg
大手乳製品工場B 練乳(缶入)
851 円/kg
練乳(チューブ入)
1,200 円/kg
エバミルク
1,928 円/kg
19
競合産品の事例:十勝地域
牧場の中で牧草づくりからチーズまでの一貫した生産サイクルを確立
チーズ工房Uでは、無農薬牧草や飼料用のトウモロコシ、かぼちゃなど自給飼料を
中心に乳性分の高い乳を出す品種の牛を育て、牧場の中で一貫したチーズ生産サイク
ルを備えている。搾乳された牛乳の約 80%はチーズに加工され、手作業にこだわり、
製品はソフトタイプからハードタイプまでと幅広く、海外のコンクールなどで高い評
価を得ているものもある。
【競合産品の価格】
・最終小売価格(首都圏チーズ専門店:平成 22 年 10 月調べ)
十勝
酒蔵(ウォッシュタイプ)
8,590 円/㎏
【競合地域 加工関連事業者資料より(資料編p17)】
20
(2)水産品の流通実態
水産品の流通では、何段階にも渡る複雑な取引を経由するという特有の実態が見られ
る。このため、詳細な経路の把握や業者の内部情報である出荷価格や出荷先(食品加工
業等を含む)の把握は困難であったことから、こうした面を補うために、関係資料や卸
売市場関係者なども調査し、各調査品目の流通概略をまとめた。
①
ほたて
域内複数の生産者団体におけるほたての仕向先の状況を見ると、産地卸売市場(開
設者:漁協)を通じて、生産量の約 50%が域外の卸売市場を中心に生食用として、約
20%は加工用として域内外の食品加工会社へ、残りの約 30%は域内の流通へ、という
実態となっていた。なお、この割合と経路は漁協によって異なっている。
調査に御協力いただいた生産者団体によると、冷凍むき身、冷凍貝柱、干貝柱など
の一次加工の後、干貝柱のように商社を通じて中国など海外に流通するルートもある
という。加工用の一部は、域内で燻製やポタージュ、かまぼこなどに製品加工されて
域内外に流通している。
ほたて
海外
(産地・域内流通)
(生産者)
産地卸売市場
(開設者:漁協)
漁業者等
選別・一次加工
競り・入札
相対・予約相対
(域外流通)
商社
(荷主)
生食用
仲買
買受人
卸売市場
仲買
買受人
デパート
スーパー
小売
競り・入札
相対・予約相対
卸売市場
消費者
競り・入札
相対・予約相対
仲卸
加工用
食
品
加
工
会
社
仲買
買受人
スーパー
小売
飲食店
飲食店
道外食品加工会社
外食
道内食品加工会社
道の駅
消費者(含む観光客)
※→は出荷先、線の幅は出荷量の大きさを示す
用途別の区分けは、冷凍と干貝柱とで異なり、サイズを基にした 10 段階程度にラン
ク付けされ、産地出荷価格もこれに基づいて決められている。
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(V漁協:平成 21 年度実績)
鮮貝・加工用含む平均価格 108.6 円/kg
・最終小売価格(平成 22 年 11 月調べ)
21
(札幌市内スーパー:生食用)
貝柱(生食解凍)
2,950 円/kg
むき身(生食解凍) 1,380 円/kg
(東京築地場外市場)
干貝柱s(常呂産) 1,300 円/kg
(域内道の駅:加工食品)
ほたて燻油漬 (10 枚入)
2,100 円/箱
帆立のポタージュ (18.5g×4 袋入) 630 円/箱
かまぼこ(ほたて)
263 円/個
ほたてチップス (120g入)
525 円/袋
競合産品の事例:根室地域
高付加価値化やブランド化の工夫
漁獲量がオホーツク地域の 10%程度と小さいため、競合を避けて、ほたてが市場
で品薄になる 12∼6月に出荷することで、付加価値をつけて出荷価格を維持してい
る。
調理法方等も含めて産品をPR(生産者団体作成のパンフレットより)
販路開拓の取組
生協(道内はコープ札幌)との取引量が比較的大きいため、ギフトなどの商品企画
を活用して、顧客開拓や大量流通が実現している。また、この連携により道外のパル
システム(首都圏コープ事業連合会宅配事業)に参加して、首都圏や中部圏での販路
開拓が可能になった。このような道外流通による出荷額は、冷凍加工部の年間売上額
の約 60%、多い年では約 70%を占めるまでになり、ほたての流通もこれに含まれて
いる。
【競合産品の価格】
・産地出荷価格
(X漁協:平成 21 年度実績)
鮮貝・加工を含む平均価格
135 円/kg
・最終小売価格(平成 22 年 10 月調べ)
(札幌市内スーパー)
貝柱(生食解凍)サイズ不明
2,480 円/㎏
(X漁協直売所)
貝柱(生食解凍)
〃
2L
2,850 円/kg
M
2,600 円/kg
貝柱(生食解凍)
L
2,700 円/kg
【競合地域 生産者団体ヒアリング(資料編p20)】
22
②
かき
かきは、主に鮮貝(殻付)で産地卸売市場に出荷される。
むき身については、漁業者等が各々の加工場で一次加工(むき身)した後、産地卸
売市場に出荷され、仲買人を通じて飲食店やスーパーを経て消費者へという流通とな
っている。
調査に御協力いただいた生産者団体のケースでは、道内卸売市場向けが 85∼90%、
域内卸売市場向けが 10∼15%となっている。卸売市場から飲食店やスーパーを経て消
費者まで届く経路が一般的なルートとされている。
また、一部の生産者団体では、域内では、スーパーや飲食店の流れとは別に、漁協
直売所や郵便局のふるさと小包を通じて域外に直接出荷する流れもあり、価格は産地
出荷価格の3倍近くなっている。
かきの流通先は道内中心であるが、一部は台湾など海外向けの流れもある。
か き
(産地・域内流通)
(生産者)
漁業
者等
産地卸売市場
(開設者:漁協)
選別・一次加工
(域外流通)
海外
(荷主)
仲買
買受人
道内卸売市場
競り・入札
相対・予約相対
仲買
買受人
競り・入札
相対・予約相対
飲食店
スーパー
小売
直売所
消費者
卸売市場
競り・入札
相対・予約相対
スーパー・小売
消費者
(含む観光客)
仲卸
仲買
買受人
飲食店
ネット販売・ふるさと小包
飲
食
店
※→は出荷先、線の幅は出荷量の大きさを示す
調査に御協力いただいた漁協によると、産地出荷価格は主に生産年数(1年、2年)
やサイズで決められているとのことであった。
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(平成 21 年度実績)
Y漁協 むき身 1 年 1,215 円/kg
Z漁協 むき身 1 年 1,255 円/kg
V漁協 むき身 1 年 1,300 円/kg
・最終小売価格
(札幌市内スーパー:平成 22 年 11 月調べ)
サロマ湖産 むき身生食用 3,310 円/kg
23
(Z漁協:ふるさと小包 地域内郵便局・送料消費税込)
殻付グルメ(2年貝)
825 円/㎏(1 箱 3,300 円 4 ㎏入)
662 円/㎏(1 箱 5,300 円 8 ㎏入)
かきむき身(1年貝) 3,500 円/㎏
競合産品の事例:釧路地域
高付加価値化やブランド化の工夫
海水温の上昇に加え加工生産技術が向上し、通年で漁獲できるようになり、安定供
給が実現したことから、ブランド化が進んだ。全て2年もので出荷し、規格は殻付き
の重さで区分している。
調理法方等も含めて産品をPR(生産者団体作成のパンフレットより)
生産方法による商品名でブランド化
生産方法に由来した商品名でブランド化している。例えば、「カキえもん」は、特
許取得の シングルシード方式 による、厚岸生まれ厚岸育ちの純厚岸産カキで、生
産量が少ないため、時期限定販売をとっている。(※シングルシード方式は、室内で
5㎜程に育った稚貝を、砕いたほたての貝殻1枚に1粒付けて海で育てる。)
その他に、マルえもん、ナガえもんなどの商品がある。
販路開拓の取組
出荷量は道内と道外でほぼ半々に分けられ、道外は主に築地を通じて流通してい
る。直売所の規模や設備を充実させ、直接販売による顧客を開拓している。
【競合産品の価格】
・産地出荷価格
むき身
・最終小売価格
(a漁協:平成 21 年度実績)
1,148 円/㎏(平均)
(a漁協直売所:平成 22 年 10 月調べ)
むき身生食用L
3,160 円/㎏
カキえもん殻付
170 円/個
むき身生食用LL
4,360 円/㎏
マルえもん殻付
170 円/個
ナガえもん殻付
120 円/個
【競合地域 生産者団体ヒアリング(資料編p25)】
24
③
きちじ
調査に御協力いただいた域内外の流通関係団体によると、きちじは、産地卸売市場
を通じて、地域内外へ流通している。築地や関東の道外卸売市場を通じて、デパート
や飲食店へという流れと、買受人の独自ルートを通じた道内外の高級飲食店への流れ
がある。また、域内ではスーパーや飲食店を経て、消費者(含む観光客)に届けられ
ている。
きちじの中でも「釣きんき」は、平成 18 年 10 月に商標登録され、高級ブランドと
して流通している。
きちじ
(産地・域内流通)
(生産者)
漁業
者等
産地卸売市場
(開設者:漁協)
選別・一次加工
(域外流通)
(荷主)
仲買
買受人
デパート
道外卸売市場
競り・入札
相対・予約相対
仲買
買受人
飲食店
ホテル
競り・入札
相対・予約相対
消費者
道外高級料理店
卸売市場
競り・入札
相対・予約相対
スーパー・小売
仲買
買受人
道内高級料理店
飲
食
店
消費者
(含む観光客)
※→は出荷先、線の幅は出荷量の大きさを示す
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(「平成 20 年版オホーツクの水産」より)
5,608 円/kg
・最終小売価格(札幌市内デパート:平成 22 年 10 月調べ)
7,600 円/㎏[網走産 3,800 円/1 尾(500g)より]
25
競合産品の事例:根室地域
高付加価値化やブランド化の工夫
「 活〆(生産者名入)」のタグを付けて、出荷している。販売促進グッズのポスター
やタグは、店頭 POP として評判がよく、販売店や飲食店などから求められることが多
い。
加工、生産者を含めて産品をPR(生産者団体作成のパンフレットより)
販路開拓の取組
競りを通じて買受人が流通させているために仕向け先の詳細は不明だが、買受人の
独自ルートで九州まで出荷されている。
【競合産品の価格】
・産地出荷価格(b漁協:平成 21 年度実績)
2,950 円/㎏
・最終小売価格(根室管内スーパー:平成 22 年 10 月調べ)
5,960 円/㎏[2,980 円/尾(500g)より]
【競合地域 生産者団体ヒアリング(資料編p27)】
26
④
ばかがい
域内生産者団体の話によると、
「えぞばかがい」と、千葉県など関東で生産される「ば
かがい(青柳)」は、本来、種類としては異なるが、最近は、「青柳」として北海道か
ら関東へ出荷されているとのこと。漁業者等が、鮮貝を産地卸売市場に出し、仲買人
から築地など関東の卸売市場に出荷され、昔から加工が盛んな千葉県等で加工処理さ
れ(青柳のむき身と小柱)、飲食店やスーパーを経て、消費者に届くという流れになっ
ている。関東地域の飲食店では、主に高級な寿司ネタになるなど、確かな需要がある。
また、少量だが、地域内スーパーから消費者という流れも見られる。
ばかがい
(産地・域内流通)
(生産者)
漁業
者等
(域外流通)
(荷主)
産地卸売市場
(開設者:漁協)
仲買
買受人
競り・入札
消費者
道外卸売市場
競り・入札
相対・予約相対
仲買
買受人
食品
加工会社
スーパー
小売
仲卸
飲食店
スーパー
消費者
※→は出荷先、線の幅は出荷量の大きさを示す
産地出荷価格は、貝のサイズや選別状態で決められる。オホーツクの生産量は全道
一だが、生産金額は他地域に比べて低位置にある。
なお、
「ばかがい」に関する情報は乏しかったため、競合する地域の漁協や流通卸か
らの情報も参考にしてまとめた。
【産地出荷価格及び最終小売価格】
・産地出荷価格(Z漁協:平成 21 年実績)
358 円/kg
・最終小売価格
(網走市内スーパー:平成 22 年9月調べ)
網走産 寿司(8貫)780 円
・加工品 (築地市場場外卸売:平成 22 年 11 月調べ)
青柳小柱(網走産) 28,875 円/kg
27
競合産品の事例:根室地域
高付加価値化やブランド化の工夫
漁期を、オホーツクの漁が無い2月 15 日∼5月 31 日と決め、付加価値を高めてい
る。また、根室地域産は、オホーツク産に比べ、大きく加工しやすいため価格が高く
なっている。
関東地域への販路開拓
主に築地市場を中心に、「青柳」として殻付で流通させている。関東で加工され、
小柱はかき揚げの材料として千葉方面に流通している。
【競合産品の価格】
・産地出荷価格(X漁協:平成 19∼21 年度)
700∼800 円/㎏
(通常期)
2,300∼2,400 円/㎏(高値期)
【競合地域 生産者団体ヒアリング(資料編p30)】
28
Ⅱ章
ブランド調査
1. 調査の概要
(1)調査目的
札幌圏及び首都圏の流通業者等を対象としたインタビュー調査により、オホーツク産品
のブランド評価やマーケティングに当たっての課題等を抽出・分析する。
(2)調査方法
オホーツク産品が域内から域外の消費市場に向う流れを想定して、流通卸売事業者や流
通小売事業者、飲食店事業者等及び消費者を調査対象とし、札幌圏及び首都圏においてイ
ンタビュー形式で調査した。
① 流通卸売事業者等を対象とする調査
札幌圏:流通卸売事業者や流通小売事業者、ホテルなど7社へ個別インタビューを実施。
首都圏:流通小売事業者や飲食事業者など5社にインタビューを実施。
② 消費者を対象とする調査
札幌圏及び首都圏の消費者へのグループインタビュー及び産品試食等アンケートを実施。
③ 調査時期
平成 22 年 10∼11 月
(3)調査項目
流通卸売事業者等に対しては、オホーツク産品に対する評価やブランドとしての可能性、
ブランド化に向けた課題や戦略、市場ニーズなどを調査した。
消費者に対しては、オホーツクのイメージ、オホーツク産品の購入経験などの調査の他、
オホーツク産品の試食による評価を調査した。
① 流通卸売事業者
・ オホーツク産品の取扱及び市場における評価
・ オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
・ ブランド化に向けた課題
・ ブランド化における対策や工夫
・ 市場ニーズの変化
・ 流通の現状を踏まえたブランド戦略
② 流通小売事業者、飲食事業者
・ オホーツク産品の取扱
・ オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
・ ブランド化に向けた課題
・ ブランド化における対策や工夫
③ 消費者
a. グループインタビューの質問項目
・ オホーツク地域やオホーツク産品に対する認知
・ オホーツク産品の購入経験
29
・ 地域産品について重視していること
・ オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
b. オホーツク産品(加工品)の試食等評価
30
2.調査結果
(1)流通卸売事業者
札幌市卸売市場関連の事業者である青果卸2社、水産卸2社に対するヒアリング調査の
結果は、以下のとおり。
主な意見等について
① オホーツク産品の取扱及び市場における評価
・ 農産品では、玉ねぎ、人参、ごぼうなどが、的確な選果により品質が優れ評価が
高い。
・ 水産品では、ほたて、秋鮭、オホーツクサーモン、かに、白魚や釣きんきなどのイ
メージ、特に、ほたては地まき放流で貝柱に活力があるブランド。
② オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
・ 農産品では、人参やごぼう、長いもなど大量出荷が可能な産品、ハーブやペコロ
ス(小玉ねぎ)など地域特性を活かしたスキマ野菜などに可能性。
・ 水産品では、シマエビ、生すじこ、流氷明けの毛ガニ、釣きんき、えぞばかがいな
ど、量や季節の希少性等のある産品に可能性。
③ ブランド化に向けた課題
・ ブランド認証制度や産地による商品特性の違いについて情報が少なく、流通段
階まで届いていない。
・ 外部環境の変化への対応力に不安。
④ ブランド化における対策や工夫
・ 安全安心に対する姿勢をPR。
・ 産品や産地の情報を伝える販売促進ツールを提供。
・ 確かな基準で差別化・ネーミング。
・ 輸送や保存段階での品質保持を可能にする技術開発等。
⑤ 市場ニーズの変化
・ 消費者嗜好の変化によるニーズを踏まえた商品提供や調理方法の普及、安全
安心コストのPR。
・ 輸入農水産物への対応。
⑥ 流通の現状を踏まえたブランド戦略
・ 流通現場の実状を踏まえた対応。
31
主な意見等の詳細
① オホーツク産品の取扱及び市場での評価
・ 「オホーツク」というと海のイメージが強いが、北見には農産品のイメージがある。
・ 農産品では、玉ねぎ、人参、ごぼうなどが思い浮かぶ。的確に選果されているため
等級が高く、品質が優れ評価が高いというイメージがある。美幌や訓子府、きたみ
らいなど北見地区の野菜は、全国的にも評価が高く、基準や等級で品質が保障され
ており、信用して取引できる。玉ねぎは全国ブランド、美幌や斜里の人参は甘みが
あり品質でトップクラス。ごぼうは柔らかく香りや見た目もいい。野菜栽培に適し
ている土地柄というイメージがある。
・ 水産品では、ほたて、秋鮭、オホーツクサーモン、かに、白魚や釣きんきなどが思
い浮かぶ。
・ オホーツクのほたては地まき放流で、自然界で自力で餌を捕って動くため、貝柱に
活力がある。冷凍貝柱の生産量が多く差別化できる。
・ ほたての安全シールが安心安全の目安になる。
② オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
【農産品】
斜里の人参やごぼう、長いもなどの大量出荷の確保は強いブランド力になる
・ 畑が広いので多品種少量生産よりも、斜里の人参やごぼう、長いものように根菜類
で大量のロットが確保できる品目を、量販店向けに出荷できることは取引の信頼性
と知名度につながり、戦略(強み)の一つになる。
地球温暖化を見据えた寒冷地では難しい農産物に可能性
・ オホーツクは冷涼のため、高温期に出荷できる有利さがあったが、最近は温度差がな
くなっている。これからは寒冷地で栽培できなかった、例えばレンコンのような農
産品が有利になるかもしれない。
地域特性を活かしたハーブなどのスキマ野菜に可能性
・ ルッコラなどハーブを作る農家(佐呂間)や、バジルを中心にペパーミントやチャ
ービルなどハーブ類の栽培に取り組む玉ねぎ農家やビート農家の女性グループ「プ
ラフィット(ハーブ PFT オホーツク)」(美幌町、大空町女満別)がある。北見はハッ
カ産地だったので、地域に指導できる先駆者がおり、ハーブはオホーツクのイメー
ジにも合う。生産量は少ないが、業務用の厳しい基準に応え、10 年ほど前から道内
の菓子製造用に出荷されている。
・ 小さい玉ねぎ(ペコロス)や赤い玉ねぎは、低農薬で信頼されている。ペコロスは、
道外では愛知が主だが、供給が切れると、きたみらい産になるため需要がかなり高
い。オーストラリア産もあるが、国産使用が強まっており、きたみらい産は、品質
が一定で量も確保できるので評価が高い。
【水産品】
シマエビ、生すじこ、流氷明けのカニ、釣きんき、えぞばかがいなどに可能性
・ シマエビは、一部本州に出荷されているが、ほとんどが道内で消費されている。量的
に少ないため珍しく、正月のおせち料理で使われる。サロマ湖産のものは美味しい。
・ 生すじこは、値段を下げると、もっと売れるかもしれない。外食では、回転寿司や丼
32
物に使うので、値段を下げると多くの人に食べていただける。また、量販店では、
生すじこは売上を作れる商品なので力を入れている。
・ 流氷明けの毛ガニは、3∼4月に獲れ、量販店も扱う。この時期は、オホーツク産だ
けなので珍しく、また味も良い。
・ 釣きんきや活〆きんきは少しずつ認知されている。一定サイズのものだけを違う名前
を付け希少性を出すと、本州方面の客に喜ばれると思う。
・ 道内で漁獲された「えぞばかがい」が、関東地域では「青柳」として流通し、寿司ねた
などで使用されている。砂出しが難しいという特徴があるので、道内で砂出しまで加工
し製品化されると価値が違ってくる。生産量が少ないので、産地で加工しブランド化す
ると、札幌の寿司屋や料亭にも出していけるようになるかもしれない。素材を売るだけ
でなく、美味しいものに価値を付けることもブランド化の可能性になるのではないかと
思う。「ばかがい」が美味しいことは、地元でも十分知られていると思うので、産地が
動いて「こんな産品があるので、商品として売っていきたい」と流通関係業者に向けて
発信することが大切なのではないかと思う。
③ ブランド化に向けた課題
ブランド認証基準や産地による商品特性の違いに関する情報が少ない
・ オホーツクサーモンの基準は、北海道でも馴染みがない人が多いと思う。漁の時期な
のか、カラフトマスは川に近づくと体の色が変わるが、その前のものだけをオホー
ツクサーモンと呼ぶと決めてあるのか。基準についてわかりやすい情報発信が必要。
・ ほたては、卸売事業者は、時期やサイズ、選別で判断しながら買い付けるが、消費者
はそれをわかっていないと思う。オホーツクのほたてがどの時期に美味しいかにつ
いて、消費者にわかりやすく伝える必要がある。
・ 取引相手からの産地指定はあまりなく、こちらから持ちかける方が多いことから、農
産品の収穫時期や取引ロットの情報を常に集めている。
・ かきもほたてと同じで、本州では北海道産のかきが昆布森産なのか、厚岸産なのか、
サロマ湖産なのかはわからない人がほとんど。サロマ湖産かきと他産地の違いを知
ってもらうためには、粒の大きさやふくらみ、衛生管理などについてわかりやすく
伝える必要がある。
・ サロマ湖産の北海シマエビは美味しいが、冷凍していないものは冷凍ものと比べ、食
感がまったく違うので、エビの食べ方と一緒に伝えるといいのではないか。
外部環境の変化への対応力に不安
・ 海が豊かで水揚げも安定しているためか、他地域に比べて品質の良さと量で魚を売っ
てきたという自負があるためか、手をかけない。しかし、消費者ニーズの変化や産
地間競争が厳しい中、体力がまだあるうちに準備しておかないと、漁業が不振にな
った時の対応が難しいのではないか。
④ ブランド化における対策や工夫
安全安心に対する姿勢をPR
・ ブランド化の前提として安心安全は、大前提となる。農産品では、すでに北海道の
「YES!clean」など認証制度があるので、普及を進めると競合地域に対する強みにな
ると思う。
・ 北海道のクリーンな食材を本州に宣伝することにより、ニーズは確実に増えると思う。
33
地球温暖化のため、東北では栽培できなくなった作物がでてきているが、北海道に
はまだその影響が少ない。オホーツクの気候は冷涼でクリーンなイメージがあり、
積極的にPRした方がいいと思う。
・ オホーツク地域の商品については、行政が主導して地域全体で安全安心に取り組む体
制があるということになると、他地域と差別化ができると思う。
産品やその産地の情報を伝える販売促進ツールの提供
・ 生産者団体から市場に対して、産地の最新情報をこれまで以上に発信してほしい。ま
た、販売促進グッズがあると、非常にPRしやすく、消費者に近い小売・飲食店に
も伝えられる。例えば、食べ方や水揚方法、旬などが書かれているシールやPOP、
販売店向けの小さいチラシのように、オホーツクの魚を説明できるグッズがあると、
競りに来る様々な業者に売りやすくなる。こうした積み重ねで産品や産地が認知さ
れ、ブランド化につながっていくと思う。
確かな基準で差別化・ネーミング
・ 産地毎に定義や基準を作り、「数量は少ないが、これだけは他と違う」というものを
差別化してネーミングすると良いのではないか。通常と違うルートや売り方も大事
だが、一番わかりやすい基準は脂肪分や体長、重さなど違いを数値化できるものが
良いと思う。
・ オホーツク地域の知名度を高めるためには、「常呂」、「雄武」など難読地名が多い
ので、地名に読み仮名を付けるといいのではないかと思う。
輸送や保存段階での品質保持を可能にする工夫や技術開発等
・ 水産品の価値を高めるため、市場に届く前の品質保持の工夫が大切。例えば、保冷用
の氷が大きいと、輸送中に魚の身に凹みが出来て姿が悪く調理にも影響が出るため、
魚の価値は下がる。これを避けるために、細かく砕いた氷を使用することが多い。
・ 生産者も卸売市場に足を運び、流通市場のニーズや他地域の取組を知ることが大切。
市場見学に来ると、全道の様々な水産品や出荷者の取組・工夫(ラベルや氷、発砲
箱の扱いや産地表示)を知ることができると思う。
⑤ 市場ニーズの変化
【消費者ニーズへの対応】
野菜消費における嗜好の変化
・ 野菜をサラダで食べる人が多くなり、トマトなどサラダ系の野菜の種類が増えている
が、生で食べる分、野菜全体の消費量は減少している。野菜自体の多様な食べ方が
消費者に十分伝わっていないことも、野菜離れが進む原因ではないかと思う。デパ
ートの産地フェアで、もっと野菜を利用した料理を出す機会があってもいいと思う。
・ かぼちゃは「重い、固い、包丁で切られない」、ごぼうは「下処理が必要」と敬遠さ
れる。トマトは、「洗うだけですぐ食べられる」と取扱量や品種が増えている。ブ
ロッコリーは、安全性志向から輸入より国産ニーズが高まり、各地で栽培されるよ
うになった。玉ねぎや人参は、消費量が変わらないものの、馬鈴しょは、やや減少
していると思う。
・ 生活スタイルの変化から、外食や中食の消費が増加したため、加工用野菜の需要が増
えている。流通している野菜の 50%近くを業務用が占めていると思う。外食業界で
は、ハーブ類やサラダ玉ねぎの需要が増えている。
安全安心と価格のバランスを重視
34
・ 安全安心で品質が良くても、価格が高いと売れないので、品質と価格のバランスが
大切。例えば、野菜については、高い等級は1∼2割程で、半分以上は規格外。安
全安心にこだわって農薬を使わないと、虫がつき形も悪くなる。規格外が多いこと
や、安全安心な野菜づくりは費用がかかり、価格が高くなるということを、消費者
に理解してもらうような工夫が必要。
家庭での調理実態を意識した商品提供や調理方法の普及
・ 本州のスーパーで、ほたての玉冷(貝柱)が解凍して売られていると、消費者から
刺身用か焼いて食べるのかと聞かれることがある。消費者は、調理方法を熟知して
おらず、また、自ら調理することも少なく、生ゴミの始末も面倒に感じている。グ
リルを洗う手間を嫌い、フライパンで魚を焼く人が増えている。北海道では、グリ
ルで焼く厚切りだが、本州向けの量販店やテパート、宅配用の商品は、フライパン
で焼ける薄切りの鮭が中心。消費者に合わせて加工しないと売れない現実がある。
また、調理方法のPRをしないと、このままでは魚離れがもっと増えるのではない
かと思う。
中国との取引
・ 水産品は、北海道ブランドが強いので、中国の会社は北海道との取引が多いが、鮭
は三陸(岩手等)との取引もある。
【輸入品への対応】
輸入野菜への対応
・ 輸入野菜に残留農薬が出たという報道があると、スーパーの売場などでは、その国
の食材を全く扱わなくなる。中国製冷凍食品が問題になった時は、中国産食材を置
かなくなった。しかし、野菜の約6割は輸入品であり、その半分は中国産なので、
大変な品薄状態になる。国内産地を大事にするのであれば、野菜づくりの大変さを
消費者に知ってもらう必要がある。
・ 国内産野菜の消費量を増やすためには、安全性をアピールし、輸入品との味や品質
の違いを消費者に知ってもらう必要がある。
輸入水産品の普及による嗜好への影響
・ 鮭は脂の多い輸入品が出回っているが、道内産は脂が少ないため人気が落ちている
ようだ。雄武産の秋鮭の方が安くても、脂がのっていないと敬遠され、まぐろは養
殖のトロが好まれるなど美味しさの基準が脂になっていると思う。
⑥ 流通の現状を踏まえたブランド戦略
量販店の産地表示は「北海道産」が一般的
・ 量販店では、チラシに特定の産地名を表示すると、欠品になった時に他産地品を使え
ないため、「北海道産」、「道内産」の表示になる。「玉ねぎ(北見産)」のように
ロットを確保できる場合は、産地限定で表示できる。このため、量販店の産直フェ
アは、一定量を確保できる農協や卸売業者から持ちかけて開催されることが多い。
産直セールの仕組みを知る
・ 不漁の場合、欠品する恐れがあるので、水産物の産直セールは難しい。しかし、養殖
のほたてやかきは、天候にあまり左右されないので産直セールをやりやすい。ほた
ても物流さえ整えればできると思う。産直セールでは、量販店との間で、時化のと
35
きの商品変更、値合わせや鮮度、サイズ等を事前に決めている。例えば、スーパー
の「道産デー」では、浜から配送センターに入れて、センターから店舗に配送して
いる。これなら産直、道産デーと打ち出しができる。漁協や産地仲買、水産加工業
者から、直接、配送センターに送ることもある。魚は漁師が獲ってきたものをその
まま出しているわけではない。産地の業者に買ってもらって仕立て直しをし、その
日の夜中ぐらいに発送して物流センターに送る。その時、スーパーがさんまの 25 尾
入サイズの箱を 100 箱欲しいとなると、それより上のサイズや下のサイズが余るの
で、競り場で大きいサイズは専門高級店に、小さいサイズはディスカウントストア
に仕分けしている。
小規模ニーズへの対応
・ その日の水揚げで鮮度が良いものを、何種類か箱に詰めて出荷してもらう。通常は1
箱買うと同じ魚ばかりだが、多種を少量使えるので飲食店向けには好評。
ブランド品は価格の高い方に向う
・ ブランド化されると、価格が高い方に流通していく。例えば、天塩のしじみはブラン
ド化されて、札幌よりも取引価格が高い本州の市場に流通が移っている。
・ 新巻鮭の流通が少ないのは、加工場が減ったこともあるが、網走や羅臼、斜里、ウト
ロの鮭は、輸出用になっている。
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(2)流通小売事業者
札幌市内及び東京の道産品アンテナショップ事業者3社、札幌市内百貨店1社に対する
ヒアリング調査結果は、以下のとおり。
主な意見等について
①
・
・
・
②
・
・
・
・
③
・
・
・
④
・
・
オホーツク産品の取扱
東京では、夏はハッカ関連商品、秋冬はスープや水産品が売れ筋。
札幌では、ハッカ関連商品、玉ねぎ加工品、スープカレーやラーメンなど。
オホーツクは「海」のイメージがあるが、扱いが多いのは乳製品や菓子類。
オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
地域内における食品加工等への取組を盛んにしてはどうか。
玉ねぎや馬鈴しょなどの加工アイテムや品種の拡大、多種類が生産されている
チーズについて、食べ方を積極的にPRしてはどうか。
松前漬や飯寿司のような地域の産品を使った名産品や地域メニューを参考にし
た目先の違う商品の展開に可能性。
生活関連用品にも可能性。
ブランド化に向けた課題
商品の特長や食べ方など、消費者に必要な情報が十分に提供されていない。
地域外で製造される加工品も見られる。
積極的な販路開拓に期待。
ブランド化における対策や工夫
ご当地限定商品の展開やメディアの効果的な利用。
観光イベント等を組み合わせて、地域全体で食材をアピール。
主な意見等の詳細
① オホーツク産品の取扱(売上の高い産品)
東京では、夏はハッカ関連商品、秋冬はスープや水産品
・ オニオンスープ関連やホタテ関連、ハッカ関連商品、乳製品(ヨーグルト)やスイ
ーツ。季節で売れ筋が変わるものもあり、夏はハッカ関連商品、秋冬はスープや水
産品が売れる。
・ 流氷ドラフト、カニ丼、つぶの柔らか煮、サケトバハラスなど、テスト販売から定
番になった商品がある。
札幌では、ハッカ関連商品、玉ねぎ加工品、スープカレー、ラーメンなど
・ 羊羹やスプレーなどのハッカ関連商品は、売れ筋となっている。入浴剤は、今年(平
成 22 年)、テレビで紹介されたのがきっかけで売れ行きが非常に好調。
・ 農産品では、玉ねぎ関連の加工食品として、スープやシチュー。オホーツクビール
や興部のチーズやハムも扱っている。
・ スープカレーはやや下火になったが、まだ根強い人気がある。ご当地のホッキやタ
ラバが入ったカレー、タラバラーメンが売れている。
・ オホーツクには、「海」のイメージがあるが、商品で扱いが多いのは、乳製品の加
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工品や菓子類で、水産品は少ない。メジカや時鮭の切り身を扱うが、水産品は函館
が主になる。オホーツク産品は、カニ、ほたて、網走のしじみ、それに玉ねぎやビ
ートを含めると範囲が広い。
② オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
【共 通】
域内における食品加工等への取組を活発化
・ 手間をかけなくても売れるので、食品加工に対して意欲があまりないように見える。
設備投資など難しい問題もあるかもしれないが、地域内で加工にもっと力を入れる
と地域経済活性化にもつながるのではないかと思う。
・ 一過性のブームで終わらないように、メニューを拡大したりイベント性を持たせる
ように取り組むと広がりが出てくる。どのようにアピールしていくかが重要で、メ
ディアへの露出は効果的と考える。
【農産品】
アイテム拡大や食べ方のPRが有効
・ 消費者にとっては、その地域でしか買えないという点がポイントになるので、玉ね
ぎ関連商品のアイテムの拡大や、玉ねぎや馬鈴しょの品種を増やしていくことで、
広げていけるのではないかと思う。
・ チーズは、いろいろな種類が生産され定番商品も出ているが、消費者に美味しい食
べ方がうまく伝わっていないので、ワインとの組み合わせなどをアドバイスしなが
ら試食販売するといいのではないかと思う。
【水産品】
地域の産品を活かしたブランド化
・ 松前漬のように、水産品を使って全国に通用する何らかの名産品があると良いと思
う。
・ かには、一般的にそのまま食べることが好まれているが、てっぽう汁など地域メニ
ューを紹介するのもいいのではないか。目新しさを求めるお客様が多いので、目先
を変えた商品を投入していくことも必要。
・ 水産品は、石狩、函館、釧路が中心になるが、最近、きんきの飯寿司を胆振地域の
加工業者が製品化し、有名百貨店でも扱われている例がある。オホーツク地域では、
「釣きんき」がブランド化されているので、例えば、漁師が漬けているきんきや紅鮭
の飯寿司があるとブランド化できるのではないか。
【生活用品】
生活関連用品にも目を向ける
・ 入浴剤や化粧品は、マスコミで取上げられて売り上げが伸びている。東京の消費者
には、ハッカ関連商品が関心をもたれている。生活関連商品にも可能性があるので
はないか。
38
③ ブランド化に向けた課題
消費者に必要な情報が十分に提供されていない
・ 例えば、「どういう商品なのか」、「簡単な食べ方」、「道産原料○%使用」など、
必要な情報が十分に表現されていない商品や、消費者の目に入るように表示されて
いない商品がある。店頭POPは限られるので、消費者にわかりやすく伝えるため
には、パッケージ自体の表示が大切。消費者は、北海道産にこだわりを持って購入
するので、場合によっては、表示に「北海道」を入れてもらうこともある。
(問合せを受ける例)
・豆の煮方や玉ねぎの調理方法。
・とうもろこしは、何分ゆでるのか、電子レンジで調理できるのか。
・冷凍魚の焼き方について、解凍後に焼くのか、そのまま焼けるのか。
・チーズについて、味の特徴や美味しい食べ方。
・アロニアは、首都圏では知られていないので、消費者にわかりやすい情報
等
・ 生産者は、地元産品の流通現場での販売状況を、お客様目線に立って見ることも必
要ではないか。他地域の商品がどのように展開しているのかもよくわかると思う。
・ テスト販売では、できるだけ詳しい品質表示(生産地、製造者等)を求めている。
小ロットの商品が多いので、どうしても価格が高くなることから、価格設定に留意
するよう説明している。
パッケージデザインや商品量目等に工夫が必要
・ パッケージに凝りすぎている商品がある一方、商品説明には「料亭の味の昆布巻」
と書いてあるのに、パッケージがビニール袋で不釣合いな商品もある。
・ パッケージは、東京では、「北海道らしさ」や「地域らしさ」、「手作り感」のあ
る方が消費者の目をひき、差別化できるように思う。
・ 家族人数の少ない消費者には、開封後の保存期間の短い商品や容量が多い商品は敬
遠されることがある。
地域外で製造される加工品も見られる
・ 物産展で、北海道の冠を付けた商品の製造元が実は東京ということがある。生産者
や加工業者が報われるためにも、道内産品を使い道内で製造加工している商品販売
に力を入れたいと考える。
積極的な販路開拓に期待
・ 産地間や加工業者間の競争が厳しい地域では、生産者団体も営業に力を入れている。
・ オホーツク産品は、もともと品質の高さで流通してきたので、これまでは販路開拓
に力を入れなくても売れていた。しかし、今後は競争が厳しくなるので、もっと販
路開拓に積極的に取り組んでいかなければならないのではないか。
・ 小ロットで小まめに発注できると、新しい製造年月日の商品を販売でき、お客様に
買い続けてもらえる。
39
食品表示への認識が不十分
・ 保存方法や保管方法(冷蔵・常温)、原材料(記載順)や添加物などが的確に表示
されていない商品がある。消費者は表示が頼りなので、適切な内容でないと商品へ
の不信感が出てきて、大きなブランド名になると命取りになることもある。
④ ブランド化における対策や工夫
ご当地限定商品の展開
・ ご当地に行かないと手に入りづらくなった、物産展ではなかなか買えない商品をア
イテムとして揃えたい。月寒あんぱんなど、昔ながらの菓子類には、長年のファン
がいて、「東京の北海道物産展には、こういうお菓子はない」とよく言われて購入
している。
・ じゃがポックルが北海道限定だから人気が出たように、北海道に行かないと買えな
いものや北海道限定品に人気が集まる。大量に出回り安売りすると、ブランド価値
は下がるので希少価値をもたせることが大切だと思う。
メディアを効果的に利用する
・ B−1グランプリで入賞した北見塩焼きそばのような取組については、一過性で終
わらせないために、今後ともメディア露出により積極的にアピールしていくことが
効果的ではないかと思う。
観光イベント等と組み合わせて地域全体で食材をアピールする
・ 観光イベントや大会と組み合わせて、食材を広くアピールできるようにすると、効
果が大きいのではないかと思う。エリアを広く回ってもらうためには、オホーツク
地域を点として往来するのではなく、デパートで買い物をして回ってもらえるよう
に、面で連携して実施すると良いのではないかと思う。
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(3)飲食事業者
首都圏においてオホーツク産品を扱う飲食事業者3社に対するヒアリング調査の結果は、
以下のとおり。
主な意見等について
① オホーツク産品の取扱
・ 馬鈴しょ、玉ねぎ、人参、山わさびなどの農産品や豚肉などの農畜産品。オホー
ツクサーモン、ボタンエビ、ホッケ、鱒のイクラなど水産品、美幌農業高校が開発
したホワイトフランク、酒類としてオホーツクビールをメニューとして提供。
② オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
・ 馬鈴しょを、新品種や貯蔵期間で付加価値をつけてブランド化。
・ ホワイトアスパラガスの販路拡大に可能性。
・ 高級品のきんきを、調理方法の工夫で手の届く食材へ。
・ 北海シマエビを寿司や和食等の食材へ。
③ ブランド化に向けた課題
・ 地域ブランドは細分化されると、市場での認知が難しい。
・ 高品質産品を安定的に供給。
④ ブランド化における対策や工夫
・ ブランドづくりのための連携体制。
・ 先進事例を地域内で共有。
・ 低コストで効率的な物流方法を工夫。
・ 産品を観光等も含めて地域全体で情報発信。
主な意見等の詳細
① オホーツク産品の取扱
・ 馬鈴しょ、玉ねぎ、人参などをスープカレーの具材として扱い始め、その後、オホ
ーツク全般の食材を扱うようになってからは、豚肉や水産品も扱っている。特に、網
走の「山わさび」を添えた豚丼(定番メニュー)用の豚が一番多く、イベントがあると
月に1tを超える時もあり、取扱量が増えている。
・ 網走からオホーツクサーモン、紋別からボタンエビを仕入れている。「ます子」のイ
クラ、ホッケも扱っている。
・ 浜開けの毛ガニは、美味しいが知名度が低かったことから、お客様から価格が高いと
敬遠された。
・ 美幌農業高校が産学連携により取り組んだホワイトフランクは、タラのすり身を原料に
網走の食品加工会社と共同開発し製造されるようになったもので、メニューの一つとし
て提供している。
・ スープカレーの具材として玉ねぎ(F1)、酒類ではオホーツクビールを扱っている。
② オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
・ 食材の 80%位を北海道産にすることを目指している。オホーツク地域には、産品が豊
富なので、埋もれているものも多いと思う。
・ 東京では、スーパーで取扱のない食材をメニューとして提供するとインパクトがある。
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【農産品】
馬鈴しょを新品種や貯蔵期間で付加価値をつけてブランド化
・ 北海道の馬鈴しょは本当に美味しい。特に、旬よりも年明けの方が美味しいので、
冬に一定条件で貯蔵したものを「越冬馬鈴しょ」などと名付けて、通年で売ること
もできると思う。加工用馬鈴しょは、1∼3月位が一番美味しいので、ブランド化
できると良いと思う。
・ ヨーロッパにあるような、馬鈴しょ料理専門店の立上げも構想があるので、いろい
ろな品種の馬鈴しょを各所から仕入れている。網走地域の農協やビール系会社から、
「シンシア」や「サッシー」などフランス種の馬鈴しょを仕入れる。「シンシア」は
耐性があるので、最近全国で栽培されている。「インカのひとみ」という種類もあ
り、味は「インカのめざめ」に似ているがクリーム系なので甘くて評判が良かった。
ホワイトアスパラガスの販路拡大に可能性
・ 道産ホワイトアスパラガスは、旬でも都内では見たことがない。道産は甘味が強く
輸入品や道外産に比べて品質も良いので、和洋食ともに相当な需要があるのではな
いかと思う。グリーンアスパラガスとは、調理方法が違うため、メニューや調理・
保存方法などの情報提供が必要だと思う。
【水産品】
高級品のきんきを、調理方法の工夫で手に届く食材へ
・ きんきの価格は高いが、お土産屋で売れる 200g∼300g 位のものが一番流通してい
る。大きいものは料亭に行くが、高いため取引が少なく余っているので、センター
カットして半身で煮付けにしたら、比較的安い価格で提供できるのではないかと思
い試している。
北海シマエビを寿司や和食等の食材へ
・ 北海シマエビは、生でもボイルしたものでも旨みがしっかりしており、クセがなく
使いやすい。冷凍でも十分美味しいが、都内では流通していなようで、消費者には
知られていない。寿司や和食等の食材としてブランド化できるのではないかと思う。
③ ブランド化に向けた課題
地域ブランドは細分化されると市場での認知が困難
・ 豚肉は、非常に細分化されてブランド化されている。薩摩黒豚のように産地間で連
携して、ひと枠大きいところでブランド化を目指すと、市場で認知されやすい。牛
肉も美幌牛、網走和牛や知床牛などがあるが、流通が見えず認知が低いのではない
かと思う。
高品質産品を安定的に供給
・ 玉ねぎ(F1)を多く扱っているが、気候変動のためか出荷期間が非常に短く、代
替品の入手に苦慮している。高品質なので多少高くても安定供給をしてほしい。
④ ブランド化における対策や工夫
ブランドづくりのための連携体制
・ 美幌町では、地域産品のブランド化を目的として、商工会議所を中心に「美幌ブラ
ンド開発検討委員会」を立ち上げ、農協や行政、農業高校、地元の食品加工会社や
飲食店、観光団体、さらにアドバイザーとして域外の大学等との連携体制で取り組
42
んでいる。市町村やオホーツク総合振興局、農協や漁協による、ブランドづくりの
ための連携体制があると良いのではないか。
先進事例を地域内で共有
・ 千葉県の大規模な有機栽培農家(JAS 有機認定)は、「わ∼ふぁ」というブランド名
で、都内のデパートやスーパーの他、最近は千葉県内のアメリカ系スーパーにも大
量に出荷している。大量なので有機でも買いやすい価格で提供されている。有機や
オーガニックの食材を購入したいという消費者が増えてきているので、こういった
取組の先進事例を共有していくことも大切ではないか。
低コストで効率的な物流方法を工夫
・ 東京の店舗は、テナント料が高いので、ストックヤードがあまり確保できない。こ
のため、食材を調整して店舗に配送しなければならないが、宅急便を使った産地直
送はコストが高くなるので、オホーツク地域内に物流拠点を確保して、各店舗に配
送できる仕組みにした。
・ 宅急便は個人利用向け、コンテナ便は大口利用向けで、中間的な配送が難しい。競
争が厳しい中、混載便(冷蔵・冷凍)でコストを抑えている。
産品を観光等も含めて地域全体で情報発信
・ 沖縄や九州は、あらゆる媒体を通じて強力的に地場産品の売り込みを行っている。北海
道も食材だけではなく観光やレジャーを含めて、もっと地域全体でPRすると良いので
はないかと思う。
43
(4)ホテル
札幌市内でもホテル2施設を運営する全国チェーンのホテル経営事業者(レストラン部
門)1社に対するヒアリング調査の結果は、以下のとおり。
主な意見等について
① オホーツク産品の取扱
・ 玉ねぎ、ペティオニオン、ヒラタケ(しめじ)、レホール(西洋わさび)などの農産品
を使用、水産品は、ほたてを使用。
② オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
・ 料理用として新鮮で安価なハーブや、特殊性があり他では生産していないミニ野
菜などに可能性。
・ 調理師の創作意欲を刺激する食材の提供。
③ ブランド化に向けた課題
・ 有機野菜は年間を通した産地指定での調達が困難。
④ ブランド化における対策や工夫
・ 売り込み市による販路開拓。
主な意見等の詳細
① オホーツク産品の取扱
・ 農産品では、玉ねぎ、ペティオニオン、ヒラタケ(しめじ)、レホール(西洋わさび)
など、また、わさび加工メーカー契約農家からのミニビーツやミニフェンネルを使用。
・ 水産品では、北海道を代表する「ほたて」をオホーツク産を中心に使用。
② オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
料理用として新鮮で安価なハーブに可能性
・ ヨーロッパ料理等では、ハーブを多く使用するので、洋食調理場では、新鮮で安価
であれば、もっと使いたいという意向がある。
他の地域が栽培していない特殊性の高い野菜の提供
・ オホーツク地域は、札幌など大消費地から離れているので、特殊性や単価の高い産
品であれば、流通コストを価格に含められるので、流通に乗せやすいと思う。
・ ミニビーツやミニフェンネルなどの「ミニ」野菜は、調理師が新鮮な印象を持つと
思う。
調理師の創作意欲を刺激する食材の提供
・ 調理師は常に新しい素材を探しているので、生産者側でも情報収集しながら新しい
発想で話題性のある新しい食材を試してみてはどうか。
・ オホーツク地域から連想されるものとしては、水産品のイメージが高く、ブランド
力があると思う。
③ ブランド化に向けた課題
有機野菜は年間を通した産地指定での調達が困難
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・ 有機野菜は、イベントには使えても、通常メニューに載せるのは、収穫がない場合
や端境期に他のもので代替できない場合があるため、難しい。また、有機野菜を通
常メニューで使用するためには、量の確保が必要なので産地を固定するのは難しい
という課題がある。
④ ブランド化における対策や工夫
売り込み市による販路開拓
・ ホテルやレストラン、デパートなど流通事業者がブースを出し、売り込みを希望す
る生産者団体や食品加工事業者が、各ブースを売り込みに回る。通常の物産展とは
違い、売り手が意欲を持って準備して商品説明をするため、商談に結びつくケース
が増えている。
45
(5)消費者
オホーツク地域及びオホーツク産品に対するイメージや認知、購買経験等について把握
するために、札幌圏と首都圏において、消費者グループインタビューと産品の試食等評価
(5段階の点数付けと自由記入によるアンケート形式)を実施した。
オホーツク地域のイメージでは、「海」の印象が強かったが、地域のエリアがやや曖昧
となっていた。首都圏の消費者では、「北海道の中での位置がわからない」などの意見も
出されている。産品のイメージや購入経験では、かに、ほたて、かきなどの水産品や、玉
ねぎや馬鈴しょなどの農産品の他、ハッカ菓子類や乳製品などもあげられていた。
地域産品の購入方法では、札幌圏の消費者から、ポスターや観光パンフ、口コミやイン
ターネットなどで情報収集してから購入しているという意見が出された。
オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性については、札幌圏、首都圏ともに、地
元で実際に食べられている食材や調理方法に興味を持たれており、地域の産品を活かした
目新しい商品を期待する意見が比較的多かった。
ブランド化における工夫としては、札幌圏、首都圏ともに、調理方法など食材に関する
情報提供、消費者の食生活や嗜好の変化に配慮した商品や販売方法などが提案された。
① 調査の内容
札幌圏
調査方法
首都圏
グループインタビュー及びオホーツク産品の試食等評価(アンケートによる)
a.「オホーツク」のイメージ
a.「オホーツク」の認知やイメージ
地図を見ながら、「オホーツク」と聞いて
地図を見ながら、位置や地名の認知や
思い浮かぶ地名や食材。
思い浮かぶイメージ。
b.オホーツク産品のイメージや購入経験
グループ
インタビュー
質問項目
きっかけ、購入経験、購入方法、購入で
地図を見ながら、「オホーツク」と聞いて
気にかけていること等。
思い浮かぶ食材。
c.地域産品の購入方法
c.オホーツク産品の購入経験
最近購入している地域産品、その理
きっかけ、購入経験、購入で気にかけて
由。欲しい情報や気にかけること等。
いること等。
d.オホーツク産品の地域ブランドとしての
可能性
評価項目
試食等
産品*1
参加者*2
d.オホーツク産品の地域ブランドとしての
可能性
e.ブランド化における工夫
試食等
b.オホーツク産品の認知
e.ブランド化における工夫
パッケージデザイン/食味・食感(使用感)/独創性/ネーミング/扱いやすさ/食品
(商品)表示/価格設定/購買意欲・総評
各項目を5段階と自由記入で評価。
農産加工品3、畜産加工品1、水産加工品
農産加工品2、水産加工品4、乳製品3、
3、乳製品3、菓子類3、生活関連用品1
菓子類3、生活関連用品1
計 14 品
計 13 品
札幌圏在住の 30 歳代から 60 歳代の
首都圏在住の 50 歳代から 60 歳代の
男女6名(調理師を含む)
女性8名
*1 産品選定に当たっては、流通実態調査調査品目の加工品を中心に、アンテナショップでの売上や話題性などを考慮した。
*2 参加者選定に当たっては、札幌圏及び首都圏の道産品アンテナショップにおける登録会員の属性(性別、年齢層)を参考とした。
46
② 札幌圏消費者への調査結果
札幌圏の消費者6人(調理師2人含む)に対するグループインタビューの結果は、以下
のとおり。
主な意見等について
a.
・
b.
・
・
c.
・
・
・
d.
・
・
・
e.
・
・
「オホーツク」のイメージ
オホーツク海から「海」のイメージが強いが、どこまでの範囲が含まれるのか、よくわ
からない。北見や遠軽は少し離れた内陸というイメージがある。
オホーツク産品のイメージや購入経験
紋別や網走の水産品のイメージが強いが、サロマ湖のカキ、網走のしじみ、北見の
馬鈴しょや玉ねぎ、紋別のぼたんえびなど地名で思い浮かぶ産品もある。
チーズやご当地グルメのイメージがある。
地域産品の購入方法
ポスター、観光パンフレットやネット、口コミ等で情報を入手。
店頭では、販売員からの説明や試食、商品のこだわりや食べ方、食品表示等を気
にかけている。
調理師としては、食材納入業者からの情報がきっかけで産品を知ることが多い。
オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
オホーツク地域で、実際に食べられている食材や調理方法に興味がある。
玉ねぎや馬鈴しょなどブランド力のある産品やその関連商品に可能性。
野菜を使ったスイーツなど目新しい商品に可能性。
ブランド化における工夫
地域での調理方法等を含めて食材の情報を発信。
単身者や少人数世帯等のニーズにも合わせた販売方法を工夫。
主な意見等の詳細
a. 「オホーツク」のイメージ
海に面している地域というイメージが強い
・ オホーツク海に面している浜頓別や海に沿った地域というイメージで、北見や遠軽は、
海からやや離れた(オホーツクとは別の)内陸というイメージ。
・ 稚内から知床、根室までの地域というイメージがあるが、雄武や枝幸は含まれるの
かどうか、はっきりとわからない。
・ 北海道の地図で見ると、オホーツク海とサロマ湖の印象が強い。
b. オホーツク産品のイメージや購入経験
水産品のイメージが強い
・ 紋別や網走の水産品というイメージが強い。お土産屋に並ぶ魚介類のイメージ。
サロマ湖のかきなど地名で連想される産品も多い
・ サロマ湖のかき、網走のしじみ、北見の玉ねぎや馬鈴しょ、紋別のぼたんえびなどは、
地名とともに思い浮かぶ。
47
チーズやご当地グルメのイメージ
・ 最近、興部でしか買えないチーズがあり、高くても買いたいと思った。興部のチーズ
は美味しくお土産でも好評だった。
・ B-1グランプリで話題になった「オホーツク北見塩焼きそば」が思い浮かぶ。
c. 地域産品の購入方法
ポスター、観光パンフレットやネット、口コミ等で情報を得る
・ 旅行先のホテルや飲食店のポスター、観光パンフレットや旅行雑誌等で、産品を知り、
さらにネットや口コミなどで調べてから購入する。
商品の特徴や表示を確認しながら購入
・ 店頭では、販売員からの説明や試食、商品のこだわりとともに、食べ方や扱い方、食
品表示などを気にかけている。
・ 調理師としては、食材納入業者からの情報がきっかけで産品を知ることが多い。また、
素材を活かすメニューには、産地名を入れている。
d. オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
オホーツク地域で、実際に食べられている食材や調理方法に興味
・ オホーツク地域の人達が食べている食材や食べ方に興味があるので、例えば、「おふ
くろの○○汁」のようなものが、意外と新鮮ではないかと思う。
馬鈴しょや玉ねぎなどブランド力のある産品やその関連商品に可能性
・ 馬鈴しょは、ぼつぼつがなく丸に近く凹みのないものが美味しい。北海道の馬鈴しょ
は、強いブランド力をもっているため、ホテルのメニューでは、スープ、付け合せ料
理、粉吹き芋、サラダをはじめ、シャーベットやアイスクリームなどデザートでも提
供しており、お客様の評判が良い。特に「インカのめざめ」は、好評だった。
・ 玉ねぎは、硬くて煮崩れしないのでスープにすると美味しい。煮物のだし汁のような
商品があると、アイテムが発展するのではないか。
野菜を使ったスイーツなど目新しい商品に可能性
・ 野菜を使ったスイーツや野菜チップス(レンコンチップスなど)は、野菜が苦手な人
や子ども向けとして、評判になっている。産品を活かした新しい食品を提供できるの
ではないか。
e. ブランド化における工夫
地域での調理方法などを含めて食材の情報を発信
・ オホーツク地域で実際に食べられている食材や食べ方を情報発信すると、消費者は
「食べてみたい」と興味を持つと思う。
・ 日頃から地域で食材を大切にして、その食べ方などを共有していくことが、地域外に
食材を伝えることにつながると思う。
単身者や少人数世帯などのニーズにも合わせた販売方法を工夫
・ 単身者や少人数の家族が増えているので、ホテルのデリカショップ(持ち帰り)では、
個包装やいくつかの料理を少量ずつ購入できる形式が好まれている。産品もこうした
販売の工夫が必要ではないのかと思う。
・ 産直やお取り寄せで、多種類産品の少量のセットや、組み合わせ自由なセットなどが
あると買いやすいと思う。
48
産品の試食等評価
全項目で点数の高い品目、購買意欲の高い品目、独創性や食味(使用感)の点数が高い
品目などは、以下のとおりであった。(詳細は資料編参照)
5段階評価(5満足・4やや満足・3ふつう・2やや不満・1不満)
a. 全項目で高い品目
こはるラーメン
食味、独創性、ネーミング、扱いやすさ、価格設定が4点以上と多くの項目の満足度
が高いことが、高い購買意欲を促している。期待以上の食味や地元へのこだわり、商品
情報を評価する意見が多く出されている。
b. 購買意欲の高い品目
かまぼこ(流氷の詩)
食味やパッケージの評価が4点前後と高く、購買意欲につながっている。個包装に加
えて、ほたてやかにがまるごと入っている(まるごと感)印象が、オホーツクと結びつ
いて「お土産として買いたい」という意見となっている。
ナチュラルチーズ(おこっぺ大地)
食味、購買意欲の評価がともに4点を超え、輸入チーズと比較して味や価格で評価さ
れている。扱いやすさや食品表示については、ふつう(3点)となっている。試食会後、
購入した参加者がいた。
ライ小麦クッキー
独創性、食味の評価が共に4点を超え、高い購買意欲につながっている。ライ小麦と
いう珍しく初めての味と食感がインパクトを与えたことや、一口サイズのクッキー小袋
入りが、手ごろで買いやすい価格であることが影響していた。
c. 食味は高いが購買意欲がやや低い品目
杜のヨーグルト
食味や独創性の評価は4点近いが、購買意欲は3点程とやや低い。価格が同様な商品
に比べて割高感を持たれたことや、消費者の嗜好も購買意欲に影響を及ぼしている。
d. もうひと工夫求められた品目
わかさぎの佃煮
パッケージや食味の評価は4点に近いが、扱いやすさや食品表示でやや不満がみられ
る。小分けの真空パックや、保存方法など食品表示を十分にする、量を減らして低価格
に、などの工夫が提案された。
49
調査対象産品
No. 産品分類
1
農産
加工品
2
〃
3
畜産
加工品
4
水産
加工品
5
〃
6
〃
商 品 名
価 格
こだわり
帆立のポタージュ
1箱(18.5g×4袋)
630円
オホーツク産ホタテ使用。
オニオンエキス:北見産玉ねぎ使用。
白花豆のポタージュ
1箱(20g×4袋)
630円
北見産オニオンソテー、北見産
白花豆使用。
5本入@350円
北海道産の豚8種類をブレンド、
72時間熟成で旨みをじっくりと引
き出したドイツタイプのウィンナー。
わかさぎの佃煮
500g 1,990円
網走産のわかさぎを使用。
かまぼこ 流氷の詩
ほたて、かに、紅鮭
各263円
紋別の老舗蒲鉾店、それぞれす
けとうだらが原材料で、海産物
がまるごと入っているのが特徴。
北海道オホーツク
流氷カレー
1人前 525円
北海道生れのほたて貝柱に、とう
もろこし、じゃがいも、人参を加
えて作った風味豊かなホワイトカレー。
牧草の質にこだわって、冨田ファ
ームで育った乳牛の生乳を使った
オーガニック無添加の飲むヨーグ
ルト。
あらびき
ポークウィンナー
7
乳製品
杜のヨーグルト
150ml 180円
500ml 380円
8
〃
ナチュラルチーズ
(おこっぺ大地)
150g 945円
化学肥料を使わずに育った草から
生産された原料乳をもとに作られ
たチーズ。
9
〃
ナチュラルチーズ
(ミモレット・アドナイ)
100g 580円
アドナイとはヘブライ語で「神」
を意味し、頑固職人のこだわりの
チーズ。
10
菓子類
オホーツクの
ラスク屋さん
オニオン 315円
小麦粉:オホーツク産「春よ恋」
使用。
11
〃
クッキー 180円
常呂産ライ小麦、訓子府産卵
使用。
12
〃
フィナンシェ
訓子府産はちみつ、訓子府産卵、
オホーツクの塩使用。
バター:アドナイ(興部町チーズ店)
13
農産
加工品
14
ライ小麦クッキー
フィナンシェ
こはるラーメン
オホーツク
生活
ピュアハニー
関連用品
(入浴剤)
120円
1食入 170円
斜里産春小麦使用、野菜エキス:
斜里産野菜(たまねぎにんじん、
こまつななど)使用、袋の絵:
斜里中学校美術部作。
1回分1袋 263円
遠軽町「花田養蜂園」のはちみつ
使用。
50
② 首都圏消費者への調査結果
首都圏の消費者8人に対するグループインタビューの結果は、以下のとおり。
主な意見等について
a.
・
「オホーツク」の認知やイメージ
北海道の中での位置や範囲はよくわからないが、「美味しいものがある」や「海がき
れい」などのイメージがある。
b.
・
オホーツク産品の認知
出身者や旅行経験者にとっては、かに、ほたて、かき、玉ねぎや馬鈴しょ、ハッカ関
連菓子類など。
c. オホーツク産品の購入経験
・ かに、ほたて、かきなどの水産品、玉ねぎや馬鈴しょ、アイスクリームなどの乳製品。
d. オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
・ 地元で食べられていて関東では手に入らない漬け物や飯寿司に可能性。
・ 鮭の白子など珍しい食材を活かした商品に可能性。
e. ブランド化における工夫
・ 調理方法について情報提供。
・ 消費者の生活に合った商品の形態や容量の工夫。
・ 消費者の嗜好の変化に対応。
主な意見等の詳細
a. 「オホーツクのイメージ」
北海道における位置や範囲等がよくわからない
・ 海岸のイメージが強く内陸部の印象があまりない。美幌や知床も含まれるのかどう
か、北海道の中での位置や範囲がよくわからない。
・ 北海道の地名は、当て字が多く難しくて読めないものが多い。
美味しい食材や海がきれいというイメージがある
・ 行ったことはないが、「美味しいものがある」、「海がきれい」というイメージが
ある。
・ 旅行で見た流氷や凍ったサロマ湖を歩いた経験、網走刑務所などが思い浮かぶ。
b. オホーツク産品の認知
かに、ほたて、かき、玉ねぎや馬鈴しょ、ハッカ関連商品など
・ 出身者や旅行経験者にとっては、かにやほたて、かきなどの水産品、玉ねぎや馬鈴
51
しょなどの農産品、ハッカ羊羹などの菓子類が認知されている。
・ ふるさとの思い出として、北見メロン、鹿肉やとど肉、鮭の飯寿司等。
・ 来訪経験はないが、「ほたて」から「ほたてラーメン」を連想。
c. 地域産品の購入経験
かに、ほたて、かきなどの水産品、玉ねぎや馬鈴しょ、アイスクリームなど乳製品
・ かにやほたて、かきなどの水産品、玉ねぎや馬鈴しょなどの農産品など。
・ 網走の会社から、2∼3ヶ月に1回のお取り寄せで、水産品、塩アイスクリーム、
くじらの刺身、バターやプリンを購入している。
・ 関東では売られていない、すりおろした山わさびの瓶詰を、新千歳空港で購入した。
・ 以前、斜里でキャンプをした時に地元で購入した大きな「ほたて」や「かき」が印
象的だった。
・ 殻の大きさの割には中身の大きな紋別のかき。北海道のかきが大きいのは、海が豊
かだからではないかと思う。
・ 関東のスーパーでは、かきは広島産や宮城産、仙台産が中心のため、北海道産をお
取り寄せで購入している。
・ 「雪化粧」という名の白いかぼちゃが美味しい。煮物やプリンを作って食べている。
d. オホーツク産品の地域ブランドとしての可能性
地元で食べられていて、関東では手に入らない漬け物や飯寿司に可能性
・ 以前、北見では、鰊の代わりにコマイで「にしん漬け」を漬けていた。地元で食べら
れている漬け物などの商品があってもいいと思う。
・ 飯寿司は、関東では生臭いと敬遠する人も多いが、道産子は美味しさを知っている
食べ物。こちらではなかなか手に入らないので、買えるといいと思う。
鮭の白子など珍しい食材を活かした商品などに可能性
・ 鮭の白子は安くて美味しい素材。最近、白子の燻製を食べたが、チーズのような珍
味で美味しかった。東京のイタリアンレストランでは、白子を使ったメニューもあ
る。
e. ブランド化における工夫
調理方法について情報提供
・ 鮭一匹をお取り寄せで購入して、頭も氷頭なますにして捨てないで食べている。関
東で鮭の白子を食べないのは、食べ方を知らないためではないかと思う。
・ 魚の美味しさを知っている消費者はグリルで調理すると思うが、そうでない消費者
は後片付けの手間もあるため、電子レンジの調理で満足できるのかもしれない。
消費者の生活に合った商品の形態や容量の工夫
・ 鮭一匹丸ごとでは、量が多く調理が大変なため、少人数用向けの工夫があると良い。
・ かぼちゃは美味しいが、一玉そのままで送られてくると、女性の手では固くて切れ
ないので、カットするなど扱いやすい工夫があると良い。
消費者の嗜好の変化に対応
・ 最近、チリ産の甘味がある脂が乗った鮭に慣れてきたため、北海道の鮭をあまり食
べなくなった。
・ 以前は塩引き鮭があったが、今は柔らかくて甘塩の鮭が多い。
52
産品の試食等評価
全項目で点数の高い品目、食味(使用感)の点数が高い品目などは、以下のとおりであっ
た。(詳細は資料編参照)
5段階評価(5満足・4やや満足・3ふつう・2やや不満・1不満)
a. 全項目で高い品目
ほたてエレガンス
独創性、食味、扱いやすさなど7項目で4点以上と満足度が全体的に高く、独創性が
4.9 点と全品目で一番高かった。わさび味がきいたディップで、いろいろな食材に合い
そうな印象が高い評価となっている。「もっと宣伝しては」という意見があった。
ハッカ樹氷
全項目で4点以上、扱いやすさやネーミングで評価が高い。初めての味、身体によく
甘さが美味しい、ハッカと甘納豆のコラボを評価する声が多かった。
b. 食味は高いが購買意欲がやや低い品目
ナチュラルチーズ(おこっぺ大地)
パッケージや食味、ネーミング、扱いやすさ、食品表示は高い評価だったが、チーズ
は嗜好性の強い商品のためか、購買意欲はやや低かった。
c. もうひと工夫求められた品目
ホタテチップス
食味(4.6 点)や独創性(4.3 点)の評価は高く、意外性が受けている。お土産でも通販で
も買えそう(買いたい)という声があったが、価格設定(3.3 点)の評価は低かった。
北の焼きそば(オホーツク北見塩やきそば)
全項目が4点前後とバランスのとれた評価を得た。食味では、インスタントにしては
美味しい、もちもち感が良いなど。また、購買意欲では、北海道限定、若者に喜ばれそ
うという意見が出ていた。独創性(3.8 点)やネーミング(3.8 点)の評価はやや低かっ
た。
ライ小麦クッキー
ネーミング(3.4 点)を除いた項目は4点以上で、特に独創性が 4.5 点と高い評価を
得た。歯ごたえや大きさなど食味の良さ、変わった味や珍しい材料、身体に良さそうと
いう意見があった。
オホーツクピュアハニー(入浴剤)
扱いやすさ、表示、独創性の評価が4点以上と高い。「しっとりすべすべ感」「冬の
乾燥期にいい」などの意見があり、入浴剤へのニーズが高いことがうかがわれる。また、
表示に洗濯の注意が含まれているなど、使う側が必要な情報が提供されている点も評価
された。ただし、価格設定(3.5 点)の評価が低かった。
53
調査対象産品
No. 産品分類
1
水産
加工品
2
商 品 名
価 格
こだわり
ホタテチップス
12g 525円
北海道産ほたて、オホーツクの
塩使用。
〃
かまぼこ 流氷の詩
ほたて、かに、紅鮭
各263円
紋別の老舗蒲鉾店、それぞれす
けとうだらが原材料で、海産物
がまるごと入っているのが特徴。
3
〃
ほたてエレガンス
わさび 525円
オホーツク産ほたて使用。
4
農産
加工品
帆立のポタージュ
1箱(18.5g×4袋)
630円
オホーツク産ホタテ使用。
オニオンエキス:北見産玉ねぎ使用。
5
菓子類
オホーツクの
ラスク屋さん
オニオン 315円
小麦粉:オホーツク産「春よ恋」
使用。
6
水産
加工品
北の焼そば
(オホーツク北見
塩やきそば)
107g 160円
北海道限定品
7
乳製品
ナチュラルチーズ
(おこっぺ大地)
150g 945円
化学肥料を使わずに育った草から
生産された原料乳をもとに作られ
たチーズ。
8
〃
ナチュラルチーズ
(カチョカバロ・アドナイ)
100g 600円
アドナイとはヘブライ語で「神」
を意味し、頑固職人のこだわりの
チーズ。
9
菓子類
ライ小麦クッキー
クッキー 180円
常呂産ライ小麦、訓子府産卵
使用。
10
乳製品
杜のヨーグルト
150ml 180円
牧草の質にこだわって、冨田ファ
ームで育った乳牛の生乳を使った
オーガニック無添加の飲むヨーグ
ルト。
11
菓子類
ハッカ樹氷
1袋 315円
北見特産ハッカ、北見産大正金時
豆使用。
12
農産
加工品
1食入 170円
斜里産春小麦使用、野菜エキス:
斜里産野菜(たまねぎにんじん、
こまつななど)使用、袋の絵:
斜里中学校美術部作。
1回分1袋 263円
遠軽町「花田養蜂園」のはちみつ
使用。
13
こはるラーメン
オホーツク
生活
ピュアハニー
関連用品
(入浴剤)
54
Ⅲ章
食品関連産業構造分析
1.オホーツク地域における食品加工業の現状
(1)全道における食品加工業の位置
オホーツク地域(旧網走支庁管内)の食品工業の現状を工業統計から見ると、製造
品出荷額等(従業員が4人以上の事業所)は、石狩、十勝に次いで道内3番目、付加
価値額は4番目と上位にあるものの、商品の製造過程で生み出される付加価値の状況
を示す付加価値率は、21.7%と道内では低位となっている。付加価値額が同規模の「渡
島」と比べると、出荷額が「網走」より小さいにもかかわらず、付加価値率は 28.7%
と「網走」よりも高くなっている。オホーツク地域は、道内他地域と比べ、低次加工
による出荷、あるいは食品加工会社の製品原材料となる中間品としての出荷が多い可
能性を窺うことができる。
今回、流通実態調査に協力いただいた生産者団体等では、玉ねぎや馬鈴しょ、生乳
で域内の加工原料需要や業務用需要向けの出荷が見られたものの、少量あるいは低次
加工が多く、また、ほたてでは、多様な加工品が製造されているが、冷凍や乾燥など
低次加工での出荷が中心となっていた。(詳細は次項を参照)
道内地域別食品工業の状況
(平成20年旧支庁別データ)
製造品出荷額等(億円)付加価値額(億円 付加価値率
北海道
21,655
5,979
27.6%
石狩
4,521
1,465
32.4%
渡島
2,018
580
28.7%
檜山
50
22
44.0%
後志
1,315
391
29.7%
空知
703
211
30.0%
上川
967
368
38.1%
留萌
488
163
33.4%
宗谷
883
212
24.0%
網走
2,638
572
21.7%
胆振
1,145
225
19.7%
日高
218
34
15.6%
十勝
2,956
862
29.2%
釧路
2,223
505
22.7%
根室
1,527
366
24.0%
*「北海道の食品工業の現状」平成22年より作成
*「付加価値額」は、「生産額ー(内国消費税額+推計消費税額)原材料使用額等-減価償却額」により計算したもの。
55
(2)本調査に見るオホーツク地域の食品関連産業の特徴
①流通実態調査のまとめ
原料供給型がベース、一部域内加工による付加価値化も
農産品の流通実例を見ると、小麦では、全量が製粉原料として、馬鈴しょでは約 98%が
でんぷん原料として域外に、生乳では食品加工会社域内工場の原料として出荷されていた。
玉ねぎは、生食用として域内外の卸売市場を通じて流通している割合が高くなっていた。
また、出荷量全体に対する割合は小さいものの、域内での製品加工の取組が見られた。
玉ねぎや馬鈴しょの規格外品は、加工原料として域内外の食品加工会社に出荷され、
域内の食品加工会社においても、スープやカレーなどの最終製品となり、域内外で流
通している例が見られた。小麦は、近年、域内加工事業者の間で地元産小麦使用への
関心が高まっており、うどんやラーメンなどの麺類、パン等に製品化され、域内外に
も流通しているケースがあるが、域外業者に製粉を依頼しているため、商品の小売価
格は割高になっていた。また、生乳においても、域内でチーズなどの乳製品に加工さ
れ全国に流通しているケースがあった。
生食用のまま出荷する場合では、ネット販売やふるさと小包による小売価格の方が
スーパー等よりも高くなっていた。
原料供給型がベース、一部で直販による付加価値化も
水産品の流通実例を見ると、主に産地卸売市場(開設者:漁協)を通じて、生食用
や一次加工品として域内外に流通していた。
ほたては、域内で燻製やかまぼこなどの製品に加工され、域内外への流通や、一次
加工品(干貝柱)が海外に流通するケースが見られた。価格を見ると、サイズや産地、
加工原材料による違いはあるものの、むき身(生食解凍)では小売価格は産地出荷価
格の約 13 倍、貝柱(生食解凍)では約 27 倍、加工品(ほたてチップス)では約 40
倍と、大きな差が見られた。
かきは、道内が中心となっているが、ネット販売やふるさと小包を通じた域外へ
の流通も見られ、価格はスーパー等での小売価格より高く産地出荷額の約3倍とな
っていた。きちじは、希少性もあり高級ブランドとして全国に流通しているため、
出荷価格、最終小売価格ともに高かったが、調査結果では、最終小売価格は産地出
荷価格の約 1.4 倍となっていた。ばかがいは、主に域外で加工され、「青柳」として
関東方面で高級寿司ネタなどとして流通していた。
②ブランド調査のまとめ
ブランド調査結果(流通卸売事業者・小売事業者・飲食事業者等)によると、「品
質の確かさや安全性」を評価する意見が多くあった一方で、域内(道内)での食品
加工への取組に期待する意見も見られた。
さらに、地域特性を活かした産品の生産や商品開発、流通事業者や消費者が求め
ている商品情報の的確な提供、メディアを活用した地域の食材と観光イベント等を
組み合わせた効果的なPR、市場ニーズや流通現状を踏まえた品揃えやブランド戦
略など、産品を流通に乗せるための課題の指摘や提案があった。(詳細は次頁参照)
56
品質の確かさや安全性への評価は高く、安全安心の取組は強みに
流通卸売事業者から、産品の品質や安全性を高く評価する意見が多かった。さらに、
「安心安全」は、ブランド化の大前提となるので、「YES!clean」など認証制度の取組を
広げること、オホーツクの冷涼でクリーンなイメージにも合うので積極的なPRで強み
にすること、そのためには、輸送や保存段階での品質保持も重要なことが指摘された。
地域特性を活かした産品や商品、希少性のある産品にブランド化の可能性
流通卸売事業者から、大量出荷が可能な産品、地域特性を活かしたスキマ野菜など
量や季節性に希少性のある産品に、ブランド化の可能性を見る意見が出された。
小売事業者からは、地域の名産品や地域メニューを参考した、目先の違う商品や生
活関連商品にも可能性が見えることが提案されていた。
飲食事業者からは、馬鈴しょの貯蔵期間による付加価値化や、地元だけで流通して
いる産品にもブランド化の可能性があるという意見が出されていた。
産品(商品)の情報が流通段階や消費者に十分に提供されていない
流通卸売事業者から、産品についての情報(ブランド認証制度、他産地との違い等)
が、流通段階までに届いていないとの指摘があった。さらに、産品や産地情報を伝
える販売促進グッズがあると、より効果的なPRや販売が可能になるという提案が
出されている。
小売事業者からは、消費者に必要な情報(食べ方や調理方法、食品表示等)が十
分に提供されていないことが、課題としてあげられていた。
産品の付加価値化や食品加工の取組をもっと盛んに
流通卸売事業者や流通小売事業者から、「品質の良さと量に自負があるためか、付
加価値化や食品加工への意欲があまりない」ことが指摘されていた。さらに、消費
者ニーズの変化や産地間競争が厳しい中、地域の将来を懸念する意見や、域内加工
への取組は地域経済活性化にもつながるという提案も出されていた。
食と観光イベント等と組み合わせて、メディアを利用したPRを
小売事業者や飲食事業者から、メディアを効果的に利用して、ご当地限定商品の展
開や観光イベント等を組み合わせ、地域全体で「食」をアピールすることが提案さ
れていた。
ブランド化のための連携体制を
飲食事業者から、産品(商品)のブランド化を目指して、行政、農協や漁協、商工、
観光関係者、研究機関などが連携した取組が重要という意見が出されていた。
市場ニーズ変化への機敏な対応を
流通卸売事業者から、消費者嗜好の変化、安全安心と価格のバランス、輸入食品へ
の対応など、変化している市場ニーズへの機敏な対応が競争力向上につながること、
57
また、流通の現状を踏まえたブランド戦略の必要性が指摘されていた。
58
2.オホーツク地域の食品関連産業の特性
本調査で得られた情報や主な意見、既存資料から定性的に得られる知見などから、オホ
ーツク産品の地域ブランドとしての可能性を牽引する「強み」と「機会」、一方で、ブラ
ンド化を進める上で課題と思われる「弱み」と「脅威」に分けて、オホーツク地域におけ
る食品関連産業の特性について、次のとおり整理を試みた。
なお、「内部環境の強み」以外の各項目については、ブランド調査結果での「オホーツ
ク産品の地域ブランドとしての可能性」及び「ブランド化における課題」の意見を基に整
理した。
強み
弱み
・水産品から農畜産品、乳製品まで幅広く
内
良質な産品が豊富
部
・ 産地間等の競争にさらされていない
・ 地域内加工の取組が少ない
・品質の良い産品を生産できる海、土地、 ・ 消費者に必要な情報が十分に提供されて
環
水など豊かな自然
境
いない
・一次産品の生産地として生産・出荷・選
・ 認証制度等のPRが不十分
別ノウハウの蓄積
・知床や流氷、サロマ湖など比類ない観光
資源
機会
脅威
・主要産地としての実績や知名度の高さ
・オホーツク地域に対するイメージが未確立
外
・市場からの品質に対する高い評価
・食生活の変化による市場ニーズの多様化
部
・海や流氷などクリーンなイメージ
・輸入品や他産地との競争
環
・安全安心や健康志向の高まり
境
・海外における北海道水産品のブランド力
の高まり
・地球温暖化による生産可能な産品の変化
(1)内部環境
<強み>
①
水産品から農畜産品、乳製品まで幅広く良質な産品が豊富
②
品質の良い産品を生産できる海、土地、水など豊かな自然
③
一次産品の生産地として、生産・出荷・選別ノウハウの蓄積
④
知床や流氷、サロマ湖など比類ない観光資源
<弱み>
①
産地間等の競争にさらされていない。
高品質な産品を大量に流通できたことから、産地間等の競争にさらされていない。
②
域内加工の取組が少ない
新たな市場ニーズに対応する地域産品を活かした商品開発が域内で進まない。
③
消費者に必要な情報が十分に提供されていない
59
消費者が必要としている産品の特徴、食べ方や扱い方などの情報が十分に提供され
ていない。
④
認証制度等の受け手に対するPRが不十分
認証制度等の適用に取り組んだ産品について、市場における適切な評価が十分に得
られていない。
(2)外部環境
<機会>
①
主要産地としての実績や知名度の高さ
北海道を代表する良質な産品を大量に出荷してきた実績から、全国的に知名度のあ
る産品が多い。
②
市場からの品質に対する高い評価
市場関係者や流通卸、飲食店などからの品質への評価が高い
③
海や流氷などクリーンなイメージ
海や流氷とともに自然豊かなきれいな空気、クリーンな土地イメージが産品に好印
象を与える。
④
安全安心や健康志向の高まり
低農薬や有機農産物、輸入品よりも国産品を求める消費者や市場関係者が、まだ規
模は小さいもの確かに増えている。
⑤
海外における北海道水産品のブランド力の高まり
北海道の品質のよい水産品へのニーズが高まっている。
⑥
地球温暖化による生産可能な産品の変化
地球温暖化により、栽培可能な農産物や品種が増える可能性がある。ただ、海水温
の上昇や気候変動などによる様々な影響も予想される。
<脅威>
①
オホーツク地域に対するイメージが未確立。
道内では「海」や「水産品」のイメージがあるものの、地域全体としては曖昧。ま
た、道外では、「北海道」に対するイメージはあるものの、「オホーツク」に対する
具体的なイメージにはつながりづらい。
②
食生活の変化による市場ニーズの多様化
食生活の変化等による外食産業向けの業務用加工用野菜の流通の増加、消費者の嗜
好の変化や健康志向等を踏まえて、流通段階を含む市場ニーズが多様化している。
③
輸入品や他産地との競争
消費者の嗜好に合わせた輸入品や、他産地の商品との競争が厳しくなっている。安
全志向が徐々に広がっているが、低価格志向も強い消費者への対応が難しくなってい
る。
60
3.「食」の地域ブランド力を高めるために期待される取組や方向性
本調査結果から、「食」に関するオホーツク地域のブランド力を高めるために、産品
の商品開発、生産、加工・製造、流通、マーケティングの各実践プロセスにおいて、期
待される取組や方向性を整理するとともに、参考となる事例を提示する。
(1)地域ブランド力を高めるために期待される取組や方向性
「食」及び食関連産業を取り巻く環境が厳しくなる中で、オホーツク地域の産品や商
品の市場における存在感を、今後も維持し増大させていくためには、オホーツク地域の
ブランド力が鍵となる。
そのためには、全国的にも評価の高い豊かな「食」資源の活用と高付加価値化、その
両輪となるべく「オホーツク地域のイメージ」の確立・浸透が不可欠となる。
例えば、流氷やオホーツク海、豊かな自然環境が生み出す「クリーン」なイメージは、
その土地の産品や商品に好印象を持たせ差別化できる可能性が高い。しかし、その産品
や商品が、流通市場で的確に評価(価格付け)され、消費者を惹きつけるためには、供
給側が、商品に関わる情報を観光などとタイアップさせて地域全体で発信するなど積極
的な手段も必要となる。その時に、「オホーツクらしさ」や「オホーツクならでは」とい
う、地域的な統一感が基本にあると、より説得力が高まる。一方、商品開発や販路開拓
では、消費者等の市場ニーズの把握が必須となる。
「食」に関連するオホーツク地域の様々な主体が、各々の立場で意欲的に繋がること
で、商品開発、生産、加工・製造、流通、マーケティングの各プロセスで付加価値を増
大する好循環を創り、地域のブランド力が高められていく。これを実現するためには、
オホーツク地域における主体間の連携協力が求められる。
以上から、「食」に関する地域ブランド力を高める方向性には、次の3つの観点が重
要と考えられる。なお、各主体に期待される取組や方向性のイメージを、次表のように
整理した。
① 産品や商品の競争力の向上
オホーツク地域の産品等の市場価値をより高めるために、商品開発、生産、加工・
製造、流通、マーケティングの各実践プロセスにおける高付加価値化が重要。例え
ば、地域産品を活用した新アイテムやメニューの開発、域内加工の活発化、流通の
低コスト化や効率化などがあげられる。
また、消費者嗜好の変化、安全安心と価格のバランス、輸入食品増加への対応など、
流通・消費市場ニーズの変化を積極的に把握し、事業者と関係機関等が連携して、戦
略的な商品開発や既存商品等のブラッシュアップ、販路開拓の展開につなげることが
重要。
② 食に関わる地域全体の情報発信力の向上
産品や商品の安全性は元より、「オホーツクらしさ」など他産地と商品を差別化で
きる情報を地域全体で共有し、域外の市場や消費者等に対して的確に情報発信するこ
61
とや、消費者や各流通段階が求める情報の積極的な発信を通じて、市場での信頼感を
高めること。また、生産・商工・観光の各主体が連携して、地域イメージや観光・産
品情報を発信することが重要。例えば、食関連イベントや観光事業を地域の様々な主
体が連携して実施し、メディアを活用して積極的に発信していくことが重要。
③ 多様な主体による連携・協力体制の形成
上記2点に関連するが、オホーツク地域が市町村の枠を超えて、生産・商工・観
光の各主体と共に、住民や NPO、研究機関、メディア、金融機関、行政を含む多様な
主体により連携・協力するネットワークを形成して、ブランド力を高めていくこと
が重要。
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「食」に関するオホーツク地域のブランド力を高めるために期待される取組や方向性のイメージ
実践プロセス
商品開発
生産
加工・製造
生産者/
生産者団体
・ライフスタイルや嗜好の
変化に対応した展開
・安全安心な産品の供給
・市場ニーズの把握
商工事業者/
関連団体
・地域産品を活用した
新アイテムやメニューの
開発
・市場ニーズの把握
研究機関/大学/
アドバイザー
観光事業者/
関連団体
住民・NPO
域外流通/
飲食関係事業者
等
・域内加工の活発化
・適切な食品表示
流通
マーケティング
・付加価値を高める鮮度
保持の取組
・産品特性や安全性に関する
情報発信
・地域イベント等様々な機会を
活用した販路開拓
・低コスト化や
効率化の取組
・商品の付加価値を高める情
報の発信
・調理方法や保存方法の普及
・販路開拓
『食』の地域ブランド力
の向上
・産品や商品の競争
力の向上
・商品開発等への技術支援やアドバイス ・情報発信や販路開拓に関わるアドバイス
・食関連イベントや観光事業の
地域全体での開催
・地域の様々な観光や産品の
情報を発信
・食関連イベントや
観光事業の企画立案
・名産品の情報提供
や地域メニューの
掘り起こし
・食関連イベント等への参画・
協力
・域内産品の消費拡大
・食に関わる地域全
体の情報発信力の
向上
流通市場や消費者ニーズに関する情報の提供
・生産・商工・観光の各主体
と連携して、地域イメージや
観光・産品情報を発信
メディア
行政機関
域内外の各主体との連携協力におけるコーディネート
金融機関
事業化への支援・経営コンサルティング等
63
・多様な主体による
連携・協力体制の
形成
(2)参考事例の提示
上記の3つの観点から、参考となる取組事例を以下のとおり提示する。
①参考事例「産品や商品の競争力の向上」
安全安心の取組から販路開拓が実現
・
玉ねぎ生産で YES!clean に取り組み、小麦との輪作体系で緑肥による土づくり
を行うなど、安全安心を重視している。こうした積み重ねが消費者から評価され、
福岡の生協(FCOOP)との安定的取引につながっている。
【流通実態調査 域外生産者団体ヒアリング(資料編p10)】
・
ほたての流通では、道内生協との取引が比較的大きいため、ギフトなどの商品
企画を活用して顧客開拓、大量流通が実現している。この連携により道外のパル
システム(首都圏コープ事業連合会宅配事業)に参加して、首都圏や中部圏での
販路開拓が可能になった。
【流通実態調査 域外生産者団体ヒアリング(資料編p20)】
市場ニーズに対応できる産品の提供により競争力を向上
馬鈴しょの加工輸入原料との競合には、国産品の安全性や加工ニーズに対応で
きる品種の生産などで競争力をつけていきたい。加工用には貯蔵性が求められる
ため、品種特性を考慮しながら貯蔵技術を高め、ニーズに対応する付加価値を高
めていきたい。
【流通実態調査 域内生産者団体ヒアリング(資料編p11)】
生産・加工の技術力向上による高付加価値化の実現
生産技術の向上により、かきの通年漁獲や稚貝の育成が可能になり、付加価値
の高い商品の開発とブランド化が実現している。特許取得した「シングルシード
方式」というカキ稚貝の育成方法により、生まれも育ちも当地産の「かき」の生
産に成功。生産量が少ないので、時期限定で希少性を持たせている。(*シング
ルシード方式とは、室内で5mm 位に育った稚貝を、砕いたホタテの貝殻に1枚に1
粒付けて海で育てる方法)また、ブランドの質を維持しているために、漁協全体
で衛生管理を重視し実践している。
【流通実態調査
64
域外生産団体ヒアリング(資料編p25)】
市場ニーズを踏まえた出荷時期や出荷量の検討
・
オホーツクの小玉ねぎ(ペコロス)や赤い玉ねぎは、低農薬で市場で信頼され
ている。ペコロスは、愛知が主だが、端境期はきたみらい産だけになるため、か
なり需要がある。国産へのニーズが強く、品質が一定で量も確保できるきたみら
い産の評価は高い。
【ブランド調査 流通卸売事業者ヒアリング(資料編p31)】
・
当地のほたては漁獲量がオホーツク地域より小さいため、競合を避けて市場の
品薄期に出荷して、付加価値を高め出荷価格を維持している。
【流通実態調査 域外生産者団体ヒアリング(資料編p20)】
地域特性を活かした産品で希少価値の創出
オホーツク地域は大消費地から離れているので、特殊性や単価の高い産品であ
れば流通コストを価格に含められるので、流通に乗せやすいと思う。例えば、ミ
ニビーツなどミニ野菜は、調理師が新鮮な印象を持ちブランド可能性があると思
う。
【ブランド調査 飲食事業者ヒアリング(資料編p46)】
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②参考事例「食に関わる地域全体での情報発信力の向上」
生産者団体の取組について情報提供
漁協の取組や生産方法をパンフレットで紹介し、ほたての販路開拓を行ってい
る。パンフレットには、魚種、加工事業、取扱商品、直売センターの他、漁協事
業の詳細を記載している。こうした情報公開は信用度を高め取引にもつながる。
また、主要産品は、詳細を紹介する独自のパンフレットでPRしている。
【流通実態調査 域外生産者団体ヒアリング(資料編p20)】
消費者や飲食店等に必要な情報の提供
・
道内最大級の漁協直売店で、観光客や地元消費者への販売に力を入れている。
パンフレットには、取扱商品、商品特徴、生食用など扱い方、取扱時期等と共に、
注文方法も記載している。特産品の「かき」は、貝のむき方や食べ方、栄養素な
どをイラストでわかりやすく紹介したパンフは、観光客からの評判も良くブラン
ド化に一役買っている。
【流通実態調査 域外生産者団体ヒアリング(資料編p25)】
・
活〆きんきには、漁協名と生産方法、生産者名を示すタグを付けて出荷してい
る。販売店等に配布するポスターには、魚の特徴や食べ方、漁獲時期などを記し
ておいり、POP としても大変好評で、ブランドのイメージづくりになっている。
【流通実態調査 域外生産者団体ヒアリング(資料編p27)】
観光イベント等と連携して地域全体で「食」をアピール
・
観光イベント等と組み合わせて、食材を広くアピールできるようにすると、
宣伝効果が大きいのではないか。オホーツク地域を広く回ってもらうために
は、点として往来するのではなく、デパートで買い物をして回るように、面
で連携して開催するとよいのではないか。
【ブランド調査 流通小売事業者ヒアリング(資料編p41)】
・
沖縄や九州は、メディアで強力的に産品を売り込んでいる。北海道も食材だけ
ではなく観光やレジャーを含めて、もっと地域全体でPRするとよいのではない
か。
【ブランド調査 飲食事業者ヒアリング(資料編p44)】
66
③参考事例「多様な主体による連携・協力体制の形成」
地域産品のブランド化を目指した連携体制
美幌町では、地域産品のブランド化を目的として、商工会議所を中心に
「美幌ブランド開発検討委員会」を立ち上げ、農協や行政、農業高校、地元
の食品加工会社や飲食店、観光団体、さらにアドバイザーとして域内の大
学等との連携体制で取り組んでいる。
【ブランド調査 飲食事業者ヒアリング(資料編p42)】
付加価値の高い産品の開発及び商品化を目指した連携協力
町が中心となり、生産者団体や道内民間研究機関、道外大手食品メーカ
ーと共同で、玉ねぎの機能性成分「ケルセチン」と「含硫化合物」を遺伝
的に多く含む「赤玉ねぎ」の品種を開発した。「さらさらレッド」と名付
けて町内の特定の産地において栽培しブランド化している。この玉ねぎを
原料とした飲料を開発し販売している。
【流通実態調査 域外生産者団体ヒアリング(資料編p10)】
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