【場面の設定】準備期のケース 健診の事後指導に来られた喫煙者の中で、今後1ヶ月以内に禁煙しようと思っている喫煙者(禁煙 ステージが準備期)の方に対して、看護師が禁煙支援を行なうことになった。 【喫煙者のプロフィール】 氏名:中村太郎 年齢:42 歳 職業:電気メーカー工場勤務 性格:明るい性格 正義感が強く素直 喫煙状況:平均喫煙本数 30 本/1 日 たばこ検査の結果:呼気中 CO 濃度 29ppm、尿中ニコチン代謝物濃度 7 禁煙経験と期間:1 回 1 週間 禁煙の動機:以前より家族から禁煙するよう言われており、職場の禁煙を機会に禁煙を決意 禁煙に対する負担:ストレスがたまる、離脱症状が不安 禁煙に対する自信:全く自信がないを 1~大いに自信があるを 10 とした場合、5 ステップ1:自己紹介と準備期の禁煙サポートの説明 看護師:中村さん、こんにちは。私は○○と申します。禁煙へのアドバイスやご相談を伺っております。問 診票をみますと、1 ヶ月以内に禁煙したいとお答えいただいたので、今日は禁煙を上手にするため の方法をいくつかアドバイスしたいと思います。時間は 15 分くらいですが、よろしいでしょうか? 中村さん:ええ。よろしくお願いします。 ステップ2.たばこ検査結果の説明 資料:問診票、たばこ検査結果、セルフヘルプガイド(p8) 看護師:それではたばこ検査の結果についてお伝えしますね。まず尿中のニコチン代謝物の濃度が、レベル 7でヘビースモーカーのレベルです。一方息の中の一酸化炭素の濃度は、29ppmでこちらもヘビ ースモーカーのレベルです。 中村さん:そうですか。正真正銘のヘビースモーカーってことですね。 看護師:ええ。でも今回禁煙を決意されたわけですから、それはすばらしいことですよ。 ステップ3.禁煙に対する動機と自信の強化と負担の軽減 看護師:ところで今回禁煙されようと思ったきっかけはどういうことからですか? 中村さん:実は職場が禁煙することになりまして・・。何とかという法律で喫煙所が撤去されることになっ たんですよ。それで禁煙しようと思いまして。まわりでも禁煙する人が増えましてね。自分も今 回がやめ時かなと思ったわけです。 看護師:そうですか。会社でたばこが吸いにくい環境になったから、禁煙を決意されたのですね。 ステップ4:禁煙開始日を決め、宣言書をとりかわす 資料:禁煙宣言書 看護師:今すぐにでも禁煙をしたいということですが、いつぐらいから禁煙をはじめられそうですか? 中村さん:いつからはじめるかですか?あまり具体的に考えていませんが。 看護師:禁煙にあたっての一番の秘訣は始める日を決めることなんですよ。いますぐ禁煙したいと思ってい るひとでも始める日を決めないと、ずるずると日数だけがたってしまうことがあるんですよ。 中村さん:それじゃあ、来週の金曜日にしようかな。ちょうど会社の喫煙するところがなくなる日なんです。 看護師:禁煙するお気持ちを固め、禁煙する日をご自分に約束するために私と宣言書を取り交わしませんか? 中村さん:はい、分かりました。 看護師:じゃあ、ここに禁煙する日とサインをしてください。 中村さん:ちょっと緊張しますね。でも禁煙するのは結局自分ですからね。がんばります。 看護師:私もサインをしますね。 ステップ 5:禁煙後の離脱症状と対処法の説明 資料:セルフヘルプガイド(p20) 離脱症状説明のポイント:たばこが吸いたい、イライラなどすべての症状が現れるわけではない、症状は禁煙後 3 日以内 がピーク、症状はふつう 1 週間、長くても 2~3 週間で消失する、ニコチン依存の低い人では無症状もあり A 行動パターン変更法(喫煙と結びついている行動パターンをかえる):洗顔、歯磨き、朝食など朝一番の行動順序をか える、食後早めに席を立つ、コーヒーやアルコールを控えるなど B 環境改善法(禁煙のきっかけとなる環境をかえる):ライター・灰皿などを処分、自分が禁煙していることを周りに告げる C 代償行動法(喫煙の代わりに他の行動をとる):水を飲む、深呼吸、軽い運動、糖分の少ないガム、仁丹、干し昆布を かむ、歯磨き、机の引きだし整理、音楽を聴くなど ステップ6:ニコチン代替療法の説明 資料:セルフヘルプガイド(p24,26) ニコチン代替療法はたばこのかわりに少量のニコチンをゆっくり補充することにより、離脱症状を効果的に抑え、禁煙のス タートを楽にしてくれる。ニコチンパッチとガムがあり、パッチは医師の処方箋が必要だが、ガムは市販されている。 ニコチンパッチ:比較的使いやすい。大、中、小があり、はじめは大を 4 週間、その後中と小を各 2 週間で使用期間は原 則 8 週間。1 日 1 枚貼り続け、起床時に貼りかえる。腕、お腹、背中、太ももなどどこに貼っても効果は変わらないが、か ぶれを防ぐために貼る場所をかえる。ニコチンパッチをはじめたら決してたばこを吸わないことが重要。 ニコチンガム:吸いたいときに使う。5~10 回程度噛んで柔らかくし、頬と歯茎の間に挟みこむ(1 分)。また少しかんで挟 み込む。これを 30 分程度繰り返したら捨てる。使用個数の目安は 1 日 31 本以上は9~12個、21から 30 本は6~9 個、20 本以下は 4~6 個。使用期間の目安は3ヶ月間。 看護師:あと禁煙後の離脱症状についても少し話あっておきたいと思います。前回禁煙されたときはいかが でしたか? 中村さん:あの時は骨折で入院して仕方なく禁煙したんですよ。1 週間ぐらい禁煙したんですが、その間も 吸いたくて、イライラしてどうしようもなかったです。 看護師:そういったイライラした気持ちはニコチンによる離脱症状なんです。検査の結果からもニコチン依 存度が高いようですので、禁煙をはじめるとイライラやたばこを吸いたいという欲求を強く感じる かもしれません。 中村さん:それは少し心配ですね。 看護師:それでしたら、ニコチン補助剤がお勧めですよ。前回使われましたか? 中村さん:いいえ。ひたすら吸いたいのをがまんしていました。 看護師:ニコチン補助剤は禁煙しているときの離脱症状を和らげるために、たばこのかわりに薬のかたちで ニコチンを体内に補給するものです。この薬を使えば比較的楽に禁煙できると思いますよ。 中村さん:そのくすりはニコチンガムのことですか? 看護師:ええ。ニコチンガムのほかに、貼り薬のニコチンパッチがあります。ニコチンパッチのほうは1日 1枚、朝起きたときにはればいいので、比較的使いやすいと思いますよ。禁煙のお薬といっても必 ず禁煙できるという魔法のお薬ではありませんので、たばこを吸いたくなったときにどうすればい いのかも、考えておいたほうがいいと思います。どういうときにたばこを吸いたくなりそうですか? 中村さん:そうですね。お酒が入ると特にたばこが吸いたくなると思います。それから食後も吸いたくなり ますね。 看護師:そういったときはどのように対処していったらいいと思いますか? 中村さん:どうしたらいいんですかね~。あまり考えたことがなかったから。 看護師:そうですか。お酒の席ではお酒のかわりにお水やウーロン茶などを飲んだり、氷を食べるといいと おっしゃる方が多いですよ。またたばこを吸わない方のとなりに座るのもいいですね。他には糖分 の少ないガムを食べる、深呼吸をする、歯を磨くなどがあります。セルフヘルプガイドにもアドバ イスが書いてありますので、参考にしてみてください。 中村さん:そうですか。とりあえずいろいろためしてみてのりきってみます。 ステップ 7:フォローアップスケジュールの説明 看護師:それで禁煙して 3 日目にもう一度面接させてもらおうと思います。場所と時間は今日と同じでよろ しいですか? 中村さん:ええ、お願いします。 看護師:それでは次回お待ちしています。がんばってください!
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