Scratch と Raspberry Pi でプログラミング学習 古河市立古河第一中学校 授業者 藤井 貴広 1)総論/本授業のポイント 実施教科:技術・家庭(技術分野) 実施学年:中学校 2 年生 ●技術分野内の複数の指導項目/技術・家庭分野を関連させた授業構成 ・D「情報に関する技術」と B「エネルギー変換に関する技術」との連携 ・家庭分野内容 A「家族・家庭とこどもの成長(3)イ」との連携 ●目的を持ったプログラミング ・プログラミングでは答えが無数にあり、様々な手段で課題を解決することができる分生徒に目的を持って 取り組ませることが重要。 ・本授業では、家庭分野で行った幼稚園実習の地続きの活動(幼児向けゲームづくり)としてプログラミング に取り組ませる。 ・工夫点などをワークシートにまとめ、自分の作品についての発表会も行う。 ●フリーソフト「Scratch」と安価な小型パソコン「RaspberyPi」の活用 ・Scrath を使うことで、誰でも簡単にプログラミングの基礎基本を学ぶことができる。 ・RaspberryPi を用いることで、入出力が可能で、バーチャル世界から現実世界へ働きかけることができる。 (授業ではゲームコントローラーを製作) 2)全体指導計画(全体12時間計画) 学 習 活 動 デバイス 1.コンピュータの計測・制御とプログラムについて知ろう Windows 2.Raspberry Pi を組み立て,基本的な Scratch の操作方法について知ろう タブレット 1 3.Scratch で猫を動かそう(順次処理・繰り返し・条件分岐) 4.自分で作った猫逃げゲームの発表会をしよう 5.LED を制御しよう Raspberry 2 Pi 6.LED を計測・制御しよう 7.幼児向けオリジナルゲームをつくろう(本時1/3) Raspberry Pi 3 8.幼児向けオリジナルゲーム発表会をしよう 9.身の回りの計測・制御 ※ 3次の「幼児向けのオリジナルゲームをつくろう」は、家庭の指導時間にカウントする。 時間 1 時間 1 時間 1 時間 1 時間 1 時間 2 時間 3 時間 1 時間 1 時間 3)授業の評価規準 (技術科) A 何歳向けのゲームを作成するかを考え,その目的に応じて、動きの複数あるプログラムを考え,作成する ことができる。 B 何歳向けのゲームを作成するかを考え,その目的に応じたプログラムを考え,作成することができる。 C と判断した生徒への手立て 具体的に使用するプログラムと,できている生徒のプログラムを紹介しながら理解させる。また,前時まで の内容をもう一度確認させる。 (家庭科) A 幼児の心身の発達に応じた遊びや遊び方について考え,幼稚園訪問の経験を活かし、幼児の特性に応じた ゲームのプランを立てることができる B 幼児の心身の発達に応じた遊びや遊び方について考え,幼児の特性についてまとめることができる。 C と判断した生徒への手立て 幼稚園訪問のときに幼児とどんなことをしたか,どんなことをすると幼児は喜ぶかなどを思い出させて,考 えを膨らませていく。 指導過程: 教師の働きかけ 導入 展開 予想される生徒の反応 1.幼稚園実習の際の写真を提示したり、 作成したレポートを見せたりして幼児の 遊びの特性を考えさせる。 1.家庭科の授業で行った幼児とのふれあいを思い出 しながら、幼児の遊びの特性を考える。 2.本時の課題を提示する。 2.本時の課題を提示する。 指導上の留意点 ・幼児とのふれあいで幼稚園訪問をしたとき のことを思い出し,どういうことに対して 幼児たちは喜ぶのかを考えさせる。 ○○ちゃんの喜ぶゲームをつくろう 3.サンプルゲームを用意し,ゲームを紹 介する。 3.既習事項(順次処理,繰り返し,条件分岐やGPIO を使ったLED 制御など)を思い出す。 4.幼児とのふれあいの中で学んだことや これまで学習してきたプログラムを参考 にしながら幼児向けゲームのプログラム を考えさせる。 4.幼児向けゲームのプログラムを考える。 5.自分の作成したプログラムの工夫点を ワークシートにまとめさせる。 5.自分の作成したプログラムの工夫点をワークシー トにまとめる。 ◎LED 制御や段ボールスイッチを使ったプログラムを 織り交ぜながら,考えることができる。また,なぜ そういったプログラムを考えたか説明することがで きる。 (技術) ◎「3,4歳は指先が器用になることからスイッチを 入れる」などの発達段階に応じた内容を考えてい る。 (家庭) ・基本のプログラムを元に応用させるよう促 すことで学習を成立させる。 ・細かな説明や助言はせず,生徒自身が作成 したプログラムを生徒自身が改良できるよ うにサポートする。また,アイディアに困 っている生徒には,既習事項を思い出させ ながら,アイディアを膨らませたい。 ・評価の場面 【技能】 【工夫・創造】 ・生徒の作成したプログラム ・ワークシート 【展開場面のここがポイント】 ・プログラミングは間違っても何度もやり直すことができるので,試行錯誤しながら繰り返し行うことができること を伝え,またそこがプログラミングの良いところだと伝える。 ・プログラミングのきっかけがつかめない生徒には,こちらから提示したサンプルゲームを参考にするように伝えた り,友人のプログラムを参考にしたりしながら自分の作品に生かすことを推奨する。 まとめ 6.本時の授業を通して,学んだことをワー クシートにまとめさせる。 5.本時の授業を通して,学んだことをワークシートに まとめる。 ○外部の機器を制御できるプログラム技術は,身近な 生活でも役立てることができる。 ・評価の場面 【工夫・創造】 ・ワークシート 【まとめ場面のここがポイント】 ・本時でまとめたプログラミングの手順を振り返らせるだけでなく,これらの技術を日常生活に生かせるかを考えさせ るとともに,自分で考えたプログラムを自分の言葉で説明できるような表現力を高めていけるようにしたい。 4)サンプルゲーム作品 ゴールすると LED が点灯する 段ボールスイッチを使って サメを前後に動かす ●ゲームについて ・3つのキャラクターを決め,サッカーの PK ゲームをつくる。 ・Raspberry Pi の GPIO からブレッドボードに接続することで,Scratch のプログラム上から LED を制御するこ とができる。 ・下の図のようにサッカーボールを蹴るキャラクターがボールを蹴る。キーパーは段ボールスイッチで制御し, 電気が流れると上に動き,流れないと下の動くプログラムを作成した。 ・ゴールすると,LED やブザーが鳴る。 ●プログラムについて 1.基本的な動き ①ねこがサッカーボールを蹴る。緑の旗が クリックされたときに特定の場所にキャ ラクターを出現させる。 ②サッカーボールはスペースキーが押された ときにボールが動くように命令している。 ③サメがボールに触れたら停止する。 2.LED やブザー・段ボールスイッチの制御 ① ② ④GPIO 配置図を各机に配付し,役割を確認し ながら配線をした。 ⑤GPIO の pin22 を使うことでゴールキーパー を段ボールスイッチで制御した。 ⑥X 座標が 200 以上,つまりゴールしたときに LED が点灯する。Pin22 とは Raspberry Pi の信号入 ⑥ 出力端子 GPIO のピン番号であり,high であれば 電圧がかかり,LED が点灯する。low だと電圧が かからない。 ④ ③ 5)生徒の様子 ・普段遊んでいるゲームを自分でつくることで、プログラミングを身近に感じ集中している様子が見られた。 ・周りの友達と協力しながら考える場面も多く見られた。 ・Scratch ではプログラムを簡単に改良できるので、いろいろなブロックを使って意欲的に取り組む生徒が多く 見られた。 ●生徒の感想 ・初めは難しそうだなと感じましたが,徐々に楽しくなりました。自分で簡単にプログラムを作ることがで きて家でもやってみようと思いました。 ・ゲームをすることしかなかったけれど,実際に自分で作ってみて,プログラムを考えている人はすごいと 思った。もっとゲームのクオリティを高くしてみたい。 ・自分たちがつくったゲームをクラスの皆だけでなく,幼稚園生に実際にゲームしてもらいたい。 6)使用したプログラミング言語と実行環境 ・プログラム言語:Scratch OS:Linux or Windows8.1 ・デバイス Raspberry Pi B or Windows タブレット(Lenovo ThinkPad Helix) 7)教室の設備・環境 実施場所:コンピュータ室 ・Windows タブレット 40 台 (指導計画1~4時 1人1台で使用) ・Raspberry Pi 20 台 (指導計画5~12時 2人1台で使用) ・Raspberry Pi にモニタとキーボード,マウス,HDMI-VGA 変換アダプタ,VGA ケーブルを接続 ・LED やブザーを制御するためにブレッドボードと電子部品を使用 ・Raspberry Pi に使用するモニタはデスクトップ PC のリプレイス時に廃棄されるものをリユース 【参考】 1 阿部和広・石原淳也・塩野禎隆,Raspberry Pi ではじめるどきどきプログラミング,日経 BP マーケティン グ(2014)
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