報告書 - 大阪大学グローバルコラボレーションセンター

2012 年度 GLOCOL 海外フィールドスタディ・スイス・フランス
「国際機関の活動を知る」報告書
目
次
1.グローバル人材育成への GLOCOL の挑戦(安藤由香里)
2.海外フィールドスタディ・スイス・フランス「国際機関の活動を知る」内容(安藤由香里)
3.各国際機関
4.参加大学院生の所感
「ただ便利ならば良いというわけでない:科学技術政策について学べたこと」(高橋正樹)
「憧れの国際機関へ:忙しくも愉快な 10 日間」(赤石健児)
「難民支援活動における優先順位のジレンマ:シリア難民の調査報告を通して」
(山本香)
「世界の現場に飛び込んで感じたこと」(髙橋照代)
「日本企業も捨てたもんじゃない:企業と人権の観点から」(山本仁実)
5.担当教員の所感(兼松泰男・安藤由香里)
付録 1 振り返りシート
付録 2 自己評価シート
付録 3 リスク管理について
付録 4 ジュネーヴ高等研究所訪問日程表
付録 5 ジュネーヴ高等研究所参加証(例)
付録 6 10 月の浜松多文化共生会議報告書(フォローアップ)
※本報告書をもとに、GLOCOL ブックレット 14 安藤由香里・兼松泰男(編)
『フィールドスタディで国
際機関の活動を知る:GLOCOL におけるグローバル人材育成の挑戦』
(2014.03.25)を刊行した。
1
1.グローバル人材育成への GLOCOL の挑戦
安藤由香里(大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任助教)
GLOCOL が 2007 年 4 月に設立された目的は、国際協力と共生社会に関する研究をさまざまな学問分
野で推進し、真の国際性を備えた人材養成のための教育を開発するとともに、その成果等にもとづく社
会活動を実践することである。その背景には、大阪大学と大阪外国語大学の統合によって、両大学の研
究教育資源を有効に活かし、総合大学としての大阪大学と、言語・国際研究を専門とする大阪外国語大
学の特性に基づき、大阪大学の教育目標のひとつである「国際性」を強化し、国際社会への貢献を目指
すことにある。
その中でもとりわけ、
「海外体験型教育企画オフィス」、すなわち、FIELD で DO する、通称 FIELDO
は、研究・教育・実践の実践部分を強化するために、2010 年 8 月に GLOCOL 内に設置された。FIELDO
の目的は、大阪大学全学の大学院生および学部生を対象に、海外フィールドスタディおよび海外インタ
ーンシップ等の現場での活動について、学内の様々な部局および学外とコラボレーションし、グローバ
ル人材、国際協力、開発の分野で活躍できる人材および共生社会の実現のために資する人材育成を、よ
り一層推進し、国際協力のハブとなることである。
グローバル人材の要素は、様々な議論があるところではあるが、次の 3 要素が重要であることに異論
を唱える者はいないであろう。すなわち、①調整力、②コミュニケーション力、③柔軟性である。調整
力とは、グループをまとめ、リードしていく力であり、グループメンバーのモチベーションを維持させ
る力である。コミュニケーション力とは、語学力も含めた、プレゼンテーション能力である。柔軟性と
は、多様なものを受容する力であり、新しい環境に適用できる力である。
各大学では、グローバル人材育成のための取り組みがなされている。しかし、海外フィールドスタデ
ィに、海外インターンシップの要素を採り入れた、プレ・インターンシップとしての海外フィールドス
タディを実施している大学は非常に少ない。例えば、東京外国語大学の大学院生がハーグの国際司法裁
判所等へ行った事例1、中央大学の学部生が国際労働機関(ILO)ジュネーヴ本部国際労働基準局で短期イン
ターンをしている事例2がある。大学から国際機関にインターンを派遣している事例としては、大阪大学
GLOCOL3や国際公共政策研究科のほかには、名古屋市立大学の学部生が FAO 水産局で定期的にインタ
ーンをしている事例4、名古屋大学大学院国際開発研究科が IOM 等に定期的にインターンを派遣してい
る事例5、早稲田大学が OECD パリ本部に定期的にインターンを派遣している事例等がある。まだまだ大
学と国際機関とのコラボレーションは少ないのが現状ではあるが、このコラボレーションは、グローバ
ル人材の 3 要素①調整力、②コミュニケーション力、③柔軟性を育成することに非常に適していると考
えられる。とりわけ、学生が、インターン中に、国際機関で働くロール・モデルを身近に見られること
は、自らのキャリアデザインへの目標設定およびヒントとなる貴重な機会であることは間違いないであ
ろう。
2009 年度欧州スタディツアー実施報告書』等、臨地教育実践による高度な国際協力人材養成(GP)
ILO 国際労働機関×国際インターンシップ Geneva, Switzerland 報告書』
3 大阪大学の全大学院生を対象に、
IOM ジュネーヴ本部、UNESCO バンコクとインターンシップに関する覚書を締結し、
OECD パリ本部に定期的にインターンを派遣している。
4 FAO ローマ本部にて聞き取り調査。2012 年 11 月 23 日。
5 IOM ジュネーヴ本部にて聞き取り調査。2011 年 12 月 13 日。
1『東京外国語大学
2『中央大学
2
2.海外フィールドスタディ・スイス・フランス「国際機関の活動を知る」内容
安藤由香里
実施地:ジュネーヴ、パリ、ストラスブール
実施期間:2012 年 9 月 8 日~17 日(10 日間)
対象:大阪大学大学院生
(1) 海外フィールドスタディ S の目的
「海外フィールドスタディ S」は、海外でフィールドスタディに参加し、様々な学習機会を得ることに
より、各参加者が海外において、自らの専門性を発揮するための基礎的な力を養うことを目的としてい
る。とりわけ、本スイス・フランス「国際機関の活動を知る」は、参加者が自らの専門性を基に、今ま
でとは異なる視点から自らの研究を深化するきっかけづくりを主眼として企画した。
S とは、Specialty および Short を意味し、専門性に特化すると共に、研究の性質上、長期間海外に出
られない学生のために 2012 年度から創設された GLOCOL 科目である。また、10 日間という決して長
くはない実際の海外滞在期間を最も効果的に活用するために、事前学習、現地学習、事後学習の学習プ
ロセスを通して、参加者が、①調整力、②コミュニケーション力、③柔軟性といった、大学院終了後に
プロフェッショナルとしてキャリアを形成するために必要な資質を養うことを意図している。
上のような趣旨・目的に基づき、本海外フィールドスタディ S スイス・フランス「国際機関の活動を
知る」は、既存の海外フィールドスタディとは異なり、プレ・インターンシップの要素を採りいれ、将
来、国際機関で長期インターンシップを行うための情報収集およびそのための心理的準備に着眼し、企
画した点が独自性に富んでいる。
国際機関を主眼に置きながらも、多角的視点を持って社会を批判的に思考し、行動する学生を育成し
ようとする企画であると共に、将来的に国際的な活動を行うことを考えている広い分野の学生に対応す
るプログラムとなるようにデザインされており、学生がキャリア形成のうえで必要と思われる点に焦点
を絞って現地学習を行った。
(2)現地学習の内容
スイスおよびフランスは、理系から文系まで専門性を活かし得る、様々な国際機関が集中しており、
ヨーロッパの中でも国際機関を目指す者にとって立地条件が突出している。今回は、ジュネーヴ、パリ、
ストラスブール 3 ヵ所に位置する 12 機関を訪問し、国際機関の活動を直に見聞し、その活動を知り、自
らの研究に役立て、将来、国際機関で長期インターンシップをするための情報収集を行った。
現地学習では一日の内容を振り返ることで、他参加者と情報共有すると共に、多様な視点があること
を確認しあった。その際には、振り返りシート(付録 1)を使用した。また、備えあっても憂いはあるが、
できるだけリスクを減少させるために、事前に参加者にスイス・フランスに特化した「リスク管理につ
いて」(付録 3)を配布した。
10 日間という限られた時間内で 3 ヵ所を訪問することには賛否両論あるであろう。確かに 1 ヵ所に留
まった方が移動の時間を節約できることは理解している。しかし、国際機関といっても機関によって様々
な特色があり、しかも立地によって異なっていることを、学生に直に体験して欲しいという意図があっ
3
た。そのため、敢えて忙しくはあるが、日本でも話題となっている格安航空会社(LCC)の発生地であるヨ
ーロッパの LCC を利用したり、フランス型新幹線(TGV)を利用したりして、移動時間も意見交換をする
等時間の有効利用に努めた。
また、到着した翌日に、ジュネーヴ高等研究所で学ぶ同世代の学生と交流し、様々な意見交換を行っ
たことは、海外フィールドスタディ全体のキックオフ効果で、学生の緊張度を緩和する効果をもたらし
た。その翌日には、ジュネーヴ高等研究所で、講義および施設訪問を行い、教員も含め全員が参加証を
いただいた。訪問日程表(付録 4)、ジュネーヴ高等研究所参加証(付録 5)を参照いただきたい。
さらに、在ストラスブール日本総領事館領事の郡司領事とのランチミーティングを通して、欧州評議
会のオブザーバー国としてのヨーロッパにおける日本の立ち位置を考えると共に、どのように自らの研
究をグローバルな観点から活かせるかを発見する機会となった。
3 ヵ所の 12 機関とは以下である。
【ジュネーヴ】世界貿易機関(WTO)
、世界保健機関(WHO)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連人権理事会(HRC)、ジュネーヴ高等研究所(GI)
【パリ】国連教育科学機関(UNESCO)、国際エネルギー機関(IEA)、経済協力開発機構(OECD)、在
パリ OECD 日本政府代表部
【ストラスブール】欧州評議会(CoE)、欧州人権裁判所(ECtHR)
この他にも、ストラスブールで開催されていた産業展示会の見学のほか、土曜には自由参加で、アル
ザスの地場産業見学としてアルザスワイン街道を訪問した。
担当教員:安藤由香里(GLOCOL FIELDO 特任助教)
兼松泰男(産学連携本部イノベーション部 e-square・GLOCOL 兼任
教授)
参加大学院生一覧(10 名)
高橋正樹
工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻
M1
赤石健児
薬学研究科創成薬学専攻
M1
尾崎泰志
人間科学研究科人間科学専攻
M1
青戸
彩
人間科学研究科人間科学専攻
M2
山本
香
人間科学研究科グローバル人間学専攻
M1
孟
海寧(カニー)
経済学研究科経営学系専攻
M2
呉
昊(シェリー)
経済学研究科経営学系専攻
M2
バトエルデネ チャンドマニ
経済学研究科経営学系専攻
M1
髙橋照代
国際公共政策研究科国際公共政策専攻
M1
山本仁実
国際公共政策研究科国際公共政策専攻
M1
4
3.各機関での内容
今回は、単に国際機関を訪問し、話を聞くという受身的学習内容ではなく、担当教員が事前に綿密に各
機関の担当者と打合せし、10 名の学生がいずれかの機関について責任を持つリーダーの役割を担い、各
機関の専門家の前でプレゼンテーションを行うという参加型とした。リーダーのプレゼンテーション後、
質疑応答および議論という形式を採った。そのための準備段階として、事前学習では、担当教員が個別
指導をすると共に、該当分野の大阪大学の専門家および外部の方にアドバイスやコメントをいただき、
本番のプレゼンテーションの準備を行った。議事録は、原則として、副リーダーが英語で記録すること
とした。
下記の表は各機関でのリーダーおよび副リーダーと、専門家として学生へのアドバイスやコメントを
いただいた大阪大学の先生方や学外の方である。
表1:各機関のリーダーと副リーダー
リーダー
副リーダー兼議事録
彩
ECtHR
OHCHR
山本仁実
OHCHR
UNHCR
高橋照代
UNESCO
IEA
IEA
CoE
赤石健児
WHO
GI
孟
海寧
WTO
OECD
尾崎泰志
CoE
WHO
GI
WTO
OECD
UNESCO
UNHCR
ECtHR
青戸
呉
昊
バトエルデネ チャンドマニ
高橋正樹
山本
香
表2:アドバイスをいただいた先生方
【OHCHR】
菅原絵美氏(国際公共政策研究科)
【UNHCR】
石井正子准教授(人間科学研究科)
【WHO】
大橋一友教授(医学系研究科保健学科・GLOCOL センター長)
【WTO】
許衛東教授(経済学研究科)
【OECD】
【CoE】
【ECtHR】
小林傳司教授(コミュニケーションデザインセンター)
中川功一講師(経済学研究科)
山内直人教授(国際公共政策研究科)
村上正直教授(国際公共政策研究科)
岡田仁子氏(ヒューライツ大阪)
別紙1 日程表
5
【ジュネーヴ高等研究所】
日曜の夕方に、ジュネーヴ高等研究所公式学生団体がレマン湖畔にてBBQで歓待してくれ、交流会を
行った。月曜午後は、ジュネーヴ高等研究所を訪れ、ジュネーヴ高等研究所の紹介および博士号を取得
したばかりの研究者による「NGO」に関する講義を受けた。その後、全員に参加証が授与された(付録4
および5参照)。
八ッ橋をすすめるリーダーのチャンダ
別紙11
GI Minutes
6
【OHCHR】
教育内容
“Corporations & Human Rights”と題して、
「企業と人権」がどのように結びついているかに注目した。
近年、企業の社会的責任(CSR)への関心が高まっており、2011 年 3 月には国連人権理事会で、
「ビジネス
と人権に関する指導原則」6が発表された。また、日本企業の CSR 報告書においても、2009 年と 2011
年版 CSR 報告書では「人権」という文言の使用回数が増えていることが顕著である7。
学生の学び
「OECD 多
「ビジネスと人権に関する指導原則」はもちろんのこと、
「国連グローバルコンパクト」8、
国籍企業行動指針」9、等人権とビジネスの結びつきを改めて学ぶ機会となった。今までは、自分の研究
分野と「人権」がつながるとは考えていなかった多くの参加学生が、実は人権はいずれの分野において
もつながっているという気付きを誘発する機会となった。
今後の課題
今回の気づきを通常の日本社会の中で、どのように継続させていくかが課題となる。
「人権」という文
言自体が日本社会の中で、なんとなく敬遠されている風潮があるからである。しかし、今回、学生が気
づいたように「人権」という文言は使われていなくても、安全な生活を滞りなく行なっていき、持続可
能な安定したビジネスを行うためには、各々の権利が保証されることが重要であり、それこそが「人権」
なのである。
“Corporations & Human Rights
山本仁実
別紙2
OHCHR
PPT
別紙12
OHCHR
Minutes
http://www.hurights.or.jp/japan/aside/ruggie-framework/ last visited 12 August 2013.
社団法人部落解放・人権研究所『2009 年度版 CSR 報告書における人権情報のグッド・プラクティス』部落解放・人権
研究報告書 No.15(2010)、社団法人部落解放・人権研究所『2011 年版 CSR 報告書における人権情報の好事例』部落解放・
人権研究報告書 No.22(2012)
8 http://www.ungcjn.org/gc/index.html last visited 12 August 2013.
9 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/csr/pdfs/takoku_ho.pdf last visited 12 August 2013.
6
7
7
【国連人権理事会】
今回のフィールドスタディは、国連人権理事会第21会期(2012年9月10日-28日)10の初日だったため、
国連欧州本部で行われている理事会の様子を傍聴する機会に恵まれた。学生が、国際会議の雰囲気を直
に見ることによって、目の前に座っている各国代表が実際にどのように会議で発言し、交流をはかって
いるかを理解すると同時に、どのように会議が進行していくかを学ぶ機会となった。
予定表
DRAFT PROGRAMME OF WORK FOR THE 21ST SESSION OF THE HUMAN RIGHTS COUNCIL (10-28 SEPTEMBER 2012) –
version as of 27-08-2012 (subject to change)
M
O
WEEK 1
WEEK 2
WEEK 3
10 September
17 September - 0900 to 1800 hr
24 September
Item 1 & 2
Opening of the session
10.00
–
Item 2
Update by the HC followed by
General Debate
13.00
-
13.00
1200-1500
Item 4 (cont’d)
Break
15:00
Item 2 (cont’d)
-Item 3
ID with SRSG on Children & Armed Conflict
15.00
Y
18.00
11 September
10.00
–
13.00
Item 4 (cont’d)
Item
and
Item 3 and 5
Clustered ID with:
.
SR on indigenous peoples
.
EMRIP
D
A
to Justice
15.00
–
18.00
Item 3 (cont’d)
Clustered ID (cont’d)
12
W
E
1200-1500
Item 3 (cont’d)
- ID
15.00
Item 5
- ID with HRCAC
--General debate
19
September
Item 6
Consideration of UPR Reports*
Break
(cont’d)
Item 3 (cont’d)
Clustered IDs with:
N
E
September – 0900 to 1800
Item 3 (cont’d)
Clustered ID with:
‐ SR on extreme poverty
‐ SR on water and sanitation
10.00
–
13.00
13.00
D
Half-day discussion on indigenous peoples: access
Break
15.00
15.00
–
18.00
‐ IE on international solidarity
7 (cont’d)
25 September - 0900 to 1800 hr
Item 8
General debate
---
1200-1500
E
13.00
Item
5 - Complaint Procedure (closed meeting)
18 September - 0900 to 1800 hr
Item 3 (cont’d)
Clustered ID with:
- WG on mercenaries
- SR on truth, justice, reparation
non-recurrence
T
S
Break
General Debate (cont’d)
A
U
Item 7
Report of SG on Gaza FFM
followed by General debate
- SG/HC country reports followed by
N
D
Item 4
ID with COI on Syria
1200-1500
Item 9 (cont’d)
. Report of the Ad Hoc Com. on Complementary
Standards followed by GD
Item 9 (cont’d) - General debate (cont’d)
--Item 10
. ID with SR on Cambodia (individual)
26 September – 0900 to 1800
. ID with IE on Somalia (individual)
. ID with IE on Sudan (individual)
Item 10 (cont’d)
SG/HC country reports followed by
General debate
Item
Item 6
Consideration of UPR reports*
10 (cont’d)
--Item 5
Complaint Procedure (closed meeting)
‐ IE on democratic and equitable international
S
Item 1 - Decisions and conclusions
http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session21/Pages/21RegularSession.aspx last visited 13
August 2013. "Annotations to the agenda for the twenty-first session of the Human Rights Council" 16 August 2012,
UN Doc. A/HRC/21/1
http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session21/A-HRC-21-1_en.pdf last visited 13
August 2013.
10
8
13
T
H
10.00
–
U
September – 0900 to 1800
20
Item 3 (cont’d)
Clustered IDs with:
‐ SR on hazardous substances and waste
15.00
27
Item 6 (cont’d)
Consideration of UPR reports*
SR on contemporary forms of slavery
1200-1500
Item 1 (cont’d)
Decisions and conclusions
Break
Annual discussion on gender integration: ESCR &
Item 3 (cont’d) - IDs (cont’d)
f
Item 6(cont’d)
Consideration of UPR reports*
Item 1 (cont’d)
Decisions and conclusions
21 September - 1000 to 1800 hr
28 September
Item 6 (cont’d)
Item 1 (cont’d)
Consideration of UPR reports*
General debate
Decisions and conclusions
S
14
F
R
I
D
10.00
–
13.00
15.00
15.00
–
18.00
September
Item 2 & 3 (cont’d) – (0900 to 1200)
‐ Report of WG on Right to Development
‐ Introduction of SG/HC thematic reports followed
by General Debate
13.00
Break (1200 – 1400)
Item
Break (1300-1400)
International Nelson Mandela Day (1400-1600)
(A/HRC/RES/20/18 )
3 (cont’d) – (1400 to1800)
General debate
September
1200-1500
Panel on Cooperation with UN HR mechanisms:
issues of intimidation or reprisals
(A/HRC/DEC/18/118)
R
September – 0900 to 1800
(cont’d)
Item 6 (cont’d)
A
Break
Item 1 (cont’d)
- Decisions and conclusions (cont’d)
- Election of the Advisory Committee members
‐ Appointment of SP mandate-holders
‐ Adoption of the report of the session
--General debate (cont’d)
Y
*21st SESSION OF THE HUMAN RIGHTS COUNCIL
P00ROVISIONAL TIMETABLE FOR AGENDA ITEM 6
(19-21 SEPTEMBER 2012)
Wednesday, 19 September
Consideration of the UPR reports of:
10:00–
– Bahrain
13:00
– Ecuador
– Tunisia
Consideration of the UPR reports of:
15:00–
– Morocco
18:00
– Indonesia
– Finland
Thursday, 20 September
Consideration of the UPR reports of:
09:00–
–
12:00
– India
United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
– Brazil
9
12:00-15:00
Annual discussion on gender integration
Consideration of the UPR reports of:
15:00–
– Philippines
18:00
– Algeria
– Poland
Friday, 21 September
Consideration of the UPR reports of:
10:00 –
– Netherlands
13:00
– South Africa
‐
14:00-16:00
General debate
International Nelson Mandela Day (A/HRC/RES/20/18 )
16:00–
18:00
– General debate (cont’d)
10
【UNHCR】
教育内容
“Current Situation of Urban Refugees Displaced Syrians in Jordan (My small suggestion for
UNHCR)”と題して、UNHCRの活動の中でも、特に都市難民に注目した。
国際保護部の副代表および法務官による講義で、普段は、
「難民」について考える機会を持たない学生が、
UNHCR の使命、行っている活動、課題について学ぶ機会となった。
学生の学び
都市難民は、一方で難民キャンプやその他の農村難民よりも恵まれていると言われることもあるが、
他方で、食糧配給があるわけではないので、自活していかなければならない。一般人と同様にアパート
等に身を寄せているため、国際機関が人数を把握すること自体が非常に困難である。国際機関は多くの
期待を寄せられるが、限られた資金や人材の中で、緊急性が高いことから対応していくことが求められ
ている。
今後の課題
難民問題は一国のみの問題ではおさまらない。難民の流出を根本から解決するためには、様々な分野
の横断的協力が必要となる。その意味では、自分の専門分野がどのように難民とかかわるか、どのよう
に解決の一端を担うことができるかを、今回参加した学生がさらに考える機会があることが重要であろ
う。例えば、日本の技術で難民キャンプ近辺の木の伐採による砂漠化を止めるために、太陽光が果たす
役割というテーマは、工学分野、経済分野、公共政策分野、開発分野からアプローチができ、かつ日本
の技術力を活かせる分野であろう。
“Current Situation of Urban Refugees
Displaced Syrians in Jordan (My small suggestion for UNHCR)”
山本香
別紙3
UNHCR PPT
別紙13 UNHCR Minutes
11
【WHO】
教育内容
“The Issue of Public Health in East Africa”と題して、英語が多用される東アフリカに焦点を充て、生
活習慣病および伝染病に関する予防、治療について、注目した。各国の状況に照らした具体的なコメン
トを受け、伝染病中心の対策から、生活習慣病対応も視野に入れた公衆衛生政策の展開について東アフ
リカにおける政策対応の現実を知る機会となった。
学生の学び
いまだなお、HIVをはじめ、伝染病対策が重要であり、予防に向けては、公衆衛生教育による伝染病
に関する知識の流布が重要である。健康保険制度が整備されていないため、妊産婦が出産時に入院する
場合にも、金銭的な問題により、必要な医療が享受できないという状況があったが、妊娠・出産への対
応は住民共通の課題であり、ボトムアップ方式で、保険制度を立ち上げた、という話などを聞き、経済
社会状況と公衆衛生政策の間の強い関係性に気付かされた。
今後の課題
生活習慣病への政策シフトは、東アフリカ地域においても早晩なされるであろうが、経済状況や社会
システムの問題が大きく立ちはだかっている。国際社会の援助による保健・医療システムを立ち上げて
来た状況からの制約を脱し、各国における自立的かつ持続的なシステムが形成されるための協力が望ま
れる。
事前学習においては、WHOは、広範な課題を抱えた機関であるので、討議課題を絞り込み、その事前
共有および関連情報収集をさらに進めておくことが望ましい。
“The Issue of Public Health in East Africa”
赤石健児
別紙4
WHO PPT
別紙14 WHO Minutes
12
【WTO】
教育内容
“China in the WTO”と題して、近年、米国に次ぐ経済大国の地位に到達した中国と国際貿易における
役割に注目した。WTO側メンバーからは、中国一国の方針を中国側から眺めるのではなく、国際交渉機
関としてのWTOにおけるあり方を理解して、さまざまな視点から分析することの必要性が指摘された。
すべての機関が対等だという指摘に対し、公平性について学生から疑問が出された。また、関連して
ホットな話題である環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関する意見交換があったことも含め、学
生の積極的な関与が引き出された。
学生の学び
WTOがルールベースの交渉調整機関であること、メンバー間でも見解は異なっていることを学んだ。
特に、TPPについて、内容は議論があるとしても、交渉参加自体に積極的な意義を見出し、主導権を握
る交渉ができないと考えることを問題視する意見と、自由貿易を推し進める立場から、保護政策自体を
排除していくべきとする意見が出された。これらの意見に触発されて、学生側からもWTOの考え方、TPP
への個人的見解などを問う意見が噴出し、今後の自発的な学びを喚起する場となったと推測される。
今後の課題
WTOでは、貿易ルールという国家間の利害調整が前面に出て来る。現在、TPPにおいて、地域におけ
る利害調整が進行している問題とも共通する、安全性の課題、産業の健全な発展、自国産業振興とのバ
ランスなど、課題は山積していることが、明らかである。学生は、総合的な公平性といった視点から、
論戦を挑もうとして、表現しきれないという状況に陥っているように見えた。
多くの質問が飛び出したことから考えて、マイナス面であれプラス面であれ、関心が高い機関につい
ては、事前討議により、疑問点を整理し、背景理解を深め、議論に備えることが望ましい。
“China in the WTO”
孟海寧
別紙5
WTO PPT
別紙15 WTO Minutes
13
【OECD】
教育内容
“Innovation in Japan: University Start-up”と題して、日本の大学におけるイノベーションの現状と
課題を報告し、科学、技術および産業総局(DSTI)のイノベーション担当者グループとの意見交換を通
じて、国際社会におけるイノベーションの展開と日本の占める位置について学ぶ機会を持った。特に、
OECD Science, Technology and Industry outlook in 2012 が発行される前週と言うことで、先取りして、
内容についての紹介を受けた。
学生の学び
OECD の DSTI では、他の機関と異なり、ルールに従わせるのではなく、調査活動とルールの枠組み
提示というソフトな手法でコンセンサス形成を行っている。日本の大企業中心でイノベーションは進ん
でいるものの、新しい製品を産み出すタイプのイノベーションは遅れがある。科学、技術からイノベー
ションを志向するのではなく、解決すべき課題、すなわちユーザー側から発想するイノベーションが重
要になりつつある。
今後の課題
イノベーションを推進するどのようなシステムが、各国の政治的、経済的、歴史的背景のもとにでき
あがってきているのか。イノベーションと産業構造の関係はいかなるものであるのか。また、イノベー
ションにおいて、大学がどのような位置を占めているのか。いずれも、OECD 調査を活かす形で、大学
のイノベーションへの貢献を明確にするために問うべき事柄である。
具体的な今後のアクションとして、インターンシップなども活用して、OECD の活動や世界の先進事
例に学ぶことを発展的に進める必要がある。
“Innovation in Japan: University Start-up”
高橋正樹
別紙6
OECD PPT
別紙16
OECD Minutes
14
【UNESCO】
教育内容
ガイドツアーの後、“Japanese Disaster Education”と題して、東日本大震災における事例として、生
き延びるための事前訓練が功を奏したという話題に触れ、大災害に立ち向かう上で、如何に教育が大切
かについて、報告した。災害リスクの低減のための教育は、持続発展のための教育(ESD; Education for
Sustainable Development )の一部であり、その全体像についての講演を受け、教育への取り組みの重
要性についての理解を深める機会を得た。発展途上国におけるエネルギー問題の解決についての活動提
案についての講演を受けた。
学生の学び
ESD に寄与する日本での教育の取り組みが十分発信されていない。少なくとも英語による発信をする
べきである。アフリカ、アジアにおける旧来のエネルギーインフラではなく、再生可能エネルギーを中
心としたインフラを構築することが重要である。大学、企業をはじめ、具体的に貢献できる可能性があ
る。
今後の課題
ESDに関する理解をさらに深めるとともに、日本の貢献について、主体的な関与を志向し、機関、個
人レベルで考え行動していくことが必要である。発展途上国における再生エネルギー利用については、
具体的な協働が可能な分野であり、大阪大学をはじめ、日本の大学を活用する仕組みを追求していくべ
きである。また、離島をはじめとして、日本国内にも適用できる活動として捉えることも必要であろう。
“Japanese Disaster Education”
髙橋照代
別紙7
UNESCO PPT
別紙17 UNESCO Minutes
15
【IEA】
教育内容
「中国農村部家庭部門の二酸化炭素の排出削減に関する調査」と題して、中国における日常生活に関
連する煮炊き、暖房により産生される二酸化炭素ガスの大きさと、これらを技術革新による新しいシス
テムに置き換えることによる環境保全への寄与を報告した。IEA側から、簡単なIEAの歴史と使命、輸送
エネルギーに関する調査と推計に関する実際の状況の説明を受け、現場を知る機会とした。
学生の学び
石油備蓄に端を発した OECD におけるエネルギー問題を扱う機関としての IEA は、企業や、省庁から
集まってメンバーから構成され、データを分析し、予測を立てている。活動の実情とその限界について、
現場の活きた見解を聞き、また、個々の担当者から、国際機関に従事するに至った経緯、繁忙を極める
部署における誇りと成長など、国際機関で働くことの実際について、話を直に聞くことで、理解を深め
ることができた。
今後の課題
発展途上国のエネルギー消費構造の変化は、広い意味で関連した話題であるが、環境問題のソリュー
ションに特化した内容は、IEA が、現在、注目している分野とのずれがあった。事前調整段階での、学
生の興味関心と機関側の中心課題との、さらなる刷り合わせが必要である。一方、日常生活において消
費されるエネルギー構造の変化、特に、発展途上国での変化は、グローバルには大きな課題であること
を浮き彫りにした点で、良い報告のひとつであり、適切な発表の機会が望まれる。
「中国農村部家庭部門の二酸化炭素の排出削減に関する調査」
呉
別紙8
IEA PPT
別紙18
IEA Minutes
16
昊
【CoE】
教育内容
“Japanese Democracy”と題して、欧州評議会が推進している民主主義について注目した。 欧州評議
会は、人権、民主主義、法の支配について国際社会の基準を策定することを試みており、フランスのス
トラスブールに位置する。そして、欧州評議会は、Intercultural Cities という多文化共生の取り組みを
積極的に行っている11。訪問中に、多文化共生課長が、2012 年 10 月 25‐26 日に浜松で行われる「日韓
欧多文化共生都市サミット 2012」に参加することを聞き、今回スイスフランスフィールドスタディに参
加した学生のなかの、有志が参加するきっかけとなった。
学生の学び
日本は欧州評議会でオブザーバー資格を有しているが、死刑制度を廃止することが加盟国の条件であ
る中、日本の立場に問題がないわけではない。そのようなことも含め、今回の訪問に多大な協力をいた
だいた在ストラスブール日本総領事館の郡司領事から多くを学んだ。
欧州評議会の多文化共生は、様々な視点から多様性を捉えており、特に、アントレプレナーシップや
新規ビジネスの起業に、移民のダイナミックスが上手く作用し、成功している事例の紹介があった12。ヒ
ト・モノ・カネの活性化に文化多様性を積極的に取り入れ、負担ではなくプラスとして「他者」を受け
入れる発想の転換が必要であることを学んだ。
今後の課題
日本経済がグローバルの波の中に乗り遅れるかもしれない現在、多様性の受容こそが、日本経済の活
性化をもたらす「鍵」となるかもしれないことが欧州評議会のグッド・プラクティスから示唆された。
しかし、それをどのように日本の経済産業界に橋渡ししていくか、また実践とつなげていくかは容易で
はないため、大学の果たし得る役割の挑戦のひとつであろう。
“Japanese Democracy"
尾崎泰志
別紙9
CoE PPT
別紙19
CoE Minutes
11
12
http://www.coe.int/t/dg4/cultureheritage/culture/Cities/Default_en.asp last visited 12 August 2013.
http://www.coe.int/t/dg4/cultureheritage/culture/cities/guidance_en.asp last visited 12 August 2013.
17
【ECtHR】
教育内容
“The Problem of Foreigner’s Education: from Margin of Appreciation”と題して、欧州人権裁判所の
なかでも、特に議論のある「裁量の余地」を、日本社会における外国籍の子どもたちの教育問題から捉
えようとした。
学生の学び
欧州人権裁判所は、欧州評議会の中で、欧州人権条約に基づき、加盟国が人権侵害を行ったかどうか
を判断する機関であり。アジアには存在しない地域的人権裁判所システムについて学ぶ機会となった。
また、欧州人権裁判所の中でも、宗教や文化と非常に強いつながりがあるために、どこまで裁判所が判
断をすべきか議論が多い「裁量の余地」について取り組んだために、多様であるからこそのヨーロッパ
のジレンマを学ぶことができた。
今後の課題
日本はアジアに位置し、当然ながら欧州人権裁判所の管轄の範囲外である。しかし、欧州人権裁判所
の数々の判例が国連人権条約に基づく人権執行機関に与える影響は少なくないことから、欧州人権裁判
所の判例動向に注視していくことがアジアの先進国としての日本の役割であり、課題であろう。
“The Problem of Foreigner’s Education: from Margin of Appreciation”
青戸
別紙10
ECtHR PPT
別紙20
ECtHR
18
彩
4.参加大学院生の所感
「ただ便利ならば良いというわけでない~科学技術政策について学べたこと~」
高橋正樹(大阪大学工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻
博士前期課程1年)
今回のフィールドスタディで得たものは、技術を発展させたのちどのような社会をデザインして行く
べきかについてである。このフィールドスタディに参加する前は、技術を発展させ、より便利な世の中
になりさえすればよいと考えていた。技術の利便性や画期性が重要であり、技術をいかに使ってもらう
べきかについては二の次だと自然に思っていた。
その中で、企業の発展の末におこる社会問題について知った。一つ印象的だったのは、ジュネーヴ高
等研究所で紹介があったネスレの粉ミルク不買運動についてである。この問題の根本は便利である粉ミ
ルクも乱用してしまうことで母親の母乳分泌が不健全になってしまい、人工ミルクを買い続ける事が困
難な家庭で深刻な栄養失調が怒ってしまうというものだ。この知見から、便利な製品も使い方次第では
逆効果になりうるということを知った。
これをきっかけに少し視野を広げてみると、技術発展というのは「こういう社会でありたい」設計の
うえに成り立っていることがわかる。そこには人権の話から政治の話まで幅広いテーマが関わってくる。
実際に仲間の皆とともに各国際機関で労働問題・難民問題・政治問題・教育問題などについて専門的な
ディスカッションを繰り返し、ダイナミックに視野を転換していったこと非常に刺激的であった。
大学院では工学研究科にて技術とイノベーションについて学んできたが、
「イノベーションをおこした
後にどのような社会をデザインしたいのか」という問いの重要性に気付く事が出来た。そこまで思考し
なければ、イノベーションも世の中を破壊に導いてしまうかもしれない。今回の経験から、技術をどう
結びつけて事業化させ、その結果どういう社会をデザインして行くのかということに大きな興味を持っ
た。将来は科学技術と産業について俯瞰的に扱うことのできる公的機関に進みたいと感じている。
日本の GDP に対する総 GDP 費は高く、ICT などの研究も盛んで、環境技術の蓄積もある。また、山中教
授の iPS 細胞研究でのノーベル賞受賞を背景に、再生医療関連の産業発展も今後期待されている。
再生医療に関して言えば、日本が再生医療に関してトップを維持し続ける事ができれば「世界が医療に
関して日本に頼らざるを得ない」という状況ができるかもしれない。そこにはおそらく人権などの倫理
的な課題が沢山あるだろう。今後も視野を広く保っていきたいと思う。
国際機関は人と人の繋がりで生き残りが別れる面を持っている。これは国際機関に限った事ではない。
今回のプログラムでは、専門は全く異なるがともに頑張り抜く事のできたかけがえのない仲間に出会え
た。タフではあったがメリハリのついた、非常に「楽しい」プログラムだったと感じている。今後も今
回のようなプログラムが継続し、世界に羽ばたく阪大の仲間が増えればと願う。
19
「憧れの国際機関へ~忙しくも愉快な 10 日間~」
赤石健児(大阪大学薬学研究科創成薬学専攻
博士前期課程1年)
10 日間で 3 都市を移動し、国際機関 12 機関を訪問するというのはかなりのハードスケジュールかも
しれない。しかしこんな状況にあっても、仲間たちと異国の地で過ごすというのはこの上なく楽しいも
のである。また国際機関だけでなく、ジュネーヴの大学院生と交流する機会も持つことができた。うま
くコミュニケーションが取れないながらも、日本との環境の違いと語学力の差を実感できたことは本当
に良い刺激となった。そして何より、様々な国際機関がそれぞれに幅広い活動をしており、世界の現状
とそれに立ち向かう人々の存在を知れたことが、今後の人生を変えるかもしれないほどの影響を私にも
たらした。
私が担当した WHO では、WHO の活動や世界の現状を知ることを目的に、東アフリカの公衆衛生の
課題についてプレゼンを行った。出発前に WHO のレポート等を読み、これまでの活動や成果について
調べ準備した。調べている際にもっと一次予防に力を入れるべきではないかと感じたので、プレゼンで
一次予防についても言及した。その結果専門家の方たちとのディスカッションで、一次予防の重要性を
わかってはいても、金銭的・人材的な制限がありなかなか力を入れることができないという厳しい現状
があることを知った。さまざまな制限がある中で、多くの課題の中から優先順位を決め、緊急に対策が
必要なものから対応せざるを得ないこと、保健制度を作るには、まだまだアフリカ人の平均寿命が短く、
人口も少ないために成り立たないという“現場”の事情や難しさも知ることができた。このようなフィ
ードバックをいただき、大学では基本的に専門分野しか学ばないため、日常的に自分は専門からの視点
しか持てていなかったと痛感した。
また今回交流したジュネーヴ高等研究所の学生はバックグラウンドが非常に多様で、3 カ国語以上話せ
る学生がほとんどであると聞き驚いた。多様性に関しては日本とは大きく異なるため、ジュネーヴのよ
うな多様性に富んだ状況に身を置くことで、自分は大きく成長できるのではないかと感じた。また言語
が堪能なほうが異文化を理解しやすく、インターネット等を通じてより多くの情報を得ることもできる
ので、英語だけでなく他の言語も習得しようと決意した。
日程的に忙しく、準備にも追われ大変ではあったが、素晴らしい経験と愉快な仲間ができたので、こ
のフィールドスタディに参加できて本当に良かった。3 都市・10 機関は多いと感じるかもしれないが、
それ故に各都市・各機関の特色がわかり、また多くの領域にまたがっているため学びの幅も広くなって
よかったと思う。異文化を知る・異分野を学ぶことで、自分のことや専門のことも見えてくる。多様性
や多文化共生がいかに重要かを肌で感じることもできた。短期間ではあったが、得るものは非常に多か
ったので、より多くの学生にこのような機会が提供されることを願う。理系の学生にも積極的に参加し
てもらいたい。
20
「難民支援活動における優先順位のジレンマ-シリア難民の調査報告を通して-」
山本香(大阪大学人間科学研究科グローバル人間学専攻博士前期課程1年)
今回、このフィールドスタディで私たちは実質 7 日間の日程の中で 12 機関を訪問した。その中で、そ
れぞれの機関の中ではあらゆる分野のエキスパートが集結し、分野の垣根を越えて世界の課題の解決の
ために協働している様子を学んだ。
私が担当した UNHCR では、国際保護部の副部長に対して、プレゼンを行った。その内容は、私が 2012
年 8 月にヨルダンのアンマン、ラムサ、マアーン地方で行ったシリア難民の教育に関するフィールドワ
ークの報告と、UNHCR に対する提案とした。
報告の中では、シリア難民の現状について言及した。シリア難民はスーダン難民やソマリア難民など
の状況と比べると比較的恵まれた生活をしていると一般的に言われている。しかし、ヨルダンでのフィ
ールドワークを通してシリア難民のためのザアタリ・キャンプでは砂埃の舞う荒涼としたキャンプ内で
大人数が一つのテントで暮らし、UNHCR からの食糧の配給はあるものの大家族にとっては十分な量は
ないことが分かった。また、アンマンなどの街中に暮らす都市難民たちは、電気も水も家具もない家で
暮らしながら、仕事が見つけられないため家賃も払えず十分な食料もなく、戦争の中での凄惨な経験の
フラッシュバックに怯えながら暮らしているなど、彼らの過酷な生活実態が明らかになった。またシリ
ア難民の子どもたちは、現地の学生団体が主催するサマースクールで反政権的な考えを刷り込もうとし
ているなど、教育環境にも課題を抱えていた。それらの調査結果を、写真を交えながら報告した。それ
に対して UNHCR の担当者は、シリア難民の生活は困窮していて厳しいものであることがよく分かった
としながらも、やはり他地域の難民と比べると恵まれた生活であるというスタンスを崩さなかった。
UNHCR などの国連諸機関では、加盟国の拠出金から資金が賄われているが、活動に必要な額が十分
にあるわけではない。そのために他からの寄付などによってさらに資金を募る必要がある。そのなかで
UNHCR は、難民支援など緊急性を要する分野における活動のために莫大な資金を必要としているが、
UNICEF などの機関と比べて知名度は低く、ブランド力がないために資金の調達により困難を抱え、そ
のために十分な援助活動が行えないことが分かった。そこで、プレゼンでは UNHCR に対して広報に注
力してはどうかという提案を行った。その結果、UNHCR の担当者は、この点は重要なポイントであり、
次のミーティングの議題として議論させてもらうとしたが、その一方で、広報に関する優先順位は低く、
実現可能性は低いかもしれないという反応だった。
このプレゼンにおいては、自分の研究を実際の活動現場に生かしてもらいたいという目的があり、ど
のようなプレゼンをすれば聞き手となる UNHCR の職員に訴えかけやすいかという点に焦点を当てて準
備を行った。今回訪れた UNHCR 事務所はジュネーヴに拠点を置く本部であり、プレゼンの対象者は
UNHCR の活動全体のマネジメントを行う職員だった。そのために現場での活動ではなく組織全体の課
題として広報を挙げたが、その意図がうまく伝わらなかった点が大きな反省として残っている。しかし、
結果としては思うような反応を得られなかったが、それだけに、私が考えている以上に組織の中では活
動に対する大きなジレンマを抱えているということに気づくことができた。加えて、より説得的な研究
をしなければならないというモチベーションを高めることもできた。UNHCR 全体の活動を統括する人
物に対して直接プレゼンを行い、自分が挙げた点が議論のポイントとして認められたことは、大きなや
りがいとして自分の中に残っている。
21
「世界の現場に飛び込んで感じたこと」
髙橋照代(大阪大学国際公共政策研究科国際公共政策専攻 博士前期課程 1 年)
本フィールドスタディでは、春の準備段階から夏のフィールドスタディ本番、帰国後のフィードバッ
クまで、新しいことへの挑戦の連続で不安も多かったが、座学では得られない発見や学びがたくさんあ
った。
なかでも、国際機関の職員と直接意見交換ができたことはとても勉強になった。私は、UNESCO で日
本の災害教育に関するプレゼンをおこなった。災害教育は自身の研究テーマではなかったが、2011 年の
東日本大震災を受けて、日本の災害の教訓をプレゼンし職員の意見を聞きたいと思い、このテーマを選
択した。プレゼンでは日本で日頃おこなわれている災害教育により児童が適切な避難ができたという事
例を紹介し、UNESCO でもこのような日本の災害教育を事例として取り上げてはどうか、と提案した。
UNESCO 側からは職員が 2 名(持続可能な開発のための教育の専門家、再生エネルギーの専門家)、イ
ンターンが 2 名参加し、職員も災害教育および再生エネルギーに関する UNESCO の取り組みについて
それぞれプレゼンをした。質疑応答では、日本の災害教育の徹底や意識の高さに関する質問が多かった。
今回私の紹介した例のように、日本の災害から UNESCO が参考にしなければいけない事例はたくさん
あるが、情報が日本国内でかつ日本語でしか周知されていないのが問題であると職員が指摘した。その
ため、国際社会にはなかなか伝わってこず、UNESCO がきちんと英語でレポートしなければならないこ
とを、その場にいた者皆が共有できたことが印象的であった。他の国際機関でも多くの職員が言及して
いたことだが、国際機関は限られた資源や予算の中でやりくりしなければならず、取り上げるべき事例
があったとしても埋もれてしまうことが多々ある、ということが分かった。
フィールドスタディ全体としては、国際機関の活動分野とキャラクターの多様さを感じたことが印象
的であった。OHCHR のように機関の規模が小さくプレゼンスがそれほど高くない印象を受けた機関や、
UNHCR のように知名度は高いが資金調達が十分でない機関など、抱えている問題も様々であると感じ
た。機関の見学や職員の話を聞くことで、国際社会の問題やトレンドを肌で感じることができた。例え
ば、UNHCR では内戦で国内状況が逼迫しているアフリカや中東など、国際的に注目度の高い地域にフ
ォーカスを当てていた。国連人権理事会の見学では、各国の大使の発言は、意見表明や認識の確認とい
う性格が強いという印象を受けた。また、国連というと国際社会からの期待や存在感が高いイメージが
あったが、理事会では大使同士が雑談をしていたり、会議の内容を聞いていなかったりと、会議全体の
雰囲気が注意散漫していた。しかし、各機関では、各専門家が、プレゼンや議論の内容から、専門分野
にプライドを持って、職務に励んでいることが伝わってきた。このような体験は、現場に行ったからこ
そ感じたことで、外部から見ているだけでは感じ取ることのできない、国際機関の姿を知ることができ
たのが最大の収穫であった。
22
「日本企業も捨てたもんじゃない‐企業と人権の観点から‐」
山本仁実(大阪大学国際公共政策研究科国際公共政策専攻 博士前期課程 1 年)
学部生の頃から「国際公務員」という職業に憧れており、長期的な将来の進路の選択肢の 1 つとして、
それを実現したいという思いがあった。国連という大きな組織が実際にどのような活動をしているのか、
また現地で実際に働いているスタッフはどのような様子なのか。まさに今回のプログラムのタイトル通
り、国連の活動を知りたくてプログラムに応募した。
参加者全員がそれぞれの訪問先でプレゼンテーションを担当することになり、私は OHCHR を選んだ。
これは、多国籍企業による途上国における人権侵害が自身の研究の関心事であったからである。日本に
おいても中国人研修生への低賃金労働の強要の問題や過労による死亡率の高さなど、多くの人権侵害が
ある。しかし、日本企業と人権について調査しているうちに、東日本大震災の際に日本企業がとった行
動の根底には人権への配慮がみられることが明らかになった。その事例を複数紹介しながら、企業の人
権意識を高めることの重要性を主張した。
例えば、小売業最大手のイオンは、東日本大震災発生から今日まで、果たした役割は非常に大きい。
イオン石巻ショッピングセンターには最大時で約 2500 人の地域住民が避難した。また、被災地 6 県 14
都市に商品や飲料、衣料や薬品などの支援物資を提供し、募金額はグループ全体で 50 億円にものぼる。
また、生活必需品だけではなく映画館の復旧などで被災者に娯楽の場を提供し、避難生活に伴うストレ
スの軽減にも貢献した。
日本の深刻な経済状況にもかかわらず、イオンだけでなく多くの企業が自社の強みを活かしてさまざ
まな行動をとったことは非常に評価できる。また、今回の震災をきっかけとして多くの企業がより真剣
に CSR へ取り組むようになったことにより、日本が人権先進国として他の国をリードしていく存在にな
ることを期待している。
私のプレゼンに対し、OHCHR 担当職員からは「企業と人権」に関する枠組みを作ることの重要性に
ついてのコメントがあった。
「人権侵害から保護するという政府の義務」、
「人権を尊重するという企業の
責任」、
「人権侵害からの救済手段の重要性」という”Protect, Respect and Remedy(保護、尊重、救済)”3
本を柱とした枠組みの構築が、企業が人権尊重の責任を果たすためには不可欠であるとの指摘を受けた。
その後の質疑応答時間には、人権問題への取り組みを企業に強制することの難しさが議論された。ま
た、OHCHR という機関は非常に小さく、他部署との連携が不可欠であるという問題も明らかになった。
私がこのプログラムに参加して痛感したことは、
「国際公務員になるということは目的ではなく手段で
ある」とうことである。たくさんの機関への訪問を通じ、各国際機関が担う役割はそれぞれ一括りにで
きないということが分かった。例えば、WTO は経済的な指標を用いて自由貿易の促進を主張するが、
UNHCR では難民の把握や支援など、必ずしも経済では測れない領域を扱うこともある。欧州人権裁判
所や OHCHR のように人権をメインに掲げる機関も存在する。つまり、自分の専門を極めた延長線上に
国際公務員という仕事がある訳で、国連職員自体が自己目的化することは有り得ない。考えてみれば当
たり前のことであるが、このようなことに気が付けたこともフィールドスタディでの収穫となった。
23
5.担当教員の所感
兼松泰男(産学連携本部イノベーション部 e-square・GLOCOL 兼任
教授)
(1)海外フィールドスタディに参加して
フィールドスタディの学生メンバーの構成を考慮すると、バランス上、男性理系教員が引率に加わる
ことが相応しいという相談を受け、当初、引率依頼を担当した。依頼した教員の都合がつかず、兼任教
員としての責を果たすためにも参加を決意したが、他方、イノベーション人材育成の立場で、主に理系
サイドから、グローバル人材育成に関わってき自身の視野を広げることも動機の一つであった。
今回の経験は、一言で言って、刮目させられた思いである。国際機関を肌で知るということは、理系
教員にとっては、たいへん得難い経験だ。いかに研究が国際的と言っても同業者の世界に閉じこめられ
ているため、世界を動かすための社会的装置については、雲の上のできごとでしかない。産学連携に関
係する地方政府機関、企業や研究所、大学内外の関係組織などを、欧米を中心にかなり訪問してきたが、
国際機関の世界は全く異なるという強い印象を持った。
訪問した機関は、いくつかのカテゴリーに適切に類型化されると思うが、仮に人権を中心とした倫理、
あるいは理想の追求を最上位に置く組織と、現実の政治経済上の調整を担う組織に、おおまかに二別し
てみる。前者は、ジュネーヴの UNHCR、OHCHR、国連人権理事会、パリの UNESCO、ストラスブー
ルの欧州評議会と欧州人権裁判所であり、後者は、ジュネーヴの WTO、WHO、パリの OECD とその下
部組織の IEA である。
理系、文系という分け方に意味があるかどうかは別にして、一般的な意味合いで理系とより強く関係
づけられるのは後者であり、前者の中では、UNESCO との関係が深い。
印象深かったのは、IEA での学生発表で、中国農村部での日常的に使用される燃料に着目した技術開発
による炭酸ガス排出削減と UNESCO でのアフリカ・アジアにおける太陽光発電の話が、世界的な視点
で、技術を考えるという志向が、奇しくも一致していた点である。どこに、そして、いかに技術を導入、
開発していくかという目標設計が最も重要である。単純に技術開発をいかに進めるかということではな
く、グローバルな視野から、現代が抱えている問題と、それがどこにつながっていくのかという未来へ
の責任が問われるのだと改めて認識させられた。また、そのための教育もクローズアップされねばなら
ない。太陽光発電装置自体を製作し運用するといったことも、現地でできなければ意味がないからだ。
イノベーションの立ち位置を考えさせられた思いがした。
さらに、強く、自身の認識の低さを思い知らされたのは、人権への対応である。いかに良心を守り抜
くために、理性を束ね、批判と検証を重ね続けなければならないか。特に欧州評議会と欧州人権裁判所
の訪問で、第二次世界大戦の強い反省が基盤となっているのだろうが、複数の国家から独立した機関を
作り、英知を結集して人権を発展的に護ってきていることに、感銘を受けた。欧州人権裁判所へ日本の
裁判官が赴任されて来ていたが、
「実際に各国政府にものを言うことができ、かつ、効力を発揮するとい
う、法が尊重され機能するシステムが存在すること自体、我が国の状況にくらべて羨ましい」と話され
ていたことが印象に残った。
健全な理性の堅持という点は、実は科学研究に強く通じるところである。事実を公開し、思わしくな
い結果も誤魔化さず受け入れ、知的に誠実である。これが、科学の立場のはずだが、昨今の原子力事故
や地震予知を引き合いに出すまでもなく、理性の堅持のための仕組みを追求するという姿勢が、日本の
24
科学者、技術者は弱いのかも知れない。国際機関の訪問を通じて、良心を守り抜くための行動と賢さが
求められていることを改めて感じた。
(2)学生の成長
事前学習については、立ち会う程度の貢献しかできなかったので、憚られるところだが、率直に言っ
て、時間が十分にあったにも関わらず、準備状況は、最後の段階まで芳しくなかったように思う。もち
ろん、出来映えは、様々であり、個人の取り組みに依存して、差異があったことは言うまでもないが、
国際機関に従事される方々と切り結ぶレベルに達していたかどうか。平均的には否と言わざるを得ない。
一方、事業推進サイドから言えば、仕方がない面もある。学生にとっては、特に学部や大学院におけ
る専門とは必ずしも一致しない分野であり、担当する機関について詳しい訳でもない。何をテーマに話
をすると相手にとって意味があり、自身の興味関心に合うのか、かなりの難問である。
しかしながら、出発後は状況が一変する。本人達が各人報告に立ち向かうための責を負い、質疑も要
求される中、各人の頑張りが開花する。また、かなり学生間の支え合いもあったのではないかと推測す
る。少なくとも真剣に対峙し、それなりの感触がつかめたり、また、うまくいかず、悔しい思いをした
り、様々な、しかし強烈な、印象を得たのではないだろうか。海外フィールドスタディで日を過ごす内
に、疲れを超えて、意味のある会話が増えていったような印象を持っている。彼らの中で何かが変わり
つつあったのではないか。
理系サイドから見ても、キャリアを拓く動機という点で、大きなインパクトがあったと推測される。
大学における理系の研究は、新しく問題設定するところに立ち戻らなければ、その意味づけやグローバ
ルインパクトを考える機会が少ない。学生にとって、いったい科学や技術がどのように現実に接続し、
そして世界に貢献する可能性があるかという認識の端緒をつかんだということは、非常に大きかったの
ではないかと思う。実際、移動中の電車の中や、帰国後、将来のことを考え始めたことがわかる言動に
接し、本物の学びがそこにあったことを実感した。
(3)今後の展開
本海外フィールドスタディの最も大きな収穫は、グローバルに成長する動機の獲得ではないだろうか。
本格的な主体的な学びの端緒を開くと言い換えても良い。これを最大化し、かつ、担当者の負荷を最小
化することを考えなければならない。
研究室の限られた世界に閉じこもり、一方で、就職斡旋企業の情報に踊らされて、進路選択をする。
社会が大阪大学に期待していることは、決して、そんな陳腐な状況ではないはず。しかし、限られた時
間の中で、マインドセットを変える契機となるような体験は、なかなか得難い。海外フィールドスタデ
ィでは、国際機関での報告と質疑をメインにして、自然発生的にチームダイナミクスが発揮された。チ
ームダイナミクスを事前に強化することが新たな発展につながるのではないかと考える。そのためには、
学生から学生へと引き継ぎがおこなわれていくように設計できるのが理想だ。また、ジュネーヴ高等研
究所での学生との交流や、在パリ OECD 日本政府代表部の姫野公使との会合など、交流を直接の目的と
する機会も積極的に設定することが有効ではないかと考える。チームミーティングも自然発生的なもの
も含め、機会を作っていくことが重要だ。
一方、担当者の負荷に関しては、今回は、安藤由香里特任助教の献身的な活動がなくしては、成り立
25
たなかったことを申し添えたい。各機関への事前コンタクト、学生への個別指導、アドバイザー教員の
割り当てから、ロジスティクスまで、八面六臂の大奮闘と学生への気配りがあってはじめて、奇跡的に
成り立ったのだと思う。もちろん、GLOCOL のアドミニストレーション機能の高さを背景にしてのこと
ではあるが。今後、このような超人的な活動に依存するわけにはいかないであろう。むしろ、大学とし
て、規模を拡大し、組織的に継続的に実施すること、また、ロジスティクスに関してはアドミニストレ
ーション強化とともに外部リソースの活用を考慮することが必要だと考える。ある程度の規模になれば、
国際機関群との間に協働人材育成のための協定を締結し、専任教員を設けることができるであろう。海
外フィールドスタディだけでなく、留学やインターンシップなど、総合的にグローバル人材育成をデザ
インし、個別プログラムの効率的な運用を図ることを全学的課題として追求することが合理的である。
グローバルに活躍する動機を得た学生達が、目を輝かせ研究に励み、社会に貢献する。今回のフィー
ルドスタディは、その可能性を教えてくれた。学生を含め、貴重な経験を与えてくれた、すべての関係
者の方々に感謝したい。ありがとうございました。
26
担当教員の所感
安藤由香里
(1) 本フィールドスタディ設立秘話
GLOCOLで、海外インターンシップと海外フィールドスタディを担当している教員だからこそできる
ことは何だろうと考えた際、ありそうでない「国際機関を知る」機会を作ったらどうかと考えた。しか
し、国際機関の人たちは非常に忙しい。本当に実現するだろうかという不安がなかったわけではない。
2011年12月に海外インターンシップ情報収集のために、ジュネーヴ、パリ、ストラスブールへ出張した
際、国際機関や外務省の方々にどうですかねと意見を伺った。そこでできるかもしれないという感触を
得て、科目化に踏み切った。
(2) 参加者の成長
各機関での意見交換の機会を通して、学生が抱いていた国際機関へのイメージ、例えば、
「国際機関の
職員は近づき辛い」、「堅い雰囲気がある」を覆すきっかけとなった。そのことにより、遥か雲の上の存
在であった国際機関が、「専門性を深化し、語学力を磨けば」、自らのキャリアデザインの一部となり得
るのではないかと考え始めた点が大きな進展である。
語学力に不安を有する参加者が多かったが、現地学習では、回数を重ねるごとに、少しずつ質問する
ことに慣れてきた様子が見て取れた。これを機に、自己表現をできなかった悔しさや気付きが、今後の
自主学習の原動力になれば幸いである。
また、ジュネーヴ高等研究所学生との交流では、同世代と自らを比較し、自らを省みる良い刺激とな
ったと述べる参加者が多かった。自分の専門だけでなく、様々な事象に関心を持ち、議論できる知識を
持つことの重要さを認識する機会となったことは参加者にとって大変良かった。
現地学習では、担当プレゼンテーション前に、ホテルロビー等に集合し、学生間で情報共有や練習を
行っていた。第一回事前学習ではチームワークが危ぶまれたが、日を重ねるごとに10名のグループ・ダ
イナミックスが上手く作用していく様子が見て取れたことは非常に嬉しい発見であった。
(3) 今後に期待される効果
国際機関の活動を知り、そこで働いている職員に直に接することによって、国際機関を参加者に身近
に感じてもらうという当初の目的は 120%達成したと言える。訪問前には選択肢に入っていなかった国際
機関で働くというキャリアデザインの目標が具体的になった者や留学を考え始めた者が複数いることも
大きな成果であろう。また、長期インターンシップの参加を含め、将来のキャリアとして国際機関を視
野に入れたキャリアデザインを考え始めるようになったことも、将来のオプションを広げるという本フ
ィールドスタディの目的を達成したと言える。さらに、本海外フィールドスタディでの気付きやジレン
マが、①調整力、②コミュニケーション力、③柔軟性といった国際機関のみならず、国際舞台で活躍す
るために必須であるグローバル人材の要素として、自家発電的作用を「継続」して担っていくことが望
まれる。モチベーションの継続のためのフォローアップとして、大学側が取り組むべきことは何かを今
後の課題としたい。
本フィールドスタディは非常に多くの方のコラボレーションがあったからこそ 120%の目標達成に至
った。外務省国際機関人事センターをはじめとする、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部、在パリ
OECD 日本政府代表部、在ストラスブール総領事館の皆さま。各国の国際機関で働く親愛なる友人たち。
WTO、WHO、UNHCR、OHCHR、国連人権理事会、ジュネーヴ高等研究所、UNESCO、IEA、OECD、
27
欧州評議会、欧州人権裁判所の皆さま。事前学習や準備段階でご助言をいただいた大阪大学や外部の関
係者の皆さま。GLOCOL の仲間たち、とりわけ、はじめにを執筆いただいた大橋一友センター長、「大
学によるグローバル人材育成の今後の課題」に寄稿いただいた宮原暁副センター長、FIELDO 長の敦賀
和外特任准教授、FILEDO 事務をきりもりしている片山歩さん。そして何よりも多忙なスケジュールに
もかかわらず、担当教員となることを快く引き受けてくださった兼松泰男教授なくして実現し得なかっ
た。初顔合せでは不安がなかったわけではないが、見事なグループ・ダイナミックスを発揮した、正樹
くん、健児くん、泰志くん、 彩さん、香さん、カニーさん、シェリーさん、チャンダさん、照代さん、
仁実さん。皆さまに、感謝の意を表すと共に、ますますのコラボレーションを願ってやまない。
付録 1 振り返りシート
付録 2 自己評価シート
付録 3 リスク管理について
付録 4 ジュネーヴ高等研究所訪問日程表
付録 5 ジュネーヴ高等研究所参加証(例)
付録 6 10 月の浜松多文化共生会議報告書(フォローアップ)
28