平成21年2月号 Vol

Management Issue
平成 28 年 8 月号 Vol.86
「総資産回転率」は経営者の性格を示し
「棚卸資産回転期間」は管理体質を示す
利益を創出するポイントは「売上げ」「粗利益率」「回転・生産性」「経費」であるが、このうち「回転・生産性」の
指標については、「経営者の性格」「企業の性格」が表れる場合が多い。一概には言えないが、回転率の高い
会社の経営者は、決断スピードが速く、モノの価値を見極める力がある。一方、回転率が低い会社の経営者は
決断スピードが遅れがちで、カネを価値に変える感覚が不足している場合が多い。もちろん、回転率を追求し
すぎるあまり、本質を見失う場合もあるが。
総資産回転率と棚卸資産回転期間を例に挙げて説明したい。
1. 総資産回転率
総資産回転率(売上高÷総資産)はご存知の通り、いくらの総資産をかけて、いくらの売上げを上げ
ているのかを示す指標である。製造業は「2回転」、卸・小売業なら「2.5回転」などが目安になる
(業界によって数値は大きく変わる)。この指標は、経営コンサルタントや会計事務所による経営分析
では必ず取り上げられるものであるが、その半面、あまりスポットが当たらない地味な指標でもある。
だが、この指標から、経営者の特徴がある程度まで把握できる。
すなわち、回転率が高いということは、あまりモノを持たずに売上げを上げているということである。
これまでの経験から言えば、こうした企業の経営者は「身の丈以上のことはしない」「決断が早い」「余
計なものは持たない」「価値のないものはすぐに捨てる」など、簡単に言えば「いいカッコしない」タ
イプが多い。高収入・高資産だが、それをひけらかすこともない。高級自動車には目もくれず、普通自
動車に乗ったり電車通勤しているような人である。
一方、回転率の低い会社の経営者は、「身の丈以上に見せようとする」「決断が遅く、捨てることが
できない」「ものを持ちたがる」といったタイプが多い。不良在庫はいつか売れるだろう、長期売掛金
もいつかは回収できるだろう、などと「うまくいけばいいな」と考えがちである。要するに「運に任せ
た経営」となり、結局、うまくいかない場合が多い。
ぜひ、総資産回転率を分解、チェックした上で、目標と対策を立てていただきたい。売上債権回転率(回
収力の点検)、在庫回転率(在庫管理力の点検)、固定資産回転率(固定資産の有効活用度の点検)はど
うか、などの着眼から問題点を浮き彫りにして、改善テーマを抽出していく。そして経営者、幹部、社員
が分かる仕組みをつくり、見直しに取り組んでいく。
仮に、売上債権の回収率が悪く、「回収強化」を方針に掲げるとする。この場合、売上債権の回収期間
の短縮状況がひと目で分かる管理資料を整えたい。あるいは、営業部門において、得意先別や担当者別と
いった、さらに細かい管理資料を整えることも実行していただきたい。
Management Issue
2.棚卸資産回転期間
次に棚卸資産回転期間だが、コンサルティングの経験上、「毎月棚卸しをする会社=在庫回転の高い
会社=営業利益率の高い会社=在庫鮮度の高い会社」であることが多いように思われる。
在庫管理にかかわるコンピュータや物流機器だけでマーケットが形成されるくらいだから、この指標
がどれだけ重要であるかがご理解いただけるであろう。
基本は、「在庫が見えるようにする」「毎月棚卸しをする」ことから始まる。実際、コンサルティングを行うにあ
たって、まずクライアント企業に対しては商品が何万点あろうと、また人手がどれほど不足していようと毎月、棚
卸しをしてもらうようにしている。最初は時間がかかるものの、毎月棚卸しをしているとオペレーションの改善が
進むようになり、受発注担当者や倉庫担当者のレベルも上がっていく。そして在庫は減り、不良在庫の発生率
がどんどん下がっていく。この段階で、コンピュータシステムを導入すると効果が高い。
ただし、在庫の回転を上げていくときは、本質を見失わないことが重要となる。よく、「在庫管理を
徹底しなさい」「在庫回転を上げなさい」「在庫を少なくしなさい」といった方針を耳にするが、指令
を受けた担当者は部下に「在庫管理を徹底しなさい」とだけ伝えることが多い。このため、部下は具体
的に何をすればいいのか分からない。よくありがちなのが、「在庫を少なく」と言われたために発注数
量を減らし、欠品だらけになったというケースがある。
在庫管理の本質を顧客の目線で考えると、「鮮度の高い在庫にする」ということではないだろうか。
このように書くと、「鮮度?それは食品関係の話ではないのか」と思われるかもしれないが、そうでは
ない。建築や機械業界も同じである。つまり、「あの会社はいつも新しい商品、使いやすい商品をタイ
ミングよく持ってくる」ということである。在庫鮮度は仕入れ情報力、仕入れ開発力を示すと言っても
過言ではない。
したがって、現場レベルの在庫管理における価値判断基準は、「今日出荷した商品は生産(または仕
入れ)してから何日たったのか、それをいかに短くするか」であり「リードタイムの短縮」となる。
ここに基本軸をおくと、「欠品してお客さんを待たせることはできない」「1週間もたった商品を出
荷するのはダメ」という着眼が生まれ、それが顧客目線の管理になる。現場担当者の段階では、例えば
「仕入れて3日以内の商品出荷」「材料到着後7日以内の商品出荷」というような目標を設定し、それ
を超えると「負け」、それ以内に収まると「勝ち」といった具合に、毎日の管理ができる。
建材業のある会社は、この方式に徹底して取り組み、在庫が減ったことはむろんのこと、常に鮮度の
高い商品が顧客のもとに届くようになった。そして顧客から喜ばれると同時に、営業担当者も自社商品
に自信と誇りを持てるようになったという。
「○○管理を徹底せよ」と企業現場でよく耳にする。しかし、それを表面上、現場に落とし込むだけ
で、実際は何も動かないというケースもよく目にする。「管理する本質は何か」を、現場レベルにまで
しっかりと落とし込むことが大切である。
以上
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