市内の伝統的家屋の保存・活用に関する可能性研究

平成 27 年度 地域志向教育研究 ともいき研究<産官学協働型>
市内の伝統的家屋の保存・活用に関する可能性研究
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研究代表者 : 小林
大祐
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研究分担者 : 森 正美
総合社会学部総合社会学科 講師
総合社会学部総合社会学科 教授
滋野 浩毅
地域協働研究教育センター 専任研究員
平野 正人
宇治市歴史まちづくり推進課 課長兼参事
大島 由光
宇治市歴史まちづくり推進課 拠点整備係 主任
杉本 宏
宇治市歴史まちづくり推進課 文化財保護係長兼主幹
船谷 昭夫
宇治市歴史まちづくり推進課 景観係長兼主幹
1.研究概要
宇治市においては昭和戦前期までに建てられた伝統的家屋が約400棟現存するが、空家化するものも多く、
建替えや更地になることによって年々減少しまちなみ景観に与える影響も無視できない状況になって来てい
る。こうした中で、伝統的家屋を有効に活用して後世に継承して行くにはどのようにすればよいのだろうか。
活用には以下の用途が考えられる。
◉ 住宅として
◉ 店舗(飲食・物販)として
◉ ギャラリーとして
◉ 宿泊施設として(ゲストハウス、町家・民家ステイ、民泊施設)
近年海外からの観光客の増加に伴って宿泊施設が不足し、対応が急務となっているが、既存の建築を活用し
たゲストハウスや町家・民家ステイ、民泊施設に注目が集まっている。
本年度の研究では
(1)宿泊施設の種類
(2)宿泊施設への転用の法的問題の整理
(3)ゲストハウス営業の事例研究
(4)国家戦略特区におけるゲストハウス
を行った。歴史まちづくり研究会主催のワークショップでゲストハウスの問題点を発表し、中宇治でゲストハ
ウスを開業した所有者から体験談を聞くことが出来た。一方、当初予定していた建物所有者への活用意向調査
(アンケート)とゲストハウスへ改修シュミレーションは実施できなかった。
2.研究成果
(1)宿泊施設の種類
旅館業法では
①ホテル営業
②旅館営業(7㎡以上を5室以上)
③簡易宿泊所
④下宿営業(シェアハウスを含む)
の4つに分類している。
ゲストハウスは、簡易宿泊所として営業許可を受けることが原則であるが無許可のものも多く見られる。京
都の老舗ゲストハウスや町家ステイでは1ヶ月単位の短期賃貸契約(ウィークリーマンションと同様)を結び、
日割り計算する方法を取っている。
(2)簡易宿泊所への転用の法的問題の整理
①旅館業法(保健所)
・立地場所に関わる照会(学校、福祉施設、図書館などから100m以内の場合)
・客室面積 有効1.5㎡/人以上
・トイレの便器数 水洗、男女別、5人以下2器、〜10人3器、〜15人4器、〜20人5器
・洗面所の給水栓数 〜5人1コ、〜10人2コ、15人3コ、20人4コ
・浴室の設備 浴槽を設ける場合の浄化設備設置義務
・維持管理に関わる規定(宿泊者名簿、営業従事者名簿、施設毎に管理者など)
・設備や寝具に関わる規定
②建築基準法(建築審査課)
100㎡を超える場合:建築基準法による用途変更申請が必要である。
・用途地域の制限
・接道条件(2m以上)
・換気(床面積の1/20以上の開口部を設けること)
・天井高さ(2.1m以上)
・シックハウス対策
・耐火性能の確保
・排煙設備の設置
・非常用照明装置の設置
・階段の寸法(幅・蹴上・踏面)、手すりの設置、主たる階段における回り階段の禁止
・階段・エレベーター・吹き抜け部分等の竪穴区画(鉄製の扉等で遮煙性能が必要)
・廊下の幅
・間仕切壁の仕様(準耐火構造等の壁で天井裏・小屋裏まで達せしめること)
③消防法(消防審査課)
・非常用誘導灯、誘導標識の設置義務
・防炎対策物品の使用(カーテンやじゅうたん、壁紙など)
・自動火災報知設備の設置基準変更(すべての施設に設置義務、平成 27 年 1 月から)
(3)ゲストハウス営業の事例研究
①ゲストハウスの2つの種類
・簡易宿泊所営業許可を受けたゲストハウス
・定期借家契約によるゲストハウス(シェアハウス)
防火性能:準耐火構造、100 ㎡を超える場合や3階建て以上では耐火構造
接道条件:2m 以上
②ゲストハウスの事例
(ⅰ)GOJO Pradiso
(ⅱ)京都 ゲストハウス木音
〒602-8319 京都府京都市上京区溝前町 100
お部屋:ドミトリー
(男女別相部屋/男子ドミ定員 2 人・女子ドミ定員 3 人)
お一人様 2700 円
洋個室(ベッド・定員 2 名)
「2 名様でご利用」お一人様 3800 円(7600 円 / 1 部屋)
和個室(布団・定員 3 名)
「2 名様でご利用」お一人様 4000 円(8000 円 / 1 部屋 )
「3 名様でご利用」お一人様 3000 円(9000 円 / 1 部屋)
客室
・個室はエアコン完備、共有スペースとドミトリーの空調は宿側で管理。
・無料 WiFi(無線 LAN)
。
共用
・トイレ、洗面、シャワー(シャンプー・リンス・ボディーソープ付)は共用。
・共用部屋では、夏は扇風機、冬はこたつとストーブ完備。
・共用の冷蔵庫、ドライヤー、フリードリンク(お湯・紅茶・コーヒー)
。
(ⅲ) 京都のゲストハウス胡乱座(うろんざ、登録有形文化財)
京都府京都市下京区醒ヶ井通綾小路下る要法寺町 427
個人で経営
料金: 1 人 1 泊 3,000 円(税込)
「京都の人々が昔から暮らしてきた普通の町家」をそのまま体験、
静かに過ごしたい人に適したゲストハウス。
設備
・無線 LAN(WiFi)をお使いいただけます。
・共有スペース (夜中 12 時以降は利用できない。)
・共用のノートパソコンが1台ある。
・木製小型ロッカー(鍵あり;W35×H25×D50cm)
・共同トイレ
・共同洗面所
・共同シャワールーム (4:00pm-0:00am / 6:00am-10:00am)
・シャンプー、リンス、ボディーソープ(それぞれ無添加石鹸系)
、ドライヤー
・2台分程の自転車置き場(屋外;バイクは置けない)
登録有形文化財
③町家ステイ
町家ステイとは
・一棟貸切、町家にてチェックインの後は、門限もなく一棟まるごと貸し切りの、自由な時間を過ごせる。
・一泊からの賃貸借、町家は貸家、一泊から利用できる。チェックイン時に、定期賃貸借契約を結ぶ。
(ⅰ) 庵 恵美須屋 町家 Ebisuya-cho Machiya
京都市下京区富小路通高辻下ル恵美須屋町
チェックイン:16 時 00 分~17 時 45 分
チェックアウト:11 時 00 分まで
お部屋 定員:6 名様
料金:15,500~19,500 円
お部屋の特徴
茶室から2部屋越しに見える坪庭は、夜に灯りを点すと趣を増し、窓から眺め
つつ湯に浸かれば旅の疲れが癒えることでしょう。襖にかくされた階段をあが
ると2階にはソファがあり、少人数で落ち着いて過ごしていただける町家です。
間取り:約 120 平方メートル、2階建て
1階:茶室 和室2室 台所 トイレ 洗面 檜風呂、2階:板間 和室2室
(4)国家戦略特区
外国人旅行者を対象としたゲストハウスを行うためには、原則、簡易宿所営業を行うための旅館業の許可を
取得しなければならないが、アベノミクスの国家戦略特区構想により、特定の地域において、政令で定められ
た要件をクリアーした施設は、旅館業法の許可を取得しなくても、都道府県知事の特定認定を受けることで、
ゲストハウスを経営できることにしたもの。
①事業名:国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業
【対象区域】
東京圏 ・・・東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区
神奈川県全域、千葉県成田市
関西圏・・・ 大阪府全域、兵庫県全域、京都府全域
【宿泊期間】
7日~10日以上
※施設の所在地を管轄する都道府県(その所在他が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合にあ
っては、当該保健所を設置する市又は特別区)が、域の旅館・ホテル状況等を勘案して、条例で具体的な
期間を定める。
②宿泊施設の要件
一居室の床面積は、25平方メートル以上であること
※施設の所在地を管轄する都道府県知事が、外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合において
は緩和措置があります
・出入口及び窓は、鍵をかけることができること
・出入口及び窓を除き、居室と他の居室、廊下等との境は、壁造りであること
・適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること
・台所、浴室、便所及び洗面設備を有すること
・寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有
すること
・施設の使用の開始時に清潔な居室を提供すること
・施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供その他の外国人
旅客の滞在に必要な役務を提供すること
・当該事業の一部が旅館業法第2条第1項に規定する旅館業に該当するものであること
【都道府県知事の特定認定申請】
都道府県知事より特定認定を受けようとする場合、事業を開始する前に、所定の申請書及び添付書類を、
施設の所在地を管轄する都道府県知事に提出。
3.研究成果の地域への還元方法、今後の地域連携への展望等
(1)宇治市における伝統的家屋の活用支援と課題
①既存施策の活用による支援
景観重点地区の修景助成
②宿泊施設の課題解決
無秩序な民泊施設の増加をどうするか
・空家所有者の活用意欲を引き出す
・近隣コミュニティの理解
・国家戦略特区における旅館業法の特例の適用(合法的な民泊施設とするために)
・既存不適格建築の活用をどうするのか(建ぺい率・容積率、準耐火構造など)
③宿泊施設以外への転用事例の研究
(2)歴史まちづくり研究会との連携
①ワークショップによるゲストハウス経営のノウハウの伝授
意欲のある新規参入者へのノウハウの伝授
②モデルゲストハウスの検討
ゲストハウスへの転用のシュミレーション
③伝統的家屋の所有者へ活用意欲を高めるシンポジウムや勉強会などの開催
(3)京都府との国家戦略特区へ向けての調整
独自に保健所を持たない宇治市としては京都府による国家戦略特区へ向けた条例の制定が前提条件とな
る。