JFEブライト - JFEスチール株式会社

JFEブライト
無研磨溶接用鋼板
目
次
1 はじめに
2 特 長
3 皮膜構成
4 品質特性
4-1 溶接性
4-2 JFEブライトの裸耐食性
1
2
3
4
6
4-3 塗料密着性
4-4 耐内容物性
5 製造寸法範囲及びテンパー度
5-1 製造寸法範囲
5-2 テンパー度(調質度)
6
7
8
8
1 はじめに
近年溶接技術の進歩により、金属容器に占める溶
接缶の比重が急速に高まってまいりました。溶接缶
は、製缶作業性の良さ、低製缶コスト、鉛規制に関
係のないことなど数々の利点により、広く普及して
います。
溶接缶の素材としては、一般的にぶりきや極薄ニッ
ケル錫めっき鋼板が使用されますが、ティンフリー
スチール(TFS)を使用する場合には、溶接前にめ
っき皮膜をブラッシング(研磨)などにより除去する
必要がありました。このため、ブラッシング(研磨)
が不要で、ぶりきなど錫系素材にかわる安価な新素
材の出現が強く望まれていました。
このようなニーズに応えるため、無研磨溶接用のテ
ィンフリースチールとして、JFEブライトを開発い
たしました。この新素材の品質特性や性能を理解
していただくために、ここにその概要を紹介いたし
ます。
1
2 特 長
JFEブライトは次のような特性を有しています。
2
1
無研磨溶接性
2
優れた塗料密着性と塗装後の耐食性
3
溶剤、洗剤等への耐内容物性
3 皮膜構成
JFEブライトは通常のTFSと同様に、金属クロム層(下層)とクロム水和酸
化物層(上層)よりなりますが、薄くて均一なクロム水和酸化物層を形成さ
せることにより無研磨溶接性を付与しているところに特長があります。
通常のTFS
JFEブライト
クロム水和酸化物による
被覆の均一性保持
クロム水和酸化物
金 属 C r
鋼
クロム
水和酸化物
低 減
板
無研磨溶接が可能
図1
JFEブライトの皮膜モデル
3
4 品質特性
4-1
溶接性
材料表面を研磨せずに、ワイヤーシーム溶接機(例えばスードロニック溶接機)で18L缶、ペール缶、美
術缶等を製缶する場合にも、スプラッシュ発生が少なく、ナゲットが連続生成し、十分な実用強度を有す
る溶接シーム部が形成されます。これらの性能には、溶接機種、加圧力、電流波形、ラップ代安定性、周
波数、溶接速度などの溶接条件、素材の機械的性質(硬度、板厚)、溶接素材の表面特性などの要因が互
いに影響します。次に、主として材料面からの説明をいたします。
JFEブライトの電気抵抗
TFSは通常、最表層のクロム水和酸化物の電気抵抗が高いため、研磨しなければ溶接できません。クロ
ム水和酸化物を通常のTFSよりも薄く均一に析出させているJFEブライトは接触部の電気抵抗を低く
することができます。この意味で、接触抵抗が溶接性の尺度になります。図2に接触抵抗の測定方法、表
1に各種材料の接触抵抗の比較を示します。
材
接触抵抗
料
10
電極
100
1000μΩ
JFEブライト
IA
試料
TFS
JFEウェルト
#25ぶりき
銅電極チップの径 : 5.0mm
図2
4
加圧力 :100kgf
接触抵抗測定方法
表1 各種材料の接触抵抗の比較(空焼き条件 210℃, 10分)
シーム溶接性
溶接機種、周波数、加圧力、溶接速度、ラップ代などの条件を適正に選ぶことにより、無研磨溶接ができ
ます。写真1はスードロニック溶接機により18L缶の溶接を行った時の溶接部の断面写真です。JFEブ
ライトはTFSを研磨した時と同等な溶接部が形成されます。一般のTFSは研磨しなければスプラッシュ
が発生し易く、気密性の良好な溶接は困難です。
縦断面
横断面
JFEブライト
TFS(研磨材)
TFS
縦断面 : 溶接ビードと平行方向に切断した断面
横断面 : 溶接ビードと直角方向に切断した断面
写真1
JFEブライトの溶接部の断面写真
5
4-2
JFEブライトの裸耐食性
図4にJFEブライトの硫酸銅浸漬試験結果を示します。硫酸銅浸漬は地鉄露出部分に銅を置換析出させ、
クロムめっき皮膜の被覆性を評価する試験方法で、析出値が小さいほどは被覆性が良好であることを
示します。JFEブライトのクロムめっき皮膜はTFSと同等以上の優れた被覆性を有することを示してお
ります。その結果、JFEブライトは優れた裸耐食性を示します。写真2に示しますように、エリクセン加工
後、30〜40℃、湿度70〜80%の湿潤環境での保管において錆が発生しておらず、TFSと同等の優れ
た裸耐食性を有していることがわかります。
銅析出量(mg/m2 )
30
20
10
0
JFEブライト
図4
TFS
JFEブライト
硫酸銅浸漬試験結果
TFS
写真2
エリクセン加工後湿潤試験結果
倉庫内(温度30〜40℃、湿度70〜80%)
3日間保管後の外観写真
4-3
塗料密着性
JFEブライトの塗料密着性は極めて優れています。表2はエポキシフェノール塗料を50mg/dm 2塗装
した試料(板厚 0.32mm)のTピール強度を示しています。
材
料
塗料密着性(Tピール強度)
1
2
3
4
JFEブライト
TFS
JFEウェルト
#25ぶりき
表2
6
各種材料の塗料密着性
kg/5mm
5
6
7
4-4
耐内容物性
18L缶やペール缶に充填する有機溶剤や洗剤に対して良好な耐食性を有しています。
酸、アルカリに対する耐食性
メチルアルコールへの耐食性
各種材料をpH値を変えた水溶液(NaOH-H 2SO 4混合液)
JFEブライトは水分の影響を受けますが5%までなら腐食さ
に室温で2週間浸漬した後に表面を観察しました。JFEブラ
れません。しかし蟻酸が僅かにふくまれますとどの材料も腐
イトは中性からアルカリ性にわたって変色などを生じません。
食します。
ぶりきやJFEウェルトは強アルカリ液には錫が溶解して変色
しますが、JFEブライトはTFSと同様変化しません。しかし
いずれの材料も酸性水溶液(溶存酸含む)に溶解いたします。
材
料
1
3
5
pH値
7
9
11
13
材
メチルアルコール中の水分(%)
0
1
5
10
料
JFEブライト
JFEブライト
TFS
TFS
JFEウェルト
JFEウェルト
#25ぶりき
#25ぶりき
室温
表3
2週間
水溶液は大気に接触
変色なし
変色あり
各種材料の耐食性比較(水溶液のpH値の影響)
室温
30日
腐食程度
変色なし
変色あり
表4
各種材料のメチルアルコール耐食性比較
塗料用シンナーへの耐食性
各種シンナーへの耐食性
塗料用シンナーの場合水分が5%程度含まれていても腐食
JFEブライトで18L缶を製缶し各種シンナーを充填後倉庫
されません。しかし蟻酸が僅かにふくまれますと、どの材料
に1年間貯蔵した後に内面の腐食状態を観察しましたが腐
も腐食します。
食は認められませんでした。この結果は、TFSの場合も同様
でした。
(ただし、溶接部は補修塗装が必要です。)
材
塗料用シンナー中の水分(%)
0
1
5
料
シンナーの種類
JFEブライト
TFS
ラッカーシンナー
JFEウェルト
ポラミン静電用シンナー
#25ぶりき
ウレタンシンナー
室温
表5
1
貯蔵期間(月)
3
6
12
1年
各種材料の塗料用シンナーへの耐食性
表6
18L缶への各種シンナーのパックテスト結果
7
5 製造寸法範囲及びテンパー度
5-1
製造寸法範囲
《シート》
T1 〜 T5
製造可能範囲
DR8 〜 DR10
通常製造範囲
製造可能範囲
DR8
板
厚
mm
0.15 〜 0.60
0.18 〜 0.50
通常製造範囲
0.13 〜 0.60
0.15 〜 0.25
DR10 0.13 〜 0.60
0.20 〜 0.36
DR9
幅
mm
457 〜 1,067
650 〜950
457 〜 1,067
690 〜950
剪 断 長
mm
406 〜 1.110
500 〜1,050
406 〜 1,110
500 〜1,050
板
《コイル》
T1 〜 T5
DR8 〜 DR10
製造可能範囲
通常製造範囲
0.15 〜 0.60
0.18 〜 0.50
製造可能範囲
DR8
板
厚
板
幅
内
径
mm
mm
mm
(インチ)
外
径
457 〜 1,067
t
0.13 〜 0.60
0.15 〜 0.25
DR10 0.13 〜 0.60
0.20 〜 0.36
457 〜 1,067
690 〜950
DR9
650 〜950
406 ・ 419 ・ 508
406 ・ 419 ・ 508
(16 ・ 16.5 ・ 20.0)
(16 ・ 16.5 ・ 20.0)
最大 2,130
最大 2,130
mm
コイル単位質量
通常製造範囲
1.0 〜 18.0
1.0 〜 18.0
3.0 〜15.0
3.0 〜15.0
注)1. コイルの場合溶接部が含まれることがあります。
2. 通常製造範囲外で、製造可能範囲内のご注文に際してはご相談下さい。
5-2
テンパー度(調質度)
テンパー度
一
用
回
圧延製品
T-1
49 ± 5
柔軟性の大きいことが要求される深絞り缶、口金等
T-2
53 ± 5
普通程度の深絞り用で、やや強靭性を要する用途
T-2.5
55 ± 5
絞り性からはT-2、強靭性からT-3の性質を兼ねたもので、一般用
T-3
57 ± 5
座屈を少なくするために適当な強靭性をもたせたもので、一般用
T-S
59 ± 5
T-4に比べ、やや加工しやすいもの(当社規格)
T-4
61 ± 5
比較的大きな強靭性を持ち、缶胴、天地、王冠等に使用されている
T-5
65 ± 5
優れた座屈抵抗を要する用途、缶胴、天地
DR-8
73 ± 5
剛性、強度を要する丸缶の胴板
DR-9
76 ± 5
剛性、強度を要する丸缶の天地板
DR-9M
77 ± 5
DR-9と同じ
DR-10
80 ± 5
強度を要する特殊用途
注)1. 焼鈍方法には、箱焼鈍法と連続焼鈍法があります。
連続焼鈍法をご指定頂いた場合には、調質度記号の後にCAを追記致します。
2. 軟質材(T-1〜T-3)も連続焼鈍法で製造が可能です。ご相談下さい。
3. DR-8、
DR-9、
DR-10は原板をさらに冷間圧延したもので、薄くて強度のある材料です。
4. 他のテンパー度(調質度)をご希望の場合はご相談下さい。
8
途
回
圧延製品
二
硬度 HR30T
JFEブライト使用上の注意点
TFSに無研磨溶接性を付与したもので、基本的な特性はTFSと
1. JFEブライトは、
同じです。
2. JFEブライトは、無研磨で溶接できる素材ですが、溶接機の種類・溶接速度・電源
周波数・電極加圧力等の条件によっては溶接部分のめっき層を事前に除去する必
要があります。
3. JFEブライトは、用途によっては無塗装でご使用いただけますが、塗装して使用さ
れることをおすすめします。特に外面は必ず塗装あるいは印刷してご使用下さい。
ご注文・ご照会について
ご注文、またはご照会される場合は、次の事項をご指示願います。
1.品名、等級
6.切板の場合は1梱包当りの枚数
2.テンパー度、表面仕上、寸法
7.コイルの場合は内径及び
3.圧延方向
4.数
量
1コイルの最大許容重量
8.その他お気づきの事項
5.用途、納期
●ご注文・お問い合わせは、下記または最寄りのJFEスチール株式会社までお寄せください。
東
大
京
阪
東京都千代田区内幸町2丁目2番3号(日比谷国際ビル) 〒100-0011
TEL.03(3597)3974
缶用鋼板営業部 缶用鋼板室
FAX.03(3597)4559
〒530-8353
TEL.06(6342)0727
FAX.06(6342)0731
大阪市北区堂島1丁目6番20号(堂島アバンザ)
大阪鋼板営業部 薄板・缶用鋼板室
Cat.No.B1J-010-01
http://www.jfe-steel.co.jp
本
社 〒100 - 0011 東京都千代田区内幸町 2 丁目 2 番 3 号(日比谷国際ビル)TEL 03(3597)3111 FAX 03(3597)4860
大 阪 支 社
〒530-8353 大阪市北区堂島 1 丁目 6 番 20 号(堂島アバンザ 10 F)
TEL 06(6342)0707
FAX 06(6342)0706
名古屋支社
〒451-6018 名古屋市西区牛島町 6 番 1 号(名古屋ルーセントタワー 18 F)
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〒060-0005 札幌市中央区北五条西 2 丁目 5 番(JRタワー 17 F)
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FAX 011(251)7130
東 北 支 社
〒980-0811 仙台市青葉区一番町 4 丁目 1 番 25 号(東二番丁スクエア 3 F)
TEL 022(221)1691
FAX 022(221)1695
新 潟 支 社
〒950-0087 新潟市中央区東大通 1 丁目 3 番 1 号(新潟帝石ビル 4 F)
TEL 025(241)9111
FAX 025(241)7443
北 陸 支 社
〒930-0004 富山市桜橋通り 3 番 1 号(富山電気ビル 3 F)
TEL 076(441)2056
FAX 076(441)2058
中 国 支 社
〒730-0036 広島市中区袋町 4 番 21 号(広島富国生命ビル 7 F)
TEL 082(245)9700
FAX 082(245)9611
四 国 支 社
〒760-0019 高松市サンポ−ト 2 番 1 号(高松シンボルタワ− 23 F)
TEL 087(822)5100
FAX 087(822)5105
九 州 支 社
〒812-0025 福岡市博多区店屋町 1 番 35 号(博多三井ビルディング 2 号館 7 F)
TEL 092(263)1651
FAX 092(263)1656
千葉営業所
〒260-0028 千葉市中央区新町 3 番地 13(千葉TNビル 5 F)
TEL 043(238)8001
FAX 043(238)8008
神奈川営業所
〒231-0011 横浜市中区太田町 1 丁目 10 番(NGS太田町ビル 4 F)
TEL 045(212)9860
FAX 045(212)9873
静岡営業所
〒422-8061 静岡市駿河区森下町 1 番 35 号(静岡MYタワー 13 F)
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FAX 054(288)9877
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1110R(0403) SP