※法務実務研修(2 日目)29 ページ~32 ページ/全 63 ページ 4 業務委託契約 書/請負契約書 【ケース4】 A 社は、取締役報酬体系を変更するため、専門家のアドバイスを受けることとした。 そこで、コンサルティング会社 B 社との間で契約を締結することとした。A 社として は、B 社に A 社の役員報酬制度全般をチェックしてもらった上、提案をまとめたレポ ートを作成してほしいと考えている。 1 この AB 社間の契約を、準委任契約とすべきか、請負契約とすべきか。 2 AB 間において締結する契約書には、どのような内容を盛り込むべきか。 1 準委任契約と請負契約の差異 契約の目的 準委任契約 請負契約 一定の業務(事実行為)の 他人に仕事の完成を 処理を他人に委ねること。 受託者の本体的義務 善良なる管理者の注意をも 仕事の完成義務 って業務を処理すること 責任の発生原因 善管注意義務違反 仕事の未完成・目的物の瑕 疵 責任の内容 債務不履行責任(損害賠償 瑕疵担保責任(修補義務、 義務、解除) 損害賠償義務) 債務不履行(損害賠償、解 除) 報告義務 あり なし 業務処理費用 委託者負担が原則 受託者負担が原則 解除 いつでも解除可能だが、相 注文者は、仕事の完成前は 手方に不利な時期の解除は いつでも解除可能だが、解 損害賠償義務を負う。 除により請負人に生じた損 害を賠償する義務を負う。 報酬の支払時期 後払いが原則 成果物の引渡しと引換え 印紙税 契約書は課税文書でない 契約書は課税文書である。 <典型契約の選択の意味> ① 契約条項を定めなかった場合の民・商法の任意規定の適用があること。 ② 契約書に予定されていなかった事項について、契約の本質論からの解釈がなされ る可能性があること。 <契約類型判別の基準> 原則として、実態に即した本体的な権利義務の内容(一般に金銭債務は除く)に着 眼して決定する。 2 様々な業務委託契約 ① コンサルティング契約、アドバイザー契約 ② 弁護士への委任契約 ③ システムの保守契約 ④ 人事・労務・経理・営業等のアウトソーシング契約 ⑤ 調査業務委託契約 ⑥ 研究開発業務委託契約 3 契約書に定めるべき条項 (1) 等々数多くの契約類型がある。 (書式例参照 書式例参照) 書式例参照 取引目的達成のための必須条項 準委任契約は、 「当事者の一方が法律行為でない事実行為をすることを相手方に 委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」(民法 656 条・643 条) <ポイント> 委任・準委任契約は、請負契約と比較して仕事の内容が見えにくい。 →「何を」委託するのか(委託業務の内容)、「何に着目して」代金を支払うの か(報酬の発生基準)を明確にすることが特に重要。 →また、委託業務の処理方法についても出来る限り明確化すべき。 例)どのような方法で調査を行うのか、どのような内容のレポートを提出す るのか等 (2) 必要な取引条件 ① 受託者の善管注意義務、法令遵守義務(民法 644 条参照) ② 受託者の報告義務(民法 645 条参照) ③ 報酬の発生基準、支払時期、支払方法 ④ 事務処理費用の負担(民法 650 条参照) ⑤ 委託者の資料提供等の協力の内容 ⑥ 成果物の内容・納入時期・納入方法 ⑦ 成果物の知的財産権(著作権)の帰属ルール (3) 契約の存続に関する規定 ① 解除条項(民法 651 条参照) ② 契約の終了時期(民法 653 条) (4) 想定されるリスクに関する条項 ① 損害賠償条項 ② 秘密保持条項 ③ 個人情報保護に関する条項 ④ 知的財産権侵害リスクに関する条項 4 留意が必要な法律 ・ 個人情報保護法 ・ 下請法 ・ 独占禁止法 Cf. ・ ~当該取引が下請法の適用対象取引にあたるか。 ~当該取引が優越的地位の濫用にあたらないか。 役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針 労働者派遣法、職業安定法 ~当該取引が偽装委託にあたらないか。
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