五感を使うことにより ユーモアを取り戻す

五感を使うことにより
ユーモアを取り戻す
社会福祉法人
寿光会
特別養護老人ホーム りんどうの里
報告:斧 亜希子
1.五感について
視覚
触覚
味覚
聴覚
嗅覚
2.BPSDとは
認知症患者に頻繁に見られる症状。
異食:食べ物でないものを食べる行為。
食事直後でも見られることがある。
図1
3.基本情報(H25年12月時点)
【A氏】 女性・100歳
要介護度
3
既 往 症
平成23年頃から認知症状が出現
A D L
食事:自力摂取(常食)、入浴:一般浴槽
排泄:一部介助(トイレ。紙パンツ+パッド)
歩行:車いす(自走可)
性
格
レクリエーションや行事には積極的に参加される。
職員ともニコニコと笑顔で話される。
自宅ではよくタンスなどの整理整頓をしていた。
4.BPSDの経過と対応Ⅰ(12月、1月)
• 肺炎とインフルエンザで12/27~1/4まで入院
→帰宅願望が出現:孤独、不安感からか
• 1/4に帰苑するも、帰宅願望継続
• 1/18に鮮血混じりの食物残渣物を嘔吐。精査目的で入院
→慢性の胃潰瘍と診断:ストレスが原因か
5.BPSDの経過と対応Ⅱ(2月、3月)
日
付
課
題
2014.1.29
周囲の利用者へ「帰宅したい」と訴える
(これにより、周囲の利用者との関係が
やや不和になる)
2014.2.12
同席のご利用者の食事に手を伸ばす
行為あり(盗食)
2014.2.23
着ていたセーターの毛玉を口に含む
行為あり(異食)
2014.3.4
同席のご利用者のお茶碗を持ち、
食べておられる(盗食)
対
応
具体策講じず。適宜言葉掛け
食事形態の変更。
主食:副食=粥(大盛り):中刻みから
主食:副食=米飯(普通盛り):大刻みへ変更
6.BPSDの経過と対応Ⅲ(4月)
対症療法の要領でケア内容が展開される
日
付
課
題
対
応
2014.4.2
ぬいぐるみの毛糸を異食、
①主食を全粥から米飯の大盛りへ変更
他利用者の食事を盗食
②主食を半分ずつ提供し、時間をおいて提供する
2014.4.14
パッドのポリマーを異食
①紙パンツから布パンツへ変更(排泄動作の向上も兼ねて)
②パッドは最も小さいサイズを使用
③トイレ誘導の回数を増やす
2014.4.15
本をちぎって食べる
①所在確認、行動内容を把握する
②家人持参のおやつ等を希望時に提供する
7.BPSDの経過と対応Ⅳ(4月、5月)
日 付
課 題
2014.4.21
異食全般への対応
2014.5.7
豆電球を異食
対 応
①本棚の本を整理する
②ペーパータオルなどは必要時に必要な分だけ渡す
③衣類や車いすなどに物の溜め込みがないか、適宜確認する
①本人居室、他利用者の居室周辺の環境整備を行う
②職員が出入りするステーション付近の物品保管状況を見直す
他にも・・・
言い合いになるご利用者とは席を離したり、
物盗られ妄想が出るため、下膳の際の言葉掛けに配慮した。
8.家族との連携
嗜好品の提供を開始
面会を増やす(家族)
関わりを増やす(家族、職員)
9.それぞれの変化
A
氏
・異食行為が消失した
・積み木に加え、席替えをして仲良くなったご利用者と移動
を共にしたり、話をされたりする
・他利用者(主に黙っているご利用者)に対し、笑顔で接す
るようになる
・自席以外のお気に入りの場所で居眠りされる
周囲の利用者
・A氏に対して暴言を吐かなくなった
家
族
・帰宅願望を誘発しないよう面会を控えていたが、A氏に
とって家人の面会は、フラストレーションを緩和させる
良い効果になると知ることができた(自分達の面会で、
A氏が笑顔になれる)
職
員
・表面的に見えるケアの実施だけでなく、「フラストレー
ションは何か、どうすれば緩和・解消できるか」と考え
る機会に繋がった
・家族との連携の重要性を再確認した
・異食に対して神経質にならず、行動を見守り「今したい
ことはなにか」を探求することができた
10.まとめ(五感に働きかけるケアとは)
・積み木に触れる、遊ぶ
・家族、職員、他利用者との関わり
・布パンツにし、トイレ回数を増やす
(皮膚ストレスの軽減)
・積み木の色彩
・家族の面会
・介助動作時の触れ合い
・席替え
(過ごしやすい環境作り)
・家族、職員の言葉掛け
・積み木で遊ぶ音
・音楽関連の行事への参加
・他者と話す自身の声
・嗜好品の提供
・食事形態、提供方法の変更
・嗜好品の香り
(コーヒー、生姜湯、菓子類)など
・食事形態の変更
参考文献、引用資料
• 「BPSDの理解と対応」/編集・発行:日本認知症ケア学会/2011年9月15日
第1版第1刷
• 図1)「認知症のベストチョイス」/編者:NHK「チョイス@病気になったとき」
番組制作班/主婦と生活社/2014年4月17日 第1刷/23頁
ご静聴ありがとうございました。
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報告:斧 亜希子