2016年 9月号 - ワシントン日本商工会

2016年9月号 No. 486
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
ワシントンDC日本商工会会報
9月号
2016年 No. 486
目次
●● 工場見学ツアー開催報告・・・・・・・・・・・・・・・・2
●● 篠崎理事退任のご挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
●● ワシントンDCで働く女性の会(J-WIP)
第4回会議報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
●● TABLE FOR TWO 世界食料デーキャンペーン
“おにぎりで世界を変える”・・・・・・・・・・・・・・・6
今月の特集
「工場見学ツアー開催報告」
スーパーでもよく見かけるようになりました
「San-J溜まり醤油」本社工場の見学ツアーを
開催いたしました。ワシントン日本商工会初の
本企画は大成功となりました。 P.2〜
「篠崎理事退任のご挨拶」
●● 米国での生活と移民法
長きに亘り広報・ 渉外 理事をご担当いただきました篠崎理事よ
り、退任のご挨拶です。本会報の編集をはじめ多岐にわたりご尽
力いただき、心より御礼申し上げます。 P.4
●● ワシントン月報(第127回)
「TABLE FOR TWO 世界食料デーキャンペーン
“おにぎりで世界を変える”」
●● 広告募集のご案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
第15回「H−3、J−1研修ビザについて」
米国移民法弁護士 石田 砂織・・・・・・・・・・・・・・8
米国特許弁護士 服部 健一・・・・・・・・・・・・・・・11
●● 今月の書評「ハッキングされた世界秩序」
池原 麻里子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
●● 情報セキュリティキーワード:
「電子投票システムのハッキング」
公認情報システム監査人 佐藤 暢宏・・・・・・・・18
●● 「山釣り奇譚:救難信号」
第2話:遭難者
釣熊・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
●● English Rescue by Jennifer:
「日本人が間違いやすい英語表現(55)」・・・・・・25
●● 編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
国連が定めている「世界食料デー」を記念し、
その一環として「おにぎりで世界を変える」と題
したキャンペーンが開催されます。食糧難に苦
しむ子供達への寄付となるこの素晴らしい催し
に、是非皆様も参加されてみてはいかがでしょ
う。 P.6
「情報セキュリティキーワード: 『電子投票システムのハッキ
ング』」
米国の二つの州で選挙人登録データベースがハッキングの被害
にあったことはご存知でしょうか? 大統領選を11月に控え、電子
投票システムのセキュリティが懸念されるところです。今月は米
国の電子投票システムの基本構成からリスクまで、具体的にご
教授いただきました。 P.18〜
1819 L Street N.W., B2, Washington, D.C. 20036 TEL: 202-463-3947 FAX: 202-463-3948 www.jcaw.org
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
工場見学ツアー開催報告
企画担当理事 中島
8月28日(日)今回初の試みとなる工場見学ツアー企画は文化元年(1804年)創業の老舗、三重
県のサンジルシ醸造株式会社の米国法人で1987年からバージニア州リッチモンド郊外で溜まり醤
油を生産されているSan-J本社工場にお邪魔させて頂きました。天候にも恵まれ、月末の日曜日に
も関わらず小さなお子様から大人まで13組のご家族やグループ、総勢45名の方々にご参加頂きま
した。
バス組は朝7時45分という早朝にも関わらず、集合5
分前には全員がメトロBethesda駅に集まり、予定より早
めに出発。また現地集合のマイカー組の皆さんも集合
時間の10時までには全員が到着し、工場ツアーは予定
通り開始となりました。
San-J工場見学の受付を済ませた後、こどもクラス、お
となクラスに分かれて醤油について学びました。味噌を
作る過程から生まれた溜まり醤油は大豆、塩、水等のと
てもシンプルな原材料から作られていることに多くの皆
さんが意外な印象を受けているようでした。特に他社醤
油との比較では味や風味の歴然とした差に驚き、使用
原料の違いにも驚かされました。改めて醤油の定義に
ついて考え、食の安全性や品質の高い製法について学
ぶことができたことと思います。醤油について勉強した
後は、工場まで徒歩で移動し、溜まり醤油の生産ライン
を4グループに分かれて見学しました。大豆が時間をか
けて熟成し、醤油へと変わっていく工程に皆さん興味津
々でした。
2
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
工場見学終了後は、夏空の下BBQランチを楽しみま
した。BBQの他にはお好み焼き、そうめん、かき氷やス
イカなどテーブルに並び、お祭り屋台のようなメニュー
に終わりゆく夏の一日を存分に味わえたことと思いま
す。BBQすべてSan-Jスタッフの皆さまに前日から準備
して頂きました。最後にSan-J社長佐藤様を中心に全員
で記念撮影をし、現地で解散となりました。帰りのバスで
はみなさんお疲れの様子で、出発後すぐに寝息が聞こ
えてくるとても静かな車内でありました。
今回催行人数に限りがあり、残念ながらご参加頂けな
かった方もいらっしゃいました。次回からは一人でも多く
の方がご参加頂けるよう企画運営をして参りますので、
次の機会にご参加頂けましたら幸いです。
この場をお借りして、本企画に全面的にご協力頂きま
したSan-J 佐藤様、並びに同社スタッフの皆さま、また
運営にご協力下さった皆さまに深く御礼申し上げます。
Illustration by Emi Kikuchi
3
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
篠崎理事退任のご挨拶
広報・渉外担当 篠崎 眞睦
Vice President & General Manager
Mitsui & Co.(U.S.A.), Inc. Washington DC Office (三井物産)
この度、ワシントン日本商工会の広報・渉外担当理事
を退任致します篠崎と申します。
2014年の1月から理事を務めさせて頂きましたが、約
2年半、皆様には大変お世話になり、色々と勉強をさせ
て頂きましたこと、心より感謝申し上げます。
広報の仕事は、慣れないこともあり至らぬところも多々
あったことかと存じますが、商工会会報の編集はとても
楽しく務めさせて頂きました。また、多くの方々から貴重
なご寄稿を頂きましたが、会員の方々やワシントン在住の方々にはとても多彩な方が多いのに感
服した次第です。
また、理事のお役目以外でも新春祭りやゴルフ大会など商工会の楽しい催しにも参加させて頂
き、とても充実したワシントン生活を過ごさせて頂きました。 私は、仕事の関係でこの後ニューヨー
クで業務を致しますが、ニューヨークの商工会でも何かお役に立てればと思っております。
最後になりましたが、皆様のご健勝と益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
Illustration by Emi Kikuchi
4
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
ワシントンDCで働く女性の会(J-WIP)第4回会議報告
企画担当理事 安井 真紀
ワシントンDCで働く女性の会(Japanese
Women in the Professions in Washington
D.C. (J-WIP))は、これまで3回にわたり、各方
面で活躍されている方々を招き、講演会を行っ
て参りました。この度、もう一つの活動の柱とし
て、メンバーのキャリア育成・成長を図ることを
目指し、「スキルディべロップメントシリーズ」を
始めました。去る6月29日、同シリーズの第一
回目として、コーチングをテーマにワークショッ
プを開催しました。
前半は、J-WIPのメンバーであり、世界銀行
グループの人事部にて人材育成の第一線でご
活躍する村井暁子氏と貝塚由美子氏を講師に
迎え、コーチングについてお話いただきました。
コーチングとは何か、メンタリングやコンサルティング、スポンサーシップ等との違い、コーチングの
効果、コーチングの仕方・受け方について、わかりやすくご説明頂きました。円形状に椅子を設置し
た会場は、参加者から質問や意見が出やすく、非常にインタラクティブなセッションとなりました。
後半は、希望者が残り、講師の指導のもと、ペアを組んでコーチングの疑似体験をしました。実際
に体験することで、頭で理解するだけではなく、コーチングを今後のキャリアディべロップメントや人
生にどのように生かしていくかを見つけるきっかけにもなりました。
最後に、講義や疑似体験について意見交換をし、参加者一人一人が考えを整理する機会を設け
ました。J-WIPでは、ここで出た意見を今後のスキルディべロップメントシリーズに生かしていく予定
です。
当日は、幅広い職種に就く19名の女性にご参加頂きました。インタラクティブなセッションや参加
者同士での疑似体験を通して、良いネットワークの機会ともなりました。後日、参加者を対象として
実施したアンケート調査では、70%を超える回答者全員より「大変効果的な内容のワークショップ
であった」との回答がありました。
【参加申込先・お問い合わせ先】
J-WIPでは引き続きメンバーを募集しております。ご関心のある方、以下連絡先までメールでご連
絡ください。お待ちしております。
企画担当理事:安井([email protected][email protected])
商工会会員:酒向([email protected])
5
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
TABLE FOR TWO 世界食料デーキャンペーン
“おにぎりで世界を変える” (10/11〜11/30)
世界の食料問題の解決に取り組むNPO法人のTABLE FOR TWO USA(TFT)は、国連が定め
た10月16日「世界食料デー」(世界中の人が食べ物や食料問題について考える日)を記念しキャン
ペーンを10/11-11/30まで開催し、その一環として「おにぎりで世界を変える」ソーシャルアクションを
実施します。参加者がおにぎりの写真を特設サイトに投稿すると、参加者に代わり、協賛団体から
写真1枚につき5食分がTFTに寄付され、アフリカ及びアメリカ国内の支援を必要とする子どもたち
に給食5食分がプレゼントされます。
• 日本語URL http://jp.tablefor2.org/campaign/onigiri/
• 英語URL http://jp.tablefor2.org/campaign/onigiri/en
*2016年度のサイトは9月半ば頃にプレオープン、10/11に詳細情報含むフルオープンとなる予定です。
シンボルフードに「おにぎり」を選んだのは、親から子へ、おばあちゃんから孫へなど、大切な誰か
のために愛を込めてにぎられる愛情のこもった象徴であると考えられたためです。今年度JCAWも
協賛団体として参加することとなりました。JCAWからの寄付はワシントンDCの貧困地区にある小
学校に新鮮な野菜やフルーツを使ったヘルシーな学校給食を提供するための支援として使われま
す。また、生徒たちにはおにぎりも特別メニューとして届けられ、おにぎり作り体験の機会も提供さ
れます。
2015年秋に第1回目が実施された際は、DCを含む世界各地から5,000枚を越すおにぎり写真が
投稿され、おにぎり写真大賞が選ばれました。以下アメリカでの受賞写真の一部になります。オフィ
スで同僚の方と一緒に、ご自宅でご家族と一緒に、お友達と、もちろんお一人でも!楽しくご参加い
ただけますと幸いです。
“First-time Onigiri” Award
“Let’s be Onigiri!” Award
“Best Onigiri Smile” Award
おにぎりを一度も食べたことが
なかった小学生が、アフリカの
子供に給食を届けたいとレシピ
をみつけて挑戦してくれました。
TFTサポーターがおにぎりマスクを作成
し、沢山の方におにぎりになっていただき
ました。
佐々江賢一郎駐米大使がおにぎ
りと素敵な笑顔で写真撮影をし
てくださいました。
6
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
広告募集のご案内
JCAW会報に広告を掲載しませんか?
JCAWでは、広告掲載の申し込みを承っております。
JCAWは500名以上の会員からなり、ワシントン地域の
日本人社会に広く浸透しています。
是非、貴社の広告や宣伝にJCAW会報をご利用下さい。
会報の広告にリンクを設定する事により、クリック1回で、貴社
のウェブサイトやEメールアドレスにアクセスすることができま
す。年間契約でさらにお得になります。
JCAWウェブサイトのトップページには、バナー掲載など、各種
オプションを取り揃えております。
詳しくは、JCAW事務局までお問い合わせ下さい。
広告のイメージ図
ウェブサイトのバナーのイメージ図
料金体系(2013年11月からのレート)
広告掲載先
会報※1
ウェブサイト※2
サイズ
商工会会員
非会員
月料金
年料金
月料金
年料金
1/4ページ
$50
$450
$70
$630
1/2ページ
$100
$900
$120
$1,080
1ページ
$200
$1,800
$240
$2,160
200px X 33px
なし
$300
なし
$750
会報広告 原稿制作費は当広告掲載料金に含まれません。原稿は広告主様にて手配願います。1年契約で1回割り引きとなります。
(会報は年10回発行)
※2
ウェブサイトのバナーは年間契約のみとさせていただきます。
(バナー作成を依頼する場合は、別途$50~対応いたします。お気軽にご相談ください。)
※1
お問い合わせ先
Japan Commerce Assosiation of Washington, D.C., Inc.
1819 L Street N.W., B2, Washington, D.C. 20036
TEL: 202-463-3947 FAX: 202-463-3948
Email: [email protected] URL: www.jcaw.org
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
米国での生活と移民法
第15回「H−3、J−1研修ビザについて1」
米国移民法弁護士 石田砂織
今回は、米国法人企業で日本から研修者を比較的長期間受け入れたいという場合に使われる
H−3ビザやJ−1研修ビザに関してお話しいたします。H−3、J−1ビザはH−1Bが年間枠の問題など
から研修を目的として新卒者を米国法人で雇う場合に取得するのが難しいなどといったことから近
年需要が増しています。研修者の多くは米国法人と関連した日本会社には勤めていないものの、
主な取引先や、何らかの親交がある企業に勤めている方です。もちろん日本会社と関連した米国
法人に研修者を送る場合に使うことも可能です。
アメリカで長期的研修を受ける場合、大まかに分けてH−3ビザと、J−1ビザの選択肢がありま
す。H−3ビザは主に企業がスポンサーとなって職業訓練、研修を目的に外国人を受け入れる場合
に使われます。一方、J−1ビザは、研修目的以外にも、交換留学、インターン、研究、大学での教
鞭、研究など様々な目的を持つ外国人に使われますが、今回は研修を目的にJ−1ビザを使う場合
の説明をいたします。
<H−3、J−1研修ビザの大まかな共通点>
H−3、J−1の人気が近年上昇した大きな理由の一つには、研修者による実践的作業(On the Job
Training)とそれに伴う報酬の支払いが、法律上ある程度まで許されていることにあります。ただ
し、あくまでもビザの目的は研修、職業訓練のためであって、アメリカでの就労と見なされる行為は
禁止されています。したがって、通常、研修先の企業に勤める正規の従業員がする業務を研修者
が代行することはできません。そのため、講義を通した研修と実践的作業訓練の割り当てられた時
間、研修費用、給与の出資源、研修の評価方法等を含め、目的と内容をしっかりと明記した研修プ
ログラムの作成が必要となります。一般的に認められている実践作業の例としては、観察、視察、
シャドーイングなどです。
<研修を受けるのに必要な学歴と職務経験>
H−3ビザを取得するにあたり、満たさなくてはならない学歴、職歴等は特にありません。一
方、J−1ビザを使ってアメリカで研修を希望する場合は1)職務訓練、研修を受ける分野での学位ま
たは免許を持っており、なおかつ研修を受ける分野と関連したアメリカ国外での職務経験が1年以
上あること、又は、2)研修を受ける分野と関連したアメリカ国外での職務経験が5年あることのいず
れかの条件を満たしていなくてはなりません。
1
本文に書かれている情報は、執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。また、本文の内容は具体的な
個別事案に関して法的なアドバイスをするものではありません。
8
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
<研修分野と目的>
H−3ビザは日本では習得することができない技術、知識をアメリカで研修や職業訓練を通じて獲
得することを目的にしていないといけません。又アメリカで受ける研修が、帰国後の研修者のキャリ
アの向上に役立たなくてはなりません。研修生が研修を通して身に付けるはずの技術と専門性を
既に持っている場合や、研修が研修者の帰国後の仕事の役に立たない場合などはH−3は認可さ
れないでしょう。また、H−3ビザを学生ビザでの卒業後のプラクティカル・トレーニング(F−1OPT)の
延長に使うことは禁止されています。
一方、J−1ビザを使って研修する場合は、日本では研修を受けられないということを証明する必
要はありません。J−1ビザでの研修は日本に紹介することを目的として、様々な職業におけるアメリ
カの作業の方式とアメリカの文化を学ぶことが主な目的です。J−1ビザを利用する場合は、以下の
分野での研修が認められています。1)農業、林業、漁業;2)芸術、文化;3)建築;4)教育、社会科
学、図書館学、カウンセリング、社会福祉;4)衛生、保健;5)ホテル、観光事業;6)情報科学、コミ
ュニケーション;7)経営、ビジネス、商業、金融;8)行政、法律;9)エンジニア関係、科学、建築、数
学、工業。
幅広い分野での研修が認められているJ−1ビザですが、J−1ビザでの研修は専門性のあるもの
に限られており、単純労働に関わる研修は認められていません。また、事務的な作業が20%以上
含まれる研修は認められません。また、研修生がすでに持っている職歴、職業訓練、研修と重複す
ることがないよう注意が必要です。
<年間枠と滞在期間>
H-3ビザの発行は年間約3000余りに留まっています。H-3ビザ所持者は最長2年間まで研修生
として米国に滞在することが可能です。H−3での滞在期限が2年未満である場合、延長が可能で
す。ただし、H-3ビザを使っての満2年間の研修を受けた場合、最低6ヶ月アメリカ国外に出なけ
ればHやLビザを使ってアメリカで就労したり、研修を受けることはできません。(ここで言うHビザ
は、H−1B、H−2ビザも含めた全てのHビザを指します。)
J−1ビザの発行数に年間制限はありません。J−1ビザを使っての研修は最長18ヶ月までとなって
います。ただし、研修の分野によっては12ヶ月が最長な場合もあります。また、J−1研修を終えた後
2年間は、新たな研修をアメリカで受けることはできません。
<H−3ビザ申請手続き>
H-3ビザの申請手続きは、研修者を受け入れる企業側がスポンサーとなり、他のHやLの就労ビ
ザと同様、まず移民局より認可を得る必要があります。ビザの申請にはI-129フォームが使われ、
研修先の企業が作成した研修プログラムなどの証拠書類と共に移民局へ提出します。移民局によ
り認可が下りた後、研修者がアメリカ大使館、領事館にてH-3ビザを申請します。
<J−1ビザ申請手続き>
H−3ビザと異なり、J−1ビザの申請にはI−129提出の必要はありません。H−3ビザ申請手続きと
9
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
の大きな違いとしては、研修者を受け入れる側の企業は必ずしもJ−1のビザのスポンサーとは限り
ません。実際、J−1ビザの申請には、国務省から認められている「J−1スポンサー」、そして研修者
を受け入れる「ホスト」となる企業の連携が必要です。J−1研修を定期的に行っている大企業や研
究機関等ではすでに国務省よりJ−1スポンサーの資格を持っているので、「J−1スポンサー」と「ホ
スト」が同一化している場合もありますが、J−1スポンサー資格の申し込み手続き、そして資格維持
のコンプライアンスが複雑なため、一般企業が「J-1スポンサー」となることは現実的ではありませ
ん。その場合は「J−1スポンサー」となってくれる機関を探す必要があるでしょう。現在、国務省で認
められているJ−1スポンサー機関はこちらのウェブサイトをご覧ください。(http://j1visa.state.gov/
participants/how-to-apply/sponsor-search/?program=Trainee&state=any) 上記にありますよう
に、J−1の利用目的も様々なので、研修(Training)プログラムのスポンサーをしてくれる機関を見
つける必要があります。また、スポンサー機関によっては、上記にある全ての9分野での研修をサ
ポートしてくれるとは限らないので、確認が必要です。また、通常、J−1スポンサー機関に対して手
数料を支払うことが必要です。
H−3ビザの手続きとは違い、移民局ではなくJ−1スポンサー機関が研修プログラムやホストとなる
企業、そして研修生の資格の審査を行います。J−1スポンサー機関を見つけた後、ホストとなる受
け入れ企業は、研修プログラム、評価方法の内容などを詳細に明記したDS-7002フォームをJ−1ス
ポンサー機関に提出します。研修プログラムが認可される前に、 受け入れ企業の従業員が25人
未満、又は収入が$3億ドル未満である場合はJ−1スポンサー機関が、受け入れ企業を訪問、視
察することが義務付けられています。研修者に対しては、必要な学歴、職歴、英語力があるかどう
か、また研修費、渡航費、生活費を含めた金銭的費用があるかどうか等の確認を行います。研修
の認可が下りると、スポンサー機関より研修者と帯同家族にDS−2019フォームが発行されます。も
し研修者が日本にいる場合はアメリカ大使館に直接J−1ビザを申請します。研修者がアメリカ国内
にいる場合は移民局へステータス変更の申し込みを行うこともできます。
<帯同家族のビザ、配偶者の就労資格>
H−3研修生の配偶者及び扶養家族(21歳未満の子供)にはH−4ビザが与えられます。H−4ビザ
での就労は認められていません。一方J−1研修生の配偶者と扶養家族にはJ−2ビザが与えられま
す。J−2ビザを持つ配偶者は移民局より労働許可書を申し込み、認可が下りればアメリカでの就労
が可能です。ただし、J−1研修そのものを金銭的にサポートするような労働は認められていません。
石田砂織プロフィール:
アメリカ移民法専門家として10年以上の経験を持つ弁護士。イミグレーションローグループ法律事
務所、バーンズ & ソーンバーグ 法律事務所を経て独立し、Ishida Immigration Law PLLCを設
立。アメリカでビジネスを営む日系企業を含む様々な法人、個人のクライエントに幅広く移民法のサ
ービスを提供している。ニューヨーク州、ワシントンD.C.にて弁護士資格を持つ。米国移民法弁護
士協会(AILA)所属。お問い合わせ、ご相談をご希望の方は[email protected]か
(202)656-8778までご連絡下さい。
10
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
ワシントン月報(第127回)
「30年闘争記(17)〜ローファームの分裂〜」
米国特許弁護士 服部 健一
〜これまでのあらすじ〜 ウィルソン・服部法律事務所は、17人の弁護士と40名の秘書と事務員で出発す
ることになった。仕事の量は前身のアダムズ事務所の2/3が来たので、まずは上々の滑り出しとなった。勿
論、アダムズ弁護士はそんなバカなはずはない、とカンカンであった。新事務所における仕事の担当は事務
所全体の統括がウィルソン弁護士、私はクライアント管理(事務所の2/3のクライアントは日本企業である)、
基本となる出願業務はアーサー弁護士、訴訟・鑑定はドーズ弁護士である。この4人体制がしっかりしている
から若い弁護士が13人も我々について来たのだ。これに対してアダムズ弁護士は、あの手この手で仲裁裁
判官に文句をつけ、我々の体制を崩そうとしていた。その1つと思われるのはバージニア・バー・アソシエー
ションに、ケン服部は経歴詐称している、というタレこみ情報だった。しかし、それは私の知人、友人、米国特
許庁長官等から経歴詐称した発言や交信はないという宣誓書で乗り切れることができた。アダムズ弁護士
の次の策略は何であるかである。
私の仕事はクライアント管理、そして特許の訴
訟、鑑定、ライセンス交渉が多く、出願そのものは
基本的には若い弁護士達に託している。出願業
務は、米国特許庁への応答期間のデッドラインが
常にあるので、出願を行うと訴訟やライセンス交
渉に必要な出張ができなくなるからである。そして
それに加えて、毎月多数の論文や雑誌記事を書
いている。これは新しいクライアントを発掘するた
めには必須である。日本企業や弁護士・弁理士は
私の記事を必ず読んでいるから、何か必要になっ
た時に私にコンタクトして仕事の依頼が来ることが
多い。
その雑誌社の中で、特許や知的財産を専門的に扱うA社があった。担当者の松城編集者による
と、私の記事は大変な評判で、このため雑誌の販売の伸びは非常に順調だという。現実に、ある著
名な最高裁判決が出されて、私がその解説記事を書いて特集号を出した時、特集号は完売された
という。
そんなある日、その松城編集者から問い合わせのメールが入ってきた。それによると、アメリカの
超有名な知財雑誌のX社から私の記事に対して抗議の手紙が届いたという。その手紙には、概略
下記の記載があった。
「貴誌には毎月ケン服部氏の米国訴訟ニュースという特許や判例の解説記事が連載されて
いる。我々のX社は毎月最新の判例の解説記事を掲載しているが、全米でも最も著名で権
11
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
威のある判例ニュースである。ケン服部氏の米国訴訟ニュースの毎月の記載は、我々の毎
月の記事を翻訳しただけのものであり、これは著作権違反である。貴誌は米国訴訟ニュー
スの掲載を直ちに中止し、またこれまでの著作権料を支払うとともに、それを認めた謝罪記
事を書かなければならない。
X社 ベル編集長」
何だこの手紙は?!というのが私の反応だった。そこで私は直ちに松城編集者にメールを返し、
「これは私とX社の問題で、貴社には関係ない。私がX社に交渉して決着させるから心配しないよう
に。」と回答して、松城編集者は、「先生、お願いします。我々には事の真相が分からないので、対
応のしようがありません。」という返事だった。そして私はX社のベル編集長に電話をして真意を質
すことになった。
ハットリ: もしもし、X社のベル編集長ですか。私は日本の雑誌社Aの記事を書いているハットリと
いいますが。
ベル: ああ、君があの米国訴訟ニュースの著者のハットリ氏か。我々の君の記事の英文翻訳を持
っている。そして我々の同じ判例の要約を比べたところ、実質的に同一であることが判明し
た。君の記事は著作権違反だ。
ハットリ: ではその英訳というのを私に送ってくれませんか。訳が正しいかどうかチェックする必要
がある。
ベル: うーん・・・、それはできない。
ハットリ: できない?何故だ。英訳が正しいかが第一ポイントじゃあないか。
ベル: うーん・・・、この英訳は我々の・・・えーっと、特権情報であるので開示できない(著者注:特
権情報とは弁護士とクライアントの会話のように、外部に開示する必要のない丸秘情報)。
ハットリ: 何故、特権情報になる。これは争点そのものじゃあないか!
ベル: これは我々の証拠だ。我々が特権情報といえば特権情報だ!
ハットリ: では、英訳はいくつ持っているのだ?
ベル: いくつってどういう意味だ?
ハットリ: 私は米国訴訟ニュースの記載を15年連載している。200件以上あるだろう。そのうち何件
の翻訳を持っているのだ?
ベル: えーっと、今のところは1つだけだ。
ハットリ: 1つ?それはいつの米国訴訟ニュースだ?
ベル: えーっと・・・確か2003年10月のニュース記事だ。
12
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
2003年10月というと、ウィルソン・服部法律事務所を作った月だ。あの時の記事は私が今の事務
所に移った夜中、ファックスの修理をした後に書き上げた記事だ。時間が無かったのでX社のニュ
ース記事を参考にしたことは確かだ。しかし、記事そのものは判決を読んでそれを要約したから著
作権違反はあり得ない。でも、X社の記事に影響されていたらどうなるか・・・と若干心配になってき
た。
ハットリ: その英訳はどうしてもこちらに送れないというのか。
ベル: その通りだ。
相手の翻訳を見られないとは話にならない。比較しようがないからだ。
ハットリ: では、その月以外の米国訴訟ニュースの記事の翻訳はあるのか?
ベル: 今のところこの1つしかない。しかし、君が長年著作権違反してきたことは知っている。
ハットリ: 1つの翻訳しか有していなくて、何故、長年著作権違反しているといえるのだ?
ベル: そんなことは分かっているさ。
ハットリ: 証拠が無くて何故分かるのだ?
ベル: それは訴訟になって互いに証拠を出せば明らかになるさ。
こうしてベル編集長とは押し問答で終わってしまった。
とりあえず調べることは2003年10月の米国訴訟ニュース記事と、X社の同じ判例のニュース記事
が同じかどうかだ。そこで両方を取り出して対比することにした。私の米国訴訟ニュースの記載の
中では判例の要約は全体の記事の半分で、それ以外の半分は米国特許庁の統計等を示す記事
があった。これはX社の記事とは全く関係がない。そうすると、米国訴訟ニュースの中で判例ニュー
スの部分のみが問題になる。X社の記事と私の判例ニュースは2003年10月のものだけは確かに
似ていることは似ていた。しかし判例を要約すれば似るのは当たり前ともいえる。
これでは押し問答になるが、もし訴訟になったら大変な事になる。私の過去の何年か分の記事を
翻訳して似ているか否かを争うことになるから膨大なコストになるだろう。
それよりも、裁判沙汰が業界に流れれば、私の評判だけでなくウィルソン・服部法律事務所の評
判にも跳ね返ってくる。そこで訴訟担当のドーズ弁護士に掻い摘んで説明して相談する。
ドーズ: 話の様子は大体分かった。で、ケンにずばり聞く。本当にX社の判例ニュース記事をコピー
していないか?
ハットリ: 記事を書く時は判例そのもののみならず、X社や他社の関連記事を参考にはするが、要
約は判例自体から作成している。しかしコピーなんぞはしていない。
13
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
ドーズ: 参考にすることは皆そうだからそれは問題にはならない。
ハットリ: X社の記載をコピーすることは絶対ない。ただ、参考にしている過程で似ることはあるかも
しれない。
ドーズ: 似ていることがコピーしたことになるか否かは事実認定の問題だから陪審員の判断になる
な。陪審員訴訟だけは絶対避けなければだめだ。どんな結果になるかは分かったもので
はない。
ハットリ: しかし、X社がやるというなら俺は受けて立つ。私は著作権違反していない自信がある。
十何年も判例を必死に理解して書いてきたのは事実だからだ。
ドーズ: ケンの信念は正しいかもしれないが、訴訟は別物だ。著名な作家で同じ理論で闘って、結
局ひどい目にあった作家はざらにいる。陪審員はどう判断するか分からない。それに訴訟
になると、1~2億円はかかるぞ。その金をどこかから工面する?相手は巨大出版社だか
ら、1~2億円はどうということはない。
ハットリ: 分かった、分かった。とにかく、2003年10月の米国訴訟ニュースだけでなく、過去1~2年
分のニュースとX社の判例ニュースがどれだけ似ているか調べてみる。2003年10月だけ
がたまたま似ていたという事もある。
ドーズ: そうしてくれ。万が一著作権侵害があったとしても、1つだけたまたま似ていただけでは本
件は大したことにはならない。賠償額も数百ドル程度で終わりだ。
ハットリ: よしてくれ、著作権侵害があることを前提にしたような話は。
ドーズ: ああ、分かった。とにかくその後、X社のベル編集長に会って交渉しよう。
こうして私は過去2年分の米国訴訟ニュースの記事を調べたが、判例ニュースはその中の半分
位だった。そして2年分の判例ニュース約30件をX社の判例ニュースの記事と1つ1つ対比させて調
べた。
その結果、似ているのは2000年10月のみで、他の判例ニュースは完全に異なっていた。勿論、
要旨や結論そのものは当然同じだが、私が作る判例ニュースは米国特許訴訟の背景を知らない
日本人向けに作成しているので、要所々々にそれを説明する私自身の創作記事がかなりあるから
である。だからこそ日本のクライアントから評判なのだ。
それに比べて、X社の判例ニュースは完全に切り貼りで、X社自身が創作している部分は殆ど皆
無だった。所詮ロースクールの学生か、稼げない特許弁護士に委託して判例ニュースを作らせてい
るので、彼らはなるべく時間をかけたくないから判例を単に切り貼りするのが普通だからだ。
しかし、問題の判例ニュース記事だけは確かに似ているのが気にかかる。そこで再びドーズと相
談する。
14
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
ハットリ: 2年間の判例ニュースを比べてみたが、全部全く異なる。しかし、2003年10月のニュース
だけは確かに似ている。
ドーズ: 判例に記載してあることなら似ていても問題はないだろう。そもそも要約なんて同じように
なるのは当然だからな。問題は判例に記載がないがX社の要約にある点がケンの要約
にもあるかだ。あるとすると微妙な問題になる。
ハットリ: その点が微妙なんだ。判例には明記はないが、全体の流れではそのように解釈できると
いう点はある。
ドーズ: それもそう問題はないだろう。万が一、X社のニュースに誤記があって、それさえもそのま
まケンのニュースにあるとすると、かなりの問題になるだろう。
ハットリ: それは・・・ないと思うが、もっとじっくり分析してみないと何とも言えないな。
ドーズ: その点をもっと深く調べろ。
ハットリ: OK。で、いつX社のベル編集長に会いに行くか?
ドーズ: 俺はいつでも大丈夫だ。この件はケンだけでなく、ウィルソン・服部法律事務所にも非常に
重要となる。何としてもうまく片付けなきゃいかんな。
こうしてX社のベル編集長に連絡を取り、2日後にX社を訪れて話し合うことが決定した。その間に
誤記の部分のコピーがあるか調べたが、微妙な表現なので問題が全くないとはいえないという点
があった。ただ、完全なコピーとはいえないので、議論になる程度の問題であった。
我々は2日後にX社の会議室に行った。我々の追及点の1つはX社が何故私の記事の英訳を作
成したか、或いは誰から入手したか、という点であった。
(続く、この物語はフィクションで、実物の人物、事務所とは一切関係ありません。)
15
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
今月の書評
誰もが可能なサイバー攻撃
ガバナンスなきネット空間
「ハッキングされた世界秩序」
アダム・シーガル
ポトマック・アソシエーツ 池原 麻里子
サイバー戦争が始まったのは、2012年6月から13年6月に
かけてといわれる。それ以前にも、1990年代に米国がセルビ
アに対してサイバー攻撃をかけ、2007年には、米国のデパー
ト数軒が顧客4,500万人のクレジット・カード情報を盗まれ、さ
らに2008年にはKGBが国防省の極秘ネットワークに侵入する
というケースはあった。
しかし、各国が盛んにデータフロー・コントロールを競い始め
たのは2012年のことである。本書はロシアや北朝鮮の例を採
り上げ、サイバー攻撃による破壊とサイバー戦争予防策、政
治・経済・軍事におけるサイバー諜報活動、アメリカ国家安全
保障局(NSA)による監視と欧州のプライバシー保護強化の動
き、イスラエルとハマス間のツイッター戦争、イスラム国に対す
るオンライン上の戦いを詳細に記している。そして最後に、イ
ンターネットのグローバル・ガバナンス改革に言及する。
「ハッキングされた世界秩序」
アダム・シーガル(外交評議会出版)
著者は外交評議会のデジタル・サイバースペース政策プロ
グラム代表で、中国研究者でもある。
さて、2012年に何が起きたのか。以前にも本欄で取り上げ
たことがある「スタックスネット」が新聞報道された年である。これは2010年に米国とイスラエルが、
イランの核開発プログラムを攻撃するために共同開発したマルウェアのことだ。それ以前はデータ
を盗んだり、破壊するコンピューター・コードはあったが、機械を誤動作させるものは初めてだった。
これに対しイランは、米国の金融機関に対してサービス不能攻撃をかけた。ある銀行はサービス
を再開するために1,000万ドルを必要としたという。さらにイランはサウジのアラムコに加え、液化天
然ガス生産規模世界第二のカタール石油とエクソン・モービルの合弁会社のデータも破壊した。
その間、一方で中国のハッカーは、国防省と防衛産業からパトリオット・ミサイルなどの兵器情報
を盗んでいた。また、その対象はハイテク企業、金融機関、法律事務所、シンクタンク、メディアにも
及んだ。2012年時点で、米企業が盗まれた情報は2,500億ドル相当、関連費用で1,120億ドルを損
失したといわれている。
16
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
そして、2013年6月の米中サミットでは、サイバーセキュリティ―問題が議題となった。エドワード・
スノーデンがリークしたNSAの情報収集が報道されたのは同サミットの数日前のことだった。このリ
ークは、独裁国家批判する米国の立場を弱体化させた。
これを機に外交関係とサイバー空間の地政学が大きく変わった。中国、ロシアなどはインターネ
ットを国連の監督下に置くべきであると主張するようになった。政府がネット情報・アクセスを妨げて
はならないといするインターネット・フリーダムも昨年まで5年連続で縮小している。
ハッキングされた21世紀の世界秩序は複雑である。技術されあれば、サイバー攻撃は誰もがで
きる。2013年には、アサド政権を支持するシリア電子軍が、APのツイッターアカウントを乗っ取り、
オバマ大統領に対する爆撃に関する偽のメッセージを流した。その直後、ダウ平均は数秒で146ポ
イント下落し、1億3,600万ドルが瞬時に消えた。
米国政府のサイバー空間での活動は民間企業、民間のネットワークに依存している。軍や情報
機関の通信90%以上が民間の通信網を通るし、優秀なプログラマーは民間にいるからだ。
著者は、米国が国際的な行動規範作りを先導し、軍事的、限定的な標的に対するサイバー攻撃
だけに制限すべきだと提唱する。経済スパイ活動は制裁と通商協定で取り締まる。無秩序化する
ハッキングの世界に規範作りが急務だ。
(New Leader 5月号より転載)
Illustration by Emi Kikuchi
17
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
情報セキュリティキーワード
「電子投票システムのハッキング」
公認情報システム監査人 佐藤 暢宏
もうすでに多くの報道がされているので、ご存知の方も多いとは思いますが、米連邦捜査局
(FBI)が、米国の2つの州で選挙人登録データベースが今年6月に海外からと思われるハッカーの
攻撃を受けたことを確認し、選挙当局者に注意を促している文書が流出しました1。
米Yahoo! Newsが報道した内容2によれば、攻撃の標的になったのは、イリノイ州とアリゾナ州
の選挙人登録データベースで、イリノイ州の事例では、選挙人20万人の個人データが盗まれたそう
です。
そもそも今回被害があったシステムがどの様なものかがよくわからなったので、少し調べてみまし
た。下図は、電子投票システムの基本的な構成を表していますが、電子投票システムは、大まかに
①投票者登録、②投票、③集計の3システムにより構成されています。今回ハッキングを受けたの
は、「①投票者登録」のデータベースの部分です。
図表 1:電子投票システムの基本構成3
1
FBI Flash, 18 August 2016, Alert Number T-LD1004-TT.
2
https://www.yahoo.com/news/fbi-says-foreign-hackers-penetrated-000000175.html
3 元の画像を加工して作成。(https://www.researchgate.net/profile/Oladotun_Okediran/publication/284146629/viewer/AS:29
7090442907650@1447843289202/background/3.png)
18
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
少なくとも執筆時点では、データベースが改ざんされたり、削除されたりした形跡は見つかってな
く、選挙への実害は無いようですが、ヒラリー・クリントン前国務長官の選挙陣営がハッキングを受
けたこともあり、今年の米国大統領選に海外のハッカーが干渉しようとしているのではという憶測が
高まって、米国の電子投票システムのセキュリティが懸念されています。
ただ、セキュリティが懸念されているのは、今回被害のあった①投票者登録システムの部分より
は、むしろ「②投票」における電子投票機や③集計システムに関する部分です。
米国では全ての州で電子投票機が使われているわけではありませんが(下図参照)、現在使用さ
れている電子投票機の多くは、「組み込みPCを簡略化し、まともなアクセス管理機能が無い」状態
で、2016年現在、43州で使用されている電子投票機は、Windows CE、Windows XP、Windows
2000といった古いOSを使用し、システムの脆弱性を改修するためのパッチが適用されていないの
で、潜在的にそういった脆弱性を利用して投票内容を改ざんできてしまう可能性があります4。
図表 2:電子投票機5
図表 3:電子投票機導入州(赤枠内の色のついた州)6
4
http://icitech.org/wp-content/uploads/2016/08/ICIT-Analysis-Hacking-Elections-is-Easy-Part-One1.pdf
5
https://www.verifiedvoting.org/wp-content/uploads/2010/09/AccuVote_TS_Banner.jpg
6
https://www.verifiedvoting.org/verifier/
19
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
もちろん電子投票機は、一部例外を除いてインターネットに接続していませんので、遠隔操作さ
れるリスクは非常に低いと考えられますが、セキュリティ企業のシマンテックによれば、オンラインで
15ドル程度で販売されている装置を使えば、1人が投票ブースで投票している間に、数百人分の投
票を実行することが技術的に可能だそうです7。ご興味のある方は下記のリンクにある動画を見て
みて下さい。(1:09からが該当箇所)
http://www.cbsnews.com/videos/growing-fear-over-2016-elections-cyberattack
いずれにしても、大統領選レベルにおいて投票結果を左右するほどの攻撃を仕掛けることは非
常に難しいと考えられていますが、2000年大統領選のジョージ・W・ブッシュ対アル・ゴアの時のよ
うに、約400票程度が結果を左右する場合もあるので、全くあり得ないことも無い程度にリスクがあ
ると言えるようです。そのため、現時点では、民主主義の根幹を成す選挙プロセスの機密性、可用
性、信頼性を揺るがすことが攻撃者の狙いではないかと言われています8。
日本での電子投票システムの利用は、一部地方自治体に留まっており、国政選挙等への本格導
入はまだ少し先になるのだと思いますが、今回の大統領選におけるITセキュリティの問題は、将来
の日本の電子投票システムを設計する上での大きな参考となるのではないでしょうか。
7
http://icitech.org/wp-content/uploads/2016/08/ICIT-Analysis-Hacking-Elections-is-Easy-Part-One1.pdf
8
http://icitech.org/wp-content/uploads/2016/08/ICIT-Analysis-Hacking-Elections-is-Easy-Part-One1.pdf
佐藤暢宏プロフィール
ITのヘルプデスク、ネットワークエンジニアを経て、大手監査法人で、公認情報システム監査人
として、主に製造業や金融・保険業の内部統制監査やシステム監査、情報セキュリティ監査をし
ていました。現在は、インターナショナルアクセスコーポレーション(IAC)で、各種ITサポートとサイ
バーセキュリティ対策サービス、委託調査等を提供しています。詳しくは、www.iacdc.comまたは
support.iacdc.comをご訪問下さい。
ご感想、ご指摘、ご質問、ご希望されるテーマ等、お気軽に[email protected]までご連
絡ください。少しでも多くのフィードバックがいただければ幸いです。
20
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
山釣り奇譚: 救難信号
第2話:遭難者
釣熊
〜前回までのあらすじ〜 利根川源流域は豪雪と深い山々に守られた秘境の釣り場、しかしダム
の建設と観光開発により、そんな秘境の釣り場にも都会の釣り人がアクセスできる時代が訪れた。
豪雪でシーズンインが遅れていたある年の初夏、俺はダム湖を船で渡り秘境の釣り場に分け入っ
た。水の多い渓を四苦八苦しながら遡行中、オーバーハングした大岩を高巻きしている時に目にし
たのは河原に倒れている遭難者の姿だった。
水際まで降りたいが、無理すれば確実に転
落して河原の人のお仲間になってしまう。
「おーい、大丈夫か!」
声をかけてみるが返事はない。もっとも、多
少声を張り上げたところで水音にかき消されて
耳には届くまい。
船に乗るときには遭難者の話を聞かなかっ
たから、警察にはまだ伝わっていないに違い
ない。統計では渓流釣りの遭難者は年間30人
程となっているが、ネットで「渓流釣り、遭難」を
検索すると結構な数がヒットする。実際には遭
難しながら自力で下山したケースが大半なのだろう。そういう自分も昔子供と一緒にクロスカントリ
ースキ-で山に入り、コースを間違えて山中で一晩過ごしたことがある。幸い避難小屋を見つけて
事なきを得たが、一つ間違えば「クロスカントリーの親子、冬山で遭難」の新聞沙汰になるところだ
った。
当然携帯は圏外だ。さて、どうしよう。里に戻ろうにも夕方まで迎えの船は来ない。とりあえず現
場写真を押さえて夕方まで釣りを続けるか・・・なんて脳天気なことを考えながらポケットを探った
ら、昔アメリカで購入したPLB-Personal Locater Beaconに手が触れた。万一の時、救難信号と所
在地のGPSデータを衛星電話回線で管理会社に送信し、当局に通報してもらうデバイスで、衛星
回線でメールを送ることもできる。広大な自然が広がるアメリカのアウトドアでは必需品で、一部の
愛好家は極地の写真をリアルタイムでSNSに投稿するなど便利に使っているらしい。釣り人や登山
者にひっきりなしに出会う日本の釣り場では無用の長物だが、俺は釣り場のGPSログ1を取るため
に持ち歩いている。
1 移動経路のGPSデータを定期的に記録し、地図上で確認することができる。最近ではスマートフォンのアプリがあるので、わざ
わざ専用機を持ち歩く必要はなくなった。
21
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
確か「24時間365日世界中どこでも有効」というふれ込みだったが、果たして日本でも機能するも
のだろうか。救援の費用も気になるが人命に係ることだから金には替えられない。実はマネキンで
した、では洒落にならないので、崖から身を乗り出して下を覗き込み、もう一度確認する。顔は見え
ないが、胸から下はどう見ても人間の体だし、妙な形に曲がった腕の袖口には白っぽい皮膚、アウ
トドアウォッチが見える。服もそれほど汚れていないから遭難してからあまり時間も経っていないよ
うに思われた。
助かるかもしれないな-救難信号を発信し、
念のためメール機能を使って家内にも連絡を
入れた。
Sonan-sha hakken. Seishi humei. Kyujo
tanomu. Y-Dam jyoryu no nagarekomi kara
sawa wo 2 jikan soko shita tokoro. Kuma.
(遭難者発見。生死不明、救助頼む。Yダム上
流の流れ込みから沢を2時間遡行したところ。
くま)
日本語フォントを扱うことができないのでロー
マ字で書いたが、まあ分かるだろう。救難信号
が届かなくても、家内が警察に連絡してくれればいずれ救援が来る。ヘリなら数時間、船でも半日
というところか。崖の上にじっとしているのも嫌な気分だ。救援が来るまで上流で釣りでもしていよう
か…
「エ、イッテシマウノデスカ。モウスコシ、イッショニイテクダサイヨ」
え、誰? 字幕スーパーと音声情報の中間みたいな声が聞こえてくる、と言うよりも脳の中にメッセ
ージが浮かび上がる、観念が逐語的に伝達される感覚。
(誰?まさかあんた…)
「ソウ、アナタガミテイル、ソレガワタクシ」
幻覚にしてはやけにはっきりしている。生きていたのか?それにしてもこれは普通のコミュニケー
ションではないな。
「ワタシニモヨクワカラナイ。デモ、コウイウフウニオハナシハデキルミタイ」
おいおい、言葉に出さなくてもこっちの思ったことがそのまま伝わるのか? まあ、どんな形でもコ
ミュニケーションができるなら生きている可能性が高い。ちょっと安心したよ。一人でここに来たの
か? いつからここにいるんだい? わざわざ湖を渡ってくるような場所だぜ、釣りか沢登りでもなきゃ
こんなところには来ないよな。
「チョットオボエテマセン。キガツイタラココニイタノデスヨ。ソラガマッサオニハレテイテ、オヒサマ
ガ、キラキラシテイテイマシタ」
22
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
数日前までは雨だったというから、遭難してからあんまり時間は経ってないんだな。さっき救助を
頼んだから、うまく行けば数時間で助けが来る。頑張れよ。
「アリガトウゴザイマス。アナタハオヒトリデスカ? オナカマハ、ホカニイナイノデスカ? ゴカゾク
モ、ツレテクレバイイノニ」
渓流釣り師は家族を顧みないということを突かれたようで返答に窮した。釣りをするとき俺はほと
んど一人で山に入る。一人で自然との対話を楽しみたい、というのは言い訳にすぎない。狭い渓で
何人もの釣り人が一緒に釣りをするのは難しいので順番に釣り上がるか、川を分けて釣り場を割り
当てることになる。釣りのスタイル、ペースは人それぞれだし、釣果に差がでれば気まずい空気に
なることだってある。余計な気を使わずに一人で気楽に釣りをしたいのが本音だ。
とは言え、気心の知れた仲間や家族と釣りをする楽しみもよくわかっている。俺に釣りのてほどき
をしてくれたのは父親で、一緒にでかけた釣りは良い思い出だ。記憶にある最初の釣りは小学校に
入学する頃だろうか、近くの川での小物釣りと秋のハゼ釣りだが、その光景は今でも鮮明に覚えて
いる。父親が定年退職した後又一緒に釣りをするようになり、御年80になろうとする今でも機会が
あれば一緒に海や川へ釣りに行く。父親は何時、何処で、どんな魚を釣ったかというのを俺以上に
よく覚えている。そんな親子の思い出を自分でも紡ぎたくて、女の子なのに子供をさんざん釣りに連
れていった。長女がよちよち歩きの頃にでかけたマス釣り、娘達が初めて自分で魚を釣った日、船
を仕立てて繰り出した海釣りが大漁で、魚をさばくのに苦労したこと、秋ハゼ釣りを楽しんだこと・・・
一つ一つの思い出が走馬灯のように浮かんでくる。そういえば、随分娘と釣りに来ていない。
「・・・オジョウサマモツリヲスルノデスネ・・・」
どこからか湧いてきたような声にふと我に返る。相変わらず頭上には白い雲と青い空、耳に入る
のは鳥のさえずりと渓の水音だけだ。
あ、あぁ、流石に源流は危ないから連れて来なかったけどな。もう高校生と中学生だから付き合
いが悪くなる頃だけど、不思議に魚釣りにはまだ一緒に行ってくれるよ。子供を時々でも釣りに連
れて行けば、一人で釣りに行くときでもカミさんが結構喜んで送り出してくれるんだよ。でも、いつま
で一緒に行ってくれるか…彼氏の一人でもできればそれまでだろうよ。ネズミの遊園地のほうがい
いってか。
「ソレナラ、ナオサライマイッショニコナイト。ヤマノクサバナ、ドウブツ、ソシテオサカナ、ホンモノ
ハツクリモノトハゼンゼンチガイマスヨ」
確かに。昔、雑誌で、アメリカのフィッシングガイドが子供を遊園地に連れて行ったときの話を読ん
だことがあるよ。いつも山の中で草花や動物に囲まれて暮らしているので、一度くらいは「普通の子
供らしい」場所に連れて行ってやろうということで、有名な遊園地へ行ったそうだ。それなりに楽しそ
うだったので親としても喜んでいたのだが、帰り際に「でも、なんで皆作り物のお花や動物を見て喜
んでいるのかしらね。本物はもっと素敵なのに」と言ったとか言わなかったとか。実は俺は遊園地が
好きではなくてね。むりくり釣りに連れだしていたのにはそんな事情もある。「お父さん、どっか連れ
てって!」、とせがまれて、遊園地とか言われる前に、「よし、じゃあ川に行くか」みたいなノリかな。
23
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
川面を涼しい風が渡り、ザックにつけた熊鈴がチリチリと鳴った。それにしてもいい天気、空に吸
い込まれそうだ。せっかくの釣日和だからもう少し上に行ってみるか。
「ダメデスヨ。マダノボッテイッテハイケマセン。モウスコシ、オハナシヲキカセテクダサイ」
(続く)
作者紹介
釣熊は2014年から商工会会報に渓流釣りと自転車の記事を寄稿しています。小説・随筆は前作の
「幻の谷を釣る」に続く2作目、今回も連載数回の短いお話に仕上げる予定です。ブログにて釣行
記や自転車の記事を掲載しています。お時間あればご訪問ください。
http://tsurikumajcaw.blogspot.com/?zx=d5ec08bb0702d4c0
挿絵は文京いくさんにお願いしました。本業の合間に気が向くとギャグ漫画やイラストを製作。絵本
っぽい、さくっとした絵柄が特徴です。
Illustration by Emi Kikuchi
24
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
English Rescue by Jennifer:
「日本人が間違いやすい英語表現(55)」
ジェニファー・スワンソン
DC Terms #7
Countdown to the Election Edition (Election Terms #4)
The Presidential Election is almost upon us. Election Day 2016 is Tuesday, November
8. Polls (polling places) are open from 6am to 7pm in Virginia, 7am to 8pm in Maryland and
DC. The hours are different depending on the state in which registered voters will cast ballots.
(http://www.vote411.org/)
Americans like to count things down. There was a countdown to the 2016 Rio Olympics,
there was a countdown to school starting in fall 2016, now we have a countdown to the
presidential election. At the time of this writing, it was 70 days 14 hours, 18 minutes
and some seconds. You can check the countdown clock or even add it to your feed. (http://
www.270towin.com/2016-countdown-clock/)
Negative ads have started. Negative ads try to persuade voters to choose a candidate
by making the opposing candidate look bad, by attacking either the opponent’s character or
record on the issues.
Who funds these ads? And should this system be changed? These are hotly debated topics
in DC and around the country.
McCain-Feingold
The McCain-Feingold law is named after its two chief Senate sponsors, John McCain, a
Republican from Arizona, and Russell Feingold, a Democrat from Wisconsin, who sought to
remove “soft money” as an influence on candidates running for federal office. The law did
away with “loopholes” (or legislative oversights) that in the past allowed the use of soft money
to aid candidates running for federal office.
Hard money/Soft money
Hard money and soft money are terms used to differentiate between campaign funding that
is, and is not, regulated under federal campaign finance law. Hard money describes donations
by individuals and groups made directly to political candidates running for federal office. Such
contributions are restricted by law. Soft money refers to donations not regulated by law that
can be spent only on civic activities such as voter-registration drives, party-building activities,
administrative costs and in support of state and local candidates. “Soft money” contributions,
by law, may not be used to directly support a candidate for federal office. The U.S. Supreme
Court in 2003 upheld congressional restrictions passed in 2002 on soft money contributions.
25
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
Citizens United v. Federal Election Commission (FEC)
This 2010 Supreme Court decision affirmed shareholders and other groups of people enjoy
the same rights that they would have if they were acting as individuals. The court also ruled
that the government cannot restrict how much such groups can spend to support or criticize
political candidates.
Political Action Committee (PAC)
PACs are political committees not related directly to a political party, but rather affiliated
with corporations, labor unions or other organizations. The committees contribute money to
candidates and engage in other election-related activities so as to promote specific legislative
agendas. Funds are gathered by voluntary contributions from members, employees or
shareholders. PACs have increased significantly in influence and number in recent years: In
1976, there were 608 PACs; in 2010, there were about 5,400.
Super PAC
This type of political action committee (PAC) is allowed to raise an unlimited amount of money
from donors who can choose to remain anonymous. Super PACs are not allowed to donate
directly to individual campaigns or coordinate with candidates or political parties. Citizens
United is considered to be the most influential Super PAC and has strongly affected election
results since the 2010 Supreme Court decision. For more information, please see http://www.
usnews.com/news/articles/2015/01/21/5-years-later-citizens-united-has-remade-us-politics
The 2010 Supreme Court decision in Citizens United v. FEC was 5-4 in favor of Citizens
United. Since that decision, one conservative Supreme Court justice has passed away and
the vacancy has not been filled. Although Chief Judge Merrick Garland was nominated by
President Obama on March 16, 2016, the Senate has refused to hold hearings or vote on
Judge Garland’s nomination. Some people feel the Citizens United decision may be overturned
in the future, depending on the confirmation of the 9th justice (which in turn depends on the
next president elected.)
What does the countdown clock say now? (http://www.270towin.com/2016-countdownclock/)
〜Jennifer Swanson プロフィール〜
日本にて7年在住中に、高校英語教師の経歴を持ち、日本企業でも働いた経験を生かし、現在
は米国大学講師、日米協会講師、在米日本人に英語レッスンの他、米国人に日本語も教える。
日米でのさまざまな経験を基に、“頻出テーマで はじめてのTOEFLテスト 完全攻略”(高橋書
店:Jennifer Swanson/四軒家 忍 (著))を出版、多方面から楽しい英語レッスンを展開しています。
http://about.me/jenniferswanson
日米協会英語レッスンでは第22期生徒を募集中です。
詳しくは:http://www.jaswdc.org/page-1451140
26
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。
会報2016年9月号
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
9月号編集後記
台風はこの時期日本の風物詩ではありますが、今年
は観測史上初めて北海道に3つの台風が上陸するなど
関東以北に相次いで来襲、震災の傷が残る東北と北
海道に大きな被害をもたらしました。被害に遭われた皆
様には心よりお見舞い申し上げます。
リオデジャネイロオリンピックも無事終了し、日本選手団の獲得した金メダル
はロンドンの7つを大きく上回る12個、総メダル数でも41個とロンドンの獲得数
38個を上回る結果を残しました。4年後の東京オリンピックに向けて期待が高
まります。編集子が注目したいのは男子400mリレー。メンバーは誰も9秒台を
持たず、持ちタイム合計は決勝進出8チーム中7位の日本チームがバトンパス
の技術を磨くことで全員9秒台のジャマイカチームに次ぐタイムで堂々の銀メ
ダルを獲得しました。個人の能力だけに頼ること無く、全員でチーム全体のパ
フォーマンスを引き上げるという最近失われつつ有る日本的なアプローチで世
界に戦いを挑み、結果を出したことは喜ばしい限りです。
Labor Dayの連休が過ぎると新学期、会員の皆様の中にも新しい環境で9月
を迎えられた方もいらっしゃるかと思います。商工会でも一緒に広報を担当し
ていた篠崎理事が転勤により退任されました。今後のご健勝・ご活躍をお祈り
申し上げますとともに、預かったバトンをしっかり次走者につなげて参りたいと
思います。引き続き会員の皆様のご支援を賜りたく、よろしくお願い致します。
坂元
会報郵送有償サービスのご案内
会報は紙資源節約と郵便料金など経費節約の観点から原則としてWEBベース
でご覧いただいておりますが、WEB環境が不十分な方のために希望者にはプ
リンターで印刷した会報を郵送いたします。料金・お支払い方法等の詳細をご案
内いたしますので、ご希望の際は、下記までご連絡願います。
ワシントン日本商工会事務局
TEL: 202-463-3947 FAX: 202-463-3948 Email: [email protected]
27
JCAW Copyright © 2016 All Rights Reserved.
会報内すべてのコンテンツの無断転用を禁じます。