アドバイザリノート ニッケルとボディピアス ニッケル スチュワードシップ ファッション性や文化的な背景から、 今日の社会では耳やそれ以外の体の部位に付ける ピアスが流行しています。 男性女性を問わずボディピアスを楽しむには、 ピアスの施術や ピアスに使用される材質を正しく選ぶことが大切です。 ニッケルは、長時間直接皮膚に触れると、 アレルギー反応を引き起こす可能性のある元 素の1つであると長く認識されてきました。 ニッケルに対する感受性の研究から、一般に 女性の10~15%、男性の1~2%がニッケルにアレルギーがあることがわかっています。 女性のニッケルアレルギーの発生率が高いことは、耳に付けるピアスと密接に関係して います。 ピアスを付ける男性の増加に伴い、 ニッケルアレルギーも増えています。 このアドバイザリノートは、 ピアス用品のメーカー、販売業者、耳や体へのピアス施術を 行う業者、及び消費者に対し、 ピアスの穴あけ方法とボディピアスに使用する材質を適 切に選ぶことの大切さについて情報提供することを目的としています。 リスク評価 ニッケルアレルギー性皮膚炎に関するリスクの評価 と管理にあたり、考慮すべき重要な要素が2つありま す。1つは、物質の表面が汗にさらされた際にニッケル を溶出する能力と速度、 もう1つは、皮膚とどのように 接触しているかです。 そのため、 リスクの大きさは、商品の使用パターン、 ピ アス商品を身につけている環境(ピアスが治りかけの 傷に接触しているかなど)、ニッケル皮膚炎に対する個 人の感受性等様々な要因で変わってきます。 接触皮膚炎のリスクを最小限に抑えるには、耳やそれ 以外の体の部位に穴をあけるときに適切な材質を使 用することが重要です。 これは、穴をあけた部分が完 全に治癒するまで装着される 「スタッド」に関しては特 に重要です。 を装着した状態でのニッケルの溶出量が非常に少な いことが試験データで示されています。 推奨事項 ボディピアスのピアス用品メーカーの方へ: ピアス用 品 の 製 造 につ いては、E U ニッケル 指 令 [94/27/EC改訂]に準拠してください。 このEU指令で は、体の部位に装着される、あるいは穴をあけたこと による傷が治るまでの間に傷と接触するピアスに対 し、ニッケルの溶出速度が1週間当たり0.2μg/cm2 を超えないことが義務付けられています。304Lタイプ と316Lタイプは、 これらの要求事項に合致する一般 的な材質の具体例です。外科用ステンレス鋼の場合 も、 この要求事項に準拠します。 ピアスの穴あけによる傷が治癒した後に使用される ジュエリー商品の製造についても、EUニッケル指令 このEU指令では、長時間直接皮 ボディピアスに適した材質は多数ありますが、304Lタ を遵守してください。 イプや316Lタイプのステンレス鋼が最も一般的に使 膚に接触するジュエリーに対するニッケルの溶出速 用されています。 これらのステンレスは耐食性があり、 度は、1週間当たり0.5μg/cm2を超えないことが義 ピアスの穴を開ける時の状態や、長期間ボディピアス 務付けられています。 www.nickelinstitute.org 2009年6月改訂 アドバイザリノート ニッケルとボディピアス (つづき) ボディピアス施術者の方へ: ニッケル協会の行動指針 スタッド等のピアス用品に適切なグレードのステンレ ニッケル協会は、ニッケル スチュワードシップの一環 スが使用されていることを確認してください。 ピアス として、Council for Responsible Jewellery Practices( 用品に使用される材質の情報については、 メーカー 責任あるジュエリー産業のための協議会)等の関連団 の製品説明書をご参照ください。 体やウォルマート等の小売販売業者と共に、ニッケル アレルギー性接触皮膚炎に関する情報の周知に積極 ピアスの穴あけによる傷が治癒した後に装着するピ 的に取り組んでいます。 アス商品は、EU指令に準拠したものを選ぶよう消費 者にアドバイスしてください。 業界との協力のもと、ニッケルアレルギー性接触皮膚 炎について様々な研究や専門家による評価が多数 消費者の方へ: 行われました。最近では、ニッケルの美観をそのまま 自分で、あるいは自宅でピアスを開ける場合は、使用 に、EUニッケル指令のニッケル溶出基準を満たすよう するピアス用品が適切な鋼種のステンレス鋼である な新たなニッケルの表面配合組成についての研究等 ことを確認してください。お店や医療機関でピアスを があります。 してもらう場合は、施術者にピアス用品に含まれる材 質を問い合わせてください。 ニッケル 協 会は、ニッケル 指 令を履 行するための CEN(欧州標準化委員会)の標準化作業に参加してい リング、バー、 スタッド等の体に装着する物を購入する ます。Nickel Dermal Advisory Panel (NDAP)は、皮膚 際は、使用されている材質を確認してください。 ピアス の研究や臨床に関してニッケル協会にアドバイスを 商品がEU諸国で合法的に販売されているかどうかわ 行う皮膚科専門医の国際団体です。 からない場合は、皮膚に触れる表面にニッケルがある かどうか質問し、 もしあれば、耐久性のある保護用の ニッケル協会は、あらゆる個人、産業界、皮膚科学会、 コーティングがされていることを確認してください。低 政府機関と連携し、知識の向上や業務の改善、 あるい 価格なジュエリーに使用される金めっきは非常に薄く は消費者への周知に努めます。ニッケル協会は、一般 て軟らかいため、その下のニッケルに対して効果的に 製品から多量のニッケルが溶出して長時間直接皮膚 保護できないか、あるいは保護が持続しない可能性 と接触しないように、EUの規制に類似する規制の使 があることに留意してください。 用を後押ししています。 貴金属以外でできたピアスを販売する業者が、 ある商 品がEU諸国で合法的に販売されているか確認できな い場合は、その商品を購入して身に付けるべきかどう かを考え直す1つの判断材料となります。自分自身や ニッケルアレルギーがある人がその品物を身に付け る可能性がある場合は、 「買わない」がおそらく適切 な答えだと言えるでしょう。 ニッケルに対する感受性の 研究から、一般に女性の10 ~15%、男性の1~2%がニ ッケルにアレルギーがある ことがわかっています。 ピア スをつける男性の増加に 伴い、ニッケルアレルギー も増えています。 www.nickelinstitute.org 2009年6月改訂 役立つ参考情報 詳細情報は、当協会ウェブサイト (www.nickelinstitute. org) に掲載されるNickel Allergic Contact Dermatitis Statement of Position of the Member Companies of the Nickel Institute (ニッケルアレルギー性接触皮膚炎-ニ ッケル協会会員企業の意見書)及びNickel Allergic Contact Dermatitis – Basic Science Paper (ニッケルアレ ルギー性接触皮膚炎-基礎科学論文) でご覧いただけ ます。 ジュエリー 等 の 一 般 消 費 者 向 けの 商 品を製 造 する 際のニッケル使用に関するご質問やお問い合せは、 Peter Cutler ([email protected])に直接お送りく ださい。
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