pdfのダウンロードはこちらから - 日仏経済交流会(パリクラブ)Paris Club

『 詐欺師の歳時記 』
Vol .3
晩惷
ブンセキ 鷺東 うさぎ(Ussagui Çaguishino)
アペリティフ
~アミューズβにお焼香して丁重に昇天頂いたコールドミートのお話しを~
♪βGM は勿論
作詞 By 阿久悠氏
作曲&唄 By ジュリーの《麗人》♪
https://www.youtube.com/watch?v=Os6x1_zUTrI
フランス語が話せなくとも、高学歴でなくとも、日仏文化&経済交流活動に積極的に参
パリクラブは敷居が高い、日仏交流の場で、初
加したいと考える皆様、
めて出逢った方から頻繁に耳にするコメントです。鷺東はパリクラブの会員ですが、皆様
からの敷居が高いというコメントには全く持って同感ですし、この敷居が高いイメージが
刻一刻とパリクラブの存続を危うくしているリスクをひしひしと肌で感じるのは、昨日今
日に始まった事ではありません。アンチパリクラブの方々が誹謗中傷を潔しとせず敢えて
口外しないが、運営者のデリカシーを疑いたくなるような決して快くは捉えられないイヴ
ェントや科学的根拠のない差別的会員間格差などを、会期の締め括りであり新年度のスタ
ート時点の今、鮮明にお伝えし、
『学歴・社会的地位・身分を斟酌せず日仏交流に確固とし
た軸足を置きつつ同交流のアクターとなるべしとの志し』を入会の最大の基準に掲げる自
由で平等なクラブライフへの潮流誘導をパリクラブの前途に垂れ込める衰退リスクのヘッ
ジとして提案したいと思います。
フランス語喋りのスノッブなエリート倶楽部に在っては、勿論、辛うじて高卒の鷺東は軽
んじられる事も頻繁にあります。でもね、そういう時こそ、ユーモアのセンスが磨けるチ
ャンスじゃん。
『本出そう、一郎君』
『それは…手だ…な、商談!!』なぁんてね!
尚、鷺東は会の重鎮方のお覚えがとっくの昔から目出度くないので、事なかれ主義の『異
議なぁああしぃ!ぱちぱちぱち拍手拍手』に掉さすのに吝かではございません。
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前菜
~博学の素地・涙腺弛む♪で肉刺(ふぉーく)を手に~
♪βGM は、その後の成り行きを髣髴とさせる《周璇嬢の何日君再來》♪
https://www.youtube.com/watch?v=A3PoAnXCcMw
前回の詐欺師の歳時記の文末で予告させて頂いてご記憶に新しい~①《ポケットマネー
をイヴェント参加に投じて領収書を断る宮原兄》と②《築地の仲買エキスパートが仕掛け
たエクセルシオールな山葵団子に吸い寄せられるうさぎさんが、何故、ベイコクのニュー
スばかりを気にするのか》~の①②のさわり部分を今号の両者同時解体作業の対象と位置
付け、此処からは、客勘&脚観性重視の為、なんとなく散文での展開に致します。
ホワイトデーを週末に控えたある日の昼下がり、鷺東うさぎ嬢は横浜駅西口ダイヤモン
ド地下街へ降りる階段を左手、JR の改札へ下る階段を右手に見て正面奥のブリオッシュ・
ドレで午後のお茶を頂きつつ、エリート女性方向けバレンタインギフトのお返しよろしく
世桐教授が日仏経済稿流会会員寄稿欄に投稿した《ルイスがひっくり返った後にミンスキ
ー某、どうしたものか?》とのたまう数枚のレポートを解読しようと睨んでいる。
うさぎ嬢は既に、通りを行き交う人々の春めいた装いとミスマッチな本来の教授の文体
とは異なる妙に堅い文字列の羅列に本能的な訝しさを覚えている。レポート周辺に漂う何
とも云えない胡散臭さ。何かがおかしい、うさぎ嬢の『勘繰り精神』が覚醒するのに長い
時間は掛からなかった。
結論から先に云えば、世桐教授のレポートは、アンチパリクラブの科学者諸氏、即ち『天
上りの真逆、白い巨塔に背を向け巷へ向かう先生方』のメスの如きクールな視線を何とか
躱そうと頑張って仕上げた『破れ鍋の綴蓋』的力作なのである。
何故、
『破れ鍋』なのか?レポートを眺めていると、懐にガツンと響くみすずモノを読破
したい要求が生ずるからに他ならない。
余談だが、
《麗人》の振り付けをよくご覧になると、ジュリーが可也の『渡辺ファン』で
あり実は歌手でなく外科医志望であった事が良く解る、T’es d’accord, OK?
メイン、一皿目
~マグロの解体 SHOW~
そう、此処で舞台を 2/6 開催の《築地の未来に向けて‐日仏協力の可能性》と題したイヴ
ェント会場に戻そう。実はある意味、当夜のイヴェントには企画側の戦略リテラシーには、
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物議を醸すような落とし穴的側面が隠れていたのだ。しかしながら彼方此方で引っ張りだ
この世桐教授はイヴェント内容の変更が可能なタイムリミットを越えるまで、同企画の恐
るべき盲点に気付かずにいたのではなかろうか?
うさぎ嬢は脳内のシナプスに流れる電気的信号に耳を澄ます。
世桐教授が素知らぬ顏のハンベイを決め込み、盲点が可視状になる以前に強引に一丁上
がりに持ち込もうと密かに焦っているのを、一部の参加者諸氏が察知したのは、喜多村鉄
工所の腕賀好弥氏(かいながよしや)が質疑に立ち、何気に思わせ振りにけれども妙に楽
しげに『やや場違いなトサツ場に関する質問を発したその時』だった。
青い表紙がそのままタイトルになっているフランス語の古典的教科書が云うところの
『集合的エリート・鉄道員』を父に持つうさぎ嬢は呟やく≒築地の皆さんには悪いけれど
食べ付けないマグロは勿体無くて拝ませて頂くことしか出来そうにない≒≒≒≒
彼女の父親は、在職当時、必要が生ずると特殊な業界用語(Jargon:日本的発音でジャ
ルゴン)を用いて選ばれた人間にすら非常に困難な任務を遂行していたのである。けれど
も薄給故か、はたまた全く別の理由によるのか、当時すでに高価のマグロを進んで我子に
食べさせることはなかったのだ。つまりうさぎ嬢はマグロの味を知らないのである。そし
てこの夜、お上の広報課や水モノ業界紙から同イヴェントに駆けつけた人々もおそらく同
様にマグロ・ヴァージンなのではなかろうかと、うさぎ嬢は勘繰る。今や世界のグルメの
垂涎の的と化した本マグロ(黒マグロ)
、昨今では香港のリッチな買いの手により、一本一
億五千万円程の競り値が付いたものもあったというのに・・・が、これでは高級マグロは
庶民の口にはなかなか入らない。嗚呼、粋でイナセでならす庶民の台所が、お大尽のオー
クション会場と化してしまうのだろうか?
うさぎ嬢は、ふと価格が需要と供給のバランスの綱引きで成り立っていることに想いを
馳せた。そして腕賀はと云えば、
『築地の公設市場としての使命は、売り手と買い手の出会
い&立ち合い交渉の場の提供であり、商品の鮮度という名の付加価値の減少を最小限に留
める為、瞬く間に両者間の折り合いをつけるまさに日本が誇る芸術的早業の提供であるが
故に、うさぎの様なマグロ・ヴァージンや准ヴァージンもっと言うならアンチ・マグロ派
はマグロ通やマグロ好きの味方であり、庶民の懐に優しい価格の生鮮食料品を提供したい
築地の仲卸の皆さんの云わばアイドルなのだろう》
、と、締め括る役をうさぎ嬢に譲れば、
白衣の天下り軍団の白い目を免れ得るやもと考えていた。うさぎ嬢と科学的心的肉体的関
係に在り、対話者の顔色や声色を読むばかりか、以心伝心で瞬時に訴えの要旨を把握、う
さぎ嬢とはテレパシーで交信する白衣の天下り博士方を敵に回すのは絶対得策ではない。
セイシが係わる問題が生じた際、優しくされると困るからであった。
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ところが、あにはからんや、である。うさぎ嬢は既に空想の世界に遊び、腕賀の存在な
ど目に入らぬかのごとく全くの上の空、である。腕賀は、彼女は、香港から延びた買いの
手が運び去った極上マグロが、次に何処へ行って誰の食卓を飾るのかを詮索中で、折から
の円安で南半球で避寒中のリッチな邦人筋が、香港経由で外貨の持ち高調整目的で行った
オペレーションの一環なのかなぁ・・・それともお寿司好きでリスク資産のコントロール
のプロ、所謂黒い眼の外人夫妻達がご子息&ご息女方と一家総出で幸せの極み寿司ディナ
ーなどする為の『お取り寄せオペ』なのかなぁ・・・などとコメカシげに考えていること
であろうと見た。なぜなら、うさぎ嬢の父親が、その昔、公社勤めの傍ら、副業で鮨屋に
軒先を賃貸し副収入を得ていた事実を腕賀は知っていたからである。お刺身やお寿司が誰
のお口に入るのか、を幼少の砌から無意識的であるとは言え肌で感じながら育ったエコノ
ミックアニマルがうさぎ嬢なのだった。
腕賀がバイス・プレジデントを務める日仏経済稿流会に於いては、うさぎ嬢の様な経済
動物は、女性会員でなく小僧であり、小僧づとめに当たることになっているのである。
メイン二皿目
~スライスの魔術、手切りの極上ローストポーク~
♪βGM は勿論、繰り返し《麗人》♪
https://www.youtube.com/watch?v=Os6x1_zUTrI
腕賀は徐に卓上に饗されているタプナードに手を伸ばす。所属企業で経費として認めら
れない『上様宛・領収書発行団体名記載・2/6 付イヴェント参加費¥1000 也』の領収書を
大事そうに押し戴き持ち帰る紳士淑女の胸中を想う横顔には、薄っらと苦い笑いが浮かん
でいる。決して彼らを侮蔑しているわけではない。逆に羨ましいのだ。そして、切ない。
胸中では、今宵この場に現れようもない意中の女性の住む海を隔てた彼の地への長期出張
もしくは単身赴任する作戦が形を取り始めている。腕賀はちらりと腕時計に目を遣やった。
地上 42 階、遥か遠く、見える筈のない窓越しに、速水御舟画伯の『散椿(山種美術館蔵)
』
を見るような仄かな酔い心地であった。
しかし、腕賀には、彼の思惑を知る由も無い筈のうさぎ嬢が、経済動物特有の嗅覚を以
てビュフェ会場のオープンカウンター前を行き来し、タニタの【百キロカロリー】プリン
や星崎電気製の保冷庫の中のカゴメや伊藤園のベジ飲料、ニチレイのアセロラドリンクな
どを不思議そうに見つめているのが忌々しかったのは言うまでもない。
『人の恋路ばかり気にして憐れな奴・・・』
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それでも、うさぎ嬢はフランス系証券会社のセミナールームに薫るベイコク企業文化に
本能的に(spontanemment :
日本語的発音ではスポンタネマン)惹き付けられて行く。
彼女にしてみれば至極当然、全くを以て無理もない。なぜか?
SHOW
マンシップを『恐ろしいほどさり気無なく偲ばせるベイコクの凄腕の正体』を事も
なげに言い当てるエリート商社マン山打音三氏(やまだおとみ)が、その場に居合わせた
ていたのだから。
『さて、一服するか?』
、山打氏、うさぎ嬢に声を掛ける。彼女は出来る限り爽
やかに肯定形の相槌を打った。
~《ハイ(肯定)
》、
《ハイ(肯定)、
《ハイ(肯定)
》~ それは、聞く者に、
『相
手は自分を受け入れようとしてくれ TEL、理解しようとしてくれ TEL、自分に関
心を持っ TEL』というある種の錯覚を刷り込み得る音声的ツールで、営業トーク
の展開を容易にする下地作りに良く使われる。とかく人が否定されることを嫌い、
否定されると不愉快になる傾向を応用したテクニックである。この上級編は否定
誘話の《ダメです》である。小難しく云うと《ダメ》を肯定をするわけだが、ダ
メ出し相手に、ダメな理由が如何に『ガトー・ドゥミセックを添えたヴーブ・ク
リコのラ・グラン・ダムっぽい』かを仄めかす際に実に効果的である。はじらい
を帯びて甘やかに、かつて一世を風靡した『すこし愛してながぁ~く愛して』の
大原麗子風の声で囁きたい。それは、
【それもタブー、これもタブー、タブーに三
方を囲まれ熾烈なシェア争いが繰り広げられる資本主義マーケットで、にこやか
にタブーを犯す際の奥の手だと、電話業界のセールス・エンジニアでうさぎ嬢の
夭折した弟が彼女に残したセールス日記に殴り書きした遺言の如き箴言】なのだ。
うさぎ嬢は、凄く嬉しそうに『何時になく莨が美味しくない・・・』と顔をし
かめる山打氏に、やはり凄く嬉しそうに『はいっ』と頷いた。
では、空耳モノから《もすこう》を聴きながら次号でまたお会いしま Show♪
https://www.youtube.com/watch?v=Wj76YgiwdmM
お後が宜しいようで♪
-------------------------------------------------------------------------------2015/3/30 今年度は此処まで、
以下次年度へ A
très bien tôt !
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