9月号(PDF:12.89MB)

一般社団法人 海外建設協会
8&9
Aug. & Sep. 2014
Vol.38 / No.8 & 9
特集
わが国の経済協力の現状と見通しについて
視点 ODA大綱の見直し
海外生活便り ミャンマー
支部通信 韓国・カイロ
8&9
特集
わが国の経済協力の現状と見通しについて
01 02 07 13 17 20 24 27 篠塚 徹[拓殖大学北海道短期大学] 【巻頭言】ODA大綱の見直し
平成26年度わが国の経済協力について
川田 一德[外務省]
わが国の海外経済協力の改革と今後の取組
冨田 翔[経済産業省]
国土交通省の技術協力について
岸本 紀子[国土交通省]
JICAの有償資金協力について
江口 雅之[国際協力機構]
わが国ODAと海外建設工事について
松本 茂利[経済協力通信]
[日刊建設工業新聞社]
ODA案件をめぐるゼネコンの取り組み
溝口 和幸
平成26年度ODA要望活動と今後に向けて
鈴木 恵[海外建設協会]
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
33 37 40 43 46 51 53 前場 洋之[安藤・間]
プルイッ
ト排水機場緊急改修工事
越智 克夫[清水建設]
佐野 憲二[大日本土木]
森 和也[大豊建設]
山下 哲志[東急建設]
金成 祐尚[飛島建設]
山地 斉[三井住友建設]
ザンビア共和国ルサカ南部地域居住環境改善計画
海外生活便り
56 北山
[IHI ASIA PACIFIC PTE. LTD.]
支部通信
59 62 南 鍾国[フジタ]
加藤 信悟[大日本土木]
64 海外受注実績
65 主要会議・行事
65 編集後記
̶̶インドネシアにおいて半世紀前に建設されたポンプ場の無償資金援助による改修工事
ブータン王国 サイクロン災害復興支援計画
ルワンダ・タンザニア国境におけるルスモ国際橋および国境手続円滑化施設設備計画
ベトナム ニャッタン橋プロジェクト第3工区
パキスタン・イスラム共和国 ̶̶アボタバード市上水道整備計画
ハノイ・ニャッタン橋
(日越友好橋)
Package-1の下部工工事
【ミャンマー】ミャンマー食事情
【韓国】韓国に進出した外国建設会社の現況
【カイロ】アラブの春から、
エジプトの今
【巻頭言】
ODA大綱の見直し
篠塚 徹
拓殖大学北海道短期大学 学長
本年 2014 年は、日本がコロンボプランに加盟し政府開発援助(ODA)を開始してから 60 年目の節目に
当たる。
経済成長を続け世界有数の経済大国になるにつれて日本の国際社会における地位と責任が高まり、
ODA も量的拡大を遂げ、その内容も多様化していった。しかし ODA 実施の基盤となる基本理念や国と
しての援助方針を長期的視点から明文化した文書が長い期間存在せず、1992 年 10 月に初めて ODA 大綱
が制定(閣議決定)された。ODA 大綱は、その後の国際情勢などの変化に対応して 2003 年 8 月に改訂され、
現在に至っている。
ODA 大綱が初めて制定された当時、私は実施機関において援助の最前線で活動していたが、援助の理
念と原則を定め中長期的な援助政策を包括的に取りまとめた大綱の存在によって、業務をより円滑にこな
すことができるようになったことを記憶している。その後は、ODA 大綱がその下で作成される中期政策
や国別援助計画と共に、援助の透明性を確保しながら国民の理解を得るために多大な寄与をしてきたと言
える。
ODA 大綱が改訂されてから 11 年が経ち、その間に日本を取り巻く国際環境が大きく変化したことか
ら、本年 3 月外務大臣は大綱を見直すための有識者懇談会を設置し、同懇談会は 6 月に報告書を提出した。
報告書の内容は多岐にわたるが、
「国際社会の変化を踏まえて従来の ODA 政策をより効果的に展開すべ
く、ODA を中核とした日本の開発協力について見直しを行い、大綱の名称を 開発協力大綱 と改めた
上で、現代の国際社会のニーズに対応したより効果的な開発協力の実現のために努力すべきである」と提
言している。
「ODA の軍
新大綱改定の基本方針を提言している中で特に注目すべき点は、次の 2 点である。第 1 は、
事用途および国際紛争の助長への使用を回避するのは当然」としつつも、
「現代では軍隊の非戦闘分野で
の活動も広がっており、民主目的、災害救助などの非軍事目的の支援であれば、軍が関係しているがゆえ
に一律に排除すべきではなく、
その実質的意義に着目しつつ、
効果・影響などにつき十分慎重な検討を行い、
実施を判断すべき」という提言である。現下の国際情勢を勘案すると時宜を得た提言であり、意味あるか
「日本が戦後の歩みの中で培ってきた経験と知見を
たちで ODA の対象範囲を広げることになる。第 2 は、
開発途上国支援に活かす観点から、途上国の経済発展と日本自身の力強い成長を同時に実現すべく、官民
連携、民民連携など幅広い連携によって途上国支援を進めるべき」という提言である。ODA の戦略性を
高めるためにも、民間活力を幅広く引き出すことが必要であろう。
外務省はこの有識者懇談会報告を踏まえつつ、さまざまな手段で国民的議論を行い、本年中を目処に新
大綱の閣議決定を行う方針であるが、この過程が円滑に運ぶように願っている。
2014 08–09
01
特集
平成26年度わが国の経済協力について
川田 一德[外務省 国際協力局 事業管理室長]
「未来への投資としての国際協力」―これは 2013
億円であり、平成 9 年度(1997 年度)をピークに半
年版 ODA 白書で明示されたもので、
「ODA は日本
減し、現在は 1980 年代半ばと同水準まで落ち込
及び国際社会全体のための未来への投資である。
」
んで い ま す。わ が 国 の 平 成 25 年 度 の ODA 実 績
という考え方です。たとえば、日本が東アジアで長
は、交換公文ベースで無償資金協力総額 1,774 億
年にわたり展開してきた成長重視の開発協力は、地
円、円借款総額 11,412 億円となり、依然として
域の大きな成長と発展につながり、日本を含む東ア
厳しい状況にあります。また、円借款の日本企
ジア全体に大きな恩恵をもたらしています。これは
業受注率は平成 25 年度は 39.5%となっていますが、
関係業界の方々をはじめ多くのオールジャパンのメ
引き続きその向上が課題です。このような現状を
ンバーによる大きな業績であると思います。インフ
踏まえ、ODA を一層効果的に活用していくため
ラやシステムの提供とともに、日本の優れた技術、
に、政府としても今後とも制度・運用改善を図るべ
ノウハウを供与していくことは世界における日本の
く、海外建設協会、会員企業の方からも引き続きご
使命とも言えるものであり、これが日本の存在感を
意見を賜っていく所存です。特に今年は、日本が
高めることにもつながります。
ODA を開始してから 60 周年となる年であり、国際
わが国は、国際社会の主要なプレーヤーとして、
国際社会の平和と安定及び繁栄の実現に向け、より
協力に対する国民の皆様の理解を深めるためにも、
ODA の適正かつ戦略的な活用を図っていきます。
積極的な役割を果たしていくという国際協調主義に
以下では、昨年度(2013 年度)の無償資金協力及び有
基づく「積極的平和主義」を掲げています。わが国
償資金協力の実績ならびに今年度(2014 年度)の ODA 予
の平成 26 年度(2014 年度)国際協力重点方針は、この
算及び国際協力重点方針を概観した後、現在、当方で
観点から、最も重要な外交手段のひとつとして ODA
取り組んでいる制度改善等についてご紹介します。
の意義は一層高まっているという認識に基づき、開
発問題や地球的規模課題の解決に貢献し、日本の国
益に資する ODA を展開すべく、ODA を積極的・
戦略的に活用することとしています。また、同方針
1. 平成25年度無償資金協力及び有償資金協力の実績
(1)無償資金協力
平成 25 年度の無償資金協力実績(交換公文ベース)は
は、中小企業を含むわが国企業をはじめとする政府・
総額 1,774 億円でした。
JICA(国際協力機構)以外の開発の担い手と連携するこ
❶ 地域別の傾向
とが重要であり、その優れた技術・知見を活用する
地域別の実績及び割合は、表 1 の通りです。本年
ことを通じて ODA の質の向上を図るとしています。
度は対アジア支援の割合が最も大きく、38.3% を
今後、国際社会のさらなる成長と発展と同時に、
日本の一層の活性化に向け、無償資金協力、有償資
占めています。
❷ 国別の傾向
金協力(円借款)及び技術協力の各スキームを有機的
平成 25 年度の国別実績は上位から、ミャンマー
に連携させ、ODA を戦略的に活用することが重要
(約 196 億円)
、エチオピア(約 111 億円)、フィリピン(約
となっています。
一方、わが国の平成 26 年度の ODA 予算は 5,502
02
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
108 億円)、アフガニスタン(約 95 億円)及びカンボジア
(約 74 億円)の順となっています。
表1|平成25年度の地域別実績及び割合(無償)
金額(億円)
割合
金額(億円)
(平成25年度)(平成25年度)(平成24年度)
地域
2. 平成26年度のODA予算及び国際協力重点方針
(1)平成26年度のODA予算
東アジア・南西アジア
679.99
38.33%
797.03
アフリカ
今年度の外務省の ODA 予算は 4,230 億円、政府
609.55
34.36%
643.87
中東
222.09
12.52%
310.70
全体の ODA 予算は 5,502 億円であり、ODA の支
中南米
70.67
3.98%
122.99
大洋州
95.90
5.41%
75.50
中央アジア
30.11
1.70%
44.35
欧州
29.80
1.68%
7.69
その他
36.01
2.03%
27.98
1,774.13
100.0%
2,030.11
合計
*交換公文ベース、債務救済除く。
出純額ベースで主要援助国と比較すると、昨年は米
国、
英国及びドイツに次いで第 4 位となっています。
また、ODA 実績の対国民総所得(GNI)比では、日
本は 0.23% となっており、主要援助国 28 カ国中 18
位となっています。
(2)平成26年度国際協力重点方針
平成 26 年度国際協力重点方針は、冒頭で記した
(2)有償資金協力
(円借款)
平成 25 年度の円借款供与実績(交換公文ベース)は総
基本的考え方に基づき、国際社会の安定と繁栄に貢
額 11,412 億円でした。
献し、日本の国益に資する戦略的な ODA の展開を
❶ 地域別の傾向
行うべく、❶日本にとって好ましい国際環境をつく
供与先は 24 カ国で、アジア向けが 73%と 7 割以
るための ODA、❷新興国・途上国と日本が共に成
上を占めており、従来と同様アジアを中心に円借款
長する ODA 及び❸人間の安全保障を推進し、日本
を供与しています。
への信頼を強化する ODA、という 3 つの柱を設け
❷ 国別の傾向
ています。それぞれの柱の内容は以下の通りです。
平成 25 年度の円借款 10 大供与相手国は、表 2 の
❶ 日本にとって好ましい国際環境をつくるためのODA
自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を
通りです。
共有する国の安定成長とわが国との関係強化を図る
表2|平成25年度円借款10大供与相手国
国名
実績額(億円)
とともに、これらの価値に基づく秩序形成に向けた
割合
法制度整備支援や安定化支援等を行うこととしてい
1
インド
3,651
32.0%
2
ベトナム
2,020
17.7%
3
インドネシア
822
7.2%
4
フィリピン
687
6.0%
5
コスタリカ
561
4.9%
社会の平和と安定に積極的に貢献することとしてい
6
ミャンマー
511
4.5%
卜ルコ
ます。
7
430
3.8%
8
イラク
391
3.4%
ます。また、
平和構築、
テロ対策、
海上保安能力強化、
シーレーンの安全確保に向けた支援等を通じ、国際
具体的には、たとえば、普遍的価値や戦略的利益
9
スリランカ
350
3.1%
を共有するアジア諸国との関係強化を図るために、
10
ウズベキスタン
349
3.1%
1,641
14.4%
「連結性の強化」
「格差
ASEAN 共同体構築に向け、
11,412
100.0%
その他
合計
*交換公文ベース、
債務救済除く。
四捨五入の関係上、
合計が一致しないことがある。
是正」を柱に平成 25 年度から 5 年間で 2 兆円規模の
ODA を実施するとの日・ASEAN 特別首脳会議(平
2014 8–9
03
成 25 年 12 月)での公約を踏まえ、ASEAN 諸国に対し
日本企業によるインフラシステム輸出や投資環境整
て、ハード・ソフト両面における域内の物理的・制
備を後押しする。
度的・人的連結性を強化するための支援等を行うこ
(イ)中小企業の国際展開支援
ODA を活用し、わが国中小企業の優れた製品・
ととしています。
技術の新興国・途上国における調査・普及・実証を
❷ 新興国・途上国と日本が共に成長するODA
新興国・途上国の開発に貢献し、これらの国の活
通じて、途上国の経済社会開発に貢献する。
力を日本に取り込むことを目的に ODA を戦略的に
(ウ)地方自治体の国際展開支援
展開することとしています。また、中小企業を含む
自治体の技術・ノウハウを活用し、新興国・途上
わが国企業・地方自治体等が有する優れた技術・知
国の地方・中核都市における中・小規模のインフラ
見を活用しつつ、わが国の制度・システムの普及を
整備ニーズにきめ細かく対応すると同時に、自治体及
図るとともに、ビジネス環境整備に資する支援等を
び地元企業等の国際展開を支援する。また、途上国
行うこととしています。具体的には、たとえば以下
の要望を踏まえ東日本大震災の被災地産の工業用品
のような項目を推進することとしています。
等を供与し、被災地の経済復興にも貢献する。
(ア)インフラシステム輸出支援
(エ)医療技術・サービスの国際展開支援
「インフラシステム輸出戦略」を踏まえつつ、イ
「健康・医療戦略」を踏まえつつ、開発の基礎と
ンフラ案件の川上から川下までを俯瞰し、ODA を
なる保健・医療をめぐる状況改善のため、アジア等
効果的に活用することを通じ、新興国・途上国の開
で急拡大する保健医療市場を視野に、ODA を活用
発・成長に必要なインフラ需要を満たすとともに、
して日本の優れた医療機器・システム等を導入し、
図1|わが国ODA予算の推移
(億円)
14,000
11,687
11,452
11,061
10,634
10,489
10,144
10,473
10,466
9,522
10,152
9,106
8,831
■ 政府全体
■ 外務省
12,000
10,000
8,000
5,810
6,000
4,000
3,022
2,000
1,347
3,516
1,648
3,965
4,417
1,871 2,097
4,813
6,220
6,580
7,010
7,557
8,175
5,281
4,151
2,512 2,751
2,324
2,950
3,106 3,297
4,808
4,472
5,116
5,342 5,537
5,731 5,851
5,568 5,582 5,602 5,565 5,389
8,578
8,169
5,165 5,001
7,862
7,597
4,881 4,733
7,293
7,002
6,722
4,544 4,407 4,363
3,552
6,187
5,727 5,612 5,573
5,502
4,134 4,170 4,180 4,212 4,230
0
年度 1979 80
(政府案)
04
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
92
93
94
95
96
97
98
99 2000 01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
日本式医療の普及・定着を図るとともに、その持続
いて、特に教育・母子保健・衛生等の分野において
的な活用に向けた人材育成等を支援する。
達成に遅れが生じているところ、サブサハラ・アフ
(オ)ビジネス法制度整備支援・人材育成支援
リカを中心に、国際機関との連携も強化しつつ、人
円滑な企業活動を確保する観点から、新興市場に
材育成やインフラ整備等の支援を実施し、MDGs
おける知的財産保護、ビジネス関連法制度整備、産
の達成を積極的に支援する。
業人材育成を支援し、進出先の雇用促進・技術向上
(イ)防災対策・災害復旧支援
につなげるとともに、新興市場への日本企業の進出
平成 27 年 3 月の第 3 回国連防災世界会議を見据
を後押しする。
え、防災分野で平成 25 年から 3 年間で 30 億ドルの
(カ)
「日本方式」の普及に向けたわが国技術・制
支援公約を引き続き着実に実施する。平成 25 年 12
度の普及支援
月の日・ASEAN 特別首脳会議において安倍総理よ
交通管制システムや貿易物流システム等のインフ
り表明した「日・ASEAN 防災パッケージ」やフィ
ラ、橋梁耐震性や IC カード等の技術・基準等国際
リピンにおける台風被害等も念頭に置きつつ、防災
的な規格・標準・制度づくりが見込まれる分野にお
インフラ・機材等のわが国の高品質な技術・知見を
いて、わが国技術・制度の普及を推進することによ
活用し、ハード・ソフト両面において途上国の防災
り、新興国・途上国の経済社会開発に貢献する。
ニーズに対応する支援を行うとともに、防災の主流
(キ)ミャンマーへのインフラ、ビジネス分野の支援
化を推進する。
投資先・進出先として日本企業の高い関心を集めて
いるミャンマーにおいて、持続的な経済成長に必要な
インフラや制度の支援や、ビジネス・産業人材育成支
3. 制度改善とODAの適正な実施
(1)制度改善
日本企業の進出や活動を後押しする。
援を行うことで、
円借款、海外投融資及び無償資金協力に関し、昨
❸ 人間の安全保障を推進し、
日本への信頼を強化するODA
年 10 月以降に行われた主要な制度改善は以下の通
人間の安全保障の基本理念に基づき、貧困削減と
りです。
包摂的成長の実現、ミレニアム開発目標(MDGs)達
❶ インフラ整備事業に対する途上国の出資を補う円借款の活
成に向けた支援等を行うこととしています。特に、
用(EBF: Equity Back Finance)
防災対策・災害復旧支援、国際保健外交戦略に基づ
途上国政府・国営企業等が出資をする電力・水・
くユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推
交通等のインフラ整備事業等に対して、当該出資金
進、女性のエンパワメント等の分野において、日本
のバックファイナンスとして円借款を供与すること
らしい支援を行い、日本への信頼を強化するととも
で、途上国のインフラ整備と日本企業のインフラ事
に日本のプレゼンスの拡大につなげることとしてい
業投資活動の双方を支援するもの。
ます。具体的には、たとえば以下のような項目を推
❷ 事業運営獲得を視野に入れた、
有償資金協力を含めた
進することとしています。
パッケージ(VGF: Viability Gap Funding)
(ア)ミレニアム開発目標(MDGs)の達成支援
途上国政府の実施する電力・水・交通等のインフ
平成 27 年(2015 年)が目標期限である MDGs につ
ラ事業で、原則として本邦企業が出資するものにつ
2014 8–9
05
いて、商業資金ではファイナンスが困難な場合に、
い事情により当初想定されていた事業費を超過した
途上国政府が主に事業期間を通じたキャッシュフ
ものについて、限定的に追加的な贈与を行うもの。
ロー平準化のために助成を行う場合に、円借款を供
与するもの。
❸ 現地通貨建て海外投融資
(2)不正問題
適正な事業実施は、ODA 事業の大前提であり、
海外投融資による支援が想定されるインフラ案件
これが崩れると ODA への国民の信頼に重大な影響
においては、事業収入はドル建てまたは現地通貨建
が生じ、また ODA 事業全般の円滑な実施に多大な
ての場合が大半であるが、現状の JICA 海外投融資
支障が生じることとなります。本年 7 月に検察当局
での融資通貨は円のみであるため、為替リスクは借
は、不正競争防止法違反により ODA 事業に従事す
入人である民間企業等が負担していることを踏ま
るコンサルタント会社及び同社前社長ら 3 名を起訴
え、借入人の為替リスクを低減し、日本企業の海外
しました。同社に対しては、4 月及び 7 月に外務省
でのインフラプロジェクト進出支援に向けた海外投
と JICA において ODA 事業からの一定期間の入札
融資の戦略的な活用のため、現地通貨建て融資を行
排除措置を実施しました(外務省ホームページ参照)が、
うもの。
今後、裁判で司法の判断が出ることとなります。
❹ 円借款のさらなる迅速化等に向けたセクター・プロジェクト・
一方で、追加的な再発防止対策については、当省
ローンの本格活用
及び JICA が ODA に係る関係業界の意見も踏まえ
円借款のさらなる迅速化の推進及び特定国・セク
て検討を行い、再発防止策の策定作業中です。昨今
ターにおける中・長期的協力関係の構築を目的とし
の国内外の社会情勢を踏まえ社内コンプライアンス
て、同一セクター等の複数の個別案件に対して、相
の強化に尽力している中で、今後の ODA 事業の不
手国の要請を踏まえ、包括的に円借款を供与するセ
正に係る再発防止対策においても、さらなるコンプ
クター・プロジェクト・ローンを本格的に活用する
ライアンスへの姿勢が問われることとなります。
もの。
❺ 事業・運営権対応型無償資金協力
(3)
その他
開発途上国における官民連携型の公共事業に無償
ODA の実施段階においては、被援助国政府ある
資金協力を行うことを通じ、日本企業の事業権や運
いは実施機関との関係で種々の事務処理上の障害が
営権等の獲得を促進し、わが国の優れた技術を途上
発生する場合があります。免税問題や先方負担事項
国の開発に役立てることを目的として、開発途上国
の不履行や遅延等に関し、コントラクターやコンサ
が実施するインフラ事業のうち、商業資金のみでは
ルタントだけでは解決に及ばない事態については大
ファイナンスが困難な場合に、当該事業に必要な施
使館、JICA 事務所から、先方政府、実施機関側へ
設・機材・その他サービスに必要な資金を供与する
の事前周知、
是正申し入れ等を行っておりますので、
もの。
ご相談いただければ幸いです。
❻ 追加無償資金協力
無償資金協力のうち案件実施の過程でやむを得な
06
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
特集
わが国の海外経済協力の改革と今後の取組
冨田 翔[経済産業省 貿易経済協力局 資金協力課 総括係長]
1. はじめに
2. インフラシステム輸出戦略と海外経済協力に係る改革
東南アジアをはじめ、急速な経済発展を遂げてい
アジアを中心とした新興国の成長を背景に、こう
る新興国におけるインフラ需要は膨大であり、日本
した外需を取り込みわが国の経済成長に繋げるた
企業のインフラ案件受注機会の拡大が期待されてい
め、2013 年 6 月に取りまとめられた「インフラシ
る。そのような中、安倍総理大臣のリーダーシップ
ステム輸出戦略」
「日本再興戦略」や本年 6 月に行わ
の下、成長戦略の一環として経協インフラ戦略会議
れたこれら戦略の改定などを踏まえ、日本政府とし
を設置し、同会議を司令塔としてわが国の海外経済
ては円借款や JICA 海外投融資などの公的ファイナ
協力に係わる施策の積極的改善を行ってきたところ
ンスの機能強化を行い、日本企業のインフラシステ
である。中でも、円借款や国際協力機構(JICA)の海
ム輸出を積極的に推進している。
外投融資の大胆な制度改革を実施し、円借款につい
てはその迅速化策についても経済産業省として関係
省・JICA と連携して取り組んできた。
また、ミャンマーやインドにおける面的開発構想
(1)
円借款の制度改善
まず、2013 年度の円借款に係る実績を迅速化・
日本企業受注率という観点から説明する。はじめ
についても経済産業省は積極的に取り組んできた。
に、迅速化実績については、標準処理期間*1(9 カ月)
中でもミャンマーのティラワ経済特別区(SEZ)開発
以内に承諾できた割合は 68.5% で、対外公表を開
は、日・ミャンマー協力の象徴的なプロジェクトと
始した 2007 年度以来、最も高い実績を達成してい
して、官民一体で取り組んでおり、電力や水、道路、
港湾、通信といったさまざまな周辺インフラ整備
や、ワンストップでの手続きが可能な体制構築支援
を、2015 年夏の開業を目指して迅速に行っている。
加えて、インドのデリー・ムンバイ産業大動脈構想
(DMIC)やチェンナイ・バンガロール産業大動脈構
日本政府がインド政府との対話を通じ、
想(CBIC)は、
両国が共同してインドの広域社会インフラ整備を行
う構想であり、インドの経済成長を通じた生活水準
の向上と共に、日本企業の積極的な参画が期待され
るプロジェクトである。
本稿では、上述した円借款や JICA 海外投融資と
いった海外経済協力に係る改革の狙いと具体的内容
について述べた上で、経済産業省が主体的に取り組
図1|標準処理期間達成率
2013年度
68.5%
2012年度
40.0%
2011年度
54.5%(※)
2010年度
51.4%
2009年度
48.4%
2008年度
33.3%
2007年度
42.4%
※東日本大震災を受け、供与を先送りせざるを得なかった一部の案件を含め
ると、46.8%
出典:外務省政府開発援助ODAホームページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/keitai/enshakan/
tasseiritsu.html
図2|円借款における日本企業受注率
39.5%(速報値)
21.9%
んできたミャンマーやインドにおける面的開発構想
の現況について説明する。なお、本稿中の意見にわ
たる部分は、筆者個人の見解である。
平成24年度
平成25年度
出典:第11回経協インフラ戦略会議資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai11/siryou2.pdf
2014 8–9
07
る。次に、日本企業受注率については、大型案件の
図3|EBF円借款の事業フローのイメージ
受注*2 もあり、2012 年度の 21.9%を大きく上回り、
円借款
4 割弱となるなど、一定の成果を出している。
バックファイナンス
このように、円借款の迅速な供与と日本企業受注
途上国政府
率の向上に向けた取り組みは一定の成果を出しつつあ
るものの、日本経済団体連合会や日本貿易会からの
ODA に向けた要望*3 にあるように、さらなる迅速化や
日本裨益性を高めるための制度改善を求める声が産
業界から寄せられている。加えて、新興国におけるイ
途上国国営企業
(電力会社)
出資
ンフラ整備のあり方自体が進化しつつあり、新興国が
PPP(官民連携)などの民間活力導入型のインフラ整備手
法を志向する傾向にある中、円借款自体も旧来のプロ
日本の電力会社
など
出資
SPC
融資
市中銀行
など
出典:経済協力の改革について(JICAの円借款・海外投融資)
http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140603002/20140603002.pdf
ジェクト型借款の枠組みに囚われず、民間資金を積極
的に動員することが期待されると共に、新興国におけ
(ⅱ)事業運営権獲得を視野に入れた、
有償資金協力を含めた
るプロジェクト・ファイナンス案件の組成に対応できる
*5
(VGF )
の導入
パッケージ
よう柔軟化が図られるべきである。
日本企業の出資するインフラ事業に対して、当該
以上の問題意識から、昨年 10 月、本年 6 月にそ
事業運営の支援を行うことにより、事業運営権の獲
れぞれ円借款の制度改善を実施し、具体的には以下
得が期待できる案件が存在している。このような背
のような改善を講じた。
景を受けて、途上国政府の実施する電力・水・交通
などのインフラ事業で、原則として日本企業が出資
(ⅰ)インフラ整備事業に対する途上国の出資を補う円借款
するものについて、商業資金ではファイナンスが困
*4
(EBF )
の新設
日本企業が途上国との合弁で特別目的会社(SPC)
図4|VGF円借款の事業フローのイメージ
円借款
を立ち上げて事業を行う場合に、SPC に対する途
上国側の資金手当て(出資)を支援することにより、
日本企業のスムーズな事業展開を支援することが必
要である。このような背景を受けて、途上国政府・
国営企業などが出資をする電力・水・交通などのイ
ンフラ事業に対して、日本企業との共同事業を促進
するため、当該出資金のバックファイナンスとして
円借款を供与することを決定した。これにより、途
上国のインフラ整備を促進すると共に、日本企業の
海外インフラ事業投資促進を目指していく。
08
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
VGF原資を借款にて供与
日本企業など
途上国政府
出資
SPC
VGF
料金
オフテーカー
(水道公社など)
融資
市中銀行など
出典:経済協力の改革について(JICAの円借款・海外投融資)
http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140603002/20140603002.pdf
難な場合に、途上国政府が主に事業期間を通じた
施機関である JICA の制度運用の改善であり、本年
キャッシュフロー平準化のために助成を行う場合
6 月以降速やかに実施することとしている。
に、円借款を供与することを決定した。
これらの円借款に係る制度改革を受けて、今後は
これらの制度が適用される具体的な案件の形成を進
(ⅲ)セクター・プロジェクト・ローンの制度化
同一国・セクターの複数案件に円借款をまとめて
めることが重要である。また、現在検討中のものと
供与する「セクター・プロジェクト・ローン」を制
して、サブ・ソブリン向け円借款がある。これは、
度化した。これにより、日本企業の参画・メリット
昨年 5 月の「インフラシステム輸出戦略」にその検
が期待できるセクターなどの複数案件を並行的・連
討を開始する旨が盛り込まれたが、現在、適切な債
続的に取り扱うことによる事業実施の迅速化を目指
権保全策や審査手法を検討中である。
す。また、中長期的な円借款供与の予見可能性を高
め、相手国による事業の安定的な実施を図る。
(2)
JICA海外投融資の制度改善
JICA の海外投融資は、2001 年 12 月の特殊法人
*6
(ⅳ)P/Q と本体入札との一本化の積極活用や標準入札書
など整理合理化計画にて新規案件は停止となってい
類の使用義務化の徹底など
STEP をはじめとする日本企業の参画・メリット
たが、2010 年 6 月の新成長戦略、2011 年 1 月に策
が期待できる円借款案件の実施にあたり、日本企業
定された「新成長戦略実現 2011」を踏まえ、2011
や相手国の意向を踏まえつつ、P/Q と本体入札との
年 3 月に再開を実現した。現在「パキスタン貧困層
一本化の積極活用や標準入札書類の使用義務化を徹
「ベトナム産
向けマイクロファイナンス事業(出資)」
底することなどにより、円借款事業の実施段階にお
「ロンアン省環境配慮型工業
業人材育成事業(融資)」
けるさらなる迅速化を図る。これは円借款事業の実
「インドネシア産業人材育成事業(融
団地事業(融資)」
図5|現地通貨建てJICA海外投融資のスキーム概要
貸付時
JICAと民間金融機関の間で
スワップ取引
融資契約に基づき、
JICAは
借入人に貸付
(現地通貨建て)
借入人
❸ 現地通貨建て貸付
❶ 円/米ドル
JICA
借入人はJICAからの現地通貨建ての海外投融資借入により、
インフラ事業などの案件を実施。
民間金融機関
(スワップ取引相手)
❷ 現地通貨
返済時
❹ 現地通貨建て返済
借入人
❺ 現地通貨
JICA
融資契約に基づき、
借入人は
JICAに返済
(現地通貨建て)
民間金融機関
(スワップ取引相手)
❻ 円/米ドル
出典:経済協力の改革について(JICAの円借款・海外投融資)
http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140603002/20140603002.pdf
2014 8–9
09
資)
」
「ティラワ SEZ 開発事業(出資)」の 5 事業を支援
(1)
ミャンマー:ティラワ経済特別区(SEZ)開発構想
している。
2011 年 3 月のテイン・セイン政権発足後、ミャ
しかし、JICA 海外投融資による支援が想定され
ンマーでは急速な民主化・市場経済化が進み、世界
るインフラ案件においては、事業収入はドル建てま
各国から膨大なインフラ市場として注目が集まって
たは現地通貨建ての場合が大半であるものの、本格
いる。日本企業も「アジア最後のフロンティア」で
再開当初の JICA 海外投融資での融資通貨は円のみ
ある同国の市場獲得を重要視しており、世界各国の
であったため、為替リスクは借入人である民間企業
企業と厳しい競争を繰り広げている。日本貿易振
などが負担せざるを得なかった。したがって、民間
興機構(JETRO)によれば、同国への進出日系企業数
企業から再開当初より強い要望のあった JICA 海外
は 182 社*7 となり、過去最高の企業数を記録した。
投融資の現地通貨建て融資を、本年 6 月のインフラ
2011 年の民政移管を受けて、ミャンマーにおける
システム輸出戦略の改定時に導入し、借入人の為替
約 5,000 億円の延滞債務解消を実施するなど、日本
リスクを低減し、日本企業の海外でのインフラ案件
政府は国際社会を先導してミャンマー支援を行って
支援に向けて JICA 海外投融資を戦略的に活用して
きている。
いくこととした。
ティラワ SEZ 開発は、こうした日本・ミャンマー
両国からの期待や関心に応えると共に、ミャンマー
3. 面的開発構想と経済産業省の取り組み
一定の面的広がりを有する地域における多様な日
における投資誘致に係る課題に対処するための両国
協力の象徴的なプロジェクトである。両国政府は、
本企業の進出とそのために必要なインフラ整備にお
2012 年 12 月に協力覚書を締結し、初期段階から官
いて、案件組成から運営・維持管理まで包括的な受
民を挙げて協力を行ってきた。ティラワ SEZ に対
注を実現するために、構想段階からプロジェクトに
する戦略的かつ重点的な支援は、昨年 5 月の経協イ
関与していく必要がある。そのために、わが国は総
ンフラ戦略会議で決定した「インフラシステム輸
理・閣僚級の政府間協議やマスタープラン作成への
出戦略」のうち、
「広域開発事業に早期から関与し、
協力などを通じて、ミャンマー・インド・インドネ
政策対話などによる投資環境改善や、
制度整備支援、
シアといった新興国を中心に面的開発を積極的に進
円借款のセクターローンやプログラムローン、海外
めている。日本企業は、新興国の面的開発における
投融資などの戦略的活用により、わが国企業の活動
各国との受注競争において競争優位性のある最先端
拠点整備などを推進」という具体的施策を実現する
技術を有しており、加えて都市化に伴うさまざまな
ものである。
環境社会配慮面での課題を乗り越えてきた経験も有
日本企業の同国進出にあたってのボトルネックと
しているため、これらを面的開発における大型イン
なるインフラや投資環境整備を促進するためのメカ
フラ案件受注にあたって活かしていくことが肝要で
ニズムとして、
日本側は経済産業審議官、
ミャンマー
ある。ここでは、日本政府・経済産業省として重点
側は閣僚級の SEZ 運営委員長が議長となるティラ
的に取り組んでいる、ミャンマーとインドにおける
ワ調整委員会を、現在まで 6 回開催し継続的協議を
面的開発構想の具体と現況について説明したい。
行っている。本年 5 月より販売を開始し、6 月初旬
10
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
には進出企業 1 号と契約を締結した。また、本年 3
イナンスを検討することが改めて確認された。
月、7 月には JETRO 主催のティラワ投資ミッショ
現在、グルガオン・バワル都市鉄道建設事業につ
ンを開催し、多数の日系企業より高い関心を集めて
いて、JICA の協力準備調査に向けた準備が行われ
いる。
ている。本年 6 月には東京で経済産業省主催の日本
企業向けセミナーを開催し、海外建設協会会員企業
図6|ティラワSEZ開発のイメージ
を含めた約 50 社もの日本企業が参加し、本事業に
対する高い関心が示された。インドではメトロ、都
市鉄道が多数計画されており、今後もインド鉄道事
業における日本企業の参画が期待される。
(3)
インド
:チェンナイ・バンガロール産業大動脈構想(CBIC)
CBIC は、日本の大手自動車メーカーや関連する
中小企業、電機メーカーなどの日系企業の進出が近
年特に目覚ましいチェンナイおよびバンガロール周
辺地域の著しい経済発展を受け、日・インド両国政
出典:経済産業省作成資料
参考:ニュースリリース「ミャンマー経済特別区開発のための共同事業体が
設立されました」
http://www.meti.go.jp/press/2013/10/20131030003/20131030003-2.pdf
府が DMIC に続く産業回廊として推進する地域開
発構想である。道路や港湾、工業団地などを整備・
開発するもので、現在 JICA がマスタープランの作
成を支援しており、これまでに CBIC 全体の包括的
(2)
インド
:デリー・ムンバイ産業大動脈構想(DMIC)
地域開発計画が策定され、各州産業開発地域(ノード)
DMIC は、円 借 款 に よ り 整 備 さ れ る デ リ ー・
として、トゥムクール、クリシュナパトナム、ポネ
ム ン バ イ 間 約 1,500km の 貨 物 専 用 鉄 道(Dedicated
リが選択された。これら各州ノードの詳細開発計画
Freight Corridor: DFC)を背骨に見立て、周辺に工業団
については来年 3 月に最終報告書が作成される予定
地、物流基地、発電所、道路、港湾、住居、商業施
である。
設などのインフラを民間投資主体で整備する日・イ
また、タミル・ナド州においては、昨年 11 月に
ンド共同の地域開発構想である。DFC に対しては、
同州の投資環境整備のための制度改善や道路、電
2009 年からこれまでに約 2,300 億円の STEP を供
力、上下水道などの整備を支援する「タミル・ナド
与しており、昨年 8 月には土木工事が開始され、順
州投資促進プログラムローン」
の円借款が供与され、
次入札が行われている。
同州の投資環境改善に寄与することが期待されてい
本年 1 月の日・インド首脳会談では、ニムラナ・
る。本年 1 月の日・インド首脳会談において、同プ
メガソーラー事業とダヘジ淡水化事業などにおける
ログラムの他地域への展開を検討することが合意さ
進捗を両国首脳が歓迎すると共に、個別事業に対し
れた。
て JBIC 融資および STEP を含む円借款によるファ
2014 8–9
11
要であるが、加えて ODA などの海外経済協力のた
4. 終わりに
新興国におけるインフラ需要は膨大であるもの
めのツール、中でも円借款・JICA 海外投融資など
の、その獲得競争において日本企業は韓国・中国企
の政策金融メニューを組み合わせることで開発途上
業に大きく遅れを取っている。日本企業の技術的優
国における多くのインフラ案件に食い込んでいくこ
位性や自身の新興国における受注戦略の見直し、ラ
とが有効である。
イフサイクルコストを正しく評価する仕組みの新興
経済産業省としては、これらの海外経済協力ツー
国の調達制度への導入などにより、日本企業の海外
ルの柔軟な改革を引き続き実行し、加えて面的開発
インフラ案件受注を増大していくことはもちろん重
構想における政府間協議などを継続的に実施するこ
とで、日本企業の海外におけるインフラ案件受注を
引き続き支援してまいりたい。
図7|海外プラント・エンジニアリング成約実績
(億ドル)
* 1 円借款要請から借款契約締結までの標準的な処理期間。
2,000
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
* 2 インド・デリー・ムンバイ間貨物専用鉄道土木・軌道敷
2005年
、モンゴル・ウランバー
設工事(一部区間、約 1,100 億円)
2006年
トル国際空港建設(約 500 億円)など。
2007年
「インフラ・システム海外展開の
* 3 日本経済団体連合会:
2008年
機動的かつ戦略的な推進を求める」
2009年
(http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/035.html )
2010年
2011年
日本貿易会:
「インフラ・システム輸出の国際競争力強化
2012年
に向けた公的金融機能の強化策についての要望」
2013年
(http://www.jftc.or.jp/shoshaeye/pdf/201207/
201207_06.pdf )
400
* 4 Equity Back Finance の略称。
200
0
* 5 Viability Gap Funding の略称。
日本
韓国
中国
出典:日本機械輸出組合「海外プラントエンジニアリング成約実績調査」
12
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
* 6 Pre-Qualification(事前資格審査)の略称。
* 7 2014 年 7 月末時点。
特集
国土交通省の技術協力について
岸本 紀子[国土交通省 総合政策局 海外プロジェクト推進課 国際協力官]
1. 国土交通省の技術協力
2. JICA専門家の派遣
〈インフラ整備を技術的な側面からサポート〉
〈先方政府の中枢部に専門家を派遣〉
国土交通省海外プロジェクト推進課では、国土交
国土交通省では、平成 26 年(2014 年)7 月 15 日現在、
通省と外国政府インフラ担当省との国際協力を推進
54 名の国土交通省推薦の JICA 専門家を 21 カ国に派
することにより、両省間の信頼関係・協力関係を醸
遣している。長期専門家の地域別分布は図 1 に示す
成し、これを活かして日本企業の海外展開を支援し
通りである。そのうち、建設分野の長期専門家は 34
ている。特に経済協力の枠組みでは、インフラ担当
名で 15 カ国に派遣している(表 1)。
官庁としての技術的・政策的な経験を活かし、開発
限られた人材を有効に配置するために、政策の企
途上国のインフラ整備を技術的な側面からサポート
画・立案にあたる中央政府の中枢部に人を派遣し、先
している。経済協力の範疇において国土交通省が実
方政府の要人にダイレクトに進言できるような体制とし
施している主要な施策として、国土交通省推薦によ
ている。また、専門家と建設アタッシェが密に連携し、
る JICA 専門家の派遣と、JICA 研修の受け入れが挙
一連の技術協力を進めることが望ましいと考えている。
げられる。
本稿では、
このふたつの施策について記す。
長期専門家の分布については、民間建設企業の進
出が多いベトナム、インドネシアなどの ASEAN 諸国が
中心となっている。中近東、アフリカ、中南米について
図1|国土交通省推薦のJICA長期専門家の地理的分布
国土交通省からのJICA専門家の派遣・活用
・平成26年7月15日現在、国土交通省などからJICA専門家を21カ国に54名派遣中。
・これらの専門家は、派遣国への技術協力はもちろんのこと、案件の形成、トップセールスやセミナー開催における相手国との調整、プロジェク卜受注後の日本企業
への支援など、海外インフラプロジェク卜推進の各段階において重要な役割を果たしている。
国土交通省および関係機関による長期専門家の派遣国(人数)
〈平成26年7月15日現在〉
2014 8–9
13
表1|建設分野における国土交通省推薦のJICA長期専門家(平成26年7月15日現在)
派遣国
形態※ 分野
案件名
派遣先
1 インド
個別
道路
高速道路運営維持管理の組織能力向上プロジェクト 高速道路運営維持管理
国道庁
2 インド
個別
道路
高速道路運営維持管理の組織能力向上プロジェクト チーフアドバイザー/高速道路政策
道路交通省
3 インドネシア
個有
道路
道路政策アドバイザー
公共事業省道路総局
4 インドネシア
個有
河川
水資源政策アドバイザー/統合的水資源管理
公共事業省水資源総局
5 インドネシア
プロ
河川
ジャカルタ首都圏総合治水能力強化プロジェクト チーフアドバイザー/総合治水政策
公共事業省水資源総局
/流域組織調整
6 インドネシア
プロ
建築
インドネシア建築物耐震性向上のための建築行政執行能力向上プロジェクトフェーズ2
公共事業省居住総局
建築政策アドバイザー
7 インドネシア
プロ
建築
インドネシア建築物耐震性向上のための建築行政執行能力向上プロジェクトフェーズ2
公共事業省居住総局
建築行政強化
8 キルギス
個別
道路
道路行政アドバイザー
(広域)
9 バングラデシュ
個有
道路
道路橋梁維持管理アドバイザー
運輸省道路局
10 バングラデシュ
個別
河川
河川管理アドバイザー
水資源開発庁
運輸通信省
11 バングラデシュ
プロ
地理
デジタル地図作成能力向上プロジェクト 地図行政
国防省測量局
12 フィリピン
プ有
道路
道路計画管理
公共事業道路省
13 フィリピン
プロ
道路
道路・橋梁の建設・維持に係る品質管理向上プロジェクトフェーズ2
公共事業道路省
14 フィリピン
プロ
河川
災害リスク管理(DRRM)
公共事業道路省
15 ベトナム
プ有
下水
ホーチミン市下水管理能力開発プロジェクトフェーズ2 下水道維持管理
洪水対策センター
16 ベトナム
プ有
下水
ホーチミン市下水管理能力開発プロジェクトフェーズ2 チーフアドバイザー/下水道行政
洪水対策センター
17 ベトナム
個有
下水
都市環境(下水道)政策アドバイザー
建設省技術インフラ局
18 ベトナム
個有
都市
都市計画アドバイザー
建設省都市開発局
19 ベトナム
プ有
河川
災害に強い社会づくりプロジェクトフェーズ2
農業農村開発省
20 ベトナム
プ有
河川
災害に強い社会づくりプロジェクトフェーズ2
農業農村開発省
21 ミャンマー
プロ
道路
災害多発地域における道路技術改善プロジェクトチーフアドバイザー/道路政策・技術 建設省公共事業局
22 ミャンマー
プロ
道路
災害多発地域における道路技術改善プロジェクト 道路技術基準
建設省公共事業局
23 モンゴル
プロ
都市
都市開発実施能力向上プロジェクト 都市計画・都市開発制度
道路交通建設都市開発省、ウラン
バートル市
24 モンゴル
プロ
道路
橋梁維持管理能力向上プロジェクト
道路運輸省
25 ラオス
個別
河川
公共事業省官房長付計画アドバイザー
公共事業・運輸省官房
都市
都市開発管理プロジェクト
公共事業運輸研究所、首都ビエン
チャン公共事業運輸局
26 ラオス
プロ
27 東ティモール
個有
道路
道路政策アドバイザー
公共事業省
28 エジプト
プロ
道路
橋梁維持管理能力向上プロジェクト チーフアドバイザー
道路橋梁陸運総庁
29 モザンビーク
プロ
道路
道路維持管理能力向上プロジェクト チーフアドバイザー/道路計画・維持管理
道路公社
30 ケニア
プ有
道路
道路メンテナンス業務の外務委託に関する管理能力強化 道路点検/施工管理/業
道路公社
務調整
31 ケニア
プ有
道路
道路メンテナンス業務の外務委託に関する管理能力強化 道路維持管理計画/人材
道路省
育成/チーフアドバイザー
32 イラン
個別
河川
水政策アドバイザー
エネルギー省水資源管理公社
33 ブラジル
プロ
砂防
統合自然災害リスク管理国家戦略強化プロジェクト/土砂災害管理
都市省
34 ブラジル
プロ
砂防
統合自然災害リスク管理国家戦略強化プロジェクト/防災政策/チーフアドバイザー
都市省
※プロ:技術協力プロジェクト
個別:技術協力個別案件
プ有:技術協力プロジェクト(有償勘定)
個有:技術協力個別案件(有償勘定)
14
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
は、ケニアやブラジルなど地域の要となる国に可能な限
イドで研修メニューを策定し実施する国別研修のふ
り人を配置し、情報収集に努めたいと考えている。ま
たつに整理される。
た、マレーシアやトルコなどの ODA 卒業移行国に対し
国土交通省の建設分野における JICA 研修員の年
ては予算配分上長期専門家の派遣が困難なことから、
間受け入れ人数は、課題別研修と国別研修を合わせ
短期専門家の派遣や、国交省が独自に官民参加のセミ
ると、平成 25 年度実績で約 930 人に達する。また、
ナーを開催するなどして二国間協力を継続することによ
課題別研修のうち、表 2 に示す 21 コースについて
り、金の切れ目が縁の切れ目とならないよう留意しなが
は、国土交通省から研修内容を提案するなど、内容
ら、援助関係からパートナーシップへの関係移行を図っ
の策定に深く関与している。また、それぞれの研修
ていきたいと考えている。
コースについて、担当部局、機関または研究所が全
面的にバックアップを行い、日本の建設分野におけ
〈専門家を通じて案件形成を後押し〉
る政策や技術面の知識と経験を研修員に伝えている。
最近の新たな傾向としては、従来の技術移転を目
的とした専門家の派遣に加えて、インフラ関連プロ
ジェクトの案件形成を任務とした専門家の派遣が挙
表2|建設分野における国土交通省提案の課題別研修
(平成27年度実施予定分)
研修コース名称
分野
げられる。たとえば、ベトナムに昨年(2013 年)新た
1
に派遣された都市計画アドバイザーは、法整備や投
2
道路行政
道路
3
高速道路整備、運営、維持管理(仮)
道路
資環境の整備など、日本企業がベトナムに進出する
際の環境整備に加え、日本からの都市開発投資案件
の調整などの案件形成業務を主要な任務としてい
る。また、国土交通省推薦の 12 名の個別専門家は、
円借款事業や技術協力プロジェクトの案件形成に関
する先方政府へのアドバイスなども任務としている。
3. JICA研修の受け入れ
〈年間900人以上の研修生を受け入れ〉
JICA 研修は、専門的知識や技術を途上国に移転
することを目的として、途上国の国づくりの担い手
となる中央政府や地方公共団体の職員などを主にわ
が国に受け入れて研修を行うものである。
橋梁総合コース
道路
4
都市開発のための土地区画整理手法
都市
5
総合都市交通計画
都市
6
都市計画総合
都市
7
アジア地域 水災害被害の軽減に向けた対策
河川
8
洪水防災
河川
9
総合水資源管理
河川
10
土砂災害防止マネジメント
(豪雨、地震、火山噴火
砂防
起因)
11
インフラ施設(河川・道路・港湾)
における災害対策 防災
12
下水道技術・都市排水
13
建築物の安全対策(地震、津波、火災、台風など
建築
に対して)
14
地震学・耐震工学・津波防災
15
住宅・住環境の改善と防災
下水
建築
建築
16 新 国家基準点管理の効率化と利活用
地図
17
国家測量事業計画・管理
地図
これらの研修は、日本側で策定した研修メニュー
18
地域開発計画管理
地域開発
を途上国側に提示し、それに参加したい途上国から
19
国土・地域開発政策
地域開発
20
社会基盤整備における事業管理
事業管理
21
建設機械整備および建設施工技術
建設施工
参加の要請を受けて実現する課題別研修と、途上国
の個別具体的な要請に基づき、国ごとにオーダーメ
新:平成25年度に新規で実施が予定されている研修
2014 8–9
15
JICA 研修員は、帰国後に自国政府の幹部職員と
人的ネットワークと JICA 研修を上手く連携させ、
なるケースも多く、JICA 研修をインフラ輸出のた
インフラ海外展開に最大限活用していく方針であ
めの人的ネットワークとして活用することは有用と
る。具体的には、相手国政府のキーパーソンが研修
思われる。
に参加することを促し、そこで日本の優れた技術を
PR することにより、研修をインフラ海外展開に活
〈JICA研修をインフラ輸出に活用〉
用できるよう工夫していく方針である。
研修受け入れに際しては、従来通り日本の知見・
ノウハウの移転を目的として国土交通省の施策など
4. その他
に関する講義や現場の視察を行うことに加え、イ
海外プロジェクト推進課では、インフラプロジェ
ンフラ海外展開の促進を目的として、日本の優れた
クトおよびインフラ関連製品・工法を積極的に海
インフラプロジェクトやインフラ関連製品・工法を
外に展開させていきたいと考えている。その際、
PR する講義や現場視察を取り入れるよう調整をし
JICA と連携して JICA 専門家派遣と、JICA 研修受
ている。
図 2 に JICA 研修実施に関する事例を示した。
け入れを最大限活用し、インフラ海外展開を推進し
国土交通省では、これまでに二国間協力で築いた
ていきたいと考えている。
図2|JICAと連携した研修の実施(下水道のJICA研修を例に)
・相手国の二一ズや課題に応じて、JICAと連携・協議しながら、研修(国別、課題別)を実施。
・課題別研修21コース
(平成27年度実施予定分)
については、
国土交通省が研修内容を提案し、
内容の策定に深く関与。
・課題別研修、国別研修合わせて、年間約930人(平成25年度実績)の研修員を受け入れ、職員の講師派遣や現場
視察などのアレンジを実施。
・今後は、JICA研修を日本のインフラプロジェク卜をPRする絶好の機会として、またインフラ輸出のための人的ネットワーク
として最大限活用。
■ JICA課題別研修:下水道技術・都市排水コース(平成25年度の例)
概要:下水処理、汚泥処理、浸水対策などに関する計画、設計、施工、維持管理などに関して、講義、実習、現場視
察などの豊富な研修メニューを実施。
研修生:インドネシア、ミャンマ一、ブラジルなど16カ国17名
・これまでは日本で一般的な下水処理法(標準活性汚泥法)に関する講義や現場視察のみであったが、昨年度より、研
修相手国の二一ズや状況に応じた下水処理法として、小規模な下水処理場(OD法など)を対象とした講義や現場視
察を追加。
・また、東北地方での現場視察をカリキュラムに組み込み、被災時における対応や施設の復旧などについて学習する機会
を設定。
・さらに、
管路の補修・更新に使用する管材について、
民間工場の視察を組み入れることで、
わが国企業のPRの機会とする。
16
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
昨年度の研修の様子
特集
JICAの有償資金協力について
江口 雅之[独立行政法人 国際協力機構 企画部業務企画第二課長]
国際協力機構(JICA)の有償資金協力には、開発途
は固定金利 0.1%、償還期間 40 年(うち据置 10 年)と
上地域の政府、政府機関などに対して融資する「円
きわめて優遇された借款条件ですが、一方で入札時
借款業務」と、わが国または開発途上国地域の法人
の競争性を求める途上国も増えています。昨年度の
その他の団体などに融資または出資する「海外投融
制度改善では、本邦企業の応札機会を促進すべく、
資業務」があります。本稿では、昨年(2013 年)公表
本邦企業の主契約者の範囲や本邦調達比率の算定対
された「円借款の戦略的活用のための改善策」を踏
象を拡大しました。平成 25 年度は、前述のモルド
まえた円借款および海外投融資の実績と最近の動向
バやカーボヴェルデ「サンチアゴ島上水道システム
をご紹介します。
(153 億円)といった STEP の供与国が広が
整備事業」
りました。また、モルドバの医療事業やフィリピン
1. 円借款の戦略的活用
「日本の優
平成 25 年(2013 年)4 月に日本政府は、
れた技術・ノウハウを開発途上国に提供し、人びと
(187 億円)は新
「沿岸警備隊海上安全能力強化事業」
たな分野での供与となりました。
(3)
中進国以上の所得階層への支援
の暮らしを豊かにすると共に、特にわが国と密接な
中進国(タイ、ペルー、コロンビア、エクアドル、チュニジア、
関係を有するアジアを含む新興国の成長を取り込
ヨルダンなど)や卒業移行国(ブラジル、パナマ、コスタリカ、
み、日本経済の活性化に繋がるよう、無償資金協力
トルコ、南アフリカ、マレーシアなど)に対しては、分野に
や技術協力とも連携しつつ、円借款を戦略的に展開
かかわらず日本の知見や技術が最大限活用できるな
していく」として、諸々の改善策を発表しました。
ど、日本としての戦略的意義が認められる案件へも
(1)重点分野の見直しと譲許性の引き上げ
円借款を活用していくこととなりました。経済発展
円借款では優先分野の案件に対して金利や償還期
の度合が高いこれらの国々は、国際社会における発
間が優遇された譲許性の高い借款が供与されます。
言力も高く、国際場裡における日本との戦略的パー
日本が政策的に推進していく優先分野として
「防災」
トナーシップを強化する上でも重要です。また、日
および「保健・医療」が追加されました。これら分
本の高度技術・システムを展開できる市場としても
(59 億円)
、
野では、モルドバ「医療サービス改善事業」
有望です。平成 25 年度はトルコ「ボスポラス海峡
(83 億円)
、インドネ
ナイジェリア「ポリオ撲滅事業」
(430 億円)やヨルダンの開
横断地下鉄整備事業(Ⅲ)」
(51 億円)
、チュニ
シア「メラビ山緊急防災事業(Ⅱ)」
発政策借款(120 億円)などへの借款を承諾しました。
ジア「メジェルダ川総合流域管理・洪水対策整備事
このほか、パナマのモノレール事業などのインフラ
(104 億円)などの支援が決まったほか、これら
業」
システム輸出の実現に向けた案件形成も推進してい
分野での日本の知見・技術を活かした案件形成を進
ます。
めています。
(2)本邦技術のさらなる活用
(4)災害復旧スタンドバイ借款の創設
日本は開発と国際協力において防災を主流化すべ
日本企業に受注を限定するタイド借款の「本邦技
く、国際的な防災強化の努力を主導化しています。
術活用条件(STEP)」は平成 14 年(2002 年)に導入さ
台風や地震などの自然災害発生後に復旧段階での資
れて以来、幾度かの制度改善を経ています。STEP
金需要に即応できる仕組みとして災害復旧スタン
2014 8–9
17
ドバイ借款(SECURE)が導入されました。本スキー
た。承諾上位 5 カ国は、インドを筆頭に、ベトナム、
ムは JICA の技術協力と連動して、開発途上国の災
インドネシア、フィリピン、ミャンマーと続いてい
害対応能力の強化を図るものです。平成 25 年度は、
ます。セクター別では、インドの「デリー高速輸送
フィリピン(500 億円)、ペルー(100 億円)で本円借款が
(1,400 億円)のような大型事業を
システム建設事業」
供与されました。
中心に運輸セクターが約 6 割を占めました。STEP
(5)
ノンプロジェクト型借款の一層の活用
案件の平成 25 年度承諾は、8 件、1,781 億円で、平
開発途上国の政策・制度の改善や行政機能の強化
成 24 年度(承諾 9 件、2,999 億円)に比べると、インド「貨
を図るプログラム型の円借款は、途上国政府との政
(1,361 億円)のような大型案件
物専用鉄道建設事業」
策対話を通じて作成される政策マトリックスとアク
の承諾がなかったために、承諾規模は減少しました
ションプランの達成を通じて資金協力をするもので
が、前述の通り対象分野や対象国が拡大しました。
す。経済・社会インフラの整備そのものが企業の投
平成 26 年度(2014 年度)の円借款承諾目標額は、6
資環境改善に繋がるのは勿論のこと、制度的側面か
月に外務省が公表した「平成 26 年度国際協力重点方
らも本邦企業の開発途上国における投資・ビジネス
針」では、1 兆 4,500 億円(交換公文ベース)となってい
環境の改善に寄与します。平成 25 年度は、インド
ます。JICA はこの目標額を達成すべく、また、政府
ネシア(198 億円)、ベトナム(150 億円)、インド(130 億円)
の「インフラシステム輸出戦略」にも寄与すべく、開
などで投資促進などの政策制度改善型のプログラム
発効果の高い案件の形成と実施を支援していきます。
借款が供与されました。
(6)外貨返済型円借款
(2)海外投融資業務
JICA の海外投融資は、平成 24 年(2012 年)10 月に
外貨返済型円借款は、円借款の借入に伴う開発途
「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」で
上国の為替変動リスクを軽減し、円借款の借入魅力
本格再開が決まりました。その後、ベトナムの環境
を高めます。昨年の制度導入後、モンゴル、エルサ
配慮型工業団地事業の融資をはじめ、ミャンマーの
ルバドルなどの案件で、本スキームを適用した円借
ティラワ経済特別区(SEZ)開発への出資などを承諾
款を承諾しています。
しています。ティラワ SEZ 開発では、JICA は技術
協力、円借款、無償資金協力により、SEZ 周辺地
2. 平成25年度実績と平成26年度計画
(1)
円借款業務
域の電力、水、通信、道路、港湾などのインフラ整
備や法制度整備など、民間投資のボトルネック解消
上記の取り組み結果として、平成 25 年度の円借
に向けた包括的な支援を行います。これは、
「イン
款承諾額(借款契約ベース)は 9,857 億円となりました。
フラシステム輸出戦略」にある「広域的開発事業に
また、平成 25 年度の日本政府による事前通報は約
早期から関与し、投資環境改善や制度整備支援、海
1.3 兆円であり、平成 24 年度に次ぐ過去 2 番目の規
外投融資などの戦略的活用により、わが国企業の活
模となっており、近年の円借款の承諾規模は 1 兆円
動拠点整備などを推進する」ことを具現化するもの
前後で推移しています。平成 25 年度承諾のうち、
として注目されています。
アジア向けのシェアは従来通り約 8 割を占めまし
18
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
JICA は PPP インフラ事業への参画を計画してい
る本邦法人からの提案に対する調査協力(協力準備調
札・受注は低調です。また、東南アジア諸国の中で
査− PPP インフラ事業)を通じた案件形成支援も行って
も国ごとに日本企業の応札数の多寡が分かれていま
おり、官民一体となった日本企業の海外展開推進に
す。応札が低調な理由としては、事業そのものが抱
貢献すると共に、開発効果の高い開発途上国におけ
える事業リスクのほか、本邦各企業の応札方針、開
る民間事業を積極支援していきます。
発途上国側の対応上の問題など、さまざまな要因が
あると考えられます。JICA は各案件の入札条件の
3. 終わりに
平成 25 年度の円借款の日本企業の受注契約総額
事前確認を通じて契約上の片務性の排除に努め、開
発途上国政府・実施機関による土地収用遅延や契約
は 1,865 億円となり、過去 5 年間と比べても 2 番目
不履行・支払い遅延の防止・改善を働きかけるなど、
に高い結果となりました。また、円借款事業の外貨
企業の応札環境の改善に引き続き努めていきます。
建て調達部分における国籍別調達比率も日本は約 4
また、開発途上国および日本企業双方にとって魅力
割に改善しています。
的な支援となるよう、今後も有償資金協力のさまざ
一方、円借款の土木工事事業における日本企業の
応札状況は地域ごとで大きく異なります。東南アジ
まな制度および運用方法を不断に検討していく所存
です。
ア諸国の応札・受注状況に比べて南アジア諸国の応
2014 8–9
19
特集
わが国ODAと海外建設工事について
松本 茂利[経済協力通信 編集長]
わが国は、毎年度二国間 ODA の供与目標を設定
し、その実行を目指し努力している。本年度(2014
年度)の目標額は合計 1 兆 7,511 億円とし、うち円借
分円借款の拡大が頼りともなっている。
表1|円借、
無償、
技協の当初予算の推移
(単位:億円)
2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
款が 1 兆 4,500 億円と約 8 割、残りの約 2 割が無償
円借款
8,910
9,500
8,800
9,150
9,885
資金協力と技術協力の贈与分となっている。実際の
無償資金
協力
1,542
1,519
1,616
1,642
1,667
1,480
1,457
1,454
1,469
1,503
11,932
12,476
11,870
12,261
13,055
円借款の実績は、最近の 2∼ 3 年間で見ると、1 兆
1,000∼ 1 兆 2,000 億円前後となっており、建設業
界を含め、わが国企業が ODA 商談での受注率の向
上のためには、円借款事業への取り組みが不可欠と
なっている。
JICA
交付金
合計
ただし円借款の供与目標は年間 1 兆 4,000 億円台
と高いが、実績は 2,000∼ 3,000 億円低くなってい
ただわが国企業全体の円借款事業での受注率は全
る。今後も円借款の拡大のためには大型インフラ案
体で 30%前後と低調で、その改善のために政府も
件の採用など、有望案件の形成努力が重要と目され
技術協力の努力やタイド借款の拡大など各種の対策
ている。
を実施する反面、関係業界にも進出意欲を要望して
いる。とくに建設業界の円借款工事への進出は全体
の 10%前後に低迷しており、その拡大が要望され
ている。
無償資金協力は、予算が全体で 1,700 億円弱で、
2. 建設業界のODA進出と期待
わが国建設業界の ODA 工事への進出実績の推移
は、海外建設協会の集計によると、表 2 のように大
体で全体の 10%前後の継続となっている。うち無
このうちタイドとアンタイドが半々程度と目される
償資金協力には予算の制約があり、毎年度 600 億円
ため、タイド率の引き上げがないと関係業界の進出
程度が進出の限界と目されている。このため今後建
拡大も難しいとしている。
設業界の ODA 工事への進出拡大には、タイド、ア
ンタイドを含めて円借款ベースの商談への注力が不
1. 最近の二国間ODA当初予算と実績
わが国二国間 ODA の最近の当初予算は、表 1 の
可欠と伝えている。地域別では、アフリカ諸国向け
が無償ベース、
円借款ベース共に拡大の方向であり、
ように若干ながら増加方向となっている。円借款予
地理的な環境は悪いが、将来の ODA 工事への進出
算は年度内の供与分とは連携していないが、無償と
拡大面からは前向きの対策が重要と目されている。
技協の贈与分は予算の範囲内での実行と概ね制約さ
またわが国当局も、最近インフラ輸出の拡大が政
れている。
府方針でもあり、円借款のアンタイド案件でも、技
最近の円借款実績は年間 1 兆 1,000 億円以上へ拡
術輸出を伴う案件の選定をより多く採用しつつあ
大しており、
先行き当初予算も増加の方向と言える。
る。建設業界も無償工事、円借款工事には、当然
無償と技協予算は、2012 年度から若干増加しつつ
JICA の準備調査の段階からの進出対策が重要とさ
あるが、今後も継続するかは財政悪化の中で難しい
れている。円借款の施設工事関連は大小を含めて全
方向と言える。このためわが国二国間 ODA は、当
体の 6∼ 7 割、金額ベースで 7,000 億円程度とされ
20
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
ており、このうち安定ベースで約 3 割、2,000 億円
始されない現状に対し、参加意欲の継続が難しいと
前後の進出が期待されている。
伝えている。わが国企業の円借款商談への進出拡大
表2|わが国建設企業の円借、
無償の受注の推移
(単位:億円)
2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
ODA工事
1,374
664
1,855
563
1,426
円借款
878
127
1,395
295
852
無償資金
協力
496
537
460
269
574
海外建設
全体
6,969
9,072
13,503
11,828
16,029
や被援助国側の経済対策面からも、迅速化対策が急
務と伝えている。
4. 円借款、
STEP実績と予想
政府は、ODA の中心として円借款による支援を
予定しているが、合わせて顔の見える援助の立場か
ら、STEP の推進を実施しつつある。また 2013 年
度から LDC 向けを中心にパートナー借款の採用も
3. 円借款は迅速化対策が急務
実施し、ミャンマー向け 3 件が実施の方向となって
政府は、今後の ODA の中心として円借款の拡大
いる。パートナー借款はタイド借款ではないが、わ
を推進しつつあるが、これまでの実施状況がきわめ
が国企業と被援助国企業の共同参加による対象プロ
て遅く、平均 7∼ 8 年間と伝えている。そのため政
ジェクトの推進が原則となっている。
府は、数年前から迅速化対策に取り組んでおり、国
内的な短縮化は大筋実施済みと伝えている。
STEP 採用は、開始から約 12 年が経過し、最近
の 2∼ 3 年間の実績は以前の約 1,000 億円前後から
現在円借款の調達実行の遅れの問題点の多くは、
被援助国側が LA(貸付協定)後の国内的な手続きや
業者選定が延び延びとなっているためとされる。い
ずれも被援助国側の調達実施面の遅れが大方の要因
で、これらの改善策へのわが国の対応も重要と目さ
れている。
次に STEP 案件の多くは、JICA ベースで詳細設
計を技術協力で実施しており、1 年程度の迅速化と
なっているが、業者選定段階で被援助国側が種々の
理由で決定しないケースも出ている。このため対象
国によっては、LA 段階で JICA の技術協力で調達代
理方式の採用提案なども検討すべきではとの意見も
多い。
今後円借款の拡大のためには迅速化が重要で、
先の対策でも 2 年以内に工事着工の目標も提案され
ており、早期に具体策の実行が要望されている。
関係業界の多くは、円借款の商談に対し、LA 締
結から 4∼ 5 年以上も経過しないと本体の調達が開
表3|最近の円借款供与とSTEPの採用方向
(単位:億円)
2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
STEP
1,229
986
1,934
2,999
2,211
総額
9,797
4,716
10,622
12,265
11,412
(注)2013年度は本誌集計
表4|2013年度のSTEP実績
供与国
(単位:億円)
金額
年度
フィリピン
沿岸警備隊海上安全能力強化計画
187.32
2013
ベトナム
ノイバイ国際空港第3ターミナルビル建
260.62
設計画
2013
ベトナム
案件名
ラックフェン国際港建設計画(第2期、
169.07
道路、橋梁)
2013
ラックフェン国際港建設計画(第2期、
210.51
港湾)
2013
スリランカ
ケラニ河新橋建設計画
350.20
2013
イラク
コール・アス・ベール港整備計画
391.18
2013
ボスポラス海峡横断地下鉄整備計画Ⅱ
429.79
(部分タイド)
2013
ベトナム
トルコ
カーボヴェルデ 上水道整備計画
モルドバ
医療サービス改善計画
合計(9件)
152.92
2013
59.26
2013
2,210.87
2014 8–9
21
2,000 億円程度へと上向きとなっている。しかし供
スで、DD から施工管理のコンサルタント選定まで
与内容では、継続国がベトナム、フィリピン、スリ
可能な限り一括して支援する仕組みの採用が期待さ
ランカなど限定的であり、今後は新規供与国の増加
れている。
が期待されている。
そこで STEP 実績の推移から、2013 年度の国別
供与について記載することにした(表 3、表 4)。
本年度からの主な施設工事案件
6. 無償支援、
無償資金協力のうち、施設工事分野について、本
年度 9 月時点の主な案件リストを記載する(表 5)。
施工管理まで技術支援で
5. STEPはDD、
これを見ても、アジアはミャンマー、ラオス、カン
現在政府は、円借款の STEP やパートナー借款の
ボジア、などである。アジア以外では、アフリカが
実施で、その多くの案件について JICA の技術協力
大部分で、中南米、中央アジアなどにも国別で供与
で DD(Detailed Design、詳細設計)、入札図書づくりま
している。建設業界などが無償支援分野の施設工事
で支援している。しかしその後施工業者を選定する
案件に対し進出するには、アジアの限定国とアフリ
ための施工管理のコンサルタントは、被援助国側が
カ諸国を中心とした対応が重要となっている。
円借款の枠内で、多くの場合競争入札で実施するこ
現在建設業界の多くは、東北災害工事やその他の
とになっている。このため同選定は、順調でも被援
国内工事で需要増とされるが、将来を見通してアフ
助国側の手続きで約 1 年間程度が経過する仕組みと
リカ諸国などの ODA 工事への進出も重要と目され
なっている。
ている。アフリカ向け無償工事は継続国も多く、ま
また STEP やパートナー借款の案件ではないが、
た円借款も 2013 年度から 5 年間で 6,500 億円の供
バングラデシュ都市交通整備計画(約 1,600 億円)に
与もプレッジしている。無償工事と並行して円借款
対し、2012 年度に輪切り方式で円借款を供与して
工事の拡大も期待されるため、建設業界はアフリカ
いる。本件のコンサルタント業務は DD から施工管
向け ODA 工事への進出対策が重要と目されている。
理まで、すべて円借款の枠内でアンタイドの競争入
札で実施され、わが国の日本工営が受注している。
幅広く官民連携で
7. 今後のODA、
通常これまでの同コンサルタント選定は、DD と
政府は、今後の ODA の方向について 11 年ぶり
入札図書づくりまで第 1 段階として実施し、第 2 段
に ODA 大綱を改定し、従来の公的支援中心から民
階で施工管理のコンサルタントを選定し、その後本
間資金とも協調し、官民連携での協力にも積極的に
体分野の業者選定を実施している。しかしバング
取り組む方向と伝えている。加えて GNI ベースで
ラデシュの都市交通整備計画は、DD から施工管理
ODA 卒業の新興途上国にも、わが国の国益を考慮
のコンサルタントまで一括して選定している。この
しつつ案件ベースで支援を検討する幅広い ODA の
ため本件の場合は、DD 調査、入札図書づくりが終
推進を目指している。安倍首相は経済界と協調し、
わると、早速本体分野の業者選定が開始の仕組みと
わが国の技術と資金を動員し、途上国、新興国への
なっている。
首脳外交を通じ、ODA を含むインフラ輸出、資源
STEP の供与も、迅速化面からも JICA の技協ベー
22
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
輸入のトップセールスを進めている。
わが国は、東北大震災による原発事故対策で、こ
ODA 支援も、この 2∼ 3 年来、わが国技術や製品
れからも長く経済財政の負担を強いられる見込みで
の採用を重視した案件形成支援の強化も可能な範囲
ある。加えて貿易赤字が慢性化の方向で、
成長戦略、
で推進している。建設業界を含む関係業界も、今後
輸出戦略の強化が重要政策となっている。ODA 支
の ODA 推進には口も出しつつ、積極的な商談への
援も、従来のように途上国支援中心のみならず、国
参画が期待されている。
益も重視した対応が求められている。このためか
表5|2014年度、
主な施設工事案件リスト(8月現在)
国 名
案件名
コンサルタント
ラオス
国道16号線セコン橋建設計画
セントラルコンサルタント
ミャンマー
教員養成校改善計画
山下設計ほか
ミャンマー
新タケタ橋建設計画
アルメックほか
ミャンマー
シャン州ラーショー総合病院整備計画
梓設計、山下設計
ミャンマー
工科系大学拡充計画
インテムコンサルティングほか
ソロモン
ホニアラ港施設改善計画
ドラムエンジニアリングほか
ザンビア
第3次ルアプラ州地下水開発計画
日本テクノ
セネガル
国立保健医療学校母子保健センター建設計画
山下設計、梓設計
タンザニア
ダルエスサラーム送配電網強化計画
きんでんほか
ブルキナファソ
カヤ初等教員養成校建設計画
マツダコンサルタンツ
ブルンジ
ブジュンブラ港改修計画
パデコ、エコー
モザンビーク
マプト市医療従事者養成校建設計画
マツダコンサルタンツほか
ルワンダ
ンゴマ郡灌漑開発計画
三祐コンサルタンツ
ニカラグア
パソ・レアル橋建設計画
建設技研インターナショナル
パラグアイ
コロネル・オビエド市給水システム計画
協和コンサルタンツ
キルギス
マナス国際空港機材整備計画
日本空港コンサルタンツほか
タジキスタン
ハトロン州ピアンジ県給水改善計画
エイト日本技術開発
タジキスタン
ドゥシャンベ国際空港整備計画
日本空港コンサルタンツほか
2014 8–9
23
特集
ODA案件をめぐるゼネコンの取り組み
溝口 和幸[(株)日刊建設工業新聞社 編集局編集部]
1.はじめに
グラデシュに対しては、首相の歴訪に先立って日本
政府開発援助(ODA)案件をめぐるゼネコン各社
政府が、戦略的 ODA の一環として、今後 4∼ 5 年
の取り組みが進展している。国土の土木・建築に次
で約 6,000 億円の経済協力を実施する方針を表明。
ぐ第 3 の柱とするために海外事業の強化に邁進した
マタバリ超々臨界圧石炭火力発電所、
天然ガス設備、
り、事業量の 2 割以上を海外で確保するような体制
洪水対策などに円借款を供与することを決めている。
の構築を目指したりと、地に足の付いた目標を設定
首相の両国歴訪には、建設関係約 10 社のトップ
した上で、海外事業でも着実に利益を稼ぎ出そうと
らが随行し、政府関係者らに技術力と共に、事業を
さまざまな取り組みを進めている。現地で建設事
着実に遂行する上で欠かせないマネジメント力を熱
業を行う上でのリスクを考慮し、海外事業の軸に
心にアピールしてきた。
ODA 案件を置く社は依然多いものの、ODA 案件
海外事業を展開するにあたり、各社がその主体と
の中でもターゲットを「本邦技術活用条件(STEP)」
して捉えているのがアジア市場である。50 年以上
案件に絞る動きも出つつある。ODA 案件をめぐる
にわたって地域に根ざして事業を行ってきた国があ
ゼネコンの対応をまとめた。
るのに加えて、急速な経済成長が進みながらも政治
情勢が安定した国が多いことがその背景にある。
2. ODA案件には依然熱い視線を送る
内閣改造を終えて間もない 2014 年 9 月 6 日、安
海外建設協会(海建協)が会員を対象に行った 2014
年の海外事業見通しに関するアンケートによると、
倍晋三首相は、スリランカ、バングラデシュの歴訪
経済成長に伴う旺盛なインフラ整備の需要から、多
に出発した。バングラデシュでは、首都ダッカ近
くの会員会社が海外展開の拡大を指向。各社の経営
郊に計画される橋梁事業や、高架式都市高速鉄道
トップは「民間のエネルギー関連工事を確保しなが
(MRT)整備事業などに関し、日本企業の技術力を
ら、大型の ODA 案件を狙っていく。売上高の海外
PR。スリランカでは、唯一の国際空港であるバン
「ベトナムで ODA 案
比率は 20%を目安にしたい」
ダラナイケ空港のターミナルビル拡張工事や国会議
件を連続して受注できた。日系企業の進出が活発化
事堂改修工事への日本企業の参画を提案した。バン
しているミャンマー市場も勉強中だ。東南アジアを
メーンに、鉄道、ODA、日系企業をキーワードに
事業に取り組みたい」
「若手社員やこの業界を目指
す若者にとっては海外での事業は非常に魅力的なも
のになる。東南アジアを中心として日本の ODA 案
件に地道に取り組んでいく」などと ODA を主体に
市場に積極的に対応する姿勢を見せている。
3. ターゲットはSTEP案件?
アンケートでは、各社が既に豊富な事業実績を抱
杭橋梁をはじめ計画されているODA案件は多い
24
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
えているベトナム、市場開放に伴い日系企業が急速
に再進出しているミャンマーと共に、インドネシア
てまで受注に邁進する日本勢はいないのではない
が有望市場に挙がった。
このうちインドネシアでは、
か」
。当事者となったゼネコンの担当者は、そう現
首都ジャカルタに計画される MRT(大量高速輸送交通
状を説明する。ODA 案件であってもゼネコンの視
システム)南北線 1 期事業の本体建設工事 6 工区のす
線は、STEP 案件、さらにはより手堅いプロジェク
べてを日本のゼネコンがスポンサーを務める共同企
トに移りつつある。
業体(JV)が受注した。政府内には、成長戦略の一
環として力を入れるインフラ輸出のモデルケースに
なるとの見方が浮上している。
4. 注目されるインド政府の対応
STEP 案件は、応札が実質的に日本企業に限定さ
「ODA の動向は全般的に注視しているが、STEP
れる。確かな技術力と資機材で契約を確実に履行す
案件に狙いを絞ってもよいのではないか、という
るがために、コストがやや割高になってしまうケー
意見も社内には多い」
。6 工区のある工区の JV スポ
スがあり、途上国政府の中には、STEP 案件を敬遠
ンサーとして工事に参加しているゼネコンの関係者
する向きもある。
「プロジェクトの費用を抑えれば、
は、ODA 案件をめぐる対応をそう説明する。南北
別の事業を行える。インフラを整えたという足跡を
線 1 期は、主契約の相手先が日本企業がスポンサー
残そうという気の旺盛なトップがいる国は多い」と
の JV となる STEP 案件であった。
あるゼネコン関係者。現地企業が関与する割合が下
STEP 案件に狙いを付ける理由は各社さまざまだ
がってしまうこともあってか、STEP 案件は導入か
が、そのひとつには「ODA 案件といっても競争は
ら 10 年以上が経過するが、年間 1,000 億円程度の
激しい。価格競争に陥るようなムダな競争は避けた
実績に留まってきていた。
(ゼネコン関係者)という事情がある。受注活動の
い」
ただ、そうした状況は変わりつつある。そのひと
上では、韓国勢や中国勢といった外国勢に加えて、
つが年間 3,000 億円ほどの円借款を受け入れている
現地企業も受注活動の競争相手となる。国際協力機
インドである。JICA 関係者によると、日本企業か
構(JICA)によると、本体契約 10 億円以上の 2013 年
らの投資をさらに促す狙いもあってか、インフラ整
度円借款のうち、日本企業が単独または代表企業と
備をはじめ日本との関係を急速に深めようと動き出
して受注できたのは全体の 2 割に留まった。
しており、
「STEP 円借款を要請するようになってき
ある国で計画された ODA 案件の橋梁工事。応札
た」という。これまで同国では、ODA によってデ
を検討した日系ゼネコンが現地を調査したところ、
リーなど主要都市での地下鉄事業や、デリーから商
基礎の地盤が強固なことが判明し、設計図書の仕様
業都市ムンバイに至る貨物専用鉄道などの整備が支
では別の対応が迫られることが分かった。意見照会
援されてきている。
を求めた発注者の応対は「そのままでいきます。実
同国では 5 月に 10 年ぶりの政権交代が行われ、
行できなかった場合の措置は明言できません」とい
最大野党であった人民党のナレンドラ・モディ氏が
うもの。このゼネコンは応札を断念したが、別の国
首相に就いた。インフラ整備をめぐっては前政権を
のゼネコンが工事を受注したという。
「価格競争を
踏襲する方針を打ち出しており、着実な投資が引き
避けるのは当然であるし、こうしたリスクをおかし
続き期待されているところである。モディ首相は、
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25
周辺国以外では初となる本格的な外国訪問として、
設技能訓練校を ODA で支援している。日本の建設
8 月 30 日に来日した。
会社が設立した訓練校で、ベトナム人労働者を技能
9 月 1 日に行われた安倍首相との首脳会談の後の
実習生として日本へ派遣する前の研修機能を担う。
記者会見では、今後 5 年以内に、日本の対印直接投
日本の建設技能者不足を補うと共に、将来は優れた
資とインドに進出する日系企業数を倍増する目標を
技能を身に付けた現地の建設作業員としての活躍が
設定したことが報告された。安倍首相はインドが進
期待される。
める高速鉄道網整備計画に日本の新幹線技術を導入
ODA 案件の工事現場では、ローカルスタッフだ
できるよう、資金・技術を支援する意向を表明。さ
けでなく、日本人の新入社員の育成を進めている社
らに原発輸出の前提となる原子力協定の早期妥結に
がある。社会人としてのスタートを海外で始めた第
向け、交渉を加速させる考えを示した。新幹線整備
1 陣が帰国し、日本の本社などで勤務を始めた社も
に関しては、日本政府のインフラ輸出政策の先行き
あり、ODA は、工事受注の上積みと共に、ゼネコ
を左右するだけに、その動向が大いに注目される。
ンの職員や建設作業員の育成にも活用されている状
さらに安倍首相は今後 5 年間で、インフラ整備や農
況である。
村開発などの分野で ODA を含む 3.5 兆円規模の官
民投融資を実行する考えも表明した。
6. 終わりに
インドでは、日本の多くのゼネコンのほか、舗装
ODA 関連で 6,000 億円規模のインフラ案件が期
会社なども建設事業を展開している。
「労務や工事
待できるとされるアフリカをはじめ、有望市場は
(大手舗装会社)などで収益
エリア周辺の環境の影響」
各地にある。海外事業に前向きなゼネコンは多く、
の確保に苦労している社もあるが、有望市場のひと
ODA 案件だけでなく、現地資本からの受注にも邁
つであり続ける見通し。JICA によると、インドで
進している。ただ国内はというと、東日本大震災の
は本体契約 10 億円以上の円借款は、13 年度に 37 件
復興事業が本格化している中で、安倍政権の経済財
あったが、契約先に日本企業が入っていたのは 2 件
政政策の効果から、民間の設備投資が活発化し、各
しかなかった。首脳会談を経て今後 STEP 案件にど
社とも豊富な手持ち工事を抱えている。
「国内と海
ういったプロジェクトが組み込まれてくるのか、現
外、ふたつの市場は両にらみだ」
。国内外で海洋・
地政府の対応が注目される。
港湾開発を手掛けるあるマリコンの経営トップはそ
う語る。経営資源は限られるものの、国内市場が縮
5. 人材育成にも活用中
小する時代をにらめば、海外市場から視線はそらせ
ODA 供与国の中には、経済成長に伴って建設産
ない。政府の積極的な外交姿勢と相まって、STEP
業以外への人材流出が目立ち始め、日本国内と同様
案件をはじめ ODA 案件に対する各社の取り組みの
に労務不足が表面化してきた国もある。現在 JICA
進展が期待されている。
では、ベトナム北部で日本の建設会社が運営する建
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特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
特集
平成26年度ODA要望活動と今後に向けて
鈴木 恵[(一社)海外建設協会 国際企画部部長]
本年(2014 年)は、日本の ODA の歴史が「60 周年」
を迎えた大きな節目の年です。
1. 平成26年度ODA要望の概要
要望項目については、当協会の会員企業全社を対
平成 25 年(2013 年)度の当協会会員企業の海外建
象に実施したアンケート調査をベースに、無償研究
設受注実績は、前年度対比 35.5%増の約 1 兆 6,000
会、有償研究会における検討作業を経てとりまとめ
億円となりましたが、ODA 事業についても、無償
ました。当協会では ODA 事業の実施上の課題につ
資金協力事業は 574 億円、有償資金協力事業は 852
いて、ODA 要望実施後も随時、政府関係各省及び
億円となり、前年度に比べ、合計で約 2 倍の実績と
JICA と意見交換を行っており、緊急の課題につい
なりました。当協会の会員企業は、昨年(2013 年)、
ては、その都度、個別に要望を実施し、当協会会員
「わが国の顔
世界の 27 カ国で ODA 事業を受注し、
の声ができるだけ早く、正確に諸問題の改善に反映
の見える援助」の担い手として活動しています。
されるよう努めています。
現在、11 年ぶりに日本政府が ODA 大綱の見直し
本年度の ODA 要望については、昨年同様「ODA
作業を進めていますが、ODA に期待される役割の
共通」
、
「無償資金協力関係」
、
「有償資金協力関係」
、
多様性と重要性が増しているなか、建設業界におい
「海外進出企業への支援」の 4 つのパートに大別し、
ても、今後も積極的に ODA 事業に取り組むことが
とりまとめました。本年度の要望項目の骨子は以下
期待されています。
の通りです(誌面の制約上、要望書の本文、添付資料、参
しかし一方で、ODA 事業の最前線の現場では、
考資料の掲載は省略します)
。
コントラクターにとってきわめて大きな負担となる
問題が発生しており、ODA 案件を実施している会
平成26年度 わが国政府開発援助等に関する要望の骨子
員各社からは、制度上の改善を望む意見が多く寄せ
ODA共通 られています。
当協会では、ODA 関係各省及び JICA に対する
改善の提案を盛り込んだ ODA 要望を昭和 63 年度
(1988 年度)から開始して以降、毎年継続して実施し
ており、今年で 27 年目になります。
当協会の要望に対する最近の成果としては、無
1. ODA 事業の充実、強化
(1)ODA 予算の拡大
(2)日本の顔が見える援助を目指して
(3)官民連携のさらなる強化
2. ODA 事業のすすめ方
(1)事前調査の充実と設計精度の向上
償案件における入札期間の延長、積算数量の開示
(2)先方政府負担事項の徹底指導
への取り組み、有償資金協力事業では、円借款の
(3)発注機関の事業監理能力向上のための活動
戦略的活用の拡大に関連したものがあります。政
3. 税金問題とその解決
府関係各省及び JICA のご関係者の方々には、改め
て日頃のご協力、ご尽力に対し心から感謝申し上
げます。
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無償資金協力関係
(3)土地収用費用への円借款の供与
1. 現地関係者会議の開催
(4)迅速化のためのモニタリングと協議の仕組み
2. 契約関連の改善
作り
(1)設計変更への適正な対応
❶ 設計変更手続きの迅速化
海外進出企業への支援
❷ 合理的な新単価決定方式の採用
1. JICA 海外投融資制度の改善
(2)業者契約書フォームの見直し
2. 貿易保険の弾力的な運用
❶ エスカレーション条項の設定
❷ 不可抗力の発注者責任条項の明記
上記の要望事項の骨子のうち、下線を付した事項
❸ 設計変更の手続きの明記
は、本年度の新規の要望事項です。それらの要望に
(3)国債(国庫債務負担行為)工事の支払いの改善
至った背景や要望内容について下記により補足し
(4)支払い条件の改善
ます。
3. 予備的経費の適用拡大
4. 入札関連の改善
〈ODA共通〉
(1)事前説明会の開催
1.(3)官民連携のさらなる強化
(2)入札質疑回数の複数化
インフラ市場の競争激化の状況の中、他の先進国
(3)複数通貨での応札
に官民連携強化の動きがあることから、官民連携の
さらなる強化を要望する。
有償資金協力関係
1. 本邦企業の受注率向上
「本邦技術活用」条件円借款(STEP)のあり方
(1)
❶ 工事価格の低減と付加価値の向上
〈無償資金協力関係〉
1. 現地関係者会議の開催
アフリカ、ミャンマー等の新しい市場では、治安
❷ 被援助国への啓蒙活動
や発注者の経験不足等の問題が多いため、発注者、
❸ STEP 案件の入札資格の厳格化
請負者、コンサルタント及び JICA による定期的な
(2)一般アンタイド案件における受注率向上
現地関係者会議の制度導入を要望する。
(3)ライフサイクルコスト等を考慮した入札の
2.(1)設計変更への適正な対応
検討
2. 契約関連の改善
(1)JICA 円借款調達ガイドラインの厳守
(2)紛争裁定委員会(Dispute Board)の推進
3. 有償工事の迅速化等
(1)入札、契約の迅速化
(2)適切な入札期間の確保
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特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
❶ 無償工事の工期は短いため、設計変更手続きの
迅速化を要望する。
❷ 設計変更の工種が新規に追加される場合には、
日本の公共工事と同様に、積算単価に落札率を
乗じることなく、コンサルタントとの協議によ
り合理的な新単価決定方式の採用を要望する。
2.(2)❸設計変更手続きの明記
実現させるため、品質や環境等の非価格的要素
契約書フォームに設計変更の手続きが明記されて
の評価方法、本邦企業の受注を条件とする非価
いないため、契約の当事者である発注者の権利と義
格的な要素の評価方法、本邦企業の受注を条件
務を入れた透明性と公平性のある表現により明記す
とする資金供与の可能性等、戦略的な施策の検
ることを要望する。
討を要望する。
(3)ライフサイクルコスト等を考慮した入札の検討
2.(4)支払い条件の改善
マイルストーン(出来型方式)と出来高方式を、案
件の特性を総合的に考慮した上で合理的に決定する
高品質による長期的なライフサイクルコスト及び
本邦企業が得意とする環境と、防災技術等に対す
る技術評価を考慮した入札の検討を要望する。
ことを要望する。
3. 有償工事の迅速化等
4. 入札関連の改善
下記の改善を要望する。
(1)大型案件、紛争終結国の案件、施工難易度の
高い案件について、事前説明会の開催
(2)入札質疑(clalification)回数の複数化
(3)急速な為替変動への対応として、複数通貨で
の応札の導入
下記の改善を要望する。
(1)被援助国の入札契約の迅速化
(2)適切な入札期間(通常 90 日)の確保
(3)土地収用の迅速化のために、土地収用費用を
円借款対象とする。
(4)紛争等の未然防止、解決のため、現地におけ
る G-G ベースの定期的なモニタリングと協議
の仕組みを作る。
〈有償資金協力関係〉
1. 本邦企業の受注率向上
(1)本邦技術活用条件円借款(STEP)のあり方
STEP 制度の改善、案件拡充のため、下記の検討
を要望する。
〈海外進出企業への支援〉
1. JICA 海外投融資制度の改善
現地通貨を含む外貨建ての融資、契約不履行の際
に損害を補填する補償基金の設立などを要望する。
❶本邦調達率の柔軟運用による工事価格の低減と
技術協力や無償資金協力との組み合わせによ
る付加価値の向上
❷ STEP のメリット(低金利、長期借入期間、維持管理
費用の低減等)の被援助国への戦略的な啓蒙活動
❸本 邦技術の技術活用、技術移転に合致する
STEP 案件の入札資格の厳格化
(2)一般アンタイド案件における受注率向上
本邦企業の強みを活かす案件作りや評価方法を
2. 政府関係各省、
JICAへの要望の実施
国土交通省、外務省(7 月 22 日)、経済産業省(7 月
23 日)、財務省(7 月 25 日)、JICA(7 月 30 日)を訪問し、
ODA 要望書の提出と内容の説明及び意見交換を行
いました。国土交通省(稲葉国際統括官出席)、外務省(石
兼国際協力局長出席)には、当協会の白石会長自ら出席
し、要望を実施しました。また、各要望先には、無
償研究会(三瓶座長:大日本土木)、有償研究会(浅井座長:
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大成建設)の研究会役員に同行いただき、事務局は山
他 ODA 全般について、意見交換の機会をいただい
口専務理事以下役員、担当職員が出席して要望を実
ております。
施しました。
今回の要望にあたり、外務省から主に次のような
ご意見をいただきました。
(1)国土交通省
国土交通省には、日頃、会員各社との意見交換会
をはじめ、具体の案件に係わる相談窓口として会
・ 本年は日本の ODA が 60 周年を迎え、ODA 大
綱の見直しの年でもあり、大きなポイントなの
でご支援をいただきたい。
員企業に好評な「海外建設ホットライン」を通じて
・ ODA 予算の拡大については、円借款だけでな
ODA に関するさまざまなアドバイスとご支援をい
く、無償資金協力、技術協力も大切であるとい
ただいております。
う事を関係者の方々に周知していただきたい。
今回の要望にあたり、国土交通省から主に次のよ
うなご意見をいただきました。
・ 税金問題については、先方政府と協議を重ね、
粘り強く解決していく。
・ 国交大臣によるトップセールス、海外でのビジ
・ 無償事業の「現地関係者会議の開催」について
ネスマッチング、法制度整備支援等について、
は、全ての案件というわけにはいかないが是非
引き続き、省内の連携を図り、業界の意見も良
検討したい。
く聞いて対応していく。
・ 住民移転や土地収用問題などの先方政府負担事
項については、相手国政府も困っているので、
国交省では日本国内における手続きの事例やノ
ウハウを提供している。
・ 工事代金の未払い問題等についてトップによる
・ 無償事業の「予備的経費の適用の拡大」について、
全案件への適用の要望が強いということは理解し
たが、なかなか柔軟にいかない側面もある。
・ STEP と技術協力、無償資金協力との組み合わせ
については、我々も是非やりたいと思っている
のでしっかりと検討していく。
働きかけを行い、ベトナム、スリランカ等で改
・ STEP の戦略的な啓蒙活動については、どうやっ
善の動きがある。問題がある場合には、まず相
て日本の技術の優位性を先方政府に説明するの
談してほしい。
かが非常に重要である。
・ STEP 案件の入札不調、1 社入札問題について
・ ライフサイクルコストについて、一般論として
は、相手国側の事情も考慮して対応する必要が
日本企業の品質が良いというのは理解している
ある。
が、具体的な説明材料が必要である。
・ 第 3 国との価格競争を克服するには、相手国政
府に対し、日本企業の品質重視を強力にアピー
ルする必要がある。
(3)経済産業省
経済産業省からは、今回の要望にあたり、所管す
る円借款事業について主に次のようなご意見をいた
(2)外務省
外務省とは必要に応じ、無償工事、有償工事その
30
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
だきました。
・ インフラ整備事業に対する途上国の出資を伴う
円借款の活用(EBF:Equity Back Finance)について
・ PPP の推進を図るため、
新たな制度として、
「VGF
制度改善を行い、今後、候補案件の組成を加速
の原資に対する円借款供与」
、
「SPC に対する途
していく。
上国出資へのバックファイナンス(EBF)」を創
・ 現地通貨建ての海外投融資については、最初の
案件はインドネシアで実施しており、現地通貨
ルピアで様子を見る。その後状況を見て、他の
外貨へ拡大していく。
・ 円借款のさらなる迅速化に向けたセクター・プ
ロジェクト・ローンの本格活用を目指す。
・ PQ と本体入札の一体化の積極活用、標準入札書
設したが、業界のニーズや案件に結び付く可能
性を教えてほしい。
・ PPP 事業に円借款を活用できるやり方を導入し
たが、良く機能していないので、活用しやすい
方法があれば教えてほしい。
・ 今後、アフリカ、中東地域の有償案件も増えて
くるので、関心を持っていただきたい。
類の使用義務化を速やかに実施する。
・ STEP 制度の 1 社入札問題について、透明性を
確保するためには複数社の入札が必要である。
・ 本邦調達比率の 30%、STEP 案件の入札資格、
主契約者条件の緩和について、実際にどのよう
な状態が望ましいのかについて今後も意見を聞
きたい。
・ アフリカ地域については、手探りの状況であり、
参画できる案件について考えを聞きたい。
(5)
JICA
ODA 実施機関の JICA には、日頃、ODA の制度
全般をはじめ、個別案件について、具体的な課題の
相談や意見交換を実施いただいています。
今回の要望では、JICA 側のご配慮により、昨年
度に引き続き、JICA の関係部長に要望内容をご理
解いただくため、定例の JICA 内部の部長会議の場
をお借りし、約 30 名のご関係者にご出席をいただ
いて要望と意見交換を行いました。
(4)財務省
外務省、経済産業省と共に円借款を所管する財務
省からは、今回の要望にあたり、主に次のようなご
JICA 側からは、要望の各事項についてそれぞれ
回答をいただきましたが、主に具体的な検討がなさ
れているものについて、
次の通り説明がありました。
意見をいただきました。
〈ODA共通〉
・ STEP を受け入れる国が限られてきており、
・「日本の顔の見える援助」の一環である「日本
STEP を今後活用していくには官民挙げて努力し
防災プラットフォーム」との連携による新しい
ていく必要がある。
ODA モデルの形成については、日本政府とし
・ 工事価格は安い方が良いという国が多いので、
日本の技術のメリットも示しつつ、価格の差を
埋める努力をしなければならない。
て力を入れているので、JICA で案件形成をして
いく。
〈無償資金協力関係〉
・ STEP は価格が高いという問題に対しては、コア
・「現地関係者会議の開催」の実現について、
現在、
な技術は使いつつ、全体としてどうやって価格
外務省と協議しており、まず、アフリカの土木
を低減するかを検討しなければならない。
案件について、着工前にコンサルタント、コン
2014 8–9
31
トラクター、JICA が参加する打合せの具体化を
詰めている。
・ 設計変更による新工種での「合理的な新単価決
・「有償工事の迅速化」については、我々の最大の
テーマであり、検討中である。個別案件について
問題がある場合には、速やかに相談して欲しい。
定方式の採用」について、現在、国内の公共工
〈海外進出企業への支援〉
事積算単価を参考として見直し作業中である。
・「JICA 海外投融資制度の改善」について、現地
・「業者契約書フォームの見直し」について、現
在、契約形態に係わる基礎研究調査を実施中で、
これに基づき、OCAJI とも相談しながら契約書
フォームを見直していく。
・「予備的経費の適用拡大」(全案件への適用)につい
通貨建て融資の拡大を検討する。ドル建ては現
在認められていないが、政府と協議する。
・ PPP 法の整備支援については、インドネシア、
フィリピンで技術協力を行っており、引き続き
継続する。
ては、今後も外務省と協議を続けるので、業界
からも引き続き声を上げて欲しい。
今後に向けて
3. 要望を終え、
〈有償資金協力関係〉
今回の ODA 要望には、当協会の白石会長以下、
・ STEP 制度改善について、契約ロットの適正化、
無償研究会、有償研究会の座長など役員各位にご協
関心の低いパッケージの二国間タイド化の工夫
力をいただきました。また、政府関係各省、JICA
など、STEP 案件に参加しやすい条件の検討を
の関係各位には真摯にご対応いただき、
例年以上に、
行っている。
より前向きで率直な意見交換を行うことが出来まし
・「一般アンタイド案件における受注率向上」につ
た。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。
いて、本邦企業の強みを活かせるような案件作
当協会といたしましては、今後も会員企業の意
りを行っているが、何かアイデアがあれば教え
向を十分に反映しつつ、ODA 事業の円滑な展開に
て欲しい。
資することが出来るよう、継続的に政府関係各省、
・「ライフサイクルコストなどを考慮した入札の検
JICA と協議を行い、しっかりと要望のフォローアッ
討」について、我々も議論しており、一部の案
プを行ってまいりたいと考えております。関係者各
件で既に導入をしているが、非常に評価が難し
位におかれましては、今後ともよろしくお願い申し
い。具体的な提言があればいただきたい。
上げます。
32
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
特集
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
プルイット排水機場緊急改修工事
インドネシアにおいて半世紀前に建設されたポンプ場の無償資金援助による改修工事
前場 洋之 [(株)安藤・間 ジャカルタプルイット作業所 所長]
1. はじめに
東西約 5,400km にわたる島嶼国、インドネシア
共和国における当社の歴史は古く、1964 年南部カ
リマンタンにおけるリアムカナンダム施工まで遡
る。爾来 50 年間、ODA プロジェクトを中心に、ダ
ム・調整池はもとより地方ハブ空港や熱帯雨林セン
ター建築物などジャワ島をはじめ、多くの島々にお
いて広く建設工事に参画してきた。土木工事の現場
は地方都市や山岳地帯に位置することがほとんどで
あったが、この度、首都ジャカルタにて既存排水機
場の改修工事を行う機会を得た。
図1 放水路による河川水 回とプルイット排水機場位置
2. 工事概要
ジャカルタは、人口密度が東京・横浜の約 2 倍と
本工事には東排水機場本体の再建設と共に、同様
いう過密状態で、1980 年以降地下水の過剰汲み上
のパイピング現象が懸念される中央および西排水機
げにより急速に地盤沈下が進行し、排水路整備不足
場も含めた全排水機場の前面に防潮堤を新設する工
も重なって毎年のように洪水被害が発生している。
事も含まれる。
ジャカルタ上流のボゴール山地で降った雨は、以前
は同市を貫流するチリウン川を流下していたが、度
重なる洪水を防ぐため現在では東西放水路の建設に
より中心部を左右に迂回して流れる仕組みとなって
東排水機場改修
(築50年)
中央排水機場
(築28年)
西排水機場
(築13年)
いる。プルイット排水機場は、このふたつの放水路
に挟まれた中心部の約 80% にあたる 34km2 に降った
雨水と生活排水を一時調整池に貯め、ポンプ圧送で
海へ排水する役割を担っている。中心部には日本大
使館はじめ大統領官邸など、首都の重要機能が集中
防潮堤新設
図2 プルイット排水機場(改修後)
するため、プルイット排水機場はジャカルタ洪水対
策上の最重要施設に位置付けられている。排水機場
工事名称:プルイット排水機場緊急改修計画
は東、
中央、
西の 3 つのポンプ場(図 2)から構成される。
企業者:インドネシア公共事業省
2009 年 2 月に発生したパイピング現象により海水が
施工監理:八千代エンジニアリング株式会社
調整池内に逆流し東排水機場の一部が損壊し、運転
施工場所:インドネシア共和国ジャカルタ特別州
停止状態に陥ったため、本改修工事が 2012 年 3 月、
工期:2012 年 3 月 27 日∼ 2014 年 11 月 15 日
日本の無償援助工事として契約し、
工事開始となった。
2014 8–9
33
工事内容:
東排水機場工事
・建築:鉄筋コンクリート造 3 階建て
床面積 約 400m2
鋼管杭基礎 φ 1.0m、 L=31 ∼ 39m
・排水設備:排水用ポンプ 5.0m3/ 秒、 3 基
・作業構台:覆工板形式 調整池内 3 基、海上 1 基
・土留工:鋼管矢板一重締切 φ 0.8m、 L19.5m
写真1 東排水機場改修工事(鋼管矢板締切)状況
鋼管矢板二重締切 φ 1.2m、 L21.0m
防潮堤工事
・自立式鋼管矢板 φ 1.2m、 L=22.5m
3. 東排水機場改修工事
(1)既存排水機場の状況と障害物
工事はまず、半世紀前にオランダの援助で建設さ
れた旧東排水機場の取り壊しから開始したが、竣工
図や工事写真などの既存構造物の形状を把握できる
情報はほとんど入手できず、基礎杭に関する資料も
皆無であった。そのため、試掘およびボーリングを
写真2 既設建屋下に出現したPC杭
行いながら慎重に既存建屋・ピットの取り壊しを
行ったが、既設排水機場ピット躯体下には約 200 本
かしながら、工事区域は 1 週間冠水状態が続いたた
もの既存 PC 杭が確認された(写真 2)。
め、復旧・作業再開までに約 1 カ月を要することと
(2)洪水による現場冠水
なった。
障害物に遭遇し工事を思うように進められない
一方、プルイット調整池周辺には低所得者層民家
中、追い討ちをかけるように、2013 年 1 月 17 日ジャ
が密集しており、洪水により孤立した多くの現場付
カルタ市内において大規模な洪水が発生した。洪水
近住民が飲料水・食料の確保が困難な状態に陥った
対策として整備された幹線放水路の一部が決壊し、
ため、工事用船舶により海上から食料・生活物資を
本来この放水路によりジャカルタを迂回する水が一
運搬し、地域支援を積極的に行った(写真 4)。
気にプルイット排水機場の調整池に流れ込んだこと
この洪水による影響で本工事は工事進捗がさらに
で、調整池の水位が一日で 2.5m も上昇した。排水
遅れたため、インドネシア政府側に工期延伸要請を
機場はもとより現場付近の事務所、職員・スタッフ
行ったが、ジャカルタにおける洪水リスク低減には
宿舎も首下まで冠水し、当社職員と現場スタッフ
東排水機場の一日も早い完成が必須である、と逆に
はボートで安全な場所まで脱出し難を逃れた。し
工事促進を要請された。最終的にはクリティカルパ
34
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
スである建築工事の先行着手などの施工手順の工夫
や昼夜作業により、何とか当初工程より 1 カ月早い
2014 年 3 月に東排水機場の運転開始にこぎつける
ことができた。
4. 防潮堤新設工事
(1)隣接排水機場を運転させながらの防潮堤新設工事
防潮堤新設工事は東排水機場前面のみならず隣接
する中央および西排水機場前面も対象となってい
る。東排水機場改修中は中央、西のふたつの排水機
洪水発生前
場によって排水機能を維持する必要があったが、両
排水機場前面部の防潮堤工事は、排水中は工事がで
きないため、排水量の減る乾期に一年ずつ中央と西
の排水機場を交互に停止させて工事を行う計画で
あった。しかしながら着工後、排水機場を管理する
洪水発生後
ジャカルタ特別州から東排水機場が完成するまで中
央・西排水機場は乾季であっても 2 基とも継続運転
とし、
停止させることは許されない、
と通知された。
契約条件とは異なること、東排水機場完成までの 2
年間防潮堤工事の一部中断は工事に大きく影響を及
ぼすことから、当社は当該排水機場の停止を要請し
たが、プルイット排水機場の重要性に鑑み、最終的
にはインドネシア政府側の意見が尊重され、防潮堤
建設のみ工期を延伸して東排水機場運転再開後に施
工を行うことになった。
2014 年 4 月に東排水機場を予定通り当初工期内
写真3 洪水による現場および周辺冠水状況
に完成、引き渡しを行い、同年 8 月現在、残る西排
水機場前面部の吐口構造物を施工中である。
(2)海底障害物撤去
防潮堤新設工事も東排水機場改修工事と同様、障
害物に悩まされた。ジャカルタ近郊海域は汚染がひ
どく、海中では 10cm 程度しか視界が効かないため
潜水夫による調査でも実態把握が困難であった。そ
のため、ボーリングにて工事箇所近辺の障害物有無
を調査した。調査の結果、西排水機場前面の防潮堤
工事区域海底にはコンクリート水路構造物とその下
に PC 杭が存在し、防潮堤本体の鋼管矢板の打設が
写真4 洪水時の地元への食料支援
不可能であることが判明した。そこで、JICA・コ
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35
ンサルタントと協議した結果、
設計変更が認められ、
度も高かったため、土木、機電、設計、建築担当な
海上に設置した構台に日本から輸送した全旋回杭打
ど計 7 名の日本人が従事した。工事期間中、日本国
海底の構造物・
機械(φ 1,500mm 対応 CD 機)を配置し、
大使館、JICA 事務所、コンサルタント含め、工事
PC 杭撤去を行い鋼管矢板の打設を完了させた。
関係者の皆様から迅速な設計変更含めさまざまな支
援をいただき、東排水機場を無事完成させることが
できた。この場を借りて心より御礼申し上げる。残
りの防潮堤新設工事も無災害での早期完遂を目指
し、インドネシア政府側に引き渡すことで、一日も
早くジャカルタが少しでも水難から解放され、住み
やすい都市になってくれることを願う。
写真5 CD機による障害物撤去状況
写真7 完成した東排水機場
写真6 撤去されたPC杭
5. 終わりに
当工事では、隣接する排水機場の運転継続や早期
の運転再開要請など、地元政府から何かと制約を受
けた。さらに既存構造物に関する情報が不足したた
め、支障物などの調査確認により施工品質や安全に
関わる事故リスクを可能な限り排除しながら順次作
業を進めた息の抜けない工事であった。技術的難易
36
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
特集
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
ザンビア共和国ルサカ南部地域居住環境改善計画
越智 克夫[清水建設(株)国際支店ルサカ南部道路作業所長]
1. ザンビア共和国
2. プロジェクト計画背景
ザンビア共和国(かつての北ローデシア)は、南部アフ
ザンビアでは脆弱な交通インフラに加え内陸国と
リカに位置し、コンゴ、タンザニア、マラウイ、モ
いう地理的条件により、他国に比して輸送コストが
ザンビーク、ジンバブエ、ボツワナ、アンゴラ、ナ
高くなっている。こうした状況の下、ザンビア政府
ミビアの 8 つの国に囲まれた内陸国であり、国土の
は「国家 5 カ年計画」を 5 年ごとに策定し、道路網
大部分が高原で、
いくつかの河川が谷を刻んでいる。
の整備を進めている。本プロジェクトの対象地域で
南隣のジンバブエとの国境に流れるザンベジ川(ア
ある首都ルサカ市においても、道路セクター投資プ
フリカで 4 番目の長さの川)には、世界三大瀑布のひとつ
ログラムを策定し、道路網の改善を進めているが、
と称される「ヴィクトリアの滝」がある。
その舗装率は依然として市内で約 65%に留まって
国土面積は 752,614km2(日本の約 2 倍に相当)、人口
いる。
は約 1,350 万人、そのうち約 170 万人が首都ルサカ
道路未舗装地域周辺には低所得者居住地域が多く
市に集中している。首都ルサカ市は、
標高約 1,200m
見られ、排水施設が未整備のため雨季になると至る
の丘陵地にあり、気候は月平均最高気温 24∼ 32 度、
所にぬかるみができ、衛生状態が悪化し、コレラな
月平均最低気温 7∼ 18 度、年間降雨量約 800㎜であ
どの伝染病が発生している。さらに、道路排水が悪
り、雨季(11 月∼ 4 月)と乾季(5 月∼ 10 月)が存在する。
いことにより車両、歩行者の通行が困難となり、病
経済は、独立以来、銅の生産に依存(総輸出額の
院・学校などの基礎的社会施設の利用に著しい支障
60%)するモノカルチャー経済であり、銅の生産量
が生じている。そのため、道路整備をはじめとした
と国際価格の変動がザンビア経済に大きい影響を与
計画的な都市開発が緊急の課題とされている。
えるため、農業や観光などを中心とした産業構造の
改革を進めている。近年は、海外からの投資促進お
よび銅の国際価格上昇により経済は好調で、6% 前
後の経済成長率を維持している。
2012 年に発表された世界平和度指数ランキング
3. プロジェクト概要
本プロジェクトは、
ルサカ市の南部に内環状道路、
接続道路、LS-MFEZ(ルサカ南部複合的経済特区)アク
セス道路を新設する工事であり、交通渋滞の緩和、
では、158 カ国中 51 位で、アフリカで最も平和な
市民の生活環境の改善、地域経済活動の活性化が期
国のひとつとして評価されている。
待されている。
余談であるが、1964 年 10 月 24 日にイギリスか
工事場所:ザンビア共和国 ルサカ市 南部(図 1)
ら独立したザンビアは、1964 年 10 月 10 日に開会
発注者:ザンビア共和国 地方自治・住宅省
した東京オリンピックには独立前の北ローデシアと
実施機関:ルサカ市
して参加していたが、10 月 24 日の閉会時では独立
コンサルタント:株式会社 片平エンジニアリング・
していたためザンビアとして参加し、開会式と閉会
インターナショナル
式とで異なる国名となるという一幕があった。
施工者:清水建設 株式会社
請負金額:2,550,000,000 円
契約工期:2012 年 12 月∼ 2014 年 11 月(24 カ月)
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37
を要した(写真 1)。
工事概要:
道路総延長:14.853km
自社の材料供給源を確保したことにより、現地の
内環状道路:4.875km
建設事情に影響されず品質・工程管理が行えるよう
内環状道路延長部:2.582km
になった。
LS-MFEZ アクセス道路:5.222km
ミニバイパスリンク:1.220km
ベンベラ道路:0.954km
付帯設備工:一式
写真1|採石場
図1|プロジェクト位置図
(2)施工体制
プロジェクト概要の通り、本プロジェクトは一般
的な道路工事であり、特別な工種はない。しかし、
4. プロジェクトの実施
(1)土取場、
採石場の確保
上述の通り、現在ルサカ市では道路の建設ラッシュ
状態となっており、ザンビア国内では信頼できる現
プロジェクトの乗り込み時においてまず課題と
地業者、資機材、熟練した労務の確保が難しい状態
なったのが土取場と採石場の確保であった。ルサカ
であった。そこで、道路本体工事については国外調
市ならびにルサカ市周辺には数カ所の既存候補地が
達を基本とした施工体制とした。
あったが、事前調査の結果それらの候補地から採れ
道路本体工事に必要な資機材は、日本をはじめと
る材料は本工事の要求品質を安定して満足すること
してアジアそしてヨーロッパから調達した。また、
が困難であることが分かった。かつ、近年、ルサカ
SV(スーパーバイザー)、熟練工、技能工についても、
市では道路の建設ラッシュ状態となっていることか
アジア諸国から派遣し、ベースキャンプに宿舎を構
ら、盛土材と路盤ならびに骨材用の砕石の安定供給
え対応した。
が問題となっていた。そこで、自社で盛土材と砕石
国外調達としたことにより、輸出入や就労ビザ取
を確保する方針とし、土取場と採石場の確保に取り
得などに手間を要したが、施工ならびに管理を容易
掛かった。
に行える体制を構築できたと考えている。
自社による土取場と採石場の確保には、土地所有
者との使用許可契約の締結、環境省による環境アセ
スメントの承認など、幾多の関門があり、約 3 カ月
38
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
(3)安全
ザンビアでは、現地下請け業者ならびに現地作業
員の安全に対する意識はまだまだ低いと言わざるを
得ない。たとえば、
ルサカ市内の建設現場を見ても、
5. 終わりに
2014 年 8 月末現在、プロジェクト進捗率が約
ヘルメットなど保護具を着用している作業員はほと
85%と終盤を迎え、アスファルト舗装の最盛期と
んど見かけられない。本プロジェクトでは、以下に
なっている。引き続き、品質・工程管理ならびに安
挙げる日本式の安全管理を行うこととし、現地下請
全管理に努め、最後まで気を抜かず、作業所一丸と
け業者ならびに現地作業員の安全意識向上に努めた。
なって無事竣工を目指している。
・新規入場者教育〈新規入場時〉
アスファルト舗装の出来栄えについては、発注者
〈毎日〉
・朝礼ならびに TBM(KY 活動)
であるザンビア共和国地方自治・住宅省、実施機
・現場安全パトロール〈毎日〉
関であるルサカ市から高い評価をいただいている
・危険作業事前打合せ〈各作業開始前〉
(写真 3)
。また、現場巡回中に近隣住民から「Thank
・安全大会〈月 1 回〉(写真 2)
you!」や「Good Job!」と声をかけられることが
・安全衛生協議会〈月 1 回〉
多くなり、これまで苦労することも多々あったが、
・個別安全教育〈月 1 回〉
彼らの言葉により、この工事に携わることができて
その結果、本プロジェクトでは、現地下請け業者
よかったと思えている。
ならびに現地作業員の安全意識が向上し、全作業員
最後に、本プロジェクトがルサカ南部地域の居住
がヘルメットなどの保護具を常時着用し、かつバリ
環境の改善に寄与することを願うと共に、本プロ
ケードなど安全設備の設置といった安全対策の必要
ジェクト遂行にあたりご指導いただいた発注者、在
性に対する理解が深まった。
ザンビア日本国大使館、独立行政法人 国際協力機
構の関係者の皆様に感謝の意を表します。
写真2|安全大会状況
写真3|アスファルト舗装状況
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39
特集
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
ブータン王国 サイクロン災害復興支援計画
佐野 憲二 [大日本土木(株)ブータン王国 サイクロン災害復興支援計画 作業所長]
1. ブータン王国について
しかし、幹線道路まで徒歩で半日以上かかる世帯が
「ブ」国)は、
中国南西部のチベッ
ブータン王国(以下、
全体の 20% を超えており、道路の整備状態の悪さと
ト自治区とインド北東部のアッサム地方に隣接した
絶対的な不足は、特に農村部において各種社会サー
内陸国である。
ビス・市場へのアクセスを阻んでおり、
「ブ」国の開発
「ブ」国の気候は 6 月から 9 月の雨量の多いモン
における最大の阻害要因となっている。そのため、効
スーン期と 11 月から 3 月の乾期からなり、その他
率的で安全な道路網および橋梁などのインフラ整備が
の月は中間的季節にあたる。気温は冬期である 1 月、
12 月に -5℃近くまで低下し、夏期である 7 月頃に
25℃程度となる温暖な気候である。
「ブ」国の人口は 75 万人(2014 年、IMF〈国際通貨基金〉)
「ブ」国の社会・経済の発展に不可欠となっている。
2009 年 5 月 26 日、27 日に南アジアを襲ったサイ
クロン・アイラは「ブ」国に豪雨をもたたらし、各
地に甚大な被害をもたらした。
であり首都はティンプーである。
「ブ」国の経済状況を見
当プロジェクトは、このサイクロンによって被災した国
ると、ひとり当たり国民総所得(GDP)は 2,728ドル(2014
道 5 号線上のドルコラ、ジグミリング、および国道 4 号
年、IMF)であり、ここ数年の経済成長率も5∼ 10% 程
(レオタラ)
、ケラ、ジャン
線に繋がる農道上のマンデチュ
度(2014 年、IMF)と比較的高い経済成長を続けている。
ビに新橋を建設することによって、破壊された橋梁の復
ただし、食料の多くを輸入に頼り、水力で発電し
旧による地域住民のアクセス、
物流の改善を目的とした。
た電力の大半をインドからの輸出に頼った経済であ
ることもまた事実である。
3. プロジェクトの概要
工事場所:
「ブ」国 シャルパン県、トンサ県
工事期間:2011 年 10 月 28 日∼ 2013 年 4 月 16 日
発注者:
「ブ」国公共事業・定住省(MoWHS)、
道路局(DoR)
コンサルタンツ:(株)アンジェロセック
請負者:大日本土木(株)
請負金額:¥931,242,000工事内容:
ジグミリング橋:PC-T 桁橋 橋長 70m、
上下部工、付帯工事
ドルコラ橋:PC-T 桁橋 橋長 70m、上下部工、
ブータン王国 位置図
付帯工事
マンデチュ橋:橋梁下部工、上部架設用アース
2. プロジェクトの計画背景
「ブ」国は国土の大部分が険しい山岳地帯であり、
道路・橋梁による交通が主要な交通・輸送手段である。
40
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
アンカー工、法面防護工
ケラ橋:橋梁下部工
ジャンビ橋:橋梁下部工
4. 施工体制
●
日本人
作業所長 :1 名
事務担当職員:1 名 土木技術社員:2 名
国内協力業者技術職員:2 名
大工 SV:3 名
●
主要協力業者
PC 桁製作、架設工:(株)安部日興工業
アースアンカー工、法面吹付け工:三信建設工業(株)
●
ブータン人・インド人
ジグミリング橋 PC桁製作および架設状況
事務担当要員:2 名
土木技術者:2 名、
世話役:6 名、
運転手:12 名
重機運転手:15 名、料理人:2 名
他作業員 約 150 ∼ 200 名
5. 施工状況
シャルパン県の国道 5 号線上の 2 橋は、PC 橋新設
工事であり、架設桁架設工法を採用した。PC 主材料、
架設資機材一式を日本から持ち込み施工にあたった。
ドルコラ橋 完成全景
その他の主材料は現地および近隣国からの調達とし
たが、最も苦労を要したのがコンクリート材料の確保
トンサ県で実施された 3 橋は、幹線道路から外れ
である。セメントは当該国の奨励もあり国内産を使用
た農道橋の架け替えに伴う下部工工事であった。幹
したが工場が限られ、また近隣の大型ダム工事に優
線道路から現状の施工箇所(谷底)まで 500m 程度高
先的に支給されたため、かなり前倒ししたセメントの
低差があり、切り立った岩山の脇に仮設道路を通し
納入が必要不可欠であった。骨材として使用した砕
ての資材搬入となった。仮設道路工事が難航をきわ
石、川砂も供給ソースが限定され、かつ供給量が安
め完成が半年遅れたが、何とか工期内に竣工するこ
定しないため、現場近隣に材料ヤードストックヤード
とができた。ここでは、いかに安全に大量の建設資
を確保し、必要量を一気に確保することで対応した。
材を谷底まで安全に降ろすかが工期厳守の鍵になっ
T 桁製作および架設以外は基本的に直傭体制とした
たと考える。
が、元もと 70 万人の人口で建設バブル状態にあった
当該国で労働者を確保することは容易ではなく、不
足分は必要に応じて隣国のインドより調達した。
2014 8–9
41
国民総幸福論は先代国王が提唱した国民ひとり当た
りの幸福を最大化することによって「社会全体の幸
福を最大化する」という考え方である。私が初めて
「ブ」国に赴任した 1993 年は鎖国解禁前であり、確
かにそこには物質的な豊かさのみを追求しない人び
との生活が存在したと感じた。しかし 1999 年の鎖
国解放以降、膨大な情報と物質が世界の秘境と言わ
れた地に押し寄せ、それ以降国内の雰囲気、人びと
の気質が変わってしまったと感じることも少なくな
マンデチュ橋 完成全景
い。
最近では首都の交通渋滞、一部の若者に蔓延す
るドラッグ、就職難、凶悪犯罪、今まで「ブ」国で
聞いたこともなかったような社会問題が発生してい
る。しかし、それらも人びとが当たり前に利便性を
追求してきたことの結果なのかもしれない。
当社では 80 年代の小水力発電工事に始まり、そ
の後のパロ谷農業総合開発計画、ここ数年では、一
連の橋梁架替工事と継続的に ODA プロジェクトに
マンデチュ橋 工事用仮設道路
参加している。明らかに貧しかった国が劇的に成
長・変化をしていく過程で、いろんな問題を抱えな
全体を通して、当該国のようなヒマラヤの入口と
がらも人びとがおそらく望んでいるであろう生活向
いう特異な地形、市場に十分な材料や労務がない中
上の実現に対して、当該工事やわが社がこれまでに
で工期や品質を守り無事工事を終わらせるために、
携わってきたプロジェクトが、その一助となってい
着工当初から最後まで材料・労務の確保に没頭して
れば幸いである。
いた気がする。それが工事の成否の大部分を占めて
最後に「ブ」国政府やプロジェクトに関係する人
びとがこれまで一貫して、ODA であるわれわれの
いると考える。
プロジェクトに対して協力的であり続けていること
6. 終わりに
一般に「ブ」国は「ヒマラヤの秘境の国」
、
「国民
総幸福論」などのイメージで語られることが多い。
42
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
に感謝したいと思う。
特集
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
ルワンダ・
タンザニア国境におけるルスモ国際橋および
国境手続円滑化施設設備計画
森 和也 [大豊建設(株)海外支店 ルスモ国際橋および国境手続円滑化施設設備計画 作業所長]
1. ルワンダ・タンザニアについて
3. プロジェクトの目的
ルワンダは国土面積 2 万 7,000km (四国の約 1.5 倍)、
2
ルスモ地区はタンザニアのダルエスサラーム港を
人口 1,100 万人の内陸国である。国土は緩やかな丘
起点とする、ルワンダ・ブルンジへの物資輸送経路
陵が中心で平均標高が 1,600m と高いため、赤道か
である東アフリカ共同体(タンザニア、ルワンダ、ケニア、
ら 2 度程度南に位置しているにもかかわらず気候は
ウガンダ、ブルンジ)の中央回廊に位置する。中央回廊
温暖である。1994 年に勃発したジェノサイド(内戦
で物資輸送のボトルネックとなっているのが、ルワ
による大量虐殺)を乗り越え、21 世紀に入り近代化が
ンダとタンザニア国境に架かるルスモ橋およびその
進み、
「アフリカの奇跡」と呼ばれている。
両岸に位置する両国の通関施設である。
タ ン ザ ニ ア は 国 土 面 積 94 万 5,000km 、 人 口
2
4,600 万人を有する東アフリカの大国である。
本プロジェクトの完成後、老朽化・損傷の進んだ
1 車線・許容軸重 8t の旧ルスモ橋が、2 車線・許容
国土の大半がサバナ気候に属し雨期と乾期がはっ
軸重 20t の新ルスモ橋に生まれ変わる。また、出国
きりしている。ビクトリア湖、キリマンジャロ山、
手続き・入国手続きを各国 1 度ずつ合計 2 度行って
セレンゲティ高原などの自然資源に恵まれており観
いたものが、新通関施設の完成により 1 度に入国側
光が有力な産業になっている。農業人口が約 7 割を
通関施設のみで処理できることとなる。その結果、
占める。
大型車両の越境手続きに 14 時間程度かかっていた
ものが、プロジェクト完成後 5∼ 10 時間程度に短
縮される。本プロジェクトの必要性、工事完成後の
効果は内陸国であるルワンダの方が大きい。
工事位置図
2. 工事の概要
工事延長はルワンダ側 1.35km、タンザニア側
0.65km、計 2.0km、工期は 31 カ月である。工事
内容はルワンダ、タンザニア国境にかかるルスモ
旧ルスモ橋付近の渋滞状況
橋(L=80m、鋼製箱桁橋)の新設および国境付近で稼働
中の通関施設を廃棄し、両国にそれぞれ One Stop
Border Post と称する新通関施設(総合管理事務所、貨物
検査倉庫、貨物検査場、検問所)をつくるものである。
4. 施工
(1)現場内を横断する国境が工事に及ぼす弊害
本工事は 2 カ国にまたがる工事であることから、
工事着手前に両国関係者(発注者、出入国管理事務所、税関、
警察ほか)の合意に基づく国境間移動の基本ルールを
2014 8–9
43
つくり、できるだけ工事に支障を及ぼさないような
たため、出来高検査時タンザニア側からのクレーム
状態で工事を開始した。しかし、時には国境の通過
が絶えず、承認を得るのにいつも多大な時間を要し
を禁止される工事関係者が発生した。また資機材の
た。また、タンザニアの施設がルワンダに比較し小
移動も手続きに時間を要すると共にさまざまな制約
さいことが、タンザニアのプライドを傷つけたよう
を課せられた(❶工事関係者の通関パス携帯、❷国境間の土砂
で、タンザニア政府関係者の現場訪問時には、彼ら
移動禁止、❸本工事資材移動時の通関手続き義務化など)
。両国
から不平不満を声高にまくしたてられることも多々
にしてみれば国境の管理を厳しく行うのは当然であ
あった、❹現場事務所・キャンプは電気・水道の便
り、われわれにしてみればふたつのプロジェクトを
もよく用地も確保できるルワンダ側に設営したが、
施工しているのと同じ状況であった。
タンザニア側からタンザニア側にも同様のものをつ
特に両国間の競争意識、ルールの違いの狭間で常
くれとのクレームが絶えず、最終的にはタンザニア
に悩まされた。たとえば、❶自国内に他国のサブコ
側に使いもしない事務所・会議室を建てるはめに
ン、エンジニア、労働者が入って働くことに対し、
なった、などのトラブルが続発した。さまざまな問
両国が警戒感と拒絶反応を示したため、労務計画に
題を、コンサル、 JICA、大使館、政府有力者の支
ついてはきわめて慎重な対応が必要となった、❷ル
援により、
ひとつずつ協議しながら今に至っている。
ワンダ側は工事途中から本来本工事では非課税であ
るべき輸入品に対する課税問題が発生した。結局発
(2)工事の経緯
注者が施工業者に代わって関税を税関に支払うとい
ルワンダ側は 2012 年 5 月から通関施設建屋の敷
う無駄な手順が発生し、輸入材の通関手続きに長い
地造成工事に着手した。通関施設建屋工事は 2013
場合は 1 カ月を要するはめになった、❸両国の実質
年 2 月からの着手となった。2013 年 7 月には供用
の工事比率がルワンダ 60%:タンザニア 40% であ
中の旧通関施設を仮設のコンテナ式通関施設に移設
るにもかかわらず、両国との契約金額が同じであっ
した。移設にあたり各政府機関が好き放題に自分の
ルワンダ側全景
タンザニア側全景(右手前が新ルスモ橋)
44
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
希望を主張し始めたため、調整に随分時間がかかっ
5. 終わりに
た。移設後、旧通関施設前のヤードにルスモ橋の架
国境手続円滑化施設は両国が設計に調印している
設ヤードを造成し、地組した手延べ桁・鋼製桁をル
にもかかわらず、
完成が近付いてきた施設を見ては、
ワンダ側からタンザニア側に向け、送り出し架設を
かなりの両国関係者があれこれ注文を出してきてい
実施した。トレーラー 54 台分の架設材・桁材など
る。彼らの要求に 100% 応えることができないのは
はすべて日本から輸入した。架設中は多くの見学者
残念であるが、少しでも使いやすい施設を両国に残
が現場を訪れ、Good job! と称賛してくれた。手延
したいと思っている。
べ式送り出し工法の原理を理解している見学者はほ
最後に、ルワンダ・タンザニア両国が仲よくこの
とんどいなかったと思われるが、新しい橋が架設さ
施設を運営し、本施設がルスモ地区発展のランド
れることに対し彼らの期待感が顔中にあふれていた
マークとなることを期待してやまない。
のが強く印象に残っている。2014 年 8 月現在、新
ルスモ橋は完成し供用開始を待つ状況となっている。
タンザニア側は土地収用の遅れから予定より 3.5
カ月遅れの 2012 年 10 月に工事着手した。ルワン
ダと違い、狭いエリアでクリティカル工事の連続
となったため工期短縮が難しい状況であった。通
関施設建屋の着手はルワンダ側に比べ 9 カ月遅れの
2013 年 11 月からとなり、厳しい工程管理を余儀な
くされている。
2014 年 7 月末現在の進捗率は 92% であり、2014
新ルスモ橋全景(右奥が旧ルスモ橋)
年 11 月の完成に向け施工中である。
2014 8–9
45
特集
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
ベトナム ニャッタン橋プロジェクト第3工区
山下 哲志 [東急建設(株)ベトナムニャッタン橋プロジェクト第3工区 作業所長]
の混雑ぶりである。
1. はじめに
ベトナムの国土は、面積約 34.6 万 km (日本は約 37
こういった状況を踏まえ、近年、JICA をはじめ
万 km )で、南北 1,650km、東西 600km に広がる。
とする各国からの ODA により、都市部では地下鉄
人口は統計によれば約 9,200 万人で、インドシナ半
や高速道路の建設、諸外国からの観光客、ビジネス
島の太平洋岸に平行して南北に伸びるチュオンソン
マンの増加を見込んだ国際空港の整備などが進めら
山脈(アンナン山脈)の東側に国土の大半が属するため、
れている。
2
2
東西の幅は最も狭い部分ではわずか 50km しかない。
細長い S 字に似た国土の形状を、ベトナムでは、
2. プロジェクトの概要
かごを吊るす天秤棒に喩えている。天秤棒の両端に
工事件名:ニャッタン橋(越日友好橋)建設プロジェクト
は大規模なデルタが広がり、
人口の 7 割が集中する。
(第 3 工区)北側進入路工事
北のデルタは、紅河(ホン川)によるもので、首都ハ
工事場所:ハノイ市ドンアン地区
ノイのほか港湾都市ハイフォンが位置する。南のデ
工期:2009 年 4 月 20 日∼ 2014 年 5 月 14 日
ルタはメコン川によるもので、最大の都市ホーチミ
発注者:ベトナム運輸省
ンを擁する。
〈工事数量〉
近年、各国からの外資を受け入れ、急速に成長し
切盛土工:約 950,000m3
ている同国であるが、都市部での交通インフラに関
用排水工:約 14,000m
しては、圧倒的な数のバイク、車に対してその整備
共同溝:約 4,800m
は追いついていないのが現状である。元もと十数年
基礎杭:約 50,000m
前まではテレビでもよく自転車に乗る数多くの人び
舗装工:約 285,000m2
とが紹介されていたが、それらがすべてバイクに
橋梁工:ヴィンノックフライオーバー
取って代わり、さらに車の需要も増えていることか
6 径間連続箱桁 L=240m, W=25m
ら、都市部での交通渋滞は激しく、朝夕のラッシュ
テップリバーブリッジ
アワーでは、バイク同士がぶつかりそうになるほど
7 径間連続合成桁 L=40m × 154 本
全体概要図
46
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
本プロジェクトは越日友好 40 周年を記念するハ
体時には、
それら溶接を溶断しながらの作業となり、
ノイ市中心街と空港を直結する道路プロジェクトの
せっかくの鋼製型枠も転用回数が少なく、まだまだ
一部で、本邦技術活用型の ODA 案件である。パッ
技術開発の余地があると感じられる。また、コンク
ケージは 3 工区に分かれており、第 1 工区はハノイ
リートの知識も決して豊富とは言えず、打設計画や
市街地北側に流れる紅河を横断する 6 径間連続斜張
養生についても基本から指導することが必要であっ
橋を有する橋梁工事、第 2 工区はホン河南側のイン
た。しかしながら、最終的に日本ではあまり見られ
ターチェンジ工事、第 3 工区は北側、国道 5 号線と
ない幅員 25m の連続箱桁橋梁を完成させたことは、
のインターチェンジを含む空港への道路工事などで
ベトナムにおけるわれわれの自信を深めることにも
構成されている。本プロジェクトのさらなる北側、
繋がったことは事実である。
空港への直結道路プロジェクトについても、地元ベ
トナムのほか、アジアの建設業者が参入している。
各国からの観光客、ビジネスマンが増えると予想さ
れる中、空港と市街地中心を最短で結ぶ本道路は全
線開通を 2014 年中としており、目下各パッケージ
とも急ピッチで施工を進めている。
3. プロジェクトの実施
当社が施工した第 3 工区は、約 5km の道路工事
で、2 カ所のインターチェンジ、ふたつの橋梁、4
つのアンダーパスを有する高規格道路である。主に
ヴィンノック橋
農地を横断する線形であったが、いくつもの既存の
灌漑用水、農道を切り回しながらの施工となった。
工事のほとんどを占めた土工事であるが、本プロ
灌漑用水については道路下を横断させるかたちで新
ジェクトはベトナム一の高品質を謳い文句にしてい
しい用水路を設置し、農道については当初完全閉鎖
るだけあって、要求されるスペックが非常に高い。
の計画で進んだが、地元住民の根強い反発を受け、
道路構成である路盤の締め固めに至っては、これ以
急遽アンダーパスを設けることとなった。さらに地
上舗装など必要ないのではないかと思うほどの締め
元住民から、地下交差ではなく現地盤上を往来した
固め度を要求された。また、道路付属物に関しても
いとの要望を受け、
本線の縦断勾配をすべて見直し、
ほとんどが高スペックのものばかりで、ガードレー
2 カ所のアンダーパスを現地盤上に設けた。橋梁工
ルの一部や道路標識など、
その要求品質の高さから、
事について、ベトナムでは日本国内の場所打ち工法
ベトナム国内では調達できないものも数多くあった。
に見られるような木製型枠をめったに使用しない。
工事終盤は、天気との戦いもあり、突貫体制に突
すべて大型の鋼製型枠で、それらをボルト、場合に
入せざるを得なかった。最後に残った植栽作業、現
よっては溶接で固定していく。したがって、型枠解
場内片付け作業にあたっては、一日 300 名を超える
2014 8–9
47
の問題もあると思われ、余計にこの 10%のギャッ
プを埋めるのに苦労することとなった。彼らの主張
は、ここまでやってさらに何を求めるのかというも
ので、たとえば側溝であれば、
「水が流れればよい
のだろう、多少コンクリートの出来が悪くても機能
は果たすのだから」とこうなる。また、橋梁に関し
ても、最終的な美観を求めることに何の意味がある
のかという主張である。つまり、
「橋は車両が通れ
れば十分」ということになる。決して間違ってはい
ないのだが、この価値観の違いを日本レベルにまで
路盤転圧状況
上げていくには、
まだまだ時間がかかりそうである。
工程管理について、よく日本人は世界一時間にう
作業員を動員した。早朝から日が暮れるまで、20
るさいと言われるが、逆に言えば多くの後進国がそ
万㎡を超える途方もない広さの植栽、片付けが毎日
うであるように、ベトナムも例に漏れず、時間は大
続く。しかもその 95%以上を意図的に女性作業員
して重要ではない風潮がある。
工期末が近付いても、
にお願いすることにした。なぜならベトナム人女性
材料費の値段が上がったからと、工事を中断し、工
はとにかく、よく働くからである。
期の延長を発注者に申し入れる元請もいる。またよ
いことか悪いことか、その主張がそのまま認められ
4. 現場の安全・品質・工程管理
現場の安全管理について、ベトナムではまだまだ
安全意識が低く、工事開始当初はノーヘル、サンダ
てしまうところが、ベトナム国内で数多く発生する
工事遅延の原因のひとつになっているのではないか
と感じる。
ルの作業員も見られたが、粘り強い教育の下、よう
こういった気質、風潮が協力業者に浸透している
やく安全に対する意識がある程度は定着したと思わ
中で、いくら元請が言ったところで、それを真摯に
れる。現場内での事故は通算 5 年で 1 回を数えたが、
受け止める協力業者は少なかった。むろん、日本国
死亡事故や重大災害もなくここまできたことは、当
内の専門業者のように、工期に追われれば徹夜をし
社にとっても海外事業での実績として評価できると
てでも仕上げるといった職人気質をここで求めるに
考える。
は限界がある。しかし、毎日開催されるミーティン
次に品質管理について、ベトナム人にとって、ど
グや、週 1 回の工程会議を通じて、本プロジェクト
こまでやればわれわれ日本の元請会社が要求するレ
および工期厳守の重要性を認識させ、それが浸透し
ベルなのか、それを教育、指導するのに多大な時間
た結果、無事工期内竣工を迎えることができたと
を要した。端的に言うと、われわれ日本人は 100%
思っている。
完璧を目指すが、ベトナム人の多くは 90%で満足
してしまう傾向がある。これはその国独自の価値観
48
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
支障物問題および延長経費
5. 用地、
ると地中配線を掘り起こし盗んでいくという事件が
本プロジェクトは日本国内でもよくある、用地未
多発していたため、われわれは夜間セキュリティと
解決段階での発注になっており、工事着手から 5 年
して照明を点灯せざるを得ない状況に追い込まれ
を経てやっと解決に至ったところもある。また、移
た。しかも、これらの費用負担、責任はすべて請負
転、撤去を要するさまざまな支障物もあり、さらに
者側である。また、金目の道路付属物に関しては、
すべての管理者が細かく分かれていて、縦割行政の
現場にそれ専用のセキュリティを配置し 24 時間パ
せいか、なかなか思うように事は進まなかった。当
トロールを行うという、日本国内ではあまり考えら
初工程は全 34 カ月であったが、工期も押し迫った
れない体制を強いられることとなった。日本国内の
32 カ月目でも依然、支障物である 110KV の高圧電
現場の中には、電動工具などを放置し片付けを指摘
線が移設されなかった。そこで発注者と工期延長だ
される場面をよく見かけるが、ここベトナムではあ
けの契約を取り交わし、約 27 カ月の工期延長となっ
り得ない。また、工程もそれに左右され、各協力業
た。
延長経費についても支払いの約束を取り付けた。
者も価値の高い製品は極力ハンドオーバーの直前に
現在、途中までは支払いを受けたが、残りは引き続
納入、設置することが多く、そのため最終工程を何
き粘り強く請求していく所存である。
度も調整する必要があった。
6. 現場引き渡しの曖昧さおよび付随する諸問題
7. 終わりに
本工事には元もと近隣住民の生活道路を改良する
約 5 年という歳月を要した本工事も無事竣工を迎
工事も含まれており、一般的に行われる仮囲いはで
えた。協力業者の中には、毎日、毎日現場のマネー
きない。住宅の目の前で道路改良、拡幅を行うわけ
ジャーから叱られたはずなのに、ジャパニーズコン
であるが、
工事完了後は当然すぐにオープンとなる。
トラクターの下で安全・品質・工程管理の重要性を
ところが、
ここで問題が生じるのが引き渡しである。
認識できたことに対しお礼を言ってくる業者もい
発注者としては、工事全体が終わり、工事竣工証明
が出て初めて引き渡しだと主張し、
請負者としては、
やむなく道路をオープンせざるを得ないところは部
分引き渡しだと主張する。契約上部分引き渡しは可
能となっているが、この問題に関しては着手前に発
注者側ともっと突き詰めて決めておく必要があった
と反省しているところである。
さらに、これに勝るとも劣らない問題がもうひと
つある。公共物窃盗である。現場の金目の資材、特
に鉄筋や鉄製の加工材などは、放置しておくと一晩
で跡形もなくなるという現実を見せつけられた。道
路照明に関しても、他工区では、点灯しないと分か
完成写真
2014 8–9
49
る。本当に技術者冥利に尽きるところである。
に誇れる仕事だと思う。海外プロジェクトでのリス
各メディアで報じられている海外プロジェクトだ
クを数えればきりがないが、そのリスクを抑え、各
が、日本の常識が通用しない国で、言葉やさまざま
国の発注者および協力会社とのコミュニケーション
な問題に日々悩まされながら、日本の技術を伝え、
を図りながら工事を円滑に進めていくこの仕事に、
大型プロジェクトを完成させることは、われわれ建
私は次も挑戦したいと思う。
設人にとって大きなやりがいのある仕事であると共
50
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
特集
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
パキスタン・イスラム共和国
アボタバード市上水道整備計画
金成 祐尚[飛島建設(株)飛島・大日本土木建設工事共同企業体 所長]
1. はじめに
2011 年 5 月、米特殊部隊の作戦により世界的に
設(総延長 20.4km、径 150mm から 500mm の水輸送用塗覆装鋼
管。調圧水槽建設 3 カ所、
水管橋架設を含む)∼浄水場施設(標
一躍有名となったパキスタン・アボタバード市は、
高 1,357m。処理能力一日あたり 17,300m3。沈殿池 2 池、粗ろ過
首都イスラマバードの北東約 50km のところに位置
池 12 池、緩速ろ過池 6 池、調整池 2 池、塩素滅菌設備一式)∼送
します。市街地の標高は約 1,200m。四方を高い山々
水管敷設(総延長 20.6km、径 100mm から 500mm の水輸送用
に囲まれ、軍の駐屯地を中心に病院、学校が数多く
塗覆装鋼管。水管橋架設を含む)∼配水池(6 カ所、標高 1,262m
建ち並び、
夏季には避暑地として賑わいを見せます。
から 1,306m)
。
また、中国まで続くカラコルムハイウェイが市の南
このほかにパッケージには、既存井戸更新 12 カ
北を縦貫し、フンザ、ギルギットなど同国北部の有
所、新設井戸建設 4 カ所、配水池建設 1 カ所(標高
名な観光地への玄関口にもなっています。
1,435m)を含みます。
取水施設 標高1,629m
浄水場 遠景
2. プロジェクトの概要
本プロジェクトは、近年の市域拡大、人口増加、
既存井戸の揚水量低下による給水能力強化の要請を
受け、日本の無償資金協力により上水道システムの
施設を建設するものです。
導水管 標高1,560m
この上水道システムは、山に囲まれたアボタバー
ドの地勢を生かし、周囲の山間に取水施設を建設、
取水∼導水∼浄水∼送水∼配水池まで、動力を必要
としない自然流下方式となっています。
〈工事規模〉
取水施設(4 カ所、標高 1,629m から 1,422m)∼導水管敷
水管橋 標高1,304m
2014 8–9
51
3. プロジェクトの実施
電力事情の悪いパキスタン国にとって、動力を必
要としない自然流下方式の上水道システムは、安定
した水供給に対し非常に有効ですが、高低差を利用
した施設の建設は、険しい状況下での、建設資機材
のアクセスが困難な場所での工事となり、施工計画
の策定には並ひと通りではないものがあります。工
浄水場 標高1,357m
事機械を用いることができず、運搬、揚重作業に人
力、家畜に頼ることが多々ありました。また安全管
理には特に注力し、無事故・無災害で竣工できたこ
とは、安全にも妥協はしない、他援助国とは違う日
本の技術のひとつとして、当該国にアピールができ
たのではと感じています。
緩速ろ過池とアボタバード市街
送水管敷設
粗ろ過池より取水設備方向を望む
4. 終わりに
日本中が一大事となっていた 2011 年 4 月、複雑
な思いと共に着工し、2013 年 9 月に工事は無事完
了しました。現在はコンサルタントによる施設の維
持管理、運営のソフトコンポーネントと共に、同国
によるシステムの運転が行われています。
この施設が日本とパキスタンとの友好をさらに深
めてくれること、また永く大切に使っていただける
ことを願ってやみません。
配水池 標高1,290m
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特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
特集
わが社のODAプロジェクトへの取り組み
(日越友好橋)
ハノイ・ニャッタン橋
Package-1の下部工工事
山地 斉[三井住友建設 ニャッタン橋作業所長]
1. ベトナム事情
東南アジアの中でも日本の ODA 支援を高い割合
で享受するベトナム。大規模なインフラ案件や教
めてもその対価は施主によって調整されるため、エ
ンジニアの権限が制約を受けることになり論争が絶
えない。
育・医療施設の改修や改善、人材育成・職業訓練な
しかしながら、旧体質の目立つベトナム側も関係
ど、さまざまな分野で JICA による国際協力が推進
各所の努力で用地問題による工期延伸経費の支払い
されている。
日越友好橋の冠を持つニャッタン橋は、
の必要性を認識し始めており、一部の支払いがなさ
ハノイ市の中心を流れる紅河に架かる長大橋であり
れていることはわれわれにとって朗報である。
ODA の注目案件である。ランドマークとなる主橋
は、5 つの主塔に支えられた 6 径間連続斜張橋であ
2. ハノイ紅河に架かるニャッタン橋
り完成間近の雄姿が一際目を引く(写真 1)。斜張橋
日越友好橋は、ハノイの玄関口であるノイバイ国
の屋台骨となる主塔を支える基礎には、ベトナムで
際空港からハノイ市中心部へと向かう国際ゲート
初めてとなる鋼管矢板基礎工法が活用されている。
ウェイ関連事業のひとつであり、将来の輸送力強
化、交通渋滞の緩和に対する効果が期待されてい
る。ニャッタン橋は、
主橋とアプローチ橋からなり、
主橋は 6 径間連続合成 2 主 I 桁斜張橋で橋長 1,500m
(ス パ ン 割 150m+4@300m+150m)
、 有 効 幅 員 は 33.2m、
主塔は A 型コンクリート構造で高さ 111m、大規模
な鋼管矢板基礎に支えられる(図 1)。アプローチ橋
は、PC スーパー T 桁橋と PC 箱桁橋形式で橋長は
1,580m(スパン割 11@40m+10@40m+10@40m+340m)、高
写真1|首都ハノイにその雄姿を現したニャッタン橋
さ約 25m の橋脚と橋台は杭径 1.2m と 1.5m の場所
打ちコンクリート杭基礎に支持される。
施主はベトナム交通
ベトナムで工事を進めるには ODA 案件といえど
運輸省 PMU85、設計
も悩みの種が尽きない。用地引き渡しの遅れにより
が長大・大日本コンサ
工事が思うように着手できないこと、その遅れに起
ルタント JV で日本の
因する工期延伸経費の支払いを受けることが非常に
円借款 STEP 案件であ
困難であることが私たちを悩ませてきた。用地買収
る。請負者は、IHI イ
は施主である交通運輸省が主導するのではなく、ハ
ンフラシステム・三井
ノイ人民委員会の責任で実行されるため、施主側も
住友建設の JV、当社
思うように事が運ばず請負者との間でジレンマを抱
は下部工グループとし
えることになる。OCAJI の片務契約リストでも計
て主橋の鋼管矢板基礎
り知れるよう、エンジニアが設計変更の必要性を認
と 主 塔 工、ア プ ロ ー
図1|鋼管矢板基礎と主塔構造
の完成イメージ
2014 8–9
53
チ橋の場所打ち杭基礎と橋脚工事を所掌とする。
後ハイフォン港で通関、そこから 200km の河川を
当社施工範囲の主要工事数量は、コンクリート約
現場まで水上輸送された。鋼管矢板基礎の施工は水
200,000m ,鉄筋が 20,000t,鋼管矢板と鋼管杭は
上施工班と陸上施工班からなり、施工機械のクレー
14,200t であり、その物量の多さを印象付ける。
ンバージなどの大型重機械はシンガポールから調達
3
した。鋼管矢板の打設完了後、
中詰めコンクリート、
3. ベトナムで初めてとなる鋼管矢板基礎
日本で開発された鋼管矢板基礎は、継手を有する
鋼管杭を井筒状に組み合わせたもので、大きな支持
継手管グラウト処理、井筒内掘削と底盤コンクリー
トの水中打設、井筒内排水と山留め工の後、鉄筋ス
タッドを用いて頂版工を順調に進めた。
力が得られるため大型橋梁の基礎工として日本国内
では多用されてきた。このような大規模な鋼管矢板
4. 5基の主塔工
基礎の海外での適用は、ニャッタン橋が初めてであ
鋼管矢板基礎の完了を待って、いよいよ高さ
る。形状は小判形 48.7m × 16.9m、仮設部を含む
111m を誇る 5 基の主塔(パイロン:Pylon)の施工であ
最大長さは 50m、中打ち単独杭を含む鋼管の本数
る。スペインから調達した大型のタワークレーン
は 118∼ 148 本 /1 基である。
が主塔の横でスタンバイ。主塔は鉛直に対して 14
地盤は上層部が沖積シルトと砂、支持地盤は洪積
∼ 22 度の傾斜を有する A 型コンクリート構造であ
砂礫層であり比較的硬質であるため、ウォーター
り、断面形状は基部から頂部に向かって 7 角形から
ジェットとバイブロハンマを併用した最終打撃工法
5 角形へと常に変化する中空断面の鉄筋コンクリー
を採用した(写真 2)。
ト構造である。鉄筋量は中空断面部で最大 550kg/
m3 と密であり、主塔上部には斜材ケーブル定着用
の 14 段の鋼製アンカーボックスを据付け・溶接接
合する必要があるため、難易度の高い施工管理が要
求された。そのため、
セルフクライミング作
業床を採用し安全性を
高め鉄筋のプレファブ
架設を実施して品質
の確保と工程促進を
図った(写真 3)。
写真2|ベトナムで初めての鋼管矢板基礎
セルフクライミング
作業床は、躯体に堅固
鋼管矢板と鋼管杭(中打ち単独杭)は STEP 要件の日
に取り付けられたH
本調達品であり、総本数 632 本、総重量約 14,200t
形鋼製のレールを掴み
を日本より輸入した。これらは、日本港を船出した
ながら油圧ジャッキで
54
特集 わが国の経済協力の現状と見通しについて
写真3|いろいろな苦難を乗り
越えた主塔工
自動上昇する。躯体の傾斜が急な場合には、クレー
た。日本人は国内での経験と施工技術を指導し、ベ
ンで吊り上げるジャンピング形式の作業床よりも施
トナム人は施主との交渉や実務を学ぶ。外国人は日
工性に優れる特徴を持つ。型枠は作業床に支持され
本人を補いつつ自分自身の向上とベトナム人を育
る鋼製システム型枠であり、水平移動は自動油圧
成していく。この組織体制が奏効し OJT(On the Job
ジャッキ、建ちの調整はサポートジャッキを使用
Training)によるベトナム人の育成、ひいては全職員
する。
の実力が大幅に向上し、持続可能な営業活動が維持
過密な配筋に対応するための鉄筋のプレハブ化
できることになる。
は、H-200 形鋼を鉛直主部材とする鋼製フレーム
今年に入って、ハイフォン市でのラックフェン港
に製作ヤードで D51 の主筋と帯鉄筋を組み立て主
道路橋梁工事の契約・着工とホーチミン市でのベン
塔現場へバージ輸送、クレーンで架設するものであ
ルック−ロンタイン J2 高速道路工事の契約に結び
る。セットされた鉄筋籠は先行組と機械継手で接合
付いたのは嬉しいことである。
され型枠を調整した後コンクリート打設になる。
6. 日越友好橋の完成予定
5. わが社のベトナムでのODA案件への取り組み
日越友好橋の完成予定は 2014 年 10 月(写真 4)。努
当社は、1996 年に国道 1 号線工事を取り組んで
力の甲斐があって主要工事は 8 月一杯で終了、仮設
から、ベトナムでは絶えることなく活動している。
用地の原形復旧と後片付けを残すだけである。日越
これまでの取り組み形態は、キエン橋などベトナム
友好橋の完成をどのように祝福するか、ベトナムと
国営建設会社との JO、タインチ橋やバイチャイ橋
日本の両国のトップレベルで構想が練られていると
など日本企業との JV、ハノイ市環状 3 号線など当
のこと。われわれ関係者にとっては、喜び極まる
社単独とさまざまである。これまでの経験を活かし
ニュースである。日越友好橋がベトナムの国民に愛
て最近では、台頭する優良国営企業との JV 形態へ
され、主都ハノイの経済発展に大きく寄与すること
と変遷しつつある。
を祈念する。
ニャッタン橋 PK-1 での現場運営方針は安全施工
と品質確保であり、施主とエンジニアとの協力体制
の維持に努めた。本社技術部門と連携し施工計画を
充実すると共に、日本技術と海外の大型施工機械や
優良サブコンの選定、作業床など海外の特殊技術の
活用を図った。特に主塔工事には経験豊富な外国
SV(スーパーバイザー)と地元労務で組み立てた直営施
工方式で臨んだ。
組織は日本人と外国人、ベトナム人職員から構
成され計画・調達・施工 ・ 庶務の分野で、それぞれ
が重要な役割を担うことにより現場力を高めてき
写真4|完成間近の日越友好橋
2014 8–9
55
海外生活便り
ミャンマー食事情
北山
IHI ASIA PACIFIC PTE. LTD. Chief Representative Yangon Branch
古人曰く、
「衣食足りて礼節を知る」
。近年、飽食が問
また、ミャンマーの首都ネピドーにはこれまで日本食
題となっている日本や他の先進国では実感することが
レストランがありませんでしたが、ついにヤンゴンの人
難しくなってきましたが、OCAJI 会員各社の、特に最
気日本食レストランが支店を出しました。これまで苦労
前線の現場で活躍されている方々は古人の言葉を実感さ
されてきたネピドー駐在員の方々、ネピドー出張の多い
れ、日々苦労されていることと思います。
方々には驚きの朗報です。味についてはヤンゴン店を超
直近ではフレッシュネスバーガーがヤンゴンに進出す
えるべく引き続き創意工夫をお願いしたいところです
るなど、都市圏の食文化の発展が著しいミャンマーです
が、最近の日本食レストラン界では最も大きなニュース
が、その実態はいかに?
のひとつと言えます。
今年(2014 年)4 月からヤンゴン駐在を命ぜられたばか
りで、かつグルメでもない私がミャンマーの食事情につ
いて語るのは甚だ僭越ですが、この国を知っていただく
上での一助になれば幸甚です。
1. 日本食
ミャンマー第一の都市ヤンゴンでは、日本のミャン
マーブームに乗って、多くの日本食レストランが出店し
ています。現地の有力情報誌に掲載されているだけで
も 70 店舗以上あり、駐在員の間では 100 店舗以上ある
のでは? という話も出るくらいです。ちなみに、2014
年 7 月末時点のミャンマー日本人会の会員数は 700 名強
ネピドー出店に敬意を表して(同店の名物メニュー「長崎ちゃんぽん」
)
です。
毎月新たに数店舗が開店しており、鰻、穴子、そば、
2. ミャンマー料理
たこ焼き、などあらゆる日本食が食べられる状況にあり
ミャンマーの食事情を語る上で欠かせないのがミャン
ます。恐らく半数以上が何某かのかたちで日本に関わっ
マービールです。世界的に権威のあるモンドセレクショ
たミャンマーの方が、経営もしくは少なくとも調理して
ンで金賞を 7 回受賞しており、
「とりあえず」は、これが
いるものと思われます。特徴的なのは寿司屋の多さで、
定番です。
前述の情報誌ベースで 10 店舗以上が存在し、やはりミャ
一方、海外出張に行くと、誰しもご当地料理を食べた
ンマーの方にとってもお寿司というのは日本文化の象徴
くなるものですが、駐在員でミャンマー料理を好んで食
のひとつのようです。
べる人はあまりいないように思われます。
肝心の味はといいますと、バラエティに富んでおり、
ミャンマー料理を言い表す場合、多種多様のスパイス
日本でも高級な部類に入る和牛焼肉店もあれば、これは
を使用していないように思われる油多めのカレー、とい
日本食? と見紛うメニュー、
味付けのお店もあります。
う表現が多く用いられるように思われます。ミャンマー
多くの日本男児にとって欠かすことのできないラーメン
の方々からミャンマー料理について「○○は美味しい」
屋は、いくつか評判のよいお店があるとはいえ、さらな
といったオススメを聞いたことはありませんが、日常の
る飛躍が期待されるところです。
食事は間違いなくミャンマー料理です。ミャンマーの方
56
海外生活便り
の事務所にお招きいただいた際はミャンマー料理が出て
きますし、少し郊外に出ると、ミャンマー料理を扱うお
店以外見当たらなくなります。
ちなみに、
ミャンマー料理店と呼ぶ基準について、
ミャ
ンマーの方々にはこだわりがあるように感じます。こだ
わりには二種類あり、ひとつは、タイ料理や他のアジア
料理も扱うお店はミャンマー料理店とは言わない、とい
うもの。もうひとつは、ビルマ族の料理以外、すなわち
ミャンマー国内の他地域の料理、を扱うお店はミャン
マー料理店とは言わない、というものです。確かにラカ
イン族、シャン族などの料理はいわゆるビルマ料理とは
少し違いますが、こうしたこだわりも、ミャンマー人同
シャンヌードルと羽根付き餃子
士の民族意識がわれわれ(少なくとも私)の想像より大き
いことを示しているかも
しれません。
なお、日本人にとって
比較的なじみやすいのは
ミャンマーの誇り、
ミャンマービール
3. 食材
お金を出して外食する分にはあまり困らないヤンゴン
ですが、自宅で安心安全に調理するための食材の調達に
はまだまだ困難を伴います。
シャン料理のようです。
多くの駐在員の方々はスーパーの食材を利用されてい
ビルマ料理が油を多く使
ることと思いますし、出張で来られた方々もヤンゴンの
用し、かなり重たい感じ
スーパーの充実ぶりには驚かれることと思います。特に
が す る の に 対 し、 シ ャ
最近進出した日系某社の業務用食材を取り扱うスーパー
ン料理は、麺類のライン
の誕生により、日本食調理に必要な多くの調味料や加工
ナップが充実しています。
食品は、
ヤンゴンで購入できるようになってきています。
ただ、問題は生鮮食品です。一見充実したスーパーの
生鮮食品ラインナップですが、よく見るとかなり怪しい
ものが含まれており、素人の私にとってその見極めは容
易ではありません。また、ミャンマーの庶民は主に市場
を利用しており、早朝に行くと比較的新鮮な食材もある
ようですが、そこでも足が早い魚などはよいものがそう
そう出回っていません。
食の安全が確保されない要因は、物流インフラの未整
備、品質不良の農薬の過度な使用、上水道の未整備、そ
もそもの衛生意識の不足、などさまざまです。解決まで
には時間がかかると思われ、ミャンマーにおける基礎イ
ヤンゴン郊外のレストランの料理
ンフラの脆弱さの象徴と言い得るかもしれません。
2014 8–9
57
ちなみに、日本人オーナーが丁寧に営業されているお
通常、定番の選択肢となるはずのホテルレストランで
店では、鶏肉のようにミャンマー国内で比較的良質なも
さえ、お勧めできるところが少ないのも一因です。せっ
のが手に入る食材以外は、肉、魚、野菜など、国外から
かく和洋中と揃っているのですから、特に高級ホテルに
調達されることが多いようです。また、無農薬野菜を少
は是非底上げを図っていただきたいものです。
量ながら供給し始めている日本人の方もいらっしゃいま
なお、ミャンマーの方々の間でも接待は盛んに行われ
す。いずれにしても、食の安全の確保には当面お金と労
ているようで、カンドーヂ湖周りの中華料理店にて、持
力がかかり、まだしばらくお腹をこわす日々が続きそう
ち込みもしくは事前に準備させたウイスキーと高級中華
です。
料理でのご接待、というのが定番となっているほか、高
級焼肉も人気があるようです。
4. お客様のためのお店
食に関して、目下ミャンマー駐在員各位を最も悩ませ
今回は、まだ私の経験が乏しいこともあり、ヤンゴン
ているのは、お客様が来られた時のお店選びかもしれま
駐在の視点での報告となりましたが、OCAJI 会員各社
せん。
の中には、ミャンマーの地方都市や都市から遠く離れた
不機嫌になって話が滞らない程度の味のクオリティ、
プロジェクトの現場に社員を派遣されている企業が増え
最低限の清潔感が保たれた個室、ミャンマービールだけ
てきていることと思います。そうした方々のご苦労(特
に依存しないアルコール類のラインナップなどなど。一
にお腹の)は想像を絶するものがありますので、是非お越
定水準以上のお店はない、と開き直りたくなりますが、
しになられた際にはヤンゴンだけでなく、他の地域や現
やはり気分よく過ごしていただき、できればまたお越し
場も訪問いただき、プロジェクトに従事される皆様の食
いただきたいので、お店選びは重要です。
生活を体感していただければと思います。
58
海外生活便り
支部通信
韓国に進出した
外国建設会社の現況
南 鍾国
(株)
フジタソウル支店長
1. 建設市場の開放背景
注を目指して免許を取得し、Fluor Daniel と Bovis は仁
韓国の建設市場が開放されたのは、それまで 50 年間
川新空港建設事業をターゲットとして免許を取得しまし
世界の貿易秩序を守っていた GATT(関税および貿易に関
た。しかし、Bovis は仁川新空港建設事業を失注し 1997
する一般協定)
の後を受けるかたちで WTO(世界貿易機関)
年 4 月 に 免 許 を 返 却 し ま す。 一 方、Bechtel と Fluor
が正式に発足した 1995 年 1 月と言われています。その
Daniel はゼネコンという立場ではなく、CM という立場
後、1997 年 1 月に韓国の建設市場は、政府調達協定に
でプロジェクトに参加したことから、この 2 社はゼネコ
より全面開放されました。
ンとして韓国市場へ参入したとは言えない状況です。
韓国政府は、この建設市場開放に伴い、1958 年に制
一方、中国の建設会社である中国建築工程総公司が建
定された建設業法を 1997 年 1 月に建設産業基本法に拡
設免許を取得したのは、在大韓民国中国大使館新築工事
大改正を行い外国建設会社の免許取得条項を新設、建設
を施工するためであったと思われます。
市場の開放を制度的にも整備しました。
なお、Bechtel と Fluor Daniel については、京
高
1996 年当時、建設市場開放に対して韓国建設業界で
速電鉄事業、仁川新空港建設事業の完了後に、大型物件
は、設計と建設管理など高付加価値な部門は外国建設会
の受注に苦戦したことから、Fluor Daniel は 2001 年 8
社により独占され、労働集約的な施工部門のみを韓国建
月、Bechtel は同年 12 月に建設業免許を返却、中国建
設会社が実施することになり、韓国建設会社は外国建設
築工程総公司*1 も 2012 年 8 月に免許を返却しました。
会社の単なる下請負業者に転落することになる、また、
現在、1996 年度に最初に免許を取得した外国建設会
開放された公共工事の 50%以上が外国建設会社によっ
社 5 社中、免許を維持しながら事業を展開する会社は当
て受注されることになる、と外国建設会社による韓国建
社だけになっています。
設市場の侵食を懸念する声がありましたが、結果的には
そのような心配は杞憂に終わりました。
2000 年以後の動きとしては、2000 年 12 月に大成建
設(日本)、ECON コーポレーション(シンガポール)、コス
モポリタン(米国)、2001 年 7 月にベステク ENG(米国)、
2. 外国建設会社の現況
その後 2003 年度 Bouygues Construction(フランス)、
1996 年 10 月の建設市場開放により、建設業免許を
2004 年度 PB Construction Asia Limited(香港)、JWU
取得した外国建設会社はフジタ(日本)、Bechtel(米国)、
コリア(米国)、2005 年度ケログブラウン(米国)が免許
Fluor Daniel(米国)、Bovis(英国)、中国建築工程総公
を取得しましたが、土木 CM を主業務として事業を展開
司(中国)の 5 社で、免許を取得した海外の建設会社 4 社
している PB Construction Asia Limited を除き、各社は
は世界 Top レベルの会社ばかりで、中には本国の支店
受注低迷により韓国建設市場への参入をあきらめ、免許
名義ではなく、アジアの現地法人の支店として登録した
を返却しました(返却時期など詳細は表 1 を参照)。
会社もありました。
その後、2010 年度に入って、九州総合建設(日本)、
当初免許を取得した会社のうち、当社の場合は 1980
土屋(日本)、ベクトンシンウォン建設(中国)、中国建築
年代からハイアットホテルの株主としてホテル事業を営
股 有限公司(中国)が建設免許の登録を行い、現在免
んでいたことから、韓国の経済および市場の状況につい
許を維持し営業中の外国建設会社は、上記会社 4 社と当
て他の会社より、精通していたこともあり、本業である
社および、PB Construction の合計 6 社です。韓国にお
建設業の展開にも有利な条件を持っておりました。
ける外国建設会社の現況の詳細は表 1 でご確認ください。
Bechtel の場合は、1997 年度に京 高速電鉄事業の受
2014 8–9
59
表1|韓国の外国建設会社の免許登録・返却一覧(2014年8月25日時点)
連番
分野
商 号
営業中
○
国 籍
返却・抹消日
1
土木・建築 フジタ
日本
1996.10.14
2
土木・建築 中国建築工程総公司
中国
1996.10.14 2012.8.16
3
土木・建築 Bechtel Corporation
米国
1996.10.14 2001.12.4
4
土木・建築 Fluor Daniel
米国
1996.10.14 2001.8.11
5
土木・建築 Bovis Lend Lease
米国
1996.10.14 1997.4.11
6
土木・産業 東洋ENGコリア(株)*2
日本
1996.10.14
2000.12.11 2009.9.28
○
7
土木・建築 大成建設
日本
土木・建築 ECONコーポレーション
シンガポール 2000.12.13 2003.8.6
9
土木・建築 コスモポリタン
米国
2000.12.19 2004.9.15
10
建築
ベステクENG
米国
2001.7.19
2003.6.11
11
土木
Bouygues Construction.
フランス
2003.11.7
2013.11.19
12
土木・建築 PB Construction. Asia Limited
香港
2004.2.24
13
建築
米国
2004.5.17
14
土木・建築 ケログブラウン
15
土木
16
17
18
○
JWUコリア
米国
2005.11.17 2008.9.2
○
日本
2010.4.27
建築
土屋
○
日本
2011.6.17
建築
ベクトンシンウォン建設
○
中国
2013.3.14
建築
中国建築股 有限公司
○
中国
2013.11.13
分かる通り、韓国の建設市場は外国建設会社が定着する
7.11中国建築股 有限公司に名称変更
2011.3.15
九州総合建設
表 1 の外国建設会社の建設免許の登録・返却一覧から
備 考
土木免許は2003.1.28返納後、
2003.7.24再登録
8
3. 今後の外国建設会社の進出・活動見通し
̶
再登録
建設会社と JV を組成し、公共工事に挑戦してみました
が、限界を痛感し、日系民間工事にターゲットを絞る方
向に転換しました。
土壌が乏しいと思われます。というのも、市場開放とは
また、外国建設会社が根を下ろしにくい他の理由とし
言っていますが、本当の意味の市場開放がなされている
ては、韓国の建設市場の規模が小さいことも理由のひと
とは言えないからです。たとえば、政府発注の公共工事
つに挙げられます。今年度、世界の建設市場の規模は
市場に参加する場合、入札段階から壁にぶつかります。
10 兆ドルを超える見通しですが、韓国の建設市場は約
言葉の問題から始まり、複雑な入札制度、それに伴う入
0.1 兆ドルにすぎず、さらに、表 2 の通りに市場が縮小
札書類の準備に相当の時間と費用がかかり、外国建設会
傾向にあることも外国建設会社にとって、メリットの少
社には大きな負担が生じます。
ない市場となっています。
さらに、現在、公共事業に関しては、韓国建設会社と
60
登録日
これまで、記載してきた通り、韓国は外国建設会社が
の厳しい価格競争があり、外国建設会社としてはうまみ
定着することが難しい市場のひとつです。市場の拡大、
がない市場環境です。当社も 1997 年と 2000 年に韓国
もしくは制度の改善など外国建設会社にとって肯定的な
支部通信
変化がない限り、今の状況は大きく変わらないと思われ
追うか、施工業務から CM などのコンサル事業形態へシ
ます。現在残っている 7 社は、既に撤退した会社の後を
フトするか、高い技術力を活用できる特化されたニッチ
市場を狙うか、その岐路に立っていると思います。
表2|韓国国内における建設受注額の推移 (単位:兆ウォン)
区分
発注別
工事別
合計
2010年 2011年 2012年
2013年 2014年
(見通し)(予想)
*1 中国建築工程総公司は2007年11月中国建築股 有限
公司として会社名を変更しました。その後、2013年
公共工事
38.2
36.6
34.1
35.4
34.7
11月韓国 山海雲台開発事業のため、免許を再登録し
民間工事
65.0
74.1
67.4
55.2
59.2
ました。
土木工事
41.4
38.8
36.7
32.4
33.3
建築工事
61.8
71.9
65.8
58.2
60.6
住居
31.6
38.7
34.3
27.6
29.5
非住居
30.2
33.2
31.5
30.6
31.0
103.2
110.7
101.5
90.6
93.9
*2 東洋ENGコリア(株)は当初外国業者とは区分されてお
りませんでしたが、現在は持分変動の関係のために外
国建設会社として区分されています。
資料:大韓建設協会、注)2013年下半期以後は韓国建設産業研究
院展望
2014 8–9
61
支部通信
アラブの春から、
エジプトの今
加藤 信悟
大日本土木
(株)カイロ営業所長
1. チュニジアからエジプトに
2010 年 12 月、チュニジアで起こったジャスミン革命
憲法を停止、ムルシー大統領を拘束するという、事実上
の軍事クーデターが発生し暫定政府が発足した。
に端を発した国民の不満爆発は、驚くほどの速さで周辺
諸国に拡がりを見せた。エジプト、リビア、シリア、バー
3. 新大統領就任
レーンをはじめ、イエメンにおいても長期政権に対する抗
その後発生する多くの爆弾テロなどに対し暫定政府
議デモが頻発、武力衝突から内戦状態に突入し、今なお
は、ムルシー氏の支持母体であるムスリム同胞団による
衝突が続いている国・地域もあることは周知の事実である。
ものと非難し、12 月にはムスリム同胞団を『テロ組織』
ジャスミン革命の動きは瞬く間にエジプトに波及し、
に指定すると発表した。これを受け、ムスリム同胞団支
2011 年 1 月には、ムバラク政権打倒を呼びかけるデモ
持者らによる抗議デモが各地で頻発し、多くの死傷者と
隊が首都カイロのタハリール広場を占拠し、デモ弾圧の
逮捕者が出る結果となり、反発が拡がりを見せた。
警官隊と衝突を繰り返していた。しかし、やがて一部が
この後もムスリム同胞団支持者への弾圧は強められ、
デモ隊に合流し始め、また軍も民主化への連帯表明を示
と同時にそれに反発するテロ、自爆テロなども増加傾向
すようになると、警察と軍による強権支配を続けてきた
となり、毎週金曜日の昼の礼拝に続くデモでは、毎回ど
ムバラク政権はあっけないほどの中で崩壊し、2011 年
こかで死傷者が出ているといった状況の中、2014 年 2
2 月 11 日の退陣表明に至った。
月にはシナイ半島で、外国人観光客を標的にした、イス
そして解任
2. 民主選挙で大統領選出、
光の危険さが改めて浮き彫りとなった。
ラム過激派によるテロが発生し死傷者が出、エジプト観
その後、政権は軍最高評議会に委譲されたものの、暫
そんな中、5 月 26 日から 28 日にかけて、EU から派
定期間が長引いたためか、民政移管を要求するデモが拡
遣された 54 名編成の監視団が見守る中で大統領選挙投
大し、多数の死傷者を出す結果となった。
票が実施された。6 月 3 日、シシ候補の勝利が選挙公式
『自由公正
2012 年 1 月に人民議会選挙投票が行われ、
党』が第一党となって議会が招集され、5 月には大統領
結果で発表され、続く 8 日、大統領宣誓式においてシシ
新大統領が就任した。
選挙を実施、
6 月のムルシー政権誕生へと繋がっていった。
4. そして今
選挙期間中の発言でシシ候補は、2018 年 6 月期の財
政赤字の GDP 比率を、現在の 14%から 8.5%まで引き
下げることを掲げ、そのためには国家が一丸となり、段
階的な補助金の削減など痛みを伴う改革に、国民の協力
ムルシー氏支持派の女性デモ
と忍耐を説いていた。
そして 7 月 5 日、政府はガソリン、軽油の価格を大幅
このムルシー政権においても、ムバラク時代からの流
れを変えることができず、主要産業である観光業は極
62
に引き上げた。
低オクタンガソリンで 78%(0.9 ポンド / リットルから
度に落ち込み、物価は高騰を続けたため、2012 年から
1.6 ポンド / リットル)、軽油で 64%(1.1 ポンド / リットル
13 年にかけ、ムルシー政権に反発する抗議デモが相次
から 1.8 ポンド / リットル)の上昇で、買占め防止のため
いだが、2013 年 7 月、軍がムルシー大統領を解任して
事前通達は一切ない中での値上げだった。
支部通信
これに伴い、バス・タクシーなどの交通機関は即値
その後、日本政府による ODA 案件はほぼ停止した状
上げが実施され、電気料金の値上げ(補助金削減)も決定
態となり、大きな動きのないまま今日に至ったため、特
されており、タバコ・アルコール飲料の値上げ(増税)
筆すべきトピックスも思い浮かばず、今回、一連の動き
も決定されている。また、燃料価格の上昇により、野
をまとめてみた次第である。
菜・フルーツの価格が 20∼ 50%上昇するとも伝えられ、
ここにきてエジプト国内では第二スエズ運河の着工が
大きく報道され、また日本政府の次期円借款案件のプ
諸々の物価上昇への影響が懸念される。
また、5 月の観光客総数は 76.8 万人で、前年同月の
96.9 万人から 20.7%の減少となったと伝えられている
レッジが報じられるなど、やや明るい兆しが感じられる
ようになった。
が、既に前年同月時点でかなり落ち込んでいることを考
しかし、何と言えどもエジプトは観光立国であり、外
慮すると、全盛期に比べた落ち込み比率は相当大きな数
国人観光客が戻ってくることを願うばかりだが、エジプ
字になっていると思われる。カイロ近郊ギザのピラミッ
ト観光は非常に危険だと言われるようになって久しい中、
ド周辺でも観光客はほとんど訪れることもなく、先日同
失地回復にはまだまだ時間がかかるのではと考えている。
地区を訪れた訪問者の話では、車を降りると同時に物売
りほかもろもろの人間に取り囲まれ、恐怖を感じるほど
の執拗さで、早々に逃げ帰ってきたとのことだった。
エジプトポンド相場
(エジプトポンド/ドル)
5.0
5.5
6.0
ムバラク退陣
6.5
ムルシー政権誕生
7.0 ムルシー大統領解任/軍事クーデター
シシ大統領就任
7.5
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
現在のタハリール広場 占拠当時の面影はなく、
緑の芝生の
上でメッカに向かってお祈りする姿も見られる。
2012
2013
2014(年)
資料:Macrobondより三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
5. 終わりに
2011 年 1 月、カイロのタハリール広場をデモ隊が占
拠し始めたちょうどその頃、筆者は出張でカイロに滞在
していた。ただ当初の大方の予測は、絶大な警察権力に
よってすぐに収束するだろう、という見方であったと記
憶しているが、ここまでもつれ込むとは誰もが予想して
いなかったかもしれない。
タハリール広場下にある地下鉄駅サダトステーションは、
主要乗
いまだ閉鎖されたままになっている。
換駅のひとつだが、
8月現在、
2014 8–9
63
海外受注実績
(単位:百万円) 2. 地域別海外工事受注実績
2014年度
伸び率(%)
1. 月別の海外工事受注実績
2014年度
月
件数
本邦法人
18
155
173
50
108
158
60
123
183
42
99
141
36
130
166
206
615
821
4 現地法人
5
6
7
8
累
計
計
本邦法人
現地法人
計
本邦法人
現地法人
計
本邦法人
現地法人
計
本邦法人
現地法人
計
本邦法人
現地法人
総合計
受注額
9,961
109,447
119,408
73,388
52,932
126,320
31,486
84,743
116,229
96,359
47,700
144,059
161,874
48,444
210,318
373,068
343,266
716,334
2013年度
件数
25
152
177
33
103
136
66
133
199
49
131
180
40
120
160
213
639
852
受注額
10,037
67,556
77,593
17,953
102,405
120,358
60,620
59,975
120,595
52,540
81,427
133,967
28,628
81,771
110,399
169,778
393,134
562,912
*受注額に
よる
地域別
-0.8%
62.0%
53.9%
308.8%
-48.3%
5.0%
-48.1%
41.3%
-3.6%
83.4%
-41.4%
7.5%
465.4%
-40.8%
90.5%
119.7%
-12.7%
27.3%
件数
本邦法人
現地法人
計
本邦法人
中東
現地法人
計
本邦法人
アフリカ 現地法人
計
本邦法人
北米
現地法人
計
本邦法人
中南米 現地法人
計
本邦法人
欧州
現地法人
計
本邦法人
東欧
現地法人
計
本邦法人
大洋州
現地法人
その他
計
本邦法人
累計
現地法人
総合計
アジア
受注額
123
474
597
2
0
2
4
0
4
8
75
83
57
18
75
1
26
27
1
22
23
10
0
10
206
615
821
(単位:百万円)
2013年度
構成比
(%)
350,957 49.0%
184,932 25.8%
535,889 74.8%
2,015
0.3%
0
0.0%
2,015
0.3%
3,729
0.5%
0
0.0%
3,729
0.5%
1,603
0.2%
133,381 18.6%
134,984 18.8%
11,925
1.7%
9,753
1.4%
21,678
3.1%
806
0.1%
5,629
0.8%
6,435
0.9%
132
0.0%
9,571
1.3%
9,703
1.3%
1,901
0.3%
0
0.0%
1,901
0.3%
373,068 52.1%
343,266 47.9%
716,334 100.0%
件数
130
531
661
7
1
8
7
0
7
2
51
53
44
24
68
1
13
14
0
19
19
22
0
22
213
639
852
受注額
伸び率(%)
構成比 *受注額に
(%) よる
123,007 21.9%
205,055 36.4%
328,062 58.3%
13,590
2.4%
32,879
5.8%
46,469
8.2%
9,580
1.7%
0
0.0%
9,580
1.7%
993
0.2%
135,517 24.1%
136,510 24.3%
20,464
3.6%
3,425
0.6%
23,889
4.2%
13
0.0%
1,518
0.3%
1,531
0.3%
0
0.0%
14,740
2.6%
14,740
2.6%
2,131
0.4%
0
0.0%
2,131
0.4%
169,778 30.2%
393,134 69.8%
562,912 100.0%
185.3%
-9.8%
63.3%
-85.2%
0.0%
-95.7%
-61.1%
0.0%
-61.1%
61.4%
-1.6%
-1.1%
-41.7%
184.8%
-9.3%
6100.0%
270.8%
320.3%
−
-35.1%
-34.2%
-10.8%
0.0%
-10.8%
119.7%
-12.7%
27.3%
3. 本邦・現法主要工事〈10億円以上〉
(単位:百万円) 〈8月受注分〉
〈7月受注分〉
国 名
件 名
韓国
E工場
中国
D社工場増築
中国
H社R&Dセンター
香港
クイーンマリー病院改修工事
台湾
埠頭新設工事
ベトナム
ホ ー チミン 都 市 鉄 道1号 線
CP1B工区(地下)
契約金額
会社名
(単位:百万円)
件 名
契約金額
会社名
中国
R社内装工事
1,179 竹中工務店
台湾
住宅新築工事
1,100 鹿島建設
4,628 竹中工務店
ベトナム
Y社工場新築工事
1,286 前田建設工業
7,094 TSUCHIYA
15,395 五洋建設
1,410 清水建設
14,760 清水建設
ベトナム
ホーチミン地下鉄1号線
(CP-1b)
9,840 前田建設工業
タイ
B社工場新築
1,200 大気社
タイ
E社倉庫施設
1,021 戸田建設
シンガポール 地下鉄工事T219
国 名
22,246 五洋建設
シンガポール
地下鉄トムソンライン ガーデンズ
バイザベイ駅およびトンネル工事
インドネシア
工場建設工事
2,531 大林組
インドネシア
ホテル棟新築(追加)
1,207 鹿島建設
19,210 西松建設
4,141 フジタ
ベトナム
高速道路建設工事
6,769 三井住友建設
タイ
T社新工場
1,975 竹中工務店
マレーシア
E社工場新築
3,156 清水建設
シンガポール チュアスフィンガーワン埋立工事
21,900 五洋建設
シンガポール センカン総合病院新築工事
95,900 五洋建設
シンガポール N社プラント土建工事
5,340 清水建設
シンガポール I社事務所ビル2期改修
1,174 清水建設
パシルパンジャン第3期建設工事
シンガポール
(P36-P41)
シンガポール Pショッピングセンター改修工事
17,824 東亜建設工業
1,164 東急建設
トルコ
A社工場新築工事
1,964 安藤・間
米国
事務所新築工事
2,420 鹿島建設
米国
アパートメント新築工事
8,430 鹿島建設
米国
商業ビル新築工事
1,700 鹿島建設
倉庫改修工事
1,929 大林組
インドネシア
T社工場2期増築
1,175 清水建設
インド
H社工場新築工事
4,978 三井住友建設
ウガンダ
西部ウガンダ地域医療施設改
善計画
1,370 岩田地崎建設
カナダ
米国
アパートメント新築工事
2,620 鹿島建設
メキシコ
C社工場新築工事
2,108 安藤・間
米国
倉庫建設工事
2,700 鹿島建設
ポーランド
N社工場増築
2,962 竹中工務店
米国
物流センター増築工事
1,860 鹿島建設
2,260 鹿島建設
米国
倉庫建設工事
メキシコ
B社工場新築
2,310 清水建設
グアム
海軍基地改修工事
1,006 大林組
64
主要会議・行事
とき
ところ
7月7日(月) 浜離宮建設プラザ
8日(火) OCAJI
主要会議・行事
3建設業保証会社平成25年度受託事業報告会
海外要員養成講座−基礎編
11日(金) OCAJI
第5回国際建設リーガルセミナー
15日(火) OCAJI
第4回月例セミナー「ベトナム建設市場の最新事情と課題」
17日(木) OCAJI
海外要員養成講座−応用編
18日(金) 東京建設会館
ベトナム人材育成協議会 理事会・総会
22日(火) 国土交通省
ODA要望
外務省
23日(水) 経済産業省
OCAJI
24日(木) OCAJI
・25日(金) マツダビル
24日(木)
25日(金) 財務省
ODA要望
ODA要望
第5回月例セミナー「平成26年度我が国の経済協力について」
第2回総務委員会運営部会
海外要員養成講座−契約管理編
ODA要望
29日(火) OCAJI
第5回・第6回海建塾(会計編・一般編)
30日(水) JICA
ODA要望
OCAJI
第4回契約管理研究会
8月1日(金) OCAJI
第2回国際協力委員会
7日(木) OCAJI
在クウェート日本大使館
原大使との意見交換会
21日(木) OCAJI
第2回無償研究会
26日(火) OCAJI
第5回契約管理研究会
27日(水) OCAJI
第3回有償研究会
28日(木) OCAJI
第3回総務委員会運営部会
OCAJI
第6回海建塾(現場管理編)
編集後記
わが国建設業の海外活動が順調に展開し、海外受注の増加基調が確
かな軌道を示す状況下、今後、さらに海外展開を促進させるためには、
民間資金運用によるプロジェクトの発掘・形成や、ODA の拡大などが
重要となっている。
近年、途上国においては、経済成長のためのインフラ整備の推進、
そのための人材育成に対するわが国の協力に期待が高まっており、政府
開発援助(ODA)大網の改定が、大きく変化しつつある途上国のニーズ
に対応したものとなることが期待される。
本年度は、官民連携による案件の発掘・形成など、国が推進するイ
ンフラ輸出支援策を追い風に、円借款を中心とした ODA の拡充により、
質の高い援助の実現と、会員各社の建設業を通じた海外活動の機会の
増加に期待したい。 (OCAJI 編集室 I)
2014 8–9
65
©一般社団法人 海外建設協会
Printed in Japan
一般社団法人 海外建設協会
〒 104-0032 東京都中央区八丁堀 2-24-2 八丁堀第一生命ビル 7F
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E-mail:[email protected] HP:http://www.ocaji.or.jp