平成28年10月25日 メイプル耶馬サイクリング ロード活性化の提言 メイプル耶馬サイクリングロード活性化会議 1.はじめに 中津市では、周辺大都市とのアクセスが向上する東九州自動車道開通を観光浮揚の好機 と捉え、中津市全域を流れる山国川の上下流が一体となった振興策を推進していくことと しています。 その山国川と並行し、延長約36kmの「メイプル耶馬サイクリングロード(県道中津山国 自転車道)」が存在します。 このサイクリングロードは、山国川沿いの自然と廃線になった耶馬溪鉄道の名残が調和 することから、日本経済新聞社主催の「全国サイクリングロードランキング」で、平成15 年に堂々の1位(平成22年は2位)に選出されるなど、観光資源として非常に高い魅力を有 しており、休日には家族連れ等で賑わい幅広く親しまれています。 しかしながら、周囲の観光資源との連携がとれていないことやPRの不足から、そのポテ ンシャルを生かしきれていないのが現状です。 このため、サイクリングロードを活かした観光振興策に関するアイデアをまとめるべく、 周辺地域の方々やサイクリング愛好者、観光に関する知見を有する方、地域の観光振興や サイクリングロードの管理を担う「大分県」、山国川を管理する「国(国土交通省)」な どで構成された「メイプル耶馬サイクリングロード活性化会議」を平成28年5月に立ち上 げました。そして3回にわたる会議を開催し、意見交換を行いました。 この「メイプル耶馬サイクリングロード活性化の提言」は、活性化会議の参加メンバー が、意見交換を通して出された観光振興につながる意見やアイデアを取りまとめたもので す。 1 2.メイプル耶馬サイクリングロードの概要 メイプル耶馬サイクリングロードは、耶馬溪鉄道廃線跡を利用した自転車道で、1982(昭 和57)年に全線が整備されました。鉄道跡を利用しているため、勾配も緩やかで初心者にも お勧めのサイクリングコースです。JR中津駅から山国町守実までの約36キロメートルのコ ースで、このうち本耶馬渓町から山国町までの約22キロメートルは自転車専用道路として 山国川に沿って走っています。 (出典:メイプル耶馬サイクリングロードMAP) 耶馬溪鉄道の歴史 耶馬溪鉄道は、1913(大正2)年に開業しました。起点の中津駅から「仏坂」、 「青の洞門」、 「擲筆峰」など山国川沿いに続く景勝地を望みながら、終点の守実温泉駅までの約36キロ メートルを結び、「耶鉄」の名で親しまれていました。1935(昭和10)年に「名勝耶馬渓」 を走る観光路線として、女性ガイドも添乗するなど人気を集めましたが、高度成長期のマ イカーブームの到来による利用客の減少により、1975(昭和50)年に全線廃止となりました。 当時を物語る遺産 沿線には、橋梁、トンネル、駅など数多くの施設が残っており、厚ヶ瀬トンネル1号・2 号(三光地域)や平田駅ホーム(耶馬溪地域)は、国の有形文化財にも登録されています。また、 土木学会の近代土木遺産も数多く存在しており、中でも「山国川第二橋梁」(耶馬溪地域) は、10基の石橋橋脚とゆるやかな曲線が美しく、お勧めの記念撮影ポイントです。 2 レンタサイクル メイプル耶馬サイクリングロードには、レンタサイクルが可能な施設が、沿線に 4 か所 あります。 そのうち、耶馬溪サイクリングターミナルは、中津市の直営施設で、レンタサイクルの みならず、宿泊サービスも実施しており、メイプル耶馬サイクリングロードの中核基地と しての役割を担っています。なお、施設にはフィットネス等の新たな器具も導入されてい ます。 メイプル耶馬サイクリングロード沿線にあるレンタサイクル施設一覧 支所 本耶馬渓支所 耶馬溪支所 山国支所 施設名 サイクリングセンター風水園 青の郷 耶馬溪サイクリングターミナル 一般財団法人 コアやまくに 営業形態 民営 民営 直営 指定管理 108 80 20 8 自転車保有台数 大人用 自転 車 内訳 子ども用 特殊 定休日 大人 中学生 小学生 延長料 利用 料金 乗り捨て 8:00~19:00 9:00~18:00(サイクリング貸出) 8:30~19:00(5月~9月) 11:00~15:00(食事) 8:30~17:00(10月~4月) なし 木曜日(11月は無休) 400 300 100 - 500 100 - 3時間以内 3時間以内 乗り捨て原則不可。相 延滞1時間毎 談により可能となる場 備考 合も。 備考 256 117 78 61 30 15 13 2 電動アシスト:5台 チャイルドシート付:1台 タンデム:49台 チャイルドシート付:12台 特殊 内訳 営業時間 10 6 3 1 ゴールデンウィークと 平成27年10月下旬から 紅葉時だけで、あとは レンタサイクルを開始 少ない。 3 10:00~18:00 火曜日(年末年始:12/29~1/3) 火・水曜日(12月~2月まで) 370 310 260 108 860 なし 370 310 260 100 860 3時間以内 延長1時間毎 延長料1時間(未満)毎 乗り捨て場所は、(耶 馬溪サイクリングター ミナル、青の洞門)付 近の指定された場所の み 宿泊可能施設 自転車は耶馬溪サイク リングターミナルから の借受で、料金等は市 の条例に準じている。 3.提言のとりまとめに向けて行った活動 (1)メイプル耶馬サイクリングロード現地視察会 日 時:平成 28 年 6 月 5 日(日)午後 1 時~ コース:サイクリングターミナル→白地駅 参加者:活性化会議構成員ほか 講 師:井上元氏(耶馬溪鉄道研究家) 講師である井上氏の説明を受けながら、サイクリングロードの走行、視察を行うことで、その現状 や魅力について確認を行った。(集約した意見は、第 2 回会議において報告) (2)しまなみ海道(愛媛県今治市~広島県尾道市)行政視察 日 時:平成 28 年 6 月 29 日(水) 訪問先:今治市役所、NPO 法人シクロツーリズムしまなみ、尾道市役所ほか 『サイクリストの聖地』として人気のある「しまなみ海道」において、現地視察するとともに、関係者 を訪問、サイクリングを活用した観光振興の取り組みについてヒアリングを実施した。(集約した意 見は、第 2 回会議において報告) 4 4.メイプル耶馬サイクリングロード活性化に向けた提言 ■提言の柱(サイクリングロードの活性化による将来像) 「サイクリングロード」および「サイクリングターミナル」を核として、 (ⅰ)耶馬渓地域への継続的な観光誘客を図り、地域への経済効果を生み、(ⅱ)地元 住民の生活に密着し、地域から愛され続けることを目指す。 ■提言の構成要素 Ⅰ.安全で快適なサイクリング環境づくり(ハード面) Ⅱ.地域をつなぐサイクルツーリズム(ソフト面) Ⅲ.サイクルツーリズムの核となる耶馬溪サイクリングターミナル Ⅰ.安全で快適なサイクリング環境づくり(ハード面) (1)安全・快適なロード整備 ①河川敷の木が繁り、風景が見えにくい箇所があるため、景色を広げる必要がある箇所 の絞込みをし、木の伐採を行うこと。 ②落石や枯れ枝が多く自転車のパンクリスクが高いことやアスファルトから木の根っこ が出ているなど危険な箇所があるためメンテナンスをすること。 ③車道を横断する必要がある箇所(耶馬溪町宮園の交差点など)については、安全に配 慮し、必要に応じて改善すること。 ④上記①~③の整備が必要な箇所を把握するため、地域ごとのワークショップの実施な どを行い、地域住民やサイクリストの意見を集約し、ロード整備に反映させること。 ⑤ちょっとした休憩が可能となるよう、景観の良い場所にベンチ等を設置すること。 ・貴重な観光資源としての旧耶馬溪鉄道廃線跡の価値を再認識し、鉄道を実感できる休 憩スペース(白地駅の活用など)やオブジェの設置について検討すること。 ・大分県が取組む「サイクルハブ」(空気入れ・ラック・トイレなどを有するサイクリ スト用の休憩施設)の登録をするため、周辺の売店や飲食店等に協力いただくこと。 「サイクルハブ」には、のぼりなどを設置して利用者にわかりやすくすること。 ・休憩施設の1つとして、平田邸や、耶馬渓図書館の活用も検討すること。 (2)サイクリストに優しい案内の充実等 ①周辺店舗や施設等に誘導するサインがないため、看板を設置すること。看板は周囲の 景観にマッチしたものにすること。また、国道212号を車で通行する方へ向けた広告の 設置についても検討すること。 5 ②中津駅~本耶馬渓エリアなどサイクリングロードの分かりにくい部分に関しては、路 面標識などサイクリストが見やすいサインを検討すること。 ③案内板が少ないので、スマートフォンや音声などによる案内を検討すること。「中津 ナビ」や「観光なび」などを拡張して危険箇所の警告や周辺施設の案内をできるよう にすること。 Ⅱ.地域をつなぐサイクルツーリズム(ソフト面) (1)周辺施設との連携 ①本線以外にもモデルコースを複数設定すること。河川堤防を活用したコース、サイク リングターミナルからの上級者コース、ポタリングで周遊するコース、猿飛甌穴群や 耶馬溪ダムなど拡張したコースを設定すること。また、サイクリングロード本線のル ート変更(中津駅から本耶馬渓方面のルートを河川堤防側に振り替えるなど)も検討 すること。 ②モデルコースと周辺施設(飲食店、買い物場所、サイクルハブ、景勝地など)を紹介 するサイクリスト向けマップを作成すること。マップには、売店や飲食店の場所を分 かりやすく記入し、好奇心をくすぐるような魅力的な内容にすること。 ③公共交通との連携を図ること。特に鉄道利用者を念頭に、JR中津駅周辺においてレン タサイクルが可能となる場所を確保し、そのことを広く周知すること。 ④市内にあるレンタサイクル施設と連携をすること。また、レンタサイクル貸出窓口の 確保を検討すること。 ⑤宿泊を伴うサイクルツーリズムを推進すること。ターミナルの利用促進の他に民泊の 推進についても検討すること。 ⑥清掃などを住民やサイクリストに協力が得られる仕組みづくりをすること。特に住民 と連携しての清掃は多くの人が一度に関われるようにし、長期にわたり継続するため にも楽しく実施できるよう工夫すること。 (2)国内外からの誘客 ①耶馬渓鉄道の軌道跡を活用したサイクリングロードであることを踏まえ、全体のスト ーリーとコンセプトを明確にし、それをベースにして売り込むこと。また、統一した デザイン(シンボルマーク)等についても検討すること。 ②国内外にPRできて、地元住民のおもてなしの機運を高める以下のようなイベント実施 を検討すること。 ・ツールド耶馬渓(耶馬溪ダムや玖珠行きのコースなど。ただし事故対策が必要) ・市内小中学校の行事(地元から愛されることも大切) ・サイクリストのレベルに合わせたイベント 6 ・耶馬渓の魅力を正しく伝えるイベント(自転車で下郷地区へ行き田植え、山道を縦走 して飲食店を周遊など) ・地元のイベント(かかし、コスモスなど)や周辺市町村の取組みとの連携 ・サイクリングロードを歩くイベント ③国内外から広く集客をはかるため、以下のような、効果的な宣伝やプロモーション活 動をすること。 ・APU学生等を巻き込んだSNS等での発信 ・サイクリストが多い台湾や、韓国などへの売り込み ・大分-台中線の就航により台中市との交流が深まることにくわえ、台中市にも軌道跡 を活用したサイクリングロードがあることを踏まえ、台中市とサイクリングを通じた 交流を深めることを検討する など ④サイクルツーリズム専門のガイドの整備、サイクリスト向けツアーの企画を検討する こと。 ⑤メイプル耶馬サイクリングロードの名称を、「旧耶馬溪鉄道」を冠にするなど、宣伝 効果のある名称への変更を検討すること。 ⑥サイクリストの行動パターンを調査・分析し、プロモーション活動に活かすこと。 ⑦サイクリングロードの利用者数を把握する仕組みづくりをすること。 Ⅲ.サイクルツーリズムの核となる耶馬溪サイクリングターミナルへ ①サイクリングロードの中心に位置し、サイクリストが集まる場所であるが、商業的な サービス要素が乏しいため、以下のような機能強化を検討すること。 ・厨房の活用(飲食物の提供、又は貸出) ・地元の農産物や軽食の提供(周辺の飲食店とも連携) ・カフェの常設 ・周辺施設と連携した商品づくり ・レンタサイクルと温泉の入浴券をセットで販売 ・スタンプラリーなど回ることのインセンティブを与える仕掛け ・地元のイベント+サイクリング+宿泊のパックツアーの企画 ・宿泊を促進するための宣伝 ②サイクリストの宿泊客を取り込むため、サイクリストの意見を集約し、施設の仕様や 運営方法を検討すること(自転車を部屋に持ち込めるようにするなど)。また、その ことをサイクリストへ向けて発信すること。 ③鉄道を想起させるものの展示を検討すること。 ④インバウンド観光客には不可欠なWi-Fi環境を整備すること。 ⑤ターミナルの位置を分かりやすくするよう、案内看板を工夫すること。 7 5.むすびに ここ数年、健康志向や環境意識の高まりから「サイクリング」が注目されブームとなっ ており、これを契機に全国的にもサイクリングを国内外からの観光誘客につなげる動きが 活発化してきています。中津市には、旧耶馬溪鉄道の鉄道敷を活用した「メイプル耶馬サ イクリングロード」という貴重な財産がありますが、これまでは観光振興に十分活かしき れていませんでした。 今後、中津市をはじめ関係行政機関においては、多様な関係者と連携・協力し、情報収 集を行い、積極的かつスピード感をもって新しい取り組みを進め、魅力的な観光資源とし て力を入れて国内外に売り出していただきたいと考えます。そして、国内外からの観光客 に満足してもらうためには、おもてなしの心をもって迎えていく必要があります。この提 言作成に携わった我々活性化会議のメンバー自身も、行政との連携・協力・分担のもと、 このサイクリングロードの活性化の取り組みに積極的に関わっていきたいと考えています。 8 メイプル耶馬サイクリングロード活性化会議の構成員 氏 名 所 属 1 稲 田 亮 中津市副市長 2 篠 原 昌 秀 国土交通省 九州地方整備局 山国川河川事務所 技術副所長 3 阿 部 万寿夫 大分県観光・地域振興課長 4 和 田 敏 哉 大分県土木建築部道路保全課長 5 八 坂 悦 朗 大分県北部振興局 地域振興部長 6 中 村 哲 則 大分県中津土木事務所 企画調査課長 7 平 岡 弘 喜 大分県中津土木事務所 管理・保全課長 8 渡 邊 直 二 中津商工会議所観光委員長 9 古 園 智 大 中津市しもげ商工会観光部会長 10 吉 田 大 介 中津青年会議所理事長 11 船 方 祐 司 中津耶馬溪観光協会課長 12 土 田 宏 道 大分県企画振興部観光・地域局 参事監 兼 交通政策課長 (サイクリング愛好者) 13 中 尾 忠 廣 サイクリング愛好者 14 川 原 康 幹 耶馬っ子クラブ代表(サイクリング愛好者) 15 足 利 由紀子 NPO法人水辺に遊ぶ会代表 16 角 谷 朋 美 フリーアナウンサー 17 木 村 通 近畿日本ツーリスト中津旅行センター 18 相 良 亜寿香 フリーアナウンサー 19 相 良 弘 亀 NPO法人なかつ耶馬渓活き域ネット理事長 20 台 和 則 台酒店 21 戸 倉 徹 元自転車ジャーナリスト・農業 22 野 村 毅 有限会社 野村 23 原 文 克 やまくにGENRYU会会長 24 緑 アケ美 耶馬溪平田地区 25 吉 武 隆 善 弘法寺住職 26 直 田 孝 中津市商工観光部長 9
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