アジア・フォーカスチーム ニュースレター 目次: 中国・韓国・香港・台湾・インドネシア・カンボジア・シンガポール 2013 年 10 月号 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------ベーカー&マッケンジー法律事務所は、アジア・太平洋地域に 15 の事務所からなるネットワーク を有しております。アジア・フォーカスチームにおいては、かようなネットワークを最大限に活か し、アジア全域へ進出・事業拡大を検討する日本企業に対し、コーポレート、M&A、ファイナンス、 紛争解決等、幅広い分野でシームレスなリーガルサービスを提供しております。本ニュースレタ ーは、アジア各事務所にて執務する日本人弁護士が、現地における最新の重要な法律情報をお 届けするものです。 東アジア 中国 ●商標法の改正 2013 年 8 月 30 日に中国人民代表大会常務委員会において商標法改正案が採決され、2014 年 5 月 1 日に施行される こととなった。主な改正内容は以下のとおりである。 (1) 商標審査および審理手続き期間の明確化 改正商標法ではこれまで明確な定めのなかった各種の審査・審理手続きの期限が初めて明確に定められた。 商標登録出願に対する当初の審査期限、出願拒絶の再審期限、異議申立の審査期限、再審拒絶の審査期限、 無効審判の再審期限などについて、法定期限を明確に定めた。当初の審査期限は 9 か月とされ、異議申立て に対する調査・事実確認の手続き期限は 12 か月とされたため、今後は商標登録等に要する期間を予想した上 で事業を進めることが可能となる。 (2) 異議申立制度の整備 従来の商標登録異議申立手続きは、商標局および商標評価審査委員会における裁定・再審議等といったプロ セスがあり、審査期間が長く、また悪意の異議申し立てを行うことにより速やかな商標登録が害されている という問題があった。改正法では商標局による裁定手続きをなくし、異議審査プロセスの簡易化を図ってい る。また、悪意による異議申し立て等を防ぐために、先使用権の侵害を理由とする異議申立てにおいて、申 立権者をその先使用権者または利害関係者のみに限定することとした。 (3) 著名商標における「個別認定と受動的保護」原則の明確化 中国においては、著名商標に関して悪意による虚偽の申請や不正競争行為が行われるといった事例が多く、 今回の改正商標法において、著名商標の法的性格を明確にした。改正商標法では著名商標についての認定結 果は当該個別的案件における認定であり、商標局等は当事者が著名商標による保護を主張しない限り、著名 商標の保護に関する規定を適用することができないとした。 (4) 未登録商標の保護強化 現行商標法では、他人の未登録商標が先に使用されていることを明らかに知りながら違法に抜け駆け登録を する場合、登録を許可しないとされている。これに加えて改正商標法では、業務取引関係その他の関係者に よる商標の抜け駆け登録行為を禁止した。また、改正商標法では、先使用制度を明確にして、他社の登録商 標または未登録商標を自己の暖簾として使用する不正競争行為を禁止している。 (5) 商標専用権の侵害行為に対する行政処罰と司法保護を強化 改正商標法においては、商標専用権の保護を強化すべく、懲罰的な賠償制度(3 倍まで)を導入して処罰を 厳格化し、商標権侵害に対する法定賠償額の幅を引き上げて人民法院の裁量による損害賠償額の確定を認め ている。また、商標専用権権利者の挙証責任の軽減を図っている。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 折原康貴 1 台北事務所勤務 Tel: +886-2-2715-7354 [email protected] アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 韓国 ●フランチャイズビジネス法の改正 2013 年 7 月、フランチャイズビジネス法の改正案が国会を通過した。韓国において、フランチャイズビジネス法 の執行を所管するのは韓国公正取引委員会である。今回の改正は、国内でフランチャイザーによる不公正な取引の 強要が社会問題化していたことを受け、フランチャイジーの地位を一層強化することを目的としたものである。 新フランチャイズビジネス法による主な改正点は以下のとおりである。 (1) フランチャイザーによる情報提供義務の強化 フランチャイザーが、フランチャイジーもしくはこれになろうとする者(以下「申込者」という。)に対 し、虚偽、誇大または誤解を招くような情報を提供することが罰則をもって禁止されるのに加え、一定の規 模以上のフランチャイザーは、申込者に対して、売上予想額をその根拠となる計算式を添えて提供しなけれ ばならないとされた。 (2) フランチャイザーによる不公正な取引の禁止 フランチャイザーは、フランチャイジーの出店する地域に、直営店舗を出店しまたは他のフランチャイジー による出店を認めてはならない。また、フランチャイジーから、深夜の営業時間帯につき経費に比して売上 が少なく損失が発生しているなどの合理的理由をもって営業時間短縮の申し出があった場合には、これを拒 否してはならない。 フランチャイザーは、合理的な理由なく、フランチャイジーに対し、店舗移転、店舗拡張、店舗改装などを 強制してはならず、フランチャイザーの要求によりこれらを実行する場合は、これに要した費用のうち、大 統領令で定める割合部分を負担しなければならない。 本改正法の施行時期は 2014 年 2 月となる見込みである。本改正の結果、韓国のフランチャイズに関する規制 法は、アジアで最もフランチャイジー側に好意的となったと評価する向きもある。 ●商業用建物賃貸借保護法の改正 2013 年 8 月 13 日付で、商業用建物賃貸借保護法の改正法が施行された。この改正は、商業用ビルのテナントの地 位強化を目的としており、主な改正点は以下のとおりである。 (1) 大統領令で定める額以上の換算保証金を差し入れている商業用ビルのテナントにも、賃貸借契約の更新を請 求する権利が与えられた。すなわち、そもそも韓国の商業用建物賃貸借保護法は、自営業者など零細企業の 保護を目的としており、そのため、同法により商業用ビルのテナントに対して一般的に付与されている契約 更新請求権は、一定額以上の換算保証金を差し入れているいわゆる大規模テナントには認められていなかっ た。しかしながら、今般の改正により、かかる大規模テナントも、賃貸借期間が 5 年を超えていない限り、 契約更新請求権を有することとなった。ちなみに、大統領令で定める換算保証金の額は地域によって異な り、ソウルの場合は 3 億ウォンである。 (2) 契約更新の際、テナントおよび賃貸人の双方は、近隣の商業用建物の賃料、租税公課、その他の経済的な状 況を理由に、相手方に対して、家賃または保証金の増額または減額を請求することができる。 (3) テナントから契約更新の請求を受けた賃貸人が更新を拒絶できるのは以下の場合のみである。①賃貸借契約 締結時にあらかじめ建物が取り壊しまたは改築予定であることがテナントに告知されていた場合、②建物の 安全性に問題がある場合、③法律により建物の取り壊し、改築が要請される場合。 改正法は、施行日以降に締結または更新される賃貸借契約に適用される。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 穂高弥生子 Tel: 03-6271-9461 2 [email protected] アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 香港 ●香港仲裁法関連規則の改正 香港仲裁法関連規則の改正案が 2013 年 4 月に立法議会で審議され、2013 年 7 月 19 日に改正案が施行されている。 2013 年 1 月に香港特別行政区とマカオ特別行政区の間で仲裁判断の相互承認および執行に関する協定が締結さ れ、香港またはマカオでの仲裁判断の相互の効果的な執行を促進するものである。すでに中国本土と香港特別行政 区の間では同様の取り決めが行われている。今回の改正では、仲裁規則の改正を行い、香港の裁判所によるマカオ での仲裁判断の執行を可能にし、第一審裁判所において執行が可能となった。 また、本改正では、国際商業会議所(ICC)やシンガポール国際仲裁センター(SIAC)などといった国際的な仲裁 機関によって採用されている、緊急仲裁人による命令、判断または決定に関し、香港における執行を可能としてい る。これにより、緊急の救済を求める当事者が仲裁廷の構成前に緊急仲裁人の選任を行い、緊急仲裁の申し立てを 行うことができる。これに伴い、香港国際仲裁センター(HKIAC)の仲裁規則の改正も行われている。 ●不公正な取引方法に関する商品表示条例(Trade Description Ordinance)の改正 不公正な取引方法に関する商品表示条例が改正され、2013 年 7 月 19 日付で本改正条例の効力が発生している。本 改正条例では、従来の商品表示条例が製品だけを対象としていたのに対し、新たにサービスも対象とすることを明 確にしている。商品表示条例の執行機関である香港税関(Customs and Excise Department)および通信事務管理局 (Communication Authorities)はガイドラインを出している。 (1) 適用範囲の拡大 本改正条例では、商品表示条例の適用対象を、労働契約によって提供されるサービスを除くサービスに拡大 し、商品表示の定義を商品およびサービスに関するすべての不正な表示に拡大している。ただし、いくつか の例外的な専門的業務(法律、医薬、会計、建築)、または商品(保険、金融サービス)は適用対象から除 外されている。 (2) 不公正な取引方法の 5 類型の追加 本改正条例では、消費者に関連する 5 種類の不公正な取引方法が新たに追加されている。これらの不公正な 取引方法を行った場合には、500,000 香港ドル以下の罰金および 5 年以下の懲役が科される可能性がある。新 たに追加された取引方法は、①誤解を招く省略、②攻撃的な商業行為、③誇大広告、④おとり販売、⑤不法 な支払受領である。これらの行為を行った業者は、これらの行為が過失、行為者に対して提供された情報の 信用、第三者の行為または義務違反、自己またはその他の業者が制御できない事由により生じたことを主張 することによって、防御することができる。 業者の取締役、秘書役、代表者またはマネージャーといった経営陣または違反行為を指示した者は、本改正 条例の違反行為について個人として責任を負うことになる。本改正条例では違反行為により損害を被った消 費者が民事訴訟を提起することを認めた。本改正条例の執行は香港税関が基本的に責任を有しており、新た に追加された行為についての執行に責任を負い、通信事務管理局は通信および放送分野について責任を負う こととされた。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 折原康貴 台北事務所勤務 Tel: +886-2-2715-7354 [email protected] 台湾 ●外国投資承認(FIA)手続きの簡素化 台湾の行政院は 2013 年 5 月に外国投資法令(外国人投資法および海外中国人投資法)の改正案の審議を行い、同 改正案はさらに同年 7 月以降立法院において審議されている。本改正案の重要なポイントは、外国投資承認 (Foreign Investment Approval 「FIA」)の事前承認手続きを一部の例外を除いて変更し、承認取得手続きを簡素化 するという点にある。現時点においては立法院における法改正の審議の具体的なスケジュールは確定しておらず、 3 アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 施行日も未定とのことである。 もっとも、実務上の大きな障害となることが多いのは、銀行口座の開設手続きであり、顧客本人確認の要件の充足 および銀行用の提出書類(銀行ごとに必要書類の要件がある)の準備が必要となるため、数週間、場合によっては 数か月がかかることもある。銀行口座開設手続きの遅延によって、外国投資自体のスケジュールが大幅に遅延する ということが実務上もよく見られている。現状においては、この問題について特に進展はない状況にあるが、外国 投資承認手続きの簡素化・迅速化に向けた動きについては、今後も留意が必要である。 ●職業安全衛生法の施行 2013 年 6 月 16 日に立法院において、労働安全衛生法の改正が承認され、職業安全衛生法と名称変更され、2013 年 7 月 3 日に公布されたが、施行日については未定である。職業安全衛生法では適用範囲をすべての従業員に拡大す るとともに、以下の 4 つの義務などを新たに使用者側に課すこととなった。 (1) 機械、装置、器具や化学物質に関する製造業者または使用者に対する義務 (2) 使用者に対する労働事故(従業員による反復継続した業務から生じる被害または過労死など)の防止義務 (3) 石油化学業界など危険度の高い分野・業界におけるリスク評価制度の強化、および違反に対する 300 万台湾 ドルまでの罰金 (4) 事業所において事故があった場合に使用者が労働者代表とともに調査を行う義務(死亡事故の場合には 8 時 間以内に労働基準監督署に報告) 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 折原康貴 台北事務所勤務 Tel: +886-2-2715-7354 [email protected] 東南アジア インドネシア ●インドネシア金融庁が市場変動時の株式の買戻しに関する規則を発行 インドネシア金融庁(Otoritas Jasa Keuangan(OJK))は、2013 年 8 月 23 日、市場変動時の株式の買戻しに関する 規則 No. 2/POJK.04/2013 を発行した。本規則によれば、公開会社は発行済み株式の 20%までであれば、(通常は必 要とされている)株主総会、取締役会、およびコミサリス会※1 の承認を得ずに行うことができることが規定され た。しかし、これはインドネシア証券市場における株式が 3 日間に 15%以上下落した場合、またはその他インド ネシア財務省が必要であると認めた場合に限られている。本規則によれば、公開会社はインドネシア財務省に対し て、かような下落が発覚してから 7 営業日以内に必要な情報とともに届出を行わなければならず、承認が出てから 30 日以内に株式の買戻しを行わなければならないこととされている。 同時に、インドネシア財務省は、Circular No. 1/SEOJK.04/2013 を発行し、2013 年 5 月 20 日から 8 月 27 日までの 23.91%もの下落は、上記のインドネシア財務省が必要と認めた場合に該当すると判断した。 インドネシア財務省がかような大幅な介入に出たのは、2008 年のリーマンショック以来であり、インドネシア上 場会社に投資している日本企業は注意が必要である。 ※1 :インドネシアにおける監査役会に類する組織。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 栗田哲郎 4 Tel: +65-8183-5114(SG)、 +62-812-12-789427(ID) アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 [email protected] シンガポール ●MOM が外国人雇用に関する厳格な規制を発表 シンガポール人材省(Ministry of Manpower、「MOM」)は、2013 年 9 月 23 日、外国人の雇用についての新しい 規則を発表した。この規則(Fair Consideration Framework、「FCF」)は、2014 年 1 月 1 日から 8 月 1 日の間に順 次導入される。FCF は、会社が、外国人をエンプロイメント・パス(Employment Pass)によって雇用する前に、 シンガポール人に対して平等な機会の提供を行うことを目的にしており、昨今のシンガポールの社会情勢とそれに 対応する政府経済成長モデルの転換を反映している。当該規制は、外国人を雇用している日本企業に、大きな影響 を与えると考えられるため、注意が必要である。今回の FCF の主な規制は、以下のとおり大きく 3 つに分類され る。 (1) エンプロイメント・パスに必要な給与額の増額 (2) 差別的人事政策を執っている企業への指導強化 (3) エンプロイメント・パス申請前の強制的募集広告 エンプロイメント・パスに必要な給与額の増額 2014 年 1 月から、エンプロイメント・パス取得に必要となる月額給与が、従前の月額 3,000 シンガポールドルか ら、月額 3,300 シンガポールドルに増額される。 ただし、この金額は、あくまでも最低金額であり、実際にエンプロイメント・パスが与えられるかは、①対象者の 学歴・職務経験、②会社の資本金、③対象者の役職・貢献、④年齢などの諸事情が考慮されることになる。 既存のエンプロイメント・パス保持者について、MOM は今後それぞれのエンプロイメント・パスが満了となる 2 年から 3 年にかけて導入していくとしている。エンプロイメント・パスが今後満了となる外国人の扱いは、以下の とおりである。 (1) 2014 年 1 月 1 日前に満了となる場合は、現在のエンプロイメント・パスの資格要件が、一度に限り更新に適 用される (2) 2014 年 1 月 1 日より 2014 年 6 月 30 日(両日を含む)の間に満了となる場合は、現在のエンプロイメント・ パスの資格要件が一度に限り 1 年更新を上限に適用される (3) 2014 年 6 月 30 日以降は、新しい資格要件が適用される これらの移行措置は、雇用主が変更されない場合についてのみ適用される 差別的人事政策をとっている企業への指導強化 MOM は、差別的人事政策をとっている企業を特定し、指導する政策を発表した。MOM は、その業界の標準と比 較して、専門家職、管理職、エグゼクティブ職において、シンガポール人の割合が低い企業や、差別的人事政策で 繰り返し苦情を受けた企業を特定し、指導する政策を発表することとした。 かような企業は、MOM に対して、人事政策にあたって、不当な国籍要件を求めていないか、年齢・人種・国籍な ど差別的な人事政策をとっていないかなど情報の提供が求められる。 今後は、人材募集の広告などをかけるにあたって、不用意な記載を行わないように慎重な取り扱いが求められる。 例えば、「広報の職務を行うことができる日本人(日本語必須)」、「営業を行うことができる 55 歳以下の男 性」などという募集方法は、MOM からの指摘の対象となる可能性があるため、注意が必要である。 なお、同規制の強化を発表した翌日には、これに該当する企業名を公表済みである。 エンプロイメント・パス申請前の強制的募集広告 人材募集にあたりシンガポール人を公平に考慮することを促す目的により、新しいエンプロイメント・パスを申請 する企業は、募集広告をシンガポール政府機関(Singapore Workforce Development Agency)が管理する新しい人材 バンクへ登録することが必要となる。 これら募集広告はシンガポール国民を対象とし、公平な雇用政策についてのガイドライン(Tripartite Guidelines on Fair Employment Practices)に準ずるもので、少なくとも 14 日間の募集期間が必要となる。 具体的には、25 人超の従業員を有する会社は、エンプロイメント・パスの申請前に、該当するポジションについ て、上記の人材バンクで最低 14 日間の募集広告を行う必要があることとなる。また、この募集広告は、エンプロ イメント・パス申請前 3 ヶ月以内に行う必要がある。この強制募集広告要件は、2014 年 8 月 1 日より導入され 5 アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 る。なお、この人材バンクの利用料は、無料である。 同要件は、募集広告を他の方法やウェブサイトで引き続き行うことを制限するものではない。このため、会社は独 自の方法、ウェブサイトで、同時並行で募集広告をかけることが可能である。 また、シンガポール人を最初にインタビューする義務もない。 さらに、シンガポール人をインタビューした後、会社は、種々の要素を検討することができ、シンガポール人を不 採用とし、外国人を採用とした場合でも、MOM への報告義務などは負わない。 なお、①25 人以下の従業員の企業の場合、または②募集する人材の月額固定給与額が 12,000 シンガポールドル以 上の場合、同募集広告義務は免除される。 ●ジークホールディングスが日本企業として初の SGX カタリスト市場に プライマリー上場 2013 年 8 月 27 日、株式会社ジークホールディングスは、シンガポール証券取引所(SGX)の新興企業向け市場カ タリスト市場に上場申請を行い、これが受理されたことを発表した※2。ジークホールディングスは、ソフト開発・ 設計、ソリューションサービスといった IT 関連の子会社等を 7 社有している。上場していない日本企業が、SGX で新規株式公開(シンガポールへのプライマリー上場)を行い受理されたのは、これが初めてである。今回の資金 調達額は数億円とみられ、本調達資金を皮切りに、現在 65 億円の売上高を今後 2 年で 100 億円に拡大、そのうち アジアでは 10 億円を目指すとのことである。同社の発表※3 によると、同社株式は 9 月 18 日に SGX カタリスト市 場に上場されたとのことである。 2013 年 3 月 27 日には、不動産関連事業を行っている株式会社トーセイが、日本企業としては初めて、SGX メイン ボード市場に、上場時に新株発行等を伴わないイントロダクション方式によるセカンダリー上場を行うなど、拡大 する東南アジアマーケットをにらみ、シンガポール市場に上場を検討する日本企業が増加している。 ※2 :同社の 2013 年 8 月 27 日付お知らせ ※3 :同社の 2013 年 9 月 18 日付お知らせ 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 栗田哲郎 Tel: +65-8183-5114(SG)、 +62-812-12-789427(ID) [email protected] タイ ●外国商業銀行がタイに新たな子会社を設置することが可能に タイ財務省は、外国商業銀行がタイ国内に子会社を設立する申請手続きを 2013 年 12 月末まで受け付ける旨の省令 を交付し、最大 5 つの外国商業銀行に対して当該設立認可を付与する予定でいることを発表した。 当該措置は、タイ中央銀行の金融部門マスタープランに基づくものであり、地域自由化を通じた国際取引および投 資の促進を目的とする。 子会社の定義 95%以上の株式を直接または間接に外国商業銀行が保有している会社であると定義される。加えて、子会社の払込 資本金は 200 億バーツ以上であることを要する。 申請要件 子会社設立の申請者は、以下の要件を充足することを要する。 • 専門知識、確固とした業績および財務状態、妥当なリスク管理システムおよび優良なガバナンスを有する、信 用のある外国商業銀行であること • 財務、貿易および投資に関してタイとの間で重要なビジネス関係を有する国、またはタイとの間で自由貿易協 定を締結している国を基盤とする外国商業銀行であること • 当該国の商業銀行がタイにおいて認められる業務と類似するレベルでタイの商業銀行が業務を行うことを認め 6 アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 ている国を基盤とする外国商業銀行であること • 監督官庁が妥当な銀行監督基準を維持している外国商業銀行であること • 監督官庁が請求に基づきタイ中央銀行に対して、タイ中央銀行がタイにおける子会社業務を監督することがで きる程度に、外国商業銀行に関する情報を提供することにつき同意している商業銀行であること 手続きの所要期間 申請はタイ中央銀行に対して 2013 年 12 月末までに行うことを要する。タイ中央銀行は申請期限から 3 ヶ月以内に 候補銀行を選定し、財務大臣に対して承認を求める。財務大臣は候補銀行のリストを受領してから 3 ヶ月以内に承 認を行い、子会社は業務開始まで 1 年間の猶予が与えられる。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 勝山正雄 バンコク事務所勤務 Tel: +66-2-636-2000 (ext. 4022) [email protected] フィリピン ●無議決権株式を発行している場合の外資規制割合について 外資規制業種に従事する会社は一定の外資規制(外資による株式保有割合制限)を受けるが、無議決権株式を発行 している場合、議決権株式についてのみ外資規制を受けるに過ぎないのか、無議決権株式についても外資規制を受 けるのか、あるいは議決権株式と無議決権株式の合計について外資規制を満たせば足りるのかについて、これまで 必ずしも明確でなかったところ、フィリピン証券取引委員会は、2013 年 5 月 22 日に通達を発行し、以下の株式に ついて外資規制を満たすことを要するとした。 (1) 取締役の選任について議決権のある株式 (2) 議決権の有無にかかわらず、全ての発行済株式 例えば、外資による株式保有割合が 40%に制限されている業種に従事する会社が、取締役の選任について議決権 のある株式 100 株、無議決権株式 200 株を発行している場合、例として以下のケースが適法となる。 ケース1: 日本法人が議決権株式 40 株、無議決権株式 80 株を保有 ケース2: 日本法人が議決権株式 20 株、無議決権株式 100 株を保有 他方、以下のケースは認められない。 ケース3: 日本法人が議決権株式を保有せず、無議決権株式 200 株を保有(この場合、全ての発行済株式の 40%を超える株式を保有しているため、議決権株式を保有していないとしても違法となる。) 現時点で上記通達に抵触する会社に対して 2014 年 5 月 22 日まで猶予期間が与えられており、この時までに資本構 成を修正しなければならない。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 鈴木泰治郎 Tel: 03-6271-9701 [email protected] ベトナム ●外国為替管理法令の改正 国会常務委員会は、外国為替管理に関する新たな法令(Ordinance No.06/2013/UBTVQH13(以下「新外為法」)) を公布した。新外為法は、2005 年 12 月 13 日付法令(Ordinance No.28/2005/PL-UBTVQH11)の一部の条項を改正 するものであり、2014 年 1 月 1 日より施行される。新外為法は、外貨による取引、外国資本によるベトナムへの 投資およびベトナム国内資本によるベトナム国外への投資、外国との金銭貸借等に関する規制を明確にすることを 目的とし、また法令に格上げすることにより法的根拠を強めたものといえる。 新外為法による主な改正点は以下のとおりである。 7 アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 (1) 「居住者」の範囲の明確化 「居住者」には、ベトナムで設立され事業を行う会社やベトナムで 12 ヶ月以上居住することを許可された外 国人なども含まれるが、新外為法では外国銀行のベトナム支店、外国企業のベトナム支店、投資法に基づき 事業活動を行う外国会社の拠点も明記された。 (2) ベトナム国内における外貨使用の制限 これまで解釈が曖昧な点があったが、新外為法では、ベトナム国内での取引については、居住者か非居住者 に関わらず、全ての取引、支払、価格表示、広告、見積、価格表および契約書における金額設定は、ベトナ ムドンを用いなければならないことが明確にされた。なお、今後改正される予定であるが、施行細則である 2006 年 12 月 28 日付政府議定 160 号(Decree No.160/2006/ND-CP(政府議定第 160 号))において外貨を用い ることのできる場合として、ベトナム国家銀行の承認を得た場合に加えて 11 の例外の場合が列挙されてい る。 (3) 間接投資の定めの追加 政府議定第 160 号には間接投資につき定められていたが、新外為法においても、直接投資に加えて、新たに 間接投資の場合の定めが追加された。すなわち、直接投資は、外国投資家が出資を行いベトナムでの投資活 動の経営に参加すること、間接投資は、投資活動の経営に直接参加することなく外国投資家が証券、出資持 分の売買を通じてベトナムに投資することと定められている。もっとも、「経営に参加」の意味が明らかで はないなど、いまだに直接投資と間接投資の区別は曖昧なままである。 なお、従前より定められていたが、外国投資家は、直接投資および間接投資の場合であっても、ベトナムの 認可金融機関においてベトナムドン建て投資専用口座を開設しなければならず、投資はこの口座を通じて行 わなければならない。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 松丸知津 ハノイ事務所勤務 Tel: +84-4-3936-9614 [email protected] マレーシア ●会社法の改正案(the new Companies Bill)がパブリックコメントに付される マレーシアの登記庁(The Companies Commission of Malaysia、「CCM」)が、現行の会社法(Companies Act 1965)の改正案を完成させ、7 月 2 日から 8 月 1 日までパブリックコメントを受け付けていた。 CCM が作成した会社法改正案は、CCM の会社法改正委員会(Corporate Law Reform Committee)が、国会において 2010 年 6 月に可決された方針を受け、会計事項検討委員会(Accounting Issues Consultative Committee)のコメント も考慮しながら 3 年以上をかけて策定したものである。 かかる会社法の改正案がベースとしている、2010 年 6 月に国会で可決された方針は以下のとおりである。 (1) 会社の設立等、法人セクターへの参入を容易にし、現代化するために必要な改正を行う (2) 無額面株式の全面採用 (3) 会社の株主構成の管理および再編を容易にするために必要な変更を行う (4) 法人の意思決定プロセスの簡素化および迅速化 (5) コーポレートガバナンス体制の強化のために必要な変更を行う (6) 会社秘書役(company secretaries)の役割・機能・義務の強化 (7) 実務に従事している会社秘書役(company secretaries)の義務的登録制度の創設 (8) コーポレートレスポンシビリティの概念の導入 (9) 株主の権利とその保護の拡充 (10) 監査人の役割および責任の明確化による、コーポレートガバナンス体制の強化 (11) 監査済財務諸表の重要性の再確認 8 アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 (12) 会社の取締役および主要株主との会社との取引に関するルールの拡充による、より良いコーポレートガバナ ンス実務の強化 (13) 会社の解散手続きの簡素化および迅速化 (14) 倒産手続きの現代化 (15) スキームオブアレンジメント(Scheme of Arrangement)の概念の整理 (16) 管財人(receiver)の役割の整理 (17) 現状の登記・登録制度および関連する手続きの整理 (18) 執行手続きの現代化 (19) 国際的な会計標準および会計実務に沿う形での会計報告の枠組みの導入 かかる方針を受け、CCM の会社法改正案では多くの改正事項を提案している。マレーシアに進出する日本企業と の関係で注目すべき主な変更点は以下のとおりである。 • 非公開会社(private company)に関する取締役の居住者要件の緩和(主たるまたは唯一の居住地をマレーシア 国内に有する取締役は現行会社法では 2 名要求されているが、取締役の最低員数が非公開会社では 1 名とな ったことに伴い、これを 1 名で足りるものとする) • 非公開会社(private company)につき定時株主総会の開催義務の免除 • 多くの会社につき、定款(Memorandum and Articles of Association)が必須ではなくなり、定款がない会社の 規律は会社法に従う • 発起人 1 名での会社設立(現行会社法では 2 名必要) パブリックコメントを経た会社法改正案は、10 月に国会に提出され審議される予定である。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 木村裕 Wong & Partners(ベーカー&マッケンジーのメンバーファーム) クアラルンプール勤務 Tel: +603-2298-7888 [email protected] ミャンマー ●商標法制定前にも商標登録を行うべき 商標法案が近く連邦議会で審議され、早ければ年内中にも制定されていることが見込まれている。 ミャンマーには現時点では商標法が存在せず、商標は他の一般法令により一部保護を受けることができるのみであ る。商標は登録法に基づき登録事務所において登録することが広く行われている。登録に際して担当官は形式的な チェックを行うのみであり、現在、登録事務所には約 6000 の商標が登録されている。 現在の商標法案上、現行制度上の登録商標から新制度への再登録のための移行期間として 3 年間という比較的長期 の期間が設定されており、現行登録制度の下で商標登録を行った商標保持者は当該期間中に再登録を行うことがで きるとされている。 商標を含む知的財産権の保護が確保されることは、ミャンマーへの投資を検討する上での重要事項である。商標法 の制定・施行時期が明らかではない現時点では、商標保持者は新商標法の施行を待つことなく現行制度の下で商標 登録を行っておくことが望ましいと解される。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 勝山正雄 9 バンコク事務所勤務 Tel: +66-2-636-2000 (ext. 4022) アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 [email protected] 南アジア インド ●新会社法の成立・施行 2013 年 9 月 12 日、インドの改正会社法が一部施行された。改正会社法は 1956 年会社法に置き換わり、会社法に 大幅な変更を加えるものである。主な改正点は以下のとおり。 (1) 利益の 2%を社会貢献する義務 Rs 500 crore を超える純資産、Rs 1,000 crore を超える売り上げ、または Rs 5 crore を超える純利益のある会社 は利益の 2%を社会貢献のために使用しなければならない。 (2) ガバナンスの強化 取締役の 3 分の 1 を社外取締役としなければならない。また、取締役のうち 1 名以上はインド居住者または 年間 182 日以上インドに滞在する者でなければならない。 (3) 会計制度 連結財務諸表作成が義務付けられる。また、上場企業の監査人を一定期間で交代させることが義務付けられ る。 (4) M&A 法制の改善 グループ再編に対する裁判所の関与が限定され、再編が容易になる。インド法人と外国法人の合併が可能に なる。また、小規模会社および完全子会社に対する簡易合併手続きが導入される。 (5) クラスアクションの導入 (6) 一人会社が認められ、完全子会社の設立が可能になる (7) 会社運営の柔軟化 • 定時株主総会不要 • 株主総会招集手続き等の簡略化 • 取締役は 1 名で足りる • 取締役会開催義務免除(取締役 1 名の場合) • 取締役会は 1 年に 2 回で足りる(取締役複数の場合。通常は年 4 回) • キャッシュフロー計算書作成不要 (8) 小規模会社の導入 小規模会社に該当する場合、取締役会は年 2 回で足り、また、キャッシュフロー計算書の作成が不要にな る。 本記事に関するお問い合わせについては、下記までお願いいたします。 鈴木泰治郎 Tel: 03-6271-9701 [email protected] アジア・フォーカスチーム ベーカー&マッケンジー法律事務所のアジア・フォーカスチームにおいては、アジア全域への進出・事業拡大を検討 する日本企業に対し、コーポレート、M&A、ファイナンス、紛争解決等、幅広い分野でシームレスなリーガルサー ビスを提供しております。 詳細は、ホームページをご覧ください。 本ニュースレターは一般的な情報を提供するためのものであり、個別具体的な法的助言を与えるものではありませ ん。ベーカー&マッケンジー法律事務所は、本ニュースレターの情報に基づいて行動された方に対し、いかなる責任 を負うものではありません。 10 アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013 ベーカー&マッケンジーのアジア・太平洋地域のネットワーク ベーカー&マッケンジーは、アジア・太平洋地域に 15 の事務所からなるネットワークを有するアジア最大規模の 法律事務所です。アジア各地で日本人弁護士が執務し、日本企業のニーズに即したきめ細かいリーガルサービスを 提供しております。 。 For more information 本ニュースレターに 関するお問い合わせ先 栗田哲郎 東京: 03 6271 9522 090 1612 2143 シンガポール: +65 8183 5114 インドネシア +62 812 12 789427 tetsuo.kurita @bakermckenzie.com ベーカー&マッケンジー 法律事務所 (外国法共同事業) 〒106-0032 東京都港区六本木 1-9-10 アークヒルズ仙石山 森タワー28F Tel 03 6271 9900 Fax 03 5549 7720 www.bakermckenzie.co.jp 11 Privacy Policy ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)はスイス法上の組織体で あるベーカー&マッケンジー インターナショナルのメンバーファームです。専門的 知識に基づくサービスを提供する組織体において共通して使用されている用語例 に従い、「パートナー」とは、法律事務所におけるパートナーである者またはこれと 同等の者を指します。同じく、「オフィス」とは、かかるいずれかの法律事務所のオ フィスを指します。 本書面に関し、ベーカー&マッケンジー法律事務所又はその所属専門家その他 の所員(以下併せて「当事務所」といいます)に対して、電子メール等により返信を お送りいただくときは、その返信によって直ちに送信者と当事務所との間に何らか の専門職業務の委任関係が成立するわけではないことにご留意下さい。 本書面の内容に関するか否かに関わりなく、当事務所との委任関係が成立する ためには、当事務所が受任を承諾することが必要となります。こうした事前の受任 承諾か、又は少なくとも受任前の事前相談を受けることへの承諾がなされていな い限り、当事務所に対して秘密又は非公知と思われる情報を送付しないようお願 い致します。かかる承諾がないまま送付された情報は、すべて非秘密又は公知の 情報とみなされ、守秘の対象外となります。 アジアフォーカスチーム ニュースレター 10 月号 October 2013
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