感染症対策における平時の蚊対策を考える 津田良夫

特集 蚊媒介性感染症をめぐって
感染症対策における平時の蚊対策を考える
国立感染症研究所昆虫医科学部主任研究員 要約
津田 良夫
い。ここでは様々な種類の媒介蚊を取り上げ
近年重要度が高まったヒトスジシマカを取
るのではなく、2014年のデング熱の流行によっ
り上げ、成虫の発生を抑制する平時の対策の
て我が国における医学的な重要性が高まった
考え方について述べた。昨年度調査した公共
ヒトスジシマカを取り上げる。残念ながら現
施設や住宅地でのヒトスジシマカの発生状況
時点では、ヒトスジシマカの生息密度を抑え
を概説した。公共施設の場合、成虫の飛来は
るために有効な対策と呼べるものはなく、幼
広範囲で認められるが、敷地内の幼虫発生源
虫や成虫の対策用に開発された、あるいは開
は数が少なく、周囲の住宅地などに主要な幼
発されつつある技術を、どのように統合して
虫発生源があると推測された。住宅地では、
効果的な対策を作り上げるか、つまり蚊対策
成虫が採集され幼虫発生源も見つかった家が
の戦略を作り上げることが重要な課題となっ
全体の7割を占めており、公共施設とはかなり
ている。平時におけるデング熱媒介蚊(ヒトス
異なっていた。蚊対策が蚊個体群の増加を抑
ジシマカ)の効果的な対策方法を立案すること
制する効果について、対策のカバレージの観
を目的として昨年度から実施している岡山県
点から考察した。主要な発生源が不明な場合
での調査を例に、異なる調査地間でのヒトス
には幼虫対策のカバレージが小さくなるため、
ジシマカの発生状況の比較、蚊対策の基本的
蚊対策の効果を高める何らかの工夫が必要で
な考え方、対策の実施を妨げる問題、現実的
ある。
な蚊対策のアイディアについて考察した。
はじめに
感染症を媒介する蚊には多様な種類が含ま
(1)蚊 対策の対象地と対策に必要な蚊の
情報
れ、その行動・習性や分布様式はさまざまで
地図帳を開いてみると、1ページの中に商
あることから、有効な蚊対策法は、蚊の種類
店街、住宅地、学校、公園、川、水田、畑な
によってもまた対象地域によっても大きく異
どがモザイク状に含まれているのがふつうで
なっている。例えば、人家周辺の人工容器から
ある。岡山県の調査で選んだエリアの中には、
発生するヒトスジシマカと水田など大きな水
複合運動施設、県立の福祉施設、小学校、高
域から発生するコガタアカイエカを比較すれ
等学校、神社、住宅街、公園、商店街、墓地
ば、前者の場合発生源を対象とした幼虫対策
が含まれている。この分類は機能や利用目的
は実施可能であるが、後者の発生源である水
によってそれぞれの場所を区別したものであ
田を対象にした幼虫対策は技術的にもまた経
るが、これらの場所はそこに生活する蚊にとっ
済的にも実施は難しい。つまり、どの媒介蚊
ては、かなり条件の違う環境を提供している
に対しても有効な標準的な蚊対策はありえな
と考えられる。蚊対策の課題は、このように
20
◆◆◆
特集
蚊媒介性感染症をめぐって
多様な環境の中に生息している蚊(ヒトスジシ
りがあることがわかった
(津田、2016a)
。また
マカ)の発生を抑える方法(戦略)を見つけるこ
施設内にあるすべての雨水マスと人工容器を
とである。そして、蚊対策の対象地ごとに蚊
対象にした発生源調査によって、ヒトスジシ
の発生状況に合わせた戦略を考える必要があ
マカの発生源のいくつかが明らかになったが、
る。
その数は少なくしかも特定のエリアに集中し
蚊対策を検討するためには、なによりもま
ていた。そのため、成虫が捕獲されるにもか
ず蚊に関する情報、つまり蚊の発生状況を知
かわらず、その周囲100m以内に幼虫の発生源
らねばならない。ここで、発生状況という言
がひとつも確認されなかった場所が、全体の
葉が具体的にはどんな情報を指しているのか
半分以上あった。同時期に調査した公共福祉
を確認しておく。蚊対策を実施する上で、私
施設でも似たような結果が得られている。こ
が必要と考えている基本的な情報とは、成虫
こでも成虫の分布には明らかな偏りがみられ
の生息密度と空間的な分布、季節消長、幼虫
た。この施設には公園が隣接しており、公園
発生源の空間分布である
(津田、2016a)
。平
を覆う木の茂みにヒトスジシマカが多く潜伏
易な言い方をすれば、対象地の中で蚊がたく
していた。ところが、施設内と公園で調べた
さん刺しに来る場所はどこで、何匹ぐらい刺
雨水マスや人工容器の中でヒトスジシマカの
しに来るのか、刺しに来る蚊は何月に一番多
幼虫が見つかったのは、たった1カ所に過ぎな
くなるか、ボウフラはどこで発生しているか、
かった。重要な発生源がこの施設以外の場所
これらの情報がなければ有効な蚊対策を考え
にあるのは、ほぼまちがいない。
ることはできない。
もうひとつ興味深い例は調査した住宅地に
あった神社である。この神社で成虫の生息密
(2)調査地による発生状況の相違
度を調べたところ、周囲の住宅地における生
昨年度岡山県で実施した調査では。調査対
息密度の3 ~ 4倍とかなり高いことが分かっ
象地を空港、公共施設、学校、観光地、住宅
た。神社周辺の住民に聞くと夏には蚊が多く
地のカテゴリーに分け、それぞれの場所でヒ
て困っているという話だった。ところが、こ
トスジシマカの発生状況を調べることにした。
の神社で確認できたヒトスジシマカの幼虫発
このようなカテゴリーに分けた主な理由は、
生源は1 ヶ所だけで、神社に潜伏していた成虫
デングウイルスが持ち込まれるリスクやデン
のすべてがこの発生源から発生したとは考え
グ熱の流行が起こるリスクがこれらの場所に
られなかった。
よって異なると考えたためである。この調査
以上の調査地に共通しているのは、成虫は
の詳細は別の機会に報告する予定だが、ここ
採集されるがそれを説明するのに十分な発生
では調査結果の中から、蚊対策を考えるうえ
源が調査地内には見つからないという結果で
で重要と思われる結果について簡単に述べる。
あった。
複合運動施設(約700m×700m)の調査では、
これに対して住宅地を対象にした調査結果
施設の周辺28カ所を選んで成虫の生息密度を
はかなり異なっていた。調査した住宅の70%
調べたが、施設内の成虫の分布には大きな偏
でヒトスジシマカの成虫と幼虫がともに採集
◆◆◆
21
感染症対策における平時の蚊対策を考える
された。成虫が採集されたが幼虫は採集され
(4)蚊 対策の効果判定:処理の効果と個
体群増加に対する抑制効果
なかった住宅は5軒に1軒だけだった。つまり
70%の住宅では、その家の庭に発生源があり、
幼虫対策を例にして、蚊対策の効果判定に
そこで発生した成虫が庭に留まって刺しに来
ついて考えてみる。通常、効果判定とは薬剤
ている可能性が高い。
処理を施した場所における幼虫の生存率で評
価される。例えば、IGR処理を行った雨水マス
(3)調 査結果に対する対応、実施された
蚊対策の事例
の場合、IGRを投入した雨水マスにおける蛹の
羽化阻害率を調査して効果を判定する。この
これらの調査結果は施設の管理担当者に毎
場合、たとえIGR処理が有効で処理済みの雨水
月伝えられた。我々の調査研究は研究期間が
マスにおける羽化阻害率が100%であったとし
3年間で、1シーズン目の昨年度はベースライ
ても、IGR処理がそこに生息している蚊の個体
ンのデータを収集することを目的にしていた。
群に対して100%の効果を示すとはかぎらず、
そのため、調査地では蚊対策を実施する予定
その対策の個体群への効果は、カバレージ
(そ
はなかった。しかし、施設の管理者としては、
の生息地全体の発生源に対するIGR処理を行っ
調査結果に基づいてなんらかの対応をするの
た発生源の割合)によっても大きく左右され
は当然のことであり、どのような対応が可能
る。
かをたずねられた。そのため、費用が安く専
カバレージの重要さを示すために、簡単な
門的な知識や技術を必要としない対策を伝え、
数式を使って説明する。幼虫対策による死亡
そのうちいくつかの対策が実施された。昨年
率をd、カバレージをcとすると、その対策に
度実際に行われた蚊対策を以下に示す:調査
よって個体群全体の幼虫生存率が低下する度
で見つかった発生源
(雨水マス)へのIGRの投
合いは、
(1-c・d)
と表すことができる。
入、落ち葉の除去・除草、樹木伐採・剪定、
次に蚊の個体群の増加に対する蚊対策の抑
生け垣への殺虫剤の散布、樹洞や岩の窪みへ
制効果を考えてみる。問題となっている時期
のセメントの埋設。
に何の蚊対策も実施されなければ、蚊個体群
これらの蚊対策の中で、実施件数が多かっ
がR倍に増加すると仮定すると、幼虫対策を実
たのは幼虫対策だった。これは、平時におけ
施した場合の個体群の増加率は(1-c・d)だけ
るデング熱媒介蚊対策の基本が発生源対策で
低下すると考えられるから、
(1-c・d)・Rと表
あることが一番の理由だが、成虫対策は様々
すことができる。幼虫対策によって個体群の
な理由で実施が難しいことも意味している。
増加を抑えるには、増加率を1よりも小さくす
ある施設の担当者は、我々の調査結果を参考
ればよいから、
(1-c・d)・R<1という条件式
にするだけでなく、担当者自身でも発生源を
が得られる。この条件式を変形すると、幼虫
探して可能な対策を実施していた。しかし、
対策によって幼虫の生存率を低下させること
そうした努力にもかかわらず、対策の効果が
で、成虫密度の上昇を抑えるためには、次の
あったのかどうか疑問に感じたと話している。
条件が満たされる必要があることがわかる。
(1-c・d)
<1/R。
22
◆◆◆
特集
蚊媒介性感染症をめぐって
例えば、対策を行わない場合に個体群が2倍
(5)発生状況の生態学的な解釈
に増加する時期
(R=2)であれば、幼虫対策に
生態学に生息場所という概念がある。蚊の
よって増加を抑えるには、個体群全体の幼虫
生息場所とは、蚊が生活するために必要な要
の生存率
(1-c・d)を現状よりも0.5低下させる
素がすべて含まれた環境を意味している。ヒ
必要があるという意味である。簡単のために幼
トスジシマカの場合、成虫の潜伏場所が吸血
虫対策の効果が100%、つまり対策による死亡
の場所とほぼ同じなので、生息場所は2つの要
率dが1と仮定すると、条件式はもっと簡単に
素
(幼虫の発生場所と成虫の吸血/潜伏場所)
なって、c>(1-1/R)となることがわかる。こ
を含んだ環境ということができる。ある生息
の式は、R=2の時は、生息地全体の発生源の半
場所を考えれば、発生場所で幼虫が育って成
分(c=0.5)、R=3の時なら発生源の2/3(c=0.666)、
虫になり、羽化した成虫は潜伏場所に移動し
R=4の時なら発生源の3/4(c=0.75)に対して対
て吸血の機会を待ち、吸血に成功すれば卵を
策を実施する必要があることを意味している。
作って発生源に移動して産卵するという、い
言 い 方 を 変 え る と、 た と え 処 理 効 果 が 高 く
わゆる繁殖活動が完結する。生息場所をこの
100%の幼虫死亡をもたらす対策であっても、
ように定義すれば、成虫の個体数は、発生源
カバレージが十分でなければ、個体群の密度
から羽化する成虫の数と死亡する成虫の数、
上昇を抑えることができない。そして、個体
そして周囲の生息場所から移入してくる成虫
群の増加率が高いほどより多くの発生源で対
の数と周囲へ移出していく成虫の数の差し引
策を実施せねばならない。
きで決まる。このように、成虫の個体数に関
公共施設の担当者が熱心に幼虫対策を実施
したにもかかわらず、効果に対して疑問を感
する問題は、生息場所を単位にすると理解し
やすい。
じたと前述したが、その理由は、カバレージ
上に紹介した調査の対象となった公共施設
(c)が十分ではなかったためだと、私は考えて
では、確認された発生源が非常に少なかった。
いる。それは、公共施設で実施した発生源調
このことは、公共施設だけを対象とした調査
査の結果で述べたように、見つかった発生源
が、そこで生活するヒトスジシマカの生息場
の数が非常に少なかったからである。昨年度
所の一部を調べたに過ぎないことを意味して
実施した岡山県の公共施設における調査では、
いる。そして公共施設で採集された成虫の主
5、6、7月に成虫密度の増加がみられたが、
要な幼虫発生源は施設周辺の住宅地などにあ
1か月間の密度の平均増加率(R)は、それぞれ、
ると考えるのが妥当だろう。つまり、公共施
1.7、2.5、1.2であった、前式によれば、この
設で生活しているヒトスジシマカの生息場所
期間の増加率を1よりも小さくするためには、
は、成虫の潜伏場所となっている公共施設と
それぞれの月に生息場所全体の幼虫発生源の
その周辺の住宅地の発生源を含めたより広い
41%、60%、17%に対して対策を実施する必
範囲と考えられる。このことは、公共施設の
要があったことを意味している。
ヒトスジシマカの問題は、その公共施設だけ
でなく周辺の住宅地も含めて考えるのが理想
的であることを意味している。
◆◆◆
23
感染症対策における平時の蚊対策を考える
これに対して昨年度調査した住宅地の場合
生息場所に関する不完全な情報しか得られ
は、多くの住宅で成虫と幼虫がともに採集さ
ない場合にとる行動は2つである。ひとつは、
れていた。この住宅地の場合、1軒の住宅だけ
調査範囲を広げて完全な情報を得ることであ
でもヒトスジシマカの繁殖に必要な要素がす
る。これは具体的には公共施設の周辺の調査
べて備わっており、ヒトスジシマカの生息場
を実施することを意味しており、周辺域に住
所は公共施設に比べるとはるかに小さいとい
宅地が含まれる場合には調査を実施すること
うことができる。そして住宅地全体を考える
自体が非常に困難である。また、仮に周辺域
と、多数のヒトスジシマカの生息場所が集まっ
の調査が行われ重要な発生源が特定できたと
て構成されていると考えられる。
しても、公共施設の蚊対策として周辺域の発
生源対策を行うのはさらに難しい。公共施設
(6)蚊 対策:理想的な対策と現実的な 対策
の管理者と周辺域に含まれる施設や個人住宅
の管理者が異なるためである。
理想的な蚊対策は、蚊の生息場所全体を対
もうひとつの行動は、不完全な情報に基づ
象にした対策で、成虫の数の決定に関与して
いた何らかの対策を取ることである。上に紹
いる4つの過程(成虫の羽化、死亡、移出、移
介した公共施設のように主要な発生源が不明
入)をターゲットとして実施されるものだろ
の場合は、調査で見つかった発生源の対策と
う。成虫の羽化を抑えるためには発生源対策
成虫対策しか実施できない。この場合、発生
が、そして成虫の移出入と死亡率を調節する
源対策のカバレージが十分ではないと予想さ
ためには成虫対策が行われる。
れ、そのため成虫対策を実施しなければ、蚊
蚊の生息密度を抑えるための基本的な対策
の発生を抑えることはかなり難しい。ところ
は、発生源対策とされている。発生源が少な
が、蚊の発生を抑えることに貢献できる成虫
くなれば蚊の発生量も少なくなり、発生源を
対策として現在考えられるのは、広い範囲を
完全に無くすことができれば蚊の発生をゼロ
対象とした殺虫剤の残留噴霧や定期的な殺虫
にできるはずだからである。しかし先に紹介
剤の散布などであり、これらの成虫対策は我
した公共施設のように、人為的な境界があっ
が国の現状を考えると現実的ではない。
て生息場所の一部しか調査の対象にできない
場合には、生息場所全体の情報を得ることが
(7)検討が必要な蚊対策の一案
できない。そして、このような理由で、蚊の
成虫に対する殺虫剤散布の効果もカバレー
生息場所に関する不完全な情報しか得られな
ジに大きく左右されることは明らかだが、カ
いケースは例外ではなく、むしろ普通なので
バレージを大きくするためには広範囲に殺虫
はないかと思われる。蚊対策のカバレージに
剤を散布する必要があり、これは現状では非
ついて説明したように、生息場所全体に関す
常に難しい。このことが平時における成虫対
る情報が得られなければ、個体群全体に対し
策の実施機会を少なくしている理由の一つだ
て十分な効果を与える蚊対策を実施すること
ろう。しかしながら、デング熱の流行が起こっ
は難しい。
た時、あるいは平時でも何らかの理由で成虫
24
◆◆◆
特集
蚊媒介性感染症をめぐって
対策が必要になった場合を想定して、ヒトス
トスジシマカ成虫が飛来し、そこに滞在する
ジシマカの習性を利用した成虫対策の効果を
ような場所を意識的に作ることは可能だと思
高めるための工夫は検討する価値がある。
われる。
ヒトスジシマカによって人が刺されるリス
ヒトスジシマカの成虫を誘い込むいわばト
クを小さくするために、下草を刈り取ったり
ラップのような場所を作ることができたとし
剪定をして日陰を少なくしたり、風の通りを
て、次の問題は、どのようにしてその場所に
よくするなどの方法が考えられる。この方法
集まった成虫を一網打尽に駆除するかである。
は、その場所に潜伏する蚊の数を減らして刺
成虫に対する殺虫剤の散布が一つの候補であ
されるリスクを小さくできるので、公園など
るが、屋外の大きな成虫潜伏場所を標的にし
では現実的な成虫対策の一つと考えられる。
た殺虫剤の散布事例は限られるため、致死効
しかしながら、この方法では成虫は他の場所
果やその持続時間などに関するデータが乏し
に移動しているだけなので、広い範囲を考え
いのが現状である。
ると蚊に刺されるリスクが軽減されているわ
けではない。
引用文献
ヒトスジシマカは屋外の藪に集まる習性が
津田良夫
(2015)代 々 木 公 園 周 辺 で 起 き た
あるので、この習性を利用して駆除作業が容
デング熱流行時の媒介蚊調査に基づくデング
易な場所に成虫を集めることは可能ではな
ウイルス感染リスクの評価。衛生動物、66:
いだろうか。もしこれが可能であれば、潜伏
211-217。
場所を無くすのではなく、むしろ意識的に好
津田良夫(2016a)公共施設と住宅地における
適な潜伏場所を作り、周囲から成虫を集めて
ヒトスジシマカの発生状況(2015)。ペストコン
一度に駆除するという方法は検討に値するよ
トロール, No.175, 4-8。
う に 思 う。 代 々 木 公 園 で の デ ン グ 熱 流 行 で
は、代々木公園と明治神宮の境界部分に成虫
津田良夫
(2016b)ヒトスジシマカの生態と防
除。ペストロジー、31:13-15。
密度が高い場所が集中していた(Tsuda et al.,
Tsuda, Y., Maekawa, Y., Ogawa, K.,
2016)
。そして、この高密度のエリアを優先
Itokawa, K., Komagata, O., Sasaki, T., Isawa,
的に駆除対象とすることによって、効果的な
H., Tomita, T. and Sawabe, K. (2016) Biting
成虫駆除が試みられた。代々木公園以外の推
Density and Distribution of Aedes albopictus
定感染場所でもほぼ同じ方針のもとに、蚊の
during the September 2014 Outbreak of
生息密度が高い場所に対して成虫駆除が実施
Dengue Fever in Yoyogi Park and the Vicinity
され、殺虫剤散布後の生息密度の低下とデン
of Tokyo Metropolis, Japan.
グウイルス感染リスクの低下が認められた(津
Dis., 69: 1-5.
Jpn. J. Infect.
田、2015)
。これらの事例は、自然に存在して
いたヒトスジシマカ成虫の分布の偏りを利用
したものであるが、昨年の住宅地の調査で見
つかった神社の例などを考えると、多数のヒ
◆◆◆
25