グローバル知的財産ニューズレター vol.1 Issue 3

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グローバル知的財産ニュースレター
May 2013
Volume 1 Issue 3
商標
【インド】インド、マドリッドプロトコルに加盟: インドは「標章の国際登
録に関するマドリッド協定の 1989 年 6 月 27 日にマドリッドで採択された議定
書」(略称:マドリッド協定議定書、マドリッドプロトコル)の 90 番目の加
盟国となった。世界知的所有権機関(WIPO)によると、インドにおけるマド
リッドプロトコルの効力発生日は 2013 年 7 月 8 日となる。
【ICANN/gTLD】商標データベース「Trademark Clearinghouse」の提供開始:
2013 年 3 月 26 日、インターネットの IP アドレスやドメイン名などを管理する
国際非営利団体 ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)
は、「Trademark Clearinghouse」の提供を開始した。Trademark Clearinghouse
は、ドメイン名に使用される商標名を管理する世界初のグローバルデータベー
スである。このデータベースは、ドメイン名システムに関する世界的なニーズ
を満たすよう設計され、新 gTLD(汎用トップレベルドメイン)プログラム向
けの商標権保護システムとして構築された。
Trademark Clearinghouse プロバイダは(i)世界各地からの商標を検証し、(ii)
検証済みの商標データを管理する。検証済みの商標データは、gTLD の新規登
録時に提供されることが定められている Sunrise Service(商標権者優先登録
サービス)および Trademark Claims Service(商標クレームサービス)において
利用される。
Sunrise Service は、商標権の保有者が、自らの商標と一致するドメイン名を登
録するに際し、優先登録期間を設けるサービスである。商標権保有者が新たに
gTLD を登録する際、すべての場合において、少なくとも 30 日間の優先登録
期間が設けられる。
Trademarks Claims Service は、第三者の商標権を侵害する可能性があるドメ
イン名の登録申請があった場合、ドメイン名の登録者および商標権保有者への
通知を行う、ICANN によって義務付けられたサービスである。Trademarks
Claims Service では、Trademark Clearinghouse に登録された商標に完全に一致す
るドメイン名の登録が申請された場合、当該申請者に警告が送付される。警告
が送付されたにも関わらず、申請が続行される場合は、適切な措置を取れるよ
う、商標権保有者に通知が送付される。
Trademark Clearinghouse では知的財産権の検証と登録を行う。取り扱う知的財
産権は、(1)登録商標、(2)裁判所が有効であることを認めた商標、(3)
法または条約で保護された商標および Trademark Clearinghouse のガイドライ
ンにおける適格要件を満たす商標である。Trademark Clearinghouse に商標を登
録するには、申請者は商標の有効性を示す十分な情報と証拠を提示する必要が
ある。また Sunrise Service の利点を活かすには、商標を使用していることを示
す証拠を提出しなければならない。先述のガイドラインでは、Trademark
Clearinghouse は検証済みの商標権に関する情報のみを管理するデータベース
であると定義している。
Trademark Clearinghouse のガイドラインおよびその他の資料については、以下
のリンクを参照。
http://trademark-clearinghouse.com/
著作権
【英国】ウェブ上で一時的にコピーされた著作権物の閲覧は著作権侵害に
該当せず: 2013 年 4 月 17 日、英国最高裁判所は、長期間係争中の「Meltwater
事件」 1をめぐる訴訟において、インターネットの閲覧技術に関する画期的な
判決を下した。本判決は、著作権保有者によって承認されていないウェブペー
ジを閲覧するというエンドユーザーの行為は、著作権侵害にあたるとした下級
裁判所の判決を覆すものである。
最高裁判所は、ウェブページの閲覧によってエンドユーザーのブラウザの
キャッシュに一時的に作成されたコピーおよびスクリーン上に一時的に表示
されたコピーは、ダウンロードや印刷といった行為とは異なり、著作権の侵害
にはあたらないとする判決を全員一致で下した。この判決は EU 圏において重
大な影響を及ぼすため、英国最高裁判所は、欧州連合司法裁判所に対し、この
判決に関する報告を行った。
【フィリピン】フィリピン知的財産法の改正: 2013 年 3 月 22 日、フィリピ
ン知的財産法の改正が成立した。主な改正内容は以下のとおりである。
著作権局(Bureau of Copyright)の設立
改正により、知的財産権庁内部に著作権局が設置された。著作権局は、著作者
が講演または著作物に係る情報のやり取りにおいて保有する権利に関連し、そ
の使用許諾条件から生じた紛争の解決を担う。また同局は著作権の集中管理機
関の登録と認定に関する事務的業務にも携わる。
法執行の強化
知的財産権庁に対し、法執行当局が認めた場合において、立ち入り捜査を行う
権利が与えられた。知的財産権庁は、企業や事業体が知的財産を侵害している
という報告、情報、申立てに基づき、かかる企業や事業体に対して適切な時間
に立ち入り捜査を実施することができる。
また、著作権が侵害されている可能性が高い場合において、法的手段を何ら講
じていない著作権保有者に対し、通知を行う新たな対策も導入された。
間接侵害
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Newspaper Licensing Agency Limited (NLA) v Public Relations Consultants Association Limited
(PRCA)
2
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改正法では、著作権の間接侵害の責任を負う者について定めており、(1)侵
害行為によって利益を被る者、(2)侵害行為に関する通知を受けながら当該
行為を助長した者、(3)第三者の侵害行為を制御する権利および能力を持ち
ながらその努力を怠った者がこれにあたる。
損害賠償額の増加
改正により、著作権侵害事件における損害賠償額が増加した。著作権に関する
技術的保護手段の回避を行った場合は、賠償額が旧法で定められていた金額の
二倍となる可能性がある。
知的財産権の行使
【オーストラリア】税関における権利侵害物品の取締を強化するシステムが施
行: オーストラリア税関における新たな知的財産権侵害物品の差し押さえシ
ステムが 2013 年 4 月 16 日から施行された。このシステムは、商標および著作
権の行使に関する手続を大幅に向上するものとなっている。最も重大な改正点
は差し押さえられた物品を解放するための申立てに関する変更であり、新シス
テムにおいては、解放の申立てが行われない場合、差し押さえられた物品が破
棄される。従前において差し押さえられた物品を破棄するには、知的財産権保
有者が当該の物品が権利を侵害していることを証明しなければならなかった
が、新システムでは、物品の解放の申立ては輸入業者に課されることとなった。
申立てを行わない場合は、税関が物品を破棄することとなる。
その他の主な変更点は以下のとおりである。
•
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訴訟手続きの効率化
知的財産権保有者による物品検査の簡易化
知的財産権保有者への輸入業者に関するより多くの情報の提供
【米国】商標権侵害事件関与の通関業者に権利侵害の判決:ロサンゼルス連邦
裁判所は通関業者および当該企業の所有者に対し、輸入業者が模造ハンドバッ
グおよび財布を米国内に輸入するのを知りながら、業務を支援したとし、800
万米ドルを科す判決を下した。
アメリカ合衆国税関・国境警備局は、本訴訟の原告である米国コーチ・インク
(コーチ)に対し、ロサンゼルス港に入港した貨物にコーチの商標が付された
ハンドバッグおよび財布が相当量含まれていることを通知した。コーチは調査
において、これらの物品が模造品であることを確認した。これらの物品の通関
業務は Celco Customs(Celco)が代行していた。裁判において、裁判所は、模
造品の輸入業者の正体が判明しないよう、通関業者に対する委任状(Power of
Attorney)に手が加えられていたと断定した。また、陪審員は、Celco について、
委任状の記載事項に疑わしい点があったにもかかわらず、輸入業者の身元を特
定する努力を怠ったとし、輸入業者が模造品を輸入することを知りながら、通
関業務を代行したと判断している。
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サービスを提供する組織体において共通して使用されている用語例に従い、「パートナー」とは、法律事務所におけるパートナーである者またはこれと同等の者を指します。同じく、「オフィス」とは、か
かるいずれかの法律事務所のオフィスを指します。
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