▲ 4.1 検出方法の種類と特徴 ECL の検出は大まかに分類すると2 つに大別されます。 ①フィルムによる感光 フィルムを感光させて検出する方法です。もっともオーソドックスな方法で、高い感度での検出ができます。従来のフ ィルムの場合、暗室での現像作業が必要でしたが、ECL Mini-Camera の様なポラロイドフィルムを用いたインスタン トカメラタイプでの検出の場合、暗室操作も不要で、手軽にECL の検出ができます。 ② 検出用機器による検出 フィルム露光に変わる方法として利用されている方法には、冷却式CCD カメラによる検出があります。冷却式CCD カ メラによる検出は暗室が不要であること、またデジタルデータとして取り込まれるため、定量解析にそのまま用いるこ とができるという利点があります。最近では多目的画像解析装置の高感度化により、一部のスキャナーでは化学発光 を直接検出することができます。これらのスキャナーの場合、ケミフローレッセンス(化学蛍光)法による検出も可能 なシステムもあります。 ECL Mini-Camera Hyperfilm 冷却式CCD カメラ スキャナー 感度 ○ ◎ ○ △ 暗室 不要 必要 不要 不要 ◎ △ ○ ○ △ △ ○ ◎ △ ○ △ ◎ 手軽さ 定量性 * 他アプリケーションでの応用 *蛍光検出、放射性同位元素(RI )検出など ― 34 ― ▲ 4.2 ECL Mini-Cameraによる検出 ECL Mini-Camera とは... ポラロイドCB-103 フィルムホルダーをベースにしてデザインされた化学発光検出器です。ECL やAlkPhos Direct, Gene Images をはじめとした、タンパク質や核酸の化学発光検出すべてに使用することができます。 <推奨フィルム> インスタントフィルムは、8.5 ×10.5 cm サイズ、 ISO3000 相当の感度のものを推奨いたします。 <対応メンブレンサイズ> 2 種類のボートとメンブレンホルダーにより、 7.7 ×5.2 cm あるいは9.3 ×7.4 cm までのメンブレン をセットすることができます。 <ミニゲルホルダーを用いた操作方法> 1 ) フィルムカートリッジをカメラ本体のフィルムホルダーにセットします。黒い紙(遮 光紙)と白タブは外に出した状態にします。 2 ) 白タブがカメラ本体の内部に巻き込まれていないことを確認します。 3 ) フィルムホルダーのふたを閉めます。 4 ) 遮光紙を引き出すと自動的に白タブが引き出されます。フィルムのセットはこれで 完了です。メンブレンホルダーのふた側を上にして安定した机の上におきます。 5 )化学発光検出試薬をメンブレンにかけて反応させた後、余分な検出試薬を除去して からブロット面を下にしてメンブレンをラップの上にのせます。ラップは30 ×30cm 四方を目安として、机などの平面にラップを広げます。この際、できるだけラップに しわがよらないように注意します。 ― 35 ― 6 ) メンブレンにあわせて、ミニゲルホルダーを置きます。 7 ) ラップとメンブレンの間に気泡が入らないように注意して、メンブレンとホルダーを まとめてラップで包みます。 8 ) カメラ本体のメンブレンホルダー側のふたを開け、ラップで包んだメンブレンとミニ ゲルホルダーをカメラ本体にセットし、ふたを取り付けます。 9 ) シャッターを静かに開けて露光します。露光時間はシグナル強度とフィルム感度に よりますが、通常は1 分間程度の露光からはじめてください。露光が終了したら、シ ャッターを静かに閉めます。シャッターが完全に閉められていることを確認してくだ さい。 10 ) タブを引いてフィルムを引き出します。フィルムを室温で静置して現像を待ちます。 ― 36 ― ▲ 4.3 Hyperfilmによる化学発光検出(露光∼現像まで) <準備> 現像液や定着液のマニュアルを参照して溶液を調製します。試薬の温度は結果に大きく影響するので、温度が推奨条件に なるよう調整します(20 ℃が一般的です)。温度変化が激しいと容器が結露したり、現像ムラがおきやすくなります。X 線 フィルム(Hyperfilm など)やフィルムカセットも温度変化により結露することがあります。暗室の温度を20 ℃前後に安 定させて、試薬や容器、フィルムも使用前にその温度になじませておくことをお奨めします。 1 )(白色光下)ラップに包んだメンブレンを、ブロット面を上(ブロット面がX 線フィルムと接するよう)にしてフィルムカセッ トに置きます。 2 )(セーフティーライト下)X 線フィルムを箱から取り出し、フィルムカセットにセットします。フィルムがメンブレンの上で動 くと、画像ブレが起こりますのでご注意ください。フィルムカセットの蓋を閉め、1 ∼5 分露光します。発光が強い場合は露光 時間を短くすることで画像の濃さを調整できますが、露光時間が1 分以下の場合、セッティングの際の画像ブレの影響が出や すくなります。カセットが閉まっている間は、部屋の白色光を点灯させてもかまいません。 3 )(セーフティーライト下)カセットを開けてフィルムを取り出します。画像ブレが起こらないよう、速やかにフィルムとメン ブレンを離します。 4 )(セーフティーライト下)フィルムを現像液に浸します。フィルム面に気泡がないようにし、全体が均一に浸るようにします。 20 ℃で5 分を目安に現像します。現像時間を変えることでも画像の濃淡を調整できますが、現像ムラが起こりやすくなったり、 操作によるばらつきが大きくなります。温度と時間を一定にすることが、安定した画像を得るポイントです。 5 )(セーフティーライト下)フィルムを水道水を満たしたバットに移し、流水中に30 秒ほど置き、現像液を洗い流します。 6 )(セーフティーライト下)フィルムを定着液で満たしたバットに移します。フィルム面に気泡がないよう注意します。20 ℃で 3 分以上、乳剤が溶けてフィルムが透明になるまで十分に置きます。フィルムが透明になったら白色光をつけて定着ムラがな いか確認します。定着ムラが見られた場合はさらに定着液に浸して乳剤を除去します。 7 )(白色光下)流水中に10 分以上置き、定着液を洗い流します。 8 )(白色光下)水中からフィルムを取り出し、室温で風乾します。 ― 37 ― <Hyperfilm ECLによるタンパク質の定量化> ECL により発せられた光に対して、Hyperfilm ECL はリニアに感光することが示されています( 文献14) 。したがって、 フィルム上に得られたシグナルを、デンシトメトリーを用いて定量化することが可能です。また、フィルムがリニアに 感光する範囲は、プレフラッシングを行うことにより拡大され、より低レベルのタンパク質の定量化も正確に行えるよ うになります。以降に未知量タンパク質の定量化のガイドラインを示します。 1 ) 未知量タンパク質と既知量の同一抗原(スタンダード)サンプルの両方をウェスタンブロッティングします。少なくとも スタンダードは、5 段階の異なる希釈をとることをおすすめします。各希釈段階は10 倍以下に設定してください(下記の 実験例を参照) 。定量すべきタンパク質量がスタンダードレンジに入るよう調製することが重要です。そのために、異な る希釈倍率で未知量サンプルを何点かとることを考慮してください。 2 ) フィルムは、プレフラッシングして用いた方が良い結果が得られます。照射距離の目安を示したストロボ(Sensitize RPN2051 )を用いれば、この操作を比較的容易に行うことができます。 3 ) ECL ウェスタンブロッティングのプロトコールに基づいて検出を行います。正確に定量するためには、発せられる光量が フィルムのリニアに感光する範囲内であることが重要です。そのため、露光時間を変えて何枚かフィルムを感光させ、最 も低量のスタンダードによるシグナルがフィルム上でわずかに見えれば、他のスタンダードの何点かがリニアレンジに入 ってくるはずです。 4 ) フィルムをデンシトメーターでスキャンして、スタンダードのタンパク質量に対してピーク値をグラフにブロットします。 未知タンパク質量は、このグラフとブロット時の希釈から導き出すことができます。 ※ CCD カメラやスキャナーなどの化学発光・蛍光検出装置を使用することで、より簡単にタンパク質の定量化を行うことができます。 ■ 実験例 −ECLを使用− ニワトリ砂嚢ミオシンを10 µl 泳動バッファー中に、600 ng 、450 ng 、300 ng 、150 ng 、60 ng 含むスタンダード サンプルと60 ∼600 ng の範囲の検定用サンプルを2 種類調製しました。 すべてのサンプルを電気泳動し、Hybond-ECL にブロットしました。イムノディテクションは、抗ミオシン重鎖モノク ローナル抗体(1:20 )とHRP 標識抗マウス抗体(NA931 、1:3,000 )で反応後、ECL 検出試薬で検出しました。露光 時間を変えて数枚Hyperfilm ECL を感光させ、60 ng のスタンダードがわずかに見えるフィルムをデンシトメトリーで 解析しました。 UltraScan XL Laser densitometer *を用いてフィルムをスキャンし、スタンダードミオシン量に対してピークOD 値 をグラフにプロットしました。 検定用2 サンプルの量を、スタンダード直線から算出しました。 * 米 ※ UltraScan XL Laser densitometer の販売は現在は行っておりません。 (左から) 2.5 ミオシン600, 450, 300, 150, 60 ngと検出サンプル1, 2 Peak area (OD units ) 泳動後、Hyperfilm ECLを用いて15秒間露光しました。 ミオシン重鎖→ (200 kDa) Peak area (OD units) 計算値 実測値 検出用サンプル1 0.865 235 ng 240 ng 検出用サンプル2 0.476 125 ng 120 ng 2 1.5 1 0.5 0 60 150 300 ng myosin ― 38 ― 450 600 ▲ 4.4 バリアブルイメージアナライザーTyphoonによる検出 発光の検出は以下の操作手順を順番に行ってください。操作のポイントでは各工程での実際の操作を図で示していま す。合わせてご参照ください。 〈発光サンプルの準備∼操作手順〉 1 ) 発光サンプルを準備します。 発光基質で反応を行ったサンプルを準備します。 2 ) 発光サンプルのセッティングを行います。 反応を行ったメンブレンを 下図のような形で無蛍光ガラスに挟みこみます。 サンプル面のガラスにはカプトンテープを両端に貼り、少し浮いた状態にしてガラスとガラスがくっついてしまわ ないようにします。 Typhoon 本体のガラスステージ上に蒸留水をかけてカプトンテープを貼ってある面を下に向けて空気が入らない ように置きます。 Typhoon の蓋を閉めます。 3mm厚ガラス板 3mm厚ガラス板 Typhoonガラスステージ カプトンテープ メンブレン (サンプル面が下) 蒸留水 〈発光サンプルのスキャン〉 1 ) Typhoon の準備 Typhoon 本体及びPC の電源を入れ、デスクトップの画面からTyphoon ScannerControl を立ち上げます。 2 ) スキャン設定を行います。 scan acquisition mode からChemiluminescence を選択します。Setup でSensitivity をhigh にPMT voltage を950V に設定し、OK をクリックします。グリッドエリアを選択し、Pixel size 、Sample orientation 、Press sample 、focal plane 、Image analysis ソフトウェアを選択します。 3 ) スキャンを始めます。 Scan ボタンをクリックします。ファイル名を入力し、Save をクリックします。 4 ) 結果の確認を行います。 ImageQuant ソフトウェアを立ち上げ、画像の確認を行うことができます。 5 ) スキャン後のクリーンアップ サンプルを取り除き、Typhoon 本体をクリーンアップします。 ― 39 ― 本文 付録:冷却式CCDカメラシステムによるタンパク質の定量化 ■ 実験例 −ECL Advanceを使用− BSA をHybond-P に200 、100 、50 、25 、12.5 、6.3 、3.1 、1.6 、0.8 、0.4 、0.2 ng スロットブロットし、 抗BSA モノクローナル抗体(1:50,000 )、HRP 標識抗ラビット抗体(NA934 、1:200,000 )で反応後、ECL Advance 検出試薬で検出しました。冷却式CCD カメラ(ImageMaster-CL *)を用いて検出し、バックグラウ ンド補正後のボリューム値(補正後のシグナル強度の和)とBSA 添加量をプロットしました。低濃度側8 ブロ ット(0.4 ∼50 ng :閾値以上)のデータポイントに対する近似直線と対応するR2 値を示しました。 * ImageMaster-CLは現在販売しておりません。 30,000,000 Volume 25,000,000 20,000,000 15,000,000 10,000,000 R2=0.9978 500,000 0 0 50 100 150 200 250 BSA(ng) 結果 冷却式CCD カメラによる化学発光検出装置を使用することで、より簡単にタンパク質の定量化を行うことが できます。この系では、0.4 ∼50 ng の範囲で統計学的に有効な直線性が得られました。 ― 40 ―
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