PE050 教心第 57 回総会(2015) 友人への援助要請行動に関係効力性が及ぼす影響 後藤綾文(三重大学) 問題と目的 大学生は悩みを抱えた際に,専門機関ではな く,友人や家族への援助要請行動を取りやすい ことが指摘されている(木村・水野,2004)。一 方,援助要請行動を取ったとしても,必ずしも精 神的健康にポジティブに働くわけではないことが 指摘されている。例えば,友人からのサポート期 待とサポート受容とのズレと不適応との関連や, サポート源への信頼感の低下などが示されている (中村・浦,2000a,2000b) 。そのため,友人へ の援助要請行動を促進するには,友人関係の良好 さやサポート期待だけでなく,二者間に存在する 間主観的な要因に着目する必要がある。 二者間に存在する間主観的な要因として,関係 効力性がある。関係効力性とは,二者で共有され た効力期待を指し,自分たちの関係を脅かしうる 問題の予防や解決に向けて二者双方の資源を強調 的ないしは統合的に活用できるというものである (浅野,2011) 。本研究では,大学での親密な友人 関係における関係効力性が,援助要請行動頻度と 援助不安に及ぼす影響について検討する。 方 法 対象と手続き:親密な友人とのペア単位での質 問紙調査を依頼した。親密な友人関係61組(男 性28組, 女 性33組, 平 均19.04歳,SD=0.62) か ら 有 効 回 答 が 得 ら れ た。 関 係 継 続 期 間 は 平 均 11.98ヶ月(SD=10.13,range=6-82)であった。 調 査 内 容: ① 関 係 効 力 性:Murray & Holmes (1997)が作成し,浅野(2009)が邦訳・評定方 法を修正した親密な対人関係に関する効力感尺度 を使用した。②援助要請行動頻度:木村・水野 (2004)を用い, 「めったに求めない」∼「よく求 める」の 5 段階で,行動頻度を尋ねた。③呼応性 の不安:水野ら(2006)の援助不安尺度の下位尺 度を用いた。 結 果 二者の間主観的プロセスと個人の主観的プロセ スを弁別するため,マルチレベル構造方程式モデ リ ン グ(Multilevel Structural Equation Modeling: 以下 MSEM とする)による分析を行った。分析 は,級内相関係数を HAD(清水・村山・大坊, 2006)によって算出し,MSEM(最尤法)による 分析を Mplus(Muthen&Muthen,2007)を用いて 行った(Table 1,Figure 1) 。 考 察 関係効力性の高いペアは,二人とも呼応性の不 安が低く,援助要請行動を頻繁に取る傾向がある こと,関係への自己効力性の高い人は,呼応性 の不安が低いことが示された。Within モデルより Between モデルの説明率が高いことから,援助要 請行動に対し,個人要因ではない,状況や他者か らの影響は十分な予測力を示しうることが推測さ れた。 ― 473 ―
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