小林 利 彦 木 村 泰 三 久保田 修 犠 垣 淳 胃癌組織での抗 thymidine

日消外会誌 28(3):752,
研究速報
1995年
胃癌組織での抗 thymidine phOsphorylase
モノクローナル抗体 を用 いた免疫組織染色
小林 利 彦
久保 田 修
木
犠
村 泰 三
垣 淳
目的 :thymidine phosphOrylase(以
下,TdR Pase
と略記)は pyrimidine nucleoSdeの合成 お よび分 解
に働 く酵素で ある。正常組織 と比 較 し腫 瘍組織 内 で 高
い活性 を示 す こ とか ら最近 注 目され て はい るが 1),今
吉田 雅 行
原田 幸 雄
櫻
町 俊 二
松
本 武 久
Fig. 1 Immunostaining for thymidine phosphorylase in gastric cancer tissue by monoclonal
antibody (original magnification x250)
まで に病 理組 織 学 的 な検 討 はほ とん ど行 わ れ て い な
い。われわれ は第 44回日本消化器外科学会 総会 におい
て,胃 癌組織 にお けるポ リク ロー ナル抗体 を用 い た免
疫組 織染 色 に関 して発 表 したが分,今 回 モ ノク ロー ナ
ル抗体 を使用 す る機会 を得 たので報告 す る。
対象 および方法 :ホ ルマ リン固定 パ ラ フ ィ ン包埋 さ
れた 胃癌組織 (手術材料 )を 対 象 とし,O olMク ェ ン
酸緩衝液 (pH 6_0)中 での マ イ ク ロ ウェー ブ照射 によ
る前処 置 を行 ってか ら SAB(Streptavidine B10tin)法
に準 じた免疫組織染色 を行 った。 なお, 1次 抗体 は ヒ
ト大腸 癌 株 HCTl16を ヌー ドマ ウス皮 下 に移 植 して
得 た腫 瘍 か ら精 製 した TdR Paseを 抗 原 として作 成
し た マ ウ ス 抗 TdR Paseモ
ノ ク ロー ナ ル 抗 体
(6541)3)を
使 用 した。
:正
成績
常組織 に比 較 し腫瘍部 で は強 い染色性 が認
め られ (Fig.1),ポ リク ロー ナル抗体使 用時 にみ られ
た筋組織 な どの非特異的 な染色 は著 し く減少 した.た
だ し腫瘍組織 内での同酵素 の分 布 に関 して は,ポ リク
ロー ナル抗体使用時 と同様 に腫瘍辺縁 や底 部 において
強 い傾 向 が認 め られた。なお TdR Paseの 局在 ′
性 につ
い て は,腫 瘍細胞 質 内 に認 め られ る例 が 多 い ものの,
べ えた 限 りで は,同 酵 素 に 関 す る免 疫 組 織 染 色 の 報 告
は Yoshimuraら 1)のポ リク ロー ナ ル 抗 体 に よ る もの
が あ る に す ぎな い 。 今 回 モ ノ ク ロ ー ナル抗 体 を使 用 し
た わ けだ が ,正 常 胃粘膜 層 内 の リンパ 球 な どに も TdR
Paseの 存 在 が 疑 わ れ ,同 酵 素 が 腫 瘍 の増 殖 に伴 い活 性
が 高 ま るのか ,非 特 異 的 な炎症 性 変 化 な どで も増 強 す
るの か な どい まだ不 明 な点 も多 い。
Key wOrd i thynlidine phosphorylase
の存在が疑 われた。
文献 :1)Yoshimura A,Kuwazuru Y,Furukawa T
et al:PurillcatiOn and tissue distributiOn Of human
thymidine phOsphOrylase; high expression in
lymphocytes, reticulocytes and tumOrs Biochim
Biophys Acta 1034:107-113, 1990 2)イ
ヽ
林本U彦,
木 村 泰 三,吉 田 雅 行 ほ か :胃 癌 組 織 に お け る
考 察 :胃 癌 組織 で の TdR Paseの 分 布 や 局 在 性 な
どに関 してはポ リク ロー ナル抗体使 用時 と大 きな違 い
は認 め られ なか ったが,背 景組織 での非特異 的染色 が
減少 した ことによ リコ ン トラス トは良好 で あった。 調
pyrimidine nucleOside phOsphOrylaseの
局 在 に関 す
る免疫組織学的検討,日 消外会誌 27:1475,1994 3)
西 田 美 和,日 野 綾 子,森 一 茂 ほ か :ヒ トPyNPase
(dThd Pase)の モノ クロー ナル抗体 の樹立 とELISA
法 の確立.J Cancer Therapy 29:1505, 1994
腫瘍組織周辺 の間質や正常粘膜 層 内の リンパ 球 に もそ
Immunostaining for Thymidine Phosphorylase in Gastric Cancer Tissue Use of Monoclonal Antibody
;
Toshihiko Kobayashi, Taizo Kimura, Masayuki Yoshida, Shunji Sakutamachi, Osamu Kubota,
Jun
Isogaki, Yukio Harada and Takehisa Matsumoto
First Department of Surgery, Hamamatsu University School of Medicine and Department of
Oncology,
Nippon Roche Research Center
<1995年 1月 11日受理>別 刷請求先 :小 林 利 彦 〒 43131 浜 松市半 田町3600 浜 松 医科大学第 1外
科