柴田薫幹事のレーポートを添付しました。

報告「コンピューター制御によるピアノコンチェルト情報交換会」
共 催:SIGMUS(音楽情報科学研究会)
・JSEKM(日本電子キーボード音楽学会)
と き:2014 年 5 月 26 日(月曜日)10:00~12:00
ところ:明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 嵯峨山研究室
担 当:SIGMUS/嵯峨山 茂樹
JSEKM/阿方 俊
かねてより幹事会や会員へのメールで案内のあった、嵯峨山氏によるコンピューター制御の伴奏のシステムにつ
いての情報交換会が上記の日程で開催された。当学会からは 15 名(下記参照)が参加し、有意義な時間を持った。
日本電子キーボード音楽学会からの参加者
12
13
佐藤 眞一
森 春潮
森 貴子
JSEKM
元代表、幹事
幹事
幹事
会員
会員
会員
会員
協賛団体
協賛団体
協賛団体
協賛団体
会員
14
15
五十嵐 優
阿方 俊
会員
事務局長
1
2
3
4
5
7
8
9
10
11
氏 名
吉田 泰輔
柴田 薫
金銅 英二
小熊 達弥
阿方 葵
ウォン・へリン
西山 淑子
三枝 文夫
大石 耕史
所 属
元国立音楽大学学長・理事長
昭和音楽大学非常勤講師
松本歯科大学教授
サウンド・インターフェイス主宰
竹早教員保育士養成所非常勤講師
昭和音楽大学大学院学生
昭和音楽大学非常勤講師
KORG 技術開発責任者
KORG 技術開発責任者
松栄楽器店代表取締役
ミュージックトレード取締役
サウンド・インターフェイス チーフ
ディレクター
昭和音大卒、東京音大指揮在籍中
昭和音大電子オルガンアドバイザー
専 門
音楽学
電子オルガン指導・演奏
電子オルガン演奏
制作、電子オルガン演奏
ピアノ指導
ピアノ・電子オルガン
電子オルガン演奏、作曲
電子楽器製造
電子楽器製造
楽器販売
業界誌
制作、ピアノ
電子オルガン演奏・指揮
電子キーボード教育
嵯峨山研からの参加者
中村 栄太
橘 秀幸
東京大学〜国立情報研究所
東京大学〜国立情報研究所
情報交換会は事前のレジュメでの紹介の流れに添って行われたので、ここでもそのレジュメを活用してまと
めたい。
1.SIGMUS を代表して… 嵯峨山 茂樹教授からご自身の研究略歴(NTT での音声分析、音声合成
の開発を経て、
東大〜国立情報研究所〜明治大学で情報処理の手法による音楽への応用の研究)と、
会場となった明治大学の中野キャンパスの紹介があった。
2.JSEKM を代表して…吉田 泰輔氏より、新たな機器が新たな音楽を生む発想で、国立音大の応用
演奏学科を立ち上げ、JSEKM の初代代表となった経緯を語った。
3.参加者それぞれの自己紹介
4.コンピューター制御によるピアノコンチェルト研究の現状と課題(SIGMUS)
自動伴奏<Eurydice>は、統計的な連鎖確率による楽譜を追跡できる伴奏(全体やパート再生も可能)
システム。演奏者の「テンポ変動」
「音抜け」
「弾き直し」等に対応できる。楽譜上の「あいまい検索」
を瞬時に演奏中に行える。現状では MIDI 連動可能な楽器で可能。ピアノの独奏曲、連弾、二台ピアノ
曲、ピアノ伴奏の器楽独奏、ピアノ協奏曲などのデータがある。練習の段階での活用、ゆくゆくは本番
での応用などを視野に開発されている。USA の音響学会(ASA 2014 年5月)で発表(You Tube)
でも公開。
<Eurydice>という命名は、自動作曲<Orpheus>と対をなすもので、
「振り返らない」追跡を念頭
に、ギリシア神話の『オルフェオとエウリディーチェ』からきているとのこと。
5.デモンストレーション(参加者による体験)
かなりな性能と思われた事象
・ 演奏者の弾く状況に合わせてくれる…ヒトに機械が追随する(cf.カラオケでは、機械にヒトが合わ
せる)
・ 練習の初期段階のモチベーション…ゆっくりの譜読みで、片手練習、という状態でも両手で弾いた
ような音楽が鳴る。
・ 楽曲の全体が見渡せる。
・ 途中から弾く、弾き直す、弾き飛ばしに、ほぼ対応。
これからの課題に思われた事象
・ 同じような音の繰り返し…トリルや、同じモチーフの繰り返しでは、演奏箇所の特定が困難なこと
もある。
・ アンサンブルの妙である「対話」的な要素、旋律と伴奏と分けた場合のタイミングやテンポ感の「ズ
レ」が表現できない…(合いすぎる)→まだ「かけあい」は無理。
・ 発音のタイミングをどう捉えるか…MIDI 以外の楽器や歌、指揮と合わせることが可能となるか?
・ 弾き始めると付いてくるので、出会い頭のように弾いてしまう印象…(演奏者のアインザッツの感
覚は?)
6.感想、及び情報提供(JSEKM)
①小熊氏、サウンド・インターフェイスでのピアノコンチェルトを紹介。
<Eurydice>については、製品化の可能性を有力視。今後、対決型の即興にも対応してくれることを
期待。
(自動作曲と伴奏と両者を併せ持つような…)
②三枝氏=KORG 社での捉え方…伏流的な研究から製品は突然出てくるもの、伴奏機能として期待している。
6.まとめ
嵯峨山 茂樹氏(SIGMUS)
こうした分野が違う者同士が、クローズドのソフトウエアを共有し、使い方の発見をしたり、
フィードバックできるようにしていきたい。
([email protected]
YouTube ”Eurydice demo”で検索:ユーザー名 ASA2014)
吉田 泰輔氏(JSEKM)
学会全体として、広くこのシステムを紹介していきたい。
以上が当日の様子である。
従来の録音的な自動演奏による自動伴奏とは一線を画しており、機械的な再現と人間的な生演奏の中間に位置する
ものとして、音楽学習や音楽表現に新たな方法をもたらす可能性を感じた。
また、ロボット工学が人間の身体性を明確化したように、我々の音楽活動そのものを再認識させてくれる契機とな
るかもしれない。
(文責:柴田 薫)