関係節を用いない、連体節の英語への変換パターン The Translation

社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
関係節を用いない、連体節の英語への変換パターン
−情報の比重を連体節の英訳方法に取り込む−
佐良木 昌
岩垣 守彦
日本大学経済部 〒101-8360 東京都千代田区三崎町 1-3-2
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フリー
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あらまし 連体節を連用節/シテ節へ換言可能であるならば、その連用節が表す範疇的意味は、時点、時間的継起、
原因・理由、付属状態、相反に分類できる。この意味分類を基礎に、連体節の意味に応じた英語表現を生成する方
向を明確にした。連体節を英語関係節に変換するのではなく、従属接続詞、分詞構文などの文型に翻訳し、さらに
その際、連体節と主節とが表す情報の比重によって英文型における主節従節を適切に配列する。この翻訳方式によ
って簡潔な適訳が得られる。
キーワード 連体修飾、連体節の範疇的意味、連体節の連用節/シテ節への換言、情報の比重、非関係節による英
訳
The Translation Patterns from Japanese Adnominal Clause into English
―based on Semantic Classification of the Adnominal and Information Ratio between the
Matrix Clause and the Adnominal―
Masashi SARAKI
Morihiko IWAGAKI
Nihon University, College of Economic 1-3-2 Misaki, Chiyoda-ku, Tokyo, 101-8360 Japan
E-mail:
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Independent
[email protected]
Abstract This paper proposes the solution for aporia in machine translation from Japanese adnominal clause to English, and
provides the semantic classification of the adnominal and semantic categories: time, succession, causality, reason, situation,
and contrariety. Provided that the adnominal can be paraphrased in the continuous clause(adverbial), the machine translation
will be able to adopt subordinate conjunction or participial construction in English instead of relative clauses, based on the
semantic classification of the adnominal clauses. The translated English sentence structure is according to the translation
patterns based on information ratio between the matrix clause and the adnominal.
Keyword adnominal clause, semantic categories, paraphrase from the adnominal to the adverbial, information ratio, patterns
1. はじめに
の従 属 節 や分 詞 構 文 の文 型 を採 用 して英 訳 するという方
1.1.
向 が検 討 課 題 となる。
連 体 節 を 英 語 関 係 節 に 翻 訳 す ると 非 文 に な る場 合 が 多
益 岡 [2]は、形 式 は装 定 (主 名 詞 を飾 る)だが内 容 は述 定
く観 察 され、特 に「先 行 詞 が特 定 な唯 一 の人 ・物 ・事 の場
( 主 節 に 述 部 に 係 る) と いう性 格 を 持 っ た 連 体 節 に つ いて、
合 」、分 詞 構 文 や従 属 接 続 詞 の節 として英 訳 すべきことを、
次 の事 柄 を指 摘 した。
岩 垣 [1]が提 案 している。たとえば、次 の連 体 修 飾 節 の 英 訳
①
ては、その付 加 内 容 には、「対 比 ・逆 接 」「継 起 」「原
は分 詞 構 文 が適 切 である(以 下 、連 体 修 飾 節 を、単 に連 体
因 ・理 由 」「付 帯 状 況 」がある
節 という)。
三 年 ば かり ニ ューヨ ークで 暮 らした 私 には、 国 際 人 にな る
主 節 の表 す事 態 に対 して情 報 付 加 する連 体 節 につい
②
これらの連体節表現は意味内容から言えば、述定として機
能している
ということがどんなに大 変 なことかよくわかる。
Having once lived for three years or so in New York, I
③
know very well how difficult it is to become an
益 岡 の上記の知見は、南[3][4][5]の「∼テ」の分析や仁田[6]によ
‘
internationally minded person’
.
る「シテ形接続」の意味分類に符合する。
この提 案 に踏 まえるならば、ある種 の連 体 節 は、非 関 係 節
これらの連体節表現は連用節へのパラフレーズが可能
白井ら[7]は南の知見を基に、B類の中止性(意味的流れの)が
次 に , こ の 問 題 は 斉 藤 ・ 赤 野 ・ 中 村 [ 10 ] で も 触 れ ら れ て
弱いタイプは、次に現れる連用節述語に係る動作性の強い述語
は、動作性の弱い述語を飛び越し、動作性の弱い述語は動作
いるが、そこでは Greenbaum & Nelson[11]による副 詞 節
性の強い述語に係る、という知見を提案した。白 井 の 知 見 か ら、
の 位 置 関 係 の 調 査 結 果 ( 文 頭 29.3%, 文 中 1.8%, 文 末
B 類 従 属 句 と次 の述 語 とは意 味 的 結 束 性 が強 いという推
68.8%)を挙 げ、さらに「When 節 は文 末 を 好 み(62.8%),他
論 ができ、さらに拡 張 すれば、連 体 節 の述 部 がB類 の「述 語
方 if 節 は文 頭 に起 こることが多 い(62.7%)。特 に文 頭 の if
的 部 分 / 以 外 の 要 素 」( 南 [3][4])を含 むと き、 連 体 節 述 部
節 に つ いては , 条 件 ・ 結 果 と いう意 味 的 に 自 然 な 順 序 が 他
と主 節 述 部 との意 味 的 結 束 性 が強 いという推 論 が可 能 であ
言 語 で も 観 察 さ れ る 普 遍 的 は 傾 向 で あ る と い う 」 (ibid.
る。
p.125) と説 明 されている 1 。節 の前 置 ・後 置 は「好 み」ではな
以上の知見に基づいて以下の仮 説 が 提 案 されている( 佐 良
木 ・新 田 [8]。)
く「単 位 情 報 の 比 重 」によって決 まる。したがって,言 語 の 分
析 にこの観 点 を加 味 しなければならない。
<連体節を連用節/シテ形に換言可能であるとき、連体節
の英訳は、関係節ではなく、従属節・分詞構文が適切であ
る>
2.2. 「情 報 の比 重 」のパターン
1) 「 単 位 情 報 ( 一 つ の 動 詞 が 一 つ の 単 位 情 報 を 作 る) の
本 稿 では、この仮 説 に基 づき、連 用 節 の英 訳 方 式 を検
比 重 」というのは,簡 単 に説 明 すると,たとえば,「 私 たちが
討 し、さらに、 連 体 節 と 主 節 と 間 の 情 報 の 比 重 と いう観 点 か
朝 食 を 終 えた と き, 彼 が 部 屋 に 入 って きた 。」と いう二 つ ( 以
ら、その比 重 のパターンによって訳 出 する英 文 の構 造 (主 節
上 ) の 単 位 情 報 を 含 む 文 の こ と で ,こ の 日 本 文 の 英 訳 を 求
と従 属 節 との 配 列 )を 検 討 す る(岩 垣 [9])。これら検 討 を 通
めると,ほとんどの人 は(機 械 翻 訳 でも)
して、連 体 節 の英 訳 方 式 を提 案 する。
When we finished[had finished] breakfast, he walked
in.
2. 「情 報 の比 重 」と複 数 の単 位 情 報 の表 層 関 係
2.1. 「情 報 の比 重 」に基 づく英 訳
とす る。 文 法 的 に は 正 しいが , 言 語 情 報 的 に は 正 しくな い 。
この 文 には 前 後 の 状 況 を 表 す 情 報 が 与 えられてな いので ,
人 が行 う翻 訳 では,日 本 文 を 読 んで瞬 時 に「情 報 の比 重 」
二 つ の 単 位 情 報 の 関 係 は 、 日 本 語 で は「 未 了 解 情 報 + つ
(何 を伝 えようとしているのか)を感 知 して、それを伝 える文
な ぎ」 +「 未 了 解 情 報 」 で, 「 情 報 の 比 重 」 は 同 じで あ る。 二
構 造 の 等 価 関 係 を 考 えてか ら翻 訳 をす る。たとえば,「太 郎
つの単 位 情 報 の比 重 が同 じ場 合 ,英 語 では「未 了 解 単 位
が 食 べ た 花 子 の 弁 当 は お い しそ うだ っ た 」 に 対 して と っ さ に
情 報 」 +「 つな ぎ + 未 了 解 単 位 情 報 」 と いう論 述 様 態 を と る
出 てくる英 文 は
ので
We had just finished breakfast when he walked in
Hanako's packed lunch looked good as Taro ate.
[came into the room].
である。この日 本 文 で伝 えたいことは主 節 である「花 子 の弁
当 はおいしそうであった」であって、連 体 節 である「太 郎 が 食
としなければならない。
べ た 」 は 比 重 が 軽 いと 考 えら れ るが 、 二 つ の 動 作 ( 食 べ た 、
おいしそ うだっ た)はほぼ同 時 であ るので、「食 べた」と「おい
2) そ れ で は , こ の 文 の 前 に 情 報 ( た と えば , 朝 の 内 に 彼 が
しそうだった」という二 つの単 位 情 報 をつながなければならな
来 ることになっているというような情 報 )があるとどうなるか。日
いので英 語 では as を用 いるのである。
このように英 語 的 には複 文 が「情 報 の比 重 」で区 別 され
本 文 は、言 語 情 報 的 には、日 本 語 :「了 解 情 報 +つなぎ」
+「 未 了 解 情 報 」 に な るの で , 対 応 す る 英 語 の 論 述 様 態 は、
ている。たとえば,「昨 日 街 に行 った。通 りを歩 いているとき
英 語 :「 つなぎ + 了 解 単 位 情 報 」 +「 未 了 解 単 位 情 報 」 と な
に花 子 に会 った。」を英 語 に変 換 すると,後 半 は二 つの型 が
り,したがって,
When we finished[had finished] breakfast, he walked
可 能 である。
in.
I went downtown yesterday.
I was walking along the street(,) when I met Hanako.
という文 になる。
When I was walking along the street, I happened to meet
Hanako.
3) しか し, 英 語 は さ ら に 複 雑 で , 本 来 の 英 語 で あ るな ら,
この二 つの型 に関 して,最 初 に触 れたのは今 から約 60
実 は , 単 位 情 報 の 二 つ の 動 作 の 関 係 が あ い ま いな 場 合 に
年 ほ ど 前 , 北 京 大 学 言 語 学 科 の 教 授 林 悟 堂 で あ る。 林 は
は,When+単 位 情 報 の 主 語 が,次 の単 位 情 報 の主 語 と 異
デンマークの世 界 的 に有 名 な英 文 法 学 者 イエスペルセンの
な る 場 合 も , When + 単 位 情 報 の 主 語 と , 次 の 単 位 情 報 の
弟 子 であった。 林 は 中 国 の 学 生 のた めに 書 いた『開 明 英 文
法 』 [9 ] の 中 で , 「( 中 国 の ) 学 生 は When... を 使 うが , 英 語
では ...(,) when...が普 通 である」と述 べている。ただし,その
違 いについての説 明 はしていない。
1
筆 者 による現 代 英 (米 国 週 刊 誌 )の統 計 では、when 節 の文 末
傾 向 は確 認 できたが、if 節 は文 頭 出 現 率 は、38.8%であった。
主 語 と同 じ場 合 でも,もう一 つ動 作 がなければ使 うことができ
報 と 解 す ると 、 情 報 比 重 パ タ ー ンは β 型 で あ る。 こ の パ タ ー
ないのである。
ンでの英 訳 が上 掲 の英 文 で適 訳 である。藤 田 に係 る連 体
When we finished[had finished] breakfast, he walked
in and delivered a speech.
When we finished[had finished] breakfast, we went
into the garden and picked some roses.
な ら自 然 な 英 語 で あ る。 た だ , 後 者 の 場 合 when は 日 本
節 は時 の連 用 節 に換 言 可 能 であり、この部 分 は英 訳 文 の
分 詞 構 文 に当 たり 関 係 節 は 採 用 されていない。女 性 に係 る
連 体 節 は連 用 節 に換 言 不 可 であって、この部 分 の英 訳 に
は現 在 分 詞 の 後 置 形 容 詞 用 法 (限 定 用 法 の 関 係 節 相 当 )
が採 用 されている。
語 に 置 き 換 えると「・ ・・と き」 ではな く「・・・ と」 の 意 味 で あ る。
したが っ て, 人 に よ って は, when... ではな く, 情 報 の 比 重
を同 じにして ...and... を使 うこともある。
こ の よ うに , 言 語 情 報 と い う 観 点 か ら「 文 法 」 を 眺 めると ,
3. 連 体 節 が表 す単 位 情 報 と英 訳 事 例
連 体 節 を 連 用 節 / シ テ 節 に 換 言 可 能 な と き、 そ の 換 言 に
よっ て 連 体 節 が 表 す 意 味 を 、 論 理 範 疇 で 表 現 す ること がで
文 法 的 に 正 し い 文 も 言 語 情 報 的 に は 必 ず しも 正 し くな い も
き る。 こ の 換 言 が 可 能 な と き は 、 連 体 節 の 英 訳 は 関 係 節 で
のが多 いということがわかる。
はな く 分 詞 構 文 ・ 従 属 節 が 適 切 で あ る が 、 そ の 英 訳 の 際 に
は「情 報 の比 重 」パターンを選 ばなくてはならない。
4) した が っ て , 動 詞 を 二 つ 以 上 を 使 う「 連 体 節 を 含 む 日 本
論 理 範 疇 と しては、ここでは、連 体 節 が 英 訳 に おいては 関
文 」は,英 語 における複 文 と同 じように「情 報 の比 重 による
係 節 に訳 出 されていない事 例 を鳥 バンクデータから収 集 し、
分 類 」が 必 要 である。ここで,「情 報 比 重 」のパターンを 整 理
こ の 整 理 か ら 導 出 で きた 諸 範 疇 ( 時 点 ・ 時 間 的 継 起 ・ 原 因
しておく。
理 由 ・ 付 属 状 態 ・ 相 反 )(佐 良 木 ・ 新 田 [8])を用 いる。 以 下
α型
日本語:「未了解情報+つなぎ」+「未了解情報」
英 語:「未了解情報」+「つなぎ+未了解情報」
β型
では、ここでは、 時 点 ・ 時 間 的 継 起 ・ 条 件 ・ 相 反 の 事 例 を 採
り上 げる。
連 体 節 の 表 す 範 疇 的 意 味 は 、以 下 の 箇 条 書 きのように 分
類 し、 連 体 節 と 主 節 と の 情 報 の 比 重 を 、α 型 ・β 型 ・ γ 型 と
日本語:「了解情報+つなぎ」+「未了解情報」
に区 別 した。これら意 味 分 類 と情 報 比 重 のパターン区 分 と
英 語:「つなぎ+了解情報」+「未了解情報」
によって、英 訳 文 における情 報 比 重 も 適 切 になっていること
γ型
日本語:「了解情報+つなぎ」+「未了解情報」
英 語:「了解情報」+「つなぎ」+「未了解情報」
を示 す、
な お 以 下 で は 、 主 に 従 属 接 続 の 節 を 採 り あ げ るが 、 そ の
従 属 節 に代 えてを分 詞 構 文 を用 いてもよい。
以 上 のパターンを、以 下 、α型 、β型 、γ型 と呼 ぶことと
す る。な お、 了 解 情 報 / 未 了 解 情 報 を 既 知 情 報 / 未 知 情
①「時 点 」の情 報 → when clause
報 と言 い換 えても同 じである。
・田 舎 から東 京 へ出 て来 た義 男 は、目 を丸 くして驚 いた→
田 舎 から東 京 へ出 て来 たとき、義 男 は目 を丸 くして驚 いた。
5) 以 上 のような対 応 関 係 が「連 体 節 を 含 む 日 本 文 」にも必
要 で あり, その ためには 連 体 節 を「 情 報 の 比 重 」 の 観 点 か ら
The Yoshio's eyes were wide with amazement when he
came to Tokyo from the countryside
分 類 し 直 さ な け れ ば な らな い 。 そ の 場 合 , 日 本 語 は 情 報 が
α型
動 詞 の 用 途 範 囲 に 依 存 して いる の で , 「 連 体 節 + 名 詞 」 で
・ 選 手 宣 誓 を 述 べ ると きの 学 生 の 声 は 荘 重 だ っ た → 選 手 宣
は適 切 な分 類 はできないと考 えられるので,いわゆる述 語 動
誓を述べたとき、学生の声は荘重だった。
詞 を含 む 文 を 前 提 とする。つまり変 換 処 理 の 際 に「連 体 節 」
が文 の中 でどのように現 れているかは重 要 な要 素 でからであ
The student's voice was solemn as he announced the
athlete oath.
る。たとえば,次 の 文 には連 体 節 が 二 つ 含 まれているが,英
語 に変 換 する際 の処 理 は異 なる。
1949 年 に二 度 目 の渡 仏 をした藤 田 嗣 治 は,その年 のう
ちに,レストランにひとりで座 っている女 性 を描 いた →
1949 年 に二 度 目 の渡 仏 をしたとき、藤 田 嗣 治 は,その年
α型
・ 人 ご み の 中 に わた しを 見 つ けたトムは「お お い!」 と 叫 ん だ
→人 ごみの中 にわたしを見 つ けて、トムは「おおい!」と叫 ん
だ。
When Tom found me in the crowd, he yelled "Hey!"
のうちに,レストランにひとりで座 っている女 性 を描 いた。
Visiting France for the second time in 1949, Fujita Tsuguji
painted a picture of a woman sitting alone in a restaurant.
こ の 例 文 が 文 脈 を 前 提 と して お り 、 藤 田 に 係 る 連 体 節 は 了
解 情 報 であり、主 節 および女 性 に係 る連 体 節 は未 了 解 情
β型
・イギリス人 が人 をもてなすときの典 型 的 な献 立 は紅 茶 とスコ
ー ン で あ る→ イギ リ ス 人 が 人 を も て な す と き 、 典 型 的 な 献 立
は紅 茶 とスコーンである
When the British entertain their guests, a typical menu is
tea and scones.
me, suddenly his/her attitude changed completely.
β型
β型
分 詞 構 文 ・従 属 節 ではなく逆 接 の等 位 接 続 詞 but を使 う
②「時 間 的 継 起 」の情 報 →while clause/after clause
γ型 の事 例 を挙 げる。
・恋 人 に捨 てられたキャサリンは、悲 しみに暮 れている→恋 人
に捨てられてから(ので)、キャサリンは悲しみに暮れている。
・今 までいつもびりだった弟 が、一 躍 先 頭 におどり出 た。→
今 までいつもびりだったけれど、弟 は(が)、一 躍 先 頭 にお ど
り出 た。
Catharine is heartbroken after her boyfriend left her.
α型
・ 非 常 呼 集 を 受 け た 特 殊 部 隊 は 、 す ぐ 現 場 に 急 行 した 。 →
My brother was always behind the rest, but he has
suddenly leaped to the top.
非 常 呼 集 を受 けて、特 殊 部 隊 はすぐ現 場 に急 行 した。
γ型
The special force police unit rushed to the spot
あんなに丈 夫 だった父 も、病 気 には遂 に勝 てなかった→あ
んなに丈 夫 だったけれど、父 も病 気 には遂 に勝 てなかった。
immediately after the unit was called out.
α型
・30年 ぶりに会 った父 子 は、ただ泣 くばかりだった→30年 ぶ
My father was so strong, but couldn't overcome illness
after all.
γ型
りに会 って、父 子 はただ泣 くばかりだった。
The father and his son just kept crying when they met
4. 連 体 節 を 関 係 節 に 英 訳 し な い 事 例
after a thirty-year separation.
α型
・赤 ん坊 を救 出 した犬 は、人 々の称 賛 の的 になっている→
連 用 節 /シテ節 に書 き換 えが不 可 である連 用 節 につい
て、ここで若 干 の事 例 を採 りあげる。
赤 ん坊 を救 出 して、犬 は人 々の称 賛 の的 になっている
After rescuing the baby, the dog drew great admiration.
β型
1)「 連 体 節 +< 人 / 者 >[が /も]いる/ 多 い」の 文 型 であ
り、連 体 節 述 語 が 思 考 や発 話 の 動 詞 である。その英 訳 では、
・フォアボールで出 塁 した長 島 は、次 打 者 への投 球 1球 目
英 語 文 型 が that clause や X as Y を採 る。例 えば、連 体
に二 塁 へ盗 塁 した →フォアボールで出 塁 して、長 島 は次
節 述 語 が 、「と 思 う・ 考 える・ 予 測 す る」「と 言 う・ 主 張 す る」 な
打 者 への投 球 1球 目 に二 塁 へ盗 塁 した。
どであり、これらに英 語 動 詞 +that clause が対 応 する。
After walking, Nagashima stole second on the pitcher's
first pitch to the next batter.
・フランス語 は抽 象 思 考 に向 いていると言 う人 もいる。
Some people say that the French language is suitable
β型
for abstract thought.
・将 来 大 地 震 が来 ると予 測 する人 もいる。
③「条 件 」の情 報 →once clause, if clause
Some
・ いっ たん 引 き 受 け た 仕 事 は 、 あ くま でも や り ぬ きな さ い→ い
ったん引 き受 けたら、仕 事 はあくまでもやりぬきなさい
people
foretell
that
we
will
face
major
earthquakes in the future.
・死 刑 は必 要 悪 だと主 張 する人 もいる
Once you have undertaken a task, you should see it
through.
Some people claim that capital punishment is a
necessary evil.
β型
・入 場 券 をお持 ちでない方 はこちらにお並 びください。
・ケネディンは CIA に暗 殺 されたと主 張 する人 もいる
Some people assert that J. F. K. was assassinated by
→ 入 場 券 を お 持 ちでな いと きは、(そ の 方 は)こ ち らに お 並
びください。
CIA.
連 体 節 述 語 が思 考 ・発 話 の動 詞 である場 合 、その英 訳
If you have no admission ticket, please form a line here.
β型
④「相 反 」の情 報 →although clause, but coordination
了 解 情 報 に相 反 する事 柄 が起 こるという関 係 、これを仮 に
方 法 を、パターン化 して以 下 に示 す。
s1 [ c
[[ s2 ・・・]と^V]^N]がいる] → [Some N^V that [・・・] s2 ] s1
ここで、 c [ ]は連 体 節 、 s2 [ ]は名 詞 節 、 s1 [ ] は文 全 体 である。
s1 [ c
[[ s2 ・ ・ ・ ] と ^V]^N] が いる 、 と い う 統 語 構 造 を 、 s1 [ 幾 人 の
「相 反 」の情 報 と言 うこととする。連 体 節 の 表 す了 解 情 報 と、
N が[ s2 ・・・]と^V]という構 造 に換 言 できる。ここから英 文 生 成
主 節 が 表 す 未 了 解 情 報 と が 相 反 関 係 に あ ると き、 「 情 報 の
を設 計 すると、Some N^V that [・・・]
比 重 」はβ型 である。
生 成 可 能 である。
・ 今 ま で 親 切 だ っ た 友 人 の 態 度 が 、 が らり と 変 わ っ た 。 → 今
まで親 切 だったのだが、友 人 の態 度 ががらりと変 わった。
Though a friend of mine had always been very kind to
s2
などの簡 潔 な構 造 を
本 例 のような連 体 節 を含 む日 本 文 を、There 構 文 と関 係
節 とによって英 訳 する従 来 の翻 訳 手 法 では英 訳 文 は複 雑
にならざるを得 ない。それとは対 照 的 に、本 パターンによる
英 訳 では、簡 潔 な英 文 で冗 長 性 はない。
A lot of countries have had to cede part of their
連 体 節 述 語 が上 掲 例 のように思 考 や発 話 の動 詞 ではな
territories after losing wars.
い事 例 も挙 げる。この場 合 でも、SVO の文 型 を基 本 に英 訳
する。
3 ) 「 連 体 節 + < 形 式 名 詞 > が 多 い・ 少 な い / 高 い・ 低 い 」
・相 場 で荒 稼 ぎをする人 がいる。
の文 型 であり、その英 訳 では、<形 式 主 語 +文 末 述 語 >の
Some people make a lot of money on stock speculations.
いるということである。
Some of young drivers drive recklessly.
これら二 例 の場 合 でも、上 掲 パターンの that 節 部 分 を外 し
たパターンを工 夫 することができる。
s1 [ c
部 分 を、英 語 の頻 度 副 詞 に変 換 するとともに、SV の文 型 を
採 る。言 い換 えると、SVO/SVC の文 型 において副 詞 を 用
・若 い人 の中 には無 謀 な運 転 をする人 がいる。
・人 のからだは、おのずと治 癒 する場 合 が多 い。
Human body can often cure itself.
・日 本 語 の主 語 は省 略 される場 合 が多 い。
[・・・V^N]がいる] → [Some N^V ・・・] s1
ただし、< 連 体 節 + 名 詞 > を 、一 つの 名 詞 句 ( 後 置 修 飾 を
伴 わな い)として 訳 出 す る事 例 では、 本 パタ ーンは 適 用 で き
「場 合 が多 い」がoftenに当 たる。
In Japanese language the subject is often left out.
・その解 法 では問 題 は解 決 できない可 能 性 が高 い。
ない。
・軍 国 主 義 を唱 える人 がまだいる。
The approach is probably unable to solve the problems.
「可 能 性 が高 い」が probably に当 たる。
We can still find militarists in our country.
2 ) 「 連 体 節 + < 人 / 者 > が 多 い/ 少 な い」 の 文 型 で あ り 、
5. 今 後 の 課 題
英 文 型 は 、 < There 構 文 + 関 係 節 > を 採 る こ と も あ る が 、
主節主名詞に係る連体節に止まらず、主節述部が
SVO/SVC な ど の 文 型 に よ っ て 英 訳 す る 方 式 で は 、 簡 潔 な
展開する格要素、あるいは名詞述部、こういった名詞
英 文 が生 成 できる。
に係る連体節の英訳方式についても、今後、検討して
・電 車 の中 で漫 画 雑 誌 を読 んでいる人 が多 い。
いかなければならない。例えば、
There are many people who read comic magazines on
the train.
[従 来 翻 訳 ]
Many people read comic magazines on the train.
・この金は私が困ったときの最大の頼みだ。
This money is my best option when I am in trouble.
この事例においても、関係節ではなく従属節によ
[提 案 方 式 ]
次 に、SVO/SVC 文 型 の事 例 を挙 げる。
る英訳が適切である。
了解情報/未了解情報の判定、したがってパター
・私 の友 人 には軍 隊 経 験 のある人 が多 い。
ンα・β・γの選択には、意味解析の過程が必要であ
Many friends of mine have been in the military.
るが、今後の課題とする。
・北 欧 の人 は英 語 を話 す人 が多 い。
ま た 、 連 用 節 / シ テ 節 に 書 き換 えが 不 可 で あ る連 用 節
Many Nordic speak English.
の 英 訳 方 式 に つ いて は、 事 例 を 提 出 す るに 止 ま っ た が、 関
・環 境 問 題 にかかわっている人 が少 ない。
係 節 を 用 いない連 体 節 の英 訳 諸 形 態 を網 羅 的 に収 集 す る
Not enough people have concerns about environmental
problems.
ことは今 後 の課 題 とする。
さらに、また、連体節述部の時制が、英訳文の時
これらの 三 英 文 は SVC/SVO の 簡 潔 な 英 文 で あ る。これ ら
制に関わるときの翻訳方式については、別途、研究が
の 英 訳 の 場 合 、 その 英 訳 方 法 を、パ ターン 化 して 以 下 に 示
必要であるので、別の機会に触れることとする。
す。
s1 [ c
[・・・V]^N]が多 い/少 ない → Many/Few N be [・・・]
c
s1 [ c
[・・・V]^N]が多 い/少 ない → Many/Few N^V [・・・]
c
6. 結 論 的 所 感
連体節を連用節・シテ節に換言可能なとき、その
英訳の方式について提案した。一つは、連体節の範疇
以 上 の 事 例 は 、 主 節 主 名 詞 が< 人 ・ 者 >であ るが、ここで、
的意味に応じて従属接続詞などを選択すること、二つ
それ以 外 の主 名 詞 の事 例 を挙 げる。
には、連体節・主節間の情報の比重のパターンに応じ
・ヨーロッパ企 業 が研 究 に投 資 する額 があまりにも少 ない。
て英訳文における主節・従節の配列を決めることであ
European firms invest too little in research.
主 格 相 当 を表 す助 詞 「は」の事 例
・春 に花 が咲 く植 物 は多 い。
Many plants bloom in May.
・戦 争 に負 けて領 土 の一 部 を失 った国 は多 い。
った。
本稿において提案した英訳方式によって、適切な
英文の文型を採って、連体節を、簡潔な英文に翻訳す
ることが可能になる。したがって、連体節の英訳を関
係節を採って行うと非文になるという誤りや複雑な構
造の英文生成を防ぐことができる。
7. 文
献
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