様 人工肛門(ストーマ)について 大阪市立大学医学部附属病院 消化器外科 主治医 説明をした日 年 月 日 1.はじめに 人工肛門というと人工の器具のようなものを想像する人も多いのですが、人 工物をお腹につけるわけではありません。すべて、自分の腸や尿の管を用いて、 便や尿の出口をつくるわけです。 人工肛門をつくらずに済めば、それにこしたことはないでしょう。しかし、 病気によってはどうしても人工肛門が必要となってくることもあります。この 場合、病気とうまくつき合うのと同じように、人工肛門ともうまくつき合うこ とによって、手術前とほとんど変わらない生活を送っている方も大勢います。 ここではそのために役立てて頂ける知識、ケア方法、生活するうえでの工夫 についての情報をお伝えします。 2.ストーマとは ストーマとはギリシャ語で「口」を意味します。医学的には手術をして、お腹 に造った、便や尿の排泄口を指します。人工肛門など消化器ストーマと人工膀 胱に伴う尿の排泄口(尿路出口)である尿路ストーマなどがあります。ここで は、消化器ストーマについて説明します。 3.ストーマの外観 一般的なストーマの形は丸くて少し、突出しています。ストーマは腸粘膜でで きているので、赤く、ぷにぷにしていて、いつも潤っています。 4.今までの排泄との違い もっとも大きな違いは排便の調節ができないということです。肛門には括約筋 という筋肉があり、便を出したり、我慢したりというコントロールをしていま す。しかし、ストーマでは排泄物が自分の意志とは関係なく少しずつ排泄され てしまいます。そのためにストーマを持つ人は、特殊な袋でこれをいったん受 けとめて、ある程度ためてから捨てるという方法をとります。この排泄のコン トロールをするための袋をストーマ袋、ストーマ袋を装着面の皮膚を保護しな がら取りつけるものを皮膚保護剤といい、これらをまとめてストーマの装具と いいます。 5.ストーマを造る手術 ストーマが必要な病気は多岐にわたります。また、病気によって、腸のどの部 分でストーマが造られるかは異なります。大別すると結腸ストーマと小腸(回 腸)ストーマにわけられます。 6.ストーマケアの習得 ストーマによる排泄をスムーズに行えるようにしていくことをストーマケアと いいます。実際の手順などについては別資料にて説明致します。 1)術前 手術前に担当医からストーマの造設について説明があります。その後、ビデオ、 パンフレットなどによりストーマについての説明があるので、理解し知識を深 めるよう努力しましょう。 2)術後 手術後、はじめのうちはストーマケアを看護師が行います。ちょっと怖いかも しれませんが、装具交換の際、ぜひ、自分のストーマをみてください。(術直後 はストーマは手術操作により腫れています。このため、大きくみえますが、次 第に小さくなってきます)。看護師が便の処理や装具交換をどのようにするかも 見ておきましょう。体力の回復に応じて看護師の指導により、少しずつ自分で ケアを行えるようにしていきます。 もっとも大事なことは退院後、自分でストーマケアができるようになることで すが、一緒に住んでいる家族の方にもケア方法を覚えていただくと安心でしょ う。一通りのケア方法が習得できれば退院となります。 7.日常生活における留意点 外出の際は、予備のストーマ装具を持参することが大切です。いつでも必要に 応じてストーマ装具交換ができるようにしておけば心の余裕が持てます。 1)食事 手術前と同様の食生活でも構いません。ただし、暴飲暴食を避け、食生活を楽 しみましょう。 2)ガスの音 ガスの 80%が、食べる時に飲み込む空気によるものだといわれています。食物 の種類によってガスを多く発生するもの(炭酸飲料、いも類など)もあるので、 人と会う約束がある場合などは控えるとよいでしょう。ガスが出る時はストー マ装具の上に手を置くと、音が手に伝わって音の大きさを抑えられます。 3)入浴 ストーマがあるからといって入浴を制限する必要はありません。ストーマ装具 をつけたままでも、はずしても、入浴もできますし、シャワーも使うことがで きます。ストーマ袋の便は入浴前に出しておきましょう。入浴後は必ずストー マ装具についている水気をふきとることが大切です。 4)睡眠 就寝前に必ずストーマ袋を空にしてから、ストーマ装具がしっかり装着されて いることを確認しましょう。水様便(回腸ストーマの人)の場合は、高分子吸 収体をストーマ袋の中に入れ、便を有形化するとよいでしょう。 5)衣服 基本的には手術前と同様の服装ができます。ただ、ストーマを圧迫しないよう、 ウエストのサイズを少し緩めるなど工夫が必要です。ストーマの真上にベルト があたる場合は、サスペンダー(ズボンつり)を利用するとよいでしょう。 6)スポーツ 体力の回復とともに徐々に手術前と同様に運動しても構いません。スポーツを はじめる前に担当医と相談しましょう。スポーツの前は排泄物を捨ててから行 います。ストーマ装具が汗ではがれたり、身体の動きでずれたりしないように ストーマ用ベルトを用いたり、テープで補強するなどの工夫が必要なときもあ ります。 7)仕事 体力が回復し、局所のセルフケアができれば職場復帰が可能です。職場復帰の 時期は個人差がありますが、1〜3ヶ月が目安で担当医と相談しながら体調に 応じての職場復帰が望ましいでしょう。 通勤するにあたってできるだけラッシュアワーを避け時差通勤したり、通勤途 中のトイレの場所(例えば地下鉄のトイレなど)を確認しておくと万一の時慌 てずに済むでしょう。 8)学校 楽しい学校生活が送れるように自分で装具交換や排泄処理ができるようになっ ておきましょう。問題がおきたら速やかに対応できる体制をつくっておき、担 任及び養護の先生に理解してもらい協力を得ましょう(例えば授業途中でもト イレに行くことができる、職員トイレの使用、保健室に予備のストーマ装具、 着がえの衣類などの保管など)。 9)旅行 自由に旅行できます。海外旅行を何回も楽しむ方もいます。体力の回復に問題 がなければ、術前と同様、積極的に外へ出るようにしましょう。家近くを散歩、 スーパーへ買い物、デパート、喫茶店など徐々に距離を伸ばし身体を慣らし一 泊旅行と自信をつけていくとよいでしょう。長期海外旅行は担当医と相談し、 決めたほうが安心でしょう。飛行機に乗る際、ストーマバサミは申告して預け る必要があるので、面板の穴は事前にカットして用意したほうがよいでしょう。 4.社会的なサポートについて 1)社会福祉 永久にストーマ造設術を受けた方は、ストーマ造設直後から身体障害(4級) の認定が受けられます(ただし、一時的ストーマを除く)。認定されると身体障 害者手帳が交付され、身体障害者福祉法による諸サービスを受けることができ ます。住んでいる市町村役場の福祉係の窓口で手続きの方法や申請できる条件、 サービスの詳しい内容などをお聞き下さい。 また、障害年金(国民年金、厚生年金)の掛け金を納めている期間中に手術を 受けた場合には、障害年金の支給を受けることができるので、住民登録をされ ている地域の福祉事務所へお問い合わせ下さい。 2)患者会 ストーマ造設術を受けたストーマ保有者の方々の会が、全国にはいくつもあり ます。患者会は、よりよい社会復帰を目指して、互いに励ましあいながら悩み や不安を解消していく場であり、たくさんのストーマ保有者の方々が入会され ています。我が国で最も大きい患者会は社団法人日本オストミー協会です。こ の協会は世界オストミー協会の日本支部で、さらに日本各地域に支部を置き、 活発に活動しています。下記へ連絡するとお住まいの近くの支部を紹介してく れます。 社団法人日本オストミー協会 電話:03-5670-7681 住所:〒124-0023 FAX:03-5670-7682 東京都葛飾区東新小岩 1-1-1-901 問い合わせ時間:午前 10 時から午後4時(土・日・祭日休) 3)ストーマ外来 当科ではストーマをお持ちの患者さまがストーマに関する悩み事の相談に乗り、 日常生活をより快適に過ごされる様、お手伝いをする専門外来を設けています。 詳しくは担当医、看護師まで御相談ください。 製作:大阪市立大学医学部附属病院 消化器外科 前田 清 初版:平成 19 年 1 月 31 日
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