調査視察報告 - 宮城県高等学校情報科教育研究会

3.2
調査視察報告
本研究の一部として情報教育の現状を実地調査した。調査対象校は普通高校を中心とし、進学
者の多い高校から、就職者の多い高校まで幅広く選定した。また、一般的には情報科教育=情報
機器の操作教育ととらえている学校も少なくないため、今回はそのような高校をなるべく避け、
各地域で中心になって活発に活動している先生のいる高校を対象に聞き取り調査を行うこととし
た。その結果、次のような高校を対象に調査視察を行うこととした。
1. 北海道札幌北高等学校
12. 静岡県立浜松湖南高等学校
2. 北海道札幌西高等学校
13. 石川県立内灘高等学校
3. 北海道札幌稲北高等学校
14. 石川県立金沢泉丘高等学校
4. 東京都立新宿山吹高等学校
15. 金沢大学教育学部附属高等学校
5. 東京都立府中西高等学校
16. 三重県立四日市高等学校
6. 千葉県立行徳高等学校
17. 岐阜県立大垣北高等学校
7. 千葉県立佐倉南高等学校
18. 岐阜県立岐山高等学校
8. 神奈川県立横浜桜陽高等学校
19. 大阪府立豊島高等学校
9. 横浜市立戸塚高等学校
20. 兵庫県立西宮今津高等学校
10. 神奈川県立高浜高等学校
21. 香川県立志度高等学校
11. 神奈川大学附属中・高等学校
22. 静岡大学情報学部
質問項目は以下の4項目を共通項目とし、他に調査者の興味、調査者の勤務校の実態に
応じて追加することした。質問項目はあらかじめ調査対象校に FAX 等で送られ、効率の良
い聞き取り調査がおこなわれるように工夫した。
(1) 調査校における情報科教育の実態について
(2) 調査校における情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
(3) 調査校における情報教育を支える組織作りについて
(4) 調査校における学校ホームページのサポート体制について
なお、情報教育と離れた内容に関しては紙面の都合もあり割愛した。また、各調査者か
ら集まった報告書には調査校の対応者名が記述されていたが、これは削除することとした。
調査対象とさせて頂いた学校の先生方には、お忙しい校務の間をぬって調査にご協力頂
いた。改めて感謝を申し上げます。
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情報教育実態調査 1
北海道立札幌北高等学校
調査者
村上
二朗(富谷高等学校)
佐藤
理(伊具高等学校)
1. 札幌北高等学校の概要
北海道でもトップクラスの進学校で国公立大学に多数の卒業生を送り、北海道内だけ
でなく他県の私立大学へも相当数の卒業生を送り込んでいる。学校の規模は各学年10
クラスの大規模校で伝統校である。授業時間は65分の6校時で行っている。校内LA
Nを校舎内に張りめぐらす計画はあったのだが、校舎改築の関係上,で現在のところは
コンピュータ室と職員室・事務室程度にしか接続されていない。
2. 情報科教育の実態について
(ア) カリキュラムについて
「情報」の実施学年は1年次1.5単位と2年次0.5単位の合計2単位で実施して
いる。65分授業の関係で1年間1.5単位となるが、2年次では隔週となるため,0.
5単位となる。よって,2年次では授業の間隔がかなり開くものの、生徒はその時間
を利用して放課後にコンピュータ室で作業するなどし、課題解決する余裕が出来る。
(イ) 具体的な授業内容について
情報Cを実施している。使用教科書は日本文教出版のもの使用、採択理由は実習中
心で自由度が高いからとのこと。副教材は使用せず,手作りのワークシートを用いて
授業を展開している。
CAIは使用しておらず,授業で用いるアプリケーションソフトにはオープンオフ
ィスと呼ばれるフリーソフトを使用している。
夏休みの課題として,課題図書の図書レビューを作成させた。冬休みにはメディア
調査、またネットワーク社会・リテラシーについてコミュニケーション等をさせる予
定である。
(ウ) 評価について
評価方法(ルーブリック)について事前に通知してから授業を展開している。実際
の評価は実習を100点、ペーパーテストを100点として総合的につけている。実
習については重みをつけて評価している
(エ) 授業形態について
情報の免許取得者は2名であり、授業はティームティーチングで展開している。同
じ授業を他クラスでT1とT2が交代で授業を行い、2名で補完し合っている。すべ
ての授業の指導案を作成し、2名で毎回の授業を共通認識し、授業実施後に加筆・訂
正を入れながら蓄積している。指導資料については、2名で分担しながら行い、負担
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の分散を図っている。年間計画については原案を奥村教諭が作成し、もう1名を相談
しながら完成させている。
3. 情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
地理で行っている。
4. 情報教育を支える組織作りについて
情報に関する委員会と教務部で組織されている。
コンピュータの維持・管理についてはまだ整備されていないそうで,ハードの購入者
が管理している。トラブルの対処には奥村教諭が対処している。このあたりはガイドラ
インが必要と考えているとのことである。
5. コンピュータ設置状況について
(ア) コンピュータ室について
生徒機40台のコンピュータ室が1室ある。ここは定時制の管理下にあり、ソフト
購入等もまだ進んでいないとのことである。将来はWebサーバーやファイルサーバ
ーを作る予定であるが、予算の都合で Linux にするそうである。
(イ) コンピュータ室以外のコンピュータ設置状況について
概要にもあったとおり、校内LANの計画はあったが校舎改築が遅れており、コン
ピュータ室と職員室・事務室程度しか接続されていない。最近は職員室を無線LAN
でつなぐようになった。
6. 今後の情報教育の進め方について
1年生のうちにITを身につけて進学・その他に使えるようにさせたい。普通教科「情
報」は現在、「情報A」を選択している学校が多く、「情報C」が少ない。しかし、小中
学校の取り組みやITの発展を考えるとこれからは「情報C」を選択する学校が多くな
ってくると予想しているとのことである。
7. 宮城県の「ポータルサイト」について
学習確認のところをもう少しはっきり運用目的を明確にし、使っていただきたいとの
こと。ただの E-LERANIG で終わってしまってはもったいない。また、学習確認にS−P
表をつけることでよりいいものができそうだ。今後の利用において,できればS−P表
作成までの機能を作っていただきたいと考えている。
8. 感想
生徒の授業への取り組みの様子を伺うと、情報教育が大変進んでいるようである。ま
だ始まったばかりの情報の授業であり、迷いながら授業を行っている現状を周りではよ
く聞いていたのだが、こちらの学校ではよく計画された完成度の高い授業がたくさん用
意されている。こちら側の情報教育への勉強がまだまだ不足していると実感している。
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情報教育実態調査 2
北海道立札幌西高等学校
(http://www.sapporonishi.hokkaido-c.ed.jp/)
調査者
1.
村上
二朗(富谷高等学校)
佐藤
理(伊具高等学校)
札幌西高等学校の概要
北海道でもトップクラスの進学校で国公立大学に多数の卒業生を送り、北海道内だけ
でなく他県の私立大学へも相当数の卒業生を送り込んでいる。学校の規模は各学年9ク
ラスの大規模校で,昨年度80周年を迎えたばかりの伝統校である。月曜日から水曜日
までは50分の6校時で木曜日と金曜日は45分の7校時と変則的な時間割を持つ。校
内LANは校舎内に張りめぐらされている。
2.
情報科教育の実態について
(ア) カリキュラムについて
2年次で1単位、3年次で1単位と分割して情報を実施する予定である。総合的な
学習の時間と絡め進路学習に生かしていきたい。
(イ) 具体的な授業の進め方について
情報Aを実施する予定で,使用教科書は実用性の高いものを使用したいと考えてい
る。表計算など、特に実用性の高いものの学習を中心にして展開していく予定である。
3.
情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
社会科で活用。進学に関わる情報検索等にも利用されている。将来は課題研究でコ
ンピュータに関する研究の可能性がある。(まだ未調査)
4.
情報教育を支える組織作りについて
情報処理委員会があり、各学年1名の計3名で構成されている。校内での研修予定
は特に設けていない。校外での研修には希望者が2名程度出かけている。
5.
コンピュータの設置状況について
(ア) コンピュータ室について
生徒機40台(OSは Windows98)のコンピュータ室がある。維持管理は情報処理委
員会が担当になっている。
(イ) コンピュータ室以外のコンピュータ設置状況について
道教委から配布されたクラス数分(27台)のノートパソコンがあり、生徒や教職
員が自由に使える環境にある。
6. 感想
まだ普通教科「情報」を実施しておらず、計画段階であったため,具体的な話はあまり
聞けなかった。しかし,コンピュータの利用環境が整備されていることと教育環境を考え
ると今後の情報教育の発展に期待がふくらんだ。
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情報教育実態調査 3
北海道立稲北高等学校
(http://www.inekita.hokkaido-c.ed.jp/)
調査者
村上
二朗(富谷高等学校)
佐藤
理(伊具高等学校)
1. 稲北高等学校の概要
進学に力を入れている学校で、卒業生のほとんどが推薦入学で大学や専門学校に進ん
でいる。学校の規模は各学年9クラスの大規模校。商業高校からの流れを汲み、機材に
ついては他校より充実していることのことで、コンピュータ室が2室で大型のタッチパ
ネル式ディスプレイとプロジェクター一式、コンピュータの準備室には各種のサーバー
機器が3台あり、授業用と職員用として利用されている。
2. 普通教科「情報」の取り組みについて
(ア) 指導目標について
情報及び情報技術を活用するための知識と技能の習得を通して、情報に関する科学
的な見方や考え方を養うとともに、社会の中で情報及び情報技術がはたしている役割
や影響を理解させ、情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる。
(ICT:情報・技術とコミュニケーション能力を身につけさせたい)
(イ) カリキュラム上の情報の位置付けについて
1学次に2単位で実施。
(ウ) 具体的な授業内容について
科目は情報C。前任者によって,この科目が選択されることになった。教科書は日
本文教出版を使用し、副教材については準備していたものの、実際の授業では使用機
会がなかなか取れず,それについてはまだ未使用とのことである。
(エ) 生徒の演習課題について
授業の展開はWeb化された教材を毎時間準備し,そしてそれを用いて生徒に提示
または演示させ、考察を掲示板形式で書き込みをさせる方法をとっている。また、メ
ールはイントラネット内でのみ使用し、生徒全員にメールアドレスを付与することで、
発問に対する発言を全員に平等に与えている。
(オ) 評価方法について
オリエンテーション時間に評価の観点を提示している。
・ 情報活用の実践力・・ディジタル作品やタッチタイプなどのスキルを評価する。
・ 情報の科学的理解・・情報に関する基本的な「知識」や「理解」を評価する。
(教科書の内容を重視したペーパーテスト)
・ 情報社会に参画する態度・・前期は授業参加の意欲を評価、後期は情報化へ対応
するための主体性を評価する。
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上記の 3 点を各期(4 期)ごとにウェイトを変えながら評価している。
(カ) 指導体制について
情報の免許取得者は1名で、免外1名と実習助手を入れて3名で授業を展開してい
る。
3.
コンピュータ設置状況について
(ア) コンピュータ室について
生徒機40台のコンピュータ室が2室有り、
維持管理は実習助手が行っている。
(イ) コンピュータ室以外のコンピュータ設置状況
について
フリースペースのパソコン(5台)や図書室
のパソコン(5台)より情報の授業用サーバー
に接続できる。授業の復習がいつでもできるようにしてある。教員用としては北海道
より支給のノートパソコンが27台あり、活用されている。
4.
情報教育を支える組織作りについて
(ア)
情報管理部という分掌がある。専任で5名が担当している。うち1名が3台のサー
バーを運用している。
(イ)
北海道ではサーバー運用講習会が8時間×4日間あり、積極的に参加している。サ
ーバー運用講習会も Windows2000 サーバー用と Linux 用が準備され4日間ずつ受講で
き、サーバー管理者のサポート体制もできている。
5.
学校ホームページについて
学校ホームページのデータは情報処理センターに置いてあり、情報処理センターとは
光ファイバーケーブルでつながれているとのことである。そのデータは情報管理部が管
理している。その中に授業に使用した教材をのせ、さまざまな形で授業の情報を発信し
ている。
6. 感想
授業で 使用するWebページは1つ
を 準備するのに5時間ぐらいかかると
いうことで,苦労の様子が伺える。しか
し、それが生徒の理解度向上に貢献して
いるとのことである。実際に授業を見学
させていただいたが、生徒も教師も生き
生きと活動していた。この日の授業は新
聞記事にあったハイジャック事件を題
材にしたものであった。飛行機のシミュレーションを用いるなど,現実味を感じさせる授
業であり、身近に起こりえる臨場感あるものであった。それゆえに生徒の反応もよく、積
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極的な意見が飛び交い、コミュニケーションを重視した加藤教諭の目指す授業と感じるこ
とが出来た。教師の発言に対し、掲示板を使い生徒に平等に意見の場を与えるシステムを
開発し、フィードバックすることでコミュニケーションを大事にしている様子が充分伝わ
ってきた。
情報教育実態調査4
東京都立新宿山吹高等学校
(http://www.yamabuki-hs.shinjuku.tokyo.jp/)
調査者
岩渕
昌彦(石巻高等学校)
渡邉
洋史(河南高等学校)
1. 新宿山吹高等学校の概要
都立初の単位制の高校として、平成3年に開講。定時制課
程と通信制課程が設置されている。定時制課程は無学年制で
朝から夜の四部生の授業が開講されている。
定員は定時制普通科150名、定時制情報科75名で、情
報科は専門教科情報の授業を展開している。
2.
情報教育の実態について
工業科・商業科の教員が現職教員の講習会を受講して情報
免許を取得し、情報の授業を展開している。普通科では、情
報Bを行っている。
情報科は従来より開講しているが、14年度入学生まで
<正面玄関より>
は「商業科目・工業科目」混在の中から生徒が授業を選択していた。15年度の新カリ
キュラムから情報科の授業を「情報」に統一し、開講している。専門教科「情報」は従
来の商業・工業科目を基に授業展開を考えていた
が、指導要領も異なる事から専門教科「情報」を
追求できるよう,試行錯誤しながら展開している。
専門教科情報を開講している学校は,全国的に見
ても珍しいと思われる。
<整備されたコンピュータ教室、コンピュータ教室の数も
多い。>
3.
情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
特に利用している教科はない。スポット的に行う教科がある程度である。
28
4.
情報教育を支える組織作りについて
単位制・無学年制のため、教科間の繋がりは難しい。普通教科「情報」を履修してし
まえば、その発展系を違う教科で行えるが、全員が履修しているとは限らない。その為
教科間の繋がりも薄れてくる。
5.
学校ホームページのサポート体制について
都立学校はすべて同じであるが、インターネット委員会(新宿山吹高校では5名)が
組織され,その中で運営されている。
6.
校内LANの配置について
学校単位でプロバイダー契約を行う。2年前までは、LANの構築・Webのアップ
ロードは都から禁止されていた。主な理由としてはセキュリティ問題があったようであ
る。現在はインターネット委員会・Webの作成など強制的に進められている。
100ベースの光タイプで校内300台のパソコンをLANとして構築している。
7.
その他
<校舎入り口の「生徒伝言システム」>
<授業出席確認用バーコードリーダー>
生徒への連絡は受付にある伝言システムに生徒カードを入れると画面に表示される
(写真左)、また授業の出欠はすべて、バーコードリーダー(写真右)によって管理され、
通信制・聴講生を合わせた3000人の生徒をコンピュータシステムで管理・掌握して
いる。
8. 感想
当日より試験が始まっている科があり、授業をしている生徒数は少なかった。施設に
関しては圧倒されてしまうような感じさえある。定時制が主とされる学校であるが、そ
の目的がはっきりしており、転編入の生徒を受け入れる定員数を初めから空けておく等、
その方法に驚きを持った。定時制・通信制課程の他、生涯学習や聴講制も開講しており、
様々な管理面においてIT化が見られた。
今年度から設置した「情報科」は、専門教科情報を行う学校として今後もその動向に
注目をして行きたい。
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情報教育実態調査5
東京都立府中西高等学校
(http://www.fuchunishi-h.metro.tokyo.jp/)
調査者
岩渕
昌彦(石巻高等学校)
渡邉
洋史(河南高等学校)
1. 府中西高等学校の概要
東京都立府中西高等学校は、1学年8クラス(1学級40名)の普通高校である。平
成15年度東京都改革推進に向けた重要施設の取り組みである「ITを活用した教育推
進校」の指定を受け、8月より校内無線LAN工事、生徒用ノートパソコン160台(平
成16年度160台増)
、また教員一人1台等々の環境整備がなされ、物理的条件が徐々
に整う中、推進校として「ITを活用した授業革新」に向けて教職員が一体となり取り
組んで来ている。
校内体制においては、IT推進委員会を設置し、毎週定例会を開催、また委員会報告
として全教員のスキル高揚を図り、隔週校内研修を実施している。各教科主任と連携を
図り「ITを活用した授業革新」を目標に、実践授業を積み重ねている。
2.
公開研究授業の内容
①
国語(漢文・1学年)
プロジェクター・ノートPC1人1台を使用。e-learning ソフトを使用した演習
を行う。
②
日本史(2学年)
地図、写真、動画を教員PCで演示して授業を展開。その他プロジェクター・ス
マートボードを使用。
③
数学(2学年)
プロジェクター・ノートPCグループで1台使用。フリーソフト「Grapes」を使
用し、グラフについて学習。
④
数学Ⅰ(1学年)
プロジェクター・ノートPC1人1台使用。フリーソフト「Grapes」を用いて、
三角関数の最大値・最小値についての問題をグラフ化して解く。
⑤
理科総合(1学年)
普段出来ない実験の静止画や動画を教員PCで演示して授業を展開。
その他プロジェクターを使用。
⑥
体育(1学年)
リアルタイムキャプチャーユニットのタイムシフト機能を使用し、自分の動きの
映像を見ながら修正していく。
30
⑦
英語Ⅰ(1学年)
ノートPC1人1台使用。授業開始時の演習、授業単元終了前の復習問題を電子
メールを活用して行う。
⑧
家庭科(1学年)
プロジェクター・ノートPCグループで1台使用。部屋の壁やカーテンの色を画
面上で変えてテーマに沿ったイメージの部屋を作る。
⑨
情報A(1学年)
パソコン室で1人1台使用。ハイパーリンクの意義及び仕組みについて学習し,
ハイパーリンクについてのプレゼンテーションをして、今学期に作成しているWe
bページ同士をリンクでつなぐ実習を行う。
・
授業開始と同時に、生徒から教員へメール送信をしており、メール送信も評価
の対象にしている。
・ 授業の最後には、生徒自身が自己評価と授業評価をして、メール送信をする。
3. 感想
ITを活用した公開研究授業だったが、これまでの経緯は大変だったように感じた。
指定校を受けてから授業での活用率が向上し、教員のコンピュータ操作に対するスキル
も向上したそうだが、教員全体の意識向上については今後の課題であると思う。授業以
外での活用で、校長・教頭先生が講話などで先生方よりも率先してプレゼンテーション
を行っていることは、非常に印象深かった。今回の視察は大変勉強になったと感じてい
る。
31
情報教育実態調査6
千葉県立行徳高等学校
(http://www.asahi-net.or.jp/ xr2t-fksm/info.html)
調査者
伊比
久保
創
(佐沼高等学校)
健一(岩出山高等学校)
1. 行徳高等学校の概要
東西線「南行徳駅」から徒歩20分ほどの市川
市にある新浜御猟場「野鳥の楽園」に隣接した普
通科5クラスの高等学校である。2年次からは普
通・文理クラスの他、情報技術に関する専門技術
を身につけるための「情報コース」が設置されて
いる。
2. 情報科教育の実態について
(ア) 具体的な授業内容について(1 学年 情報A 2単位)
1学期
・
はじめにコンピュータ室の利用方法についてのガイダンス
・
マウス、キーボード、Windows 等の基本操作、タイプ練習(スキル差があるの
で、基本的な説明はする)
・
ブラウザ、メールの活用(ヤフーのフリーメールを使い、個人情報の扱いに
ついても学習する)
・
ビジネス文書、名刺の作成(作成後には名刺交換)
・
暑中見舞いの葉書作成(中学校の先生宛て)
2学期
・
進路プレゼンの実施(自分の進路に関する調べ学習であり、職業や上級学校
についての調査結果はグループ内でプレゼンテーションを行う)
3学期
・
表計算ソフトによるカレンダー作成、基本データからのグラフ作成
なお、学習内容はすべてMOで管理し、生徒用PCには個人情報が入らない
ようにしている。サーバーには作品のみ保存する。
(イ) 生徒の演習課題について
授業用に作成されたファイルが、行徳高校ホームページ内にある。情報科ダウンロ
ードコーナーより情報Aシラバスや年間指導計画等が公開されている。そこで「情報
A」、「情報C」の具体的な学習内容が示されている。
(http://www.asahi-net.or.jp/ xr2t-fksm/data-archive/dawnload.htm)
32
(ウ) 評価について
定期考査は行っていない。座学は学期ごとに2、3回の割合で実施し、授業の終わ
りには小テストを行っている。小テストやワークシート等は1冊のクリアファイルに
綴じている。小テストやワークシートによる達成度、プレゼンテーション資料などの
提出物の内容、発表態度、グループ内の相互評価等により評価している。
3. 御校における情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
総合的な学習の時間で一部活用はされているが、他教科ではあまり活用されていない
ようである。
4. 情報の免許を持つ教諭の人数について
情報Aに関わっているのは8名ぐらいで、うち5名は情報の免許を持っている。理科、
数学の教員が多い。英語、社会、国語科の教員がサブに入っている。授業はティームテ
ィーチングで実施している。
5. 教室内における利用環境の整備状況と職員室のLANの整備状況について
コンピュータ室は3部屋あり、第1コンピュータ室(42台)は生徒用コンピュータ
間に教師の作業内容を提示できるディスプレイが1台ずつ設置され、第2コンピュータ
室(41台)は5人1グループのパーティションで区切られ、共同学習に向いている。
第3コンピュータ室(ノートPC24台)は教科指導用、調べ学習向けである。普通教
室もLANの整備はされており、平成14年3月より光回線が開通している。他校では
1教室が一般的である。
6. 情報教育を支える組織作りについて
かつて情報活用推進委員会があった。教務部内にコンピュータ係が3名。
7. 情報コースの概要について
情報コースは高度情報化社会に貢献できる人材の育成と、生徒個人が自己発見・自己
表現・問題解決できる能力を高めることを目的としたコースであり、この地域には商業
高校がなく、地域のニーズもあった。5クラスのうち1クラスのみである。希望生徒は
例年40∼50人ほどで作文と面接により選考するが、スキル的なものではなく、やる
気やモチベーション的なものを優先している。
8. 「ITステップアップ講習」について
地域の方々を対象とした講習会を月2回、
土曜日の13時∼16時に実施している。ボ
ランティアを募集して今は10名位である。
講習内容はホームページ、葉書、カレンダー
の作成やデジカメを使ったものなど,月ごと
にメニューが変わる。テキストも自前で作成
している。インターネットと市の広報で宣伝
し、受講者を募っている。
33
情報教育実態調査7
千葉県立佐倉南高等学校
(http://www.sakuraminami-h.ed.jp)
調査者
1.
伊比
創
(佐沼高等学校)
久保
健一(岩出山高等学校)
佐倉南高等学校の概要
千葉県中央部の佐倉市にある、学級数23クラスの普通高校である。学校の特色とし
て実践的な情報教育の充実を掲げ、これに取り組んでいる。
2.
情報科教育の実態について
○ 「情報」の実施学年および実施している科目について
1年次
[必修]共通・情報C(2)
2年次
[必修]情報コース・情報B(2)、情報と表現(2)
コンピュータデザイン(2)
3年次
[選択]理系および人文・情報と表現(2)
情報コース・ネットワークシステム(3)またはマルチメディア
表現
情報コース以外の課程では,1年次に「情報C」を必修でとしており、3年次に選択
教科で「情報と表現」を履修しなければ、2単位のみの履修となる。情報コースにおい
ては1、2年次で合計8単位を履修させ、3年次に3単位を選択となり、合計11単位
の履修単位となる。
アプリケーションのスキルトレーニングにおいて特別なことは行っていない。生徒同
士で教え合っている。情報科3年生は毎時間タイプの練習を行っている。
○ 「情報」の使用教科書(採択理由含)について
第一学習社
理由:見開きで完結している。テスト範囲を指示しやすい。
補助教材は「よくわかる高校生のための情報セキュリティ」
(FOM出版)を購入。
家で読ませて、授業で確認。
○
生徒個人のデータ(作品)の保存及び提出方法について
リムーバブルのメディアなどではなく、ネットワーク上のファイルサーバーにフォ
ルダを作成し、そこに保存させている。
○
評価について
完全に(授業全部)が教室というのはなく、一日は一回必ずコンピュータ室での実
習がある。評価は実習の内容が半分で、毎時間提出させる報告書(1∼2行)を評価
に入れている。考査は行わない。
生徒間での相互評価(レポート)や作品などを情報科全体で評価し点数化を行って、
評定を出している。
34
○
情報の免許を持つ教諭の人数について
3人。千葉県では、免許を持っている教諭が各学
校最低でも3人はいるように配置している。
○
ティームティーチングの実施について
情報の全ての時間で行っている。情報Cや選択
(ともに3年生)の授業については、情報の免許を
持っていない教諭がサブとして入っている。
3.
情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
社会科、体育科、国語表現(ワープロ打ち)、選択生物のレポート作成などで活用し
ているが、情報科の授業でコンピュータ室が埋まっているので、他教科は実際には使い
づらい。「総合的な学習の時間」では2年次に課題研究を行っており、課題は生徒自身
で決めさせている(高大連携)。
4.
情報教育を支える組織作りについて
8年前に情報教育研究班が組織され、それが今の情報教育部になった。
業務内容は「LANの構築及びメンテナンス」、「教職員の研修」、「Web作成(校
内向けも作成しているが、あまり活用はされていないようである)」など。
5.
学校ホームページのサポート体制について
情報教育部が管理し、更新している。
6.
その他
(ア) 千葉県における情報科の現状について
学校によって温度差がある。関東では千葉県・神奈川県は力を入れている方であると
いう話があった。科目については、「情報A」が多数派で、「情報B」必修が数校、「情
報C」を開講している高校は少数派である。
(イ) 校内ネットワークにおける運用規定について。
明文化はしていない。千葉県での規定があるので、それに従っている。職員室に自
前のPCを繋ぐ際は、ウイルス対策ソフトの有無を確認してから許可している。
千葉県ではWANを構築する前から、佐倉南高校では独自にサーバーをおいてWe
bを公開していた経緯もあり、職員は学校自前のサーバーを通し、外部に接続してい
るため、県のサーバーは通していない。生徒は宮城県と同様、県のサーバーを通して
外部と接続している。従って、職員室を含む職員のネットワークとコンピュータ室な
どを含む生徒が使えるネットワークとは,物理的に隔離されている。
教員は「ユーザーID」と「パスワード」で職員室などのネットワークに入る。生
徒はコンピュータ室(第1、第2とある)において、
プラス
イニシャル
6桁(入学年度+学籍番号)
で作成し与えられたの「ユーザーID」と生徒自身で決めさせ
たワードでネットワークに入る。
35
(ウ) 授業外でのコンピュータ室の利用状況について
基本的に放課後は開放している。但し利用する際は、当然であるが授業においてコ
ンピュータを使う上でのモラルなどを授業で行った後でないと、利用権は認められな
い。実質的には、授業の課題を行ったりするなど情報の科目を履修している生徒の利
用が多い。
(エ) 情報コースの概要について
平成11年に情報コースを開設し、 技術者育成
ではなく,道具として使いこなす
ための実践的な情報教育。2年次に進級する際に、文系・理系・情報コースから希望
させる。毎年40∼60人の希望者。選抜は能力やスキルよりも面接や作文などを通
して、生徒の意欲を見て行っている。
(オ) 東京情報大学との高大連携事業について
経緯:大学側が視察に来たのがきっかけ。11月に高校から持ちかけ、2月18日
調印した。
内容:課題研究を高校生が行い、それを大学生(20名程度)がアドバイス・サポ
ートを行う。そのメリットに、高校側は進路教育の一助になる点がある。大
学側としては2年後に入学してくる学生の基礎科目の研究と、対人関係を学
ぶことで、学生の教員養成も兼ねている。学生は高校の授業のレベルを見る
ことで刺激にもなる。経費は、高校から大学に行く際は生徒負担で行ってい
おり,大学から高校に来る際は大学側で予算を組んでいる。
課題研究の中身は生徒自身で決めさせて行い、連携事業実施サイド(つま
り指導者)で決めてしまうと膠着化してしまうので、その辺りのところは柔
軟性を持たせている。3年生に関しては1学期に週9時間、2学期に週5時
間、3学期に週3時間行い、主に Flash のソフト的な説明をしながらマルチ
メディアに関して行っている。
情報教育実態調査8
神奈川県立横浜桜陽高等学校
(http://www.yokohamaoyo-h.ed.jp/)
調査者
加藤
進一(村田高等学校)
高橋
潤(亘理高等学校)
1. 横浜桜陽高等学校の概要
神奈川県県教育委員会が策定した「県立高校改革推進計画(平成11年11月)
」に基
づき、平成15年4月、県立汲沢高等学校(横浜市戸塚区)と県立豊田高等学校(横浜
市栄区)の統合により、フレキシブルスクールと呼ばれる新しいタイプの高校として設
36
置された。フレキシブルスクールという呼称は本県独自のものであり、柔軟な学びのシ
ステムを持つ新たなタイプの高校として構想された。
各学年6クラスで2学期制である。2学期制の特徴を生かし、学期ごとの単位認定を行
っている。授業は90分4限を基本とし、必要に応じて弾
力的な授業時間を設定できる。6つの「系」
(情報・環境・
福祉・健康・国際・教養)で特色ある分野の学習ができる
ようになっている。科目は120を越え、必履修科目と選
択科目(学校設定科目もある)がある。
2.
調査校における情報科教育の実態について
(1) 教員にいて
情報の免許取得者は2名、非常勤講師1名、教員補助者1名、情報アドバイザー1
名がいる。
現在TTで授業を行っているが、来年度からは先生方の持ち時間の関係でTTを行わ
ないかもしれない。
(2) 科目について
単位制の全日制の普通高校ということで、情報A・B・C(各2単位)をすべて開
講している。卒業までに情報A・B・Cから最低1つを選択履修しなくてはいけない。
専門教科情報の科目(ネットワークシステム(2単位)
・マルチメディア表現(2単位))
や学校設定科目(パソコンライフ(前期1単位、後期1単位)
・情報技術論(2単位)・
ITライセンス(前期1単位、後期1単位))もある。
学年制をとっていないので、同一年度で普通教科情報の科目を2科目選択する生徒も
いるので、授業内容が重ならないように考慮しなくてはいけない。また、3年間で情
報A・B・Cすべてを履修する生徒もでてくる可能性はある。
(3) 指導目標・実施内容について
情報Aでは、総合的な学習などのレポートを作成するのに必要な知識、操作能力(ワ
ープロ、プレゼン等)を身につけることを目標とし、情報の収集・加工・処理・発信
などの実習を通して情報を活用する力を身につけ、コンピュータや情報通信ネットワ
ークの特性や仕組みを理解させ、自分たちの身の回りにあるテーマについて総合的に
情報化社会の学習を通して積極的に情報社会に参加する態度を身につけさせる。
情報Bでは、コンピュータの仕組みや様々なソフトウェアを効率よく活用するのに必
要な知識や技術を学ぶことを目標とし、情報の整理分析のために、表計算ソフトを利用
しコンピュータの特徴を理解させ、コンピュータでの処理手順を知るために簡単なアル
ゴリズムを学ばせる。表計算ソフトでのシミュレーションやプログラミング言語を理解
させ、データベースソフトの特徴や機能などを学ばせ、データベースの作成方法から情
報検索に活用やプレゼンテーションソフトの利用・作品制作等を通して、情報化社会に
生きる態度を身につける。
37
情報Cでは、情報機器の使い方を学ぶだけではなく、電子的な情報通信の仕組みをあ
る程度理解させ、その特性を活かして使い分ける力を身につけることを目標とし、ア
ナログ情報とディジタル情報の違いやディジタル化の利点や問題点など実習を通して
理解させていく。また、ネットワークの仕組みについても学ばせ、Webページ制作
を通して情報社会に参画する態度を身につけさせる。
(4) 使用教科書について
教科書は、情報Aは日文、情報Bは実教、情報Cは日文、パソコンライフはインプ
レス、ITライセンスは実教、マルチメディア表現は実教を使っている。
(5) 評価について
情報のほとんどの科目では定期考査は行わず、レポート提出、出席状況、取り組み
姿勢や実習ノート、作品、授業時間内に実技試験等で総合的に評価を行っている。観
点別評価についても考慮している。
(6) 施設設備について
施設設備は充実しており、パソコン教室が4部屋ある。情報実習室Aの教室には
Windows98 が40台、CALL実習室と情報実習室Bには WindowsXP が各40台、マル
チメディア実習室には WindowsXP が20台ある。来年にはプレゼン実習室を作りパソ
コンを20台入れ、可動式の机を設置して情報以外でもプレゼンテーションできるよ
うにする。
(7) 県の取り組みについて
全普通教室にLANが繋がっており、校内予算でパソコンと液晶プロジェクターの
セットを4セット購入し、教室でパソコンやプロジェクターを使った授業が行われて
いる。来年以降、県教育委員会から液晶プロジェクターなどのセットが27セット、
3年計画で整備される予定である。
現在、各学校でプロバイダーと契約を行っており、ウイルス対策やフィルタ関係も各
学校で行っている。桜陽高校はNTTと契約し、Bフレッツ(光)の100Mbps
が入っている。また将来的には、県教育委員会でサーバーの一元管理をする予定であ
る。
(8) その他
校外講座として、横浜国立大学工学部「コンピュータ科学入門」や文教大学情報学
部「コンピュータグラフィックⅠ」
、岩崎学園「HTML入門」などの科目を受講して
いる生徒もいる。
社会人聴講生や公開セミナーなども実施している。
3.
調査校における情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
90分という長い授業時間の中で、今まで通りの授業内容を行うと生徒が飽き、授業
内容が薄くなるので各教科でもパソコンを使って授業を進め、プレゼンテーションなど
も行っている。
38
英語の授業ではCALL実習室を使い語学や英検対策の学習を行っている。音楽の授業
では、マルチメディア実習室を使い、MIDIなども行っている。福祉の授業では、手
話のサイトで学習を行ったり、福祉関係の検索を行わせ実習レポートのまとめなどIT
を使って行っている。
図書室(4台)や進路室にパソコンがあり、各教科での活用も行われている。また生徒
がいつでも検索できる環境にもなっている。4つある職員室にも15台のパソコンが有
り、先生方も教材研究や出席管理(神奈川県では、単位制学校の出席管理システムは統
一されている)等にも活用されている。
4.
調査校における情報教育を支える組織作りについて
県教育委員会からネットワーク管理責任者を各校に置くように言われている。
校務分掌で情報管理部(4名)があり、校内LAN(授業用・校務用)、およびPC教
室の整備・活用に向けた取り組みや教育の情報化に向けた研究を行い、そのための教員
研修を企画・実施している。
県の緊急雇用対策の一環として、教員対象の外部講師の情報アドバイザー(10ヶ月契
約)と教員の補助として情報教員補助員(1年契約)がいる。情報アドバイザーが情報
関係の校内研修会等の企画運営を行っている。
5.
調査校における学校ホームページのサポート体制について
校務分掌に「広報・地域連携(5名)」があり、その中の項目で「制作・記録」の中で
ホームページを制作している。しかし、校務分掌の「情報管理部」の部長が兼任し担当
している。
情報教育実態調査 9
横浜市立戸塚高等学校
(http://www.edu.city.yokohama.jp/hs/totuka/totuka.html)
調査者
1.
横浜市立戸塚高等学校について
横浜市内JR戸塚駅から市営地下鉄で一駅
の「踊場」で下車し,徒歩10分ほどの汲川町
にある、普通科8クラス(平成15年度入学生
から単位制に移行)の高等学校。平成10年度
より情報教育推進校として研究に取り組み、横
浜市内の情報教育先進校である。
39
服部
高浩
(多賀城高等学校)
八島
博文(塩釜女子高等学校)
2.
報科教育の実態について
(ア)
具体的な授業内容について
1学年 情報A(2単位)
2学年 情報B・C(選択)
情報A:教科書の内容を忠実に実施する。
1クラスについて「情報A」と「OCA」の2分割にし,1教室20台のパ
ソコンで授業を展開している。1クラス20名弱の生徒に接するため指導が行き
届く反面,議論や発表などで奥行きを持たせることに苦労がある。
(イ)
情報Aの演習課題について
基本的に教科書に従って行っている。
年度当初から「インターネットの活用」,「表計算ソフトの活用」,「ワープロソフ
トの活用」,「電子メールの活用」と生徒のスキルの向上に重点を置いて授業を展開し
ている。その後,「プレゼンテーション」および「Webページ作成」と総合的な実習
を行っている。
3.
御校における情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
コンピュータの入った部屋が4部屋ある。(20台の教室が2部屋,40台の教室が
1部屋,20台のLL教室)各教室とも利用頻度は高く,1週間の時間割のうちで8割
方埋まっている。
国語の先生はフリーソフト「朝刊太郎」を入れてある部屋を使って,新聞を簡単に作
成して情報発信に利用している。
保健体育の先生は「保健」の時間にディベートの情報収集のためにインターネットを
使わせている。
4.
教室内における利用環境の整備状況と職員室のLANの整備状況を教えてください。
校務処理用のLANと「情報」用のLANとを別々に設置している。
有線による物と無線による物の2種類を使っている。有線については校舎改築に伴っ
て配線をしやすくなっていたため比較的スムーズに進められた。無線については棟の離
れた体育科への対応を考えて導入した。
5. 情報教育を支える組織作りについて
平成9年度から立ち上げた「情報教育推進委員会」が中心となって進めている。
教職員に対する研修も行っている。
6.
学校ホームページのサポート体制について
これも「情報教育推進委員会」が中心で行っている。
7.
横浜市の情報科の現状
情報に関しては取り組みに差があるようだ。戸塚高校は横浜市内の他の学校に比べて
力を入れている学校なので整備予算も多く、熱心に行っている。
40
情報教育実態調査 10
神奈川県立高浜高等学校
(http://www.scn-net.ne.jp/~takahama/index.html)
調査者
加藤
進一(村田高等学校)
高橋
潤
(亘理高等学校)
1. 神奈川県立高浜高等学校について
平塚駅から南東に向かって歩くこと15分、小、中、高の4校が隣接する「学園通り」
沿いにある。学年6クラス(一般コース5、福祉教養コース1)である。もともとは女
子校であったが、平成5年より男子が入学している。福祉教育
に重点を置いているが、来年度の高浜高校の柱は、福祉・総合
学習・情報で行く予定である。
2. 情報科教育の実態について
(ア) 具体的な授業内容について
3学年の選択で「情報実習(学校設定科目)」があり、画
像処理・Webページ作成、プレゼンテーション実習・卒業制作を内容としている。
1学年で「情報A」を履修しており、情報の免許を取得している5名の先生と他教
科のT2として4名の計9名で6クラスをTTで授業を行っている。T2は時数の少
ない教科の先生が当てられることもあり、出席をとるなどのサブ的存在になりがちで
ある。
情報科の先生方でメーリングリストを作り,授業の相談をしようと工夫している。
このような工夫をしながらも、共通理解がないと同じ内容の授業ができないと感じて
いる。
情報の授業は、他の授業では不真面目な生徒でも取り組みが良く、こちらが教材研
究をやればやっただけ生徒はついてくる。テストは行うが、考査の割合としては1/
4から1/5である。残りは授業態度、作品等で総合的に評価している。
また今年度の教科書は一橋出版を採用したが、来年は第一学習社に変更する。これ
は一橋では操作の説明が多いことと他の先生方の意見で第一学習社が相応しいと考え
たためである。
(イ) 情報Aの演習課題について
1年D組の情報Aの授業を見学させていただいた。「メールのしくみと実習」とい
う内容で、授業展開は授業の説明をしたあと穴抜けの語句問題を記入し、メールの仕
組みのイラストを描かせ、FPを使ってメールソフトを起動し、実際の操作に入った。
メールの送受信では、まず自分自身にメールを出し、次に先生宛にメールを出し、
Outlook Express のツールのメッセージルール設定で、指定した Subject でメールを生徒
に出させることで自動返信し、次々と課題をこなさせていた。
41
いつも授業の前には、なぜこのような授業を行うのかの
説明を行い、プリント等は自作教材を使用している。主に
web関連の操作を指導しており、ホームページ作りでは
6月までタグで打たせて作らせた。
タイピングの練習としては、かけ算の九九についてメモ帳
を使って日本語入力で打たせるなどの工夫をした。
また、今後,生徒達の交流のためにも神奈川県と宮城県は七夕が有名なので、ネット
を利用しフラッシュを使った「七夕コンテスト」を行いたいと考えている。
3. 御校における情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
他教科でコンピュータ室を使うのは福祉教養コースの生徒達である。実習のレポート
や点字の学習などの時に使う。その他の授業ではあまり使わない。
4. 教室内における利用環境の整備状況と職員室のLANの整備状況について
各教室にトイレの配管などを通してLANケーブルが延びている。
4年前には職員室や他の場所などにパソコンがあったが、スタンドアローンで先生方
が順番待ちをしている状態であった。プリンタを買ってもらうことで共有化をはかり,
少しずつLANにつながるようになった。
NTサーバーで先生方にアカウントとパスワードを発行し、少しずつLANにつなが
るようになった。職員研修会でパソコンの使い方などの研修会も行っている。
ウイルス対策としてはサーバーにウイルスバスターを入れ、先生方がログインすると
ウイルスパターンファイルを読みに行きウイルスに感染しないようになっている。
校内LANで必要となるレイアー3の設定は、2週間ほどかけて自分で設定した。
高浜高校ではケーブルテレビ(家庭用)と契約してインターネットと接続している。2
Mbpsで行っているために全員がアクセスするとつながりにくいと感じている。
5. 情報教育を支える組織作りについて
今まではボランティアという状況で校内の情報化を進めていたが、今年度から分掌「情
報部(3名)」ができた。
昨年度は先生方に情報関連の研修会を7・8回行った。先生方に情報関係を知っても
らうには研修会を行うしかなく、情報用語を覚えてもらうだけでも良く情報化に対する
何かのきっかけになればという意図があった。
情報関係の仕事は他人に依存することが大きいので情報部が必要である。ただし、成
績処理等などの仕事などでも、他の分掌と協力しながらメインとはせずに仕事を行うべ
きであると考えている。
教員補助員について今年度は10人ほど面接をして決めた。昨年度の補助員にはコン
ピュータ室利用規程を作成してもらった。
6. 学校ホームページのサポート体制について
学校HPについては、HP同好会の協力を得て、情報部が作成している
42
7. 神奈川県の情報科の現状
現在は各学校でプロバイダーと契約している。ウイルス対策やフィルタ関係も各学校
で行っている。また、将来的には県教委員会でサーバーの一元管理をする予定である。
全普通教室にはLANケーブルが繋がっている(ジャックは2つ)。教室でプロジェ
クターやスクリーンを持ち込んでプレゼンテーションができる環境になっている。
各学校では、ネットワーク管理責任者を決めている。また、県の事業で教員補助員が
きており半年ないし1年契約で情報教育のサポートをしてくれる。ハローワークに登録
して学校側で面接などを行って採用を決めている。
神奈川県立総合教育センターで間辺先生を含む4・5名で「学校情報セキュリティハ
ンドブック」を作成中であり、ネットワーク構築例を作成されていた。
神奈川県の情報部会では、来年度大学の先生にお願いしてレイアー3の研修会で機器
を使って行いたいと考えている。
情報教育実態調査 11
神奈川大学附属中・高等学校
(http://www.fhs.kanagawa-u.ac.jp/)
調査者
服部
高浩
(多賀城高等学校)
八島 博文(塩竃女子高等学校)
1.
学校概要
中高一貫教育を行う共学の神奈
川大学の付属高校(私学)であ.る。
「質実剛健」「自立調和」を校訓と
し「生涯教育の立場」「情報化社会
への対応」「国際化への対応」「ジ
ェンダーフリーの立場」「個別化・
個性化の立場」「個性本位の進路指
導」を教育理念としている。
生徒募集は中学時のみであり、中
高一貫教育の利を生かし6年間を
2年ごとに分け各2年を「成長期」
写真は同校パンフレットより抜粋
「発展期」「飛躍期」と位置づけ段階的に学習レベルを上げ効率的カリキュラムを組んで
いる。
情報教育は1989年から行っていた先進高校であり,そのノウハウに学ぶべきところ
が多かった。
43
2. 授業見学
「修学旅行で感じたことをレポートで提出する」という内容であった。生徒は前日まで
にレポートの下書きを作成し,決められた書式でワードを使い、打ち込み作業を行って提
出するものであった。時間内に終わらないものはメールに作成中の文章を添付し、自宅で
仕上げ提出するという形態をとっていた。
授業の進度の関係で、任意の授業が見られなかったのは残念である。
3. 質疑応答
対応してくだされた、情報ご担当の先生は15年前からMACを使い情報教育を行って
きた先駆者であり(現在はWIN(メイン)・MAC両方を使用)教科書の作成・NHK教
育番組の作成と幅広く活躍中である。
同校は6年間教えることができるため、
●中学1・2年生「成長期」では総合学習の時間と技術を中心に基礎を身に付けさせ
ることを目標に、情報講座:12時間(コンピュータの使い方・タイピング・イン
ターネットの利用法)理科第2分野:6時間(サイエンスQ&Aの使用)国語:6
時間(情報検索・作文入力)学級活動:4時間(研究成果 Web ページの作成)
●中学 3 年生高校1年生「発展期」では、技術・家庭科:35時間(ワープロ・表計
算・Web ページ検索・個人 Web ページ作成・グループ研究)国語:6時間(文集
原稿・感想文等の入力)情報C:35時間
●高校 2・3 年生「飛躍期」では地理:8時間(コンビニエンスストアを例にマーケ
ティングを学習)地学:5時間(Web を使ってのレポート・Web ページ製作)マ
ルチメディア:70時間(CGソフトを使った画像処理・アニメーション・ムービ
ーの製作・プログラム演習)
と多教科にわたり充実した学習活動を行っていた。このため、生徒はユーザーとしてだけ
ではなく、工学部やプログラマーへの進学に対応した学習をすることができる。
数年前までは企業がサポートを行い、インターネットを使用したバーチャルルームを作
成し、国際交流も行っていた。相手校との打ち合わせがかなり大変だったそうであるが、
生徒には評判が良かったとのことである。不景気のため企業のプロジェクトがなくなった
現在では、今学校が行うことは難しいであろうとのことであった。
授業を行う際には、スタートこそいっしょであるが、徐々に雛型や素材を渡し、課題の
難易度を高いものにし、達成レベルによって評価を与える「客観的評価」を行っている。
これにより各生徒のスキルにも対応できる授業が行うことができる。
また、最後に授業内容がわかるポータルサイトを見せていただいた。これをすべての授
業で作るにはかなりの労力が必要だとのことであったが、先に進みたい生徒も遅れをとっ
てしまった生徒も、これを見て自ら学べるというものであった。
最後に校長室で副校長先生にお話を伺った。先生の「バーチャルの世界(パソコンの世界)
とリアル世界(現実)を生徒にどう伝えるのか?」との質問にはたじろいでしまった。これは
44
2つの違いを生徒に示せという問いだけではなく、
「どうこの2つの世界をつなぎ合わせ利
用するのか」
「この2つの世界から新しく何を生み出すのか」「生徒を情報社会に導くのか」
又「これらを考えるきっかけを生徒にあなたは与えることができますか。用意しています
か。」との問いに聞こえ、スッと姿勢が正しくなった。
情報教育実態調査 12
静岡県立浜松湖南高等学校
(http://www.shizuoka-c.ed.jp/hamamatsuminami-h/)
調査者
神村
伸一(東北文化学園大学)
早坂 昌樹(宮城野高等学校)
1. 浜松湖南高等学校の概要
JR浜松駅よりバスで約15分のところにある。昭和38年に普通科・商業科併設校
として設立され、平成4年からは各学年10学級の普通科のみとなったが、41年目を
迎えた平成15年度、理数科が設置された。
2. 校内の情報システムについて
生徒用としてコンピュータ教室に40台(デスクトップ20台、ノート20台)が設
置されている。校内のLANは普通教室でも利用可能になっている。
外部とは専用線、ADSL、ISDNの3つの回線で接続されている。静岡県として
設置されている専用線は制約が多いため、独自にADSLの回線を引いて民間のプロバ
イダーと契約しているとのことである。生徒用はADSL回線を利用している。ISD
N回線は進路指導用である。
3. 情報Bの授業内容について
教科書は啓林館の情報Bを使用している。この教科書を採択した理由の1つに免許講
習会でイメージした授業プランと合致していたということがあり、授業は教科書に沿っ
た形で展開している。今年度の当初は座学形式で授業をスタートし、その後、実習形式
の授業も行っている。定期考査は実施していて、考査問題は教科書の問題や実習課題を
45
もとに作成している。
実習課題ではこれまでのところ,結果としてまとめる力と理解力を問うものを用意し
てきた。課題の例としては、「自分の行動の分析について」
、「行事の企画について」
、「マ
イコンチップが使われている電子機器の動作手順について」、「二足歩行ロボットの動作
分析について」といったテーマなどが年間を通して用意され、それらに対してのレポー
トを要求している。課題に対するレポートの形式は問わず、各自が納得できたものを回
答しているとのことである。そのため、内容の巧拙も含めて表現方法が多種多様で、さ
まざまな観点から見た回答が得られている。
評価は筆記試験と課題に対するレポートで行っている。今年度、授業を始めるに当た
って、単元ごとに観点別の評価規準を作成し、評価の際に活用している。今年度につい
ては実習課題がどの観点に当たるかを判断して評価していることが多いが、来年度は評
価基準に沿った問題や課題を作成していくことを検討しているそうである。
4. 情報科教育研究会について
教科研究会は昨年度発足した。地理的な問題から公開授業や研修会などは3つの支部
単位で実施されている。
5. 校務分掌について
校内の情報システムは3人のメンバーからなる「情報課」が担当している。業務内容
はシステム、ネットワーク、情報教育に分かれていて、それぞれを3人で分担している。
6. 高大連携について
静岡大学情報学部との連携は浜松湖南高校と浜松市立高校で行われている。学生のボ
ランティアが当該学校に派遣され、授業のサポートを行っている。また、現在、生徒か
らの質問に対して学生や高校の教員、大学の教官が回答するQ&Aシステム(掲示板)
が稼働中である。将来は回答に動画も取り入れるように準備を進めている。
情報教育実態調査 13
石川県立内灘高等学校
(http://www2.spacelan.ne.jp/ uchinada-h/index.html)
調査者
吉田
充
(仙台南高等学校)
上杉
茂樹(宮城野高等学校)
1. 内灘高等学校の概要
金沢市から北陸鉄道で20分ほどの内灘町にある、普通科5クラス(普通コース4/
情報科学コース1)の高等学校。昭和61年の開校よりCAIを特色とした教育に取り
組み、現在は石川県の情報部会の事務局が置かれている。
2.
情報科教育の実態について
46
(ウ) 具体的な授業内容について
普通コース
情報A:情報活用A・B(2/3年)
情報活用A:ワープロを中心にした実習の予定(2年生で選択)
情報活用B:表計算・DB中心の実習(3年生で選択)
情報A:教科書の内容を忠実に実施する。実習は2/3年で行う。
1年生は、3週間から1ヶ月だけ実習を行う。
情報の演習課題は総合学習的な内容になっていることが多く、これを短時間で実習
させることは難しい。
他の学校は実習中心に実施しているようだ。実教出版の教科書がコンピュータの四
角試験的な内容が多く、これを採用している学校は自ずとコンピュータの「使い方」
により力点をおいた実習をしているらしい。
(エ) 情報Aの演習課題について
基本的に教科書に従って設定している。前述のとおり総合学習的な内容が多く、内
灘高校の生徒にとってできないものも多い。
○
表計算
表計算ソフトの使い方を学習するときの題材については、グラフ・ソー
ト・検索・抽出を扱った。表計算ソフトでできることを知ってもらうとい
う趣旨でこう定めた。なお、詳しくは3年生で学習することにしている。
その内容としては Excel に特化しない、共通の機能について学ばせたいと
考えている。
情報科の演習としては総合学習と重なる部分が多いため、総合学習の時間の中でも
インターネットで調べる、ワープロでまとめる、パワーポイントでプレゼンをすると
いった使い方をしている。
総合学習のテーマ:内灘周辺を探索しよう
学年中心で指導している。テーマについてインターネットで調べ、町に出てケータ
イで写真をとって送る。これをヤフーメールで受け、出力して写りが悪いことなどを
問題として扱っている。
他校では総合学習のまとめ、発表を情報の時間でさせる学校もある。ワープロ検定
の学習をしている学校もある。
3.
御校における情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
コンピュータの入った部屋が3部屋ある。
音楽の先生は、「シンガーソングライター」を入れてある部屋をよく使っている。
家庭科・国語の先生がたまに使い、国語では特に検索・構成に使っている。
4.
教室内における利用環境の整備状況と職員室のLANの整備状況を教えてください。
石川県では5年計画で整備している。今年はその3年目。内灘高校では2年前校内L
ANを引いた。光ファイバー(基幹1G)が教室まで行っている。先生方は残念ながら
これを生かすのに苦労しているのが現状だ。校務処理にはよく使われている。校内LA
47
Nへの個人PCの接続には制限を入れている。教室用に20台のノートPCはある。O
Sが Windows2000 で個人的にソフトのインストール等はできないように制限をかけてい
る。
5.
情報教育を支える組織作りについて
以前はソフト開発等を中心とした分掌をおいてあった。いまは教務課の一係りとなっ
ており、2名でその仕事をおこなっている。他の高校も独立した分掌にしている学校は
無いと思う。現時点で分掌にすると「できる人が専属になり、代わりがいない」状況を
作りそうなので避けている。
職員に対する研修は年間2回あり、試験期間中に1回やることにしている。石川県か
ら「研修会をしなさい」といった指令が出たことがある。この時期に年間計画の中に研
修会を入れた。昨年はパワーポイントをやった。1日目でパワーポイントの使い方から、
スライドの制作をおこない、2日目に実際にプレゼンをおこなってもらった。今年は Win
の基礎(ファイルのコピー等)と Excel のちょっと気の利いた使い方,フィルタ・ピポ
ットテーブルをおこなった。基本的に、先生方は自分が使っていてわからないときに質
問したいと思っているようだ。
6. 学校ホームページのサポート体制について
残念ながら個人の作業となっている。コンテンツは各分掌に頼みたいとは考えている。
保護者への案内なども、発信するようになればまた変わると思われる。
石川県の情報部会で HTML の校内研修をやったという話しが出た。
7. 石川県の情報科の現状
任意加盟の「情報部会」としている。工業などは独自に部会を持っているので「はい
らない」という高校もある。学校によって取り組みの差が出ていて、検定的な内容に中
心をおいている学校もある。
石川県は、総合学科・単位制が非常に多い。これらの学校では特色を出すためにも以
前から情報教育に取り組んでいたこともあり、技術の習得にシフトした内容になってい
る。
情報教育実態調査 14
石川県立金沢泉丘高等学校
(http://www.ishikawa-c.ed.jp/ izumih/)
調査者
吉田
充
(仙台南高等学校)
上杉
茂樹(宮城野高等学校)
1. 金沢泉丘高等学校の概要
金沢市の南部の閑静な住宅地にある石川県有数の進学校。スーパーサイエンスハイス
48
クール(以下SSH)の指定を受け、金沢大学・金沢工
業大学の支援も受けながらコスモサイエンス、人間科学
などの新しい
科目を作り、理数科教育の改革に取り組んでいる。
2. 情報科教育の実態について
(ア) SSHのカリキュラムの中での情報の位置付け
について
2年間の分割履修とし、1 年次は前期情報、後期
は家庭。2年は前期家庭、後期情報。SSH事業と
情報は独立して動いている。
(イ) 具体的な授業内容について
情報Cを分割履修している。1年前期で他教科でも使えるように実習を中心に学習
し、2年後期では理論面を中心に学習する予定。
(ウ) 生徒の演習課題について
課題は副読本にしたがってあたえている。放課後、コンピュータ室は自由に使える
ので放課後作成する者が多い。作成したものを先生のサーバーに送り提出とする。
3. 情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
成績処理についてはFD+紙でおこなっている。LANから個人情報がもれることを
避けることが狙いとしてある。また、LAN上の掲示板により校内の連絡も掲示される
が、残念なことにそれはほとんど利用されていない。
一般の教科では保健・家庭科で調べ学習、修学旅行のまとめ、理数科の発表の準備な
どに使っている。授業にパソコンが要求される必要性はほとんど感じていない。
4. 情報教育を支える組織作りについて
情報管理室を設置している。専任は2名。校内で
の研修体制は、原則年間2回、教務処理のための研
修を4月、スキルアップのための研修を6月に行う。
今年は全職員を2班に分けて、民間に出向いての研
修を行った。
5. 学校ホームページのサポート体制について
情報管理室のチーフが作っている。係の先生が各
担当に依頼し、とりまとめをおこなっている。写真
等には気を遣っている。
PTAが広報活動としてHPに取り組んでいる。こちらの方は更新間隔が短く、積極
的に情報を発信していて、学校としても助かっている。
6. 感想
県内随一の進学校であり、今年度よりSSHの指定を受け、活動している。SSHに
49
ついては課題研究としてのAIプロジェクトでの大学との連携等が目についた。SSH
の指定を受けることによって、これまでの課題研究よりもさらに高度な研究に取り組む
ことができるようになっている。わずかではあるが、普通科にも還元できることがあり、
それ以上に保護者や受検生へのPRになっていて、今年度の入学生は昨年度より学力が
高いそうである。
情報については他教科や課題研究などでパソコンが利用できるようにと考えて、実習
を中心とした授業がなされているようである。SSHとの連携も考えられるが、現在は
無いようである。進学中心のイメージを持って訪問したが、土曜スクールの特別講座な
ど、生徒にとって良い動機付けになっているような取り組みが随所に感じられる学校で
あった。
情報教育実態調査 15
金沢大学教育学部附属高等学校
(http://www.kfshs.kanazawa-u.ac.jp/)
調査者
1.
吉田
充
(仙台南高等学校)
上杉
茂樹(宮城野高等学校)
金沢大学教育学部附属高等学校の概要
金沢市街から少し山手の方によったところにある、石川県内有数の進学校。学力向上
フロンティアスクールの指定も受け、評価方法の改善に取り組んでいる。
2.
情報科教育の実態について
(ア) 具体的な授業内容について
総合的学習としての国際情報を早くから取り
入れ、その中で月2回程、5年間実施した流れ
がある。現在は情報Aで情報モラルに重みをお
いた内容で授業を行っている。
(イ) 生徒の演習課題について
Webページ作成のテーマ、昨年度はグルー
プごとに興味のあるテーマを定め、各自 1 ペー
ジを分担して作らせた。今年はテーマをある程
度絞ったほうが良いか自由テーマにするか思案
中である。
対応の先生の弁によれば、教科「情報」をや
るのであればいい科目でなければならないと思うものの、つけるべき「学力」が具体的
には見えてこないという。最低限なものとして、モラル、アプリケーション、情報を収
50
集判断する力が必要、加えて各教科の力をつけることが大切と考えているとのことだ。
情報は1年生に2単位実施。以前からの総合学習の流れ、研究校としての使命などから、
他校と比べても軽く扱われることはない。
3.
情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
各部屋にLANがひいてあり、各先生にノートPCを配布している。教室内でのP
C活用は可能であるが、実際のところ活用されていない。PCは学校全体で年間10
台程度入れ替える。メールを使っての連絡等はやっていない。
4.
情報教育を支える組織作りについて
情報部(4名)がある。機器の管理・保守を中心にやっている。サーバーがあり、
ここでメールアドレスを割り振っている。サーバーは年に1回、業者依頼し管理して
いる。OSは WindowsNT4.0。ウイルスソフトやアップデートのお知らせや、ライセン
ス料を払う事務手続きをするなど先生方の依頼に対応している。校内での研修は最近
は行っていない。
5.
学校ホームページのサポート体制について
ホームページを作成できる英語の先生に依頼している。内容は各科の先生に書いて
もらっている。成績処理については今年度からファイルで提出になったばかりである。
6. 感想
国立大学の付属高校ということで、教員の移動がほとんどなく、勤続年数の長い先生が
多い。加えて、旧師範学校、現在の大学の流れもあり、先生方が自分で教材を用意して授
業しているようである。生徒の学力も高く、先生方個人の努力と経験によって進んでいる
部分が多い学校である。しかしながら研究校としての意識も強く、今回の学習向上フロン
ティアにおいても、これまでの経験で積み上げてきたものを客観的に評価する姿勢で取り
組んでいる。また、総合学習として国際情報を早くから取りくんでおり、現在の教科情報
にいたっている。
このような進歩的な面があり、また小規模校であり教員に余裕が少ないながら教科情報
が軽く扱われることはない。先生方の努力の敬意を表したい。
情報教育実態調査 16
三重県立四日市高等学校
(http://www.pcs.ne.jp/ shiko/)
調査者
51
太田
克佳(仙台南高等学校)
柏葉
伸一(第二女子高等学校)
上杉
茂樹(宮城野高等学校)
1. 四日市高等学校の概要
平成15年の4月にスーパーサイエンスハイスクール(以下SSH)の指定を受けて
おり、また平成14年度からは65分授業と二期制を実施している。
2.
調査校における情報科教育の実施状況について
情報Bを1・2年の分割で行っている。
65分授業のため1年で1コマ、2年で0.5コマの授業となる。教科書を基本にして
行い、アルゴリズムについては Excel のVBAを用いてプログラミングもさせた。一般
的に三重県の進学校では情報Bまたは情報Cを選択させているところが多い。
3.
調査校の情報教育の設備について
平成15年度図書館棟を建築したことに伴い,2Fに情報教室を2つ作った。今年2
月末に2つ目の教室に機材が入る。生徒機のコントロールはガーディアン(Guardian
Cntroller)で行っている。このソフトはレジストリまで管理するようで、どのソフトウ
ェアを起動することができるかまで管理できる。これを用いて授業に必要なソフトウェ
アのみ起動するようにしている。
情報教室は指導する教員がいない時には施錠し、使わせないようにしている。その代
わりに生徒が自由に使えるPCを情報教室の隣のフリースペースに4台、進路指導室に
2台おいている。
4.
調査校における情報以外の教科・科目におけるITの活用状況について
あまり利用状況は良くない。時折インターネットで調べものをさせるために使われる
程度である。
5.
校内(及び教員)のIT化の現状について
三重県は蜘蛛の巣ネットワークと称して、各校ケーブルテレビ程度太さのネットワー
クを2種類通している。それぞれを情報用(生徒用)と校務用として切り分けており、
各学校にファイヤーウオールをおいている。教員には一人1台のPCが配布され、これ
で業務を行っている。基本的なメンテナンスは三重県が外部業者に委託して行っている。
入っているソフトウェアは Office-Pro、一太郎のみで,他のソフトのインストールは禁
止となっている。ブラウザはネットスケープを用いることを標準とし,コンピュータに
関しては県が保守してくれる。ウイルス対策についてはウイルスバスターのコーポレー
トエディションがインストールされており、自動的にウイルス定義ファイルのアップデ
ートをしてくれる仕組みになっている。このPC上に県で統一したシステム(ガルーン)
を導入し、給与明細もこれで配信している。
6. 調査校における情報教育を支える組織作りについて
総務部の中に情報担当を2名置いているが,実質は一人である。仕事は「人」につい
て来ている。
7. 講習会
夏休みの3日間を使って実施した。三重県の情報システムのガルーン、PowerPoint、
52
Excel でほとんどの時間がとられた。参加は延べ人数で40名程度、実人数で20名程度。
8. 調査校における学校ホームページのサポート体制について
三重県では生徒が作っている高校が多いが、最近では説明責任の関係で学校が作るよ
うに変わってきている。宣伝のためのメディアとして認識され始めており、三重県北部
では公式サイトの制作を企業に依頼する流れができ始めている。桑名高校、四日市南高
校などが頼んでいる。四日市高校でも,現在その話が進められている。
9. 「総合的な学習」について
・教育課程全体の中での位置付け・具体的な指導内容について
時間割では、水曜日のLHRの後につけている。具体的な内容については資料「八
稜星」を参照のこと。学習のコンセプトは『生徒自ら動いて考えさせる。』とし、初
めに「個人スピーチ」を行い、夏休みで「個人研究」をさせ、これを元に9月に発表
会を行った。科目登録・進路ガイダンス等も適宜これに入れた。来年度は修学旅行を
これに合わせ、行った先で個人研究をさせるようにする予定としている。指導教員は
20名に一人先生がつく。教員の専門性が生徒のテーマに合っているとは必ずしも言
えない。全体の体制として学年が13名(9クラス)、分掌専任が23名となってい
るため、分掌専任から応援をもらって指導体制を組んでいる。評価はポートフォリオ
と個々の行事を用いる。ポートフォリオの評価基準は特に話題になっていない。行事
に関しては生徒の自己評価を利用している。
・SSHグループの中での情報の扱い、総合的な学習の時間と兼ねる部分について
SSHの科目の内容に含むようにしている。総合についても発表等の活動を通して
行っていると考えるようにする。
情報教育実態調査 17
岐阜県立大垣北高等学校
(http://www.ohgakikita-h.ed.jp/ookita2/hptop/index1.htm)
調査者
太田
克佳(仙台南高等学校)
柏葉
伸一(第二女子高等学校)
上杉
茂樹(宮城野高等学校)
1. 学校の概要
岐阜県立大垣北高等学校は、創立109年、生徒数1120人で、西濃地区屈指の進学
校である。「あきらめるな!がむしゃらに!ひたむきに!」のスローガンのもと、東大・京
大合わせて17名を始め、国公立大合格者は273名となっている。また,部活動にも力
を入れており、サッカー、バレー、バスケット、ソフトテニスが強い。今年度はブラスバ
ンド部ができて一年目だが、県大会で金賞をとり、ソフトテニス(個人)でインターハイ
53
出場を果たした。
校内LANは早くから取り入れられ、すべての教科でコンピュータを使用した授業をする
体制ができている。
2. 情報への取り組みについて
(ア)
校務分掌ICT部について
・仕事の内容は、授業活用、ネットワーク間デ
ータ処理、ホームページ更新などである。
・指導要録は手書きである。成績処理、調査書、
PTA用資料はICT部でつくっている。
・生徒のデータは、エクセル、アクセス、桐な
どバラバラのデータベースで管理されており、
コンバートして使っている。
(イ)
昇降口にあるプラズマディスプレイに生徒へ
の連絡事項がリアルタイムで表示される
情報活用について
・全員の先生にITの活用に取り組んでもらっている。
・ITを使った授業をやるときはICT部がサポートする。
・液晶プロジェクターを各階に置いており、授
業でちょっとした動画を映すなどでよく使わ
れている。スクリーンも携帯型で黒板に貼り
付け書き込みもできるものである。
・先生方は、1回やってみると使えそうだとい
う感想を持つようだ。苦労しないで使えそう
だといっている。
・全員の先生方にお願いしたところ、100パ
ーセントではないが,8割以上の先生は実施
教室にノートパソコンを運ぶためのケース。
無線LANのアクセスポイントが設置されて
いる。
している。
・ネットワークは早くから引かれており、教員が使うのが当たり前という雰囲気があ
ったせいか、4月の最初の職員会議で提案しても反対はなかった。
・教室にはLANコンセントがあり,生徒用の
ノートパソコン100台が教室で使える。L
ANコンセントと生徒用ノートパソコン保管
用ボックスについている無線LANアクセス
ポイントを接続し、生徒は教室では無線LA
Nでネットワーク接続できる。
・コンピュータ室は12月までで575時間使
用され、不足するのでもう一部屋つくってい
るところである。
コンピュータ室
54
・コンピュータ室には生徒用が40台しかないので、足りないときはノートパソコン
や教員用のパソコンを使わせることもある。
・教員が授業で使用するコンピュータは支給されたものである。ソフトは一般的なも
のがインストールされているが、別のソフトは許可を得なければインストールでき
ない。無理にやっても復元ソフトで復元されてしまう。
・校内での予算は決められておらず、必要に応じて事務と交渉する。
(ウ)
ネットワークについて
学校独自のネットワークと県のネットワークの2本ある。
・県のネットワークについて
教室には県のネットワークがきており、授業で使用する。今度の日曜日に三校の
生徒会がテレビ会議をする。回線は三校で使用すると 512K だが、速度は充分である。
校舎建築の際、ネットワーク工事は認められておらず、工事が終了してから学校が
独自に配線等の工事をする。現在のコンピュータ室の配線も教員が行った。
・学校独自のネットワークについて
ドメインを取得し、サーバーも学校で管理している。サーバーは Linux。外部から
の攻撃を受けることもあるが、その都度セキュリティは強くなっている。
教員個人のコンピュータを接続しており、40∼50台が接続されている。連絡
事項はメールで配信する。コンピュータ室使用の予約等はネットワークでできるよ
うになっている。outlook を使用。4月にガイダンスをICT部で実施するが、使っ
てみないと分からない部分が多いので、その都度近くの先生に聞くかたちで引き継
いでいる。
(エ)
ホームページについて
・現在、学校ホームページの容量が400Mを越えているので、県のサーバーには載
せられない。
・HPの容量の関係や家庭への連絡があることから独自のドメインを取得し、PTA
の予算で運用している。
・写真を載せるときは了解を取っている。
・修学旅行(中国)の様子をアップしたときは反響が大きかった。
・更新スピードの為、HPのアップはICT部に一任されている。ただし、校長が見
て、訂正の指示が出されることもある。
・中学生がよく見ていてメールもよく来る。
・中学生向けのページと一般向けのページで文章を変えたりはしていない。
(オ)
e-learning について
・使用にはメンバー登録と認証のパスワードが必要。
・サーバーは Linux。exCampus という文科省がつくった free のソフトを使用。
・休んだ内容の確認、課題提出も家庭からできる。シラバスも作成済み。
55
数学 WebPage について
(エ)
・予習してくる生徒から、板書はしないでほしい、質問したいという要望があり、教
員側としても一斉授業と個別授業の融合という考えから、説明する内容、演習問題、
解答解説をすべてコンピュータにあらかじめ入力しておき、これを利用して授業を
している。
・生徒の意識が高く、先の勉強をしたい生徒にも対応でき、個々の生徒の質問にも答
えられる。
・授業の終わりに五分間の自己評価と送信の時間を設けている。
・Linux、Apach のサーバーを搭載したノートパソコンを使っているので、これを持っ
ていけば教室でも生徒用ノートパソコンと無線LANで授業ができる。
・他の教員が補充で使うこともある。
情報教育実態調査 18
岐阜県立岐山高等学校
(http://school.gifu-net.ed.jp/gizan-hs/index.html)
調査者
太田
柏葉
上杉
1.
克佳(仙台南高等学校)
伸一(第二女子高等学校)
茂樹(宮城野高等学校)
岐山高等学校の概要
昭和33年に開校した、比較的新しい進
学校である。生徒の通学は岐阜管区からで、
バス・自転車利用者が多い。生徒の100%
が進学希望である。岐阜大学を希望する生
徒が多く、昨年度卒業学年(9学級)から
は、200名位が岐阜大へ出願した。進路
については、1年次10月に文理分けの説
明会を行い、三者面談等を経て12月には
本登録させる。尚、2∼3年次での変更は
<昇降口より校舎へ>
認めていない(やむを得ぬ場合は自助努力をさせる)。岐山高校は県の理数科設置校の中
心で(2学級設置)、普通科も6学級中3学級が理系である。また国際化教育にも力を入
れており、オーストラリアへの語学研修(30人弱の参加)やアメリカ(ニューヨーク自
然史博物館・NASA等)への研修(20人超の参加)に加え、来年度からは修学旅行で
韓国を訪れる(現1年生は、韓国語講座を全クラスで行っている)。また部活動の参加は
任意である。学習・部活動間で生徒の住み分けが見られる。
56
2. 情報関連施設・設備 及び 情報教育(教科「情報」の指導も含む)の実態について
コンピュータ教室以外にも各教室に情報コンセントが設置してある。PCに関しては
ノート型が60台あり、コンピュータ室には40台に加えサーバー機もある。またスー
パーサイエンスハイスクール(以下SSH)に関連して、昨年11月に110台のノー
ト型PCが更に入った。これは授業用や貸し出し用(SSHに関連した自然科学系のク
ラブ員等宛)に使用している。貸し出すことに関しては、リカバリー機能が強力なので
心配はない。また、情報スペース整備事業により、上記以外にもこの2年間に10台ず
つPCが入った。さらに次世代IT等の各種研究事業でかなりの台数が入っているため、
視聴覚教室や図書室にもPCが配置されている。
教科としての「情報」は、情報Aの授業を1年次に2単位で実施している。TTは行
っていない。もうすぐ(2月末頃)教科書の内容が終了する。SSH事業の中では、ま
とめや発表等の作業に必要な事柄(例えば Power Point の使用方法等)を指導している。
1学年8学級だが、総合的な学習や教員の教材研究等でも利用があるため、コンピュ
ータ教室はほぼフル稼働している。総合的な学習でコンピュータ教室を使用する際は、
授業変更をして各学級の使用時間が重ならないように、その都度調整している。マルチ
ラーニングとしては、授業時に「岐阜県学園(Web)」上のコンテンツを利用させること
がある。また、県で設置したものとは別に、学校独自のLANも組んである(成績デー
タの共有を行っており、実力テストの結果等はここで入力できる)。
3.
情報以外の教科・科目等におけるITの活用状況について
コンピュータは、調べ学習や理科の実験データ処理等に利用しており、コンピュータ
室は放課後・昼休みに指導教員が付ける場合のみ開放している。その際、生徒には簡単
な使用報告書を記入してもらうようにしている。また、自由に使用できるPCが別にあ
るので、それを利用している生徒もいる。
4.
情報教育を支える組織作りについて
情報化推進部を校務分掌の中に位置付
けて3年目位になる(教務部から独立し
た)。保守点検(校内LAN・コンピュー
タ教室の管理)、HPの管理、外部とのや
りとり等を担当しているが、コンピュータ
を使いたい先生の支援にも関わっている
ので大変忙しい状態にある。
5.
学校ホームページのサポート体制について
<解体中の校舎と新校舎渡り廊下>
学校のホームページは県のサーバーに設置し、情報化推進部が管理している。人権に
関してのチェックを行い、更新は管理職の決済をもらって行う(煩雑である)。後期に
入ってからは各分掌から決済済み原稿を提供頂き情報化推進部でアップする形をとって
いるが、更新の回数は減っている。
57
情報教育実態調査 19
大阪府立豊島高等学校
(http://www.osaka-c.ed.jp/teshima/)
調査者
門間
勉
(迫桜高等学校)
宮浦
靖次(女川高等学校)
1. 豊島高等学校の概要
豊島高等学校は大阪府の北部、豊中市にある普通高校。総合選択制を特色とし、生徒
は2年生からはエリア選択と呼ぶ選択科目群に分かれ、各自の興味関心に応じた学習を
することが可能となっている。
2. 情報科教育の実態について
(ア) 具体的な授業内容について
情報教育については、新教育課程1学年
は情報A(2単位、T・T)を履修してい
る。主にワード・エクセル・プレゼンを中
心に学習を行い、インターネットを含めて
情報の基礎学習に力を注いでいる。次年度
から「エリア」(後述)による情報・表現
で、2学年(音楽A・工芸A・情報活用・情報表現入力)、3学年(音楽B・工芸B・
マルチメディア演習・表現演習)のエリア選択があり、さらに自由選択科目(情報B・
情報C・文書処理入門・コンピュータグラフィック入門・画像処理入門・コンピュータ
デザイン入門)を設定し、エリア指定科目
との組合せにより、特定の領域を深く学習
を行い、幅広い領域にわたって学習する予
定である。
(イ) 生徒の演習課題について
旧教育課程2学年・3学年は、3年生で
学校設定教科「総合」学校設定科目「情報
基礎」を履修し、主に代表的なコンピュー
タソフトを使った実習を多く取り入れる
情報の基礎学習に力を注いでいる。現在の新教育課程1学年情報Aに生かされている。
さらに、情報モラル等の問題も実例をあげて説明を行っている。そして、総合的な情
報の活用を必要とする課題を用意して取り組ませている。
3.
教室内における利用環境の整備状況と職員室のLANの整備状況について
各教室に端末が設置されている。職員室のLANの整備状況は大阪府教育委員会総務
サービス(SSC)があり、企業LANのような構築でセキュリティに問題はない。4
58
人1台の割合で職員室にPCがあり、ICカードで管理されている。その内容は、出張
伺い手続き・職員の福利厚生などである。セキュリティの一番高いのは事務室、次に職
員室のLANシステムになる。ウィルス・個人情報に注意する意味で、そのシステムの
成績処理・テスト問題の作成は行わない。
4.
情報教育を支える組織作りについて(公務分掌の位置付け、校内での研修体制)
情報処理委員会(委員は、選挙による公選で選ばれる。進路指導・教務部からも人選。)
が設置され、学校のネットワークサーバーを中心に、各教室の端末・図書館の端末等を
管理する。
5.
学校ホームページのサポート体制について
情報処理委員会がサポートしている。
6.
普通科総合選択制の内容と情報・表現エリアの情報表現入門、情報活用について
普通科総合選択制(平成15年度より導入)とは、これまでの普通科高校とちがって、
1年生では共通履修科目を中心に基礎的基本的な学習を行い、2年生からは、興味・関
心に応じた「エリア」を選択し、エリア指定科目の学習を通じて、得意分野を伸ばす。
さらに多くの自由選択科目の中から、自分にあった時間割をつくれる工夫も行われてい
る。興味・関心に応じた「エリア」とは、歴史・文学探訪、理数科学、マイスポーツ、
情報・表現、英語総合、生活文化の6つのエリアである。
情報・表現エリアは、
「マルチメディア・ネットワークの活用や芸術活動を通じて、お
もいっきり自分を表現してみよう」という内容。このエリアには、コンピュータの実習
を中心とした情報分野と音楽・工芸を中心とした芸術分野という二つの分野がある。
情報分野はコンピュータが好きで、情報系の専門学校などへの進学を考えている人を
対象に考えている。
「情報表現入門」では、文書や画像、音楽などを用いた表現方法やプ
レゼンテーションの手法を学習する。
「情報活用」では、インターネットを利用した情報
収集や、表計算ソフトウェアの活用方法など学習する。
7.
大阪府情報研究会について
研究会の組織がよく、学校単独でのスキルアップは考えなくても良い。高校の情報教
育の中心を、マナー・モラル・個人情報・人権問題・同和教育などを考えていかなけれ
ばならない。
・ コンテンツ開発、標準について
いろいろな教材を挙げて、授業の参考(ヒント)にしたらという形を開発している。
情報A・B・C、各学校に合わせたところで良いのではないか。
8.
その他
・ 生徒のインターネットの利用について
講習会を受けると許可印を押し、パスワード、アドレスを発行する。授業以外での
パソコン利用は少ない。学校への携帯電話の持ち込みを可能にしている(マナーを守
らせる)ので、メールは携帯でできる。
59
情報教育実態調査 20
兵庫県立西宮今津高等学校
(http://www.hyogo-c.ed.jp/ imazu-hs/)
調査者
1.
門間
勉
(迫桜高等学校)
宮浦
靖次(女川高等学校)
西宮今津高等学校の概要
西宮今津高等学校は、南には阪神間に唯一残る甲子園浜を、北西には四季の彩を伝え
る六甲山の峰々を臨むことができる静かで明るい住宅街の一角に存在している。
生徒の一人一人が学習状況、興味、関心、適性、進路などに応じて科目選択を行うこ
とで、学年ごとに自分が学ぶ類型を決定していけるよう、平成15年度生(27回生)
から新学習指導要領の実施とともに、『選択類型制』というシステムを新しく導入してい
る。
また、昨年度から展開しているGCPN(グローバルコミュニケーションプロジェク
ト in 西宮今津)は、コミュニケーションの拠点となることを目的とし、地域社会への情
報発信基地となるWebサイトの構築と校内での教科横断型連携学習を目指している。
2.
情報科教育の実態について
(ア) 具体的な授業内容について
西宮今津高等学校では情報C(履修単位2単位)を1年生で実施しており、「情報
リテラシー」を目標に置いている。入学前のオリエンテーションの段階で、保護者に
は「本校でこんなことをしますよ」と提案する。授業の工夫としては、教材をすべて
Web化している。今日の授業内容や授業計画、テーマが全部書いてあるWebを用
意し、そこに教材を全部リンクで貼り付け、生徒が自由に利用閲覧できるようにして
いる。テーマや計画を明確にすることにより、学習の速度の速い生徒は自分のペース
で学習ができる。教科書の活用方法については教科書だけではなく、副教材と指導書
等で総合的に活用する。さらに学習ノートを個人のスキル差を埋めるために利用して
いる。
評価については以前まで情報が選択科
目だったので、テスト問題も凝ったもの
を作ることが可能だったが、1学年28
0名の採点と考えると、やはり評価基準
からずれないテストが必要だと考えてい
る。また筆記問題を作成するのことは可
能だが、採点が大変となる。よって知識
の定着だけでなく、実習の部分を評価で
きる問題、興味関心を評価できる問題の
60
作成に目標においている。
(イ) 他教科との連携について
・体育科・情報科連携「スペースボール」の研究授業
ICT活用をテーマにNPO法人「SCIX」を介し、神戸製鋼所ラクビー部ヘッ
ドコーチを体育の授業に招いて「スペースボールプロジェクト」を体育科の授業で実
施した。この「スペースボールプロジェクト」のねらいは体育の授業を通して、情報
科の授業も融合させるところにある。体育の授業で行われている実技指導を、Web
サイトやライブビデオを利用しながら効果的に行うことによって、生徒の情報活用能
力を育成し、情報の実習授業の狙いも同時に満たすことが可能になると考えられる。
3.
教室内における利用環境の整備状況と職員室のLANの整備状況について
生徒用として、この春に新しいシステムを整備した。学校の予算で28台、残り12
台はノートパソコンを導入した。これらを図書館に集め、さらに、ノートパソコンにつ
いては授業ごとに移動させて使ったりもしている。また、職員室にはLAN整備された
パソコンがあり、成績処理とは分離可能になるようなLAN環境の整備を行っている。
4.
情報教育を支える組織作りについて
情報教育委員会(ネットワーク管理者を中心に、
各教科・情報科・各学年・情報教育推進委員・事務
職)が設置されている。また職員研修として情報教
育の正しい理解と PC活用の促進を図るために、
Intel@Teach to the Future プログラムを実施した。
5.
学校ホームページのサポート体制について
情報教育委員会で行っている。
6.
G C P N ( Global Communication Project in
Nishinomiyaimazu)と教科横断型連携学習について
「教育の情報化」を推進し、ICTを活用した教科
横断型ティームティーチングという、特色ある授業実
践として「国際交流」「地域学校間交流」「産学連携」「高大連携」の4つの連携学習を
総合的にコーディネートするGCPNが行われている。
「国際交流部門」では、学校設定科目「国際文化」と学校設定教科「情報コミュニケー
ション」とが連携し、韓国ソウル市内のシンモク高校との異文化交流に取り組んだ。地域
学校間交流では地域へ役立つ情報を提供することをテーマに、フィールドワーク・情報収
集・制作・発信まですべて授業の中で生徒が行い、養護学校や地域の住民との交流を深め
た。「産学連携」では、「政治経済」の授業の中で起業家を招き、マーケティングや店舗
開発企画などの具体的な指導を受けた。より実践に近い形の企業プロジェクトを展開する
ことで、産業や社会の厳しさに直にふれ、企画力と実践力を専門家の指導により身につけ、
生徒の興味関心と学習意欲を引き出す結果となった。
61
GCPNによる連携学習の成果として、生徒の意欲・興味関心を引き出し、個々の希望
に応じた学習のなかで、基礎語学力やコミュニケーション能力など社会で生きていくため
の総合的な学力を向上させる学校全体の特色科目として機能するように、研究をすすめて
いる。
7.
兵庫県教育委員会による指導について
各学校のすべてのWebサイトを兵庫県教育委員会でチェックしている。また、イン
ターネット利用のガイドラインも配っている。2チャンネルの書き込みなど内部から外
部への問題が発生した場合、県の情報教育係が各学校へTELして該当者を探して指導
するようにしている。
また、「ひょうごe−スクール構想」として、教育情報ネットワークを利用し、小・
中学校や高等学校、教育機関等の間で動画を含めた各種情報を双方向の交流が可能なよ
うにし、新たな学習の場を提供している。
情報教育実態調査 21
香川県立志度高等学校
(http://www.kagawa-edu.jp/shidoh01/shidokou.html)
調査者
1.
門間
勉
(迫桜高等学校)
宮浦
靖次(女川高等学校)
志度高等学校の概要
香川県立志度高等学校は,商業科・工業科(電子機械科・情報科学科)の学科を持つ
専門高校で、生徒一人ひとりの進路を大切にする教育、実験や実習を重視したハイレベ
ルでユニークな教育、各種ライセンスの取得をめざす教育を教育の特色として掲げてい
る。さらに大学進学も有利になるように専門教科の学習を多くして深い専門知識やライ
センスを身につけるコースと普通教科の学習を多くして,入試や進学後の学習に備える
コースの2つを目標に応じて選択できるようになっている。
2.
情報科教育の実態について
情報は専門教科による代替えで実施している。
(ア) 具体的な授業内容について
「課題研究」
【商業科】
・パソコン応用(ホームページ作成・プレゼンテーションなど。)
・ワープロ実務(ワープロソフトを活用し,さまざまな文書を作成する。)
・スペシャリスト養成(目標とする資格を各自が決定し,その取得を目指す。)
・秘書実務・計算実務・簿記演習・地域商業研究
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・志度高デパート・経済時事問題研究
【工業科】
○電子機械科
・テクノボランティア・エコカーの製作・マイコンカーの製作・デジタルアルバムの
製作
・競技用ロボットの製作
○情報科学科
・プロクラムHPの作成・Sプログラム・Visual
C++のプログラム
・僕らのパソコン学校ツアー∼FLASHを使って・アルバム制作∼あぁ青春の日々
よ
・コンピュータによるNゲージ電車の制御・ソフトクリーマの製作・鯉のぼりの製作
・シャボン玉製造器の製作・綿菓子機の製作・マイコンシップの製作
3.
職員室内のLANの整備状況について
各教室にスタンドアローンのPCが1台設置され,校内LAN(Linux管理)が
されている。プリンターは各学年に1台確保されているが,PCから遠隔なところにあ
る。職員室のLANは,イントラネットの状態で,セキリティは高く,ファイル共有も
安心して行えるようになっている。
4.
情報教育を支える組織作りについて
情報・視聴覚・広報部(4名構成)が組織され、この仕事をおこなっている。
5.
学校ホームページのサポート体制について
情報・視聴覚・広報部で行っている。
「原案→起案→(更新)→教務主任→教頭→校長
→公開」の流れでサイトの更新作業をすることになっている。
6.
工業情報科学科について
工業界で活躍できる人材を育成を目標としている。情報科学科ではコンピュータ技術
者育成をめざし、ワープロ・表計算などコンピュータの基礎からロボットの制御まで幅
広い学習をする。また、
「簿記検定」など商業に関する資格も取得することもできる。卒
業後はコンピュータを取り扱うプログラマー、サービスエンジニア、オペレータなどに
進んでいる。
7.
学校情報セキュリティポリシーについて
各学校が運用規定,規約を作らなければ
ならないことになっている。教育委員会で
策定しているが、まだこれは生きていない。
8. Thin Client System について
香川県の教育研修センターを中心にして、
各学校の端末をリモートで管理するシステ
ムになっている。実際には県の研修センタ
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ーのサーバー上で実習していながら、あた
かも自分のパソコンで実習しているような
感覚でアプリケーションソフトウェア・フ
ァイル管理・電子メール・インターネット
などの実習が行える。
情報教育実態調査 22
静岡大学情報学部
(http://www.inf.shizuoka.ac.jp/)
調査者
神村
伸一(東北文化学園大学)
早坂
昌樹
(宮城野高等学校)
1. 静岡大学情報学部の概要
静岡大学情報学部は情報社会学科、情報科学科の2学科からなり、「文工融合」をキャ
ッチフレーズに教育、研究活動を展開している。
「文工融合」を活かした研究事例として、
災害復旧支援情報システム、小中高校および大学における情報教育、言語学習システム
などがある。
このうちの小中高校における情報教育に関しては、特に小中学校の研究指定校からの
要請などもあり、1つの学期に十数人の「教育ボランティア学生」を派遣している。派遣
先では授業のアシスタントとして活動しているが、浜松市では小中学校段階で独自の「技
能検定」を定めていて、その支援を行うケースが多いようである。
2004年度からはプログラム制が導入される予定で、学生は2年次の段階で計算機科
学(情報科学科)、情報システム(両学科)、情報社会学(情報社会学科)の3つから1
つのプログラムを選択するようになり、より
一層「融合」が明確化される。また、社会人
の再教育を目的とした情報学研究科修士課程
の社会人特別コースの設置も計画中である。
2. しずおか高校情報教育研究会について
「しずおか高校情報教育研究会」は平成1
3年に大学側から高校に対して呼びかけて発
足した「草の根運動」的な研究グループであ
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る。研究会のメンバーはあくまで自己啓発的な動機で参加していて、その活動内容も個人
の都合が許す限りとなっているが、参加者の意識はきわめて高い。これまで土曜日を使っ
て、現場で使えるWeb教材、素材集、Q&A掲示板、高校の授業紹介といったことにつ
いて事例研究を行ってきている。
この研究会とは別に昨年度から静岡県の公的な研究会も発足したが、今後も平行して活
動を進めていく予定である。
3. 高大連携について
高大連携で開発されているものとして,啓林館の教科書に対応したWEB教材や教科
「情報」に関するQ&Aシステムがある。
Q&Aシステムは現在テキストベースで稼働しているが、今後は動画情報も活用して,
学習者に直接語りかける形態も可能となるように開発を進めている。身振り手振りが加
わることにより,内容がずっと理解しやすくなることは実証済みで、映像と同期した文
字情報の表示や動画書き込みが可能な掲示板の作成を目指している。さらには質問の類
似性を判断して自動的に回答するようなシステムも検討していくとのことである。
高大連携を通じて、高校教員からは現場の知見、大学教員からは専門知識・経験が得ら
れ、学生にとってはTAとしての実践、高校生にとっては大学生への質問の機会といっ
た高校教員と大学教員、学生と高校生の関係でのメリットが考えられていたが、高校教
員と大学生、高校生と大学教員という関係も生まれている。このことは新しい情報教育
において,大学は何をしていくのかを考えていく上でのよい事例であると思われる。
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