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いのち・性・AIDSを見つめる
Living with AIDS
202 号のニュースレター
1面~4 面
第24期ボランティア学校報告
5 面~8面
第 23 回AIDS文化フォーラムin YOKOHAMA 参加報告
第 24 期ボランティア学校開校
HIV・エイズを通して学ぶ性の健康~知ることから はじめよう!~
*充実したプログラムを展開しています。その一部を報告します。
(中野久恵)
(7月2日講座)当事者との対話から「知る」を始めよう
桜沢良仁(日本陽性者ネットワーク・ジャンププラス)
陽性の告知は・・・
桜沢さんは、1972 年東京生まれ。2005 年、睡眠時無呼吸症と診断を受け、扁桃腺を切除するた
めに術前検査でHIV陽性とわかり告知を受けられました。32 歳の時、睡眠時無呼吸症が重症であ
るとの診断を受け、非常に重く受け止めたとのことです。耳鼻科医師とは長期的に「主治医と患者」
という関係で信頼関係もできていたといいます。しかし、扁桃腺を切除するための術前検査で主治
医から電話がかかってきて、母が電話を受け、母からの伝言で「免疫の検査結果で気になることが
ある」と聞いた。後から考えると母親に自分がバイセクシュアルであるという性的指向をカミング
アウトしていたら免疫の問題=HIVと気付いたかもしれなかった、しかし、母は私の性的指向も
HIVにも全く気がつかなかった。
確認検査を受けて耳鼻科で陽性の告知を受け、そのまま国立医療センター(ACC)を紹介され、
HIVの治療を開始した。初診時のCD4は 382。ウイルス量は、47.000 コピー/ml。当時のガ
イドラインでは、当面服薬せず経過観察となった。自分の中では睡眠時無呼吸症のほうがHIVよ
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り大きい課題であった。主治医は、経過がよければ 1 年以内に扁桃腺の手術をしてくれると約束し
てもらえた。しかし、その後主治医が転勤することになりショックを受けるが後任の医師が引継ぎ
をしてくれて安心できた。後でわかってショックだったのは、最初に告知を受けた耳鼻科の病院は
拠点病院になっていた。その病院が拠点病院になっているのであれば転院することなく扁桃腺の手
術をそこで受けられたのではないか?診療拒否だったのかという疑問もあり、
「支援団体」の存在
などを調べるきっかけになって現在に至っている。
他科の受診の際は、HIV感染を伝える?伝えない?・・・
現在の医療環境として8科の診察券を持っている。他科受診の際に「HIV感染を言う、言わな
い」は、
「言えない」
「言わない」などと使い分けをしている。健康診断については、
「言っている」
。
産業医については、健康診断の結果が伝わっているという前提だったので伝えたら、
「風俗でもら
ったの?」と言われ、医師の意識やイメージの偏りを感じ、面談では誤った文脈にならないように
話をしているが、そのことは「言わない」よりもずっとストレスフル。
就職先にHIV感染を告知すると・・・
就労に関しては、2番目の勤務先では、上司を通じて上層部に告知した。役員会で、
「他の社員
に感染させたら責任を取るという念書を提出しないと継続勤務は認めない」と言われた。社内でH
IVを感染させるようなことは絶対に起こり得ないが、前例を作るのは避けたいと考え結局退職し
た。
最初の勤務先では、自分なりにHIVについて調べた内容をもとにして上司にカミングアウトし
た。すると、部長、次長、課長と3人ともそろって部下の重たい秘密を抱え込んで落ち気味になり、
自分も長期的なプロジェクトの担当から外されることになった。常務から「プロジェクトに参加し
てもらおうとしたんだが部長たちがどうしても断るんだ、何かあるのか?」と聞かれ、
「たぶん、
他の仕事との兼ね合いとか・・・」と答えながら精神的に厳しい状況だった。打開策を図るため、
人事担当にカミングアウトした。すると、人事担当は総務課長に相談し、保健所に詳しい情報を聞
きに行った。保健所では「安定していれば十分働けます」と言われた。そのあとで、
「御社ならあ
と2~3人いてもおかしくありません」と言われ、個人の健康問題に関する相談を社会問題として
返された。これらのことから、会社も保健所も彼らが考える「HIV陽性者」を自分に上書きして
みていたのだと感じた。
カミングアウト後の問題について、一連のできごとで感じたことは、HIVに
ついての「間違った情報」が間違いと気付かれないことだった。
「数年以内に死
ぬ?」
「実は膨大な感染者がいる?」
「仕事を続けるのは難しい?」
「職場内でも
感染が広がる?」など、冷静に考えれば間違いだと気がつくのに、HIVという
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単語がつくことで信じてしまう。それは、HIVという「社会問題」がいきなり身近なものになっ
た時に「社会問題」を個に当てはめようとすることがトラブルのもとになっている。HIVに関す
る疾病観が悪すぎるため、患者は知識を得て疾病観を改善するが患者ではない人々はどうしたら疾
病観が変わるのか。日本では、①高齢者福祉の世界ではまだまだHIVは遠い存在、②拠点病院を
整備した裏返しで、気軽に町医者にかかるのは難しい感じになっている、③感染する/しないとい
う文脈で教育されているため、陽性者と一緒に働く、暮らすなどのイメージが希薄な人が多くカミ
ングアウトはまだ高いハードルが残っている、などの問題がある。
現在、自分は障碍者雇用枠で働いている。両親とは死別したが、生前には告知しなかった。現在、
講演活動や研究活動に協力している。
【受講者アンケートから】
・ 今までの陽性者の方からのお話とは視点が違って幅広い観点からHIVを考えるのにとて
も参考になりました。
・ HIV陽性者本人は、個人の悩みとして思っていても、社会の悩みとして捉えられてしまう。
この点が問題であることが分かった。
(7月16日講座)多様な性
星野慎二(特定非営利活動法人 SHIP代表)
法人の立ち上げと教育委員会への働きかけ
平成19年から、かながわレインボウセンターSHIPを運営。1日平均5~6人の利用、年間
1000人の利用がある。HIV陽性者の8割が同性間の感染であり、2011年に14歳の男子
の感染が報道されたが社会的には注目されなかった。それは、少女の感染ではなく男子だったから
であろう。2008年に学校に講演に行った際、校長から「同性愛の話はしないでくれ」と言われ
た。同性愛をタブー視している現場の感覚を感じた。翌年、このような状況を変えるには教育委員
会の姿勢が大事と思い神奈川県教委へ相談に行った。教員の意識は、
「同性愛について教える必要
あり」63%とあるが、実際「取り上げたことある」のは14%である。予防教育の中で同性間の
性的接触を前提とした教育が行われていない。
ゲイ・バイセクシャル男性の自尊感情は低い
性的少数者は、LGBTと表現されるがこの他に性分化疾患やAセクシャルの人もいる。
1992年WHOが同性愛を疾病分類から外した。日本でも1994年厚生労働省が公式基準とし
て採用している。
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ゲイ・バイセクシャル男性のメンタルヘルスを見ると自尊感情が低い。14%
が自殺未遂。
(2005年インターネット調査)周囲との違和感があり「異性
を好きになろうとする」が「異性を好きになれない」ことで悩んでいる。思春
期になり学校で恋バナができない状況がある。
親へのカムアウトは約 10%、友人へのカムアウトは44%、その人数は2~5人。
中高生は、インターネットで出会いを求めている。10代の6割以上がSNSのアプリで出会い
セックスを体験している。中高生の課題は、大人から誘惑され望まないセックスやお金をもらって
のセックス、繁華街に連れていかれて酒、たばこを覚えるなどがある。
ハッテン場に行って、なんでセックスしたいのかを考えてみると、人との接点がそこだけしかな
い。人との出会いがなく寂しいから行く、そしてセックス依存になる。ハッテン場以外の出会いが
ないといえる。コンドームを使えない人、なぜ使えないのか、それは使えない状況がある。ノーと
言えない状況がある。
学校教育の場で
年間84回、学校に出向いて研修を行っている。2015年文部科学省が「性同一性障害に係る
児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」通達を出した。また、来年から教科書に同性
愛の記述が入ることになっている。
SHIPの活動は、臨床心理士によるカウンセリング(予約制有料)
、HIV・梅毒・B型肝炎
の即日検査(無料)
、セクシュアリティに関する電話相談などを行っている。
ワンストップセンター的な居場所として「SHIPにじいろキャビン」の運営をされていること
をはじめ、HIV感染症検査やカウンセリング、電話相談など幅広い活動の一端を聞くことができ
た。
(参考)2017年度から使用される高校教科書では「地理歴史・公民・家庭の計31点に性的
マイノリティや家族の多様性についての記述がある」と報道されている。
SHIPほっとライン 毎週木曜日 19 時~21 時 045-548-3980(相談専用)
【受講者の感想】
・SHIPの話は以前聞いたことがあります。今回、再認識しました。一人ひとりが自分の性を大
切にしてほしいと思いました。ありがとうございました。
・同性愛や性同一性障害についての知識が全くなかったので、これらの知識を得るとても良い機会
だった。
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第23回AIDS文化フォーラム inYOKOHAMA
つながる ひろがる わかちあう
2016年 8月 5日(金)~7日(日)報告 中野久恵
3日間で延べ、3348人の参加者を数えた今年のAIDS文化フォーラム。とても充実し
たプログラムでした、その一部を報告します。
【開会式&トークセッション】5日10時~12時
「自立は、依存先を増やすこと」「希望は、絶望を分かち合うこと」
登壇は、熊谷晋一郎さん(小児科医・東大先端科学技術研究センター准教授)と谷山 廣さ
ん(ドント・ウオ―リ―副代表・編集者・活動家)。そして、総合司会の岩室紳也さんです。
熊谷:自分は脳性麻痺のため、18歳までリハビリに励んでいた。健常者になると社会に出
られると言われていたが、どんなにリハビリをしても健常者にはなれない自分がいた。障害は
治さなくてよい、障害はそのままで社会が障害を持っている、社会の側を変えればよいので
は?と思い、18歳で家を出た。一人暮らしを始めた。世界が広がった。社会は優しい場所で
あると身をもって経験した。数学が得意であったが数学から医学へ進路を変更した。
岩室:私は130人のHIVの患者さんを診てきたが、最初は握手するにも戸惑った。人は経
験に学ぶ、経験していないことは他人事である。
谷山:自分は、ゲイでありHIV当事者、依存症の当事者です。体験を話してきたが、最初の
うちは自分が哀れ、恥ずかしい人生と思っていた。自己憐憫の気持ちでいたが仲間の話を聞く
うちに自分だけではないと気付いた。一緒に薬物をやめていこうと思った。7~8年は使用を
繰り返した。安全な場所で話すことが大切。
熊谷:安全な場所、それは、自分にとっては「安全すぎる場所」だった、親に繭に包まれた生
活は安全だけど未来がなかった。(一人になって)ポルノを見るとそれは、自分にとってはリ
ハビリみたい、官能のファンタジーもあった、自分は世にいう変態、クイアである。
谷山:ゲイであるという自覚は幼稚園の年中頃からあった。家族には隠してきた、トラウマに
もなっている。中学からドラッグ、アルコール依存になった。ゲイの自殺念慮は高い、自死も
多い。教育の場で伝えることが大切である。
熊谷:1920年からの依存症の歴史・記録をお手本に当事者が自分たちを助けるという研究
をしている。「自立」は近代が産み落とした規範であるが、依存先は近代のネガ(底つき)と
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して生み出された。「助けてください」と言う、近代の約束から降りることが回復の道を示し
てくれている。
谷山:アルコール依存症の回復プログラム12のステップがある。
岩室:失恋を友達に言えないという(若い人の状況があるのではないか)。人権は、人が生ま
れながらに持っている権利。出生前診断で異常が見つかれば96%が中絶を選択している。そ
のことについて社会が議論していない。個人の選択に任されている。
依存者支援の基本は、①失敗したことが正直に言える場所であること②当事者・援助者同士
の「つなぎ」の促進③薬物使用の発見は、治療を求める絶好の機会④苦痛を緩和するための依
存症⑤依存者にみられる援助希求の乏しさがある。
熊谷:とても残念な事件が起こった。津久井やまゆり園で多くの命が奪われた。明日、追悼会
を行う予定でいる。真相はまだ明らかではないが、大きな影響が出ている。今までの半世紀に
及ぶ実践を台無しにするわけにいかない。被害者の思い、恐怖心、無力感が自分に乗り移って
しまった。子どものとき、リハビリのため1週間キャンプした。その際、先生が子どもを虐待
する、寝ている自分を踏みつけていったという記憶が消えない。住み慣れたところで住むこと
が怖い、ひるみ、おびえている自分がいる。(殺された)あなたたちは、私だと伝えたい。ダ
ルクの仲間が「熊ちゃん、友達やめないでね」と言った。加害者が薬物を使っていたと報道さ
れ、同一視される人がいる。だれもが生きていていい社会をつくってきたのに、連帯が引き裂
かれる想い。
カナダのソーシャルワーカーが言った。「事件が起きると外部化したくなるもの」、コミュ
ニティの外にいる人に、他者に原因の責任を押し付けたくなるものと言った。私たちのコミュ
ニティには他者はいない。今こそ、共生、社会の胆力が試される。
岩室:HIVの20年間の歴史を振りかえると、HIV陽性の人をホテルに泊めていいのかと
いう議論もあった。
谷山:横浜のエイズ会議でメモリアルキルトの展示があったことを思い出す。日本では“死”
が避けられている。80年代、アメリカでは多くの人が亡くなった。また、最近、LGBTの
人たちが利用するナイトクラブで銃乱射事件があった。力づくで命を奪うことが起きた。
熊谷:基本に立ち返って地面を固めたい。慢性疼痛や見えない被災を抱えている人がいる。
谷山:カミングアウトする必要のない社会を作る。災害が起こった時、家族
関係が出ざるを得ない。
当事者間の連帯や社会への提言など発信
していくことが大切。
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衝撃的な事件直後の中で、深く考えさせられる濃密な時間だった。「自立は依存先を増やす
こと」を心に刻んだ。
若者たちの性・デートDV 上村茂仁(ウイメンズクリニックかみむら)
8月7日
岡山市内で産婦人科クリニックを開業している上村さんの講演を聞いた。上村さんは、出前
授業やメール相談など性教育を中心に活躍されている産婦人科医師。受診者の統計資料から、
子どもたちの性感染症の状況や相手との関係性の問題など事例を通して話された。
妊娠しないためにオーラルで することが多く、のどや肛門の粘膜に感染している。女子の
梅毒が、2012年から増加している。受診した際、22週を超えているため18歳未満で分
娩した事例もある。レイプの加害者は、友人、先輩、彼氏、指導者、家族、教師など。
デートDVの難しさは、自分にとっては優しく大切な人なので、別れない、離れたくないと
いう。「約束」そのものが、デートDVの最大の暴力である。彼は、殴るが普段は優しいから
彼はDVではないという。DVのパンフレットには、「優しい」は書かれていない。
自然界にはオスが自分の子どもを確実に残す為、メスの行動を制限する「配偶者防衛」がある。
トンボの交尾は、オスがメスを押さえつけてハートの形になっている。コミュニケーション能
力が落ちてくると本能的には束縛する。
DVを受けている子どもから、「助けてください」と相談を受けたとして、子どもは「別れ
なさい」の答えは求めていない。本人は元の関係に戻してほしいと思っている。「怖い」のも
「優しい」のも束縛である。70%の子どもが「別れたくない」と答えている。
例えば、「自分がした約束を破られそうになる、そうしたらどういう行動をとるか(別れる
と言ったら)」考えてみようと会場に投げかけられた。「泣く」「別れたら死ぬ(と言う)」
「自殺を表示する」は、相手をつなぎとめるためのDVである。女子に加害者が多い。
「恋愛」とは何だろう。「恋」は一方的に好きになること、「愛」は相手を思いやること、
自分がしたいことを抑えること。「恋」と「無関心」がDVである。
予防のためには、つながる力を持とう。友人、家族、サークルの仲間、ボラ
ンティア、音楽、本、映画など。自己肯定観は“つながる力”。友人、仲間に
相談できること。
ラインやツイッターの使い方を子どもに教える。ちょっと好きになったら、
早い段階で会ってみる。友人に言って、みんなで会いに行くこと二人きりで会
わない。
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デートDVの被害者の友人や家族・あなたへ
① その関係はDVであることをやんわりと伝える。
② つながりを断たない。距離を保ちながら、積極的に関与してDVの改善を図ろうと思わ
ないこと。
③ アイ(私)メッセージで話をする。行動しなくてはいけないときには
しっかり説明して理解を得るように話す。相手がダマそうとしたらダ
マされる。
④ どんなことを話されてもびっくりしない。すべて鵜呑みにして理解し
ようとする。
⑤ 結局被害者は何らかの事例、または事情で傷つく。落ち込み、挫折しないと変わること
はない。
⑥ 挫折したとき、「別れるよう」伝えてもよい。
⑦ 警察、NPOへつなぐ。
DV防止は、「気づく、聴く、寄り添う、専門家につなぐ」である。
今年のAIDS文化フォーラムでのAIDSネットワーク横浜は、
7日午前「HIV感染者、AIDS患者の看護と介護」宮林優子さん
7日午後「性感染症に注意!」井戸田 一朗さん
に担当していただきました。参加者も多く、大変好評でした。
電話相談件数:6 月 97 件
7 月 96 件 8月 51 件
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