月積み契約鉄鋼販売価格 の解説(第1回) はじめに ①1:需要家からの鋼材申し込み 鉄鋼一次製品の販売・購買は大きく分けて「ひ ①2:メーカーは引き受けを検討, の形態が存在し, 「ひもつき契約」における取引 価格は, 「月積み契約鉄鋼販売価格」として本誌 P4からP13まで,「店売り契約」価格はP14以降に 毎月調査した結果を掲載しています。 引き受けを決定し,需要家側へ回答 需 要 家 メ ー カ ー もつき契約」と「店売り契約」と呼ばれる2種類 ②1:需要家は注文書を発行 ②2:メーカーから注文請書を発行 ※一般的にはこの時点で正式契約となり 価格はこの段階で決定する ③:メーカーの工場にて生産を開始 1. 「ひもつき契約」と「店売り契約」の違い ④:メーカーから需要家へ製品を出荷 「ひもつき契約」とは,物件単位で多品種・多 図—1:ひもつき契約における販売契約の流れ 規格にわたる鉄鋼製品(以下,製品)を購入する 場合や,市場性が低く手に入りにくい規格品を購 入する場合において,メーカーと需要家との間で で在庫し,需要家は必要に応じて当該在庫品を購 価格,数量,納期,決済条件といった契約に関す 入する販売・購買形態です。一般的に,店売りま る諸条件を交渉し,契約段階でメーカー指定商社 たは市中品取引と呼ばれます。当該取引は,ひも を介在させる販売・購買形態です。 つき契約とは異なり,需要家は流通業者である特 一方,「店売り契約」とは,商社や特約店が汎 約店・商社と価格その他の交渉を行います。ただ 用規格品についてメーカーへ注文した製品を自社 し,市中の流通業者は,注文の少ない特殊規格品 1月 3月 4月 5月 6月 ①1:需要家からの鋼材申し込み ①2:メーカーは引き受けを検討, 引き受けを決定し,需要家側へ回答 ②1:需要家は注文書を発行 ②2:メーカーから注文請書を発行 ③:メーカーの工場にて生産を開始(ロール) ④:メーカーから需要家へ製品を出荷 ※製品毎の需給・製造状況により, 納期が延びることがある 図—2:製品出荷までのスケジュールの流れ(4月積み契約の場合) 月積み契約鉄鋼販売価格の解説 については在庫リスクが高くなるため,注文の入 れとなります。この内,③および④は,その時々 り や す い 汎 用 規 格 品(H形 鋼, 鋼 板 な ど で は の製品ごとの需給・製造状況によって,通常より SS400 ,無規格品(ムキ) ,鋼管などではSS400相 も長くなる場合があります。 当品)を中心に在庫するため,需要家側の要望通 りの製品が必ずしも手に入る訳ではありません (詳細は本誌P2〜3「鋼材価格欄の見方」を参照) 。 3)製品の受け渡し条件 メーカーの工場で生産された製品は,物流面で 「直送」と「倉入れ」とに区別されて出荷されます。 「直送」とは,製品を直接,需要家の工事現場 2. ひもつき契約の各種条件 や加工工場,倉庫などに納入することを指し,ひ 1)決済条件 もつき契約のほとんどの場合が直送扱いとなりま メーカーと需要家との決済条件は,毎月15〜20 す。また,製品の受渡しは,陸送の場合はトラッ 日を締め切り日として,当月末の現金払いが原則 ク乗せ渡し,海送の場合はメーカー指定河岸の です。締め切り日はメーカー毎に若干異なりま 内,需要家が所有する河岸,または,使用許諾を す。 受けた上で専有している需要家河岸着艀(はしけ) 乗せ渡し,となります。 2)販売契約とスケジュールの流れ 乗せ渡しとは,陸送の場合は需要家が指定する ひもつき契約は,メーカーと需要家とが各種条 受渡し場所まで,海送の場合は河岸に艀(メーカー 件について交渉を行い,契約から製品の出荷に至 単独で選定した台船なども含む)を横付けするま るまでに図–1のような交渉の流れとなります。 ではメーカー側の責任で行い(CIF),トラック また,メーカーから製品が出荷され,需要家に からの積み卸しまたは艀からの荷揚げ作業以降は 渡されるまでは図–2のようなスケジュールの流 需要家側が金銭を負担する,という条件で荷渡し メーカー指定 河岸の内, 需要家河岸 流通業者所有の 倉庫,または メーカー指定 河岸の内, 営業河岸 市中品 (店売り) (倉入れ) 本船 遠隔地などは,一旦海送 艀 艀 本船 海送の場合 艀 艀 艀 図—3:製品の受け渡し条件ごとの輸送図 本船 少量の場合など, 稀に製鉄所内のヤードまで 需要家または流通業者に取りに来てもらう 形態もある。 ︵積み込み渡し,置場取り, などと呼ばれる︶ 乗せ換え後, 陸送 メーカー︵工場︶ ひもつき契約 (直送) 中継地 ︵一時保管︶ 都市内現場 直接 陸送する 場合 が行われることを指します。 類,価格は品種,規格によって異なるため注意が 「倉入れ」とは,製品を流通業者の倉庫に納入 必要です。 することを指し,店売り契約の場合,物流はすべ ベース価格に対し数多くのエキストラ価格が設 て倉入れとなりますが,ひもつき契約の一部で極 定されている理由は,生産される鋼材がその社会 稀に倉入れを行うことがあります。製品の受渡し 的な要請から多品種・多規格に亘っていることに は,陸送の場合は直送と同じくトラック乗せ渡 拠ります。メーカー,需要家双方にとって,多品 し,海送の場合はメーカー指定河岸の内,流通業 種・多規格に亘る製品の価格を個別に管理するよ 者,運送業者,倉庫業者または公共団体が所有す りも,スタート地点となるベース価格に必要に応 る河岸,または使用許諾を受けた上で専有してい じてエキストラ価格を加算していく体系の方が, る営業河岸着艀乗せ渡し,となります。 実運用場面において便利であるからです。 製品の受け渡し条件は,図–3をご参照くださ 表–1はひもつき契約の計算方法を簡単に示し い。 たものです。同一のベース価格に対し,必要な鋼 3. ひもつき契約価格の計算方法 材の規格や寸法に応じたエキストラ価格を加算す ることで,多くの価格を求めることが可能となり 月積み契約鉄鋼販売価格の計算の大原則は, ます。 「ベース価格」+「各種エキストラ価格」 では,次頁より品種別に具体的な算出事例を紹 =「鉄鋼販売価格」 となります。 介します。 (計算根拠となる価格は「月刊積算資料」2010年6月号を採用) 「ベース価格」とは,品種ごとにあらかじめ決 められている特定の規格(ベース規格) ・寸法 (ベースサイズ)の契約販売価格を指し,計算の スタート地点となります。ベース規格は,無規格 (ムキ)やSS400,SS400相当品となることが多 く,ベースサイズは直径,厚み,幅,長さなど品 種ごとにそれぞれ規定されています。 「各種エキストラ価格」とは,上記のベース規 格・ベースサイズ以外の製品を注文する際,メー カーが製造を行う際に必要となる原材料コスト, 取り回し費,加工費といった要因から,あらかじ め設定された加算額を指します。エキストラの種 表—1:ひもつき契約価格の基本的な計算方法 規格 SS400 SM400A 規格エキストラ価格 +1,300 小計 111,300 (単位:円/t) SMA570PQ BHS500W +3,500 +66,000 +83,000 113,500 176,000 193,000 ベース価格(厚板) 110,000 注1)肉厚は16mm ,その他寸法はすべてベース内に収まっているものとする。 月積み契約鉄鋼販売価格の解説 表—2:H形鋼製品寸法と呼称(JIS規定にあるもの) (単位:mm) 1)形 鋼 系列 計算例① H形鋼 規格:SM400A 高 幅 厚 広幅 寸法: 912 × 302 × 18 × 34 mm 厚 長さ:19.6m ※実輸送場面では各種制約がかかります 単位質量:283.0kg/m=5,546.8kg/本 シリーズ ウェブ高 フランジ 幅 ウェブ厚 フランジ 厚 100×100 1₂5×1₂5 150×150 175×175 ₂00×₂00 ₂50×₂50 300×300 350×350 100 1₂5 150 175 ₂00 ₂50 300 350 ₄00 ₄1₄ ₄₂8 ₄58 ₄98 1₄8 19₄ ₂₄₄ ₂9₄ 3₄0 390 ₄₄0 ₄88 588 700 800 890 900 91₂ 918 150 175 ₂00 ₂50 300 350 ₄00 ₄50 500 600 100 1₂5 150 175 ₂00 ₂50 300 350 ₄00 ₄05 ₄07 ₄17 ₄3₂ 100 150 175 ₂00 ₂50 300 300 300 300 300 300 ₂99 300 30₂ 303 75 90 100 1₂5 150 175 ₂00 ₂00 ₂00 ₂00 6 6.5 7 7.5 8 9 10 1₂ 13 18 ₂0 30 ₄5 6 6 7 8 9 10 11 11 1₂ 13 1₄ 15 16 18 19 5 5 5.5 6 6.5 7 8 9 10 11 8 9 10 11 1₂ 1₄ 15 19 ₂1 ₂8 35 50 70 9 9 11 1₂ 1₄ 16 18 18 ₂0 ₂₄ ₂6 ₂3 ₂8 3₄ 37 7 8 8 9 9 11 13 1₄ 16 17 ₄00×₄00 H形鋼は, 「構造用鋼材」の一品種であるととも に最も代表する鋼材で,その名の通り,断面がア ルファベットの「H」字形になるように2枚のフ ランジと1枚のウェブによって形作られていま す。昭和30年代後半から製造されていますが,現 中幅 在はJIS規格だけで70種類,メーカー各社の独自 規格を加えると100種類を優に超えます。計算を するに当たっては,H形鋼の各部の呼称や種別に ついての知識が不可欠ですので,簡単に解説を行 います(図—4参照) 。 900×300 フランジ厚 ウェブ高 フランジ幅 細幅 ウェブ厚 150×100 ₂00×150 ₂50×175 300×₂00 350×₂50 ₄00×300 ₄50×300 500×300 600×300 700×300 800×300 図—4:H 型鋼部位の呼称 H形鋼の種別は, 「系列」 , 「シリーズ」 , 「サイズ」 とに分けられます。 「系列」とは,ウェブ高とフランジ幅の比率に よって3つに区分され,およそ1:1のものを「広 幅系列」 ,同1:0.7のものを「中幅系列」 ,同1:0.5 のものを「細幅系列」と呼称します。 150×75 175×90 ₂00×100 ₂50×1₂5 300×150 350×175 ₄00×₂00 ₄50×₂00 500×₂00 600×₂00 表—3:ベース価格の区分 区分 呼称 規格 広幅系列 中幅系列 細幅系列 ジュニアサイズ 300シリーズ以下 300シリーズ以下 400シリーズ以下 「シリーズ」とは, 広幅から細幅系列の中でウェ ミドルサイズ 350シリーズ以下 500シリーズ以下 500シリーズ以下 ブ高とフランジ幅の数字によって表—2の通りに シニアサイズ 400シリーズ以下 600シリーズ以下 600シリーズ以下 区分されますが,表中のシリーズはあくまでも ジャンボサイズ - 700シリーズ以上 - JIS規定にあるサイズのみを記載しており,メー カー各社の独自規格によってさらに多くのシリー とを合わせて考えた区分で,表—3の通り,4種 ズが存在します。 類に分かれます。本誌掲載のベース価格は最終的 「サイズ」とは,上記の「系列」と「シリーズ」 にこの「サイズ」区分によって設定されています。 計算例①のようなH形鋼を入手しようとした場 理されるという意味で,500mmごとに1,000円ず 合,SM400A規格のH形鋼を市中で在庫する流通 つ加算する訳ではありません。 業者は非常に少なく,入手はひもつき契約に拠り さらに,計算例①は,500mmピッチには当て ます。そのため,上記のH形鋼の価格を確認する はまらない長さ19.6m(=19,600mm)となるため, には,本誌P14以降の「市中品」価格ではなく, 100mmピッチに切り揃えるためのエキストラが P4の「月積み契約鉄鋼販売価格」欄をご覧くだ さらに加算されることになります。そこで,「定 さい。 尺以外の中間長さ(100mmピッチ)」1,000円/ 具体的な計算方法は下記の通りです。 t Ⓓの加算も必要となります。 ベース価格は表—2,3より中幅900シリーズと 求める価格=100,000円/t+3,500円/t+ 長さエキストラ(18m以上):1,000円/t+ なることから,本誌掲載の「H形鋼 JIS標準寸 法 無規格 中幅700以上」に該当します。本誌 長さエキストラ(中間長さ):1,000円/t… 2010年6月号では, 当該サイズの実勢販売価格 (全 次に「サイズエキストラ」の加算です。H形鋼 国Ⅱ)は,100,000円/t Ⓐです。 のサイズエキストラとは,汎用品から外れて特殊 求める価格=「ベース価格」:100,000円/t… H形鋼を含む「形鋼エキストラ」は, 「規格エキ ストラ」 , 「寸法エキストラ」 , 「加工エキストラ」 の3種類に大別されます。 「規格エキストラ」は 各種鋼材規格とフランジ厚によって細分化され, 「寸法エキストラ」は「長さエキストラ」 , 「サイ ズエキストラ」 , 「極厚エキストラ」の3種, 「加工 エキストラ」は「CT形鋼エキストラ」と「ショッ トエキストラ」の2種にさらに分かれています。 計算例①では,規格はSM400A ,フランジ厚 は34mmと な っ て い ま す の で, 「溶接構造用 SM400A t≦38mm」 に 該 当 し,3,500円/t Ⓑ 扱いとなる全8シリーズ(本誌P4参照)のこと で,計算例①はサイズエキストラ「900×300シリー ズ」4,000円/t Ⓔの加算が必要です。 求める価格=100,000円/t+3,500円/t+ 1,000円/t+1,000円/t+サイズエキストラ (900×300シリーズ):4,000円/t… 計算例①の結果 ︵単位 : 円⊘t︶ 記号 内訳 金額 Ⓐ Ⓑ Ⓒ Ⓓ Ⓔ ベース価格 規格エキストラ 長さエキストラ(長尺18m 対応) 長さエキストラ(中間長さ切り揃え) サイズエキストラ 小計 100,000 3,500 1,000 1,000 ₄,000 109,500 をベース価格に加算します。 求める価格=100,000円/t+ 規格エキストラ:3,500円/t… 以上より,109,500円が求めるH形鋼のt当た り価格となり,本当たりに換算すると 109,500円/t× 質 量:5.5468t=607,374円/本 次に「寸法エキストラ」の加算となります。掲 となります。 載の寸法エキストラ欄には「ベース=定尺 6≦ ※質量はJIS Z 8401の規定に基づき,実際は上3桁を有効値として 計算根拠とします。 L≦18m(500mmピッチ)」と規定されています。 計算例①は,長さは19.6mとなっており,ベース その他のH形鋼に関するエキストラには, 「極厚 サイズ以上の長さが必要です。そのため,長さエ エキストラ」 , 「加工エキストラ(CT形鋼エキス キストラの内,18m以上の場合のエキストラであ トラ,ショットエキストラ)」があります。 る( 「18m<L(500mmピッチ)」)1,000円/t Ⓒ 「極厚エキストラ」は400×400シリーズのフラ の加算を行います。ここでいう「500mmピッチ」 ンジ厚が30mm以上,または500×500シリーズの とはメーカーの基本製造長さが500mmごとに管 「極厚H形鋼」と呼称されるH形鋼についてのエキ 月積み契約鉄鋼販売価格の解説 Ⓐ ● Ⓒ ● Ⓓ ● Ⓑ ● Ⓔ ● ストラです。 となるエキストラです(メーカーによって対応の 「CT形鋼エキストラ」はH形鋼をCT形鋼に加 可否有)。 工するためのエキストラです。CT形鋼とは,素 上記3つのエキストラはいずれも今回の計算例 材H形鋼のウェブ部を半分に切断することで1本 からは対象外となるため,加算は不要です。 のH形鋼から2本のT形鋼を作る「Cutして製作 されたT形鋼」のことを指します。なお,本誌表 なお,ベース価格について,計算例ではJIS標 記の「W」とは本誌P4下段の【注記】にある通り 「ウェ 準寸法品を採用しましたが,橋梁工事用途で使用 ブ高」を指しますが,CT形鋼の場合は切断加工 するH形鋼を求める場合は「橋梁用H形鋼 無規 前の素材H形鋼のウェブ高を指し,CT形鋼に加 格」を,杭工事用途でJIS規定(JIS A 5526) 工された後のウェブ高(素材H形鋼のウェブ高の にあるSHK400規定のH形鋼を求める場合は「H 1/2サイズ)ではないため,ご注意ください。 形鋼杭 SHK400」をそれぞれ用いる必要があり 「 シ ョ ッ ト エ キ ス ト ラ 」 と は, 素 材H形 鋼 に ますので,ベース価格,エキストラ価格ともに選 ショットブラスト処理後,ジンクリッチプライ 定に誤りがないよう,注意が必要です。 マーまたはウォッシュプライマーを施す際に必要 さらに,21.6m(=21,600mm)の製品とするに 2) 鋼 矢 板 は,100mmピッチの切り揃えが必要であることか 計算例② 鋼矢板 規格:SYW390 形状:SP-VL 長さ:21.6m ※実輸送場面では各種制約がかかります 単位質量:105.0kg/m=2,268kg/枚 ら, 「500mmピッチ以外の切揃え料(100mm単位)」 2,000円/t Ⓓも加算します(ピッチの考え方は計 算例①H形鋼の寸法エキストラと同様) 。 求める価格=142,000円/t+8,000円/t+ 長さエキストラ(20<L≦25m(500mm ピッチ)):2,000円/t+長さエキストラ (500mmピッチ以外の切揃え料) :2,000円/t… 上記のような鋼矢板を入手しようとする場合, 次に「形状エキストラ」に移ります。鋼矢板の 鋼矢板を市中で在庫する流通業者は非常に少ない 内, 一 般 的 に 使 用 さ れ る こ と の 多 い 寸 法 は ため, 形鋼同様, 入手はひもつき契約に拠ります。 400mm幅のU形鋼矢板(Ⅱ型からⅣ型),600mm したがって,本誌P5掲載の「月積み契約鉄鋼販 幅の広幅鋼矢板(Ⅱw型からⅣw型),高炉メー 売価格」欄をご覧ください。 カー3社の共同開発品である900mm幅のハット 具体的な計算方法は下記の通りです。 形鋼矢板(10H,25H)の計8種類ですが,それ 以外にもⅤL型,ⅥL型(それぞれ500mm幅),Ⅰ ベース価格は「鋼矢板 SYW295 U形(ⅤL, A型(400mm幅),直線形(新日本製鐵㈱のみ製 ⅥL,ⅠA)」に該当します(鋼矢板の寸法は本 造 のFL ,FXL 。 そ れ ぞ れ500mm幅。 以 下, 敬 誌P5下段の一覧表やメーカー HPなど,各種資料 称省略)の計5種類が流通しています。 を参照のこと) 。本誌2010年6月号では,当該サ 鋼矢板の形状エキストラとは,特殊扱いとなる イズの実勢販売価格(全国Ⅱ)は,142,000円/t 後者の5種類にのみ加算が必要なエキストラで です。 す。計算例②はⅤL型であることから,「ⅤL,Ⅵ 求める価格=「ベース価格」 :142,000円/t Ⓐ… 鋼矢板のエキストラ構成は, 「規格エキスト ラ」 , 「寸法エキストラ」 , 「形状エキストラ」 , 「加 工エキストラ」 , 「重防食エキストラ」の5種類と なります。計算例②の規格はSYW390なので, 「溶 接用熱間圧延鋼矢板 SYW390」に該当,8,000 円/t Ⓑをベース価格に加算します。 求める価格=142,000円/t+ 規格エキストラ:8,000円/t… L,ⅠA」3,000円/t Ⓔの加算が必要となり, 求める価格=142,000円/t+8,000円/t+ 2,000円/t+2,000円/t+形状エキストラ (ⅤL,ⅥL,ⅠA):3,000円/t… 計算例②の結果 ︵単位 : 円⊘t︶ 記号 内訳 金額 Ⓐ Ⓑ Ⓒ Ⓓ Ⓔ ベース価格 規格エキストラ 長さエキストラ(長尺₂0m 超) 長さエキストラ(中間長さ切り揃え) 形状エキストラ 小計 1₄₂,000 8,000 ₂,000 ₂,000 3,000 157,000 次に「寸法エキストラ」欄には「ベース=6≦ L≦20m(500mmピッチ)」と規定されています。 以上より,157,000円/tが求める鋼矢板のt当 計算例②の長さは21.6mであり,ベースサイズ以 たり価格となり,枚当たりに換算すると 上の長さが必要なことから,長さエキストラの 157,000円/t×2.268t=356,076円/枚となります。 内, 20m以上の場合の「20<L≦25m(500mmピッ チ)」 :2,000円/t Ⓒの加算を行います。 月積み契約鉄鋼販売価格の解説 Ⓐ ● Ⓔ ● Ⓑ ● Ⓒ ● Ⓓ ● その他,鋼矢板に関するエキストラは,前述の 他に「加工エキストラ」 , 「重防食エキストラ」が あります。 「加工エキストラ」は, 「組み合わせ鋼矢板」と 呼ばれる図 5に示す箱状に加工する際に必要と なるエキストラであるため,今回求める鋼矢板で は対象外です。 「重防食エキストラ」は,鋼矢板にポリエチレン 図—5:組み合わせ鋼矢板(出典:新日本製鐵㈱「新日鐵の鋼矢板」) またはウレタンエラストマーを厚膜ライニング(2 mm以上)し,長期間の防食・耐食機能を施すた めの特殊加工エキストラで,主に海水に鋼矢板が 触れるような護岸工事などで使用されます。一般 的には鋼矢板が海水に触れる片側面を海水の干満 差と海水飛沫を考慮して被覆長が決定されます。 溶接 溶接 丁字形 十字形 図—6:異形鋼矢板の例 用する工事の内,鋼矢板の打ち込みに際し,打ち 込み方向の関係から垂直に交わる部分に異形鋼矢 鋼矢板のJIS規定には熱間圧延鋼矢板(SY:JIS 板と呼ばれる丁字形または十字形に加工した鋼矢 A 5528)と溶接用熱間圧延鋼矢板(SYW: 板を使用することがあります( 図 6 参照) 。こ JIS A 5523)の2種類が存在します。SYWは れ は 鋼 矢 板 同 士 を 溶 接 す る 必 要 が あ る た め, 文字通り溶接性を高めた鋼矢板です。鋼矢板を使 SYWを使用することが望ましいと言えます。 次回は「鋼管杭」 「一般構造用炭素鋼鋼管」の解説です。
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