放射線医学 廣川先生 過去問

放射線医学
廣川先生
過去問
2010 年度 3 年前期 放射線診断治療学
1.IVR(Interventional Radiology)について正しいものの組み合わせを選べ。
1. 血管系治療と非血管系治療に大別される。
2. 放射線を用いた治療である。
3. 適応は外科治療が不可能な場合に限られる。
4. 外科治療より治療効果が高い。
5. 繰り返し施行可能である。
a.(1)(2) b.(1)(5) c.(2)(3) d.(3)(4) e.(4)(5)
2.以下のうち正しいものの組み合わせを選べ。
1. 2cm の単発性肝細胞癌の治療にラジオ波凝固療法は有用である。
2. 門脈本幹に腫瘍塞栓のある肝細胞癌の治療に放射線治療は有用である。
3. 10cm の単発性肝細胞癌の治療に抗がん剤動注科学療法は有用である。
4. 10 個以上多発する肝細胞癌の治療に動脈塞栓術は有用である。
5. 腹水のある肝硬変に伴った肝細胞癌に対して積極的ながん治療が有用である。
a.(1)(2) b.(1)(5) c.(2)(3) d.(3)(4) e.(4)(5)
3.以下のうち正しいものの組み合わせを選べ。
1. 腎動脈狭窄に伴う高血圧の有効な治療として腎動脈塞栓術がある。
2. 腹部新生動脈瘤の有用な治療としてコイルによる動脈瘤塞栓術がある。
3. 子宮筋腫に対する有用な治療として子宮動脈塞栓術がある。
4. 脾腫に伴う血球減少に対する有用な治療として全脾動脈塞栓術がある。
5. 切除不能頭頸部癌に対する有用な治療として腫瘍動脈塞栓術がある。
a.(1)(2) b.(1)(5) c.(2)(3) d.(3)(4) e.(4)(5)
4.次の組み合わせのうち誤っているものはどれか
a. 血管造影―動脈塞栓術
b. 超音波―ラジオ波凝固療法
c. CT―中心静脈カテーテル挿入術
d. 上部消化管内視鏡―胃瘻造設術
e. X線透視―経皮的胆道ドレナージ
5.正しい組み合わせは?
1. DSA では動きによるアーチファクトを低減できる
2. 超音波装置は IVR 的穿刺治療の有用性は高い
3. CTAP は小さな肝腫瘍の存在診断はできる
4. CTHA は肝腫瘍の質的診断はできない
5. CT では IVR 的穿刺治療はできない
a.(1)(2) b.(1)(5) c.(2)(3) d.(3)(4) e.(4)(5)
1
解答
1.b
1.○
2.×・・・IVR とは放射線診断技術の治療的応用のことらしいです。
3.×・・・そんなことありません。
4.×・・・手術より高くはないでしょう。
5.○
2.a
1.○
2.○
3.×・・・径 3 ㎝以上のものには肝動脈塞栓術を行います。
4.×・・・多発性のものには抗がん剤動注療法を行います。
5.×・・・よくわかりません。すみません。
3.c
1.×・・・PTA(経皮的血管形成術)を行います。
2.○
3.○
4.×・・・PSE(部分的脾動脈塞栓術)を行います。
5.×・・・頭頸部癌動注化学療法を行います。
4.e
a.○
b.○
c.○
d.○
e.×・・・超音波画像の元で行います。
5.c
1.×・・・できません。
2.○
3.○
4.×・・・できます。
5.×・・・できます。
2
2009 年度 3 年前期 放射線診断治療学
出題なし?
2008 年度 3 年前期 放射線診断治療学
Ⅰ.IVR(Interventional Radiology)について正しいものの組み合わせを選べ。
1.血管系治療と非血管系治療に大別される。
2.放射線を用いた治療である。
3.適応は外科治療が不可能な場合に限られる。
4.外科治療よりも治療効果が高い。
5.外科治療よりも侵襲性が低い。
a. (1)(2) b. (1)(5) c. (2)(3) d. (3)(4) e. (4)(5)
Ⅱ.以下のうち正しいものの組み合わせを選べ。
1.腹水のある肝硬変に伴った肝細胞癌の治療に肝動脈塞栓術は有用である。
2.3cm 以上の単発性肝細胞癌の治療にラジオ波凝固法は有用である。
3.5 個以上多発する肝細胞癌の治療にラジオ波凝固法は有用である。
4.10 個以上多発する肝細胞癌の治療に抗がん剤動注化学療法は有用である。
5.門脈本幹に腫瘍塞栓のある肝細胞癌の治療に放射線治療は有用である。
a. (1)(2) b. (1)(5) c. (2)(3) d. (3)(4) e. (4)(5)
Ⅲ.以下のうち正しいものの組み合わせを選べ。
1.腎動脈狭窄に伴う高血圧の有用な治療として腎動脈塞栓術がある。
2.腹部真性動脈瘤の有用な治療としてコイルによる動脈瘤塞栓術がある。
3.子宮筋腫に対する有用な治療法として子宮動脈塞栓術がある。
4.脾種に伴う血球減少に対する有用な治療法として全脾動脈塞栓術がある。
5.切除不能頭頚部癌に対する有用な治療として腫瘍動脈塞栓術がある。
a. (1)(2) b. (1)(5) c. (2)(3) d. (3)(4) e. (4)(5)
Ⅳ.次のうち誤っているのはどれか。
a.中心静脈カテーテル挿入は超音波ガイド下穿刺がより安全である。
b.3cm の腹部真性動脈瘤に対しては外科治療がまず考慮される。
c.深部静脈血栓症による肺塞栓症の予防として下大静脈フィルターは有用である。
d.胃静脈瘤の治療法として B-RTO は有効な治療法である。
e.多発肝転移に対してリザーバポートシステムを用いた動注化学療法は有効な治療法である。
Ⅴ.以下のうち正しいものの組み合わせを選べ。
1.DSA(Digital Substravtion Angiography)では腫瘤と骨の区別はできない。
2.CTHA(肝動脈造影下 CT)では肝腫瘍の存在診断は可能だが質的診断はできない。
3.CTAP(経動脈性門脈造影下 CT)では小さな肝腫瘍の存在診断が可能である。
4.超音波装置は IVR(Interventional Radiology)的穿刺治療で有用性が高い。
5.CT では IVR(Interventional Radiology)的穿刺治療は不可能である。
a. (1)(2) b. (1)(5) c. (2)(3) d. (3)(4) e. (4)(5)
3
解答
去年だけでも結構対応可能だけど、一応何年分か見ておくといいかも。作り始めは 2007 年度からだけど、それ
以前と比べても、大きな変化は無いっぽい。
Ⅰ
b(1,5)
2・・・IVRは画像下に行う治療の事。画像を見るためには使う場合も有るが、治療そのものは主にチューブ
の挿入などで、放射線は使わず。
3・・・従来の治療法より優れた治療効果を発揮 or 他の治療手段がないとき使用。
4・・・治療効果についての優劣はつけられない。
Ⅱ
e(4,5)
(2007年度の回答は多分ミスだと思う。
)
1・・・腹水があるなら行う手術は TIPS(transjuglar intrahepatic portosystemic shunt)
=総頚静脈的肝内門脈体循環シャント なので、塞栓はしない。
2,3・・・ラジオ波凝固法は、主に、3cm以下かつ10個以下の腫瘍に用いる。
5・・・門脈本管に腫瘍が侵入していると門脈の血行が障害されているため、TAE によって動脈血まで止めると
肝臓の血流供給が激減、壊死する可能性もある。よって、この場合 TAE は禁忌である。ゆえに放射線治療を行
うのは適していると思う。
4が正解で 3 が違うから、ではだめでしょうか・・・?
Ⅲ
c(2,3)
1・・・経皮的血管形成術(PTA percutaneous transluminal angioplasty)または
PTA+経皮的ステント留置術を行う。
4・・・PSE(partial splentic embolization)=部分的脾動脈塞栓術の事。
5・・・頭頚部癌動注化学療法を行う。
2(補足)・・・仮性(血管壁が3層構造を持たない)の場合は破けやすいので注意が必要。
3(補足)・・・適応の例外規定があるので、シケタイをしっかり見ておきましょう。
Ⅳ
b
去年の過去問の間違い探しの回答と、bの内容が一緒したので。
Ⅴ
d(3,4)
1・・・DSAは血管造影法なので、血管のほぼ無い骨は映らず、血管の多い腫瘍はよく映る。
2,3・・・質的診断が出来ないのはPTAPの方。2も3もPTAPの説明となっている。
4,5・・・CTガイド下穿刺という治療法あり。超音波ガイド下穿刺もあり。こっちは非血管造影法の基本で
ある。
4
2007 年度 3 年前期 放射線診断治療学
Ⅰ、IVR(Interventional Radiology)について、正しい組み合わせを選べ。
1、放射線治療機器を用いた治療である。
2、画像下に行う治療である。
3、繰り返し施行可能である。
4、外科的切除が不可能な場合は IVR も施行不可能である。
5、コストが外科治療よりも高いので、その適応は外科治療が不可能な場合に限られる。
Ⅱ、正しい組み合わせを選べ。
1、3cm 以下の単発性肝細胞癌にラジオ波は有用である。
2、10 個以上の多発する肝細胞癌にラジオ波は有用である。
3、10cm の多発する肝細胞癌に抗がん剤動脈注射は有用である。
4、腹水のある肝硬変に伴った肝細胞癌に対して冠動脈塞栓術は有用である。
5、門脈本幹に腫瘍塞栓のある肝細胞癌に対する冠動脈塞栓術は有用である。
Ⅲ、正しい組み合わせを選べ。
1、 二次性高血圧の原因として最も多いのは腎性である。
2、 腎動脈狭窄に伴う高血圧の治療として有用なものは動脈塞栓術である。
3、 仮性動脈瘤は壁が炎症によって肥厚しているので、コイル塞栓による治療は瘤の内部にコイルを充填す
る。
4、 脾腫に伴う血球減少に対して部分的脾動脈塞栓術を行っても血小板は増加しない。
5、 子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術は有用な治療法である。
Ⅳ、次のうち誤っているものはどれか。
1、 深部静脈血栓症による肺塞栓の予防として下大静脈フィルターは有用である。
2、 3cm 以上の
では(すいません忘れました。
)外科治療が第一選択となる。
3、 真性脾動脈瘤は妊娠によって増悪するのでコイリングの適応である。
4、 胃腎シャントを有する胃静脈瘤の治療法として B-RTO(balloon occluded retrograde transvenous
obliteration)は有用な治療法である。
5、 多発肝転移に対してリザーバポートシステムを用いた動注化学療法は有用である。
Ⅴ、以下のうち正しいものの組み合わせを選べ。
1、 肝臓への血流支配は冠動脈と門脈であり、その比率は 7(肝動脈):3(門脈)である。
2、 CTAP(経動脈性門脈造影下 CT)では肝腫瘍の存在診断は可能だが、質的診断はできない。
3、 CTHA(肝動脈造影下 CT)では肝腫瘍の存在診断は可能だが、質的診断はできない。
4、 原発性肝癌に対して肝動脈塞栓術が有効な理由は原発性肝癌が多血性腫瘍だからである。
5、 膵癌の肝転移は多血性腫瘍なので肝動脈塞栓術が有用である。
5
解答
Ⅰ.2と3
もう一度、
「IVR の利点」をチェックしましょー。
Ⅱ.1と5
(5の「肝動脈塞栓術」は「放射線治療」の誤りのような気がします…)
2.多発性はリザーバポート
3.さすがに手術じゃないっすかね…
4.もう細胞が変性してそう…
Ⅲ.1と5
2.経皮的血管形成術(PTA)が第一選択。
3.それだけでは危ない(もろいから)
4.増加します
Ⅳ.2(復元が不十分で申し訳ありませんが、外科治療が第一選択ではありません。
)
Ⅴ.2と4
1.比率が逆。7(門脈)
:3(肝動脈)でしたね。
3.質的診断もできます
6
注意:以下は小井戸先生分です
2006 年度 3 年前期 放射線診断治療学
7
解答
Ⅰ.
答
b
1、2の正誤は IVR の定義より選べる。IVR とは、
「画像下におこなう治療である」は最重要。3、4、5の正
誤は IVR の利点より選べる。IVR は外科的治療が困難でも行え、繰り返し施行でき、低コスト。
Ⅱ.
答
d
過去問には出ていない範囲であるが、IVR 各論プリントの1ページ目参照。
1、2では、肝細胞癌は HCV、HBV によるものが90%を占める。アルコールによるものは3%と低い。3は
左下の原発性肝癌の治療方針に書いている。4、5は冠動脈塞栓術の意義を考えて、冠動脈に病巣があるものが
適用と考える。
Ⅲ.
a
答
1はプリントにも書いていないような気がするので後で考える。2は腎血管性高血圧の治療は経皮的血管形成術
(PTA)である。3は仮性動脈瘤は外傷や手術により起こり、壁が薄いということを覚える。4は血小板・白血
球は増加する。5はそのままです。とても重要です。
Ⅳ.
答
b
類骨骨腫、転移性肝癌などの悪性腫瘍は適用である。a、c、d、e は大切なことなのでそのまま覚える。
Ⅴ.
答
c
1では比率が逆になってる。2、3は CTAP と CTHA の違いは重要。前者が存在診断、後者が、質的判断。5
では膵癌では、抗癌剤をリザーバーポートを用いて動注することが有効。また、抗癌剤と放射線の相乗効果も重
要。
8
2005 年度 3 年前期 放射線診断治療学(小井戸先生)
1. IVR の定義と長所を簡潔に述べよ。
2. 子宮筋腫に対する IVR としてどのようなものがあるか、その手技、利点を述べよ。また、この治療を行って
はいけないのはどのような場合か述べよ。
3. 原発性肝癌は外科治療以外では IVR が重要な治療法であるが、その理由を述べよ
解答
1
定義は画像診断の技術を用い、各種疾患の治療や、病理組織生検を行うこと。
長所はIVR は侵襲性が非常に小さく術後管理がほとんど不要で、分野によっては外科的
手術と同等の治療成績が得られること。さらには治療に必要な医療スタッフが少なく、
それほど高価な医療器具も使わないので非常に低コストである。(ほかには、全身麻酔不
要、入院期間が短縮される、手術不能例にも施行できるなど)包括医療では、1人当た
りの入院費用が一定であり、この額は入院日数が長くなると減額される。従って、早く
診断・治療して早期に退院させないと病院経営が成り立たない。IVR はMIT(minimally
invasive therapy)の中でも他に比べて最も低コストであるという点で外科治療に比べ優
れている。
2
手技として子宮動脈塞栓術がある。これはセルジンガー法で大腿動脈からカテーテルを
子宮動脈にすすめて,子宮筋腫の栄養血管となっている動脈分枝を選択的に塞栓する。
利点は外科的手術より低侵襲であること,子宮を温存できることなどが挙げられる。
放射性被曝があるので,妊娠中は原則として行えない。また出産を考えている若い女性
も問題となることがある。
3
理由:肝臓は門脈と肝動脈の2 重の血流支配を受けている(門脈:動脈=7:3)。
→古典的肝癌は肝動脈からのみ血流支配を受けている。
→肝動脈のみ塞栓すれば肝癌だけが壊死に陥る。
手技・治療法:肝動脈塞栓術 TAE(Transarterial embolization)
血管カテーテルで塞栓物質(ゼラチンスポンジ+抗がん剤)を血管内に
注入→腫瘍栄養血管(肝動脈)を人工的に塞栓し、血流を斜断
9
Dr.小井戸の過去問集(2004 年以前)
小井戸先生は、一字一句同じ答えを書いた場合、
(全員?)0 点にするそうなのでその点に留意してください。そ
のため、同じ内容を問う問題に対しても別の答えを載せてあります。
平成 16 年度 第 3 学年 放射線医学試験問題 (2004 年 9 月 17 日)
1.IVR(Interventional Radiology)の定義を簡潔に述べよ。
画像診断の技術を用い、各種疾患の治療や、病理組織生検を行うこと。
2.IVR の長所と外科治療と比較して、次のキーワードを用いて説明せよ。
包括医療、低侵襲性
IVR は侵襲性が非常に小さく術後管理がほとんど不要で、分野によっては外科的手術と同等の治療成績が得ら
れること。さらには治療に必要な医療スタッフが少なく、それほど高価な医療器具も使わないので非常に低コス
トである。
(ほかには、全身麻酔不要、入院期間が短縮される、手術不能例にも施行できるなど)
包括医療では、1人当たりの入院費用が一定であり、この額は入院日数が長くなると減額される。従って、早
く診断・治療して早期に退院させないと病院経営が成り立たない。IVR は MIT(minimally invasive therapy)
の中でも他に比べて最も低コストであるという点で外科治療に比べ優れている。
3.IVR を具体的に1つ挙げ、どのような治療法か簡潔に説明せよ。
肝細胞癌に対する肝動脈塞栓術 TAE(Transarterial embolization)
血管カテーテルで塞栓物質(ゼラチンスポンジ+抗がん剤)を血管内に注入
→腫瘍栄養血管(肝動脈)を人工的に塞栓し、血流を斜断
平成 15 年度 4 年前期 放射線医学【IVR】
1.IVR(Interventional Radiology)の定義、並びに IVR の利点を簡潔に述べよ。
定義:画像下に行う治療
利点:侵襲性が外科的治療よりも低い・局所治療効果が高い・低コスト・繰り返し施行できる・再治療可能
2.以下に挙げた IVR に必要な技術から 3 項目選び、それらが IVR にとってどのような意義を持つか述べよ。
血管造影
超音波
CT
ヨード系造影剤
動脈塞栓術
Seldinger’s method
ラジオ波凝固療法
・血管造影
動静脈解剖、動脈疾患、癌の血流の多寡、癌の浸潤の範囲などが分かり治療方針を立てられる。また、vascular
IVR を行う上で欠かせない。
・超音波
リアルタイム断層像による超音波ガイド下穿刺はもとより、カラードップラーや血管撮影技術と超音波手技を
組み合わせた US angiography により、肝病変では腫瘤の質的判断や血流状態、血流分布を観察でき、より精
度の高い IVR が可能となることも多い。
・CT
縱隔、肺門部の腫瘍、心臓、大血管に接するような腫瘍に対して、CT ガイド下に安全かつ確実に IVR を行う
ことができる。
10
・ラジオ波凝固療法
ラジオ波で組織の水分子を高速で反転させ、その摩擦熱で組織を焼いて凝固させる。
・ヨード系造影剤
尿路や心血管系および X 線 CT 検査で用いられる水溶性ヨード系造影剤や経口用造影剤、油性ヨード系造影剤
がある。これらは周囲の臓器に対してコントラストを作り、フィルムの上で陽性に写し出す目的で使用される。
・動脈塞栓術
腫瘍の栄養血管や異常血管(動脈奇形など)各種塞栓物質を用いて塞栓をする治療ができる。
・Seldinger’s method
出血させないでカテーテルを動脈内に入れる方法。外套、内套、ガイドワイヤを使ってカテーテルを入れる
血管造影の手技。以前のような動脈を露出し穿刺する方法では、動脈は空気に触れて強く収縮するために,内
腔にきちんと針先を挿入することができなかったが、この方法によってカテーテルを直接挿入する方法が容易
となった。
3.CTAP(CT during arterioportography)
、CTHA(CT during heptic arterigraphy) とはどのような画像診断
か、説明せよ。
(手技の説明と、臨床的意義を述べること)
CTAP:
(経動脈性)門脈造影下 CT
CTHA:肝動脈造影下 CT
CTAP は上腸間膜動脈にカテーテルを挿入し、造影剤を注入しながら肝をスキャンする。
CTHA は肝動脈造影下に肝をスキャンする。
肝臓は門脈と肝動脈の 2 重支配を受けるが、腫瘍性病変は基本的に動脈血支配である。そのため門脈造影下で
は腫瘍は画像上黒く抜けるが、肝動脈造影下では強く染まる(白)
。CTAP は腫瘍の存在診断に有用であり、5mm
径の腫瘍の存在が判定可能である。CTHA は染まり方によって腫瘍が原発か転移性かなどが判定可能であり、質
的診断に有用である。
平成 14 年 4年前期 総合診断学(放射線診断学)
【IVR】
以下の質問を解答用紙に記入せよ。
1.IVR(Interventional Radiology)とは何か?その定義と IVR の臨床的有用性を簡潔に述べよ。
定義:画像下に行う治療
臨床的有用性:①侵襲性が外科的治療よりも低い ②局所治療効果が高い ③低コスト
④繰り返し施行できる
2.IVR を支える技術の一つは血管造影である。血管造影を施行するための技術に Seldinger 法がある。この技
術がどのようなものか簡潔に説明せよ。
経皮的に股動脈(大腿動脈)を穿刺し、カテーテルを穿刺した針の内腔を通って動脈内に挿入する方法。動脈
穿刺した針の内腔にまずガイドワイヤを挿入して、このガイドワイヤを動脈内に残して穿刺針を抜去し、このガ
イドワイヤにカテーテルをかぶせるようにしてカテーテルを挿入する。この方法により,穿刺動脈の収縮が防止
可能となり、動脈を露出してカテーテルを挿入していた動脈造影法に終止符を打ったことになった。
平成 13年 4年前期 総合診断学(放射線診断学)【IVR】
以下の質問を解答用紙に答えなさい。
1.IVR(Interventional Radiology)とは何か?その定義を簡潔に述べよ。また、IVR が有効な疾患を一つ挙
げて、IVR の治療として優れている点を具体的に述べよ。
11
定義:画像下に行う治療
有効な疾患:肝細胞癌
優れている点:①侵襲性が外科的治療よりも低い ②局所治療効果が高い ③低コスト
④繰り返し施行できる
2.IVR を支える技術として、以下のようなものがある。これらのうちから一つ選択し、それが IVR をどのよ
うに支えているか、述べよ。
a.血管造影
d.CT
b.超音波
c.カテーテル
e.MRI
f.造影剤
a, 血管造影
・動脈的解剖
・動脈疾患
・癌の血流の多寡
・癌の浸潤の範囲
がわかる→治療につながる
血管造影を行う過程でも、Seldinger 法(出血させないでカテーテルを動脈内に入れる)や、DSA(画像から
骨を消すことにより濃度分解能が高くなり、造影剤注入量や濃度を減少できる)などの技術を用いる。
b, 超音波
経皮的に肝内門脈を穿刺し、門脈を直接造影する PTP(経皮経肝門脈造影)などが行われる際に、超音波ガイ
ド下で行われる。
c, カテーテル
血管造影や血管内ステント留置、血管拡張術などの vascular interventional radiology の際に、それぞれの用
途に合わせたものが用いられる。
・CT
縱隔、肺門部の腫瘍、心臓、大血管に接するような腫瘍に対して、CT ガイド下に安全かつ確実に IVR を行う
ことができたり、造影像を写すひとつの手段となっている。
・MRI
CT 同様、造影像の描出のより、診断・治療に貢献している。
・造影剤
バリウム、ヨードの化合物などが、造影能が優れ、生体に害が少なく、短時間に体外へ排出されるという点で
目的物を写し出すために用いられている。
<参考:造影剤>
周囲の臓器に対してコントラストをつくり、フィルムの上で陽性に写し出す目的で使用されるものを陽性造
影剤といい、原子番号の高いバリウムやヨードの化合物が用いられる。また、反対にそれを用いることで目的
物をフィルム上に浮かび上がらせるというものを陰性造影剤といい、酸素、炭酸ガス、空気が用いられる。
12
平成 16 年度第 5 学年前期試験問題【IVR】
注意:一字一句同じ文章の解答はすべて零点になります。自分の言葉と頭を使って解答用紙に記入して下さい。
1.IVR の定義と、外科治療と比較しての IVR の利点を簡潔に述べよ。
定義:画像診断の技術を用い、各種疾患の治療や、病理組織生検を行うこと。
利点:侵襲性が非常に小さく術後管理がほとんど不要で、分野によっては外科的手術と同等の治療成績が得られ
ること。さらには治療に必要な医療スタッフが少なく、それほど高価な医療器具も使わないので非常に低
コストであること。
(ほかには、全身麻酔不要、入院期間が短縮される、手術不能例にも施行できるなど)
2.肝細胞癌は IVR 治療の中で最も成功している疾患である。その理由を簡潔に述べよ。また、肝細胞癌の IVR
手技をひとつ挙げ、それがどのような治療法であるか説明せよ。
理由:肝臓は門脈と肝動脈の 2 重の血流支配を受けている(門脈:動脈=7:3)。
→古典的肝癌は肝動脈からのみ血流支配を受けている。
→肝動脈のみ塞栓すれば肝癌だけが壊死に陥る。
手技・治療法:肝動脈塞栓術 TAE(Transarterial embolization)
血管カテーテルで塞栓物質(ゼラチンスポンジ+抗がん剤)を血管内に注入
→腫瘍栄養血管(肝動脈)を人工的に塞栓し、血流を斜断
3.63 歳男性。膵頭部癌で膵頭十二指腸切除術を受けた。その 3 日後に突然腹痛を訴え、ショックになった。
CT にて膵周囲出血が疑われた。治療も視野に入れて次に行うべき検査は何か。またその検査を挙げた理由も述
べよ。
止血の手段としては、再手術、内視鏡的止血、血管造影的止血の 3 者が考えられる。破綻血管が主要分枝であ
ることがおおいことや、術後の解剖学的位置関係の変化のために内視鏡的止血は困難である。また、全身状態の
悪化が懸念されるので再手術も躊躇する。よって血管造影による、金属コイルなどの永久塞栓物質を用いた治療
を視野に入れた検査を行うべきである。
平成 14 年度試験問題?
1.IVR(Interventional Radiology)の定義と外科治療と比較しての IVR の利点を簡潔に述べよ。
定義:CT,MRI,超音波などの画像診断の技術を用い、各種疾患の治療に応用すること。
利点:低侵襲・低コスト・治療時間の短縮・手術と同程度の成績を上げることもできる
2.Vascular IVR と Non-Vascular IVR の具体的な治療法をひとつずつ挙げ、具体的かつ簡潔に説明せよ。
1.Vascu1arIVR
・動脈塞栓術(腫瘍、動脈瘤、動静脈奇形、出血等)
・血管形成術(四肢末梢動脈、冠動脈、透析シャント)
・血管内ステント留置(大動脈、四肢末梢動脈、冠動脈、腎動脈、総頚動脈等)
・血栓溶解療法
・門脈圧充進症(B-RT0,TIPS,PSE)
・下大静脈フィルター
13
2.Non-Vascu1arIVR
・経皮的腫瘍 ab1ation(PEIT,PMCT,RFA)
・経皮経肝的胆道ドレナージ(PTBD)
・体腔内異常貯留液ドレナージ
・経皮的胃ろう造設術
・経皮的腎ろう造設術
・結石除去術
・胆管・気管・消化管のステント留置
3.包括医療が札幌医大でもこの 4 月から導入されたが、包括医療において IVR が有利な治療法である理由を
述べよ。
1人当たりの入院費用が一定であり、この額は入院日数が長くなると減額される。従って、早く診断・治療し
て早期に退院させないと病院経営が成り立たない。そこで、IVR は MIT(minimally invasive therapy)の中で
も他に比べて最も低コスト(医療スタッフが少なくて済み、周術管理がほぼ不要、高価な使い捨て医療器具も不
要)であるから。
平成 14年度第 5 学年前期試験問題【IVR】
以下の質問を解答用紙に答えよ。
1.日本における原発性肝癌の原因として重要な基礎疾患1つと原発性肝癌発症の危険因子を4つ挙げよ。
解答
ウイルス性肝硬変(HCV 感染、HBV 感染による)
危険因子:アルコール性肝障害、α1 アンチトリプシン欠損症、ヘモクロマトーシス、チロシン血症
<参考>
腫瘍マーカー(AFP, PIVKA-Ⅱ)の増加、血小板の低下、超音波検査で異常な結節が見られる
2.症例は 65 歳、男性。HCV 陽性で近医でフォローされていたが超音波検査で肝に高エコー結節が
見出された。
①鑑別診断として最も重要な疾患を2つ挙げよ。
②CT 上、原発性肝癌が疑われた。今後の治療方針決定に必要な血管造影を使用した検査を2つ挙げよ。
③②の検査から患者は肝両葉に肝癌結節が多発していることが判明した。また、肝機能検査で
総ビリルビンが 2.0mg/dl、ICG35%であった。この患者の治療法として何が適当か。
治療法名を一つ挙げ、その方法を具体的に記載せよ。
解答
①原発性肝癌
肝血管腫
②CTAP(門脈造影下 CT)
CTHA(肝動脈造影下 CT)
③リザーバポートを用いた抗癌剤動注療法
腫瘍の栄養血管を金属コイルを用いて、単純化し(血流改変術)、そのルートに留置したカテーテ
ルに皮下埋込式ポートを介して抗癌剤動注を行う方法である
3.2次性高血圧症の原因として重要な疾患を3つ挙げよ。
解答 腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、Cushing 症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、
甲状腺機能亢進症、末端肥大症、大動脈解離、大動脈炎症候群、大動脈狭窄症、AR などのうちから3つ
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4.腎血管性高血圧の IVR 的治療法を1つ挙げ、その治療法を具体的に説明せよ。
解答 PTA
血管の狭窄部位を、その血管内に挿入したカテーテルにより、血管内腔から押し広げ血行を改善し、その
後ステントを狭窄部に留置する。
平成 13 年度第 5 学年後期試験問題【IVR】
注意:一次一句同じ文章の解答はすべて零点となります。自分の言葉と頭を使って解答用紙に記入せよ。
1.IVR(Interventional Radiology)の定義を簡潔に述べよ。
解答: 画像診断のための技術(血管造影、超音波、CT、MRI など)をそのまま疾患の治療に用いること。
2.IVR が有効な疾患を1つ挙げ、IVR がどのような点に関して他の治療法より優れているかを、
患者に対する侵襲性ならびに医療経済の観点から述べよ。
解答:狭心症に対する PTCA。PTCA の初期治療成功率は90~95%といわれ、かなりの効果が期待できる。
また、入院期間が短く、費用の軽減にも役立っている。
3.IVR を支えている技術を2つ挙げ、具体的にそれら技術がどのような疾患の IVR に応用されて
いるかを述べよ。
解答:血管造影の際、カテーテル挿入時の技術である Seldinger 法。血管造影で行う治療には狭心症の際行われ
る PTCA や原発性肝癌の際行う動脈塞栓術(TAE)などがある。
もう1つの技術としては超音波ガイド下穿刺術があり、例として黄疸を緩和する目的で行う経皮経肝的胆
道ドレナージがある。これは皮膚から直接肝臓内の胆管にチューブを挿入し、体外に胆汁を流す方法。
4.肝硬変の定義を述べよ。また肝硬変に関連して発症する疾患を1つあげ、それに対する IVR 的
治療法の内容を具体的に記せ。
定義:線維増生と再生結節で特徴づけられる肝臓のびまん性疾患。
門脈圧亢進症があり、これに対する治療法を以下に示す。
PTO:直接経皮経肝的に胃にカテーテルを持っていき静脈瘤を塞栓。
B-RTO:胃の静脈瘤は胃腎シャントを通じて左腎静脈と交通している場合が多く、それが排血
路となっている。B-RTO は、まずバルーンカテーテルと呼ばれる先にバルーンがつい
た特殊な管を大腿静脈か頚静脈から挿入して、左腎静脈を経由し、更に胃腎シャント
にバルーンカテーテルの先端を配置する。そこでバルーンをふくらませた後、胃の静
脈瘤に対して液状の物質を注入して閉塞させ、静脈瘤を治療する。
TIPS:頚静脈からカテーテルをいれ、肝静脈と門脈を shunt させ、門脈圧を減らす。
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