解説 ここでは、「申告期限・納期限の延長」と「納税の猶予」について解説

Q−39
災害にあったときの税金の対応について教えてください。
【申告・納期限の延長及び納税の猶予制度編】
ポイント
災害に遭われた方の対応は以下の手順で行なってください。
STEP-1 「所得税の減免制度」又は「雑損控除」のいずれかが適用
できるかを検討します。
STEP-2 申告期限が近い場合や、災害の程度が甚大で申告作業が
行えない場合には、「申告・納期限等の延長」を申請します。
STEP-3 災害による損害が大きい場合には、「納税の猶予」を申請し
ます。
解説
ここでは、
「申告期限・納期限の延長」と「納税の猶予」について解説します。
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申告期限の延長
災害その他やむを得ない理由がある場合には、申告期限や納期限等の延長
をすることができます。
その方法には、以下の 2 つの方法があります。
国税庁長官の地域指定による自動延長
納税者からの申請による延長
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国税庁長官の地域指定による自動延長
国税庁長官が、大規模な災害があった場合に、その地域を指定して申告期
限や納期限を職権に因り延長するものです。この場合には、自動的に各期
日が延長されますので、納税者においては特段の手続きは必要ありません。
注意したいのでは、この自動延長が適用される納税者の範囲は、納税地単
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位で判定されますので、たとえ、被災地に事業所等があっても、納税地が
指定地域外の場合には適用外となりますので、気をつけてください。
今回の東北地方太平洋沖地震において、青森県、岩手県、宮城県、福島
県、茨城県に適用されています。
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納税者からの申請による延長
上記2の地域指定が行われない場合や、地域指定外の納税者が災害その他
やむを得ない理由により、申告期限や納期限を延長する必要がある時は、
納税地の所轄税務署長に、災害が止んでから相当の期間内に、書面(「災害
による申告、納付等の期限延長申請書」)を提出します。
この申請が認められた場合には、災害が止んだ日から 2 ヶ月以内の範囲
で、これらの期限が延長されます。
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納税の猶予
災害により被害を受けた納税者は、納税の猶予を申請することができます。
この納税の猶予制度には、以下の2つがあります。
①
20%以上の財産が被災した場合の納税猶予制度
②
被災により経済的に納付困難となった場合の納税猶予制度
① の場合は、被災割合が 20%以上であれば、納付困難事由の有無を問わず、
対象となる国税すべてについて認められるものですが、②の場合には、納
付困難な国税に限って認められるという違いがあります。
20%以上の財産が被災した場合の納税猶予制度
(1)この制度を利用できる者
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災害発生直前の全積極財産の価額(時価) A
A×20%
被災金額
災害発生直前に保有していた全積極財産の時価のおおむね 20%以上の
損害を受けた者です。したがって、経済的に納付が困難であるかを
問わず、被災割合が 20%以上であれば、この制度を利用することが
できます。
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(2)納税が猶予される税金の範囲
この規定によって、納税が猶予される税金は以下のとおりです。
① 災害が止んだ日以前に課税期間が終了した所得税、法人税、消費税で
納期限が損失を受けた日以後に到来するもの
② 災害が止んだ日以前に取得した財産に係る相続税や贈与税で、納期限
が損失を受けた日以後に到来するもの
③ 所得税、法人税、消費税に係る予定納税額
④ 災害が止んだ日の属する月の末日までに支払われた給与、報酬等に
係る源泉所得税等で法定納期限が到来していないもの
(3)納税が猶予される期間
納期限から 1 年以内の期間となります。
(4)具体的な手続き
この納税猶予の適用を受けるためには、災害が止んだ日から 2 ヶ月以
内に、
「納税の猶予申請書」及び「被災明細書」を提出する必要があり
ます。
6 被災により経済的に納付困難となった場合の納税猶予制度
(1)この制度を利用できる者
被災により経済的に納付が困難となった人です。
(2)納税が猶予される税金の範囲
一時に納付が困難と認められる税金
(3)納税が猶予される期間
① 原則 1 年以内。ただし、猶予期間内に納付ができないやむを
得ない理由がある場合には、2 年を超えない範囲で、申請
により、猶予期間を延長することができます。
② 同一の災害により、上記5の 20%以上被災した場合の納税の猶予
を受けている場合には、合計で最大 3 年間の納税の猶予を受ける
ことが可能です。
(5)具体的な手続き
この納税猶予の適用を受けるためには、「納税の猶予申請書」を提出
することが必要ですが、上記5と異なり提出期限はありませんので、
納付が困難となった場合には速やかに提出する必要があります。
又、この制度により、納税の猶予を受けるには、猶予税額が 50 万円以
下である場合等を除いて原則として、猶予を受けようとする金額に相
当する担保提供が必要です。
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