高汚染水からのCsおよびSrの 選択的分離および安定固化

特別講演、5.16.2013 日本保全学会
「高汚染水からのCsおよびSrの
選択的分離および安定固化」
東北大学大学院 工学研究科
量子エネルギー工学専攻 三村 均
講演内容
福島原発事故による高汚染水の処理では、循環注水が行なわれてお
り、Cs吸着剤としてゼオライト、CST(結晶性シリコチタネート)、不溶性
フェロシアン化物が使用されている。
今後長期間にわたり、システムの運転を継続する必要があり、高機能
性吸着剤の開発、除染の効率化、高度化が課題とされている。
本講演では、高汚染水処理で使用されているゼオライトの、Csの選択
的吸着剤としての吸着特性および固化特性、廃吸着剤の処理・処分に
ついて紹介する。東北大学の取り組みと今後の課題を提示する。
1.
2.
3.
4.
循環注水冷却システム
Cs高除染用吸着剤と吸着特性
Cs吸着ゼオライトの安定固化
東北大学の最近の研究成果
不溶性フェロシアン化物担持複合体の吸着特性と安定固化
5. まとめと課題
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1. 循環注水冷却システム
福島第一原子力発電所内の事故直後
の放射能濃度と高汚染水の総量
137Csの放射能濃度:~106
Bq/cm3 (米国TMI事故汚染水と同程度)
総量: ~200,000 m3(TMI 2,000 m3), 海水系汚染水
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循環注水冷却システム
Circulating injection cooling system: US/France/Japan, US/Japan
稼働率: >90%、
処理量: Maximum record is up to 71m3/h(1,692 m3/d)
冷温停止状態
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第一Cs吸着装置の概要(KURION)
6
第二Cs吸着装置の概要(SARRY)
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凝集沈殿処理装置(AREVA)
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二次廃棄物発生量と貯蔵(廃吸着塔:ゼオライト)
6,000
濃縮廃液 (m3)
廃スラッジ (m3)
廃吸着塔 (本)
廃棄物発生量
5,000
4,000
3,000
2,000
9/13~停止
1,000
0
6/16
8/5
9/24
測定日
11/13
1/2
今後10年以上にわたり発生、当面は貯蔵(水素発生、発熱)、固化は検討中。
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廃スラッジ
不溶性フェロシアン化物スラッジは高放射性、熱分解しやすく、
CN発生も懸念され、早急な安定化処理が課題。
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濃縮廃液
原発敷地内に1,000個のタンク、今後倍増の予定。
Sr-90など多核種の高度除染システム(ALPS)稼動予定。
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多核種除去設備(ALPS)の概略図
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多核種除去装置と吸着剤
13
14
2. Cs高除染用吸着剤と吸着特性
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セシウム吸着剤とセシウム選択性
(PW12O403-)
AMP
イオン交換自由エネルギー変化: ⊿Go値(水和エネルギーと格子静電場エネルギーの相対的な差)
序列: フェロシアン化物>AMP>モルデナイト,チャバサイト>クリノプチロライト
→海水からのCs吸着のKd値にどのように反映されるか?
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試料調製
1.吸着剤
(1)ゼオライト系
Cs用:愛子産 モルデナイトTOPZEOLITE
二ツ井産 クリノプチロライト
Cs用
米国産 チャバサイト
Sr用:合成ゼオライト A型、X型
(2)非ゼオライト系
フェロシアン化合物、フェロシアン化合物
Sr用
チタン酸樹脂
2.海水
(1)実海水:宮城県松島湾採取
(2)pH調整海水:HCl添加によりpH2.4に調整
(3)濃縮海水:実海水を加熱により1/3、1/2に減容
→137Cs, 85Sr溶液添加(5,000cpm程度)
→キャリヤー添加(Cs:1.5ppm、Sr: 0.5ppm)
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吸着実験
(1)トレーサー添加海水
試料採取(50ml)
(2)振とう試験(25℃、80rpm)
・所定時間経過後取出
(0.5, 1, 3, 5, 10, 24, 48 h)
(3)放射能測定試料採取
(10 ml, 0.45 μmフィルター)
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放射能測定
(1) 吸着剤無添加試料の測定(A1) (4 min)
(2) 吸着剤添加試料の測定(A2) (4 min)
(3) 所定時間経過後のA2を測定
85Sr:514.6
keV
(t1/2=64.9 d)
137Cs:662
keV
(t1/2=30.17y)
(4) 分配係数Kdの評価
Kd = (A1-A2) / A2 ・V/m
(V/m = 100 cm3 /1g = 100)
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各種吸着剤による海水からのセシウムの吸着
1)時間経過とともにKd値は上昇傾向、ほぼ24時間で平衡に近づく。
2)吸着性序列(CsのKd値序列)
フェロシアン化物 >> モルデナイト、チャバサイト > クリノプチロライト > A, X
モルデナイト、チャバサイトで24時間後にKd値:>800 cm3/g(90%以上吸着)。
3)海水を塩酸でpH調整しても同様の傾向。
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セシウムの吸着機構と飽和吸着量
(海水系、天然モルデナイト)
天然モルデナイト(洗浄なし)-実海水・ Csの吸着量
Langmuir plot (天然モルデナイト - 海水)
20
80
y = 0.0105x + 2.9655
15
60
天然モルデナイト(0.4~1mm)
40
Ceq/Qeq
Cs 吸着量 (mg / g (zeol.))
100
10
Ws(飽和吸着量)
= 95.24 mg/g(zeol.)
= 0.716 meq/g (zeol.)
5
20
0
0
0
200
400
600
800
1000
[Cs]eq 平衡濃度/ppm
1200
1400
0
500
1000
[Cs]eq 平衡濃度/ppm
1500
1) 吸着等温線( Cs平衡吸着量 vs Cs平衡濃度)は上に凸であり高選択性を示唆。
Langmuir型吸着であり、Langmuirプロットより、飽和吸着量は0.716 meq/g
(9.5 wt%、純水系の1/2程度)であった。
2) Cs平衡濃度1.49ppmでの吸着剤のCs含有率は0.0845 wt%であった。
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セシウムの分配と速度の比較
不溶性フェロシアン化物
Kurion
類似品
SARRY
序列: 不溶性フェロシアン化物 > CST > モルデナイト、チャバサイト > クリノプチロライト
ゼオライトは分配係数は同程度でも、速度には粒度の影響が大きい(愛子産モルデの場合)
ゼオライトの強度、固化特性、安全性評価など総合的な評価により選択する必要有(後述)
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Sr吸着剤の吸着性能比較
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活動の歩み:4月8日報道
4月8日付 読売新聞
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3. Cs吸着ゼオライトの安定固化
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ゼオライトの固化処理の研究例-焼成処理(東北大学)
1)ゼオライトは高温で溶融または結晶化
2)1,000℃以上の焼成処理でセラミックス
固化体製造可能
3) AlやPbに分散して固化することも可能
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ゼオライト固化処理の研究例-揮発性・浸出性の評価(東北大学)
ゼオライト焼成時のCs揮発性
焼成固化体のCs浸出性
Cs揮発性: 700℃以上で揮発開始(0.2%以下)、天然モルデナイトは低い。
アルゴンガス雰囲気で焼成すれば抑制効果あり。
Cs浸出性: 800℃以上でゼオライト構造が破壊され、1,000℃以上では溶融し始めることから、
焼成温度と共に急激に低下、1,200℃焼成ではCsは検出限界以下。
浸出率: <10-9 g/cm2・day、チャバサイト焼成体は?
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SARRYでのチャバサイト固化(東芝)
- 放射性Cs濃度: 1015 Bq/m3
- Cs吸着塔: 438本(2012.9.18)
- 800-1,000℃焼結でレンガ状
固化体作成可能
- 減容比: 0.4
- 詳細な物性評価、安全性評価
(Cs浸出性)は今後の課題
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4. 不溶性フェロシアン化物の
ゼオライトによる安定固化
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不溶性フェロシアン化物(Cs揮発)
Cs吸着不溶性フェロシアン化物は微粉末であり、
大気中で、300℃以上で焼成すると熱分解し、
Csの揮発性増大。Cs固定能なし。
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熱分解時にHCNの発生
HCN
不活性ガス中では、200および350℃以上でHCN
発生。Cs吸着不溶性フェロシアン化物の加熱時の
の雰囲気制御は重要。
Csの揮発とHCN発生を抑制した安定固化法の開
発が課題。
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ゼオライト混合によるプレス・焼結固化
100
Before heating
o
Cs immobilization ratio [%]
1000 C
80
60
40
20
0
CP
SA-5
IE-96
Immobilization matrix
A-51J
混合するゼオライトの種類、混合比、
焼結温度、焼成スケジュールを変化。
天然産モルデナイト、クリノプチロライト混
合体で、1,000℃焼成によりCs固定化率
は、ほぼ100%を示す。
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CsNiFC-モルデナイト(ゼオフィル)の焼成固化でのCs固定率(%)
Csを飽和吸着した複合体は高温焼成(1,000℃)後もCsを安定に保持。
大気中焼結なのでCN発生は無く、安定固化体の作成可能。
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5. まとめと課題
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ゼオライト使用に関る今後の課題
ゼオライトは優れたCs,Sr吸着能、Csトラップ機能、自己焼結機能を有する!
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固化体安全性評価試験
(Cs,SiおよびAlの連続通水浸出試験)
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固体廃棄物の処分システム
これらの分類は、発電所および再処理廃棄物に対応しており、
事故廃棄物に対しては新たな法体系の整備が必要。
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ご清聴ありがとうございました。
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