「低コスト・高強度・高耐食性 -焼結ステンレス部品」のご紹介 日本科学冶金株式会社 1 背 景 一般にステンレス部品は外装部品や水廻り用機構部品など耐食性 が要求される用途への展開が期待される。しかし、切削加工性が劣り 塑性変形など強加工により組織変態を起し耐食性の低下を起すため、 後加工の少ないニアネットシェイプや生産性の面から、粉末冶金法に よる焼結ステンレス部品の代替が望まれている。 焼結ステンレス部品は、鉄粉と比べ 硬い合金粉末を使用するため、 一般に圧縮性が悪く、高密度化しにくい材料である。また、内部空孔 が存在するため、これが強度や耐食性の妨げとなっている。 従来、この内部空孔を低減し高密度化するには、特殊な方法(焼結 鍛造法、2回圧縮2回焼結、温間成形)を必要とし、コストアップにつな がっていた。 2 低コスト・高強度・高耐食性-焼結ステンレス部品 冷間成形による1回圧縮で、 到達密度:7.2g/cm3(SUS304系), 6.9g/cm3(SUS434系)を達成 【ポイント】 焼結ステンレス部品は、硬い合金粉末を 使用するため一般に圧縮性が悪く、6.8g/cm3 以上の高密度を達成するには、特殊な方法 (焼結鍛造法、2回圧縮2回焼結、温間成形) などを必要としたが、これらの工法を使うこと なく高密度化を達成し、大幅な工数の低減と 同時に製品強度向上と耐腐食性向上を達成することができた。 3 概 要 ① 当社が磁性材料(アモルファス系、Nd-Fe-B系など)の成形で培ってきた 高圧成形技術(成形圧力:15~20ton/cm2、通常≒5ton/cm2) や粉末調整の技術(形状、粒径、粒度分布の調整)を流用することで、 1回圧縮のみで高密度のステンレス成形体を得ることができ、2回圧 縮2回焼結と比べると、大幅に工程が簡略化され20%のコスト低減 を達成することができた。 また、成形体密度向上により内部空孔が低減され、焼結後の製品 強度など機械的特性の向上と、内部空孔への水分等の浸入と残留 が減ることで耐腐食性も向上し、各種用途への展開が可能となった。 4 概 要 ② 【SUS304系の開発品と従来品の比較一覧】 開発品 1P/1S 【塩水噴霧試験:SUS304系 24H後】 従来品 1P/1S 2P/2S 理論密度比 Max92% 80~85% Max92% コスト 105 100(基準) 130 強度 130~150 100(基準) 130~150 耐食性 ◎注) △注) ◎ 開発品 従来品(1P/1S) 注);開発品の耐食性(塩水噴霧24H後)は、従来品の8H後と 同等レベルであり、耐食性が大幅に向上している。 5 材質および用途 材 質 特 徴 用 途 例 NT-982 SUS304相当品: 非磁性、オーステナイト系 耐食性良好 外装、水廻り用機構部品など NT-983 (仮称) SUS434相当品: 強磁性、フェライト系 耐食性良好(非酸化性酸に弱い) 電磁弁、センサー類など 6 代表物性 材質 焼結体特性 代表組成(%) JPMA Fe Cu C Ni Cr 他 密度 (g/cm3) 硬さ 引張強さ MPa 伸び (%) NT-982 SMS 1 種 (SUS304 相当) Bal 4 ― 10.5 19 Sn 0.5 6.6 HRB60 340 6 7.2 HRB76 460 8 NT-983 (仮称) SMS (SUS434 相当) Bal ― ― ― 17 Mo 1.0 6.3 HRB40 310 5 6.9 HRB66 450 8 衝撃値 J/cm2 ― ― 7
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