香港の税制・会社法 - ハマ国際会計事務所は

香港の税制・会社法
2016.8.28
Zhong Lei(HK) CPA グループ
ハマ国際会計事務所
香港公認会計士
1
第1部 香港の課税制度
第1章 香港税制の特徴 1-2
第 2 章 香港税制の課税構造 1-3
第1節 給与税(Salary Tax)
第 2 節 利得税(Profit Tax)
第 3 節 不動産税(Property Tax)
第 4 節 個人課税(Personal Assessment)
第 5 節 印紙税(Stamp Duty)
第3章 内国歳入局の機能 (Inland Revenue Department)
第1節 税務局の機能(Function of Inland Revenue Department) 1-4
第 2 節 内国歳入局長官の権限 1-5
第 3 節 内国歳入委員会(Board of Inland Revenue) - Section 3 1-6
第 4 節 再審査委員会(Board of Review) 1-7
第 4 章 納税義務と権利
第1節 納税者の義務(Obligation of Tax Payers) 1-8
第 2 節 雇用主の義務(Obligation of Employer) 1-9
第 3 節 税務申告手続き(Tax Return) 1-10
第 4 節 納税通知書
第 5 節 査定官による課税の権限
第 6 節 追加納税通知書税の発行(Issue of Additional Assessment)
第7節 予定納税額の通知(Notice for Provisional Tax)
第 8 節 異議申立の手順(Lodging Valid Objection)
1-11
第 9 節 係争中の税金の支払猶予の申請(Application of Holdover of Tax in dispute)
第 10 節 錯誤の訂正(Correction of Errors)1-13
2
第2部 給与税
第1章 所得の源泉決定の要素(Source of Income)
第1節 給与所得の種類
第 2 節 香港源泉雇用と外国源泉雇用の取り扱いの差異
第 3 節 雇用の源泉の決定に関する 3 条件(DIPN 10)
第 4 節 香港源泉雇用による所得 3-1-2
第 2 章 給与課税所得(Chargeable Salary Income)
第 1 節 課税対象となる所得の事例
第 2 節 給与、賃金、役員報酬の取扱
第 3 節 その他の手当(Other Benefits in Kind)
第 4 節 レンタル・バリュー(Rental Value)
第 5 節 レンタル・バリュー(RV)の計算例
第6節 ストック・オプション(stock option)
第7節 課税所得から控除できる経費 3-13
第 8 節 譲与控除(Concessionary Deduction) 3-14
第 9 節 人的控除額(Personal Allowances) 3-15
第 3 章 給与税の計算 3-16
第 1 節 給与税計算の事例
第 2 節 個別課税と合算課税(Separate Assessment vs Joint Assessment)
利得税等以下省略
3
第1部香港の課税制度
Memo
第1章 香港税制の特徴 1-2
香港の税制は、1997 年 6 月 30 日まで英国の植民地であったので、
英国の税制を採用し香港の特殊事情を加味されている。英国が香港
を中国に返還後も香港の憲法に当たる Basic law に基づき税法、そ
の他の法令、文化が何の変更なくそのまま引き継がれている。税法
も、コモン・ロー*1(判例法)に立脚しており、内国歳入局と納税者
との見解の相違は、裁判所により判決が下され、その後の判例とし
て受け継がれていく。
香港の税法*2 は日本と比べるといろいろ相違があるが、香港におい
て課税か非課税かの判定基準は、明文化された領土源泉原則*
3
(territorial source principle)であるので、日本の税法と異なる
点があるので注意を要する。
第1節 特定所得課税システム(Schedular Tax System)
香港では強制的な全所得課税の概念は採用していない。香港所得税
は、次の三つの特定所得分野から構成され、三つのそれぞれの課税
が個別に行われる。すなわち、給与税(salary tax)、利得税(profit
tax)、不動産税(property tax)が課税の対象で、これら以外の所得
はあったとしても、香港では所得税が課されることはない。
*1 コモン・ローは英米
法ともいわれ、英国と
旧英国植民地で採用さ
れている。大陸法はロ
ーマ帝国の流れを汲
み、フランスドイツ等
が用いている。
*2 香港税法(CHAPTER
112: Inland Revenue
Ordinance)の原文は、
英語と中国語で記載さ
れている。
所得税(income tax)の対象は、香港源泉所得だけである。香港にお
いて所得が課税対象となるかどうかは、居住国、居住地では決まら
ない。ビジネスの組織が、香港で登記された個人事業主(soleproprietorship),パートナーシップ(partnership),外国会社の支
店、会社が香港で設立されたか、外国で設立されたかは課税の判定
基準ではない。要は、そのような事業体からの利益が香港で発生し
*3 日本における所得
税法の第 7 条の課税の
範囲に“一非永住者以
外の居住者 全ての所
得”とあるので外国で
の所得も含むと解釈さ
れている。法人税法の
第 5 条の課税の範囲に
“各事業年度の所得に
対する法人税を課する
“とあり明記されてい
ないが外国での所得は
除くとの記載がないの
で、全世界所得が課税
対象であるとの解釈が
なされている。米国の
税法にも全世界所得課
税が明文化されてい
たかどうかが課税基準となる。
る。
個人が税務申告に当たって、一定の申告者要件を満たすとこれら三
分野の所得を一つにまとめ、個人課税(personal assessment)を申請
して申告すると税額控除をフルに活用できることにより、個別の課
税申告よりも節税になりうる。
第 2 節 領土源泉原則 * 3 (Territorial Source
Principle)
4
第 3 節 納税者に取り負担の軽い課税構造
香港の税制は、日本*その他の国に比べて法人税、所得税の税率が
それぞれ 16.5%,15%と低く、シンプルな課税構造である。一方、バ
ミューダ諸島、ケイマン諸島、パナマなどの租税回避地(タックス・
ヘイヴン)の国々は税率ゼロである。海外に隠し資産を持つ「富裕層
による租税回避」と言われている。2016 年にパナマ文書(タックス
ヘイブンにおいて銀行口座を持つ数ヶ国の首脳を含む利用者を明ら
かにした文書)によりメディアを騒がせた。香港の税率はゼロでは
ないが、20%以下で日本・米国よりも低いのと中国との交易の窓口
としての魅力により多くの日本企業が進出している。
1.資本利得税(Capital Gain Tax)
資本的性資産(ccapital asset)の売却に伴う資本利得税は非課税
である。長期保有の株式を売却した場合、資本的性資産とみなさ
れて、売却益は課税対象とならない。
2.配当税と送金税(No Dividend Tax & No Remittance Tax)
配当収入は、配当受益者が香港人であれ、外国人であれ非課税で
ある。また利益の外国への送金に対しても香港においては非課税
である。
3.寛大な機械装置の減価償却額
機械・装置の取得価格と備付費用に対して 60%の初期償却費
(initial allowance)が控除できる。さらに、年次償却費(annual
allowance)として、償却残高に対して 10%,20%,30%のいずれかの
原価償却率で控除可能である。
研究開発、コンピューターハード、ソフト、省エネ機器、環境配
慮型自動車は 100%控除が認められる。
5
*日本のタックス・ヘ
イヴン税制は、軽課税
国に所在する関係会社
を通じた課税回避に対
して、海外関係会社の
所得を日本の親会社の
所得に合算して課税す
る制度を指す。軽課税
国とは、日本から見た
場合に定められる基準
税率(20%)を下回る
場合に該当する。例と
しては香港(法人税率
16.5%)などが当ては
まる。対象国と日本の
税率の差異に相当する
額に対して追加課税さ
れる場合がある。
第 2 章 香港税制の課税構造 1-3
香港の課税の仕組みは、給与税、利得税、不動産税、個人課税(給与
税、利得税、不動産税を統合した申告方法)、印紙税等から構成され
ている。以下にそれらの概要を述べる。
個人課税は、日本にない税制であり、給与税・利得税・不動産税を
一定の条件を満たした場合、統合でき節税となり得る。
第 1 節 給与税 (Salary Tax)
給与税は下記の所得を有する個人に課税される。ここでは、単に給
与税の概要について触れるのみで、給与税の詳細は、後の章に詳細
に記載されている。
① 香港で登記された会社による給与所得
② 香港で登記された会社の役員等(office*)の所得
③ 香港を源泉とする年金所得
1.香港で登記された会社による支払給与
香港で登記された会社が支払った給与所得(salary income)は、通常
全額課税対象となる。しかし、海外出張時の給与所得は、給与税
(salary tax)の対象とはならない。給与所得の源泉が海外で、香港
源泉所得と見なされないからである。ちなみに日本の所得税法を適
用すると、所得税法の第 7 条の課税の範囲に“非永住者以外の居住
者 全ての所得に課税される”とあるので、海外の所得も課税対象で
ある。給与税の課税対象期間は、毎年3月31日までの1年間であ
る。
60 日間ルール
香港における非居住者が課税対象期間のうち 60 日間以内香港滞
在(visit)であれば、その期間の香港における給与所得は非課税
となる。
6
*office とは株式会
社の役員、秘書役等
の香港の法令で設置
義務のある役職を指
す。Office の役職
は、会社の規模の縮
小、拡大、リストラ
などによる組織変更
が行われても、事業
上の組織と異なり消
滅することはない。
2.香港以外で登記された会社( 香港で登記されていない会
社) による香港出張時の支払給与
香港以外で登記された会社による雇用所得は、香港滞在期間比率
(time apportion base)で配布された額が課税対象となる。
課税給与所得 = 課税期間内の全給与所得 x 香港での滞在期間 / 365
従業員が香港非居住者の場合
香港滞在期間が 60 日以内なら、給与所得全額が非課税となる。
後述する給与税についての主要なトッピクスを以下に列挙する。
① 所得の源泉決定の要素
② 香港源泉雇用と外国源泉雇用の取り扱いの差異
③ 雇用の源泉の決定に関する 3 条件
④ 課税対象とならない従業員への福利厚生
⑤ 雇用主による従業員住居の援助
⑥ 課税所得から経費を控除できる条件
⑦ 譲与控除
⑧ 人的控除額
⑨ 給与税の計算
⑩ 個別課税と合算課税
詳細は、後述の給与税の章をご覧ください。
3.香港を源泉とする年金所得 *
7
*香港においても日本
の厚生年金に近い年
金制度(Mandatory
Provident Fund)があ
る。年金掛金が毎月
の給料から源泉され
退職後に老齢年金と
して給付を受けられ
る。毎月控除される
年金掛金は、給与税
の申告時に一定額ま
で控除の対象とな
る。
香港を源泉とする年
金所得かどうかは、
領土源泉原則
(Territorial Source
Principle)により判
定される。
年金基金の源泉により年金収入の課税・非課税が決まる。
年金基金の源泉により年金収入の課税・非課税が決まる
年金の源泉を決定する最重要要素は年金基金が運営されている国
(香港か海外か)である。
年金所得は、年金基金が香港を源泉としているなら給与税の課税対
象となる。香港内国歳入局による年金の源泉を決定する最重要要素
は年金基金が運営されている国である。
従業員は香港雇用を通じて年金を獲得したとしても、年金基金が海
外で運営されるように設定されていれば、年金収入は非課税とな
る。逆に、年金基金が香港で運営されていれば、課税年度に受領し
た年金収入は課税対象である。
受領年金に対応した給与所得の源泉により年金収入の課税・非課
税が決まる
もし、従業員が香港で運営されている年金基金から年金を受領し
ているなら、香港での勤務から生じた年金のみが課税対象であ
る。即ち、海外出張時の年金掛金に対応した受領年金は非課税と
なる。例えば、海外での出張期間の合計が1年とすれば、1年に
対応した年金収入は非課税となる。
第2節 利得税(Profit Tax)
利得税は、香港において事業を営んでいる事業主(person*)が、香
港を源泉とする所得に対して課税される。英語表記の“person”を
事業主と訳したが、個人事業主、 パートナーシップ
(partnership) 、会社(corporation)、信託等を含む。利得税は日
本の法人税に対応しているが香港独特の要素を多く含むので“利得
税”の表現を用いる。ここでは、単に利得税の概要について触れる
のみで、利得税の詳細は、後の章に詳細に記載されている。
香港は、前述の領土源泉原則(Territorial Source Principle)を採
用しているので、香港を源泉とする所得だけが課税対象である。資
本性の資産の売却益は、非課税である。
8
*person:人だけでな
く事業を営む組織を
意味している。英国
植民地の伝統を引き
継ぐ英国英語の表現
である。
利得税の対象は、会社のみならず個人事業、パートナーシップも含
む。以下に株式会社に課税される税率、合名会社税率、個人事業主
税率をそれぞれ記載する。パートナーシップ税率と個人事業主税率
は、給与税率と同じ 15%である。税率は 2016 年において内国歳入
局に公表されている数値を用いている。
利得税 (2008/09 - 2016/17 現在)
個人事業
15%
パートナーシップ
15%
会社
16.5%
後述する利得税についての主要なトッピクスを以下に列挙する。
① 利得税対象の収益
② 香港収益の源泉を決定する要件
③ 見做し取引収入
④ 非課税収益
⑤ 経費の控除の条件
⑥ 利得税から 100%免除可能な各種経費
⑦ 利得税から控除可能な特定の経費
⑧ 利得税の下で控除が認められない各種経費その他の経費の控除
の可否
⑨ 利得税の税計算様式
⑩ 基準期間の決定方法
⑪ 利得税と予定納税
9
⑫ 損失の処理方法
⑬ 中国と香港との税務に関する条約
第 3 節不動産税(Property Tax)
不動産税は、不動産所得を得た不動産の所有者に対して課税され
る。
不動産税 (2008/09 - 2016/17 現在)
不動産税率
15%
会社に不動産所得がある場合は、他の事業所得と同様に会計システ
ムを通じてビジネス所得の一部として計上することが多い。この場
合は、不動産税の免除を申請し、事業所得と不動産所得を一体とし
て納税する利得税を選択できる。又は、会社は全所得から別会計と
して不動産所得だけを取り出して不動産税を申告することもでき
る。
第4節 個人課税(Personal Assessment)
個人課税を選択できるのは、香港の永住者(permanent resident)ま
たは一時居住者(temporary resident)のみである。給与税について
は、後の章で詳細に述べる。
一時居住者とは?
一時居住者とは、香港の滞在期間が課税対象期間のうち 180 日以
上または、連続する 2 年のうち 300 日以上の個人である。
第5節 印紙税(Stamp Duty)
印紙税は、香港所在の不動産の取引、贈与、リースに対してと香港
証券の取引、贈与に対して課税される。税率は、多々である。
10
*印紙税は、は会社
の資本金を増やす
場合にも適用にな
る。
第3章 内国歳入局 の機能 (Function of Inland
Revenue Department) 1-4
香港の税法は、内国歳入局が長官(Commissioner of Inland
Revenue)の指揮のもとに運営されている。
第1節 内国歳入局の機能(Inland Revenue Department)
長官室(commissioner’s
unit)
訴訟、2 重課税、慈善寄付、内部監
査、苦情、様式、サポート
本部
情報システム、訓練、問合せ窓口、書
類処理、発送、記録保管
第 1部
利得税(会社と合名組合)
第 2部
給与税、利得税(個人事業主、不動産
税、個人課税
第3部
収集、検査、信託税、印紙税、会社登
記
第 4部
監査、調査
第 2 節 内国歳入局長官の権限 1-5
内国歳入局長官と担当部員の情報収取に関する権限は以下の通りで
ある。
納税者に給与税申告用紙を申告の為に送付す
る。
査定官(assessor)
提出済み納税申告書につき追加情報を
求める。
査定官(assessor)、
検査官(inspector)
納税者本人又は該当すると思われる人に納
税者の負債、責務、債務について問い合わ
せる。
11
長官補佐官
納税者に査問の為に出頭命令を出す。
長官、長官代理
国税委員会の同意のもとで、書面で 30 日
一月以上の期間の資産と負債の明細を提出
するように求める。これは、納税者が虚意
の申告を行ったか虚意の情報を提出して、
利益を過少評価しようとしているとの疑い
に基づく。
長官
又は主席査察官以上
の役職者
捜査令状を申請する。
第 3 節 内国歳入委員会(Board of Inland Revenue) Section 3 1-6
内国歳入委員会は、財務長官(financial secretary)を委員長と 4 名
の任命者からなる。4 名のうち 1 名は政府出身者がなれる。秘書役
は内国歳入局長官代理がなる。内国歳入委員会は、内国歳入局とは
独立した組織であり下記の項目を規定する。
不動産税、給与税、利得税、個人課税の申告
機械・装置の原価償却率
還付の申請、上告規定その他の定められた項目
第 4 節 再審査委員会(Board of Review)1-7
再審査委員会は、独立した税法の Section 47 に基づく組織で 1947
年に税務の上告に対処するために設立された。委員会は委員長、10
名の委員長代理と 150 名以内のスタッフから構成されている。再審
査委員会の機能は、税務長官への上告の審理と追加税(additional
tax assessment)の審理である。
第4章
納税者の義務と権利
12
香港の繁栄を維持していくために、施政者が定めた納税者の納税の
報告と税金の支払いの報告義務が定められている。同時に納税者が
施政者の課税に同意できない場合は、査察官に対する異議申立、税
務庁長官に対する異議申立、再審査委員会に対する異議申立、第一
審裁判所への異議申立、高等裁判所に対する異議申立、最高裁判所
に対する異議申立が認められている。
第1節 納税者の義務(Obligation of Tax Payers)1-8
Section 51 は、納税者の義務と罰則を次のように規定している。
①
従業員の義務
罰則
査定官から送られた納税申告書を指定された
期日内に仕上げる。
レベル 3 と 3
倍罰則
当課税年度における基準期間(basis period)
② 終了後 4 ヶ月以内に内国歳入局長官に課税対
象となるかを通告する。
レベル 3 と 3
倍罰則
③
課税申告書を提出後、査定官からの問い合わ
せに対して回答する。
レベル 3 と実
施判決状
④
他人に関する査定官からの問い合わせに対し
て回答する。
レベル 3 と実
施判決状
⑤
業務停止後 1 ヶ月以内に長官に所得停止を通
告する。
レベル 3 と実
施判決状
⑥
香港から 1 ヶ月以上離れる場合は、長官に香
港出発日から 1 ヶ月より前に通告する。
レベル 3 と実
施判決状
⑦ 住所変更を 1 ヶ月以内に書面で通告する。
⑧
事業収入に関連する記録を取引終了後の 7 年
間保管する。
13
レベル 3 と実
施判決状
レベル 6 と実
施判決状
⑨
不動産収入に関連する記録を取引終了後の 7
年間保管する。
レベル 3 と実
施判決状
罰金レベルは 6 段階あり、レベルに対応した罰金額は以下の通りで
ある。
レベル
罰金額
レベル 1
$2,000
レベル 2
$5,000
レベル 3
$10,000
レベル 4
$25,000
レベル 5
$50,000
レベル 6
$100,000
業務記録の保管義務 - Section 51C
香港において事業を営む全ての人は、十分な事業に関する記録を
各取引終了後 7 年間以上保管しなければならない。
所得と経費を即座に確認できるように、英語又は中国語の記録を
残す。
売上、支払を記録した会計帳簿とその裏付けとなる伝票、銀行通
帳、請求書、領収書、その他の関連書類を含めた記録を含む。
第 2 節 雇用主の義務 (Obligation of Employer) 1-9
Section 52 は、雇用主の義務と罰則を次のように規定している。
雇用主の義務
14
罰則
①
従業員の詳細と支払われた報酬を記載した
雇用主税務申告書を提出する。
レベル 3 と 3 倍
罰則
②
査定官からの提出した自己の申告書に関す
る質問書に回答する。
レベル 3 と実施
判決状
③
査定官からの自己以外に関する質問書に第
3 者として回答する。
レベル 3 と実施
判決状
④
従業員採用後 4 ヶ月以内に長官に従業員採
用の通告を行う。
レベル 3 と 3 倍
罰則
⑤
従業員が退職する場合に、従業員退職前 1
ヶ月以内に退職の通告を長官に行う。
レベル 3 と実施
判決状
⑥
香港から 1 ヶ月以上離れる場合は、長官に
香港出発日から 1 ヶ月より前に通告する。
レベル 3 と実
施判決状
⑦
住所変更の通知を長官に 1 ヶ月以内に通告
する。
レベル 3 と実
施判決状
⑧
事業所得と経費の記録を 7 年間以上保管す
る。
レベル 6 と実
施判決状
⑨
不動産所得と経費の記録を 7 年間以上保管
する。
レベル 6 と実
施判決状
上記のレベルに対応した罰金額は以下の通りである。
罰金額
レベル 3
$10,000
レベル 6
$100,000
第 3 節 税務申告手続き(Tax Return) 1-10
15
一連の税務処理の手続きの最初のステップとして、内国歳入局が税
務申告書様式を納税者に送付する。納税者は課税年度における所得
をその税務申告書様式に 1 ヶ月以内に記載することが求められる。
内国歳入局の査定官等が提出された税務申告書等を検証して、納税
金額を記載した納税通知書(tax assessment)を納税者に送付する。
送付先は、納税者が登録した香港内の住所に限られ発送日の翌日*
には届く。
納税申告書は、毎年内国歳入局から送付され、目的により以下の 4
種類あり、送付の時期は以下の通りである。送付時期
税の種類
申告書発送日
様式コード
利得税
毎年4月の初日
BIR51,52
不動産税
毎年4月の初日
BIR57
雇用主申告
毎年4月の初日
BIR56A,56B
個人課税申告書
毎年 5 月の初日
BIR60
利得税の申告日は、以下の表により事業年度の終了日により延長さ
れる。
事業年度終了日
コード
延長
4 月 1 日 – 11 月 30 日
N
延長なし
12 月 1 - 31 日
D
8 月 15 日
1 月 1 日 – 3 月 31 日
(利益の場合)
M
11 月 15 日
1 月 1 日 – 3 月 31 日
(損失の場合)
L
翌年の 1 月 31 日
第 4 節 納税額通知書(Issue of Assessment)
16
*香港は、香港島と
チムシャツイ、ニ
ューテリトリー等
限られた地域なの
で、送付物は普通
郵便で郵送すれば
翌日には届く。
内国歳入局が課税年度における納税者の申告書作成の為に税務申告
書様式を送付する。送付日は、「税務申告書様式の発行の時期」の
表を参照ください。送付様式の種類により異なり、毎年 4 月又は 5
月の最初の週日である。提出された所得は、課税年度における確定
納税額の算定の為に使われ,税額確定後に納税通知書が納税者に送付
される。
第 5 節 査定官による課税の権限
納税局における査察官は、課税に関して以下の強い権限を有する。
①
申告書に記載されている提出期限が経過したどの時点におい
ても納税通知書を発行できる。
査定官は納税者が香港を離れようとしていると感じた場合、
② 又はどのような理由であれ査定官が必要との意見の場合、納
税通知書を発行できる。
査察官は申告書送付後における納税者の様々な対応に応じて、納税
者が申告義務を果たした場合と義務不履行の場合に以下のそれぞれ
の課税手続きを行う。
1. 査察官が納税者による申告書を期限内に受領し、精査の結果問
題が兄場合の手続きは以下の通りである。
納税者が申告書を記載・提出しその記載内容に問題がない場合
査察官は納税申告書を受領し、その記載内容に従って納税額を算
定する。
2. 査察官が納税者の申告書を期限までに未提出の場合と申告書内
容に問題があると感じた場合の処置は以下の通りである。
納税者による申告書の提出がないか、申告内容に疑念を抱いた場
合
納税者による課税年度の所得額等の提出がないので、査定官の権
限で納税額を推測し、推測額を納税額と決定する。
17
又は、納税者による課税年度の所得額等の提出がないので、課税
年度における売上高に業界の売上高利益率を乗じて利益額を推測
し、推測額を納税額と決定する。
第6節 追加納税通知書税の発行(Issue of Additional
Assessment)
Section 60(1)によれば、査定官はもし納税者が課税年度に課税され
た税額が過少であったとの見解に至った場合は、それぞれの場合に
応じて追加課税を下記の期限内に行うことができる。
追加課税は、課税年度の終了の日から 6 年間以内に行われ
なければならない。
①
例として、査定官が追加課税を 2009/10 課税年度に関して
行おうとすれば、追加納税通知書を 2016 年 3 月 31 日*まで
に納税者に送付しなければならない。
②
もし過少課税又は課税漏れが納税者による悪意又は欺瞞に
よる場合は、課税年度終了の日から 10 年間に課税又は追加
課税を施行できる。
③
税金が誤って払戻された場合には、その課税年度終了の日
から6年間に是正のための追加課税ができる。
第7節 予定納税額の通知(Notice for Provisional Tax)
税法の Parts XA, XB, XC には、給与税、利得税、不動産税の予定納
税を規定している。
1.予定納税通知書発行の時期
予定納税は課税年度内に納税通知書が発行される。予定納税通知
書が課税年度の前年とか翌年に発行されることはない。2015/16
18
*2010+6=2016 従
って、2009/10 課税
年度の課税年度の 6
年後は 2010 年 3 月
31 日から数えて 6
年後の 2016 年 3 月
31 日となる。
課税年度の予定納税通知書の発行は、2015 年 4 月 1 日から 2016
年 3 月 31 日までに行われる。
2.予定納税金額
予定納税額は、所得が確定する前に決定するので見積額である。
見積もりは、継続勤務や継続事業の場合は、前年度の所得に基づ
いて定められる。
3.予定納税の 2 分割払い
予定納税額は、2 回に分けて支払われる。初回は全額の 75%が、
2 回目は残りの 25%を支払う。
利得税申告*の事例
No.
税務申告のステップ
①
査察官が納税者に 2014/15 利得税の申告用紙を 2015 年 4 月
1 日に送付した。
②
納税者は、2015 年 3 月 31 日までに終わる利得税課税年度
の所得額を記載した申告書を 2015 年 4 月 31 日までに査察
官に返送する。
③
査察官は納税者に利得税納税通知書を 2015 年 11 月頃に送
付する。
④
2014/15 課税年度の利得税の支払いが 2016 年 1 月に、
2015/16 課税年度の予定納税の支払いが 2016 年 4 月に求め
られる。
19
*事業者の事業年度
の終了日は、12 ヶ
月の内の何れかの
月末である。終了
日の属する課税年
度が税法上の課税
年度(基準年度)
となる。この方法
により、事業者は
自社の会計記録か
ら税務のために 3
月 31 日までの事務
上の 1 年間の会計
記録を作成して税
務申告を行う必要
がない。
⑤
2015/16 課税年度の予定納税額の 75%が 2015/16 課税年度
内に支払いが求められる。
⑥
2015/16 課税年度の予定納税額の 25%は、2015/16 課税年
度終了後即ち 2016 年 3 月 31 日以降に求められる。
第8節 異議申立の手順(Lodging Valid Objection) 111
納税者が納付税額(assessment)又は予定納税額に不満の時は、内国
歳入局は納税者の異議申し立てを受け付ける門戸を開いている。最
初の提出先は内国歳入局であり、その回答に不満の場合には順次以
下の通り最高裁判所まで登っていく。
①
内国歳入局(inland revenue department)
②
再審査委員会(board of review)
③
第一審裁判所(court of first instance)
④
高等裁判所(court of appeal)
⑤
最高裁判所(court of final appeal)*
*最高裁判所(court of
final appeal)は、香
港が英国の植民地であ
った時は、ロンドンに
置かれていた。香港の
中国返還に伴い、1997
年 7 月1日に香港に移
転された。1997 年 7
月1日は、香港が中国
に返還され香港の憲法
に当たる Basic Law が
設定されている。
Basic Law は、香港
の税法の出典の一つで
ある。
1. 内国歳入局への告訴
Section 64(1)では、査察官の納税者に下した最終納税額に対する納
税者の異議申立の手順は以下の通りである。
No.
①
②
異議申立が成立する要件
納税者が内国歳入局長官に書面による異議申立
書面による申立は、納税通知書記載の日付から1ヶ月以内
に提出されなければならない。
20
③
④
申立書は、正確に意義の根拠を述べなければならない。
もし納税通知書が納税者の申告書提出をせずに発行された
なら、異議申立書は、納税者により作成された申告書を添
付しなければならない。
もし異議申立者が会社の場合には、申告書と共に貸借対照
表、損益計算書と監査報告書を提出しなければならない。
(売上高が$2,000,000 未満の場合は除く)
異議申立書の提出が指定の期日(納税通知書記載の日付か
ら1ヶ月以内)よりも遅れた場合には、内国歳入局長官は
以下の場合には期限の延長を認める。
⑤

香港に滞在していなかった

病気であった

その他もっともな理由
第 9 節 係争中の税金の支払猶予の申請(Application of
Holdover of Tax in dispute)
納税者が納税額につき異議の申し立てをした時は、同時に係争中の
税額の支払い延期を申請できる。内国歳入局長官はこの件に関して
絶対的な権限を有している。内国歳入局長官は、異議申し立ての決
着がつくまで税額の支払い延期の申し出を認めるかもしれない。ま
た逆に、内国歳入局長官は、申立を拒否し税額の支払期限までに支
払うように求めるかもしれない。
内国歳入局長官は、異議申し立ての決着がつくまで税額の支払い延
期の申し出を受けた場合、長官が支払い延期を拒否するか、長官が
延期を受諾した場合は以下の3方式の何れかに帰着する。
① 長官が支払い延期を拒否
納税者は長官により納税延期を認められなかったので、税額を期
日までに支払わなければならない。
21
納税者が勝訴した
場合
内国歳入局が納税した税額を金利なしに納
税者に払戻す。
納税者が敗訴した
場合
税額が納税者により内国歳入局に支払われ
ているので、納税者による追加の処置は不
要。
② 係争中の税金支払いの無条件延期
納税者は内国歳入局により納税延期を認められ、係争が決着する
まで税額を内国歳入局に支払わなくて良い。
納税者が勝訴した
場合
納税者による追加の処置は不要。
納税者が敗訴した
場合
納税者は延期を受けた税額に加えて、金利*
を内国歳入局に支払わなければならない。
③ 係争中の税金支払いの条件付き延期 - 税金保留証券(tax
reserve certificate)
納税者は税金を支払う必要がない。しかし、税金保留証券を購入
しなければならない。
納税者が勝訴した
場合
納税者による追加の処置は不要。
納税者が敗訴した
場合
納税者は延期を受けた税額に加えて、内国
歳入局に金利*を支払わなければならない。
④ 係争中の税金支払いの条件付き延期 - 税金保留証券(tax
reserve certificate)
納税者は税金を支払う必要がない。しかし、納税者は銀行が納税
者に代わって支払うという納税絶対保障を入手する。
22
*金利率は、地方裁判
所(District Court
Ordinance) Section
50 に基づく官報に掲
載されている)
納税者が勝訴した
場合
銀行の支払い保証は解除される。
納税者が敗訴した
場合
納税者は延期を受けた税額に加えて、金利*
を支払わなければならない。納税者が税額と
金利を支払った後は、銀行の支払い保証は解
除される。
納税者が内国歳入局査定官の決定した納税額に不満の場合は、以下
のステップを踏んで最高裁まで控訴することが認められている。
Step 1.内国歳入局への控訴段階の決着の手順
納税者と査察官の間の納税額の係争に関して決着がつかない場合に
は、この案件は長官の判断に委ねられる。長官は、査察官の判断を
撤回する権限を有している。
Step 2.再審査委員会への告訴(Appeal to Board of
Review)
もし、納税者が内国歳入局長官の決定に不服であれば、再審査委員
会へ上訴することができる。
Step 3.裁判所への上告
納税者又は内国歳入局長官は再審査委員会の決定に不満であれば、
第一審裁判所へ上訴することができる。上訴の宛先は再審査委員会
であり、決定日から1ヶ月以内に上訴書を提出する。
もし納税者又は内国歳入局長官が第一審裁判所の決定に不満であれ
ば、高等裁判所に上訴できる。更に高等裁判所の決定に不満であれ
ば最高裁判所に上訴できる。
第 10 節 錯誤の訂正(Correction of Errors)
納税者が査察官から送付されてきた納税通知書に記載の送付日から
1 ヶ月以内に異議を唱えない場合は、内国歳入局は納付金額が最終
であり確定されたとみなす。従って、納税通知書に記載の送付日か
ら 1 ヶ月以降は、納税者が税額につき査察官に異議を唱えても課税
23
所得は改定されることは出来ない。税額はそのまま支払われること
が求められる。
Section 70A は、もし、申告書に記載された錯誤か添付された文書
の錯誤に従って課税が行われた場合の納税通知書額の改定の手順に
ついて定めている。
1.錯誤改定の根拠
錯誤の訂正が可能な状況は以下の項目を含む。
①
納税者により提出された申告書又は添付書類の記載の中に
錯誤が含まれていた。
申告漏れが申告書又は添付書類の記載の中にあった。
②
例:納税者が研修経費(SEE)の申告を失念した。会社が慈善
寄付の控除の申告を失念した。
③
課税額に至る計算の過程で、計算間違いが行われた。
税法の法令の適用が間違った。
④
例:個人事業主が利得税法でなく、給与税法により税額計
算を行った。
2.錯誤改定が認められない場合
錯誤の訂正が認められない状況は以下の項目を含む。
①
納税者が申告書を提出しなかった場合に、査定官が納税者
に代わって課税額を算定した場合は、錯誤の訂正が認めら
れない。
錯誤の根拠となる申告書が存在しないので、査定官に錯誤
がありえないという理由に基づく。
24
課税額が査察官の推定により決められた場合は、錯誤の訂
正が認められない。
②
査定官の推定の行為に納税者の錯誤が入り込めないという
理由で推定額に対して異議の申したては認められない。
③
課税額がその時点において行われていた税務取り扱いの手
法により定められた場合は、その手法が後日変更となって
も錯誤としての訂正が認められない。
④
もし、納税者が意図的に納税数値を操作して自己の目的を
達成していて、その後納税者の心変りにより誤りであった
との主張を行う場合は、錯誤の訂正が認められない、
25
第 2 部 給与税
第 1 章 所得の源泉決定の要素(Source of
Income)3-1
第1節 給与所得の種類
給与所得への課税は、税法(Inland Revenue Ordinance :IRO)の
section 8(1)に記載されている。給与税は、毎年以下の項目のうち
香港において発生した所得に対して課税される。
1. オフィス(office) 役員、会社秘書役等の常設ポストに対して
支払われる所得
オフィスとは、永続的に法的に設置が求められている役員など
の役職のことである。部長、課長などは会社の事情により廃
止、新設があるのでオフィスではない。
2. 雇用による所得
雇い主、従業員の形態の雇用サービス提供による労働の対価と
しての給与所得を指す。
3. 年金給付金
公的年金基金(mandatory provident fund-MPF)又は公的職業退
職制度掛金*(Recognized Occupational Retirement SchemeRORR)からの一時金と定期払金額のうち、指定された条件を満た
さない場合一時給付金又は定期払給付金は課税対象となる。例
えば、中途退職で給付を受ける場合とか、退職後に支払われる
毎月の給付金は課税対象である。
第 2 節 香港源泉雇用と外国源泉雇用の税務上の差異 3-3
香港源泉雇用と外国(海外)源泉雇用かによって税効果が異なって
くる。一般的に外国源泉雇用のほうが、香港での給与所得に対する
香港税務署への支払い額が外国人への特例(60 日ルールなど)の適用
により少ない。
26
香港での税法では、まず給与所得者が香港での雇用であるとの前提
から吟味を開始する。外国での雇用であるとの証明の責務は納税者
に課せられる。DIPN 10(revised 2007)により定められた項目をクレ
アして、外国源泉雇用であることを証明しなければならない。
第 3 節 雇用の源泉の決定に関する 3 条件 3-1-1
雇用の源泉(source)に関して、内国歳入局は DIPN 10(2007 年改定)
を発行し解説を行っている。源泉の決定の為に 3 基準を下記に既述
の通り定めている。
① どこで雇用契約が締結されたか?
② 雇用主はどこの住人か?
③ どこで従業員への報酬が支払われているか?
重要な最初の基準は雇用契約が行われた場所である。雇用契約の手
続きが行われた場所が香港か海外かが吟味される。雇用契約が香港
で行われたか海外で行われたかによって、香港の課税原則が領土主
義なので、雇用の源泉は課税か非課税かを決める重要な決定であ
る。雇用主が香港の会社か、給料の支払地がどこかが更に吟味され
る。上記の 3 基準適用の結果いずれかが香港であると判明した場合
は、雇用の源泉は香港であると決めるであろう。
しかし、3 基準を個別に吟味するだけでなしに、全体としての見地
からも吟味される。3 要素に加えて更に関連する要素が判明すれ
ば、その要素も加えて吟味される。3 基準を満足していても、その
他の要素も加えて全体して雇用の源泉を海外と判定する場合もあ
る。
1. どこで雇用契約が締結されたか?
雇用契約が果たして、香港で締結されたか海外で締結されたかが吟
味される。雇用契約の締結のプロセスに従って、どこで契約内容の
交渉が行われ、調印され、実施に移されたかが焦点である。内国歳
入局は、雇用主と従業員の間で締結された雇用契約のコピーの提出
27
を求めている。以前には、雇用は海外で行われたが、口頭の契約な
ので書面は存在しないという納税者がいた。現在では、その主張は
受け入れられず、雇用主からの任命の条件証明書が求められる。
2. 雇用主はどこの住人か?
会社の居住地を決めるに当たって、内国歳入局は、会社の中核的な
経営機能はどこに存在するかを考慮する。中核的な経営機能のテス
トは、コモン・ロー適用国で広く活用されているコモン・ローの原
則により行われる。この原則の下では、会社は中核的な経営機能が
存在する場所で実際の業務が遂行すると考えられる。
3. どこで従業員への報酬が支払われているか?
給与の支払いが香港の銀行へ振り込まれているか、海外の銀行に振
り込まれているかが 3 番目の判定基準である。雇用の源泉を支払地
により決めるというのは、ばかばかしいほど単純で、電子銀行取引
の時代には不適切である。雇用の源泉は著しく難しい問題だとの認
識の上で、最終的な判定に給与振込先基準に頼るべきでない*。
従って、雇用の源泉の決定に当たっては、もっと実務的な見地から
検討が必要との見解に達している。しかしながら、給与振込先基準
は、重要な判定基準でないとの見解ではない。
4. 雇用の源泉地の最終決定
上記の 3 基準適用の結果いずれかが香港であると判明した場合は、
雇用の源泉は香港であると決めるであろう。しかし、総合的事実方
式により(totality of fact approach)により、3 基準以外の関連
する要素を考慮の結果、雇用の源泉を海外と判定する場合もある。
第 4 節 香港源泉雇用による所得 3-1-2
香港における雇用主から支払われる給与所得は、原則として給与税
が課税される。海外の雇用主を持つ従業員が香港で働いた場合に
は、香港滞在日数により給与税が課税される場合と非課税の場合が
ある。以下に詳細について記載する。
1.雇用所得の全額が課税の場合
28
香港源泉雇用の場合、課税年度における雇用所得は、全額課税か全
額非課税のどちらかである。香港滞在日数に応じて課税所得を案分
することはない。雇用契約が香港で行われていたら、たとえ一部の
勤務が外国で行われていたとしても、課税年度において雇用所得の
全額が課税対象である。
2.雇用所得の全額が非課税の場合
上記の課税規則が不適用となるケースは以下の二つの場合である。
課税期間を通じて香港籍の会社の従業員が海外で勤務を行
① う。(香港での勤務日数がゼロの場合)- Section
8(1A)(b)
香港籍の会社従業員が香港への訪問者(visitor)であり、課
② 税期間中の香港滞在日数が 60 日以下である。60 日には、
香港滞在中に取った休暇*1 も含む。- Section 8(1B)
3.所得控除の規定(Income Exclusion Rule)
Section 8(1A)(c)によれば、1987 年 4 月 1 日以降、香港以外で給
与所得を得た場合、もし、その外国での給与所得が香港の所得税法
に非常に近い場合は、その給与所得は課税対象から控除される。た
とへば、香港で雇用されている従業員が、中国本土で 1 年に連続し
て 190 日間勤務し、中国の税務署に利得税を支払うとする。課税の
対象となったその給与額は、香港での課税対象から除外できる。所
得額控除の要件は以下の 2 つである。所得控除とは、香港での給与
税の算定において、最初の段階である受領した国外の給与額を給与
税の総所得額の中に含めないとの意味である。外国での支払い税額
を給与税の税額から控除するという意味ではないことに留意が必要
である。
①
海外で勤務した国で納税の根拠となった税の条例が香港の
税法に非常に(substantially)近い*2。
29
*1休暇の取扱は法令の語
句で明示されていない
が、いくつかの出版物・
香港公認会計士試験問題
の正解の事例にも記載が
ある。例えば、度々香港
へ出張しているが、ある
課税年度に5日間香港に滞
在して出勤日は3日であり
休暇は2日であるとして
も、滞在日は5日として扱
われる。滞在は業務上の
滞在だけでなくその他の
目的の滞在も含まれるこ
とに注意を要する。 香港
籍の会社従業員が香港へ
の訪問者となる場合は実
際は限られるであろう。
外国人が香港の会社と雇
用契約を結び海外で勤務
をする場合が想定され
*2 特定の外国給与所得
が香港の給与所得の性格
と非常に近いかどうか
は、ケース・バイ・ケー
スで検討が必要である
が、所定の要件を満たし
ていれば税務署は一般的
に十分に近似していると
容認される可能性が高い
②
外国で該当給与所得に対する所得税を支払ったまたは控除
されたという証明書が必要である。
課税申告書上で所得を除外するためには、上記の 2 要件が満足され
ていなければならない。
更に重要な点は、Section 8(1A)(c)の所得控除の規定は所得税を支
払った全ての国に対して適用できる点であり、汎用性がある。
4.税額相殺規定(Tax Credit Set-off Rule)
Section 50 によれば、香港がダブルタックス相殺条約を締結してい
る国とは、相手国で支払った所得税は、香港で支払う所得税に対し
て控除の申請ができる。外国税額の控除の方法は、特定の香港と条
約を締結した国にだけに有効である点が Section 8(1A)(c)の所得
控除の規定と異なる。
5.所得控除の規定と税額相殺規定適用結果の比較
所得額控除方式を用いて、香港での課税所得を算定する場合は、外
国で課税されなかった所得だけを選んで申告するだけで済む。
しかし、外国税額の控除の方式の場合は、外国と香港での全所得を
課税対象所得として計上して算定した給与所得税額から外国税額を
控除することになる。
所得額控除方式
外国で課税された所得金額は、課税年度
の総所得金額に含めない。
(全ての国に適用可)
外国税額の控除の
方式
外国給与所得と香港での給与所得の合計
額を課税所得として、控除項目を減算し
算出した給与税から外国給与税額を減算
する。
(ダブルタックス相殺条約を締結してい
る国だけ適用可)
30
6.外国源泉雇用契約の場合の香港での課税対象所得金額の
算定
Section 8(1A)によれば、雇用契約が外国で行われていた場合、納税
者が課税年度において香港で就労した期間の給与所得が香港の給与
税の対象となる。課税対象となるかどうかの判断基準は、課税対象
年度における滞在(visit)日数基準により決まる。日数基準における
日数の計算方式は、連続 24 時間に満たなければ、半日(0.5)と数え
る。もし、香港到着日と出発日が同日なら 1 日と数える。
例題:
阿部一郎さんは、日本のM商事東京本社のアジア統括営業部長とし
て勤務しており、当課税年度における年収は香港ドル換算で
HK$2,190,000 である。阿部さんは当課税年度において香港に 110 日
滞在した。阿部さんは、香港において給与以外の所得はない。阿部
さんの香港での給与課税所得はいくらか?
回答:香港日数基準での給与所得は以下のとおりである。
HK$2,190,000 x
例題:
110
365
= HK$660,000
前問の阿部一郎さんは、香港滞在日数 110 日のうち 10 日は有給休暇
を取り香港でバケーションを楽しんだ。阿部一郎さんの課税給与所
得はいくらか?
回答:
香港滞在日数 = (110–10) +
課税所得= HK$2,190,000 x
10 x
110 − 10
365 − 10
=100+2.82=102.82
102.82
365 = HK$616,920
単に 100 日から 10 日を引き 100 日ではなく、有給休暇 10 日の年間
の効果を案分して 102.82 日を算出する。
7.60 日ルール(60 Days Rule)
Section 8(1B)によれば、課税期間において納税者の給与所得が香港
源泉である場合には、国内・国外の勤務地に関わらず全ての給与所
得が香港での給与税の対象となる。例外は、いわゆる 60 日ルールに
31
より納税者が免税を申告することである。給与税に関しては、100%
課税か 100%非課税化のどちらかであり給与所得の金額の案分の条項
はない。
納税者の給与所得が外国源泉である場合、香港において就労した給
与所得だけが対象であり、その給与所得も 60 日ルールが適用され
る。
8.60 日ルールの日数計算方式
60 日ルールに該当するかの日数計算方式は外国源泉雇用に基づく日
数計算と異なる。1 日に満たない日は、0.5 日としたのに対して、60
日ルールでは、1 日に満たない日でも 1 日と切り上げる。従って、
到着日は 1 日、翌日以降の出発日も一日と数える。もし、香港到着
日が 7 月 1 日で出発日が 7 月 4 日なら合計 4 日と数える。但し、香
港到着日と出発日が同日なら合計で 1 日と数える。
9.60 日訪問ルール適用範囲(Application Scope of 60
Days Rule)
給与税の対象は、従業員、役員等のオフィス、年金である。給与税
の算定に当たって 60 日訪問ルールは、従業員には適用されるが役員
等のオフィスと年金には適用されない。
1)従業員の 60 日訪問ルール
香港で就労した従業員の給与税が課税か非課税かを判定する 60 日ル
ールの適用対象者は、香港雇用と外国雇用を含む全世界雇用者であ
る。外国源泉雇用の場合は、雇用主が香港外に本社を有するので、
多くの場合従業員も外国人であり、従って家族とともに国外に居住
しているので、香港で業務を行う場合、香港の自宅は通常存在しな
い。香港滞在は単身ホテル住まいで訪問者(visitor)となり、給与税
の非課税が認められる。一方、香港源泉雇用契約の場合は香港籍の
従業員は家族と香港の自宅で暮らしている。従って、多くの香港籍
の会社の従業員は、訪問者(visitor)として 60 日ルールの適用を受
けるのがむずかしいが、場合により 60 日判定基準に適合し給与税非
課税が認められるケースがある。
32
オフィスとは、永続
的に法的に設置が求
められている役員な
どの役職のことであ
る。部長、課長など
は会社の事情により
廃止、新設があるの
でオフィスではな
い。
以下に外国源泉雇用契約の場合と香港源泉雇用契約の場合の 60 日ル
ールの適用例をまとめて表で示す。100%課税と 100%非課税は香港
税務基準での香港での課税・非課税を占めす。
業務内容
香港採用
外国採用
課税年度に香港で 365 日勤務する
100%課税
100%課税
課税年度に香港で 60 日勤務する
100%課税
100%非課税
課税年度に香港で 61 日勤務する
100%課税
日数基準
課税年度に香港で 360 日勤務する
100%課税
日数基準
課税年度に外国で 365 日勤務する
100%非課税
100%非課税
2)オフィスへの 60 日訪問ルールの不適用
オフィスの役職者には、60 日ルールの適用を受けて給与税の非課税
が認められない。例えば、日本籍の会社の役員が香港で一定期間に
香港へ出張し業務を行う場合は、60 日ルールの適用を受け給与税控
除が認められない。外国源泉雇用契約の場合の香港での課税対象給
与額をもとに課税年度の合計給与所得の日数按分により課税金額が
算定されることになる。- Section 8(1A)
例題:
William 氏は、米国籍のN株式会社に採用された米国人である。彼
は米国でN株式会社との雇用契約書に米国で署名・捺印を交わして
いる。家族ともども米国に居住している。彼は営業部員として香港
の顧客を定期的に訪問している。従って、業務範囲は米国と香港を
カバーしている。当課税年度において、59 日香港に勤務した。香港
給与税における課税はいかに?
回答;
外国籍の会社に勤める William 氏が香港で 100%非課税となるため
には、香港給与税条項 8(1A)(b)の定めにより香港以外の国において
33
全ての勤務を行っていなければならない。つまり香港での勤務を全
然していないことが必要である。現実には香港で 59 日勤務した。
香港での給与所得が発生したので、雇用の源泉が香港か外国かが問
題となる。N株式会社は米国で事業を営んでいるので、内国歳入局
は外国の会社と認定する。次に William 氏の雇用の源泉は香港でな
く外国であることを証明しなければならない。彼は香港でなく、米
国でN株式会社との雇用契約書に署名・捺印を交わしたとあるの
で、雇用の源泉は外国と認められる。
また、William 氏の家族は米国に居住しているので、香港への訪問
者(visitor)と認定される。香港に自宅があり家族も住んでいる場合
は訪問者と認定されない。
このような分析を踏まえて、William 氏の給与所得は、香港給与所
得課税条項の定めにより、日数按分(time basis)か、100%非課税と
なる。
William 氏は 59 日間香港に勤務し滞在したので、60 日ルールにより
60 日以内であるので、Section 8(1B)により香港の税務庁により全
額給与税非課税が認められる。
例題:
前問において香港での勤務期間の 59 日の後に 2 日間休暇を取り 61
日間の香港滞在とした場合の課税はどうなるか?
回答:
この例題では、香港で取得した休暇が香港滞在日数に含まれるか含
まれないかが問題となる。勤務期間の 59 日により算定するか、2 日
間の休暇を含めて 61 日と算定するかで 100%課税か 100%非課税に
分かれる。滞在期間がビジネスの為に費やされたか、ビジネス以外
に費やされたかを 8(1B)は考慮しない。どのような理由であれ合計
の香港滞在日数が 60 日超であれば、全額非課税でなく日数按分
(time basis)が適用となる。即ち課税年度の給与所得を 365 日に対
して 61 日で按分した金額が課税対象給与所得となる。
10.183 日ルール(183 Day Rule) – Japan, China
34
2 重課税防止条約(DTA)が香港と日本等と締結されている。日本人が
日本の会社と雇用契約にあり、課税年度において香港で 183 日以下
の滞在日数であれば香港の給与所得税が非課税となる。また、183
日を超える場合は、日数按分(time basis)で課税される。
もし日本人が香港の会社と雇用契約を行っている場合は、全額課税
か非課税のどちらかである。ただし、その日本人が 60 日以下の滞在
の訪問者と認められる場合は全額非課税である。2 重課税防止条約
(DTA)は、香港の会社と雇用契約を行っている日本人には適用はな
い。
香港は、2 重課税防止条約(DTA)をいくつかの国と締結しており、そ
の中に日本、中国が含まれる。中国特別区の香港の書籍の事例とし
ては、当然同じ国の中国本土の例を挙げている。当出版物は、日本
人向けであるので、日本との 2 重課税防止条約(DTA)について取り上
げる。
11.所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の
防止のための日本国政府と中華人民共和国香港 特別行政
区政府との間の協定
香港と日本の二重課税防止条約の和文訳(英文が正本)の第 14 条に
183 日規定に関する部分を以下に掲載する。本租税協定は、平成 22
年 7 月 15 日から効力を有する。
日本国政府及び中華人民共和国香港特別行政区政府は、 所得に対
する租税に関し、二重課税を回避し、及び脱税を防止するための
協定を締結することを希望して、次のとおり協定した。
第十四条
1
給与所得
次条、第十七条及び第十八条の規定が適用される場合を除くほ
か、一方の締約者の居住者がその勤務について取得する給料、賃金
その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約者内にお
いて行われない限り、当該一方の締約者においてのみ租税を課する
ことができる。勤務が他方の締約者内において行 われる場合には、
当該勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に
対しては、当該他方の締約者において租税を課することができる。
2
1の規定にかかわらず、一方の締約者の居住者が他方の締約
者内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)
35
から(c)までに規定する要件を満たす場合には、当該一方の締約者に
おいてのみ租税を課することができる。
(a)当該課税年度において開始し、又は終了するいずれの十二箇月の
期間においても、報酬の受領者が当該他方の締約者内に滞在する期
間が合計百八十三日を超えないこと。
(b)報酬が当該他方の締約者の居住者でない雇用者又はこれに代わる
者から支払われるものであること。
(c) 報酬が雇用者の当該他方の締約者内に有する恒久的施設によっ
て負担されるものでないこと。
第2章 給与課税所得(Chargeable Salary Income)
3-10
Section 9(1)には、香港において給与税の対象となる所得の一覧
をように定義しそれらの所得の算定方法も示している。下記に
Section 9(1)の前半の大部分の原文を香港の税法の一例として示
す。給与税の対象となる所得の一覧は、課税所得を全て包括するわ
けでない。従って、一覧に含まれていない項目は非課税であるとい
う意味ではない。リストに含まれていない所得が課税されるか非課
税かの判定基準は、所得が雇用かオフィスを源泉として生じたかど
うかの一般基準に照らし合わせて吟味することが必要である。
第1節 課税対象となる所得の事例
以下の表に主要な課税所得となる例をまとめる。
課税所得の例
①
雇用主又はその他により従業員又はオフィスに支払われた
給与、賃金、有給休暇、謝礼、コミッション、ボーナス、
慰労金、領主の不定期利得、手当て
②
雇用主が従業員による支払い義務の代行(discharge of
debt of employee) Sec.9(1)(a)(iv)
③
雇用主による従業員の子弟の学校経費負担 Sec.9(2A)(b)
36
④
休暇旅行(Holiday journey) Sec.9(2A)(c)
⑤
退職時の特別慰労金、従業員による早期退職願いための支
払いは課税である。(end of contract gratuities and
payments in lieu of notice accrued on or after 1
April 2012)
⑥
私的な職業退職制度掛金(Occupational Retirement
Scheme)からの給付金 – Section 9(1)(ab)(i)
⑦
退職時に給付される公的職業退職制度掛金(Recognized
Occupational Retirement Scheme)の内限度額を超える金額
– Section 9(1)(ab)(ii)
⑧
定年退職、死亡、傷害による退職以外の自己都合による退
職による公的職業退職制度(Recognized Occupational
Retirement Scheme)の支払いは課税対象となる。9(ab)(i)
⑨
雇用主から提供された住居の家賃 9(1)(b)and (c)
⑩
雇用主から提供された住居の家賃に関して雇用主が従業員
に家賃を払い戻した金額 9(1A)
⑪
ストック・オプションの行使により実現された利益、転売
又は買戻しによる利益 9(1)(d)
第2節 給与、賃金、役員報酬の取扱
全ての給与、賃金、役員報酬は、給与所得税の課税対象である。実
際の銀行振込額でなく、公的年金基金(Mandatory Provident Fund
Scheme-MPF)又は公的職業退職制度掛金(Recognized Occupational
Retirement Scheme-RORS)等の控除前の総額金額を申告しなければな
らい。
更に、有給休暇中の給与、コミッション、ボーナス、餞別金、雇用
主の強制解雇金(payments in lieu of notice)など雇用主とそれ以
外からの場合でも申告が必要である。一般論として、雇用期間中か
退職後かを問わず、又雇用契約に従って支給されたか、そうでない
37
かに関わらず雇用主から受領した支払額は課税対象である。例外
は、税法で規定されている傷害に対する支払い額などである。
第 3 節 その他の手当(Other Benefits in Kind)
Sections 9(1)(a)(iv)と 9(2A)には、以下の 3 種類の給与税の課税
対象となるその他の手当が記載されている。
①
金銭に換算可能な手当
②
従業員の子弟の教育手当て
③
休暇旅行手当(holiday journey benefits)
雇用主が従業員・役員の為に支払う課税対象となる従業員へのその
他の手当(Other Benefits in kind)は、1991 年に改正*された。
1991 年改正後のその他の手当の課税に対する改正の基本的な考え方
は、以下の通りである。
金銭に換算可能な手当(capable of being converted into
money) Sec.9(2A)(a)
売却により現金化可能な資産の形態をとった手当の提供は、
内国歳入局(IRD)の見解によれば、公開市場において手当の提
供日における売却可能価格を課税金額とする。例えば、新車
$30,000 を退職日に慰労手当てとして授与された場合、受領
日における新車の公開市場での売却可能価格が$28,000 であ
れば、課税金額は$28,000 となる。
雇用主が従業員による支払い義務の代行(discharge of debt
of employee) Sec.9(1)(a)(iv)
この条項は、1991 年改正以前から存在していて、改正後も引
き続き有効である。従って、雇用主によって支払い代行された
金額は内国歳入局によって課税所得と見なされる。
38
*The case of David
Hardy Glynn v The
Commissioner Inland
Revenue 3 HKTC 245 の
法廷での高等裁判所
(court of appeal)判例
が 1991 年の改定に繋が
った。
下記の表は課税対象となる従業員へのその他の手当の具体例であ
る。
1)従業員が受けるその他の手当の事例(課税)
① 昼食代としての現金手当は給与税課税所得である。
学校への支払いを直接どちらが行うかに関わらず、雇用主に
② よる従業員の子弟の学校経費負担は従業員への給与税所得で
ある。教育費は授業料だけでなく、下宿代、遠足費等も含む
③
従業員が支払った医療費を雇用主が払い戻す金額は給与税所
得である。
④
従業員の電気・ガス代を雇用主が支払金額は、給与税所得で
ある。
⑤
会社のクレジットカードを使用に使う金額は、給与税所得で
ある。
⑥
社用車を従業員が私用に使った際に発生した従業員の債務を
雇用主が支払った金額は、従業員の給与税所得となる。
雇用主が支払う休暇旅行(holiday journey)経費*は、従業員
⑦ の給与税所得である。2003 年 4 月 1 日より前は非課税であっ
た。
2) 従業員が受けるその他の手当の事例(非課税)
会社が契約している医院で治療を受ける場合の手当は非課税
である。
① 医療保険からの受領額は非課税である。
② 社用車を従業員が私用に使っても非課税である。
39
*Departmental
Interpretation &
Practice Note(DIPN)
41 参照
会社契約の保養施設の利用は、従業員にとり非課税である。
③ 但し、従業員が個人契約による保養施設を会社が立替払い
は、従業員の給与税所得である。
④
雇用主から借りた低利又は金利なしのローンの金利は非課税
である。
従業員が雇用主所有の住居に住んでいて電気・ガス代の請求
先が雇用主である場合、電気ガス代は非課税である。但しな
⑤ ぜなら従業員は恩恵を受けた電気・ガスを現金化できないか
らである。もし、請求書の宛先が従業員であり雇用主が支払
う場合は、課税所得である。
⑥
雇用主が従業員の給与税を立替えて支払った場合は、その金
額を従業員の所得として申告する必要がある。
雇用主が従業員に勤務の為に住居を提供した場合は、住宅手
⑦ 当を支給されたものと見なされる。調整済給与の 10%が課税
所得となる。
第4節 レンタル・バリュー(Rental Value) 3-11-1
香港では、従業員の居住の為に日本のように社有の社宅の提供は行
っていない。雇用主が家主から借りた住居を雇用主が家賃を支払う
ことが多い。香港の税法は日本の税法にない特有の住宅手当ての課
税額(rental value)が存在する。レンタル・バリューは、日本語に
直訳しても香港税制で使われる意味が明確でないので rental value
のまま記載する、
Section 9(1),(1A)には、以下の 3 形式の家賃補助形式を想定してい
る。
1.家賃フリーの住居提供
従業員は雇用主から提供された家賃フリーの住居の給与税課税上の
見なし手当てとして、課税年度において調整済み所得の 10%の金額
40
*例えば香港に着任して
家族を呼び寄せ正式に借
家(マンションが多い)
を決める前に2ヶ月間ホ
テルに滞在して勤務した
とする。ホテル、ホステ
ル、食事つきの家の場合
で 2 室以下の場合あれ
ば、家賃相当額(rental
を課税所得として計上する。調整済み所得の 10%*の金額の略称は
RV(rental value)である。
RV (rental value) = 10% x 調整済み所得
調整済み所得の算定要素は以下を含む:
- 課税給与総所得額からの除外項目:
①
ストック・オプション収益
②
退職一時金
- 減算項目:① 12(1)(a)
通勤費
プロフェッショナル会費
12(1)(b)
① 原価償却費
調整済み所得の算定に当たって、ストック・オプションの収益、退
職時の一時金は所得に含めない。オフィス間の交通費、雇用維持に
欠かせない原価償却費(自動2輪車等)、コミッション、一件のみ
のプロフェッショナル・メンバーシップへの入会金・会費は所得か
ら控除する。
2. 雇用主の支払い家賃が rental value 以下の場合
雇用主の支払い家賃が従業員の rental value 以下の場合は、従業員
は実際の家賃と rental value との差額を雇用主に支払うか又は給与
からの控除を受けることになる。従業員の雇用主への家賃の一部の
支払額は、rent suffered 又は rent contribution と言われる。納
税申告書上では、rental value を加算し、rent suffered を減算す
る。
雇用主による住宅提供の場合、住居の家賃を家主に直接支払うこと
が通常想定されている。しかし、従業員が家賃を家主に全額又は一
部を支払いその後に雇用主が従業員に払い戻す場合がある。この場
合の雇用主から従業員への家賃払戻額は、通常の場合の従業員の現
金収入とはみなされない。しかし、家賃払戻でなく雇用主が従業員
41
に現金で家賃手当てを支払った場合は、現金手当とみなされ課税対
処となることに注意を要する。
第 5 節 レンタル・バリュー(RV)の計算例
第4節で説明した rental value, RV の算定のための計算式を書き
に記載する。調整済所得は下記に記載の特定の項目である。調整済
所得算出のための経費として認められるのは、12(1)(a) 通勤費、
プロフェッショナル会費、12(1)(b)原価償却費でその他の経費の自
己研修費(SEE)などは含めない。
総課税所得(Gross taxable income)
X
Less: ストック・オプション収益(Share Option gain)
X
退職一時金(Lump sum received at termination
X
Allowable expenses:
通勤費 -12(1)(a)
X
プロフェッショナル会費 - 12(1)(a)
X
原価償却費 - 12(1)(b)
X
X
調整済所得
M
Rental value (10%xM)
N
Less: Rent suffered
Rent paid
- X
Rent refunded
+ X
Rental Value taxable
L
O
次に上記の RV の算定のための計算式を適用して、rental value の
算定を伴う課税所得の計算例を示す。
例題1
42
山本三郎氏は日系香港子会社の代表である。課税年度における給与
は、$1,500,000 である。会社はピークの Guildford Road にあるマ
ンションを借り無償で提供している。課税年度における山本三郎氏
の課税所得を計算しなさい。
Salary
$1,500,000
Rental value (10% x $1,500,000)
150,000
Assessable income (課税所得)
1,650,000
例題 2:
鈴木健一氏は、香港有限会社の経理部長である。課税年度の彼の年
収は、$1,010,000 であった。彼は香港公認会計士協会の会費を
$10,000 支払ったが、通勤はミニバスで会社へ通っているので、通
勤の為に車、バイクなどの原価償却費は発生しない。彼は Mongkok
のマンションに居住していて、課税年度において家賃年額$600,000
を支払い、会社から家賃の補助金年額$540,000 を受け取っている。
鈴木健一氏の課税所得を求めよ。
($)
Gross taxable income
1,010,000
Less: Allowable expense 12(1)(a)
10,000
12(1)(b)
0
10,000
1,000,000
Rental value (RV) 1,000,000 x 10%
100,000
Less: Rent suffered:
Rent paid
600,000
Rent refunded
540,000
Assessable income
60,000
(課税所得)
注:
43
40,000
960,000
香港公認会計士協会の会費は、会社業務に必要な専門知識の維持の
ために必要であるので、Allowable expense 12(1)(a)として$10,000
計上した。勤務に必要な設備機器は存在しないので、Allowable
expense 12(1)(b)の原価償却費はない。鈴木健一氏の支払い家賃
$600,00 は減算し、払戻金$640,000 は加算する。この場合、Rent
suffered(rent paid – rent refunded)は$60,000 である。
第 6 節 ストック・オプション(stock option)
Section 9(1)(d)によれば、従業員又は役員としての勤務により得た
ストック・オプション権利の行使により実現された利益、転売又は
買戻しによる収益を申告する必要がある。
1. ストック・オプションの授与から株式売却までのステップは、以
下の通りである。
①
勤務
②
オプションの授与(grant)
以下の 3 通りの方策の何れかを行う。
1)ストック・オプション権利を行使前に同僚等へ譲渡
(assignment)
③
2)ストック・オプションを行使前に権利を手放す
(release)(例:会社が譲渡したストック・オプションの
権利を買い戻す)
3)オプション権利行使・経費支払(exercise)
④
株式の売却
44
Departmental
Interpretation
and Practice
Notes No. 38:
Employee Sharebased Benefits
にストック・オプ
ションについての
詳細な説明がなさ
れている。
上記のステップ解説図
勤務
雇用主
Option
授与
役員・従業員
権利行使/
経費支払い
株式売却
株式市場
ストック・オプション税制については、内容が結構複雑であるので
Section 9(1)(d)に関して一般には様々な疑問が生じる。たとへば、オ
プションの授与の時点と権利の行使の時点の雇用の状況に関連する税
法の状況、更に海外の雇用関係にある従業員のケースなどである。
様々な状況に対応するために、以下に述べる点を考慮することが役に
立つと考えられる。
1) 役員、従業員の雇用間を通じて株式の購入権を取得した場合、納
税者は、権益による所得が発生する。オプションの授与が香港で
行われた場合、その権益は給与税がオプションの授与の課税年度
において課税される。しかしながら、section 9(1)(d) and 9(5)
の香港税法の基本的な考え方により、オプションの授与の課税年
度に必ずしも課税されない。Section 9(1)(d)では、オプションの
行使(grant)、譲渡(assignment)、手放し(release)した課税年度
において課税対象所得が発生する。
45
2)オプションの行使できるための条件が付与されている場合と、無
条件行使の場合がある。典型的なストック・オプション行使の条件
は、対象勤務期間(vesting period)である。役員、従業員は一定の期
間その雇用主の為に働く必要がある。権利行使の為にそのような期間
が経過した時に対象勤務期間が終了したとみなされる。それ故に、対
象勤務期間は通常オプションの授与日から最初に従業員がオプション
の行使が可能となる日までを言う。
3) 収益が給与税の課税対象になるのは、Section 8(1)(a)により所
得が香港源泉の場合だけである。言葉を変えて表現すれば、その所得
が香港源泉所得かどうかを考慮しなければならない。ここで言う所得
の源泉は、従業員として株式を獲得する権利である。それゆえ、納税
者がオプションの授与の時に香港雇用であればその所得は香港源泉所
得であると見做される。後日の行使により実現された利益は給与税の
課税対象である。株式売却前の“行使”が課税を判断する課税である
ことに注意を要する。課税対象とならないのは、Section 8(1A)(b)に
より納税者が雇用中の全勤務を海外で行っているときにストック・オ
プションの授与を受けた場合である。
他方、納税者が香港源泉雇用契約をしていた。彼は無条件ストック・
オプションを授与された。彼は退職しそれからオプションを行使し
た。退職してもストック・オプションの行使はできる。ストック・オ
プション授与時に香港源泉雇用契約をしていたので、行使時の所得
は、行使した日を含む課税期間に給与税が課税される。課税が発生す
るのは、退職日でなくストック・オプションを行使した日である。
2.会社の登記簿上の住所は課税に影響を及ぼさない
ストック・オプションを授与した会社の登記簿上の所在地は、課税
上の所在地のみで課税か非課税かが決まらない。所得が香港給与課
税の対象となる雇用から生じた場合に、ストック・オプションの行
使が香港給与課税の対象となる、この際の雇用は、香港源泉の雇用
か海外源泉の雇用かを問わない。所得が香港給与課税の対象となる
雇用から生じたかどうかが判定基準である。雇用主が香港で登記さ
れている会社か、海外で登記されている会社かもストック・オプシ
ョンの行使が香港給与課税かどうかの判定基準ではない。
3.ストック・オプションの手続段階の時系列表示
46
付与日
Grant date
行使日
Exercise date
権利
確定日
株式
売却日
権利行使期間
対象勤務期間
Vesting
4.ストック・オプションの課税時点
ストック・オプションの保有段階別の給与税の課税時点を以下の表
で明示する。
ストック・オプションの取扱手順
雇用主がオプションを一定の条件により授与
(grant)
給与税の課税
非課税
ストック・オプション権利を行使前に同僚等へ譲
渡(assignment)
課税
ストック・オプションの行使前に権利を手放す
課税
オプション権利行使・経費支払(exercise)
課税
オプションの売却
非課税
給与税は入手した株式を売却して利益を得た時点でなく、スト
ック・オプション権利を行使前に同僚等へ譲渡時点、ストック・オ
プションの行使前に権利を手放した時点、オプション権利行使・経
費を支払った時点で給与税の課税義務が発生するのに注意を要す
る。
47
5.ストック・オプションの課税所得の計算方式
ストック・オプションの課税所得の算出は、Section9(4)(a)に規定
されており、計算式と図形表示は以下のとおりである。
課税益 = = 株式の終値額 – (オプション原価 + 行使経費)
売却益
行使日
の株式
価値
オプション原価
オプション経費
例題:
山本氏は香港にながらく在住し雇用主Hong Kong Star Limitedから
2013年4月1日に同社のストック・オプション1,000株を$30の購入権
限を授与された。ストック・オプションの行使期限は、2016年12月1
日であった。山本氏は2013年4月2日にオプション経費$100を会社に
支払った。山本氏は2014年9月1日にストック・オプション権利を行
使(exercise)した。山本氏は会社との契約に従い一株当たり$30支払
い1,000株を取得した。その日の同株式の終値は$80であった。2016
年10月15日に$200で1,000株売却した。山本氏の香港でのストック・
オプションに関する課税所得はいくらか?
回答:
ストック・オプションの前提条件を整理する。
授与日:2013年4月1日 1,000株@$40で購入
オプション経費:$200
行使日:2014年9月1日 1,000株@$80(終値)
売却日:2016年10月15日
売却価格:$200
48
課税が発生するのは、行使日の2014年9月1日である。課税総額は
$80,000 ($80x1000)である。課税総額$80,000は、現実の売買により発
生した金額ではなく、税法上の理論価値である。課税年度は、2014/15
である。
ストック・オプションの計算式は以下のとおりである。
行使日における株式の市場価格($80x1000)
$80,000
減算:
オプション経費
Option原価
$200
($40x1000)
$40,000
ストック・オプション売却益
$40,200
$39,800
ストック・オプション図形表示を用いて以下に回答する。
行使日の
株式価値
$80,000
売却益 $39,900
Option原価 $40,000 ($40x1000)
($80x1000)
オプション経費 $200
第7節 課税所得から控除できる経費 3-13
給与税の課税から控除可能な経費の種類*は以下の 3 種類である。
1)勤務必要経費(outgoing and expenses)
Section
12(1)(a)
*Departmental
Interpretation and
Practice Notes
No.9(Revised)参照
①
2)原価償却費(depreciation allowance for
machinery)
49
Section
12(1)(b
キャリア形成・維持のための研修経費
②
self-education expenses (SEE)
Section
12(1)(e)
譲与経費(concessionary deduction)は以下の経費
を含む。
Section
26D
~
26G
1) 慈善的寄付
③
2) 高齢者居住世話経費
3) 住宅ローン金利
4) 年金基金の支払
1.勤務必要経費(outgoing and expenses)
Section12(1)(a)
勤務必要経費(outgoing and expenses)として申告できる要件は、家
事に関わり私的な経費と設備投資費でなく、全体として(wholly)、
排他的に(exclusively)、必然的に(necessary)課税所得の獲得の為
に生じた経費である。
従って、勤務必要経費の要件を満たすためには、家事に関わり私的
な経費でないことに加えて、次のテストをパスしなければならな
い。
① 既に経費が発生している。
② 所得獲得の過程で、経費が全体として(wholly)、排他的に
(exclusively)に発生している。
③ 所得獲得の過程で、必要不可決に(necessary)発生した。
2.経費が発生の要件
経費が発生していると認められるためには、債務が確定している又
は、絶対的な支払いの確約が控除申請する課税年度において存在し
50
ていなければならない。年度末の現金による支払いは必要でない
が、課税対象経費が年度末において、現実の明白な金額が存在しな
いと控除は認められない。例えば、推定額、偶発債務などは控除で
きない。
1)全体として(wholly)、排他的に(exclusively)の要件
これらの意味は広く解釈する必要がある。経費が複数の目的の為に
発生した場合には、その経費は配分され、雇用に関する経費だけが
もし他のテストが満たされるとして、控除が認められる。
事例として、自動車を私的と勤務目的の両方に利用した場合に、基
本的にその合計経費を走行距離により配分することが全体として
(wholly)、排他的に(exclusively)のテストをパスすることになる。
2)必要不可欠に(necessarily)の要件
“必要不可“の意味は、勤務になくてはならないと解釈する必要が
ある。経費が雇用所得の獲得の為に関連していて、任務の遂行の為
に役に立つぐらいの効用では認められない。この基本的なテストの
内容は、その経費がなければ納税者が任務を遂行することが不可能
かどうかを判定基準とする。もしこのテストを東京都知事の第 3 者
委員会が適用したらどういう結果になっていたであろうか。中国製
の絹の服を買い、その服を着ることにより公務できれいな字を書く
ことが可能であるのと理由は、果たして“必要不可“のテストをパ
スできるであろうか。日本で地位の高い職務者は、香港人全員が服
している基準を少なくとも満たしてほしいものである。
従業員が出張の際の旅費・宿泊費と関連する経費が道理にかなって
いたなら、課税所得とはならない。もし、雇用主が払戻の金額以上
の経費であれば、“必要不可“の判定基準を満たさず、課税所得と
なる。
3)課税所得の生成の要件*
もし職務遂行を可能ならしめるためにのみ経費が生じたなら、経費
は職務の遂行の為に発生したとはみなされない。例えば、納税者の
自宅から事務所までの通勤費は職務の遂行の為に発生したとはみな
51
*Supreme court(最高裁
判所) case of CIR v,
Humphrey, HKTC 451 にお
いてこの意味が議論され
た。英国とオーストラリ
アの裁判所でも同様の給
与税についての判例があ
る。旧英国植民地でのコ
モン・ロー国間では、お
互いに判例を共有する。
されない経費の例である。単に職務遂行以前の経費なので課税所得
を生み出す経費であるとはみなされない。
控除可能でない経費は次の項目である。
① 自宅と会社との交通費
(仕事を始めるための準備のための経費とみなされた交通費は控
除が認められない。しかし、社内の事務所間の移動経費は、課税
所得獲得のための経費とみなされる)
② 就職のための必要経費(まだ給料が発生していないので、控
除可能でない)
③ 転職の為に即退職を得るための従業員による雇用主への支払
額(まだ給料が発生していないので、控除可能でない)
④ ビジネス・スーツ(“必然的に“の要件を満たしていない)
⑤ 専門的資格継続の為の会費(厳密には、課税所得獲得のため
の経費といえないが、特例として 1 件だけ控除を認めてい
る)
2.原価償却費 12(1)(b)
利得税の対象である生産活動等における設備投資に伴う減価償却費
以外に、給与税においても給与所得者に対して原価償却費を経費と
して認める場合がある。納税者の原価償却費を経費として認める場
合は、その設備・機器が必要不可欠である場合である。納税者が設
備・機器を使用することにより、より便利に任務を遂行できるだけ
ではその設備・機器が必要不可欠であるとは言えない。原価償却費
を給与税の課税所得から控除できる具体例は数少ないと思われる
が、事例で挙げられているのは、納税者所有のモーター・サイクル
を業務遂行の為に使用する場合であるが、他の公的移動手段のバ
ス・タクシーなどがない場合である。モーター・サイクルの維持・
修理代は、私的使用と勤務使用の割合に配分する必要がある。
3.勤務必要経費 12(1)(a)と減価償却費 12(1)(b)の控除要
件の比較
52
原価償却費 12(1)(b)の場合は、12(1)(a)に比べて制約が緩い。
12(1)(a)の場合は、“所得獲得の過程で、経費が全体として
(wholly)、排他的に(exclusively)に発生している”に加えて、“必
要不可欠に(necessarily)である”の全ての条件を満たさなければな
らない。
4.研修経費(self-education expenses: SEE) Section
12(1)(e)
1996 年 4 月 1 日以降、Section 12(1)(e)の規定が出来たことによ
り、給与税から自己払い研修費(SEE)の控除を申請できるようになっ
た。2000/01 年度以降は、公認の研修機関への研修費(SEE)は授業
料、試験代が控除対象である。公認の研修機関とは、大学、技術系
大学、教育条例により定められた学校を含む。詳細は、
www.ird.gov.hk を参照。公認の研修機関は、各種教育機関が提供す
る訓練・育成コースを含む。
研修、試験は雇用維持の為に必要な資格の取得・維持の目的でなけ
ればならない。一般的な興味を満たすためのコ-スは、対象外であ
る。
雇用主が研修費の全額、一部を従業員に払い戻した場合は、その払
戻し額は控除できる金額から除かれる。つまり、自己負担額のみを
給与税から控除を申請できる。
自己払い研修費の控除を申請できる課税年度は、研修費の支払い日
が含まれる年度である。2015 年 6 月から始まる研修費を 2015 年 2
月 10 日に支払った場合は、2014/15 年度に控除を申請する。
控除額は税法により最大額の限度が定められている。2013/14 課税
年度以降は$80,000 である。
第 8 節 譲与控除(Concessionary Deduction) 3-14
Section 12B(1)(a)は、Part IVA(section 26B – 26G)のもとに以下
の項目の控除を給与税、個人課税の控除項目として定めている。
① 公認慈善寄付(approved charitable donations)
② 高齢者居住介護経費(elderly residential care expenses)
53
③ 住宅ローン金利(home loan interest)
④ 公的年金基金制度(mandatory provident fund scheme - MPF)
既述の 12(1)は、給与税だけが対象であるが、譲与控除は給与税に
加えて個人税にも適用される。
1. 公認慈善善寄付控除 * (Deduction of Approved
Charitable Donations)
Section 26C(1)の条例は、納税者と別居中でない伴侶(spouse)は両
者による公認慈善寄付金の合計額が課税年度において$100 以上であ
れば控除を認める。この場合、別居中の伴侶とは以下の条件を満た
す必要がある。
*Departmental
Interpretation and
Practice Notes No.37 参
照
公認慈善寄付として認定される為には現金での寄付でなければなら
ない。本、器具、現金相当諸書(小切手、株券、債券等)の寄付は
公認慈善寄付として認められない。
内国歳入局(CIR)が公認した慈善団体のみへの寄付が寄付金控除の対
象となる。
公認慈善寄付金の限度額は、25008/09 課税年度以降は、課税所得の
25%に増加されている。
2. 高齢者居住介護経費控除 * (Deduction of elderly
residential care expenses)
1998/99 課税年度から施行された Section 26D により、60 歳以上か
政府障碍者手当法に該当する両親又は祖父母が入居する介護施設に
対して納税者か伴侶により支払われた高齢者居住介護経費は、給与
税所得から控除ができる。
高齢者居住介護経費控除のための要件
54
*Departmental
Interpretation and
Practice Notes No.36 参
照
1)課税年度において両親又は祖父母が 60 歳以上ある。または 60
歳未満でも政府障碍者手当の受給権を有している。
2)介護施設は、介護施設法に従い登録されているか又は登録が免
状されている。
3)控除できるためには、高齢者居住介護サービスを受けその請求
額が介護施設に実際に支払われている。課税年度における控除最
高額は、両親又は祖父母各人につき$60,000 である。
4)同一の両親又は祖父母各人につき、課税年度において控除は一
度だけである。異なる血縁者が同一の両親又は祖父母にダブって
控除を申請することは出来ない。
申告書記載内容
① 両親又は祖父母の明細(名前、香港 ID カード、60 歳未満な
ら年齢、政府障碍者手当法に登録した番号)
② 介護施設の名前と住所
③ 介護施設への支払額と領収書
3. 住宅ローン金利控除(Deduction of Home Loan
Interest)
1998/99 の課税年度から適用になった Section 26E の条例は、給与
税課税所得から又は個人課税の総所得から支払われた住宅ローン金
利の控除を認めている。標準税率課税の場合にもこの控除は認めら
れる。
査定官(assessor)は、税額査定の為に以下の文書の提出を求め
る。
① 住居建物の所有権の証明書
② 居住証明
③ ローン契約書
55
④ ローンの支払いの領収書
所定の金融機関(Prescribed Lenders)
① 納税者の雇用主
② 香港政府
③ 金融機関
④ 香港ハウジング協会
⑤ クレジット組合(Credit union ordinance 登録業者)
⑥ 貸金業者(Money lenders ordinance 登録業者)
⑦ 内国歳入局長が認定したいずれかの業者
控除のその他の要件
① 納税者が住居の融資の為に複数のローンを借りている場合
は、全てのローンの金利が控除の対象となる。(最高控除額
は課税年度において$100,000 である)
② ローン借り換えても金額が増加しない場合は、最高控除額は
課税年度において$100,000 の額内で控除が認められる。
③ ローン借り換え金額が増加する場合は、以前の支払い金利額
までが控除対象である。
④ 利息控除可能年数は 2012/13 課税年度から 15 年である。
⑤ 控除対象は、納税者各人である。購入した自宅の各々に対し
て 15 年ではない。
4.公的年金基金(Mandatory Provident Fund Scheme MPF)
56
2000/01 課税年度から適用になった Section 26G(3)(b)の条令では、
控除対象者は MPFS の条令により認められた例外者を除いて、全ての
正規従業員・パートタイム・自営業者は、強制退職年金基金に加入
しなければならない。
従業員が公的年金基金(MPF)加入免除の要件
① 月収が$7,100 以下(雇用主は所得の 5%分を拠出)
② 香港での滞在予定期間が 13 ヶ月以内
③ 香港外で MPFS に相当する年金制度に加入している外国人
毎月の収入が$4,000 以上の従業員・自営業者は、月収の 5%が強制的
に徴収される。雇用主(会社)からも同額の 5%が支払われ,合計
10%が会社の手を離れて、信託会社に積立てられる(vested)。
徴収の限度額は、下記の表を参照ください。2015/16 課税年度に
おいては年$18,000 である。従業員の限度額を超える金額を拠出す
る場合は任意拠出金となるが、雇用主は、限度額を超えて拠出する
義務はない。
課税年度
年間最大控除額($)
2010/11 to 2011/12
12,000
2012/13
14,500
2013/14
15,000
2014/15
17,500
2015/16 以降
18,000
下記の表は、2015/16 課税年度における従業員の控除額の算定
例である。
57
強制拠出額 任意供出額
(年間)
(年間)
例
月収額
控除可能額
1
$10,000
$6,000
-
$6,000
2
$10,000
$6,000
$3,000
$6,000
3
$20,000
$12,000
-
$12,000
4
$30,000
$18,000
-
$18,000
注:
例 1:月収は$10,000 なので、年収は$12,000 である。強制拠出額
(年間)は年収の5%なので$6,000 となる。2015/16 課税年度におけ
る年間最大控除額は$18,000 である。従って$6,000 は$18,000 以内
であるので、給与税から控除できるのは、強制拠出額(年間)の
$6,000 である。
例2:例1の状況において、従業員が任意に年間$3,000 を供出し
た。この場合給与税から控除できるのは例 1 と同じ$6,000 となる。
任意供出額の$3,000 は控除額の算定に考慮されない。
役員の報酬の拠出額に対する MPF 控除額
会社役員雇用契約によれば MPF に入る必要があり、強制拠
出金に対して控除が可能である。控除額は課税年度におい
て控除金額の上限以内である。
しかしながら、実際は役員報酬を受領するオフィス資格者
は従業員ではないので、MPFに参加する必要はなかっ
た。役員による供出額は任意拠出金とみなされて、給与税
において控除対象ではない。
5.公認職業退職制度(Recognized Occupational
Retirement Scheme - ROR)
58
従業員が MPFS に代わって公認祝就業退職制度へ参加を選択する場
合、控除金額は以下の二つの金額の内の少ないほうの金額である。
ROR への実際の支払額
もし納税者が MPF に参加していたら、支払うべきである金額
ROR においても、MPF と同様にスケジュール 3B に記載されている限
度内である。
2015/16 の課税年度において、鈴木氏は$180,000 の年収を得た。彼
は雇用主から提案のあった MPF でなく、公認就業退職金制度に供出
した。給与税のプランニングの為に二通りの ROR への供出額$18,000
と$5,400 を以下の通り検討した。
ケース
年収
ROR への供
出額
MPF への供
出額
控除可能額
1
$180,000
$18,000
$9,000
$9,000
2
$180,000
$5,400
$9,000
$5,400
注 1:MPF への供出額は、年収$180,000 x 5% = $9,000 の計算式に
よる。
注 2:ケース 1 において、ROR への実際の供出額$18,000 ともし納税
者が MPF に参加していたら供出すべき金額$9,000 のうちの小さい金
額$9,000 が控除可能額となる。
注 2:ケース 2 において、ROR への実際の供出額$5,400 と、もし納
税者が MPF に参加していたら供出すべき金額$9,000 のうちの小さい
金額$5,400 が控除可能額となる。
MPF と ROR の双方へ供出した場合の控除額
従業員の年収は、$120,000 であった。彼は MPF に$6,000 を供出
した。更に$5,000 を ROR に供出した。この場合、MPF への供出額
の$6,000 が控除可能額である。
59
60