第4回講義資料

世界の言語と日本語
第 4 回 担当:佐々木
語順と句構造
SOVって特殊? 英語もフランス語も中国語も SVO だけど
>学生諸君の意見
句構造に普遍性はあるか?
1
1.1
OV 言語と VO 言語
可能な語順:
(i) SVO (ii) SOV (iii) VSO
(iv) VOS (v) OSV (vi) OVS
最も多いのは、SOV 型。人類の言語の約 45 %。日本語、朝鮮語、アムハラ語、ヒンディー語、
トルコ語、モンゴル語、ケチュア語など。次に多いのが SVO 型。約 35 %。英語、ロマンス諸語、
バンツー諸語、中国語、エストニア語など。3 番目は、VSO 型。約 18 %。アラビア語やケルト語な
ど。O が S より前に来る言語はまれ。VOS 型は、2 %。マラガシ語やトンガ語など。北部ブラジル
で話されているヒシカリャナ語は OVS 型と確認されている。OSV 型はまだ見つかっていない。以
上は、柴谷ほか (1981) より。ただし、この類型は何を主語にするかによっても多少変わってくる。
• 一般に OV 型言語では、修飾部が主要部の前に来る。
• 一般に VO 型言語では、修飾部が主要部の後ろに来る。
日本語とマライ語の対照。
(1) a. 彼
b.
c.
d.
e.
を 打て = pukol sama dia
1
2
3
3
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読 める = dapat bacha
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急いで やってきた = datang těgopoh-gopoh
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一軒の 家 = rumah satu
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1
犬 より 大きい = běsar dari-pada anjing
1
2
3
3
2
1
英語は、OV 型の語順と VO 型の語順がミックスされている。これは、印欧語の古い OV 型統語論
を引きずっているため。
動詞句を見ると OV 型。しかし、名詞句では OV 型と VO 型が混ざっている。
(2) a. a big mountain
b. a mountain bigger than Mt. Fuji
フラス語のように比較的一貫した VO 型に見える言語でも、全ての名詞修飾要素が、名詞の後ろに
来るわけではない。冠詞は前に来る。しかし、冠詞こそが主要部なのだと考えると。。。→ DP 仮説
(3) [DP La [NP fille [PP aux [NP? cheveux [PP de lin]]]]]
1
1.2
X̄ 理論
X-bar theory と VSO 言語
• 名詞と形容詞
• 側置詞と名詞
• 連体修飾節と名詞
• 品詞を超えた修飾・被修飾の語順の一般性
• 句構造による一般化:X-bar 理論
品詞の転換:英語って名詞と動詞が転換したり、前置詞が場合によっては副詞になったりと忙し
いけど、日本語はこういうことはないよね。でも1つぐらいあるんじゃない?
>学生諸君に質問
• X-bar 理論による一般化に問題はないか?
• X-bar 理論が予測する語順は以下のもの
(4) a. [指定部 [補部 主要部]] e.g., SOV
b. [指定部 [主要部 補部]] e.g., SVO
c. [[補部 主要部] 指定部] e.g., OVS
d. [[主要部 補部] 指定部] e.g., VOS
句構造と形態論の並行性:日本語は一貫した左枝分かれ(主要部は右に来る)
(5) 動詞の形態論:
a. 金魚が [えさを 食べ] た
b. [[[食べ] させ] てい] た
c. 彼は [金魚に [えさを 食べ] させ] ていた
(6) 名詞の形態論:[[寒] さ]
英語でも句構造と形態論の並行性は見られるだろうか?
(7) 動詞の形態論:[[walk]-ed]
形容詞の形態論:[[use]-ful]
副詞の形態論:[[recent]-ly]
名詞の形態論:[[John]’s], [[[use]-ful]-ness]
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