PDFファイル - 日本小児内分泌学会

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平成2 0 年3 月 1 日
日本小 児 内分 泌 学会性分化 委 員会
性 分 化 異 常 症 の 管 理 に 関 す る合 意 見 解
Consensus statement on rnanagement ofintersex disorders
‐LWPES/ESPE Consensus Group
2006年,性分化異常症について国際会議が開かれ,統 一した国際命名法や,患者の取 り扱いについてのコ
ンセンサスが発表されました。小児内分泌学会の性分化委員会において,こ のコンセンサス内容の翻訳 と,
日本における簡単な管理指針や留意事項をまとめました。
日本小児内分泌学会性分化委員会
勤,堀 川 玲子,長 谷川奉延,位 田
抄訳 :緒方
1
藤枝 憲二 (理事長)
忍,向 井
徳男,安 達
昌功,有 阪
治,
イ ンターセ ックスを呈 す る患児の誕生では,家族 と多数 の専 門家 の連携 による長期管理戦略の確立が急務 となる。
生殖器奇形は,出 生 4,500例に 1例 の頻度 で発生す ると推定 される。診断,外 科手技,社 会心理学的問題 の理解,お
よび患者擁護 の認識 と受容 には大 きな進展がみ られる。Lawson Wilkins小児内分泌学会 (LWPES)お よび欧州小児
内分泌学会 (ESPE)は ,い まこそ,イ ンターセ ックス疾患の管理 について広範 な視点か ら考 察 し,長 期 アウ トカム
デー タの レビューを実施 し,今 後 の研究へ の提言 をまとめる時期 であると考 えた。その方法 として,当 該分野 の国
際的専門家 50名 か ら選出 した会員によるい くつ かのワーキ ンググループを設 立 した。この グループは,文 献的エ ビ
デ ンスの レビューか ら浮かび上がる一連 の明確 な疑間に前以 って書面で回答 した。その後,参 加者 が集合 した機会
にお いて,合 意資料 (文書)の 枠組みが承認 された。本稿 はその最終版である.
命名 と定義
性分化異常症 の分子遺伝学的原因の同定が進歩す ると共に,倫 理的問題や患者擁護へ の懸念 に対す る認識が高 ま
1).イ ンターセ ックス (間性),仮 性半陰陽,半 陰陽 (雌雄同体),性 転換 な
り,命 名法 の再検討が必要 になってい る
どの用語 は特 に論議 を呼んで い る.こ れ らの用語 は,患 者 にとっては蔑視的な意味が潜む もの と感 じられ',専 門家
い う用語 は,染 色
性分化異常症」(Disorders of Sex Development:DSD)と
や親にとっては紛 らわ しい ものである。「
体,性 腺, または解剖学的性が非定型 である先天的状態 と定義 された もの として提案 されている (備考 2参 照).
専門用語 の変更案 は,表 1に 要約 される通 りである.性 分化 の分子遺伝学的視点 の進歩 を統合する新 たな用語集
があるため,定 義 と診 断票 を適用する際は正確 を期
が必要である.DSD患 者それぞれ のアウ トカムデータにはtll約
う
°
す ことが必須である .ま た,患 者 の懸念 に細やかに配慮 した専 門用語 を使用す ることが適切である。理想的な命
名法 は,新 たな情報 を取 り込めるだ けの柔軟性 を持 ち,な おかつ一貫 した枠組みを維持で きる強固なものであろう.
用語は記述的 で同時 に遺伝学的病因 を反映 し, また,多 様な表現型 スペ ク トラム に対応 しうるものでなければなら
表 1 提唱 された新命名法
新命名法
旧命名法
Intersex
Disorders of sex development(DSD)
Ⅳlale pseudohermaphrodite
46,XY DSD
Undervirilization of an XY male
Undermasculinazation of an XY male
Female pseudohermaphrodite
46,XX DSD
Overvirilization of an XX female
ⅣIasculinazation of an XX female
True hermaphrodite
Ovotesticular DSD
XX male or XX sex reversal
46,XX testidular DSD
46,XY complete gonadal dysgenesis
XY sex reversal
日本小 児科学会雑誌
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表2
性染色体異常に伴う性分化
異常症
幻 D
45,X(Turner症 候群 な ど)
47,XXY(KInefe■er症 候 群
な ど)
C) 45,X/46,XY(混
合性性腺異形
A)
性腺 ( 精巣) 分 化異常
1 完全型性腺異形 成 ( S w y e r 症候群)
2 . 部 分型性腺異形成
3 精巣退縮症候群
ular)DSD
4 卵精巣性 ( o v o t e sc●
成,卵 精巣性 (ovotesicular)
B) ア ン ドログ ン合成 障害 ・作用異常
DSD)
D)
46,XX/46,XY(キ メ ラ ,卵精
巣性 (ovotesucular)DSD)
第 3号
性分化異常症分類 の 1例
46,XX性 分化異常症
(46,XX DSD)
4 6 , X Y 性 分化異常症
(46,XY DSD)
(Sex chrOmOsome DSD)
第 112巻
A)
性87R(卵巣)分 化異常
1.卵 精巣性 (ovotesucular)DSD
2 精巣発 生異常 Tesicular DSD
(SRY+,dupSOX9な
ど)
3 . 性 腺異形成症
B)
ア ン ドロゲ ン過剰
1 . 胎 児性 ( 2 1 水酸化酵素欠損症,
‐
ζ
磐
鰤
慇
贔
″
S t A R 異 常症 な ど)
ン ドロ ゲ ン不 応 症 (CAIS,
2 ア `災
PAIS)
1:乱
3 LH受 容体異常 (Leydig細胞無形
成,低 形成)
4 AMHお
よ び AMH受 容 体 異 常
( M l l e r 管 遺残症)
C)
1lβ
水酸化酵素欠損症 など)
2 . 胎 児胎 盤性 ア ン ドロゲ ン過剰
( アロマ ターゼ欠損症, P O R 異
常症)
3 母体性 ( L u t e o m a , 外
因性 など)
そ の 他 ( 総排 泄 腔 外 反, I F _ 閉鎖
M U R C S な ど)
C) その他 ( 重症尿道下裂, 総 排泄腔外反
な ど)
ない.臨 床医 と科学者 はその使用 を尊重 し,患 者 と家族 に理解で きるもので なければな らない。命名法案 が DSD
分類 にどのよ うに適用で きるか とい う例 を表 2に 示す。
は,あ る人の男性 また
精神的性発達は,伝 統的 に 3つ の成分 に概念化 されている.性 同一性 (gender identity)と
は女性 としての 自己表現 である (人によってはどち らか一方 のみに識別で きないことを付記 してお く).性 的役割
(gender rOle,性
別 の典型的行動)と は,一 般集団におけ る玩具 の好みや身体的攻撃性 などに見 られる性的二型性 を
は,性 愛的関心 の方向 (異性愛,両 性愛,同 性愛)で あ
示す心理学的特徴 で あ る。性的指向 (sexual onentation)と
り,行 動,空 想,関 心 を含む.精 神的性発達 は,ア ン ドロゲ ン曝露,性 染色体 上の遺伝子,脳 構造,な らびに社会
環境や家族動態等 の多数 の 因子に影響 される
。n)と は,割 り振 られた社会的性 (法律 上の性 ,養 育上の性 )へ の不幸感 を意
性別へ の不満 (gender dissausfac●
へ
味す る.性 別 の不満 の原因は, よ く理解 されてい ない.性 別へ の不満 は一般集団 よ り DSD者 に多 くみ られるが,
核型,出 生前 ア ン ドロゲ ン曝露,生 殖器男性化 の程度, または割 り当て られた社会的性男1か ら予測する ことは困難
°9.先 天性副腎過形成女
つ.出 生前 ア ン ドログ ン
である9∼
曝露 は,他の精神的性発達 の側面 と明 らかに関連 して い る
児 の小 児期遊 び行動 は量依存性であ り, より重度の遺伝子変異 と著明な外性器男性化 を有する女児 は,男 児 の玩具
で遊ぶ ことが多 い。.出 生前ア ン ドロゲ ン曝露 も,母性的関心や性的指向等 の他 の心理学的特徴 と関連する。性特異
的行動,性 的指向,お よび性同一性が乖離可能である ことは強調 されるべ きである.し たがって,DSD各 人におけ
sex intereSt)は
る同性愛指向 (養育上の性 に対 して)や 強 い異性的関心 (cross‐
, 誤 った社会的性決定 の指標 とはな
における精神的性発達の多様性 を理解するためには,脳 の性分化お よび行動 にア ン ドログ ンが著明
であ るが複雑 な作用 を及ぼす ことを示す ヒ ト以外の種 の研究 を参照す る必要がある。アウ トカムは,ア ン ドログ ン
。 0.
曝露 の時期,量 ,種 類,受 容体 の利用可能性,お よび社会環境 による修飾 に影響 される
D。
げ っ歯類 の研究データは,性 染色体 上の遺伝子 も脳構造 と行動 に直接影響す る可能性 を示唆す る .し か し,完
全型 アン ドロゲ ン不応症 (CAIS)患 者 の研究か らは,デ ー タは限 られてい るものの,Y染 色体上 の遺伝子が行動 に
0.脳 構造 の性差 は,様 々な種で知 られてお り,一 部 の種 では思春期の始 ま りと時期 を同
果 たす役割 は支持 されない
20.辺
。∼
縁系 と視床下部 は,両 者 とも生殖 に関与 し,特 定 の
じくす ることか らホルモ ン反応性 の関与が推測 される
らない.DSD者
核 にお いて性差 を示すが, これ らの差が いつ現 れるかは明白でない 性差 の解釈 は,細 胞死 とシナプス形成が正常
な成熟 に及ぼす作用,お よび経験が脳 に及ぼす作用により複雑 になる 現時点 にお いて,脳 の構造 は社会的性決定
にとって有用 でない
平成20年 3月 1日
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D S D の 検討と管理
ケアの一般概念
D S D 者 の最適な臨床管理は下記を含むべ きである :
。社会的性 の決定 ( g e n d e r a s d g n m e n t ),は
専 門家による新生児の評価前に行 ってはならない
・評価 と長期管理は, 熟 練 した集学的チームが存在するセンターで行 うこと
。すべての人が社会的性別の割 り当てを受けられること
。患者 と家族 にたいするオープンなコミュニケーションが必須で, 彼 らの意思決定へ の参加が推奨される
。患者 と家族 の懸念が尊重され, 極 秘に扱われること
D S D 患 児を持つ両親 との最初の接触は, こ のような場の第一印象が しばしば持続するため, 重 要である. 強 調す
べ き重点は, D S D 小 児が社会の一員 として十分適応 し, 機 能す る力を有 しているとい うことである。プライバ シー
は尊重されなければならないが, D S D は 恥ずべ きことではない。両親 にたい しては, 初 めは最良の方策が明 らかで
ない場合 もあるが, ヘ ルスケアチームがその状況において考えられる最良の決定に至るように家族 と連携すること
を説明する. ヘ ルスケアチームは, 初期の段階で家族のメンバ ーや友人 と共有すべ き情報が何かとい う点 について,
両親と話 し合 う必要がある。両親には性 の分化 。発達に関す る情報 を伝達す る必要があ り, ウ ェブによる情報 も,
内容や情報の焦点がバ ランスのとれた健全なものであれば有用であろう (http:〃
www.dckkids.ca/childphysiology/
intro.html).既
cpwp/gen■
a 1/genit』
知の情報を提供すると共に,十分な時間と機会を尽 くして継続的な話し合いが
1).
い
なされなければならな
チ ーム医療
DSD小 児 の最適なケ アには,通 常 三 次医療 セ ンター にみ られる経験豊富 な集学的チーム医療が必要である.理 想
的には,チ ーム内に内分泌学,タト
科 または泌尿器科,心 理学 ・精神医学,婦 人科 ,遺 伝学,新 生児学,お よび可 能
であればソーシャルワーク,看護学,医療倫理学 を専 門分野 とす る小 児科医が い ることが望 ましい2の
.中 核 になる構
成は,DSDの 種類,人 的資源,発 達 の前後関係,お よび地域 によって異 なろう。家族のプライマ リケア医 との持続
20.
的な コ ミュニケーシ ョンも必須である
そのよ うなチームは,罹 患新生児 とその家族 の適切 な初期管理にお い て,他 のヘ ルス ケアス タッフを教育す る責
務 を負 う.新 しい DSD患 者 に対 して,チ ームは,診 断,社 会的性 の割 り当て,お よび治療選択肢 に関 し,い かなる
勧告 も行 う前 に,臨 床管理計画 を作成する必要がある。理想的には,家 族 との話 し合 いは適切 な コ ミュニケーショ
ンス キル を有す る専門家 の指導 の下に行われるとよいη.移 行期 におけるケアは,小 児 と成人 の両者 の診療 に経験
豊富な専 門家 を含めて計画すべ きである.サ ポー トグルー プは,DSD患 者 と家族 にケアを提供する際に重要 な役割
を呆たす2'・
臨床的評価
家族歴お よび出生前既往歴,奇 形徴候 を網羅 した理学的所見 ,お よび正常値 と比較 した生殖器構造 の評価が記録
されねばな らない (表 3).DSDを 示唆す る基準 には以下の ものが含 まれる :
。明瞭な外陰部 。生殖器の ambiguity(例,排 泄腔外反症)
。女性型タト陰部 ・生殖器で,陰 核肥大,後 部陰唇癒合, または鼠頸部/陰唇塊 を伴 うもの
。男性型外陰部 ・生殖器 で,両 側停留精巣,小 陰茎,孤 立性の会陰部開口型尿道下裂, または停留精巣 を合併す
る軽度の尿道下裂 を伴 うもの
。CAIS等 の DSD家 族歴
・外 陰部 。生殖器外観 と出生前核型 の不 一致
DSDの 原因の多 くは新生児期 に認識 される.小 児期後期 お よび若年成人期 にお ける症状 としては,そ れ まで認識
されてい なかった外陰部 ・生殖器 の ambiguity,女児 における鼠頸 ヘ ルニ ア,遅 発 または不完全 な思春期,女 児 の男
性化,原 発性無月経,男 児 における乳房発達 ,男 児 における肉眼的で ときに周期的な血尿,が 挙 げ られる。
診断的評価
ヒ トの性分化 の遺伝学的基盤 の理解 は大 きく進歩 したがり,DSD症
例 にお い て特異的な遺伝子診断が下 されて
い るのは約 20%に 過 ぎない.男 性化 を伴 う 46,XX乳 児 の大半 は CAHを 有す る.対 照的に,46,XYを 有す る DSD
日本小児科学会雑誌
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第1 1 2 巻 第 3 号
表 3 Anthropometric measurements of the external genitalia
Sex
M M M M M M M M M
Sex
Population
Age
Stretched penle length
(PL)(cm)
30 wks GA
2.5
Fun term
3504)
Australia
24∼ 36 weeks GA
China
Term
31(03)
lndia
Term
36(04)
N Amerlca
Term
3.4 (03)
Europe
10 years
64 (0.4)
Europe
Adult
(median)
26,27
28
2.9(04)to 83(0.8)
[
29
(0.09)
30
(0.07)
30
(0.08)
Clitoral length
(mm)
F
0 4 1
F
A A
S S K
U U U
F
Adult nulliparous
Reference
(0.1)
133 (1.6)
Full term
Mean testicular volume
(ml)
PL=2.27+(0.16 GA)
Age
Population
(cm)
26
USA
USA
」apan
Ternl to 14 years
Penle、 vidth
Adult
(124)
30
095 to l.20
27,31
16 5 to 18.2
27,31
Clitoral width
Perineal length*
(mm)
(mm)
Reference
(078)
(4.3)
(87)
(1,7)
Values are mean(SD)unless specified.
*Distance from posterior founchette to anterior ancl rnargin
GA,gestatiohal age;PL,penle length
本邦 のデ‐夕は下記参照
Fujieda K,A71atsuura N.1987 Growth and maturation in the male genitalia from birth to adolescence I:change oftes‐
pn 29 1 214-219.
ticular volume.Acta Paediatr」
Fujieda K,Matsuura N.1987 Growth and maturation in the male genitalia Ⅱ
f r:ocmh abnigret ho ft o a d o l e s c e
penile length.Acta Paediatr Jpn 29:220--223.
apanese boys up to the age of15 years.Eur
Matsuo N,Anzo M,Sato S,Ogata T,Kamimaki T Testicular volume in」
」Pedatr 159(11):843-845,2000.
横谷進 ,加藤和夫 ,諏訪セイ三 .未熟児 。新生児 ・乳児 ・幼児における陰茎お よび陰核の大 きさの計測 :先 天性内分泌
疾患 の早期発見にそなえて.ホ ルモ ンと臨床 31(12):1215-1220
303つ
.診 断 ア ル ゴ リズ ム は存在 す る ものの ,症 状 と診 断 の 幅 を考 えれ ば,
児 で確 定診 断 に至 るの は 50%に 過 ぎな い
単一 の 診 断的評価 プ ロ トコー ル を推 奨す る こ とはで きな い.超 音 波画像 撮影等 の一 部検 査 は,オ ペ レー タに依存 す
る.ホ ルモ ン測 定 は,特 異 的 なア ッセイの特徴 や妊娠週 数 お よび暦年齢 の正 常値 と関連付 け て解釈 す る必要 が あ る.
一 部症 例 で は連 続 的 な測 定 が求 め られ る。
新 生 児 の 第一 選択 検査 に は,Xお よび Y特 異 的 プ ロ ー プ を用 い た核 型 分析 (出生前核 型 が判 明 して い る場 合 で
も),画 像 撮 影 (腹腔骨 盤超音波),17‐ヒ ドロ キ シプ ログ ス テ ロ ン,テ ス トス テ ロ ン, ゴナ ドトロ ピ ン,抗 ミュ ラー
管 ホ ルモ ン (本邦 で は一 般 的 で はな い ),血 清 電解 質 の測定 ,尿 検査 ,が 挙 げ られ る.こ れ らの検 査 結 果 は通常 48
ゴ
時 間以 内 に半1明 し(本邦 で は外注 の場合 , よ り時 間 を要 す る),実 用 的診 断 を下す には十分 であ る.意 思決定 ア ル
30∞
).ょ
り詳 しい検査 には,精 巣 と副 腎 のス テ ロ イ ド生合 成 を
リズ ムは,よ り詳 しい検査 の ガイ ドと して利用 で きる
評価 す るための hCGお よび ACTH刺 激検査 ,ガ ス ク ロマ トグ ラフ質量分析 に よる尿 ス テ ロ イ ド解析 ,画 像撮 影 ,性
腺組織 の生 検 が含 まれ る.遺 伝 子解析 の一 部 は臨床 サ ー ビス検査機 関 で行 われ る.し か し,現 時点 にお い て遺伝 子
39.研
究検査 機 関 は,機 能解析 を含 む遺伝 学 的
診 断 は,費 用 ,ア クセスの しやす さ,お よび品質管理 の制約 を受 け る
40.
検査 を提供 す るが ,結 果伝 達 の制約 に直面す る場合 が あ る
新生児における社会的性の決定
最初 に性別が不明確であることは,家 族に とって不安で精神的重圧 となる。精査 と決定 を迅速に行 うことが求め
られる.社 会的性決定に影響す る因子には,診 断,外 陰部 ・生殖器の外観,手 術 の選択肢,生 涯にわたる代償療法
の必要性,妊 手性 の可能性,家 族の意見,お よびときに文化的慣行に関連す る環境が含まれる。乳児期に女性 とし
40と46,XY CAISのすべ て4の
が,女 性 としての自認を示す.エ ビデ ンス
て養育された 46,XX CAH患 者の 90%以 上
か らは,CAHを 有す る著明な男性化 を示す 46,XX乳 児 を女性 として養育するとい う現時点 の勧告 が裏付 けられ
る40.乳児期に女性 として養育されたものの思春期 に男性化をきたす (そして全員が男性性 を割 り当てられる)5α
平成20年 3月 1日
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RD2)欠 損患者 の約 60%は 男性 として生活 している'.診 断が乳児期 に行われる 5αRD2,お よびおそ ら
還元酵素 (5α
HSD3)欠 損患者 で も,大 半 の患者 における男性 としての性 自
く17βヒ ドロキシステロイ ドデ ヒ ドロゲナ=ゼ (17β
HSD3で は不明)に ついて,社 会的
RD2で は証明されてい るが 17β
生殖の可能性 (5α
認 (male gender identity)と
ン ドログ ン生合成欠損,お よび不完全性腺形
性決定 のエ ビデ ンス を提供す る際 に論 じる必要が ある'00 PAIS,ア
成不全 を有す る患者では,男 性 として育 て られた場合で も女性 として育て られた場合で も,患 者 の約 25%が 養育 さ
40.入 手可能なデータによると,小 陰茎症患者 は,男性 または女性 として養育 された患者
れた性 に不満 を感 じている
にお いて割 り当て られた性別へ の満足感 が等 しいこと,手 術 の必要がないこと,お よび男性 として養育 された患者
②
(ovotestic,lar)
の生殖 の可能性 を考慮 して,す べ て男性 として養育 される ことが支持 される .両 性腺 を有す る
。
DSD患 者 における養育上 の性決定 では,性 腺分化 と外陰部 生殖器発達に基 づ き妊手性 について考慮 し,選 択 され
た性 と外陰部 。生殖器が一致す ることまたはそ のよ うにで きる ことを考 えるべ きである.混 合型性腺異形成では,
べ
出生前 ア ン ドログ ン曝露,思 春期 お よび思春期後 の精巣機能,陰 茎発育,お よび性腺位置 が考慮す き因子 である.
い
女性 として養育 された排泄腔外反症患者 は多様 な性同一性 アウ トカムを示すが,65%以 上 は女性 として生活 して
°
るように思われる .
外科的管理
外科医 は,乳 児期か ら成人期 まで,外 科的 な一連 の流れ とその後の成 り行 きの概要 を明 らかにする責任があ る.
科医 しか行 つてはならない。今 日,陰 核 肥大が軽度 の場合,
これ らの手順 は,小 児ケ アとDSDの 手術 に熟練 したタト
4つ
(Prader III,IV,V)に のみ考慮す
親が手術 を選択す る傾向は低 い ように思われる .手 術 は男性化が著 しい場合
べ きで,可 能 であれば共通泌尿生殖洞修復 と共に施行する。陰核手術 によリオルガスム機能や勃起感覚が障害 され
ることがあるため,手 術 の手順 は解剖学 に基づ き勃起機能 と陰核神経分布 を維持する必要があ る.厳 密な外観 の形
成 よ り機能的 アウ トカムが重視 される.体 系的 なエ ビデ ンスはないが,一 般 に,生 後一年 以内に外形的な理由か ら
4D∼
なされる手術 は親の悲嘆 を軽減 し,小 児 と親 の愛着 を高める と感 じられてい る ".
5'.早
今 日,腟 と尿道の早期分離 を却下するに足 りる機能的解 剖学 の確 立に関連す るエ ビデ ンスは不十分 である
5め
期再建 の合理的根拠 には,米 国小児科学会 (AAP)の 性器手術時期 に関するガイ ドライ ン ,早 期乳児期 の組織 に
ことが
対す るエ ス トログ ンの有益 な作用,お よび卵管 を介 した尿路 と腹膜 の接着 による合併症の可能性 を回避する
50.腟 拡大 は思春期前 に
m∼
挙げ られる.乳 児期 の外科的再建 は思春期 に改良 しなければな らな くなると予想 される
い
行 うべ きでない.外 科医 は,尿 生殖洞障害再建 にかかわる数種 の術法 に習熟 してい なければな らな 。腟が欠損あ
るい は低形成である場合,患 者 の精神的な準備 が整 い処置 に充分な協力が得 られれば,思 春期 に腟形成術 を施行す
膚あ るいは腸 を使用する腟形成
る.普 遍的に有効 な単一 の手技があ るわけではない。 自己拡張 (self dilatation),皮
は,そ れぞれ固有 の長所 と短所 をする.
5つ
尿道下裂 を伴 う DSD症 例 では,慎 重 なテス トステ ロン補充 と共に,尿 道索矯正,尿 道再建 などの標準的な外科
ついて, もし社
的修復技法 が適用 される。初期 カウンセ リ ングでは,成 人期 における陰茎 形成 の必要量 と複雑 さに
50。これは社会的性 決定 に影響す ることが
の
会的性決定 の成否が この処置 に依存するな らば,考 慮す る必要がある
つい
ペニ
を与 えてはならない 卵
て患者
に非現実的な期待
(再
ス
に
む
を含
再建
生医療)の 利用
ある。 ヒ ト組織 工学
形嚢 または ミュラー管遺残 などの無症候性 で性 に不一致 な構造物 は,将 来症状が現 れれば外科的切除の適応 とな り
では,海
得 るが,そ の予防的切除が必要である とい うエ ビデ ンスはない.成 人期 にお いて陰茎形成が成功 した男性
面性人工器官 を挿入 して も良いが,問 題点 も少 な くない.
べ
女性 として養育 された CAIS3,ぉょび PAIS患 者 の精巣 は,成 人期 に悪性腫瘍 をきたさないように摘出す きであ
ヘ ニ
る。 エ ス トログ ン補充療法 が利用で きれば,診 断時 の早期精巣切除が選択肢 に入 り,関 連す る ル アの発症,精
いて最 も早期 に
巣 の存在 による精神的問題,お よび悪性腫瘍 リスクを軽減 で きる.親 による選択 の道は,CAISに お
50.男
性 として養育 された MGD患 者 の
報告 された悪性腫瘍が 14歳 であるため,思 春期 まで据 え置 くことがで きる
鋤
索状性腺 は,小 児期早期 に腹腔鏡下 (または開腹術)で 摘 出すべ きである .性 腺異形成 とY染 色体成分 を有する
女性 (両側索状性腺)で は,小 児期早期 に両側性腺切除を行 う。女性 として養育 されたア ン ドログ ン生合成欠損患
者 では,思 春期前 に性腺 を切除すべ きで ある.性 腺異形成患者 の陰嚢内精巣 は悪性腫瘍 をきたす リスクがある.最
た は精細管内生殖細胞腫 と呼 ばれる前癌病変 の徴候 を探 る思春期 の精巣生検が
新 の勧告 では,carcinoma in situま
⑩
推奨 されてい る.陽 性 であれば,局 所低線量照射前 に,精 子バ ンキ ングを行 う選択肢 が考えられ る .
の
DSDの タト
科的管 理では妊手性 の保持 を推進す る選択肢 も考慮す る 症候性卵形嚢患者 では,精 管 の連続性維持
機会 を増大するためには腹腔鏡下 の切除が最良 の方法 である.両 側卵巣精巣を有す る患者 では,機 能性卵巣組織 に
日本小児科学会雑誌
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第 112巻
第 3号
よ り生殖可能な場合がある"ω.卵 巣 と精巣組織 の分離 は技術的 に困難な ことが あ り,可能 である場合 には生後早期
に施行 す る必要があ る
性 ステ ロイ ドホルモン補充
性腺形成不全,性 ステロイ ドホルモ ン生合成障害,お よびア ン ドロゲ ン抵抗性 を有す る患者 では,一 般的に性腺
機能低下症が認め られる。思春期導入開始時期は異 な りうるが ,そ の時期 は,症 状 について話 し合 い,治 療 に対す
る長期的順 守 の基盤 を築 く好機 である。思春期 のホルモ ン導入 は,精 神的性発達成熟 のための心理社会的サポー ト
と共に,正 常な思春期成熟 に即 して行 うことで,二 次性徴,思 春期成長 スパー ト,至 適骨塩密度 を可能 とす る6υ 男
性では,テ ス トス テ ロン製剤 の筋肉内デポ注射 が一般的に利用 されてい るが,経 ロウンデカ ン酸テス トステロン,
60.性
。∼
69.PAIS患
腺
経皮製剤 も利用で きる °
者 では,至適な効果 を得 るために超生理学的用量が必要な場合 もある
機能低下症 の女性では,二 次性徴 と月経 を誘導す るためにエ ス トロゲ ン補充が必要 である。黄体 ホルモ ンは,通 常,
破綻出血後,ま たはエス トログ ン継続投与か ら 1∼2年 以内に追加する。周期的な黄体 ホルモ ン追加補充が子宮 のな
い女性 に有益 とい うエ ビデ ンス はない。
心理社会的管理
専門家 を含む精神保健 ス タッフによ り提供 される DSDの 心理社会的ケアは,前 向 きな適応 を促すために統合的
な管理でなければならない。 この専 門的技量 によって,社 会的性 の決定 。再度 の社会的性 の決定,手 術 の時期,性
ホルモ ン補充に関するチームの決定が促進 される。小児 の医学的状況 に対処す る際 には,不 適応 リスクがみ られる
6つ
家族 を識別す る心理社会的スク リーニ ングが利用で きる .当 該小児が性同一性 の心理 学的評価 を受 け られる程度
に成長 していれば,社 会的性 の再考に関す る議論 にその ような評価 も含めるべ きである.性 同一性 の発達 は 3歳 ま
でに始 まるが①,信 頼性 の高 い評価が出来る最低年齢 は依然不明である.社 会的性変更 の年齢期限が 18か 月 とい う
通説は,注 意 して扱 い,慎 重 に考慮す る必 要があ る.DSD小 児 では,一 般集団 より非定型的性役割 (gender r01e)行
動が よ リー般的であるが, これ を社会的性変更の適応 とみなすべ きではない.性 別違和感 を訴える罹患小児お よび
思春期患者では,総 合的な心理学的評価69ゃ有資格臨床医 と共 に性別 に関す る感 情 を探 る機会が一定の期 間に わ
たって必要 である.性 別変更 の希望が持続す る場合 ,患 者 の望み を支持 し,性 別変更 の管理に熟練 した専門家 を投
入する必要 もあろう。
核型,性 腺 の状態,お よび将来の妊李性 に関する事実の開示 は,共 同で行 う継続的作業 であ り,各 個人に合 わせ
た柔軟 なアプ ローチが要求 される.こ れは,診断の時点か ら両親 を加 えて計画する必要がある。.他 の慢性的医学的
つ
障害や養子 の研究は,開 示が′
い理社会的適応 を促す ことを示 してい る .小 児 のための 医学的教育 や カウンセ リ ン
グは,認 知お よび心理的発達 の変化 に合わせて,高 度な認識 を反復的かつ斬増 して高める過程 となる2.
on),
クオリティ 。オブ ・ライフ (QOL)に は,生 物学的性 の徴候 とは無関係 に,恋 愛,デ ー ト,関 心 (attrac■
親密な関係構築能力,性 的機能,結 婚 と育児 の機会が含 まれる.DSD患 者が最 も頻繁に遭遇する問題 は,性 的嫌悪
と性的興奮能 の欠如で,こ れ らは性欲が低 い と誤解 される ことが多 い知.ヘ ルスケアス タッフは,思春期 の患者に対
し,両親 を交 えず内密 に話 し合 い,患者 が 自分 の抱 く懸念 について寛 いで論 じ合 う力 を高める特別なサポー トグルー
プヘ の参加 を奨励する機会 を提供する必要がある。患者 によっては親密 な関係 を避けてい るため,拒 絶へ の恐れ に
ついて言及 し,パ ー トナー との関係構築 に助言す ることが重要である.焦 点は対人関係に置 くべ きで,性 的機能や
活動 に限定 してはな らない.セ ックス ・セ ラ ピーの紹介 も必要であろう。医学的写真撮影 を含む生殖器の反復検査
は,患 者 にとってひどく恥ず か しい体験 とな り得 る。 医学的写真撮影 は,記 録保持 と教育 のための ものであるが,
で きれば常 に,適 切 な合意 の下で,患 者が何 らかの処置のため麻酔下にあるような場合 に行 うべ きである.医 学的
介入 と否定的な性的経験 は外傷後 ス トレス障害 の症状 を助長す る可能性があ り,有 資格精神衛 生専 門家へ の紹介 を
要する場合 もあるわ.
DSDの アウ トカム
ー般的見解 と して,DSDで は評価の範囲は限定的である.以 下はある種 のエ ビデ ンスが存在する疾患に基づいて
い る。それ らの疾患 は,CAH,CAISお
よび PAIS,ア ン ドロゲ ン生合成障害,性 腺異形成 (完全型 と部分型),お
よび小陰茎である.DSDの 長期アウ トカム には,外 性器お よび内性器の表現型,妊 手性 。性的機能 。社会的な らび
に精神的性発達適応 を含 む身体の健康,精 神 の健康,QOL,社 会参加 を含める必要がある.DSD患 者 では,性 分化
異常症以外 の健康問題 もある。 これ らには,他 の合併奇形 や発達遅延お よび知的障害等 の付随的問題,成 長や発達
571-(151)
平成20年3月 1日
70
の遅延 ,ホ ルモ ンが性欲 や 身体 イメー ジに及 ぼ す望 ま し くない作 用 が含 まれ る
外科的 アウ トカム
4め
404つ
わ。 とはいえ,陰 核形
い くつかの研究は,早 期手術 によ り満足 で きるアウ トカムが得 られる ことを示唆する
7め
成 のアウ トカムは,性 感低下,陰 核組織喪失,審 美的問題 に関連す る問題の存在 を明 らか としてい る .腟 形成手技
は,腟 口に澱痕 を形成する可能性 を手み,信 頼性 の高 い性的機能が得 られるまでに腟入 り口に何度 も修復 を要する
ことが ある.腟 造設術 は新生物の発生 リスクを手 んでい る79.腟 形成に よるリスクは,尿 道 と腟の合流点 の位置 に
30.cAIS女 性患者 で
よって異 なる。長期 アウ トカムの解析 は,タト
科手技 と診断 カテ ゴ リーの混在で複雑化 している
腟延長術 を要す る女性 はほとん どい ない".
陰茎 を有す るが男在化が不足 している男性 のアウ トカムは,尿 道下裂 の重症度 と勃起組織 の量によって決定 され
る.女 性化 生殖器形成 では,男 性化 生殖器形成 と異 な り,受 容 で きるアウ トカムの達成 に要す る手術回数が少な く
40.社
て済 み,泌 尿器科学的困難 に至 ることも少 ない
会的男性患者 と同様,社 会的女性患者 における性 的機能 と
QOLに 関す る長期データには大幅な相違がみ られる。早期手術 (生後 12か 月未満)と 後期手術 (思春期 お よび成人
期)の 有効性,あ るい は様 々な手技 の有効性 に関する対照臨床試験 はない.
性腺腫瘍 の リス ク
80.腫 リスクが最大 で
め∼
瘍
公表 されてい る報告の解釈 は,不 明確 な用語 と正常細胞 の成熟遅延 のため 困難 である
の
よび
お
を伴
のは
腹腔内性腺
う PAIS患 者 で,
性腺異形成患者
性
あった
,TSPY(tesus_specinc prOtein Y encoded)陽
8080.表
80ぉ
4に 診断別 の腫瘍発生 リスクの要約 と管
ょび cAIS患 者 であった
最小 (<5%)で あったのは,卵 巣精巣
理 のための勧告 を示す.
文化的および社会的要因
DSDは 不適切 に扱 われる ことがある.5α還元酵素欠損患者 の性的役割 には,ホ ルモ ンの作用 だ けでな く社会的 ・
文化的要因が影響す るよ うに思われる。性的役割 の変化が生 じる速度は社会によって異な り,社 会的要因 も性的役
割変化 の重要な修飾因子 と推測 される。
ある社会では女性 の不妊 は結婚 の妨げ とな り,雇用見通 しにも影響 し,経 済的依存性 も招 く.宗 教や哲学的な考 え
も,医学的問題 を伴 う乳児 の誕生に親が どの ように反応す るかに影響す ると思われる.先天性奇形 または遺伝性疾患
8ゆ
に関連する運命論お よび罪悪感 も影響する一方,貧 困 と非識字 (文盲)は保健医療へ のアクセスを しに くくする .
今後 の研究
DSDの 正確 な診断を確立する ことは,生 涯にお よぶ影響 を伴 う慢性疾患 と同様,重 要 である。分子遺伝学的研究
では相当な進展がみ られ,DSDへ の関与 が知 られてい る遺伝子 は表 5と 6に 要約 した通 りである.組 織特異的動物
ノックアウ トモ デル,比較ゲ ノムハ イブリダイゼーシ ョン,お よびマ ウス泌尿生殖器隆起 のマイクロア レイスクリー
表 4 胚細胞腫瘍 の発症 リスク
推奨 され る治療
高 リス ク群
15∼ 35
性線摘出
性線摘出
性線摘出
性線摘出
中間 リス ク群
ターナー症 候群 (+Y)
12
17beta―
HSD
28
性線摘 出
モ ニ ター
生検 と放射線 ?
生検 と放射線 ?
性線異形成 (十 Y),陰 嚢 内
PAIS陰 嚢 内
CAIS
Ovotestis DSD
ターナー症候群 (一 Y)
無 リス ク群 ?
r eductase欠損症
5alpha―
ライデ イ ッヒ細胞低形成
思者数
5 6 7
低 リスク群
不明
不明
研 究数
生検 と ?
精巣成分 除去 ?
なし
未解明
未解明
0 4 5 5
悪性化 リスク
性線異形成 (+Y),腹 腔内
PAIS陰 嚢タト
Frader症 候群
Dennお‐
Drash症 候群 (+Y)
>
疾患
リス ク
3
P
572-(152)
日本小児科学会雑誌
性分化異常症 に関わる遺伝子異常 :46,XY(改 変)
表5
遺伝子
座位
第112巻 第 3号
遺伝形式
性腺
M●
Ier管
疾患 。その他 の徴候
外 陰部
46,XY DSD
性 腺 形 成 異 常 :単 一 遺伝 子 異 常
WTl
llp13 AD
SFl(NR5Al)9p33
SRY
AD/AR
Ypll.3 Y
SOX9
17q24-25 AD
精 巣 異形 成
+/―
F/A
精巣異形成
+/―
F/A
精 巣 異 形 成/ +/―
ovotestis
F/A
精 巣 異 形 成/ + / 一
ovotestis
F/A
Wims腫
瘍,腎 疾 患,性 腺 腫 瘍 (WAGR,
Denys―Drash,Frasier症候 群 )
重 症 型 で は原 発 性 副 腎不 全
CampOmelic dysplasia
DHH
12q13.l AR
精巣異形成
ATRX
Xq13 3 X
精巣異形成
F
―
F/A/M
神経 障害
αサ ラセ ミア, 発 達 遅 滞
ARX
Xp22.13 x
精巣異形成
一
A
か ん, 体 温 調 節 障 害
頭 蓋 骨 異 常 , て スノ
+
性腺形成異常 : 染 色体異常 に伴 う候補遺伝子異常
モノソミー 精巣異形成 + / ―
DMRT1
9p24 3
DAXl(NROBl)Xp21.3 dupXp21
精巣異形成/ + / ―
卵巣
WNT4
1p35 duplp35
+ A
精巣異形成
ホルモ ン合成 。作用 の障害
LHGCR
2p21 AR
DHCR7
1lq12‐
13 AR
精巣
精巣
STAR
8pl1 2 AR
CYPllAl
15q23-24 AR
精巣
精巣
HSD3B2
CYP17
POR
精巣
精巣
精巣
1p13 1 AR
10q24.3 AR
7ql1 2 AR
H S D 1 7 3β
9q22
AR
SRD5A2
AMH
2p23 AR
19p13.3‐
AMHR2
13.2
12q13 AR
AR
AR
― F/A/矮
―
様々
― F
座位
一 F/A
― A/矮
性腺
ア ン ドロゲ ン過剰
HSD3B2
1p13
卵巣
CYP19
15q21 AR
Glucocorucoid_R 5q31
AR
思春期の部分男性化
小 陰茎
思春期 の部分男性化
色体伴性, Y : Y 染
Miner管
精巣/ o v o t e s u s
索なし
AR
先天性副腎過形成症
先天性副腎過形成症
複 合 型 ス テ ロ イ ド合 成 酵 素 機 能低 下 症,
Antley‐
B ixler症候群
色体伴性
性分化異常症 に関わる遺伝子異常 :46,XX(改 変)
遺伝形式
6p21-23 AR
8q21-23 AR
7ql1 2 AR
小 陰茎
正常男性
ler管 遺残症候群,両 側停留精巣
M●
正常男性
一 F/A/矮 小 陰茎/完 全型― 部分型
正常男性
+
+
46,XX DSD
性腺 ( 卵巣) 形 成異常
SRY
Ypl1 3
転座
SOX9
17q24 dup17q24検
CYP21A2
CYPllB1
POR
先天性 リポイ ド副腎過形成症
先天性副腎過形成症
一 M/A
遺伝形式 A R : 常 染色体劣勢性, A D : 常 染色体優性, X : X 染
外陰部 M : 男 性型 A : 中 間型 F : 女 性型
遺伝子
小 陰茎 Leydig細 胞低 (無)形 成
Smith―
Leml卜Opttz症候群
― F/A
― A
― F/A/矮
精巣
表6
発達遅滞
発達遅滞
精巣
精巣
精巣
精巣
Xqll-12 x
F/A
F/A
―
一
卵巣
卵巣
+
+
+
A
A
卵巣
+
A
卵巣
卵巣
+
A
疾患 ・その他 の徴候
外 陰部
M/A
M/A
陰核肥大 先天性 副腎過形成症
先天性 副腎過形成症
先天性副腎過形成症
複合型 ス テ ロ イ ド合成酵素機能低下症,
Andey―B破br症 候群
十
遺伝形式 AR:常 染色体劣勢性,AD:常 染色体優性,X:X染
外陰部 M:男 性型 A:中 間型 F:女 性型
A
先天性副腎過形成症
先天性 副腎過形成症
色体伴性,Y:Y染
色体伴性
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平成20年 3月 1日
T
46,XX
( T ↑)
凸
T↓
性染色体異常
T∼
異 形 成 (不 完 全 型 )
XY.deK9)(p24)
XY,de(10)(q25-26)
WTl
,de(11)(p13)∼
WNT4
,dup(1)(p35)∼
T/DHTLヒの上昇
(hCG test)
真性 半 陰 陽
SOX9
17)(q24)∼
代謝異常
3β HSD欠損症
P450o21欠
損症
P450oll欠損症
性腺異形成 ( 不完全型) / 混 合性性腺異形成
Y(+)Turner
(DSS/DAXl)
46,XY,dup(X)(p213)∼
真性半陰陽
XX male
ステロイドホルモン
代謝異常
StAR欠損症
3β HSD欠損症
P450o17欠
損症
1フ
β HSD欠損症
POR異 常症
45,X/46,XY
真性半陰陽
46,XX/46,XY
46,X,de(X)(p22)
異 形 成 (不 完 全 型 )
‐
S F l 異常症 : W T l 異常症
真性半陰陽
Campome‖ o dysplasia
ライデイツヒ細 胞 低 形 成
Smth Leml卜 Optz症 1嘆群
POR異 常 症 (AnJey―B収膊r症候 群 )
図 1 診断フローチヤー ト
89,こ の
作業 に国際的に協力 して取 り組む機
ンの使用 は,DSDを 引 き起 こす新 しい遺伝子 の 同定 に有用 と思われる
運 を維持する ことが不可欠である.
DSDに おける性 同一性 の決定因子 については,依 然 として解明すべ きことが多 い。今後 の研究 では,考 察すべ き
決定因子が複数存在す ること,性 同一性が成人期 に向かって変化 しうる ことを認識 しなが ら,代 表的 なサ ンプ リン
グによ り性 同一性 の慎重な評価 を行 う必要がある。心理学的管理 の観点 では,時 期 と内容 に関す る情報管理の有効
性 を評価する研究が求 め られる.DSDに おける外科処置 のパ ター ンは,手 術 の時期 と用 い られる手技 に関 して変化
しつつ ある。常 に進展する臨床行為 により課せ られる困難を認識 しなが ら,全 体的 に早期手術 と後期手術 の効果 を
比較評価す る ことは必須である。
長期 アウ トカムに関する情報が著 しく不足 してい ることについては明白な合意が達成 された.今 後 の研究 では,
6D69,すべ ての慢性症状 に関連す るガイ ドライ ンを考慮 した適切 な手段 を用 い
アウ トカム を標準的な方法で評価 し
en/).これらは本来前方視的で選択バ イアスを回避す るよう
www.who.int/classiicadons/icプ
る必要がある(http:〃
にデザイ ンされていることが望ましい.い くつかの国はすでにDSD症 例登録制度を有 しているが,明確 に定義され
た多数の症例で実施される前方視的な多施設共同研究に基づ く資料 の蓄積 による利益が加わることになろう.こ れ
に関連 して,DSDの 家族のケアを提供す る専門家が確実に責任 を果たす ことができるように適切な訓練を受ける教
育 プログラムがなければならない。
謝辞 LWPESお
よび Organon各 社 か らの コンセ ンサ
よび ESPEは ,Pizer Endocrine Care,Novo Nordisk,Ferring,お
oanne Rogol,Paulne Bertrand,
ス会議 のための無制 限 の教育助成金支援 に心 よ り謝意 を表す。会議準備 における Alan RogoL」
Pam Stockham各 氏 の ご協力 に も心 よ り御礼 申 し上 げ る
備考 :
1.日 本か らは藤枝憲二理事長が, この コンセンサス ミーテイングに出席 した
2.性 分化 “
異常症"と い う用語 の妥当性 は,今 後検討が必要であ り,性 分化疾患 とすべ きか もしれない
異常症"が 広 く使われているため, ここではこの用語 を使用することとした。
性分化 “
しか し,現 在,
3.心 理社会的管理 で言及 されているシステムや専門家 は,本 邦 では見 られない ものであ り,そ の整備が望 まれる。
4.現 在,本 邦における遺伝子診断 システムを整備中である
日本小児科学会雑誌
574-(154)
第 112巻
第 3号
CONSENSUS GROUP
The following participants contributed to the production of the Consensus document i John Achermann(London,
UK), Faisal Ahmed(Glasgow,UK), Laurence Baskin(San Francisco,USA), Sheri Berenbaum(University Park,
USA), SylvanO Bertelloni(Pisa,Italy), John BrOck(Nashville,USA), Polly Carmichael(London,UK), Cheryl
Chase(Rohnert Park,USA), Peggy COhen‐
Kettenis(Amsterdam,Netherlands), Felix Conte(San Francisco,
USA), Patricia DonOhOuc(Iowa city,USA), Chris Driver(Aberdeen,UK), Stenvert DrOp(Rotterdam,Nether‐
lands), Erica Eugster(Indianap01is,USA), Kenii Fujieda(Asahikawa,」
apan), Jay Giedd(Bёthesda,USA), Rich―
ard Green(London,UK), NIelvin Grumbach(San Francisco,USA), Vincent Harley(Victoria,Australia),
ⅣIelissa
Hines(London,UK),01af Hiort(Lubeck,Germany),Ieuan Hughes(Cambridge,UK),Peter Lee(Hershey,USA),
Bahlburg
Leendert Loolenga(Rotterdam,Netherlands), Berehice
ⅣIendonca(SaO Paulo,Brazil), Heino A/1eyer‐
(NewYork,USA), Claude Migeon(Baltimore,USA), YvesⅣlorel(Lyon,France), Pierreル
louriquand(Lyon,
France),Anna Nordenstrom(Stockholm,Sweden),Phillip Ransley(London,UK),Robert Rapaport(New York,
U S A ) , ヽV i l l i a m R e i n e r ( O k l a h o m a c i t y , U S A ) , H e r t hAap pReilcth(tHearm‐
burg,Germany),Richard Rink(In―
dianapolis,USA),Emilie Rissman(Charlottesville,USA),Paul Saenger(New York,USA),David Sandb
falo,USA),Justine schober(Erie,USA),Norman Spack(Boston,usA),Barbara Thomas(Rottenburgam N
I elbourne,Austra‐
Germany), Ute Thyen(Lubeck,Germany), Eric Vilain(Los Angeles,USA), Garry Warne(Ⅳ
lia), Amy Wisniewski(Des Moines,USA),」 ean WIson(Dallas,USA), Christopher Woodhouse(London,UK),
Kenneth Zucker(TorontO,Canada).
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付録 1 性分化異常症ケアチ ームによる管理体制試案
1.性 分化異常症ケアチー ム結成 の 目的
性分化異常症 における社会的性 (法律上の性,養 育上 の性)の 選択,そ の後 の成長 ・成熟 のフォロー,親 子 の心理 的
支援等,生 直後 よ り長期かつ多岐に亘るサポー トを提供することを目的 とする
2.構 成部門 ・診療科
小児内分泌科,小 児泌尿器科,小 児精神科,周 産期部門 (産婦人科,新 生児科),遺 伝科 を含めて構成 されることが
望 ましい。性分化異常症患者 にたいする最初 の コンサルテーションは,小 児内分泌医師になされるべ きである 看護
部門, ソシアルワーカー も家族 のサポー トのために参加す ることが望 まれる。
3.性 別選択 の流れ
● 日齢 0(ま たは入院当 日)
性分化異常症 (と思われる)児 の出生 ・搬送
小児内分泌科 (あるいは他 のメンバー)か らチーム全員に連絡
ケアチーム第 1回 会合
診察 :特 に外性器所見
画像診断 :超音波,MRIに よる性腺 ・内性器 の確認
採血 :電 解質,血 糖,テ ス トステロン (新生児期 のテス トステロンは RIAで は必ず しも真の値 をとらず, しば しば
偽高値 を示す ことに注意), ゴナ ドトロピン,染 色体 を検査する.症 状 によりACTH。 170HP・ corusol,sRY検 査,
その他 を追加 す る
外科 ・副腎疾患 の場合 には治療 を開始する
親へ の心理 的介入 を開始す る (社会的性が選択 されるまで,出 生の秘匿 とぃう方法 もある)
● 日齢 5∼ 7(あ るいは入 院 5∼ 7日 後)
ケアチー ム第 2回 会合
染色体 ・ホルモ ンデータ等 の結果確認 :この時点 で十分なデータが揃 っていれば,社 会的性の選択 を行 う 検討が不
十分であれば,検 査項 目を話 し合 い, この時点では社会的性 の選択は保留する
● 日齢 10∼ 12(あ るいは入院 10∼ 12日 後)
ケアチーム第 3回 会合
社会的性選択保留例について話 し合 う.判 定不能例 については更に検討 を重ねる
4 性分化異常症のフォローア ップ体制
性分化異常症では,本 人に対 しては乳幼児期におけるタト
科的治療,小 児期 における成 長発達,思 春期における性成熟,
生殖年齢 における生殖能の評価 と治療,そ して,幼 少時 よ りの心理的サポー トが必要である 親に対 して も出生時か
らの心理的サポー トの継続が必要 と考えられる
注 1 社会的性の選択は医学的かつ総合的評価の下に行 う.
注 2 選択 した性は,選 択理由 とともに親に担当医 (性分化異常ケアチームの医師)か ら 「
提案」の形で伝 え,決 定は
親に委ねるもの とする
注 3 社会的性 の決定は,出 生届の期限の 14日以 内を目標 とす るが,拙 速 に判定 し後に性変更等の混乱 を来 さない よう,
慎重に行 う このため,場 合 によっては性別保留 の まま出生届 を出す こともやむを得 ない
注 4 社会的性決定は,最 大 1か 月以内には完了するようにする
注 5 これ らの検討 の過程 は文書 にて保存する
注 6 必要 に応 じて遺伝子診断を行 う.
注 7 患者会については,疾 患の多様 性か ら難 しい点があるが, 自然発生的に生 まれたものについては, これを支援する
日本小児科学会雑誌
578-(158)
第112巻 第 3号
付録 2 新生児テス トステロン値 のビッ トフォール
新生児期 では,テ ス トステ ロンを含 む種 々のホルモ ン値が胎児副
腎由来のステ ロイ ド産物 の干渉 を受け,正 確 に測定で きないこと
がある 特 に,交 叉反応 のために偽高値 を示す ことが あ り注意 を
要す る。以下はその代表例である.
例 :ECLIA法
の比較
(抽出操作 な し)と LCMSMS法
日齢
ECLIA法
LCMSMS法
(抽出操作あ り)
1
(ng/mL)
(ng/mL)
0
0
室谷浩二ほか。新生児血中テス トステロン測定のビッ トフォール.
第 40回小児内分泌学会発表
付録 3 性同一性障害 の頻度 (12歳 以上)
疾患
核型
完全型ア ン ドロゲ ン受容体不応症
46,XY
5αレダクターゼ欠損症
46,XY
―
17β
HSD-3欠損症
46,XY
女性
男性
ミクロペ ニス
46,XY
女性
男性
陰茎切 断
46,XY
女性
男性
無陰茎
46,XY
女性
男性
総排泄腔外反症
46.XY
膀肌外反症
46,XY
217
4.6%
14
21.4%
1090/0
14.30/o
0
0%
%
46,XY
頻度
%
不完全型 ア ン ドロゲ ン受容体不応症
性 同一性障
害患者数
%
46,XX
0
副腎皮質過形成
総患者数
8
性 性 性 性 性 性 性 性
女 男 女 男 女 男 女 男
養育上
の性
%
%
0
%
2
6
0
3
50%
%
6
%
0
%
%
性 性 性 性
女 男 女 男
3
161
66.7%
12%
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