サッカーにおけるボール奪取後の攻撃の分類方法の

スポーツ科学研究, 12, 42-55, 2015 年
サッカーにおけるボール奪取後の攻撃の分類方法の提案と検討
-2012 年 UEFA ヨーロッパ選手権における速攻とポゼッション攻撃に注目してPresentation and examination of the classification method about the attack
after taking the ball in soccer
- Focusing on Fast Break and Possession Play in UEFA EURO 2012 田村達也 1) ,堀野博幸 2) ,土屋純
2)
1)
早稲田大学スポーツ科学研究科
2)
早稲田大学スポーツ科学学術院
Tatsuya Tamura 1) ,Hiroyuki Horino 2) ,Jun Tsuchiya 2)
1)
Graduate school of Sport Sciences, Waseda University
2)
Faculty of Sport Sciences, Waseda University
キーワード:攻撃,速攻,記述分析法,サッカー,パフォーマンス分析
Key words: attack, fast break, notational analysis, soccer, performance analysis
抄 録
現 代サッカーにおける攻 撃は、「速 攻」と「ポゼッション攻 撃」に大 別することができる。「速 攻」あるいは
「ポゼッション攻 撃 」についての定 義 は数 多 く存 在 するが、定 性 的 観 点 によるものがほとんどである。そこ
で、本研究では 2012 年 UEFA ヨーロッパ選手権を対象に、ボール奪取後の攻撃を、「速攻」と「ポゼッ
ション攻撃」に分類する定量的指標を提案することを目的とした。まず、ボール奪取後シュートに至ったプ
レーを抽 出 し、ボール奪 取 位 置 、ボール奪 取 時 からシュートをした時 までの時 間(プレー時 間)を視 察に
より調べた。加えて、それらのプレーが「速攻」あるいは「ポゼッション攻撃」であるかを定性的に検討した。
その結果、「速攻」ではボール奪取位置間(攻撃方向前方から 3 分割)において、プレー時間に有意差
が認められた。このようにボール奪取位置を 3 エリアに分割することで、より精度の高い定量的指標を得
ることが可能であることが示唆できた。また、各エリアでボール奪取した場合に非常に高い割合で「速攻」
と判 断 されるプレーの目 安 時 間 も明 らかになった。したがって、ボール奪 取 後 の攻 撃 を分 類 する定 量 的
指標になり得るものと考察された。
スポーツ科 学 研 究, 12, 48-55, 2015年, 受 付日:2014年10月29日, 受 理日:2015年5月10日
連 絡 先 : 田 村 達 也 〒202-0021 東 京 都 西 東 京 市 東 伏 見 2-7-5 早 稲 田 大 学 体 育 教 室 棟 205
Tel & Fax: 042-461-1302,E-mail: [email protected]
Yamanaka et al., 1993)。
Ⅰ.序論
サッカーのゲームパフォーマンスに関 する研 究
Reep & Benjamin (1968)は「得点の 80%はパス
は数多く、4 年に一度開催される FIFA ワールドカ
3 本以内の攻撃によって生まれる」と、また
ップ(以下 WC と略記)あるいは UEFA ヨーロッパ
Hughes (1990)は「得点の 87%はパス 5 本以内の
選手権(以下 EURO と略記)に代表される世界の
攻 撃 によって生 まれる」と結 論 付 けた。さらに、
強豪国が競い合う大会が分析対象となることが多
Acar et al.(2009)は、2006 年 WC を分析した結
い(Acar et al., 2009; Hughes & Franks, 2005;
果、「得点の 61%は 10 秒以内の攻撃であった」と
Reep & Benjamin, 1968; Saito et al., 2013;
報告している。一方、Hughes & Franks (2005)は
48
スポーツ科学研究, 12, 42-55, 2015 年
「パス本 数 が多 い方 が一 回 の攻 撃 における得 点
ゼッション攻 撃」に分 類 する定 量 的 指 標 を提 案 す
率 は 上 が る 」 と 主 張 し た 。 さ ら に 、 Jones et al.
ることを目的とした。
(2004)は「成 功したチームはそうでないチームと比
較 して、より長 い時 間 ボールを保 持 している」と結
Ⅱ.方法
論付け、Hughes & Churchill (2004)も同様の結果
1. 分析対象
2012 年 EURO における全 31 試合のうち、オー
を報告している。
プンプレー中 に、相 手 チームからボールを奪 取 し
したがって、現代サッカーにおける攻撃は「パス
シュートに至った 581 プレーを対象とした。
本 数 が少 なく、長 い時 間 ボールを保 持 せず得 点
あるいはシュートに至 る攻 撃 (速 攻 )」と「パス本 数
本 研 究 では樋 口 ら(2012)の研 究 を参 考 に、ボ
が多 く、長 い時 間 ボールを保 持 し得 点 あるいはシ
ール奪 取 の瞬 間 を攻 撃 の開 始 とし、シュートをし
ュートに至 る攻 撃 (ポゼッション攻 撃 ) 」の有 効 性
た瞬 間 を攻 撃 の終 了 とした。ただし、攻 撃 の途 中
がそれぞれ報告されている。しかしながら、先行研
に一 度 相 手 プレーヤーにボールを奪われる、ある
究 と同 様 、どちらが有 効 な攻 撃 であるかを判 断 す
いはルーズボールにな り 再 び 奪 い 返 し て 攻 撃 を
ることは困難である。2010 年 WC では優勝したス
再開した場合には、一度攻撃が終了した後、また
ペインに代 表 されるように、ポゼッション主 体 の攻
次の攻撃が開始されると判断した。
撃が注目を集めた。一方で、2014 年 WC では「意
相 手 のクリアなどのリバウンドボールをワンタッ
図 的 なボール奪 取 から時 間 をかけずに、そのまま
チでシュートしたプレーは一 つ前 のプレーと同 一
の勢いで相手の隙を突 き、ゴールを奪いに行く攻
のプレーであると判 断 し、分 析 対 象 から除 外 した。
撃 が特 徴 的 であった」と報 告 されており、速 攻 は
さらに、セットプレーにより攻 撃 が開 始 し、相 手 に
有 効 な攻 撃 手 段 である(日 本 サッカー協 会(以 下
ボールを奪 われた直 後 再 度 ボールを奪 い返 した
JFA と略記),2015))。
場 合 には、相 手 の守 備 陣 形 が整 っており、「相 手
多くの論文、専門書あるいは JFA 発行のテクニ
の守備が整う前の攻撃を『速攻』とした」JFA の定
カルレポートにおいて、「速攻(ファストブレイクある
義をもとに分析対象から除外した(JFA, 2010)。ま
いはダイレクトプレー)」、「ポゼッション攻 撃 」は定
た、TV 映像から映像を抽出するため、全てのプレ
義されている(JFA, 2012)。例えば、JFA テクニカ
ーが記 録 できるものではない。そのため、攻 撃 の
ルレポート(JFA, 2010)には「ファストブレイクとは
開 始 から攻 撃 の終 了 までの全 過 程 が記 録 されて
相 手 がブロックを形 成 する前 に攻めきる」と述べら
いないプレーは分析対象から除外した。
れている。また、Tenga et al. (2010)は「速攻はオ
2.調査方法
ープンプレー中 にボールを奪 取 し、攻 撃 の開 始
から終了まで、相手の守備が整っていない状態を
図 1 のように、コンピュータにデジタル画像とし
利 用 し 行 う 」 と 述 べ て い る 。 ま た 、 湯 浅 ( 1995 ) は
てのピッチの縮図(1050×680 ピクセル)を描画し、
「速攻では、『速さ』がもっとも重要な要素となる」と
記述分析法(樋口ら, 2012; Hughes & Churchill,
述べているが、「速攻」を規定するボール奪取から
2004; 井上ら, 1997; 吉村ら; 2002)を用いて、ボ
シュートに至 るまでの定 量 的 時 間 については明 ら
ールの位置をプロットした。
具体的には、芝の目やフィールドに引かれてい
かにしていない。
このように、ボール奪取後の攻撃を定量的に分
る線を手がかりにして、「ボール奪取位置」から「シ
類する指標を提案した研究は見当たらない。加え
ュートが放 たれた位 置 」までのパス・ドリブルの過
て、この定 量 的 指 標 (時 間 )により、「速 攻 」という
程 を時 間 軸 に合 わせてプロットした。プロット単 位
戦 術 の達 成 度 合 いを具 体 的 に指 導 者 や選 手 に
は 1/30 秒単位で、誤差は 1 ピクセルあたり 10cm
フィードバックできることに意義がある。
とした。各 々のプレーについてボール奪 取 位 置 、
ボール奪 取 時 からシュートをした時 までの時 間 を
そこで、本研究では 2012 年 UEFA EURO を対
視察により調べた。
象に、ボール奪取後の攻撃を「速攻」あるいは「ポ
49
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攻撃方向
(0.0)
(105.0)
(0.68)
図 1 デジタル画 像 としての二 次 元 座 標 平 面
生以上)を 3 年以上指導した経験のある 3 名で総
3.分析方法
合的に判断し分類した。
全 対象 プレーについて、「相手の守 備が整う前
の攻撃を『速 攻』とした」JFA の定 義をもとに、「速
次 に、各 々のプレーについてボール奪 取 位 置
攻 」あるいは「ポゼッション攻 撃 (『速 攻 』以 外 のプ
を瀧井(1995)の研究を参考に、図 2 に示すフィ
レー)」であるかを筆 者 が定 性 的 に 判 断 した。判
ールドを 3 分割したエリアに分類した。攻撃方向
断 が困 難 なプレーに関 しては、財 団 法 人 日 本 サ
の前 方 からアタッキングサード、ミドルサード、ディ
ッカー協会公認コーチライセンス(S 級 1 名、B 級
フェンディングサードと設定した(JFA,2012)。
1 名、C 級 1 名)を保持し、かつⅠ種チーム(大学
アタッキングサード
(Attacking 1/3)
ミドルサード
攻
撃
方
向
(Middle 1/3)
ディフェンディングサード
(Defending 1/3)
図 2 サード・オブ・ザ・ピッチ
さらに、「速 攻 」と判 断 されたプレー時 間 (ボー
較した。
ル奪 取 時 からシュートをした時 までの時 間 )につ
いて、ボール奪取 位 置 の 3 水 準(アタッキングサ
4.統計処理
ード、ミドルサード、ディフェンディングサード)で比
各 ボール奪 取 位 置 において「速 攻 」と判 断 され
50
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た。
たプレー時 間 の比 較 には、一 元 配 置 分 散 分 析 を
用 いた。有 意 差 が認 められた場 合 には、HSD 法
また、表 1 には各 3 エリアの「速攻」と判断され
による 多 重 比 較 を 行 っ た。 統 計 処 理 には、SPSS
たプレー時間について、平 均 時 間 と標 準 偏 差(グ
22.0J for Windows を使用した。有意水準は 5%未
ラフの散 布 度 を表 す指 標 )を示 した。プレーの平
満とした。
均時間においては、ボール奪取位置 がアタッキン
グサードの場合が最も短く、ミドルサード、ディフェ
ンディングサードの順 に長 くなっていた。標 準 偏
Ⅲ.結果
図 3 に全対象プレー中で、「速攻」と判断され
差 においては、アタッキングサードの場 合 が最 も
たプレー時 間 のヒストグラムを示 した。同 様 に、図
値 が小 さく、ディフェンディングサード、ミドルサー
4、5、6 に各 3 エリアにおいて「速攻」と判断された
ドの順 に大 きくなっていた。さらに、全 エリアを対
プレー時間のヒストグラムを示した。図 4 より、ボー
象にした場合と比較して、全 3 エリアとも小さい値
ル奪 取 位 置 がディフェンディングサードの場 合 、
を示した。
「速攻」と判断されたプレー時間は 12.0~12.9 秒
図 7 には 3 エリアごとの「速攻」と判断されたプ
の階級の度数が最も多かった。図 5、6 より、ミドル
レー時 間 を示 した。その結 果 、有 意 差 (F(2, 200)
サードの場合には 7.0~7.9 秒と 8.0~8.9 秒の階
= 222.02、p<.01)が認められた。HSD 法による多
級 の度 数 、アタッキングサードの場 合 には 1.0~
重比較の結果、3 エリア間全てに対し有意差が認
1.9 秒と 2.0~2.9 秒の階級の度数が最も多かっ
められた(AT < MT.DT , MT < DT)。
表 1 エリア別 の「速 攻」と判 断 されたプレーの平 均 時 間 と標 準 偏 差
エリア
(回 )
プレー数
平均時間
標準偏差
全 エリア
203
7.1
4.47
アタッキングサード(AT)
74
2.9
1.78
ミドルサード(MT)
76
7.6
3.28
ディフェンディングサード(DT)
53
12.4
2.01
30
25
20
15
ポゼッション攻撃
速攻
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
図 3 「速 攻」と「ポゼッション攻 撃 」の割 合 のヒストグラム(全 エリア)
51
70 (s)
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(回 )
18
16
14
12
10
ポゼッション攻撃
速攻
8
6
4
2
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
(s)
図 4 「速 攻」と「ポゼッション攻 撃 」の割 合 のヒストグラム(ディフェンディングサード)
18
16
14
12
10
ポゼッション攻撃
速攻
8
6
4
2
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70 (s)
図 5 「速 攻」と「ポゼッション攻 撃 」の割 合 のヒストグラム(ミドルサード)
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25
20
15
ポゼッション攻撃
速攻
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
(s)
図 6 「速 攻 」と「ポゼッション攻 撃」の割合 のヒストグラム(アタッキングサード)
*
(s)
14
*
12
10
*
8
6
4
2
0
ディフェンディングサード
ミドルサード
アタッキングサード
図 7 3 エリアにおける「速 攻 」と判 断 されたプレーの平 均 時 間 (*:p<01)
布 度 を表 す指 標 である標 準 偏 差 は最 も大 きな値
Ⅳ.考察
全 エリアで「速 攻 」と判 断 されたプレーを基 準 と
を示した。つまり、視覚的にも統計学的にもばらつ
し、各 3 エリアで「速攻」と判断されたプレーとの比
きが大 きいということが示 された。一 方 、ボール奪
較、検討をした。
取位置を 3 エリアに分割した場合には、エリアごと
全 エリアを対 象 にした場 合 、「速 攻 」と判 断 され
に「速 攻 」と判 断 されたプレー時 間 がある任 意 の
たプレー時間は分散したグラフを示し、グラフの散
時 間 に多 く集 中 するグラフを示 し、標 準 偏 差 も全
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エリアを対象にした場合と比較して、全 3 エリアと
ディングサードでボールを奪取した場合に、10 秒
も小 さい値 を示 した。つまり、ばらつきが小 さいと
でシュートを打 つことができれば「速 攻 」の攻 撃 形
いうことが示 された。したがって、ボール奪 取 位 置
態 が可 能 となる。このようにボール奪 取 位 置 にお
を 3 エリアに分割することで全エリアを対象にした
いて、「速 攻 」が成 功 する目 安 時 間 に差 異 がある。
場 合と比 較 して、「速 攻」であるか否 かを判 断する
したがって、実際のトレーニング現場において、各
より精 度 の高 い定 量 的 なデータを得 ることが可 能
指導者が「速攻」の達成度を定量的に把握するこ
であることが示唆できた。
とが可能になり、今後のトレーニングを作成する情
報となりえると考える。
また、各 3 エリアでボール奪取した場合に、「速
攻 」と判 断 され得 るプレーの時 間 も示 された。アタ
ッキングサードでボール奪 取 した場 合 には、9 秒
表 2 速 攻 の目 安 時 間
以 上 経 過 し「速 攻 」と判 断 されたプレーは一 例 も
エリア
目安時間
なかった。同様に、ミドルサードの場合には 16 秒
アタッキングサード
3.9 秒 以 内
以上、ディフェンディングサードでは 18 秒以上経
ミドルサード
8.9 秒 以 内
過 し「速 攻 」と判 断 されたプレーは一 例もなかった。
ディフェンディングサード
13.9 秒以 内
したがって、各 3 エリアで「速攻」と判断され得るプ
レー時間が存在することが示された。
本稿では、世界トップレベルの大会である 2012
さらに、各 3 エリアでボール奪 取 した場 合 に、
年 UEFA EURO を対象に検証したため、この結果
「速攻」と判断されたプレーの目安時間も示された
が J リーグ、大学生年代あるいは育成年代にその
(表 2)。アタッキングサードでボール奪取した場合
まま適応できるかは議論の余地がある。また、図 4、
には、3.9 秒 までの間 に「速 攻 」と判 断 されたプレ
5、6 からも読 み取 れるように、目 安 時 間 あるいは
ーが 59 プレーあり、全体のおよそ 80%を占める。
それ以 内 の時 間 であっても「速 攻 」と判 断 すること
ボール奪取 位 置がアタッキングサードの場 合には
ができないプレーも存 在 する。最 終 的 には、指 導
約 3.9 秒以内にシュートすることで非常に高い割
者自身でプレーを観察し判断する必要性がある。
合で「速攻」の攻撃形態が可能となることが示され
た。同 様 に、ミドルサードの場 合 には、8.9 秒 まで
Ⅴ.結論
の間に「速攻」と判断されたプレーが 54 プレーあ
本研究の目的は、2012 年 UEFA EURO を対
り、全体のおよそ 71%を占め、ディフェンディングサ
象に、ボール奪取後の攻撃を「速攻」あるいは「ポ
ードの場 合 には、13.9 秒 までの間 に「速 攻 」と判
ゼッション攻 撃」に分 類 する定 量 的 指 標 を提 案 す
断 されたプレーが 43 プレーあり、全 体 のおよそ
ることであった。その結果、ボール奪取位置を 3 エ
81%を占める。ボール奪取位置がミドルサードの場
リアに分 割 することで、より精 度 の高 い定 量 的 指
合には約 8.9 秒以内、ディフェンディングサードの
標 を得 られることが明 らかとなった。さらに、各 エリ
場合には約 13.9 秒以内にシュートすることで非常
アでボール奪 取 した場 合 に、非 常 に高 い割 合 で
に高 い割 合 で「速 攻 」の攻 撃 形 態 が可 能 となるこ
「速攻」と判 断されるプレーの目 安 時 間も求めるこ
とが示 された。したがって、目 安 時 間 を用 いること
とができた。したがって、ボール奪 取 後 の攻 撃 を
で非 常 に高 い割 合 で「速 攻 」と判 断 されるプレー
分類する定量的な一つの指標を指導者に提案で
時間の指標を提案できる。
きるものと考察された。
「速 攻 」を企 図 する戦 術 を用 いる場 合 には、こ
の目安時間 が「速攻」を成功させる定量的な一 つ
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