講 演 「日本の没落(改革の試練)」 衆議院議員、元農林水産大臣 大原 一三 氏(02-4) 大正 13 年生まれ、硬派の政治家として歯に衣着せぬ弁舌は貴重です。母校の東大を「民営化すべし」と主張、理 由は「ノーベル賞受賞者が一人も出ていない。学部長経験者 125 人で構成する学士院会は勲章の議論ばかり・・・」と 手厳しい。「自民党幹事長の山崎もたいしたことはない。小泉がイライラしているのがよく分かる」と宣う大原さんは 「小泉改革」のよき理解者かも。 *今、日本はまさに没落寸前。どうしてこうなったか。明治以降 150 年の歩みのなかで、わが国は幾つかの誤りを犯 したからだ。日清、日露の戦争に勝った。それはよかった。が、それからあとは躓きの歴史だ。まず、軍閥による 軍事国家になってしまったことだ。それは「万世一系の天皇これを統治す(第一条)」の明治憲法に起因する。 *天皇のルーツは大和の一豪族に過ぎない。そして親政は後醍醐天皇の 20 年間だけ。それも南北朝に分かれ、軋轢 を繰り返した。うまくいったのは藤原の摂関政治や幕府政治が統治したからだ。従って、天皇は象徴であるべきで 権力を持ってはいけないのだ。「統帥権が天皇に属する」とした憲法を制定した伊藤博文に罪があると私は思う。 *そういうおぞましい憲法のもとで勝ち目のない戦を繰り返し、1945 年の敗戦を迎える。そして「新憲法」をマッカ ーサーから頂く。まさに棚ボタ民主主義だが、50 年経た今、本当に根づいているだろうか? 例えば徴兵制度。 「と んでもない!」が常識の日本。が、世界 160 カ国のうち、ドイツほか 105 カ国が徴兵制をとっている。 *永世中立のスイスが国連に加盟。国防訓練ほか銃・弾丸、戦闘服の設置を義務づけた。米国は徴兵の義務は憲法に はないが法律に明記されている。「自分たちが造ったコミュニティーは自分たちで守る」という強い義務感が、西 部開拓史以来強くある。 「星条旗のもとに」が彼らのアイデンティティーだ。軽視される日の丸とはえらい違いだ。 *教育についても言える。「学習指導要領」 「学区制」「官立対私立」 等、問題が多い。もっと柔軟にするのが民主主義、 競争原理を若年から育てていけば国も変わる筈。経済もお上依存の護送船団方式できた。中小企業も大企業の戦列 に加わることによっておこぼれが頂戴できた。大企業が大揺れしている今日、中小企業の現実は深刻だ。 *護送船団の典型は電力だ。電気代が高すぎる。経済が 100 倍も増えているのに電力会社は 9 社のまま。結果、電気 代が米国の 2 倍。9 千社ある米国なみの料金にすればトヨタは 200 億円も儲かる。空洞化の相手、中国とは、土地 60 倍、人件費 30 倍、電気代 5 倍、ガス代 3 倍。そこで私は昨年、独禁法 21 条を撤廃する議員立法を通した。 *通信料金も世界の 3 倍、NTT が一つしかないからだ。 「3、600 億円儲かっているドコモと 2、000 億円の NTT コムを分 離せよ」が私の主張だ。利益がなくなったら NTT は合理化せざるを得ない。東西 12 万人を半分にすれば料金は明 日から半分になる筈。この世論作りが必要だが、CM の恩恵を受けている「新聞」は当てにはならない。 *今、銀行は死にかかっている。金融庁は不良債権額 36 兆円と言うが果たしてどうか。自己資本比率に関し、 「株の 空売り禁止」という小手先で凌げるものではない。また、引当の済んだ不良債権を買い取る「RCC」に、もっとベ テランの金融マンを入れる必要がある。今は弁護士を中心としたいわば殺し屋集団だ、うまく捌けるわけがない。 *日本の働く人口、今 8,500 万人だが 50 年後は 5、500 万人になり、経済システムは 40%縮む。他方、中国はこのま までいけば 20 年後には日本に追いつき、50 年後は 4 倍になる。ならば日本は何で生きるか。知恵、ノウハウ、バ イオ、ナノテク・・・そして IT を駆使して人の能力を 10 倍にすることしかない。そうでないと中国には勝てない。 * 農業の企業化がこれから重要になると思う。「経営規模 100 ㌶」の株式会社を早く作ることだ。いま、農業への新 卒者は 2、000 人だが、それを増やす必要がある。急がないと中国の野菜で日本の農業は死んでしまう。ともあれ、 小泉改革はそれなりに成果を上げていると私は思う。が、小泉が沈没したら「改革」を叫ぶ人間はいなくなる!
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