平成28年度滋賀県立河瀬高等学校特色選抜 受検番号 総合問題Ⅰ 【4枚目】 2 放課後,絵美(Emi)さんは,英語の森先生(Ms. Mori),ロック先生(Mr. Rock) と話しています。資料1は,3人の会話です。資料2は,会話の後,外国語の学習 に興味をもった絵美さんが,図書館で見つけた文章の一部です。資料1と資料2を 読んで,後の1から4までの各問いに答えなさい。 資料1 Emi: Mr. Rock, you have lived in Japan for three years and you can speak two languages. What is difficult when you study Japanese? Mr. Rock: Well, Emi, one thing is the differences in the structures of sentences. For example, in English, the verb is usually near the beginning of a sentence, but in Japanese, it usually comes at the end. Also, sometimes a sentence does not have a subject. So, at first I had to guess what the subject was. Emi: I see. When I write English, I always start thinking what subject I should have. But it’s not a big problem for me. My problem is the choice of right words. One Japanese word will sometimes be a few different words in English. Mr. Rock: For example? Emi: “Miru,” will be “see,” “look at,” or “watch.” Mr. Rock: Well, the difference is clear to me, but I understand how you feel. I have the same problem when I learn Japanese. For example, the word “eat” will be “taberu,” “itadaku,” or “meshiagaru.” At first I didn’t know which to use. Ms. Mori: That’s a problem of speaking politely. In Japanese, we use different expressions to different people to show our respect. I know there are ways to speak politely in English, too, but the Japanese way is very different. Mr. Rock: Yes, that’s true. In my first year, I had this experience. One day at a party, I said, “Watashi wa ebi wo meshiagarimasen.” At that time, I just tried to speak politely, but I used the expression in a wrong way. Emi: That’s interesting. I feel that Japanese polite expressions are difficult, too. Ms. Mori: Well, there are a lot of differences between English and Japanese. Those differences look like differences of language, but I think they are also differences of culture. Mr. Rock: That’s true. I believe that, when we try to learn a language well, we have to learn differences of culture and people’s ways of thinking, too. Emi: Well, thank you for telling me interesting stories, Mr. Rock. Now I want to study more about differences between English and Japanese. (注)structure(s):構造 clear:明らかな experience:経験 verb:動詞 beginning:始め subject:主語 politely:丁寧に expression(s):表現 respect:敬意 polite:丁寧な 資料2 日本語のむずかしさは、単語や文法によるよりも、むしろ表現の仕方によると思う。 西洋文学にどうしてもなくてはならない表現の一つは、英語のI love you で代表され る。外国で日本語を習った人なら、「私はあなたを愛します」と訳すのだろうが、日本 文学にはそういう表現がぜんぜんないと思う。英米人としてフランス語、ドイツ語、ロ シア語などを学ぶ場合、英語に相当する言葉をその国の文法に従って並べると正しい表 現に成功するが、日本語の場合、あろうはずのないバタくさい文句になってしまう。む かしの日本語なら「いとしや」というような表現を使ったのだろう。つまり、英語の主 語、動詞、目的語に相当する文句は形容詞と感嘆詞になる。現代の日本語なら「君が好 きだ」とか「ほれた」などと言えるが、英語になくてはならない主語の「私」が完全に 消え、場合によっては、たいせつな相手の「あなた」も消える。しかし、この場合、い ちばん日本的な表現は沈黙ではないかと思う。 主語をなるべく省くことは日本語の特徴であろう。主語を省くと余情のある詩的な表 現になることもあるが、あいまいだと言うほかはない。「鮮明でない言葉はフランス語 ではない」という言葉があるが、日本語の場合、 「はっきりした表現は日本語ではない」 といえるのではないか。主語もなければ、だれがだれになにをしているか、という根本 的な知識に欠けることもある。しかし、美しい日本語なら、あいまいさを嫌うどころか、 なるべく表現をぼかすのだ。数年前に日本人に手紙を出したが、その中に「五日間病気 でした」と書いたところ、友人は「日本語として正確すぎる」と言って「五日ほど」と 直してくれた。小説の人物の年齢も、多くの場合、「二十六、七歳」となっていて、二 十六歳とも二十七歳ともはっきり定められないようである。こういうぼかしがあっても べつに文章がわかりにくくなることはないが、いくら考えても主語がわからないことが たびたびあるので、日本文学の翻訳はヨーロッパ文学の訳者には想像もできないほどむ ずかしい仕事である。 (ドナルド・キーン 『ドナルド・キーン著作集 日本語のむずかしさ』による。) (注)バタくさい=西洋風だ。西洋かぶれをしている様子だ。 いとしや=いとしいなあ。恋しいよ。 文句=語句。 感嘆詞=感動詞。 1 資料1と資料2には,日本語の表現の仕方についての難しさが述べられている。 どのような点が難しいのか。資料1と資料2に共通して述べられていることを具体的 に書きなさい。 2 資料2の下線部について,筆者がこのように述べる理由を,60字以内で書きなさ い。 3 4 次の質問に,英語で答えなさい。 What is difficult for Emi when she writes English? 資料1と資料2の内容に関わって,外国語を学習するうえで大切なことはどのよう なことか,あなたの具体的な体験と関連付けて120字以内で書きなさい。
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