環境・エネルギー産学連携フォーラム in 横須賀 2012 平成24年12月3日 横須賀市産業交流プラザ 熱を効率良く移動させるためには? 防衛大学校 機械工学科 中村 元 1 内 容 1. 熱の移動とは? 1) 伝熱の基本3形態 2) 電気回路との相似性 3) 熱抵抗 2 多くの熱を移動させるには? 2. 1) 熱抵抗を小さくする方法 2) 熱伝達率を高める方法 3. 速く冷ます(暖める)には? 1) 熱容量と時定数 2) ビオ数との関係 4. まとめ 2 機器にみられる熱移動の例 背面 自動車用ラジエータ (JSMEテキストシリーズ「伝熱工学」より) パソコンのチップ冷却 3 熱 の 移 動 と は ? 伝熱の基本3形態 熱伝導 熱伝達 物質内の熱の移動 (図はJSMEテキストシリーズ「伝熱工学」より) 熱放射 電磁波による熱の移動 4 電気回路との相似性 流量 駆動力 抵抗 電気の流れ 気 熱の流れ 起電力 電流 電気抵抗 V V I R 温度差 熱流量 熱抵抗 I T1 R Q T1 T 2 Q R T2 5 熱抵抗とは? 熱伝導の場合 熱伝達(固体-流体間)の場合 固体 熱抵抗 : T T R L kA L : 厚さ A : 断面積 k : 物質の熱伝導率 Q [W] T1 T 2 Q R 温度差 熱流量 熱抵抗 流体 T1 T2 L 1 熱抵抗 : R hA A : 表面積 表 積 h : 熱伝達率 Q [W] L 物質の形状(L, A)と種類(k)で決まる. 固体の表面積(A)と 流体の種類・流動状態(h)で決まる. 物質 k (W/m・K) 流体の種類 / 状態 熱伝達率 h (W/m2K) 銅 400 気体 / 強制対流 20 ∼ 500 鉄 80 液体 / 強制対流 300 ∼ 10000 空気(常温) 0.026 沸騰・凝縮 3000 ∼ 100000 6 熱抵抗網(定常) T T1 h1 A h2 L T1 R1 R2 k T2 A k T L Q L kA T2 R1 T1 T 2 R1 R 2 R 3 L L Q T2 R3 R2b R3 1 h2 A Q R2a T1 R2 (熱伝達) (熱伝導) (熱伝達) 1 h1 A k Ab kb Q Q Aa ka 1 1 1 R 2 R 2 a R 2b Q T1 T 2 R1 R 2 R 3 7 熱と電気の相違点 電気抵抗 L R ρ A 熱抵抗 [] 比電気抵抗 [m] = 1.47×108 (銀) > 1016 (石英ガラス) 20桁以上変化 制御(ON/OFF)が容易 (超電導や完全絶縁も可能) 1L R [K/W] k A 熱伝導率 k [W/m・K] = 427 (銀) 0.026 (空気) 4桁程度しか変化しない 制御(ON/OFF)が困難 ⇒ 熱移動を制御する技術が重要 8 多くの熱を移動させるには? T1 T 2 Q R 与えられた温度差 T1 – T2 のもとで熱流量 Q を 大きくしたい時は,熱抵抗 R を小さくする. 背面 自動車用ラジエータ (JSMEテキストシリーズ「伝熱工学」より) パソコンのチップ冷却 9 拡大伝熱面(フィン) 固体壁 2 A = 100 cm , k= 100 W /(m ・K), L = 1 液体 固体壁 k = 100 W /(m・K) , L = 1 m m mm 液体 気体 T 1 = 90℃ T 2 = 20℃ h 1 = 2000 W /m 2 K h 2 = 50 W /m 2 K A = 100 気体 cm 2 A’ = 40 A T 1 = 90℃ h 1 = 2000 W /m 2 K T 2 = 20℃ h 2 = 50 W /m 2 K Q Q T1 T2 液体-固体 固体内 R1 1 h1 A R2 L kA 固体-気体 T1 T2 液体-固体 固体内 R3 R1 1 h2 A 0.05 0.001 2 2.051 (K/W) 気体側の熱抵抗 R3 が支配的 1 h1 A R2 L kA 固体-気体 R3’ 1 h 2 A’ 0.05 0.001 0.05 0.101 (K/W) 気体側の表面積を増やすと効果的 10 発熱チップからの放熱 T2 = 30 ℃ T2 フィン cm2 Af = 400 h = 50 W/m2K チップ Q = 50 W A = 1 cm2 基板(断熱) T1 Q フィン-空気間 R2 1 h Af : フィン効率 (0 < < 1) チップ-フィン間 (接触熱抵抗) R1 kA : チップ-フィン間の等価隙間 k : 隙間物質の熱伝導率 T1 T1 T 2 Q R1 R 2 Q = 50 W T1 (チップ温度) Q ( R1 R 2) T 2 R2 1 h Af = 1 (K/W) ※ = 0.5 の場合 ・ チップ-フィン間の隙間( = 5 m)が 空気( k ≈ 0.03 W/(m・K) )の場合 R1 = 1.7 (K/W) kA T1 = 165 ℃ ・ チップ-フィン間の隙間( = 5 m)を k = 1 W/(m・K) のグリスで充填した場合 R1 = 0.05 (K/W) kA T1 = 82.5 ℃ 11 熱伝達率 を高める方法 流体の種類 / 状態 熱伝達率 h (W/m2K) 気体 / 強制対流 20 ∼ 500 液体 / 強制対流 300 ∼ 10000 沸騰・凝縮 3000 ∼ 100000 熱伝達の熱抵抗 : 1 hA ・ 流速を高める ・ 流れを乱流化する ・ 流れのはく離・再付着の利用 infrared thermograph 事例 (薄型流路内の伝熱促進) sapphire window 障害物 barrier ノートPCを模擬した薄型流路内に 発熱チップを模擬した加熱ブロックを 設置し,その伝熱促進を試みた実験 acrylic resin um,T 0 Tw main heater 空冷ファンで送風 balsa sub heater thermocouples stainless-steel foil um y z balsa x electrode 12 障害物なし 2D障害物(乱流化) 上面からの 可視化 3D障害物(はく離・再付着) 再付着 乱流化 断面の 可視化 再付着 乱流化 温度分布 加熱熱流束 qgen = 277 W/m2 qgen = 310 W/m2 qgen = 1495 W/m2 平均熱伝達率 h = 18.7 W/m2K h = 22.1 W/m2K h = 76.1 W/m2K 13 熱を移動させたくない場合 → 熱抵抗を大きくする 単板ガラス 二重サッシ A (10 m2) Lg (5 mm) A (10 m2) Lg La Lg (13 mm) 外気温 室温 外気温 T1 = 20 ℃ T2 = 5 ℃ T1 = 20 ℃ T2 = 5 ℃ (20 h1 W/m2K (50 ) h2 W/m2K (20 ) 空気層 室温 h1 W/m2K kg kg ka kg T1 T2 空気-ガラス ガラス内 ガラス-空気 R2 1 h1 A R3 Lg kgA 1 h2 A 5 10 3 5 10 4 2 10 3 T1 T2 空気-ガラス ガラス内 R1 1 h1 A T1 T 2 2000 (W) R1 R 2 R 3 空気層内 R2g R2a Lg kgA La kaA ガラス内 ガラス-空気 R2g R3 Lg kgA 1 h2 A 5 10 3 5 10 4 5 10 2 5 10 4 2 10 3 0.0075 (K/W) Q Q (0.026 W/m・K) (1 W/m・K) R1 (50 W/m2K) ) Q h2 0.058 (K/W) Q T1 T 2 259 (W) R1 2 R 2 g R 2 a R3 14 速く冷ます(暖める)には? 時定数 = 熱容量 × 熱抵抗 ※ 物体内の温度が一様の場合 温度 質量 比熱 表面積 物体 T0 m c A 熱伝達率 h 熱容量 mc 1 熱抵抗 hA T∞ 時定数 mc c c Lc hA h Lc : 代表長さ = 体積 / 表面積 T(t) 時刻 t における物体温度を T(t) とすると T∞ 98%回復 (物体内の温度は一様と仮定) T (t ) T 0 t 1 exp T T 0 c T0 0 c c 15 電気回路との相似性 時間 = 容量 × 抵抗 時定数 = 熱容量 × 熱抵抗 熱の場合 c mc 1 hA 時定数 = 静電容量 × 電気抵抗 電気の場合 c C R E(t) E∞ E R C E0 0 c 16 時定数 = 熱容量 × 熱抵抗 時定数 c 1 hA mc 温度を速く変化させたい時は,熱容量および熱抵抗を小さくする. 温度変化する 物体 パチンコ玉 直径 11 mm 質量 5.5 g 熱電対接点 直径 0.5 mm 質量 0.5 mg 流体 (流速 m/s /) 熱伝達率 h (W/m (W/ 2K) 時定数 c (s) () 98% 回復 空気 45 150 600 2000 3.4 14 290 1.1 4.3 11000 0.028 0.11 (1.4 m/s) 水 (0.09 m/s) 空気 (1.4 m/s) 水 (0.09 m/s) c (s) () 17 ビオ数との関係 ビオ数 R ( 熱伝導 ) ( L / kA) h Lc Bi R ( 熱伝達 ) (1 / hA) k Bi << 1 (Bi < 0.1) の場合, 物体内の温度は一様と みなせる. 例) 小さな金属物体 c Lc Lc 時定数 c h h Lc : 代表長さ = 体積 / 表面積 Bi >> 1 (Bi > 10) の場合, 物体表面と内部には大きな 温度差が生じる. 例) 食品の加熱・冷却 Lc 2 Fo L c 2 所要時間 t F : フーリエ数 o : 熱拡散率 冷却(加熱)時間は, おおよそ物体の大きさ Lc の 1.5乗に比例する 冷却(加熱)時間は, おおよそ物体の大きさ Lc の 2乗に比例する 18 ま と め 1. 与えられた温度差のもとで熱を多く移動させたい時は, 熱抵抗を小さくする. ※ 熱抵抗網に置き換えて考えると理解しやすい 熱抵抗網 置き換え 考えると理解 やす 2. 温度を速く変化させたい時は,熱容量および熱抵抗を 小さくする. 19
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