万全なPSC対策等で旗国船舶の安全運航実現 各 MOU 最良の評価

日刊海事通信/安全対策特集
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2014(平成26)年11月14日(金)
リスカジャパン
万全なPSC対策等で旗国船舶の安全運航実現
各 MOU 最良の評価
約 4000 隻 ・1億 3400 万総トンと旗国の中で世界第 2 位の登
録規模を誇るリベリア共和国。同国船籍の登録・技術的サポート業務
を担うリスカジャパン(LISCR、本部:米国バージニア)は「オーナ
ーフレンドリー」の方針の下、船舶長距離識別装置(LRIT)を活用
した PSC ディテンション(拘留)防止措置をはじめ、旗国船舶の円
滑かつ安全運航のための万全な対策を実施している。岡本武取締役
社長は、
「円滑な運航の障害となりえる PSC の力が大きくなる中、旗
国が自国船をどうプロテクトするのかが重要になっている」と語る。
設定されたLRITゾーン
かれば、本船からその旨が記された
いる。ホワイトリストなどに入る
より若干広い海域を走る船舶の動き
レポートバックを受け、旗国の対応
優良船籍として認定され続けるこ
を追っている。LRIT の信号が途絶
リスカは 2001 年にリベリア共和
を 記 し た Dispensation の 発 行 等、
とで、リベリア籍船が PSC に検船
えるなど、海賊の襲撃を思わせる異
国の委託により、主管庁業務を開始
改めて対応策を指示している。この
される可能性への抑止力になってい
常を感知した際には、直ちに船舶管
した。全世界に 15 の支社を構え、
LRIT の 情 報 を も と に PSC 検 船 の
る。岡本氏は、「1999 年の“エリカ
理会社に問い合わせ、本船の状況を
検査官約 350 人を擁している。リス
検証が行われたリベリア籍船は年間
号”、02 年の“プレステージ号”な
確認するようにしている。また、船
カジャパンは極東アジア地域の拠点
延べ 1 万 7000 隻以上で、そのうち
どの油流出事故を経て、サブスタン
舶保安計画(SSP)も自ら確認し、
として 07 年に開所した。登録船の
チェックリストの送付を行った船舶
ダード船排除への意識が高まり、
本船のセキュリティの仕組みの把握
LRIT による動静把握などのテクニ
は延べ 100 隻に上る(2012 年の実
PSC の力も大きくなった。船は旗
にも努めており、万一のトラブルに
カル対応は米国・バージニア本部で
績)
。こうした予防措置について岡
国主義。旗国の自国船への対応、特
対処できるようにしている。
一元的に管理している。
本氏は、
「状態が悪ければ船主 / 管
に船を必要に応じ、どうプロテクト
他方で、リスカは国際基準作りに
こうしたソフト・ハードを駆使
理会社とともに改善を講じ、必要に
するのかが重要になっている。そし
も貢献している。船側の海賊対処の
し、リスカはリベリア籍船の PSC
応じてプロテクトする等により、船
て旗国によってそのパフォーマンス
自衛措置マニュアルとして普及して
対策に注力している。PSC での拘
のレピュテーション(評価)維持に
は異なる。リスカはオーナーフレン
いる「ベストマネージメントプラク
留阻止などのための事前措置では、
つなげるというアイディアで行って
ドリーのスタンスで PSC 対策を充
ティス」
(BMP)の原案は、もとも
年 1 回の登録船の検査(フラッグイ
いる。PSC 前の段階で我々が欠陥
実させている。船主には是非活用し
とリスカ本部が IMO に提示したも
ンスぺクション)や LRIT を活用し
を発見したとしても、それは旗国内
ていただきたい」と自信を見せる。
のだ。それがベースとなり改訂を重
た 24 時間モニタリングが挙げられ
部の情報なので外に公開されること
る。
フラッグインスペクションでは、
はない。ところが、PSC で初めて
PSC で指摘されそうな事項の確認
発見されたとなると、そのレポート
航行安全を脅かす海賊に対しても
ガイドラインも他の旗国に先駆け、
も行い、何らかの欠陥がみつかれば
が各 MOU の WEB サイトなどでア
旗国の立場から対策を講じている。
策定した。同指針では、警備会社や
船主
(オーナー)
に改善を求めている。
ップされ、ライトシップやオイルメ
PSC 対 策 と 同 様 に LRIT を 使 い、
警備員のキャリアなどをチェックす
LRIT による 24 時間モニタリン
ージャーのベッティングなどでのス
ソマリア沖アデン湾を含む国際海事
るほか、過度になりがちな武器使用
グでは、バージニア本部が LRIT か
テータスが下がりかねない」と語る。
機関(IMO)のハイリスクエリア
を制限するものとなっている。
ら発せられる信号を捉え、リベリア
つまり、これらの事前の対策によっ
籍船の動静を常時確認している。そ
て、船の商業価値低下のリスクを回
して、PSC が厳しいパリ MOU、米
避できるというわけだ。
国、豪州、中国の 4 海域に本船が入
ま た、PSC 中 で あ っ て も、PSC
る場合に、
独自のリスク解析を行い、
側が誤った条約の解釈や不当な評価
PSC 検船の可能性を確認する。リ
を下しそうな時には、リスカの検査
スク解析では、本船の PSC 履歴や
官を交渉に向かわせることも可能
船級検査の記録、年次検査の記録お
だ。
「全世界に 350 人の旗国検査官
よび延期の有無、運航する船舶管理
がいるので、大きい港はほぼカバー
会社のフリートの PSC 履歴、船種、
できる」(岡本氏)。
船齢、船級協会などを総合的に評価
さらに、PSC 後であったとして
し、PSC 検船の確率を割り出す。
もその記録が不合理なものであった
同社はそれらを瞬時に処理できるシ
場合は、旗国の立場から改善を求め
ステムを構築している。
るなどのアピールも行う。PSC 側
解析の結果、PSC 検船の可能性
の寄港国に対し、旗国として「国対
が高いと判断した場合は、
「入港前
国」の枠組みで交渉する。その結果、
チェックリスト」を送付し、船舶管
11 〜 13 年で実に 74%もの記録の改
理会社の責任者(DPA)に不具合
善に成功した。
の確認を要請する。同リストには、
こうした PSC の前・中・後にわ
「居住設備」
「救命設備」、
、
「通信設備」
たる一連の対策により、リベリアは
など、PSC で 90%以上確認される
東 京 MOU、 パ リ MOU、USCG と
項目が記されている。不具合がみつ
いった各 MOU で最良の評価を得て
ソフト・ハード駆使し PSC 対策に注力
海賊対策で LRIT 活用
ね、
今日では第4版にまで至っている。
民間武装警備員(武装ガード)の