シヨート レビュー 麻痺 誘発性マウス 白血病ウイルス 麻 痺 誘 発 性 マ ウ ス 白 血 病 ウ イル ス は,由 来 の異 な る も の が 数 株 分 離 され て い る。 一 部 の ウ イル ス株 に つ い て は,麻 痺 誘 発 に 関 連 す る ウ イル ス遺 伝 子 産 物 は 外 被 膜 蛋 白質gp70で あ る こ と が 決 定 され た 。gP70の 性 質 に は 多 様 性 が み られ,誘 発 され た そ れ ぞ れ の 病 理 像 Database Center for Life Science Online Service に 微 妙 な違 い が 見 い だ され る。gP70に 対 応 す る 宿 主 ウ イル ス レセ プ タ ー は,造 と神 経 系 組 織 で 異 な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 ま た ウ イル ス のLTRは せ る 。 ウ イ ル ス 感 染 に 対 す る宿 主 の反 応 は 明 らか に 異 な るが,未 血系組織 病 像 を微 妙 に変 化 さ 解 決 の 因子 の 多 い こ と が 示唆 された。 は じめ に レ トロ ウイ ル ス は,オ ス プ ーマ ウ イル ス亜 科,お ン コウ イル ス亜 科, よび レン チ ウ イル ス亜 科 の3 つ の亜 科 に 分 類 され る。 しか しな が ら病 原 性 を基 準 に お く と別 の 見 方 が 生 まれ る。 レ トロ ウ イル ス の病 原 性 は大 き く3つ の 分 野 に分 類 で き る。 やNZB,NZWマ ウス に観 察 され る 自己免 疫 疾 患 な どが 分 類 され る。 ウマ の伝 染性 貧 血 症 も この血 球 異 常 に分 類 で き る で あ ろ う。 第3は 進 行 性 神 経 系 異常 症 の分 野 で あ る。 この分 野 の 代 表 は ヒ ツ ジ の ビス ナ(Visna)病 第1の 分 野 は造 腫 瘍 性 の分 野 であ る。 さ ま ざ ま な 肉腫 ウイル ス の 発 見 に よ って"発 癌 遺 伝 子"の 概念 が 生 ま れ,発 癌 に関 して よ り明確 な 発 想 を 生 む と 同時 に現 在 も 感 染 後 長 い間 に後 肢(ヒ であ る。 こ の病 気 は トで い えば 足)の 振 戦 か ら麻 痺 とい う神 経 症 状 を示 し,死 亡 す る。 この経 過 は他 の レ ト ロウ イル ス に よる麻 痺 誘 発 の過 程 に も共通 して い る。 なお旺 盛 に発 展 を つ づ け て い る。 しか しな が ら発 癌 遺 伝 レ トロ ウイ ル ス の 研 究 は 癌 研 究 者 の間 で 癌 との 関連 で 子は宿 主 由来 の遺 伝 子 で あ る こ とか ら,こ の分 野 の研 究 深 め られ た経 緯 を もつ た め に,上 記 の順 で研 究 量 は 異 な には ウ イル ス学 的 要 素 が 希 薄 に な り つ つ あ る。 一 方, っ て い る。 と くに 神経 症 に つ い て は 癌 の病 理 との 関 係 が 白血病 ウイル ス の 研 究 は ヒ ト白血 病 ウ イ ル ス で あ る 見 いだ さ れ な い た め に,研 HTLV-1の な され て こな か った 。 近 年 に な って 成 人T細 胞 白血 病 発 見 につ づ い て 既 存 の 白血 病 ウイ ル ス に よ 究 を 深 め る 努 力 は ほ とん ど る白血 病 発 症 とは 異 な った メ カ ニ ズ ムが 見 い だ さ れ,さ (ATL)患 らに新 しい展 開 が始 ま ろ うと してい る1)。 が 可 能 に な った こ とか ら,HTLV-1が 第2は 血 球 系 細 胞 異 常 症 と も い え る分 野 で あ る。 レ ト (HTLV-1 者 か らHTLV-1が associated 分 離 され,ウ イル ス 同定 脊 髄痙 性 麻 痺 症 myelopathy;HAM)に 関連す る ロウイル ス の動 物 体 内 で の 基 本 的 標 的 は 白血 病 ウイ ル ス こ とが 明 らか に な った2)。ま たAIDS患 に代表 され る よ うに造 血 系 組 織 であ り,ウ イル ス感 染 に 経 症 状 が 見 い だ され,AIDS脳 よって血 球 細 胞 の 異 常 が 起 こ る。 この 中 に 免疫 担 当 細 胞 明 らか に な っ て きた3)。 これ ら の こ とか ら レ トロ ウイ ル 異常 症 が あ り,AIDSや ス誘 発 性 神 経 疾 患 が 改 め て注 目され る よ うにな った 。 Kazushige Kai,山 biology, Paralysis Faculty Inducing 白血 病 ウ イル ス に よる 免疫 抑 制 口 大 学 農 学 部 獣 医 学 科 家 畜 微 生 物 学 教 室(〒753山 of Agriculture, Murine Leukemia Yamaguchi University, 口市 大 字 吉 田 Yamaguchi 1677-1)[Department 者 に しば しば 神 症 と名 づ け られ る 病気 も of Veterinary Micro一 753, Japan] Virus Key【白 word 血 病 ウ イ ル ス】 【麻 痺 】 【外 被 蛋 白 質gp 70】 X65 66 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol 36 RNAと I.麻 痺 誘 発 性 マ ウス 白血 病 ウ イル ス No. 2 (1991) と もに ヌ ク レオ ヵ プ シ ドを形 成 し,env遺 産 物(糖 蛋 白質gP70とP15Eま た はP12E)は 膜 蛋 白質 を 形 成 して い る。 こ の うちgP70は ヒ トは当 然 の こ とな が ら ヒ ツ ジに お い て も,動 物 実 験 を行 な うこ とは 通 常 不 可 能 に 近 い 。 こ の意 味 で マ ウ ス, ラ ッ トの系 は モ デ ル 実 験 系 と して も っ と も適 切 とい え る か も しれ な い 。 モ ロニ ー 白血 病 ウ イル ス感 染 に よ って 生 じた リ ンホ ー マ細 胞 をBALB/cマ してい る うちに,移 Database Center for Life Science Online Service 宿 主 の ウイ ル ス レセ プ タ ー と結 合 し,感 染 を 決 定 す る重 要 な役 割 を も って い る。 マ ウス の 白血 病 ウイル ス は,gp70に よ っ て決 定 され る宿 主 域 に よ っ て3群 に分 類 され る。ecotropicウ 1962年,Stansly4)は ウ ス に継 代 植 を 受 け た マ ウ スに 麻 痺(paralys- 伝子 外被 ス は マ ウ ス,ラ xenotropicウ イル ッ トの 細 胞 お よび 動 物 体 に 感 染 す る。 イ ル ス は 内在 性 ウイ ル ス と して マ ウス細 胞 か ら誘 発 され るが,マ ウス 細胞 に は 感 染 で きず,マ is)が 現 わ れ る こ とを 見 い だ し,白 血 病 ウ イル ス と麻 痺 ス 以 外 の異 種 動 物 細 胞 に 感染 す る。ecotropicウ ウ イル ス とが 関 連 す る可 能 性 を 示 した 。 しか し,そ れ 以 上 の ウイ は マ ウ ス体 内 で感 染 を く り返 し,xenotropicウ ル ス学 的 研 究 は 行 な わ れ な か った。 当 時,実 験 室 で は フ 組 換 え を 起 こ し,さ ま ざ ま な 組 換 え 体 ウ イル ス を 産 生 レ ン ド,モ ロ ニ ー,ラ ウ シ ャ ー 白血 病 ウイル ス と系 統 化 す る。 こ の うち,マ ウス や 異 種 動 物 細 胞 で感 染 ・増 殖 で され た マ ウ ス系 で,ウ イル ス と白血 病 発 症 との 関連 は充 き る も の をpolytropicウ 分 に証 明 され て いた 。 こ の関 係 が 遺 伝 的 に不 均 質 な野 生 の 中 に は ミ ン クの 細 胞 に 感 染 させ る と 病 巣 を 形 成 す る マ ウス の系 で も適 用 で き るか ど うか,野 生 マ ウス系 の探 MCF(mink 索が 行 なわ れ た 。 こ の中 で,1973年,Gardnerら5・6)は 血 病 病 原 性 を示 す ウイル ス が 含 まれ る。amphotroPicウ カ リフ ォル ニ ア の一 地 方 で捕 獲 した 一 群 の野 生 マ ウス が イ ル ス は野 生 マ ウス か ら分離 され た,MCFウ 高率 に麻 痺 を 自然 発 症 す る こ とを見 い だ し,分 離 した ウ 相 応 す る も の で あ る(た だ しgp70の イル スが 系 統 化 され た マ ウ ス に麻 痺 を誘 発 す る こ とを 明 らか に した 。 イル ス と イル ス と し た 。 こ の ウイル ス cell focus forming)ウ イル ス とい う強 い 白 イル スに 抗 原 性 は 異 な る)。 麻 痺 誘 発 性 ウイ ル ス は す べ てecotropicウ イル ス であ る。 感 染 マ ウス が麻 痺 を 発 症 す る前 段 階 にお い て,白 血 1977年,McCarterら7)は,モ ロ ニー 白血 病 ウイ ル ス の 温 度 感 受性 変 異株(ts-mutant)を ウ スに 麻痺 を誘 発 す る 雄1変 1984年,KaiとFuruta8)は 作 製 して い る うち に マ 異 株 を見 い だ した 。 また フ レン ド白血 病 ウ イル ス を 病 発 症 の前 段 階 と同 様 にMCF様 ウ イル スが 体 内 に 出現 す る10)。しか し脳 組 織 に は ウ イル ス 抗 原 は検 出 さ れ る も の の,MCF特 異抗 原 は 検 出 され な い11)。一 方,同 一 の野 生 マ ウス か ら分 離 され たecotropic,amphotropicウ イ 継 代 して い る うち に ラ ッ トに 麻 痺 を 誘 発 す る 白血 病 ウイ ル ス の 脊 髄 細 胞 へ の 吸着 を調 べ た と ころ,amphotropic ル ス を見 い だ し,病 原 性 の強 さ の異 な る4つ の ウイル ス ウイ ル ス の吸 着 はecotropicウ ク ロー ンを 分 離 した 。1986年 わ め て 悪 い こ とが 判 明 して い る12)。ま た ラ ッ トに お い て Carterら のts変 変 異 株(ts-MoBA-1)の よれば,過 に は,Bilelloら9)が,Mc- 異 株 と異 な る性 質 を 示 す モ ロニ ー株 の 存 在 を報 告 して い る。私 信 に ts 去 の ウ イル ス ス トッ クを検 定 して い く と,比 較 的 多 く麻 痺 誘 発 性 白血 病 ウイル スが 発 見 され て い る。 イル ス の そ れ に 比 べ て き は この よ うな 複 雑 な 組 換 え の可 能 性 は な い が,麻 痺 を発 症 して い る13)。以 上 の こ とか ら麻 痺 発 症 は 白血 病 発 症 と 異 な り,麻 痺 誘 発 性 ウ イル ス の 感 染 が 直 接 的 に 麻 痺 発症 に 関 係 す る と考 え て よ いだ ろ う。 こ の こ とは野 生 マ ウ ス の例 に見 られ る よ うに,白 血 病 ウ イ ル ス と麻 痺 誘 発 とが きわ め て近 い関 係 に あ る こ とを示 III.麻 痺誘発 関連ウイルス遺伝子 の同定 し て い る。 麻 痺 誘 発 関 連 ウイ ル ス遺 伝 子 の同 定 作 業 は野 生 マ ウス II.ウ イル ス の 生 物 学 的 特 徴 由来 の ウ イル ス の場 合 とモ ロ ニ ー株 のts-1変 異株 の場 合 とが 先 行 し,ほ ぼ 決着 が つ い た と思 わ れ る。 筆 者 の場 白 血 病 ウ イ ル ス の ゲ ノ ム は,5'LTR(10ng repeat)-gag-pol-env-3'LTRの3つ 子 と1つ の 調 節 遺 伝 子LTRと で 構 成 さ れ て い る 。gag 遺 伝 子 産 物(p15,p12,p30,p10な 遺 伝 子 産 物(逆 166 terminal の 構 造 蛋 白 質遺 伝 転 写 酵 素 な ど)は2量 ど の 蛋 白 質)と 体 ゲ polノ ム 合 は残 念 な が ら非 常 に 遅 れ て い る。 以 下,先 行 す る研 究 を紹 介 し よ う。 ①Jolicoeurの Br-E*1ウ 最 近1つ グル ー プ は 野 生 マ ウス 由来 のCas- イ ル スを 用 い て非 常 な苦 労 を 重 ね な が ら14∼16), の 結 論 を 導 き 出 した16)。宿 主域 の 異 な るCas- 麻痺誘発性マ ウス 白血病 ウイルス 67 蛋 白質gPr806卿 がgp70とp15Eに され る過 程(プ ロセ シ ン グ)に'3性 切断 が 関与 す る こ とを 見 い だ した 。 す な わ ち'3-1感 染 細 胞 で は,非 許 容 温 度(39。C)で はgPr80ε%か が 蓄 積 され た 状 態 と な っ て お り,許 容 温 度 (34℃)で は通 常 の プ ロセ1シン グが 起 き る17)。 こ の お 性 と麻 痺 誘 発 との関 連 性 を軸 と して, 親 株 モ ロニ ー ウ イル ス とい ろ い ろ な組 換 え体 を作 製 し,解 析 を 進 め た18∼20}(図2)。 そ の 結 果,gp70のN末 酸 が,バ 端 か ら25番 ・目の ア ミ ノ リンか らイ ソ ロイ シ ンに転 換 して い る こ とが,'3性,非 効 率 的 なgPr80ε%り のプ ロセ シ ン グ,お よび 麻 痺 誘 発 性 のす べ て に関 連 して い る こ とが 明 らか とな った 。 しか しな Database Center for Life Science Online Service が ら,9P70のc末 端1/2部 分 も麻 痺 誘 発 能 を 強 め る こ とも明 らか にな った 。 以 上2つ の結 果 は,い ず れ の 場 合 に もgp 70が 麻 痺 誘 発 能 に 関 与 して い る こ とを示 す が,9P70の どの 部 分 が よ り本 質 的 に 関 与 す るか につ い て は,ま った く逆 の結 果 とな って い るo 図1.Cas-Br-E(pNE-8),モロ ニ ー,amphotropicウ イル ス(4070 A),お よび これ らを 再 構 成 して 得 ら れ た組 換 え 体 の 遣 伝 子 マ ップ IV.多 様 な ウ イル ス の存 在 と病 原 性 の 有 無16) Br-Eとamphotropicウ イ ル ス お よび モロ ニ ー 白血 病 ウ イル ス と の複 雑 な分 子 組 換 え 体 を 作 製 し(図1),そ れぞ れ の麻 痺 誘 発 性 を調 べ た。 そ の 結 果,麻 痺 誘 発 に強 く関 連 す る ウ イル ス の遺 伝 子 部 位 は,env遺 gp70蛋 白質 領 域 に 存在 す る こ とが 明 らか に な った 。 麻 痺誘 発 性 は,全gP70がCas-Br-E由 が,gP70のN末 gp70と 伝 子,な か で も 端 か ら1/3程 来 の場 合 に は強 い 度 が モ ロ ニ ー ウ イル ス の Shibamuraら21)は 70を 麻 痺 誘 発 性 フ レ ン ド ウ イ ル ス のgP 特 異 的 に 認 識 す る モ ノ ク ロ ー ン 抗 体 を 作 製 した 。 こ の 抗 体 は 親 株 フ レ ン ド ウ イ ル ス,AKRマ ecotropicウ イ ル ス,xenotropicウ イ ル ス 由 来polytropicウ 由 来ecotropicウ る 。 ま たts-1の Cas-Br-EのgP70のN末 サ ー 蛋 白 質gPr85envの 度 を含む組換え体 で は麻 痺 誘 発 能 は見 い だ せ な か った 。 以 上 の結 果 か ら麻 痺 誘発 能 の基 本 部 分 は,gp70のN末 端1/3か らc末 端 ま での部 分 に存 在 す る こ とが 明 らか にな った 。 ②Wongら はMcCarterら のts-1変 *1麻 と は 明 ら か にts性 異 株 を受 け つ た は-M),(WM)1504E(ま プ リカー プ ロ セ シ ン グ は 許 容,非 許容温 常 に 進 行 す る9)。 した が っ て,ts-1 の 由 来 が 異 な り,gp70の 性質が異な ま で 報 告 さ れ て い る ウ イ ル ス のgP70の Casitas周 性 質 は,そ 在 れぞ れ 互 い に 異 な っ て い る こ とに な る。 伝 子 の プ リカ ーサ ー 痺 誘 発 性 野 生 マ ウス 由 来 ウ ィル スは,Lake の 呼 称 は,Cas-Br-E(ま 生 構 造 を も って い 場 合 と異 な り,ts-MoBA-1の 度 に か か わ ら ず,正 こ れ ら の こ とが 微 妙 に 病 理 像 に 反 映 し て く る と思 わ れ が ウイル ス蛋 白 質 合成 の ど の過 程 で表 現 され てい るか を調 べ る と,env遺 生 マ ウス い ず れ と も反 応 っ て い る こ とが 推 測 さ れ る 。 こ う し て み て く る と,現 ぐ形 で解 析 をす す め た 。t3-1変 異 株 感 染 細 胞 を用 い て, ウイル ス のts性 のgp70の し な い 。 す な わ ち 麻 痺 誘 発 性 フ レ ン ドウ イ ル ス は,野 マ ウス 系 統 に よ っ て は麻 痺 誘 発 は 可 能 であ った 。 一 方, 端1/3程 レン ドウ イ ル ス だ け で な く,野 イ ル ス4株 マ ウ ス 由 来 ウ イ ル ス と 異 な るgp70の 置 き換 わ った も の で は 麻 痺 誘 発 能 は弱 くな り, ウ ス 由来 イ ル ス,フ る 。Saidaら22)は 麻 痺 誘 発 性 フ レ ン ドウ イ ル ス が 誘 発 す 辺 で捕 獲 され た マ ウス か ら分 離 され た もの が 大 部 分 で あ る。 ウィ ル ス た はM)な どが あ る。Eはecotropic,Mはmousetropicを 意 味 し, どち ら も意 味 と して は 同 じで あ る。 167 Database Center for Life Science Online Service 68 蛋 白 質 図2,ts-1と 核 酸 親 株MoMuLV-TBと 酵 素 Vol. 36 No. 2 (1991) で 再 構 成 され た い ろ い ろ な組 換 え 体 の 病 原 性 の 有 無20) 性 の有 無(+ま た は 一),gPr80envの プ ロ セ シ ソ グの 効 率(Pま た はIP),神 経病原性を調 ts べ た 。 図 中,I,A,K,Vな どの サ イ トはenv遺 伝 子 内 で 見 い だ され た 点 突 然 変 異 の 位 置 を 示 す 。 る病 理 像 は,灰 白質 よ りもむ しろ 白質 に ス ポ ン ジ様 変 性 ts-1と 類 似 の な 変 異 株 で,gPr80envの が 顕 著 に 現 わ れ て お り,白 質脳 脊 髄 症 で あ る と した 。 一 が非 効 率 的 で あ り,し か も麻 痺 誘 発 性 の な い もの が 見い 方ts-MoBA-1や だ さ れ,彼 野 生 マ ウス 由 来 ウイ ル スで 生 じる変 化 プ ロセ シ ン グ らの 説 も 自 ら保 留 して い る。 は,脊 髄 灰 白質 の主 と して 前 角 付 近 の神 経 細 胞 脱 落 変 性 麻 痺 非 誘 発 性 の,通 常 の 白血 病 ウイ ル スの 神 経 組 織 で であ る5・9・23)。 ま た,神 経 細 胞 で ウイ ル ス粒 子 が 観 察 され の増 殖 は 意 外 な こ と に あ ま り調 べ られ て い な い 。 調 べ ら るか 否 か では,野 生 マ ウ ス由 来 ウイ ル ス の場 合 に は観 察 れ て い る2例8,24)に お い て は,い され5・23),他の例 で は 血 管 内皮 細 胞 の 細 胞 質 内外 で観 察 白 血 病 ウイ ル ス の増 殖 は麻 痺 誘 発 性 ウイ ル ス に比 べ て神 され る以 外 に は観 察 され な い7,9,22)。 こ う して,い ず れ の 経 組 織 で の増 殖 は悪 く,一 方,脾 臓 で の 増 殖 は両 者 とも 場 合 で も非 炎 症 性 の病 理 像 を 示 しな が ら,微 妙 な違 いが 同 程 度 であ る。 こ の結 果 は2通 ずれ の場合 でも 通常の りに解 釈 で き る。 1つ は ウ イル ス レセ プ ター が 神経 組 織 と造 血 系 とで異 見 いだ され て い る。 な り,神 経 組 織 の レセ プ タ ー は通 常 の 白血 病 ウ イル スを V.麻 効 率 悪 く捕 捉 し,結 果 的 に ウイ ル ス増 殖 が 悪 くな る とい 痺 誘 発 機 構 の解 析 う考 え 方 で あ る。 す で に,amphotropicウ 以 上 述 べ た よ うに,ウ イル ス の性 質 は微 妙 に異 な って イ ル ス の脊髄 由 来 細 胞,脾 臓 細 胞 へ の 吸 着 が 異 な る こ とを 述 べ た が, い る こ とか ら,統 一 的 な麻 痺 誘 発 の機 構 を想 定 す る こ と こ の実 験 で は さ らにAKR由 来ecotropicウ は現 時 点 で は無 意 味 で あ ろ う。 した が って,こ 着 も調 べ て い る12)。AKRウ イル ス の 吸 着 は 脾 臓 細 胞 で こで は 今 イル スの吸 後 の機 構 解 析 を考 え る うえ で参 考 に な る と思 え る こ とを よ く,脊 髄 由来 細 胞 で悪 い とい う結 果 に な っ て い る。お 整 理 してみ よ う。 も しろ い こ とにAKR由 Wongら20)の グル ー プはts-1のts性 が麻 痺 誘 発 上 重 来ecotropicウ イ ル スが 充 分発 現 して い る マ ウ ス系 に お い て も,野 生 マ ウス 由来 ウイル 要 で あ る と考 え て い る。 新 生 児期 の マ ウス の体 温 はts-1 スはAKRウ に と って許 容温 度 で あ り,こ の間 に ウイル ス は増 殖 し, を 誘 発 して い る25)。以上2つ 標 的 細胞 に感 染 す る。 一 方,成 長 した マ ウス の体 温 は非 織 の ウ イル ス レセ プ タ ー は造 血 系 組 織 のそ れ と異 な って 許 容 温度 で あ り,標 的 細 胞 中 にgPr80envが 蓄 積 して い る こ とを強 く示 唆 す る。 ウイ ル ス レセ プ タ ー は遺 伝子 い くた め に 異常 が 起 ぎ る とい う説 で あ る。 しか しな が ら フ ァ ミリー を形 成 して い て,分 化 に 伴 っ てそ れ ぞ れ 独 自 168 ィル ス に よ って 干 渉 を 受 け る こ とな く麻痺 の結 果 は 少 な くと も神経 組 69 麻痺誘発性マ ウス 白血病 ウイルス の発 現 を して い る も のか も しれ な い。 ウイ ル ス レセ プ タ よ り合 致 した遺 伝 子 を 見 い だ す 可能 性 を も って い る と思 ー の研 究 は現 在 ま で ほ とん ど深 め られ て お らず ,今 後 の わ れ る。 いず れ にせ よ,Fv-1を 重 要 課 題 か も しれ な い 。 に麻 痺 誘 発 に 関連 して い る 明確 な遺 伝子 は1つ も決 定 さ も う1つ はLTRの 性 質 が 通 常 の 白血 病 ウイ ル ス と異 な る 可 能 性 で あ る。Jolicoeurの グル ー プ26)は モ ロニ ー ウイ ル ス のLTRをCas-Br-EのLTRと 交 換 し,そ の 在 まで れ て は い な い。 さ て こ う して 決 定 され る遺 伝 子 とは何 で あ ろ うか。 あ る場 合 に は ウイ ル ス レセ プ ター で あ る可能 性 もあ る し,ま た あ る場 合 に はLTRと 結合す るファク 効 果 を 調 べ た。 そ の結 果,麻 痺 を 発症 す る マ ウ ス の頻 度 タ ー で あ る か も しれ な い し,こ れ ら と ま った く関 係 の な は 落 ち た もの の,新 い遺 伝 子 で あ る可 能 性 もあ る。 麻 痺 誘 発 とい う現 象 を理 しい神 経 異常 を示 す も のが 現 わ れ, 潜 伏期 が 親 株 よ り短 くな り,か つ脳 に お け る ス ポ ンジ様 解 す る た め に は,こ 変 性 の 分 布 が 変 化 した こ とを報 告 して い る。 白血 病 研 究 思わ れ る。 の 分 野 で は,LTRは 標 的 細 胞(T細 胞 とか 赤 芽 球 とか) うした 遺 伝 学 的 研 究 が 必 要 で あ る と 麻 痺 誘 発 に お け る 特 異 的gp70の 役割についてはす を 決 定 す る重 要 な 因子 と な って い る27)。さ らに,CAT で に 言 及 した が,現 在 ま で の実 験 はす べ て ウイ ル ス増殖 (chloramphenicol と挙 動 を と もに した9P70の LTRを Database Center for Life Science Online Service 除 外 す れ ば,現 acetyltransferase)ア 認 識 して,転 ッセ イ に よ り, 写 を促 進 す る 特 異 的 フ ァ クタ ーが な い。9P70単 役割 しか 明 らか に さ れ て い 独 で麻 痺 誘 発 が 可 能 な の か,そ れ と も他 標 的 細 胞 中 に 存 在 す る可 能 性 も 示 唆 され て い る28)。した の ウイ ル ス 遺 伝 子 産 物 との 共 役 の うえ で麻 痺 誘 発 が 起 こ が って,神 経 組 織 に造 血 系 とは 異 な った フ ァ クタ ーが 存 る の か,現 在 の と ころ 明 らか でな い。 今 後 新 た な 実 験 系 在 して い て もお か し くは な い と思 え る。 を 組 み 立 て な が ら 明 らか に して い く必 要 が あ るだ ろ う。 ウイ ル ス感 染 に対 す る マ ウス の 反 応 は 系 統 に よ っ て 明 らか に異 な る7,16・23・25,29)。 す で に 白血 病 発 症 に 関 連 す る 宿 主 遺 伝 子 は数 多 く見 い だ され て い るが,こ れ らの遺 伝 子 と麻 痺 発 症 に 関連 す る遺 伝 子 とは,あ る場 合 に は重 な りあ っ て表 現 さ れ る可 能 性 が あ る。Oldstoneら23・29)は野 お わ りに gp70の Jolicoeurら16)の グル ー プ はCas-Br-Eの 役 割 につ い て 次 の よ うな 可 能 性 も 指 摘 してい る。 神 経 組 織 にお け る ウ イル ス レセ プ タ ー は正 常 な状 態 生 マ ウス 由来 ウイ ル ス を 使 用 した とき,宿 主 のFv-1遺 で は何 らか の物 質 の レセ プ タ ー と して機 能 して お り,gp 伝子*2が 大 き く影 響 す る こ とを 報 告 して い る。 しか し, 70は そ の物 質 のい わば ア ンタ ゴニ ス トと して作 用 す る。 この遺 伝 子 はecotropicウ そ の結 果,神 経 細 胞 は正 常 の機 能 を失 い変 性 す る とい う イ ル ス の 中 のN-tropic,B- tropicウ イ ル ス の 増 殖 を コ ン トロー ルす る 遺 伝 子 で あ 説 で あ る。 この説 の 当否 は 別 と して,造 血 系 組 織 と神 経 る。 野 生 マ ウス 由 来 ウ イル ス はす べ てN-tropicウ 組 織 とが 麻 痺 誘 発 性 ウイル ス を仲 立 ち と して類 似 性 を示 イル 伝 子 の影 響 を受 け る の は きわ め て した こ とは事 実 で あ ろ う。 この考 え に立 つ な らば,従 来 当 然 の結 果 で あ り,麻 痺 発 症 に関 連 の あ る,意 味 あ る遺 積 み 上 げ られ て きた 白血 病 学 や免 疫 学 の成 果 を 神 経 組 織 スで あ る か らFv-1遺 伝 子 とは考 え に くい 。 こ の こ とを念 頭 に お い て 慎 重 な 実 に適 用 す る こ とは神 経 科 学 を よ り豊 か にす る可 能 性 を秘 験 を行 な った 結 果 で は25),い くつ か の遺 伝 子 の 存 在 が 示 め て い る と思 わ れ る。 唆 され て い る。Fv-1遺 伝 子 の影 響 を 除 外 した 意 味 で,麻 痺誘 発 関 連 宿 主 遺 伝 子 を探 索 す る に は,Fv-1遺 影 響 を受 け な いNB-tropicウ イルスを 使用す る 必要が あ る。 この 意 味 では,ts-1,ts-MoBA-1,麻 レン ドウイ ル ス な どがNB-tropicウ 用 であ ろ う。さ ら に い えば,Jolicoeurの した モ ロ ニ ー ウ イル ス とCas-Br-Eと 1つ で あ るpNE-SC(図1を 伝子 の 痺誘発性 フ イル ス で あ り,有 グル ー プが 作 製 の 分 子 組 換 え体 の 参 照)は 複 雑 なgp70の 性 本 稿 で は ふ れ な か った が,こ こで述 べ た麻 痺 誘 発性 ウ イル ス はす べ て 白血 病 病 原 性 を も って い る。成 人T細 胞 白血 病 とHAM症 係 や,個 で見 いだ され るHTLV-1の 相 互 の関 々人 に よ って 白血 病 に な った り,HAMに なっ た りす る現 象 を考 え る うえ で 麻痺 誘 発 性 マ ウス 白血 病 ウ イル ス の 系 は よ い モ デ ル を提 供 して い る の で は な い か と 思 わ れ る。 お も しろ い こ とに,ts-1が 神経 症 の ほ か に免 疫 不 全 も誘 発 す る とい う報 告 もあ る30)。これ はAIDSの 質 を よ り単 純 化 してお り,麻 痺 誘 発 に 関 連 す るマ ル テ ィ モ デ ル に な り う る可 能 性 を 示 してい る。HTLV-1や プル ジ ー ン の関 与 を よ り単 純 化 して メ ンデ ル の法 則 に, HIV(human *2NIHSwissマ ウス の も つ 遺 伝 子 をFv-1nnと 細 胞 で よ く増 殖 し,Fv-1bbの し,BALB/cマ 細 胞で 増 殖 しに くい 。B-tropicウ immunodefieiency ウス の そ れ をFv-1bbと virus)の 発 見 以来,日 した 。N-tropicウ ィ ル ス の 場 合 は この 逆 で あ る。NB-tropicウ イル ス はFv-1nnの ィ ル ス は ど の遺 伝 子 型 で も増 殖 す る。 169 70 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol 36 本 だ け でな く世 界 的 に み て もマ ウス 白血 病 ウイ ル ス の研 究 は先 細 りの傾 向 が あ り,さ び しい か ぎ りであ る。 しか 18) しな が ら,発 癌 遺 伝 子 の 発 見 や イ ン タ ー フ ェ ロ ンそ の他 の 物 質 の ク ロー ニ ン グか ら,そ の 後 の 発 展 を 考 え る と, 19) マ ウ スや ニ ワ ト リな ど の実 験 系 で の基 礎 的 研 究 も大 い に 20) 進 め る必 要 が あ る と思 わ れ る。 21) 文 1)吉 2) 3) Database Center for Life Science Online Service 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 12) 13) 14) 15) 16) 17) 170 田 光 昭:本 献 誌,35,2045-2053(1990) Osame, M., Usuku, K., Izumo, S., Ijichi, N., Amitani, H., Igata, A., Matsumoto, M., Tara, M.: Lancet, 2, 407-408 (1986) Budka, H.: Acta Neuropathol., 77, 225-236 (1989) Stansly, P. 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