糖尿病神経障害の治療

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科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン
科
学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 2013
2013
9
糖尿病神経障害の治療
ス
ステートメント
テートメント
1
糖尿病神経障害の診断
糖尿病神経障害は糖尿病患者に最も多い合併症のひとつである.糖尿病患者を診察す
る際は必ず神経障害の有無を確認し,神経障害が存在する場合には,病期を診断する
ことが望ましい. グレード A コンセンサス
糖尿病神経障害の診断に際しては,神経症状の聴取を行うとともに,痛覚(爪楊枝・竹
串)
,振動覚(C128 音叉)
,圧触覚(モノフィラメント)などの感覚検査やアキレス腱反
射検査を実施し,総合的に評価する.足の乾燥,亀裂,胼胝,潰瘍などの所見は神経
障害の存在を示唆しているので参考になる. グレード A コンセンサス
自律神経機能の評価に心拍変動検査は簡便で有用である. グレード A コンセンサス
神経伝導検査は糖尿病神経障害の診断を確実にするために必須であり,無症候性神経
障害の診断に有用である. グレード A コンセンサス
糖尿病神経障害の病態を経年的に把握するためには,上記の検査を定期的に実施する
ことが必要である. グレード A コンセンサス
2
糖尿病神経障害の発症・進展
糖尿病神経障害の発症・進展に関与するリスク因子には,①血糖コントロールの不良,
②糖尿病罹病期間,③高血圧,④脂質異常,⑤喫煙,⑥飲酒などがあるが 1〜3)
,これら
のうち最も重要な因子は血糖コントロールの不良であり,血糖コントロールの不良な
症例では高頻度に神経障害が出現する 4)
. グレード A
厳格な血糖コントロールを行えば,糖尿病神経障害の発症・進展を抑制することがで
きる 5〜8)
.このエビデンスは 1 型糖尿病では明らかであるが,2 型糖尿病では必ずしも
確立していない 9)
. グレード A
3
糖尿病神経障害の基本的治療
糖尿病神経障害の治療においては,できる限り厳格な血糖コントロールを行うととも
に,禁酒,禁煙などの生活習慣の改善を指導する. グレード A コンセンサス
長期に高血糖が続いていた場合は,急速な血糖降下により一時的に神経症状が出現あ
るいは悪化することがあるので注意が必要である. グレード A コンセンサス
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4
有痛性神経障害の治療
有痛性神経障害が軽症の場合は血糖コントロールと生活習慣の改善で軽快する.非ス
テロイド性消炎鎮痛薬は軽症例でのみ有効である.中等症以上の場合は,第一選択薬と
して,三環系抗うつ薬 10〜13)
,α 2 δ リガンドであるプレガバリン 14〜18)
,選択的セロトニ
ン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬デュロキセチンが推奨される 19〜24)
. グレード B
解 説
1
糖尿病神経障害の臨床的分類
糖尿病神経障害は糖尿病患者における最も重要な合併症のひとつであり,遠位性対称性
b)
の多発神経障害と局所性の単神経障害に分けられる a, (表
1)
.前者は糖尿病神経障害の中
核病型であり最も頻度が高く,感覚・運動神経障害と自律神経障害に分けられる.
感覚・運動神経障害では,発症早期に下肢末端に,自発痛・しびれ感・錯感覚・感覚鈍
麻などの感覚異常が出現し,症状が上行するとともに,上肢末端にも症状が現れる.しば
しば患者の QOL は著明に低下させられる.通常,運動神経障害は臨床的に目立たないが,
病期が進むと注意深い観察により足内在筋の萎縮や足の変形が認められる.自律神経障害
は,瞳孔機能異常,起立性低血圧,心臓神経の障害(突然死,無痛性心筋梗塞)
,発汗異常,
消化管の運動障害(便秘,下痢)
,膀胱の機能障害,勃起障害など多彩な病態を呈し,しば
しば患者の日常生活は大きく損なわれる.
局所性の単神経障害には,脳神経障害(特に外眼筋麻痺)
,体幹・四肢の神経障害,糖尿
病筋萎縮(腰仙部根神経叢神経障害)などが含まれる.
近年,耐糖能異常の時期に糖尿病神経障害が発症しうる可能性が欧米で論議されている.
しかし,その存在については,人種差も含めて科学的視点に立脚した疫学的研究による裏
付けが急務である.
2
糖尿病神経障害の診断
糖尿病患者を診察する際には,必ず神経障害の有無あるいはその病期について診断する
ことが望ましい.
糖尿病神経障害に特異的な症状や検査は存在せず,国際的コンセンサスの得られた診断
基準も確立されていない.したがって,神経症状と検査結果から総合的に診断する必要が
あるが,米国糖尿病学会 c)
(表 2)や糖尿病性神経障害を考える会の提唱する診断基準 d)
(表 2)は妥当性が高く,日常診療に使用しうる.スクリーニングに有用な検査として,ア
キレス腱反射,振動覚,モノフィラメントを用いた圧触覚テスト,爪楊枝や竹串を用いた
痛覚検査などがあげられ,自律神経機能検査として心拍変動検査が簡便で有用である.定
期的にこれらの検査を実施することにより,神経障害の発症および進展を適切に評価する
ことができる.しかし,診断を確実にするためには神経伝導検査による評価を加える必要
がある.また,診断にあたっては糖尿病以外の疾患による末梢神経障害を除外する必要が
ある.
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表1
9
糖尿病神経障害の治療
糖尿病神経障害の分類と主な症状
分類
症状
多発神経障害
感覚運動神経障害
自律神経障害
急性有痛性神経障害
しびれ感,錯感覚,冷感,自発痛,アロディニア,感覚鈍麻
瞳孔機能異常,発汗異常,起立性低血圧,胃不全麻痺,便通異常(便秘,
下痢),胆囊無力症,膀胱障害,勃起障害,無自覚低血糖など
(治療後神経障害など)
単神経障害
脳神経障害
外眼筋麻痺(動眼・滑車・外転神経麻痺),顔面神経麻痺など
体幹・四肢の神経障害
手根管症候群,尺骨神経麻痺,腓骨神経麻痺,体幹部の単神経障害など
糖尿病筋萎縮
典型例は片側〜両側性臀部・大腿部筋萎縮・筋力低下を呈し疼痛を伴う
(腰仙部根神経叢神経障害)
表2
糖尿病神経障害の診断基準
糖尿病神経障害の診断基準(米国糖尿病学会 2010)
糖尿病多発神経障害の診断精度
Possible
診断項目
使用目的
以下のいずれか 1 項目の異常
日常臨床
弱 / 消失
Probable
以下の 3 項目うち 2 項目以上を満たす場合を “ 神経障害あ
(糖尿病神経障害を考える会の り ” とする
日常臨床
基準に相当)
弱 / 消失(徴候)
Confirmed
以下の 2 項目を満たす
日常臨床
臨床研究
糖尿病性神経障害を考える会の診断基準(1998 年作成,2000,2002 年改定)
必須項目
1.糖尿病が存在する.
2.糖尿病性多発神経障害以外の末梢神経障害を否定しうる.
以下の 3 項目のうち 2 項目以上を満たす場合を “ 神経障害あり ” とする.
1.糖尿病性多発神経障害に基づくと思われる自覚症状
2.両側アキレス腱反射の低下あるいは消失
3.両側内踝の振動覚低下
3
糖尿病神経障害の発症・進展と予防
糖尿病神経障害の発症・進展に関与するリスク因子には,①血糖コントロールの不良,
②糖尿病罹病期間,③高血圧,④脂質異常,⑤喫煙,⑥飲酒などがあるが 1〜3)
,これらのう
ち最も重要な因子は血糖コントロールの不良である.糖尿病神経障害の発症率は血糖コン
トロールの不良な患者ほど高く,その有病率は糖尿病罹病期間の経過とともに増加する 4)
.
血糖コントロールの改善が糖尿病神経障害の発症・進展を抑制するか否かについては 3
件の RCT が施行されている.米国で実施された 1,441 人の 1 型糖尿病を対象とした DCCT
(Diabetes Control and Complications Trial)5, 6)では,患者群をランダムに強化療法群と従来
療法群に割り付け,6.5 年間の観察を行っているが,観察期間中における HbA1c(NGSP)
の平均値は従来療法群で約 9.0%,強化療法群では約 7.0%であった.観察終了時における
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神経障害の発症率は,従来療法群で 13%,強化療法群で 5.0%であり,強化療法により神
経障害の発症が 60%抑制された.
Reichard ら 7)も 96 人の 1 型糖尿病を対象に強化療法による合併症抑制に関する研究を
行ったが,同様に強化療法により有意に神経障害の発症が抑制された.
2 型糖尿病を対象とした研究には,わが国で行われた Kumamoto Study 8)があり,110 人
の 2 型糖尿病患者をランダムに強化療法群と従来療法群に割り付け,強化療法の効果を調
べている.観察期間中の HbA1c は強化療法群で平均 7.1%(JDS)
[7.5%(NGSP)
]
,従来療
法群で平均 9.4%(JDS)
[9.8%(NGSP)
]であったが,強化療法により神経伝導速度と振動
覚閾値の悪化が有意に抑制された.
これらの結果は,強化療法による厳格な血糖コントロールが糖尿病神経障害の発症・進
展を抑制することを示すが,サブアナリシスの結果では HbA1c が低いほど神経障害の発
症・進展は少なく,その予防のためにはできる限り厳格な血糖コントロールを維持するこ
とが必要である.
DCCT 終了後,強化療法群と従来療法群は,同じ内容の血糖管理が施され神経所見の経
年的観察が行われた.血糖コントロールは 1 年後には両群間で差を認めなくなり,13〜14
年後の観察終了時,HbA1c(NGSP)は両群ともに約 8%であった.最終観察時の元強化療
法群の神経症状・感覚低下および神経伝導検査の異常率は従来療法群に比べて有意に低く,
DCCT 終了後の神経障害の新たな発症も有意に阻止された(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications(EDIC)研究)25)
.
また,糖尿病治療の基本である運動療法によっても,神経障害の発症が抑制されること
が報告されている 26)
.
4
糖尿病神経障害の基本的治療
糖尿病神経障害の治療において,最も重要な方策は血糖コントロールの改善である.飲
酒,喫煙なども神経障害を悪化させる可能性が大きいことから,これらの習慣をやめさせ
ることが必要である.
神経障害の最も深刻な症状のひとつは四肢末端の自発痛であるが,軽症の場合は血糖コ
ントロールと生活習慣の改善により軽快することが期待される.しかし,長期に高血糖が
続いていた患者の場合,急速な血糖低下により自発痛などの神経症状が出現あるいは悪化
する場合(治療後神経障害)があるので注意が必要である.治療後神経障害は良好な血糖コ
ントロールを維持すればやがて改善する.
アルドース還元酵素阻害薬(ARI)は糖尿病神経障害の発症機構のひとつであるポリオー
ル代謝活性の亢進を抑制する薬剤である.これまでに多数の ARI が開発され,臨床的有効
性が認められたものもある 27〜36)が,現在わが国で市販されているエパルレスタットが臨床
の場で用いられている唯一の ARI である.本剤は,196 人の神経障害を有する日本人糖尿
病患者を対象に RCT が行われ,有効性が認められた 28)
.臨床試験のサブアナリシスによれ
ば 29, 30)
,エパルレスタットは神経障害が中等度以下,罹病期間が 3 年以内の症例に有効であ
り,重症例や罹病期間の長い症例では無効であった.また,594 人の軽症糖尿病神経障害
の患者を対象とした 3 年間にわたる RCT において,正中神経における運動神経伝導速度の
遅延および F 波最小潜時の延長を有意に抑制するとともに自覚症状を有意に改善し,血糖
コントロールが良好なほど,細小血管症が軽微なほど運動神経伝導速度の遅延阻止効果が
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糖尿病神経障害の治療
顕著であった 35, 36)
.したがって,エパルレスタットの使用に際しては適応を考慮して使用す
ることが望ましい.また,小規模な研究ではあるが,エパルレスタットが自律神経機能を
改善する可能性があると報告されている 31)
.
糖尿病神経障害の発症機序として酸化ストレスの亢進が重要視されている.しかし,抗
酸化薬である α-リポ酸(わが国では未承認)は,神経症状と身体所見は改善するが,神経伝
導速度低下は改善しないことが報告されている 37, 38)
.
一方,わが国で比較的高頻度に糖尿病神経障害に用いられている薬剤としてメチルコバ
ラミンがあるが,RCT では有意な成績は得られていない.また,血管合併症に対して用い
られているプロスタグランジン製剤や抗血小板製剤などについても,実験動物では糖尿病
神経障害に対する有効性が示唆されているが,臨床効果は明らかではない.
5
有痛性神経障害の対症療法
糖尿病神経障害による疼痛が強く日常生活に支障をきたす場合は,血糖コントロールと
生活習慣の改善に加え,症状緩和のための薬物療法が必要である.軽症の場合は非ステロ
イド性消炎鎮痛薬も有効であるが,重症の場合は十分な効果を得ることは困難である.
中等度以上の有痛性糖尿病神経障害に対する症状改善薬としては,以前から使用されて
きたアミトリプチリン,イミプラミンなどの三環系抗うつ薬に加えて,近年,α 2 δ リガン
ドであるプレガバリンとセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるデュロキ
セチンが最も推奨されている.三環系抗うつ薬の鎮痛効果は抗うつ作用によるものではな
く,神経末端におけるノルアドレナリン再取り込み抑制作用によるものである 10〜13)
.副作
用は,眠気・注意力低下などの精神神経系の症状と口渇・排尿排便障害・眼圧亢進などの
抗コリン作用であり,緑内障や排尿排便困難を有する患者に対する使用は好ましくない.
プレガバリンは脊髄後角の痛覚線維の一次ニューロン終末部の Ca チャネル α 2 δ ユニット
に結合して Ca 流入を抑制することにより痛覚伝導を抑制する.本剤は腎排泄により代謝
されるので,腎機能障害を有する患者では用量を減じる必要がある.また,副作用として,
めまいと浮腫(原因不明)がある.デュロキセチン 19)は下行性抑制系のセロトニン・ノルア
ドレナリン神経末端において各トランスポーターに結合することで再取り込みを阻害し,
一次痛覚ニューロン終末部への抑制効果を増強させる.副作用として傾眠と嘔気の頻度が
高いが高度ではない.
カルバマゼピン 39)やガバペンチン 40)などの抗痙攣薬も有痛性糖尿病神経障害に有効で
あることが報告されているが,健康保険上の適用はない.
抗不整脈薬であるメキシレチンの有痛性糖尿病神経障害に対する効能が,主にわが国の
臨床試験の成績に基づき承認されている 41)
.注意すべき副作用として不整脈があり,心疾
患を有する患者では不整脈の出現に注意しなければならない.
上述の薬剤によっても疼痛コントロールが不十分な中等症以上の疼痛を伴う糖尿病神経
障害に対して,徐放性オキシコドンは有意に疼痛を緩和するとともに QOL を改善すること
が報告されている 42, 43)
.しかし,オピオイドは耽溺性などの副作用が大きな問題であり,わ
が国では,糖尿病神経障害に伴う疼痛に対するオピオイド使用のコンセンサスはできてお
らず,保険適用もなかった.しかし,近年,弱オピオイドのトラマドールとアセトアミノ
フェンの合剤 44)の使用が認可された.臨床試験で高頻度に悪心・嘔吐・傾眠・便秘などが
観察されており,有用性についての評価には今後の観察が必要である.
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6
自律神経障害の治療
自律神経障害が出現すると,自律神経の関与する全身臓器の機能異常をきたすため,発
汗異常,起立性低血圧,胃不全麻痺,便通異常,膀胱機能障害,勃起障害,無自覚低血糖
などの多彩な症状を示す.神経障害が軽症の場合は,血糖コントロールの改善と生活習慣
の改善を行えば,これらの機能障害は改善することが多い.しかし,神経障害が進行し,
日常生活を障害する場合は,症状に応じた薬物による対症療法が必要である.
起立性低血圧に対しては,まず血圧低下をきたしやすい薬剤を中止するとともに,立位
時などに急激な体位変換を避けるように指導する.食事の少量頻回摂取は食後の血圧低下
予防に有効である.弾性下着による下肢・下腹部の圧迫は起立性低血圧に有効であり,塩
分摂取,酢酸フルドロコルチゾンの投与も有効であるが,これらは浮腫や心不全をきたし
やすく注意が必要である.昇圧薬も症例によっては有効であるが,臥位での高血圧をきた
しやすく,臨床的有用性を考慮しながら使用すべきである.
胃不全麻痺に対しては,食事の少量頻回摂取,脂肪および繊維の摂取制限を行う.軽症
例では,これらの対症療法のみで症状が改善することも多い.薬物療法が必要な場合は,
メトクロプラミド,ドンペリドンが有効であるが,いずれも長期使用により副作用として
錐体外路症状をきたしやすく注意が必要である.抗生物質のエリスロマイシンも消化管運
動改善作用のあることが報告されているが 45)
,わが国では胃不全麻痺に対する使用は承認
されていない.
勃起障害に対しては,まず勃起障害をきたしやすい薬剤の中止が必要である.薬物療法
が必要な症例にはホスホジエステラーゼ阻害薬であるシルデナフィル 46)あるいはバルデナ
フィル 47)が有効である.ただし,虚血性心疾患に対してニトログリセリンや亜硝酸薬を使
用している場合は,ホスホジエステラーゼ阻害薬の使用は重篤な血圧低下をきたすおそれ
が大きいことから禁忌である.ホスホジエステラーゼ阻害薬が無効の場合は泌尿器科医へ
紹介する.
罹病期間が長く,神経障害の進展した症例では,無自覚低血糖を起こすリスクがある.
このような症例には頻回の血糖自己測定を行わせ,できる限り低血糖を避けることが必要
である(
「22.糖尿病の療養指導・患者教育」参照)
.重篤な低血糖を起こすと,その直後は
無自覚低血糖を起こしやすくなることから,しばらくの間,目標血糖値をやや高めに設定
するほうがよい.
7
単神経障害の治療
糖尿病患者では脳神経や四肢・体幹の神経における単神経障害も多い.単神経障害の多
くは栄養血管の閉塞が原因であり,動脈硬化症との関連が強く,糖尿病罹病期間や血糖コ
ントロール状態とは必ずしも相関しない.単神経障害は,血糖コントロールとは無関係に
自然に軽快することが多いものの,多くの例で感覚・運動神経障害や自律神経障害を伴っ
ていることから,血糖コントロールと生活習慣の改善を指導することが必要である.
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文
9
糖尿病神経障害の治療
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ble-blind parallel group study. Diabetes Care 24:1776-1782, 2001 レ
レベル❶
ベル❶
34) Bril V, Buchanan RA:Aldose reductase inhibition by AS-3201 in sural nerve from patients
with diabetic sensorimotor polyneuropathy. Diabetes Care 27:2369-2375, 2004 レ
レベル❶
ベル❶
35) Hotta N, Akanuma Y, Kawamori R et al:Long-term clinical effects of epalrestat, an aldose
122
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013,南江堂,2013
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9
糖尿病神経障害の治療
reductase inhibitor, on diabetic peripheral neuropathy:the 3-year, multicenter, comparative
Aldose Reductase Inhibitor-Diabetes Complications Trial. Diabetes Care 29:1538-1544, 2006
レベル❶
レ
ベル❶
36) Hotta N, Kawamori R, Atsumi Y et al: Stratified analyses for selecting appropriate target
patients with diabetic peripheral neuropathy for long-term treatment with an aldose reductase inhibitor, epalrestat. Diabet Med 25:818-825, 2008 レ
レベル❸
ベル❸
37) Ziegler D, Nowak H, Kempler P et al:Treatment of symptomatic diabetic polyneuropathy
with the antioxidant alpha-lipoic acid: a meta-analysis. Diabet Med 21: 114-121, 2004
レベル❶
レ
ベル❶
38) Ziegler D, Low PA, Litchy WJ et al:Efficacy and safety of antioxidant treatment with alphalipoic acid over 4 years in diabetic polyneuropathy:the NATHAN 1 trial. Diabetes Care 34:
2054-2060, 2011 レ
レベル❶
ベル❶
39) McQuay H, Carroll D, Jadad AR et al:Anticonvulsant drugs for management of pain:a systematic review. BMJ 311:1047-1052, 1995 レ
レベル❶
ベル❶
40) Backonja M, Beydoun A, Edwards KR et al:Gabapentin for the symptomatic treatment of
painful neuropathy in patients with diabetes mellitus:a randomized controlled trial. JAMA
280:1831-1836, 1998 レ
レベル❶
ベル❶
41) 松岡健平,平田幸正,金澤康徳ほか:塩酸メキシレチン(Mx-Pdn)の糖尿病性神経障害に対
する二重盲検比較試験.医学と薬学 38:759-776, 1997 レ
レベル❶
ベル❶
42) Watson CP, Moulin D, Watt-Watson J et al: Controlled-release oxycodone relieves neuropathic pain:a randomized controlled trial in painful diabetic neuropathy. Pain 105:71-78,
2003 レ
レベル❶
ベル❶
43) Gimbel JS, Richards P, Portenoy RK:Controlled-release oxycodone for pain in diabetic neuropathy:a randomized controlled trial. Neurology 60:927-934, 2003 レ
レベル❶
ベル❶
44) Ko SH, Kwon HS, Yu JM et al: Comparison of the efficacy and safety of tramadol/acetaminophen combination therapy and gabapentin in the treatment of painful diabetic neuropathy. Diabet Med 27:1033-1040, 2010 レ
レベル❶
ベル❶
45) Erbas T, Varoglu E, Erbas B et al:Comparison of metoclopramide and erythromycin in the
treatment of diabetic gastroparesis. Diabetes Care 16:1511-1514, 1993 レ
レベル❸
ベル❸
46) Rendell MS, Rajfer J, Wicker PA et al:Sildenafil for treatment of erectile dysfunction in men
with diabetes:a randomized controlled trial:Sildenafil Diabetes Study Group. JAMA 281:
421-426, 1999 レ
レベル❶
ベル❶
47) Goldstein I, Young JM, Fischer J et al:Vardenafil, a new phosphodiesterase type 5 inhibitor,
in the treatment of erectile dysfunction in men with diabetes: a multicenter double-blind
placebo-controlled fixed-dose study. Diabetes Care 26:777-783, 2003 レ
レベル❶
ベル❶
【参考にした資料】
a) 堀田 饒:神経障害.カレント内科 No.6—糖尿病,豊田隆謙(編)
,金原出版,東京,p145154,1996
b) Boulton AJ, Vinik AI, Arezzo JC et al:Diabetic neuropathies:a statement by the American
Diabetes Association. Diabetes Care 28:956-962, 2005
c) Tesfaye S, Boulton AJ, Dyck PJ et al:Diabetic neuropathies:update on definitions, diagnostic criteria, estimation of severity, and treatments. Diabetes Care 33:2285-2293, 2010
d)糖尿病性神経障害を考える会:糖尿病性多発神経障害の診断基準と病期分類.末梢神経 23:
109-111, 2012
123
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アブストラクトテーブル
アブストラクトテーブル
論文コード
対
象
方
法
結
果
1)Tesfaye S et al, 2005
神経障害を有さない 1 型糖尿 神経障害の発症率と各種リスク 対 象 者 の 神 経 障 害 発 症 率 は
コホート研究 病患者(1,172 人)
因子との関係について解析
23.5% で あ り , 血 糖 コ ン ト
ロールおよび糖尿病罹病期間に
レベル❷
レ
ベル❷
加えて,脂質異常,高血圧,喫
煙,肥満などが有意なリスク因
子であった
2)Forrest KY et al, 1997
神経障害のない小児期発症の 6 年間観察し,神経障害の発症
コホート研究 IDDM 患者(463 人).そのう 率とリスク因子を解析
レベル❷
レ
ベル❷ ち,経過観察を受けた 453 人
について解析
6 年間で 15.0%の患者が神経
障害を発症.有意なリスク因子
は糖尿病罹病期間,高血圧,血
糖コントロール不良,身長,喫
煙であった.なかでも,血糖,
血圧の管理,禁煙が特に重要
3)Adler AI et al, 1997
神 経 障 害 の な い 糖 尿 病 患 者 平均 2.4 年間観察し,神経障 288 人中 58 人が神経障害を
コホート研究 387 人のうち,観察の終了し 害発症のリスク因子を解析
発症.神経障害発症の有意なリ
スク因子は年齢,HbA1c,身
レベル❷
レ
ベル❷ た 288 人
長,潰瘍の既往,飲酒であり,
喫煙,血清アルブミン値は逆相
関であった
4)Partanen J et al, 1995
新規発症 NIDDM 患者 132 人 NIDDM vs 健常者[10 年間観 NIDDM では神経障害の発症率
コホート研究 と 健 常 者 142 人 .そ れ ぞ れ 察]
が増加した.10 年後の神経障
害罹患率は NIDDM で 41.9%,
レベル❷
レ
ベル❷ 86 人,121 人が観察を終了
健常者で 5.8%であった
5)DCCT Research Group,
IDDM 患者 1,441 人を強化療 強化療法 vs 従来療法[平均
1993
法 群(730 人)と 従来療法群 6.5 年間観察]
RCT (711 人)に割り付け
レベル❶+
レ
ベル❶+
観察期間中における平均
HbA1c(NGSP)は強化療法群
で約 7.0%,従来療法群で約
9.0%.神経障害発症率は強化
療法群で 5.0%,従来療法群で
13%であり,強化療法は神経
障害発症を 60%抑制した
6)DCCT Research Group,
IDDM 患者 1,441 人を強化療 強化療法 vs 従来療法[平均
1995
法 群(730 人)と 従来療法群 6.5 年間観察]
.上記 DCCT 研
RCT (711 人)に割り付け
究の神経障害に関する詳細報告
レベル❶+
レ
ベル❶+
強化療法群,従来療法群におけ
る臨床的神経障害の発症率は
5%,13%で,強化療法は神経
障害の発症を 64%抑制した.
強化療法は神経伝導速度異常の
発症率を 44%抑制し(それぞ
れ 26%,46%)
,自律神経機
能異常の発症率を 53%(それ
ぞれ 4%,9%)抑制した
7)Reichard P et al, 1991
IDDM 患者 96 人を強化療法群 強化療法 vs 従来療法[5 年間 観察期間中の HbA1c(NGSP)
RCT (44 人)と従来療法群(52 人) 観察]
は強化療法群で約 7.2%,従来
療法群で約 8.7%であり,強化
レベル❶
レ
ベル❶ に割り付け
療法は神経障害発症を有意に抑
制したが,低血糖と体重増加を
きたした
124
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論文コード
対
象
9
方
糖尿病神経障害の治療
法
結
果
8)Ohkubo Y et al, 1995
日本人 NIDDM 患者 110 人に 強化療法 vs 従来療法[6 年間 観察期間中の HbA1c 平均は強
RCT インスリン治療を行い,強化療 観察]
化療法群で 7.1%
(JDS)
[7.5%
( NGSP)], 従 来 療 法 群 で
レベル❶
レ
ベル❶ 法群(55 人)と従来療法群(55
人)に割り付け
9.4%(JDS)
[9.8%(NGSP)
]
であったが,強化療法により神
経伝導速度が有意に改善し,振
動覚閾値の悪化が有意に少な
かった.起立時血圧低下度,心
電図 RR 間隔は有意差がない
9)UKPDS 33, 1998
新たに 2 型糖尿病と診断され 2 型糖尿病で血糖管理従来群
RCT た患者(3,867 人)
(食事)と強化群(経口薬・イン
スリン)の 2 群間で細小血管・
レベル❶+
レ
ベル❶+
大血管合併症発症に差があるか
比較検討
アキレス腱反射・膝蓋腱反射消
失の割合および深呼吸/起立に
対する心拍変動は両群で有意差
なし.12 年後,15 年後のみ
の解析で心拍変動,振動覚閾値
が有意に従来群で低下した
10)Gomez-Perez FJ et al,
有痛性神経障害を有する糖尿病 ノルトリプチリン・フルフェナ ノルトリプチリン・フルフェナ
1985
患者(24 人)
.18 人が試験を ジン合剤 vs プラセボ[30 日服 ジン合剤は疼痛および異常感覚
RCT 完了
薬の効果をクロスオーバー法で のスコアを有意に改善した
観察]
レベル❶
レ
ベル❶
11)Max MB et al, 1987
有痛性神経障害を有する糖尿病 アミトリプチリン vs プラセボ アミトリプチリン投与にて疼痛
RCT 患者(37 人)
.29 人が試験を [6 週服薬の効果をクロスオー スコアが有意に改善した.14
バー法で観察]
人がうつ状態であったが,疼痛
レベル❶
レ
ベル❶ 完了
スコアの改善とうつ状態の改善
は無関係であった
12)Max MB et al, 1991
有痛性神経障害を有する糖尿病 デシプラミン vs プラセボ[6 デシプラミン投与にて疼痛スコ
RCT 患者(24 人)
.20 人が試験を 週服薬の効果をクロスオーバー アが有意に改善した.うつ状態
法で観察]
の患者のほうが疼痛改善効果が
レベル❶
レ
ベル❶ 完了
大きい傾向があった
有痛性神経障害を有する糖尿病 デシプラミン(D)vs アミトリ
RCT 患者(54 人)
.試験を完了した プチリン(A)
.フルオキセチン
[6 週服薬
レベル❶
レ
ベル❶ のは D vs A 試験で 38 人,F (F)vs プラセボ(P)
vs P 試験で 46 人
の効果をクロスオーバー法で観
察]
13)Max MB et al, 1992
疼痛改善率は D 群で 61%,A
群 で 74% ,F 群 で 48% ,P
群で 41%であり,D と A は有
効と判定されたが,F は無効と
判定された
有 痛 性 糖 尿 病 神 経 障 害 患 者 プレガバリン 300mg(分 3)と 一次エンドポイント平均疼痛ス
(146 人)
プラセボ 2 群間比較[8 週間投 コア(NRS)は 1 週目から実薬
RCT
与]
群でプラセボ群に比べて有意な
改善を認めた
レベル❶
レ
ベル❶
14)Rosenstock J et al,
2004
有痛性神経障害を有する糖尿病 プレガバリン(150〜600mg, プレガバリンは用量依存性に糖
15)Freeman R et al, 2008
メタアナリシス 患者(1,510 人)
5〜13 週間)の RCT 7 件から 尿病神経障害の疼痛を改善した
得られた成績をメタアナリシス
レベル❶
レ
ベル❶
有 痛 性 糖 尿 病 神 経 障 害 患 者 プレガバリン 300mg および 一次エンドポイント平均疼痛ス
16)Lesser H et al, 2004
RCT (338 人)
600mg(分 3)とプラセボ群の コア(NRS)は 1 週目から実薬
3 群間比較[5 週間投与]
群でプラセボ群に比べて有意な
レベル❶
レ
ベル❶
改善を認めた
有 痛 性 糖 尿 病 神 経 障 害 患 者 プレガバリン 150mg および 一次エンドポイント平均疼痛ス
17)Richter RW et al, 2005
RCT (246 人)
600mg(分 3)とプラセボ群の コア(NRS)は 2 週目から 600
3 群間比較[6 週間投与]
mg 群でプラセボ群に比べて有
レベル❶
レ
ベル❶
意な改善を認めたが,150mg
群では効果はなかった
125
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論文コード
対
象
方
法
結
果
18)Satoh J et al, 2011
糖尿病神経障害に伴う疼痛を有 プレガバリン 300mg(分 2)
, 投与 1 週目からプレガバリン
RCT する患者(317 人)
600mg(分 2)
,プラセボ 3 群 300mg,600mg 投与群とも
間比較[12 週間投与]
にプラセボ群に比べ 24 時間平
レベル❶
レ
ベル❶
均疼痛スコア(NRS)の改善が
認められた
19)Pritchett YL et al, 2007
有痛性神経障害を有する糖尿病 デュロキセチン(20〜60mg) デュロキセチン(60mg)投与 1
メタアナリシス 患者(1,139 人)
の RCT 3 件から得られた成績 週間で有意な疼痛の緩和が得ら
をメタアナリシス
れた
レベル❶
レ
ベル❶
20)Goldstein DJ et al, 2005 疼痛を有する糖尿病患者(457 デュロキセチン 20mg(分 1)
, 一次エンドポイント 24 時間平
RCT 人)
60mg(分 1),120mg(分 2) 均 疼 痛 ス コ ア は 1 週 目 か ら
と プ ラ セ ボ 群 の 4 群 間 比 較 60mg と 120mg 群でプラセ
レベル❶
レ
ベル❶
[12 週間投与]
ボ群に比べ有意な改善を認めた
21)Raskin J et al, 2005
糖尿病性神経因性疼痛を有する デュロキセチン 60mg(分 1)
, 一次エンドポイント 24 時間平
RCT 患者(348 人)
120mg(分 2)とプラセボ群の 均 疼 痛 ス コ ア は 1 週 目 か ら
3 群間比較[12 週間投与]
60mg および 120mg 群でプ
レベル❶
レ
ベル❶
ラセボ群に比べ有意な改善を認
めた
22)Wernicke JF et al, 2006 糖尿病性神経因性疼痛を有する デュロキセチン 60mg(分 1)
, 一次エンドポイント 24 時間平
RCT 患者(334 人)
120mg(分 2)とプラセボ群の 均 疼 痛 ス コ ア は 1 週 目 か ら
3 群間比較[12 週間投与]
60mg および 120mg 群でプ
レベル❶
レ
ベル❶
ラセボ群に比べ有意な改善を認
めた
23)Kajdasz DK et al, 2007
有痛性神経障害を有する糖尿病 デュロキセチン 60mg(分 1)
, NNT:5.3(60mg)vs 4.94.9
メタアナリシス 患者 1,024 人(1,139 人)
.文 120mg(分 2)
,プラセボ 3 群 ( 120mg), NNHs( number
needed to harm)
:17.5(60
レベル❶
レ
ベル❶ 献 19 と同じ対象に異なる手法 間比較[12 週間投与]
で解析
mg)vs 8.8(120mg)で本剤
は疼痛に有効かつ薬剤耐容性が
ある
24)Yasuda H et al, 2011
糖尿病神経障害に伴う疼痛を有 デュロキセチン 40mg,60mg 投与 2 週目(60mg 群で は 1
RCT する患者(339 人)
(分 2),プラセボ 3 群間比較 週目)からデュロキセチン 40
[12 週間投与]
mg,60mg,併合群ともにプ
レベル❶
レ
ベル❶
ラセボ群に比べ 24 時間平均疼
痛スコア(NRS)の改善が認め
られた
25)Albers JW et al, 2010
DCCT に参加した,強化療法 2 群を同じインスリン治療方法
コホート研究 患者(603 人)および従来療法 で DCCT 後から 13〜14 年経
過観察.両群の神経障害と神経
レベル❷
レ
ベル❷ 患者(583 人)
機能の推移を比較検討[RCT
後の観察研究]
強化療法群[HbA1c(NGSP)
7.3%]は従来療法群(9.1%)に
比 べ て 試 験 終 了 時( 両 群
7.8%)
,神経症状・徴候および
神経伝導検査の一部は有意な改
善を持続させていた
26)Balducci S et al, 2006
神経障害を有さない糖尿病患者 運動療法群と対照群[4 年間観 運動療法群と対照群における運
RCT (78 人)
察]
動 神 経 障 害 発 症 率 は 0% と
17%,感覚神経障害発症率は
レベル❶
レ
ベル❶
6.45%と 29.8%で,運動療法
群で神経障害の発症が有意に抑
制された
27)Pfeifer MA et al, 1997
1981〜1993 年 2 月に出版さ 各種アルドース還元酵素阻害薬 アルレスタチン,ソルビニル,
システマティックレビュー れた RCT 文献 35 編
の糖尿病神経障害に対する効果 ポナルレスタット,トルレス
タットはいずれも神経障害に有
レベル❶
レ
ベル❶
効性を示さない.ARI が有効性
を示さない原因について詳しく
考察
126
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013,南江堂,2013
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論文コード
対
象
9
方
糖尿病神経障害の治療
法
結
果
28)後藤由夫ほか, 1990
糖尿病神経障害(自発痛,感覚 エパルレスタット(E)vs プラ 自発痛の改善率は,上肢で E
RCT 障害)を有する日本人糖尿病患 セボ(P)
[12 週服薬の効果]
群 42.9%,P 群 12.0%,下肢
で E 群 48.6%,P 群 22.6%
レベル❶
レ
ベル❶ 者(196 人)
で,E 群で有意に改善した.他の
神経機能検査でも E 群では P
群より有意に改善した
29)Goto Y et al, 1993
糖尿病神経障害(自発痛,感覚 エパルレスタット(E)vs プラ 文献 28 のサブアナリシス.E
RCT 障害)を有する日本人糖尿病患 セボ(P)
[12 週服薬の効果]
は HbA1c( JDS) ≧ 7.1%
[HbA1c(NGSP)≧7.5%],
レベル❶
レ
ベル❶ 者(196 人)
中等症の患者に特に有効であっ
た
30)Goto Y et al, 1995
糖尿病神経障害(自発痛,感覚 エパルレスタット(E)vs プラ 文献 28 のサブアナリシス.E
RCT 障害)を有する日本人糖尿病患 セボ(P)
[12 週服薬の効果]
は HbA1c( JDS) ≧ 7.5%
[HbA1c(NGSP)≧7.9%],
レベル❶
レ
ベル❶ 者(196 人)
神経障害発症 3 年以内,軽症〜
中等症の患者に特に有効であっ
た
31)Nakayama M et al, 2001 軽症の神経障害を有する日本人 エパルレスタット 150mg vs エパルレスタット投与群は非投
RCT 2 型糖尿病患者(30 人)
非投与[24 週服薬の効果]
与群に対し,自律神経機能検
査,神経伝導速度の一部が有意
レベル❸
レ
ベル❸
に改善した
32)Greene DA et al, 1999
軽症〜中等症の神経障害を有す ゼナレスタット vs プラセボ ゼナレスタット群はプラセボ群
RCT る糖尿病患者(208 人)
[52 週服薬の効果]
に対し,神経伝導速度の低下,
組織学的神経線維の減少を有意
レベル❶
レ
ベル❶
に抑制した
33)Hotta N et al, 2001
神経障害を有する日本人糖尿病 フィダレスタット vs プラセボ フィダレスタット群はプラセボ
RCT 患者(279 人)
[52 週服薬の効果]
群に対し,神経伝導速度および
神経症状を有意に改善した
レベル❶
レ
ベル❶
34)Bril V et al, 2004
軽症〜中等症の神経障害を有す ラニレスタット 5mg vs 20mg AS-3201 20mg はプラセボ群
RCT る糖尿病患者(101 人)
.93 人 vs プラセボ[12 週服薬の効 に対して感覚神経伝導速度を有
果]
意に改善した
レベル❶
レ
ベル❶ が試験を完了
35)Hotta N et al, 2006
軽症の神経障害を有する糖尿病 エパルレスタット 150mg vs エパルレスタット投与群では非
RCT 患者(634 人)
.594 人が試験 非投与[3 年間服薬の効果]
投与群に比して神経伝導速度の
遅延を有意に抑制された
レベル❶
レ
ベル❶ を完了
36)Hotta N et al, 2008
軽症の神経障害を有する糖尿病 エパルレスタット 150mg vs 血糖コントロールが良好で合併
RCT 患者(594 人)
.504 人のデー 非投与[3 年間服薬の効果]
症の程度が軽微であるほどエパ
ルレスタットの効果は顕著に認
レベル❸
レ
ベル❸ タを解析
められる
37)Ziegler D et al, 2004
感覚神経症状を有する糖尿病患 α-リポ酸(600mg/日,3 週間 α-リポ酸は神経症状と身体所
メタアナリシス 者(1,258 人)
静注)の RCT 4 件から得られ 見を改善する
た成績をメタアナリシス
レベル❶
レ
ベル❶
38)Ziegler D et al
軽症〜中等症の糖尿病神経障害 α-リポ酸 600mg(233 人)vs
(NATHAN 1 trial),2011
患者(460 人)
プラセボ(227 人)の 4 年間投
RCT
与の比較
レベル❶
レ
ベル❶
一次エンドポイント(複合スコ
ア)は有意差なし.神経障害ス
コアの一部の増悪が実薬群で少
なかった
39)McQuay H et al, 1995
1966〜1994 年 2 月に出版さ 抗痙攣薬の疼痛治療に対する効 糖尿病神経障害に対する抗痙攣
システマティックレビュー れた RCT 文献 37 編
果
薬については 3 論文があり,
カルバマゼピンに関して 1 論文
レベル❶
レ
ベル❶
で有効,フェニトインに関して
1 論文で有効,1 論文で無効
127
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013,南江堂,2013
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論文コード
対
象
方
法
結
果
40)Backonja M et al, 1998
有痛性神経障害を有する糖尿病 ガバペンチン vs プラセボ[8 ガバペンチン投与にて疼痛スコ
RCT 患者(165 人)
週服薬の効果]
アが有意に改善した
レベル❶
レ
ベル❶
41)松岡健平ほか, 1997
有痛性神経障害を有する日本人 メキシレチン 300mg vs プラ 自発痛改善率はメキシレチン群
RCT 糖尿病患者(118 人)
セボ[2 週服薬の効果]
で 46.6% , プ ラ セ ボ 群 で
13.3%であり,メキシレチン
レベル❶
レ
ベル❶
群で有意に改善した
42)Watson CP et al, 2003
中等症以上の有痛性神経障害を 徐 放 性 オ キ シ コ ド ン( 20〜 徐放性オキシコドンは有意に疼
RCT 有する糖尿病患者(45 人)
.36 80mg/日,最長 4 週間)vs プ 痛を緩和するとともに QOL を
ラセボ[クロスオーバー試験] 改善した
レベル❶
レ
ベル❶ 人が試験を完了
43)Gimbel JS et al, 2003
中等症から重症の有痛性神経障 徐放性オキシコドン(20〜120 徐放性オキシコドンは有意に疼
RCT 害を有する糖尿病患者(159 mg/日,最長 6 週間)vs プラ 痛を緩和した
.115 人が試験を完了
セボ
レベル❶
レ
ベル❶ 人)
44)Ko SH et al, 2010
有 痛 性 糖 尿 病 神 経 障 害 患 者 平均投与量トラマドール 37.5 両群ともに投与前に比べて 6
RCT (163 人)
mg/アセトアミノフェン 325 週 後 に 有 意 な 疼 痛 ス コ ア
mg 合剤 4.22 錠/日とガバペン (NRS)の改善を認めたが,両
レベル❶
レ
ベル❶
チン 1,575mg/日の 2 群比較 群間に有意な差はなかった
(6 週間投与)
45)Erbas T et al, 1993
胃排出機能障害を有する糖尿病 メトクロプラミド vs エリスロ 両薬剤ともに服薬前に比し胃排
RCT 患者(13 人)
マイシン[3 週服薬の効果]
出時間が有意に短縮したが,エ
リスロマイシンのほうが改善度
レベル❸
レ
ベル❸
が大きかった
46)Rendell MS et al, 1999
勃起障害を有する男性糖尿病患 シルデナフィル vs プラセボ 勃起障害改善率はシルデナフィ
RCT 者(268 人)
[12 週服薬の効果]
ル 群で 56%で ,プ ラ セ ボ 群
10%に比し有意に改善した
レベル❶
レ
ベル❶
47)Goldstein I et al, 2003
勃起障害を有する男性糖尿病患 バ ル デ ナ フ ィ ル 10mg vs バルデナフィルは用量依存性に
RCT 者(452 人)
20mg vs プラセボ[12 週服薬 勃起障害を改善した
の効果]
レベル❶
レ
ベル❶
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科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013,南江堂,2013