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特別講演
国土強靭化と今後の展望 ∼交通・物流の強靭化∼
古屋圭司氏 (衆議院議員/初代国土強靭化担当大臣)
古屋圭司でございます。大勢の皆様にご参加をいただきまして、ありがとうございま
す。私もレジリエンス協議会の特別顧問の立場で感謝申し上げたいと思います。
この国土強靭化というのは、いま赤澤副大臣から最新の取り組みをご説明頂きましたけれ
ども、要するに技術革新のオリンピックなんですよ。言い換えれば。単に、対策を講じる
ことによってマイナスを減らすという発想ではないのです。つまり、単に減災・防災とい
う発想だけではないのです。むしろこれを取り組むことによって成長戦略につなげてい
く、技術革新につなげていく、結果としてアベノミクス―成長戦略へもつながっていく。
ここが一番のポイントなんです。だから、今日は民間の方大勢いらしていると思いますけ
れども、ビジネスチャンスが山ほど転がっています。
そのビジネスチャンスをしっかり捕えたのは、今日、後で講演をされる冨田社長率いる
ジオ・サーチなのでしょうね。特に道路だとか橋梁の老朽化、このチェックって大変なん
ですよね。今日は、地方公共団体みなさん関係者もいらっしゃると思いますが、(橋梁床
版の検査では目視以外に)打音検査をするんですね。これ本当に手間がかかるんですよ、
お金も時間もかかるんですよ、マンパワーですから。その結果は、正確かっていうと、あ
んまり正確じゃないんですよ、申し訳ないんだけど。医者に例えると、問診による検査
か、MRIとかCTを使った検査かどっちが確実かって、当然後者なんですね。10年前15
年前MRIやCTなんて一般的じゃなかったですよ。最先端医療で保険の対象でもなかった。
でも今もう当たり前のようにやってるじゃないですか。
例えばJR東海が運営しています東海道新幹線、もう50年になります。実は50年経ち
ますと相当大規模改修が必要なんですね。当初、大規模改修のために1兆円ぐらいかか
るって言ってたんですよ。でも修復のための技術革新がどんどん進歩していった。実はそ
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れは単に修復だけのための技術の適用ではなくて、他にも転用できるんですね。それに
よって多分数千億減ってるでしょう。だから恐らく、完遂するころには(技術革新によっ
て)予算の半分程度で、より安全な施設が出来上がるかもしれません。それと同じこと
で、例えば橋梁だとかを車(スケルカ)で60kmで走らせてCTとかMRIで見るように(内部
の劣化箇所を)見事にチェックをしていく。あとでいろいろな具体的な例の話があると思
いますので、実はこれは物流をしっかり安定的にしていく意味で極めて重要な政策なんで
すね。やっぱりそれは、道路は安全でなくては物流は保たれませんので。そういう取り組
みをしていただいているということです。
今日はたまたま米田先生もお見えになっているということで、アクションプログラム2
015国土強靭化基本計画に基づきまして、毎年改訂をしていますけれども、今年も6月
16日に改訂されました。けれども、みなさん、いざ災害が起きた時に、(物流の面から
考えると)本当にどこの道路が走れるかという事は大切ですよね。(現在)地図にプロッ
ティングされているのは、もちろん国道・県道・主要地方道・市町村道、あるいは林道は
全部プロッティングされてますけれど、実はそのほかにプロッティングされていない道
路ってあるんですね。それは電力会社とか通信会社が維持管理している鉄塔の維持管理、
あるいは電波塔の維持管理のために使っている。これは、一般に公開されてなくて地図に
もプロッティングされていない。それを米田先生は、これをうまく日ごろから使えばいい
じゃないか、というようなことを提案されています。これによって、たまたま岐阜県は実
証実験もしたんですが、これによって平時も活用できて有事の際にはそういった道路も活
用できる。ということは、物流を災害があっても安定的に確保するという視点から極めて
重要なんですね。だから、こういう知恵を出していくことによって、幾らでもビジネス
チャンスもあるし、そして新たな取り組みもできる。そして結果として技術革新を進めて
いくことができる。
例えばみなさんITSとか今ブログ情報というのがどんどん開示されていますけれども、
こういったものを上手に活用することによって、いざ災害が起きた時も混乱が無く対応す
ることができる。今、国土強靭化計画の地方版を全国で作ってもらってます。既に公表し
た都道府県が35ぐらいあるかな。市が10いくつで、それでもう議決をしていただいた
のが5県ぐらい、それから4つの市ぐらいだったですかね。(今後は)どんどん増えてい
くと思います。そういう中でもですね今私が申し上げたようなこういう取り組みをしてい
きましょう、あるいはさっきミッシングリンクの指摘が副大臣からありましたけれども、
そんなミッシングリンクをしっかり解消していきましょう。要するに国土強靭化計画の基
本的な考え方である、優先順位をつけて松・竹・梅で松をまず中心にやるというところな
んですね。今まで私がいろいろな場で申し上げてるんですが、これまでの良い知事ってい
うのは東京に出てきて予算をしこたまぶんどってくることができるのが良い知事でしたけ
れども、もちろんその姿勢に変わりはないんですが、一方でもうひとつ大切なことは、や
はり地元の県議会議員、特にうるさ型の議員さんや首長さんを説得してですね、この強靭
化の地方版を作るときに松・竹・梅、具体事業を示します。そうすると、梅になった地域
の議員は怒ります。それを知事が説得する。これ大変なんですよ。でもこういった作業も
必ず必要になってくるんですね。これが良い知事のメルクマール(基準/指標)になって
くるということであります。
そういう取り組みを進めていくことによって、この物流・交通関係の高度化というのは
間違いなく出来ていくと思います。後程シンポジウムそれから大石さんやあるいは冨田社
長、山田教授も後で講演をされるそうなので重複しないようにこの程度にさせていただき
たいと思いますが、ひとつ国土強靭化の時に3つ具体事業を出しましたけれども、CLTと
メタンハイグレードとリニア中央新幹線。実はいま国会で平和安全法の議論をしています
けども、これはなかなか理解が進んでないんですが、私はこれがもし成立をすればアジア
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諸国が、特にアセアン諸国はみんな評価の表明を致します。そうすればニュースを流した
くないテレビ局があったとしても流さざるをえませんので、そうすると「あ、なるほど」
ということで少しずつ理解が深まって、(世論の評価を)5:5に持っていくのは厳しい
かもしれないけれど、4:6ぐらいには間違いなくなっていくと思います。一方で、一瞬
で終わってしまったなというのは、あの国立競技場なんですよ。あれどう見てもあのデザ
インおかしいよね、日本的じゃないよね、どんどん費用もかさばっていくし、私らも含め
てみんな「あれって変だよね」って思ってましたよ。でもなんとなくズルズルとなってし
まった。私は総理にも1ヶ月以上前から進言をさせていただきました。平和安全法は(世
論の評価を)4:6まではいきます。しかし、国立競技場の問題はやはり政治決断しかな
いと思います。そして、総理は見事に政治決断をして白紙撤回になりました。そこで、災
い転じて福となすというものが必要です。
実は日本の素晴らしい文化とかそういう日本の独自性をしっかり世界にアピールしてい
くものにしていく、そういうところまで総理は言及しました。具体的なものはまだ決まっ
ていませんが、ここからは私の個人的な意見であります。その取り組みをしているという
ことを若干申し上げたいのは、CLT(Cross Laminated Timber)についてです。これはで
すね、国土強靭化基本計画にも記されて、そして骨太方針2015、これは予算を作る一
番大元のいわゆる指針であります。骨太方針っていうんですけどね。ここにもCLTの活用
がはっきり記されました。なぜか。平成26年6月3日に強靭化基本計画が閣議決定。昨
年の骨太方針が決まったのが平成26年6月23日。20日間で反映するのは不可能。で
すから今回初めて骨太の中に入れるということになって、CLTは入れることができました。
もうひとつ、経済成長戦略の指針となるいわゆる日本再興戦略2015.この中に実は
このCross Laminated Timberはですね、なんと2020年東京オリンピックを契機に50
万立米以上の供給体制、非常に控えめな数字ですよ。だけどもうそうやって具体的な数字
まで出てきたっていうことは、何が申し上げたいか。国策としてこれを推進していくとい
うことなんです。だから1ヶ月間かそこらの間に基本的な考え方を取りまとめていくこと
になるんでしょう。遠藤担当大臣のもとに今、杉田官房副長官あるいは和泉補佐官の元で
関係省庁が局長クラスで議論しています。そういう中に今後はプロポーザルに入っていく
ことでしょうけども、例えばこのCLTというものをしっかり活用するんだというメッセー
ジを出すということは、これは日本の木の文化、そして全国の森林をしっかり整備をして
いく、大きなインセンティブになりますよ。これこそが国土強靭化なんです。地方強靭化
の地方版なんです。こういう取り組みによって世界はアッと言います。
今、若干イギリスが先行して10階建ての木造建物がもうイギリスには出現しました。
嘘でしょと思うという方もいらっしゃいますが、それは本当なんです。CLTという新しい
工法、要するに建設の骨材なんですね。これを活用することによって丈夫で早く工期があ
がる、そして火災にも火にも強いというものができるんです。もうこれこそ技術革新、な
ぜここまでバーンと進んだか、国土強靭化の中に入れたからなんです。だからこそこの技
術革新がどんどん進んでいく。だからこの交通・物流においても、いろんな知恵によって
技術革新がどんどん出来ていくと思います。そういう中に毎年アクションプログラムが見
直しされていきますので、その中にしっかり反映させていく。そしてその新しいビジネス
チャンスをみなさんがしっかり捕えていただく。これによって成長戦略につなげていく。
これがなにより大切だというふうに思います。
どんなことがあっても致命傷を負わない、速やかに復活をさせる、そして日本の強さ・
しなやかさを世界にアピールしていくチャンスだと思います。ぜひ物流・交通の分野でも
そんな取り組みをしていただきますことを心からお願いして(ちょうど15分になりまし
たので)この程度でお話を終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございま
した。
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