新しい生き方、暮らし方としての 「二地域居住」の意義 「二地域居住」とは、都市と非都市地域(農山漁村)の2か所に生活の拠点 を持って、生活ニーズに応じて使い分け、より豊かな生活や人生を実現してい こうという考え方だ。 居住スタイル(住まい方)については、人生(ライフステージ)の中での移 動だったり、日常的な1年の暮らし(ライフスタイル)の中で都市と田舎暮ら しを両立させるなど、さまざまであってよい。従って、週末だけの住民、季節 ごとに夏や冬の一定期間を過ごす住民など、住民像は多様である。 不定期ではあっても、その地に生活拠点を持つことで、消費や交流などの行 動が展開され、住民とのふれあいなどによる地域社会の活性化への効果も期待 される。また、ゴミや上下水道、公共施設の利用などの地域サービスも必要と なり、地域社会の一員としてコスト負担も期待できる。こうした経済的、社会 的な地域社会への効果とともに、国土管理の点でも有効な施策として「二地域 居住」は構想されている。 もう一点、人間にとっての自然の重要性という点からも「二地域居住」には ※3 養老孟司 北里大学大学院教授。 解剖学が専門で、 「脳」 に関する研究の第一人者でもある。平成15 (2003)年の「バカの壁」 (新潮選書)は、 大ベストセラーとなった。 3 大きな意義がある。養老孟司氏は「(現代社会は)脳化社会になったからいけ ない。自然体験が大事だ」とおっしゃっているが、まったくその通りだ。人間 は自然のリズムを取り戻すと、心身共に健全になる。昼夜逆転とか、都市のよ うな人工化された環境ばかりではストレスがたまる。自然の中で暮らすことは、 人間性を取り戻す上で重要なことなのだ。 定住しないまでも、ある一定期間を過ごすことで、体の中の時計を自然の一 定のリズムに合わせるようにリセットする。そういう機会をみんなが持てるよ うにすることが重要だ。「二地域居住」はそのきっかけとなるだろう。 推進には意識改革と 社会システムの整備が必要 「二地域居住」をしたいという人は中高年男性が多く、奥さんは嫌だと言う 人が多いという話をよく聞く。男性の「感情」はロマンを感じての田舎暮らし、 女性の「勘定」は財布のほうだ、というジョークもあるようだが、確かに男性 は気楽なところがあって、自分の好きな趣味が出来ればいいということなのか もしれない。また、男性は会社人間が多くて、地域に根が生えていない人が多 いので動きやすいが、女性の場合は友達も行動の基盤も地域にあり、簡単には 地域から移動できないともいわれる。 現代人の意識や行動は多様であり、 「二地域居住」を進めていくためには、 「自 然の中で暮らすこと」への関心や意識を高めるとともに、「二地域居住」を実 現しやすい社会システムや環境整備が必要となる。 例えば、中高年の退職者だけではなく、若い人も含めて「二地域居住」を進 めるとすると、一般の企業の勤め人がまとまった休暇を取れるようなしくみに 18
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