(FCM)に出席 2011年6月3日から6月6日にわ

2011年6月
カナダ自治体連合総会(FCM)に出席
2011年6月3日から6月6日にわたってカナダ・ハリファックス市で開催され
た「カナダ自治体連合総会 FEDERATION OF CANADIAN MUNISIPALITIES(FCM)
」に JLGC
職員が出席しました。
FCM(FEDERATION OF CANADIAN MUNISIPALITIES)は、カナダ国内に所在する自治体
がメンバーとなっている組織で、1901年に発足し、加盟数は2000を超える大
きな組織です。カナダを代表するトロントやバンクーバーといった大都市の自治体か
ら郊外の小さな町の自治体までさまざまな自治体が参加しています。
この FCM 総会は FCM 参加自治体の首長や議員を招いて年一回行われるカナダ国内で
の一大イベントです。
この FCM はカナダ政界にも大きな影響力を持っており、FCM 総会に招かれるゲスト
スピーカーには、与党大臣、野党の党首等の大物政治家や著名人が招かれます。
その他、総会の開催に合わせてトレードショーも開催され、今回の総会では、LE
Dを使った街頭照明器具や風力発電装置等のエコ関連の商品の出品が目立ちました。
また、スタディーツアーやコンパニオンツアー、各プログラムセッションなど多く
のイベントが開催され、参加者は自分の興味のある分野のイベントにそれぞれ参加す
ることができます。
FCM総会のロゴ
ハリファックス市の町並み
ハリファックス市の名所:町を見下ろす丘に位置するオールドタウンクロック
【NIK NANOS
NANOS RESEARCH 社長によるスピーチ】
NIK NANOS 氏はカナダの世論調査会社 NONOS RESEARCH の CEO 兼社長であり、20
06年のカナダ連邦選挙で4大政党の得票率を0.1パーセントの単位の差まで予想
したことで有名で、スピーチでは、過去の選挙結果をパワーポイントを交えて説明、
ケベック州、オンタリオ州等の地区別での政党獲得投票数の違いの原因等を解説しま
した。
スピーチをする NIK NANOS 氏
【JACK RAYTON
新民主党(New Democratic Party)党首によるスピーチ】
JACK RAYTON 氏はカナダ議会の最大野党である新民主党党首であり、同氏が党首就
任後、新民主党は党発足以来最も多く議席数を獲得、新民主党発党以来最も成功した
党首であると言われています。JACK RAYTON 氏は、自分自身、自治体首長の経験もあ
ることから、
「自治体は常に連邦政府の助力を必要としており、道路、上下水道等に代
表されるインフラ整備をさらに行うことにより、雇用を創出し、人びとの生活の質を
向上させることができる」等と訴えました。
【DENIS LEBEL 運輸・社会資本・地域社会大臣(Minister of Transport, Infrastructure
and Communities)によるスピーチ】
Lebel 大臣は、現役与党大臣であり、政府の方針を説明するとともに、FCM 参加者に
対して「自治体、州、連邦が協力し合い、カナダの道路、橋、公共交通機関等のインフ
ラ整備に力を入れることで、経済を活性化させ、カナダ人の生活の質を向上させること
ができる。」と訴え、将来に必要なインフラ整備の自治体と共に行っていくことを約束
しました。
【 ス タ デ ィ ー ツ ア ー : From
Disaster
To
Opportunity
A Story
of
Two
historic Parks】
2003年9月に発生したハリケーンジェーンにより、壊滅的な被害を受けた2つの
公園(Point Pleasant Park & The Public Gardens)に対してハリファックス広域自
治体(HRM:Halifax Regional Municipality)がどのように再生計画を立て、それを
推進したかについてその2つの公園を実際に訪れ、担当者の説明を聞きながら、視察
を行いました。
公園内のほとんどの木がハリケーンによってなぎ倒されましたが、50パーセントを
自然、50パーセントを人間の手による公園再生を行い、専門家の助言を得つつ、さ
らに住民の憩いの場所とするため、ただ木を植えなおすのではなく、木が生い茂った
際の景観を計算し、眺望等も良くする工夫を行ったということでした。
説明をする HRM の職員(中央)
【スタディーツアー: On the Bus – Moving the Modal Split】
このスタディーツアーでは、ハリファックス市の交通局(バス、水上バス)がどのよ
うにして2004年から2009年の間に利用率を24パーセントも引き上げたかに
ついての説明がなされました。2010年に町の郊外に建設された最新式バス車両基地
に案内され、車両の整備設備や新型車両等の見学を行いました。利用率を上げる方法に
ついては、徹底した顧客(住民)調査を行い、顧客のニーズに合ったサービスを提供す
ることに尽きますということでした。
整備中のバス(二車両を連結したようなバス車両)
【セッション: Diverse Cities Marketplace : Successful approaches to settling
new Canadians in communities from Teslin to Toronto to Truro】
このセッションでは、それぞれの自治体での移民受け入れのためどのような工夫をお
こなっているかのプレゼンテーションが行われました。
受け入れた移民に対する教育を行ったり、移民が社会に溶け込め安くするためスポー
ツ大会を主催したり、各種催し物への参加を呼び掛けるなど移民を孤独にさせないこと
が重要であると強調していました。
また、オンタリオ州のノースベイ市のホームページでは、ノースベイ市の良いところ
悪いところ、移民のためにどのような手続きが必要か、また、カナダに着く前、着いた
後その日から何をすべきか等が詳しく書かれたホームページを作成していました。
ノースベイ市移民関係のホームページ
(参照:http://www.northbayimmigration.ca)
【セッション:
Deciding to host a National Repository for Used Nuclear Fuel:
Swedish Experience】
このプレゼンテーションはスウェーデンの二つの自治体からによるもので、主にどの
ように住民を説得し、核廃棄物の受け入れ場所の権利を連邦政府から獲得したかという
ものでした。スウェーデンは電力の45%を原子力発電(その他54%が火力、1%が
風力、水力等の自然エネルギー)に頼っていて、核廃棄物を受け入れるということは、
国からの補助金(核廃棄物ファンド)を受け取れるだけでなく、その施設建設、運営等
に伴う雇用の創出を行うことができるという面が強調されていました。
セッションの質疑応答では、日本の福島第一原発の事故の話が一番の話題となりまし
たが、福島原発の事故後においてもスウェーデンでは80%以上の国民が原子力発電に
対して賛成であるとのことでした。
「ネガティブ面はないか」という質問に対しては、
「10万年以上の間、核廃棄物を管
理しなければならない、その間には何が起こるか分からない」という回答をしていまし
たが、
「10 万年も時間があれば、もっと良い核廃棄物の管理方法も見つけられるだろう」
と言った楽観的な意見も出ていました。
【セッション: Housing first: Breaking the costly cycle of chronic homelessness】
本セッションでは、コストのかかる慢性的ホームレス対策を自治体としてどのように
対処していくかのプレゼンテーションが行われました。
本セッションで最も強調されたことは、まずホームレスのための住宅を用意し
(Housing first)
、その後、各種プログラム(医療が必要なものには医療を、メンタル
ケアが必要なものにはメンタルケアを、その後仕事を与える)を行うという内容でした。
あるホームレスに対して、警察が出動する、救急車が病院に搬送する、シェルターに
入居させ、その後退去させることを繰り返し、年間3000ドル以上の費用を使ったに
も関わらず、その者は未だにホームレス生活をしているという例が挙げられ、もしその
3000ドルを住居費や各種プログラムの運営費を当てればホームレスを削減するこ
とができ、さらにホームレス対策費も削減させることができるという説明がなされまし
た。
【セッション:
Let’s Make a Deal: Partnering With the Private Sector in
Brownfield Development】
本セッションでは、低利用で荒廃した土地(Brownfield)の再開発を民間セクターと
の連携で進めるための情報交換を目的としたプレゼンテーションが行われました。
「社会・経済・環境の 3 要素を統合した持続可能なコミュニティーの形成」と「荒廃
した土地の改良による都市再活性化」という2つの目的が紹介され、開発により市民の
健康と治安の確保、雇用の創出、地域の再活性化、都市インフラの再利用、税収増等が
期待できるとの説明がありました。
課題としては、既成市街地での開発となるために地域改良のプロセスが必要となりそ
の分コストや時間がかかり、ファイナンスが困難になるというものでした。
続いて、古くなった工業地域と住居用地域を組み合わせて巨大な環境配慮型研究開発
施設として再開発する取り組みや町の入口にあたる場所にあったガソリンスタンドを
水処理施設に転換したプロジェクト、古い鉄道施設を900戸の住宅と2つの鉄道駅に
転換するプロジェクト等の成功例のプレゼンテーションが行われました。
いずれの再開発計画の成功にも共通するのは、民間パートナーとウィンウィンの関係
を築きながら採算を確保しつつサスティナビリティ(持続可能性)の確保と地域の魅力
向上を達成することができたという点でした。
【セッション: Plenary panel: How Municipalities Can Access PPP Canada】
本セッションは、自治体による官民協力事業 Public-Private Partnership の更なる
利用促進のためのプレゼンテーションでした。
PPP カナダファンド(カナダ連邦政府によって設立された政府件機関)には、PPP 事
業を支援するための 12 億カナダドルの資金があり、また、官民協力を行うことにより、
専門知識の活用と迅速な開発、そしてリスクの軽減を図ることできると説明されました。
PPP カナダファンドの支援対象は、従来の道路、橋の建設、補修、上下水道の整備、
その他交通網、インフラ整備に限られており、学校建設等は対象とされていないという
ことでした。